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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 X06
管理番号 1220027 
異議申立番号 異議2010-900032 
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-01-29 
確定日 2010-06-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第5279910号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5279910号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5279910号商標(以下「本件商標」という。)は、「エスコート」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成21年7月14日に登録出願され、第6類「塗装鋼板,建築用又は構築用の金属製専用材料」を指定商品として、同年11月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録4313357号商標(以下「引用商標1」という。)
引用商標1は、「ACECOAT」の欧文字を標準文字で書してなり、平成9年12月4日に登録出願され、第6類「鉄および鋼」を指定商品として、同11年9月10日に設定登録され、その後、同21年9月8日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
(2)登録4313358号商標(以下「引用商標2」という。)
引用商標2は、「エースコート」の片仮名文字を標準文字で書してなり、平成9年12月4日に登録出願され、第6類「鉄および鋼」を指定商品として、同11年9月10日に設定登録され、その後、同21年9月8日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
(3)登録4325467号商標(以下「引用商標3」という。)
引用商標3は、別掲のとおりの構成よりなり、平成10年7月3日に登録出願され、第6類「鉄および鋼」を指定商品として、同11年10月15日に設定登録され、その後、同21年10月13日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、その構成文字に相応して「エスコート」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は、いずれもその構成文字に相応して「エースコート」の称呼を生ずるものであることは明らかである。
そこで、本件商標より生ずる「エスコート」と引用商標より生ずる「エースコート」の両称呼を比較すると、両称呼は、「エ」、「ス」、「コー」、「ト」の4音を共通にし、異なるところは第1音の「エ」の音が短音か長音を伴うかの微差にすぎない。しかも、この長音は前音の「エ」に吸収されやすく、明確に聴取されるとはいえないものであるから、この長音の有無が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語感が近似したものとなり、称呼上互いに相紛れるおそれのあるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観及び観念の異同について論及するまでもなく、称呼において明らかに類似する商標であり、かつ、指定商品についても、本件商標の指定商品第6類「塗装鋼板」と引用商標の指定商品第6類「鉄および鋼」とは同一又は類似するものである。
なお、本件商標と引用商標のように、称呼が「エ」と「エー」の短音か長音を伴うかの微差にすぎない場合は、特許庁においても、一貫して類似商標であるとして登録を認めず、また、登録された場合は無効審判により無効にしている(甲第5号証ないし甲第8号証)。
よって、本件商標は明らかに商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
以上のとおり、本件商標は、指定商品中「塗装鋼板」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)商標の類否判断について
商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号 同43年2月27日)。
(2)本件商標と引用商標1及び引用商標3との類否について
本件商標は、「エスコート」の片仮名文字よりなるところ、該文字は、「護衛すること。多く、男性が女性に付き添って送ることをいう。」(広辞苑第六版:岩波書店)の意味を有する外来語として広く知られているから、その構成文字に相応して「エスコート」の称呼を生じ、「エスコート、護衛すること」の観念を生ずるものである。
他方、引用商標1は、「ACECOAT」の欧文字よりなるものであり、また、引用商標3は、別掲のとおり、各構成文字はデザイン化されているが「ACE COAT」の欧文字を認識させるものである。
そして、それぞれの構成中、「ACE」の文字部分は、「(トランプ,さいころ,ドミノの)1;1の札、(野球などの)一流選手、トップクラスの、一流の」などの意味を有する英語として、「COAT」の文字部分は、「コート、外套、(ペンキなどの)被膜、ひと塗り」などの意味を有する英語として(ともに「新グローバル英和辞典」:株式会社三省堂)、いずれも広く知られている語であるから、両引用商標は「ACE」及び「COAT」の語からなるものであると認識される。また、「ACE COAT」の文字からなる成語は特にないものの、両語はよく知られており、申立てに係る商品「塗装鋼板」との関係では、全体として「一流の塗装」というほどの意味合いを想起させるものである。
そうとすれば、引用商標1及び引用商標3は、それぞれの構成文字に相応して「エースコート」の称呼を生じ、「一流の塗装」程の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標と引用商標1及び引用商標3を比較すると、外観において、両者は、その構成文字及び態様が明らかに相違するので、十分区別することができるものである。
称呼においては、本件商標より生ずる「エスコート」の称呼と引用商標1及び引用商標3より生ずる「エースコート」の称呼を比較するに、両者は、その構成音において、「エ」「ス」「コー」「ト」の各音を共通にし、第1音において長音の有無の差異を有するものである。
しかして、語頭音の「エ」における長音の有無の差は、その長音がない場合は、「エス」と詰まった音調になるのに対し、その長音がある場合は、「エース」と伸びた音調になり、明らかな相違として聞き取れるものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、語調語感に違いを有するものとして聴別されるものである。
観念については、本件商標より生ずる「エスコート、護衛すること」の観念は、引用商標1及び引用商標3より生ずる「一流の塗装」の観念とは全く異なるなるものであり、両者は、観念においては互いに相紛れるおそれがない。
そして、申立てに係る指定商品「塗装鋼板」は、「屋根、壁、建築内外装、自動車、鋼製家具、電気機器、家電製品」などに幅広く利用されているが、基礎製品であるため需要者の多くは一般大衆というよりは建築、自動車、鋼製家具、電気機器又は家電製品などの事業者であり、これらの事業者又はその担当従業員が事業の原材料の購入に際して払う注意力は、一般の日用品の購入などに際して払う注意力と較べ、比較的高いものと解される。
これらを総合勘案するに、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、称呼において「エ」「ス」「コー」「ト」の各音を共通にするとしても、第1音に続く長音の有無の差異を有し、外観及び観念において相紛れるおそれがないものであり、本件申立てに係る指定商品「塗装鋼板」の取引は専門的な事業者によって比較的高い注意力を持ってなされることからすると、本件商標と引用商標1及び引用商標3を同一又は類似の商品に使用をした場合には、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、引用商標1及び引用商標3とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は、上述したとおり、「エスコート」の称呼を生じ、「エスコート、護衛すること」の観念を生ずるものである。
引用商標2は、「エースコート」の片仮名文字よりなるところ、その構成中「エース」の文字部分は、前記英語「ACE」の外来語として、「コート」の文字部分は、前記英語「COAT」の外来語として、いずれも広く知られている語であるから、引用商標1及び引用商標3と同様に、申立てに係る商品「塗装鋼板」との関係では、全体として「一流の塗装」というほどの意味合いを想起させるものである。
そうとすれば、引用商標2は、その構成文字に相応して「エースコート」の称呼を生じ、「一流の塗装」程の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標と引用商標2を比較すると、外観において、両者は、「エ」「ス」「コー」「ト」の各文字を共通にするものの、視覚上最初に注意が向けられる語頭の「エ」の文字に長音を表す「ー」の有無の差異を有するものであるから、この差異により区別できるものであり、また、称呼及び観念については前記(2)のとおりである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観及び称呼上区別し得るものであり、観念において相紛れるおそれはなく、本件指定商品分野における前記取引の実情も考慮し、総合勘案してみれば、本件商標と引用商標2を同一又は類似の商品に使用をした場合には、商品の出所の混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、引用商標2とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(4)申立人の主張について
申立人は、4件の審決例を引用し、称呼が「エ」と「エー」の短音か長音を伴うかの微差にすぎない場合は一貫して類似商標であると主張するが、本件商標は広く知られた成語であるのに対し、引用の事案はいずれも造語であって本件とは事案を事にするものであるから、採用の限りでない。
(5)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、指定商品中「塗装鋼板」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別 掲(引用商標3)



異議決定日 2010-06-07 
出願番号 商願2009-53199(T2009-53199) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (X06)
最終処分 維持  
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 井出 英一郎
内山 進
登録日 2009-11-13 
登録番号 商標登録第5279910号(T5279910) 
権利者 JFE鋼板株式会社
商標の称呼 エスコート 
代理人 鈴江 正二 
代理人 中村 盛夫 
代理人 藤谷 史朗 
代理人 小川 順三 

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