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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Y14
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y14
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y14
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y14
管理番号 1219957 
審判番号 無効2009-890085 
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-07-21 
確定日 2010-07-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5013294号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5013294号商標(以下「本件商標」という。)は、「ROCCA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年2月9日に登録出願、第14類「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品」を指定商品として、同年11月30日に登録査定、同年12月22日に設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証(枝番を含む。以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出している。
1 請求の理由
以下のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して商標登録されたものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
(1)請求の利益について
請求人は、後記(2)アの登録第4639648号商標(以下「引用商標」という。)を「ロッカ ソシエテ、ペル、アチオニ(ROCCA S.P.A.)」(以下「ロッカ社」という。)から譲り受け、本件審判請求と同日付けで「商標権移転登録申請書」を特許庁に提出した。
また、請求人は、後記(2)ウ(イ)で述べる国際登録第928745号商標(甲第7号証:以下「参考商標」という。)をロッカ社から譲り受け、平成21(2009)年7月14日付けで「名義人の変更の記録の請求書(MM5:REQUEST FOR THE RECORDING OF A CHANGE IN OWNERSHIP)」を国際事務局に提出した。
これは、平成20(2008)年9月に、請求人の親会社に相当するイタリア国のダミアーニ ソシエテ、ペル、アチオニ(Damiani.S.p.A.:以下「ダミアーニ社」という。)が引用商標及び参考商標等を所有するロッカ社を買収したところであり、これに伴い、ダミアーニグループのブランド管理をも手がける請求人が、今般ロッカ社から引用商標及び参考商標を譲り受けるに至ったことによる。
そして、本件商標と引用商標の指定商品は類似し、本件商標をその指定商品に使用した場合には、取引者、需要者は、あたかもロッカ社及びダミアーニグループから流出した商品と誤認し、出所の混同を生ずるおそれがあり、また、参考商標は、本件商標と類似する商標であるとして、商標法第4条第1項第11号に該当するとの理由により拒絶査定を受け、これに対し拒絶査定不服審判(不服2009-650063)を請求した(甲第9号証)ところであるから、本件審判は、参考商標の商標登録の可否に影響を及ぼすところである。
したがって、請求人は、本件商標の登録により直接不利益を有する者であるから、本件審判の請求につき利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標
引用商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成13年10月2日に登録出願、第8類「フォーク,スプーン,角砂糖挟み,魚用ナイフ,果物ナイフ,チーズ用ナイフ,バターナイフ,キャビア用ナイフ,洋食ナイフ,その他の手動利器」及び第14類「貴金属製の大皿,その他の貴金属製食器類,貴金属製のナプキンリング・ナプキンホルダー・くるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製おしろい入れ,貴金属製灰皿・たばこホルダー・ライター,その他の貴金属製喫煙用具,指輪,ブレスレット,ネックレス,イヤリング,ブローチ,ペンダント,ネクタイピン,スカーフリング,カフスボタン,その他の身飾品,宝玉及びその模造品,時計,時計の部品及び附属品」を指定商品として、同15年1月24日に設定登録がされたものである(審決注:引用商標に係る商標権は、受付日を平成21年7月21日とする「特定承継による本件の移転」によって、ロッカ ソシエテ,ペル,アチオニから請求人に移転された。)。
イ 商標の類否
昭和39年(行ツ)第110号(昭和43年2月27日 最高裁判所第三小法廷判決)及び昭和37年(オ)第953号(昭和38年12月5日 最高裁判所第一小法廷判決)の見地から、本件商標と引用商標の類否について比較検討する。
(ア)外観上の比較
本件商標は、「ROCCA」の欧文字を書した構成からなるものである。
他方、引用商標は、上段中央に宝石をモチーフにした図形を配し、中段に大きく「ROCCA」の欧文字を、下段にやや小さく「CALDERONI」の欧文字を併記した構成からなるものであって、その構成から、視覚上それぞれが自ずと上下に分離して看取されるばかりでなく、中段の「ROCCA」の欧文字が大きく表された構成から、引用商標に接する取引者、需要者は、当該欧文字に着目して商取引に資することも少なくないというべきである。そして、引用商標は、「ROCCA」と「CALDERONI」の各文字を常に一連一体のものとして把握しなければならない理由は何ら見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは、「ROCCA」の欧文字を同じくする外観上相紛らわしい商標というべきである。
(イ)称呼上の比較
本件商標からは、「ロッカ」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は、「ロッカカルデローニ」の称呼をも生ずるが、この称呼は冗長であるばかりか、前半の「ロッカ」の語尾音とこれに続く「カルデローニ」の語頭音がともに「カ」の音であって、これが2つ重なるため一気に称呼することができず、しかも、前記(ア)の構成から、一拍おいて称呼されるものである。
このため、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、後半の「カルデローニ」の称呼を省略し、前半の「ロッカ」の称呼をもって商取引に資することも多いというべきである。
また、引用商標は、中段に「ROCCA」の欧文字を大きく顕著に表された構成からなるため、極自然に該文字部分に注視する。
そして、後記(3)アのとおり、引用商標は、2つの異なるブランドを1つに表した商標であることを考慮すると「ROCCA」と「CALDERONI」という2つの高級ブランドが表された商標と認識し理解するものであり、まして、「ROCCA」の欧文字は、1856年設立のロッカ社により150年もの長きにわたり使用されてきた商標であることを考慮すると、ロッカ社の商号の略称と直感し、その出所を識別する以上、該文字は独立した強い出所識別機能を発揮するものというべきである。
そうすると、引用商標に接する取引者、需要者は、「ROCCA」の欧文字に強い印象を受けこれを記憶するため、前半の「ロッカ」の称呼をもって商取引に資することも少なくないというべきであるから、本件商標から生ずる「ロッカ」の称呼は、引用商標から生ずる「ロッカ」の称呼と同じくする称呼上相紛らわしい商標というべきである。
(ウ)観念上の比較
本件商標は、外国人の氏姓「ROCCA」を書したものであることから(甲第3号証及び甲第4号証)、これより「ロッカ」氏との意味合いを生ずるものである。
他方、引用商標は、中段の「ROCCA」の欧文字から、本件商標と同様に、「ロッカ」氏との意味合いを生じ、下段の「CALDERONI」の欧文字が外国人の氏姓を書したものであることから(甲第3号証及び甲第4号証)、これより「カルデローニ」氏との意味合いを生ずるものであって、常に両欧文字を一体不可分のものとして把握しなければならない観念上の理由は見いだせず、それぞれが独立した氏姓と理解されるものである。むしろ、上述のごとく、「ROCCA」の欧文字がロッカ社の商号の略称を想起させる強い出所識別機能を発揮する文字であることを考慮すると、引用商標に接する取引者、需要者は、「ROCCA」の欧文字に強い印象を受け、これより「ロッカ」氏の観念とともにロッカ社を連想して商取引に資することも多いというべきである。
したがって、本件商標から生ずる「ロッカ」氏の観念は、引用商標から生ずる「ロッカ」氏の観念と同じくする観念上相紛らわしい商標というべきである。
ウ 審決例等
(ア)審決例
以上の請求人の主張が正しいことは、前記最高裁判所判決と同様の認定を示す審決例(無効2002-35233審決、無効2003-35026審決、不服2002-24763審決、不服2002-7001審決、不服2004-11346審決、不服2002-65009審決)より明らかである(甲第6号証)。
(イ)暫定拒絶通報
参考商標は、別掲(2)のとおり、「ROCCA」の欧文字と、その下段に、横線に挟まれ小さく表した「1872」の数字を配した構成からなり、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; soaps; perfumery, essential oils, cosmetics, hair lotions; dentifrices. 」及び第14類「Precious metals and their alloys and goods in precious metals or coated therewith, not included in other classes; jewellery, precious stones; horological and chronometric instruments. 」を指定商品として、平成19(2007)年5月25日に国際登録されたものである(甲第7号証)。
そして、参考商標に係る審査において、引用商標及び本件商標を引用し、商標法第4条第1項第11号に該当するとの暫定拒絶通報(平成20(2008)年4月10日起案:甲第8号証)がされた。
そうすると、引用商標とこの参考商標が類似する商標であるにもかかわらず、引用商標と「ROCCA」の欧文字を書した本件商標とが類似しない商標であるとする理由は全く見受けられない以上、当然、本件商標は、引用商標と類似する商標であることは明白というべきである。
なお、参考商標は、不服2009-650063号事件として審判に係属している(甲第9号証)。
エ 小括
以上のように、本件商標と引用商標とは、「ROCCA」の欧文字を共通にし、また、「ロッカ」の称呼と「ロッカ」氏の観念を同じくする相紛らわしい類似する商標であって、取引上、出所の混同を生ずる商標というべきである。
また、本件商標の指定商品中「身飾品」は、引用商標の指定商品中「指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、ブローチ、ペンダント、ネクタイピン、スカーフリング、カフスボタン、その他の身飾品」と、また、本件商標の指定商品中「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、宝石、宝石の模造品」は、引用商標の指定商品中「宝玉及びその模造品」と、さらに、本件商標の指定商品中「時計」は、引用商標の指定商品中「時計、時計の部品及び附属品」と、それぞれ同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 「ROCCA」と「CALDERONI」ブランド
引用商標構成中の「ROCCA」と「CALDERONI」の各欧文字は、イタリア国において異なるブランドとして存在していたものである。
「ROCCA」のブランドは、1856年にアルベルト・ロッカにより金細工工房として創業し、遅くとも1872年には、トリノ店で腕時計ライブラリーのコンセプトを展開し(参考商標)、宝石・宝飾品や腕時計のブランドとしてその評判を広めるに至り、サヴォイア家(Savoia family)の皇室御用達であったほか、イタリア国の歴史と文化の最も重要な代表者をその顧客としてきたブランドである。
他方、「CALDERONI」のブランドは、1840年にハプスブルグ家統治下のミラノ市で「カルデローニ宝石店(Calderoni Jewels)」を創業したことに始まり、その宝石や宝飾品は名門貴族をその顧客としていたブランドである。
そして、150年もの歴史をもつ両ブランドが、今日1つになり、気品・名声・階級及び専門技術を兼ね備えた宝石・宝飾品や腕時計などの高級ブランドとして、極めて高い名声を獲得しているものである(甲第14号証の2及び甲第20号証)。
現に、この「ROCCA」と「CALDERONI」のブランドを1つに表した引用商標は、指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品に付されてイタリアのみならず、世界各国で盛大に販売されてきたところであり、具体的にはロッカ社は、平成15(2003)年の段階では、イタリア国に計11店(トリノに2店、ミラノに2店、マントヴァ、パドヴァ、ペスカラ、バリ、レッチェ、タオルミーナ及びカタニアに各1店)、スイス国のルガーノに2店、また、日本国内では、東京都港区高輪のザ・プリンスさくらタワー東京内に1店、横浜市の港北区に1店、横浜市の西区のランドマークプラザ内に1店、長野県北佐久郡に1店及びタイ国のバンコクに1店の総計18店もの小売店を出店し(甲第15号証)、さらに、平成17(2005)年の段階では、総計21店も出店し(甲第18号証)、これら各店にて、引用商標等を付した指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品を販売してきた(甲第12号証ないし甲第19号証)。
そして、平成20(2008)年9月に、引用商標及び参考商標等を所有するロッカ社を請求人の親会社に当たるイタリアのダミアーニ社が、981万ドルで買収し(甲第20号証ないし甲第22号証)、これに伴いダミアーニグループのブランド管理を手がける請求人が引用商標及び参考商標等を譲り受けるに至った。この動向は、ニューヨークを拠点としたファッション専門日刊紙「WWD(ウィメンズ・ウェア・デイリー)」(甲第22号証)やアラブ首長国連邦のビジネス情報サイト「アラビアンビジネスコム」(甲第23号証)などでも取り上げられ、また、日本国においてもロッカ社のミラノのモンテナポレオーネ通りの小売店が名店として紹介されるまでに至っている(甲第24号証)。
イ 小括
以上のように、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドは、イタリア国及び日本国内において、本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成18(2006)年ころには、ロッカ社のブランドを表示するものとして周知・著名性を獲得した商標となっていたものである。
このため、本件商標に接する取引者、需要者は、これよりあたかもロッカ社の小売店の店名や宝石・宝飾品及び腕時計のブランドであるかのように誤認して、本件商標を付した商品を購入し、あるいは、本件商標の商標権者をロッカ社と経済的又は組織的に密接な関係がある者であると誤認して、本件商標を付した商品を購入するものであるから、本件商標は、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドとの関係において出所の混同を生ずる商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 「ROCCA」のブランドの認知性
本件商標の商標権者である株式会社鈴屋は、平成18(2006)年2月9日に、本件商標を登録出願したところであるが、それ以前の同15(2003)年7月ころに、鹿児島県鹿屋市に「ROCCA」のブランドを表示した宝石・宝飾品や腕時計の小売店を出店しており(甲第25号証)、遅くとも、同20(2008)年3月ころには、「ROCCA」のブランドを付した宝石・宝飾品や腕時計を製造販売していた(甲第26号証)。
そうすると、商標権者は、本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成18(2006)年ころには、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドが、ロッカ社の小売店の店名や宝石・宝飾品及び腕時計のブランドとして、イタリア国及び日本国内において広く知られた商標であったことは当然に熟知していたというべきである。
これは、平成15(2003)年7月ころの出店以前において、商標権者の現代表者である川上幹生(以下「川上」という。)が、福岡市にあるダミアーニのフランチャイズ店舗にて就業していたところ、ダミアーニのフランチャイズ店の店員であればロッカ社の「ROCCA」のブランドがどのようなブランドであるかを当然に知っており、遅くとも、同月ころの出店の際に、「ROCCA」という店舗名にしたいという強い希望を出していたことからも、「ROCCA」ブランドがどのようなものであるかを知っていたと推測される(甲第25号証)。
イ 店名採択の経緯
商標権者の平成15(2003)年7月ころの出店に際し、川上の強い希望に押され、また、商標権者を応援する意味から、商標権者が「ROCCA」のブランドを小売店の店名として使用を開始した経緯を踏まえると、ロッカ社が、商標権者により「ROCCA」のブランドを付した宝石・宝飾品や腕時計が製造販売されると予想することは困難であるばかりか、「ROCCA」のブランドを表した本件商標が登録出願されることまで予想することは不可能というべきであり、当時、仮に、商標権者が「ROCCA」のブランドを付した宝石等の製造販売や「ROCCA」のブランドを表した本件商標の登録出願まですると予想し得たのであれば、小売店の店名として使用することすら承諾しなかったと推測される(甲第25号証)。
これは、「ROCCA」のブランドを鹿児島県鹿屋市に小売店の店名として使用することと、本件商標を登録出願し商標登録を受けることにより「ROCCA」のブランドを日本国内で独占排他的に使用することでは、その法的影響が全く異なることからも明らかである。
そして、平成18(2006)年2月9日に本件商標を登録出願するに際して、商標権者は、ロッカ社に本件商標の登録出願の許可を求めることなく、また、何らかの報告もしなかったのは、「ROCCA」のブランドを小売店の店名として使用する協力を得ただけであることを十分理解していたからにほかならず(甲第25号証)、仮に本件商標の登録出願の許可を求めればロッカ社から当然にその承諾を得ることができないことを認識し、また、仮に何らかの報告をしたらロッカ社から商標登録が妨げられることを認識していたと推測される。
それにもかかわらず、本件商標を登録出願したということは、ロッカ社の「ROCCA」のブランドの名声にただ乗りする意図を有していたものであり、また、ロッカ社の日本国内の参入を阻止する目的を有していたものであり、さらには、ロッカ社が商標権者を応援すべく「ROCCA」のブランドを小売店の店名として使用するに至った協力と信頼を裏切る信義則に反する意図を有していことは明らかというべきである。
ウ 小括
そうすると、本件商標は、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドと同一又は類似する商標であって、本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成18(2006)年ころ、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドは、イタリア国及び日本国内において、周知・著名性を獲得した商標となっていたものであり、それにもかかわらず、商標権者は、本件商標を不正の目的をもって登録出願したところである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して商標登録されたものである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標から生ずる観念について
被請求人は、本件商標から特定の意味合いを生ずると主張する。
しかし、本件商標の審査の過程で、出願人である被請求人は、平成18年8月18日付け提出の意見書において、「本願商標からは特定の観念は生じません。」と主張しており、本審判段階における上記主張が背理していることは自明である。
(2)引用商標から生ずる観念について
被請求人は、引用商標は「ROCCA」と「CALDERONI」の各欧文字から「ロッカ」氏と「カルデローニ」氏という欧米人の氏名を表したものと直感させるものであると主張する。
しかし、被請求人が自認するように「ROCCA」の欧文字は、「ロッカ」氏という欧米人の氏姓であり、また、「CALDERONI」の欧文字も「カルデローニ」氏という欧米人の氏姓であるから、両欧文字全体では、異なる2つの欧米人の氏姓を表したものであって、全体で一の欧米人の氏名を表したことにはならず、この2つの氏姓に何らの熟語的関連性も見いだせない以上、引用商標に接する取引者、需要者は、これより「ロッカ」氏という独立の意味合いと「カルデローニ」氏という独立の意味合いを認識し理解するとみるのが相当である。
(3)引用商標から生ずる称呼について
被請求人は、引用商標の「ロッカカルデローニ」の称呼のように、「カ」の音が続く称呼にあっては、前音の「カ」の音に、後音の「カ」の音が吸収され、後音の「カ」の音はほとんど聴取できないことがしばしばであるのは、一般的な経験則であると主張する。
しかし、何故、後者の「カ」の音が前音の「カ」の音に吸収され、後音の「カ」の音が聴別できなくなるのかその根拠が明らかでなく、その一般的な経験則も全く明らかでない。
そして、取引の実際において簡易迅速が尊ばれることは、一般的な経験則からも明らかであり(昭和三六年六月二三日第二小法廷判決、昭和37年(オ)第953号 昭和38年12月5日最高裁判所第一小法廷判決)、取引の実際において、7音ないし8音と冗長な「ロッカカルデローニ」の称呼をわざわざ2音節に称呼するよりは、2音ないし3音と短い前半の「ロッカ」の称呼のみをもって、取引に資されることも多いというべきである。
(4)取引の実情について
被請求人は、高価な商品の取引分野の場合、取引者、需要者に高度な注意力が要求される結果、引用商標を一体不可分のものと認識し理解すると主張するが、そのような取引の実情が存するのか根拠が明らかでない。
なるほど、高価な商品であればあるほど、需要者は、購入に際して慎重に商品を選定するといった取引の実情であれば是認し得るところであるが、需要者が、慎重に商品を選定することと、引用商標を一体不可分のものと理解することに、合理的な関連性を見いだせないところである。
例えば、指輪に商標が付される場合には、指輪の内側に刻印されることが多く(甲第12号証ないし甲第19号証)、その刻印しうる幅におのずと制限があるため、指輪の幅次第では、商標の構成を変更して表示せざるを得ないことは取引の実際に照らして想定し得るところである。
仮に、高価な商品の取引分野の場合、取引者、需要者に高度な注意力が要求される結果、引用商標を一体不可分のものと認識し理解するとの取引の実情が存するとしても、被請求人が「引用商標に係る指定商品には、高額な商品が多く含まれており」と主張するように、引用商標に係る指定商品は、高価な商品に限定されず、当然に安価な商品も含まれるところである。
そして、商標法第4条第1項第11号類否判断にあたり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、高価な商品についてのみ特殊的・限定的なそれを指すものではなく、安価な商品も含めて取引の実情を考慮しなければならないところである(同旨:平成17年(行ケ)第10566号 平成17年1月21日判決(甲第32号証))。
(5)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、甲第12号証ないし甲第19号証には訳文の添付がなく、その記述内容の真偽を判断することはできず、また、引用商標と同商標の下部に「GIOIELLI E OROLOGI」の文字を有する標章(以下、「基幹商標」という。)とが混在することからしても、かかる請求人の主張は、一貫性がなく、合理的でないと主張する。
しかし、甲第12号証ないし甲第19号証は、いずれもロッカ社のカタログであり、そのカタログ自体に引用商標が表示されているほか、そこに掲載されている指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品に本件商標が付されていることは明らかであり、また、例えば、甲第15号証や甲第18号証における「TORINO」、「TOKYO」、「YOKOHAMA」といった、各国の小売店の住所の翻訳文がなくとも、各店を有することを十分に把握し得るところであるから、記述内容の真偽を判断することができないとする理由はない。
さらに、基幹商標が混在する旨の指摘については、「GIOIELLI」の語は、「宝石」を意味するイタリア語の男性名詞「gioiello」が複数形に変化したものであり、「E」の語は、「?と」の並列・付加を意味するイタリア語の接続詞であり、「OROLOGI」の語は、「時計」を意味するイタリア語の「orologio」が複数形に変化したものである(甲第35号証)。
このため、引用商標の下部に付加された「GIOIELLI E OROLOGI」の文字部分は、日本語でいえば「宝石と時計」であって、自他商品識別機能を発揮することのできないものである。
そして、我が国のイタリア語の普及度を考慮しても、「宝石」や「時計」といったごく一般的な単語であるから、そのような意味合いを認識し理解する取引者、需要者も多いというべきであり、一般的な単語とはいい難い「ROCCA」の語から、「糸巻き棒、城砦、岩」等の意味合いを直ちに認識し理解する取引者、需要者であれば、むしろ、「GIOIELLI E OROLOGI」の文字が、「宝石と時計」を意味することはいうまでもないところである。
このため、基幹商標が掲載されていることは、正に引用商標が使用されていることの証左に他ならない。
(6)商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、審判請求書及び甲第25号証の陳述書を引用して、るる述べている。
しかし、被請求人が提出した乙第6号証の陳述書には、川上の捺印もなく、そもそも陳述書としての形式的適格性を欠き、その証拠価値を把握しようもないところである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出している。
以下のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して商標登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきものではない。
1 請求の利益について
請求人は、引用商標及び参考商標の権利者であるから、本件審判の請求につき利益を有する者と認める。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)外観上の比較
本件商標と引用商標とは、その構成よりみて、外観上明らかに区別し得る差異を有するものである。
(2)観念上の比較
本件商標を構成する「ROCCA」の欧文字は、イタリア語の成語であり、「糸巻き棒、城塞、岩」等の意味を有するものであるから(乙第2号証)、特定の意味合いを生ずる。
一方、引用商標は、扇状様の図形及び「ROCCA」と「CALDERONI」の各欧文字から、「ロッカ」氏と「カルデローニ」氏という欧米人の氏名を表したものを直感させるものであって、観念上も、特に、軽重の差を見いだすことはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念においては、顕著な差異があるから、相紛れるおそれはないものである。
(3)称呼上の比較
本件商標からは、その構成文字に相応して、「ロッカ」の称呼を生ずるものである。
一方、引用商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「ROCCA」の語義について詮索することなく、全体として欧米人の氏名を表してなるものと認識し把握するといえるから、「ROCCA」の文字部分のみを抽出し、観念されることはないものといわなければならない(乙第5号証)。
また、「ROCCA」と「CALDERONI」の各欧文字は、上下2段にて併記され、「ROCCA」の欧文字が多少大きく書されているとしても、同一の書体、同一の間隔でその幅内に、全体としてまとまりよく書されており、「ロッカカルデローニ」の称呼も格別冗長というべきものでない。
そして、引用商標の「ロッカカルデローニ」の称呼のように、「カ」の音が続く称呼にあっては、前音の「カ」の音に、後音の「カ」の音が吸収され、後音の「カ」の音はほとんど聴取できないことがしばしばであるのは、一般的な経験則である。
さらに、引用商標の指定商品の一である「指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品及び時計」等の高価な商品の取引分野にあっては、その取引者、需要者に、より高度な注意力等が要求される「取引の実情」とあいまって、引用商標に接する取引者、需要者は、その構成全体をもって、より注意深く、慎重に、一体不可分のものと認識し、把握するとみるのが自然であるから、引用商標は、その構成文字全体に相応して、「ロッカカルデローニ」の一連の称呼のみをもって、取引に資されることが取引の実際であるものと判断するのが相当といえる。
すなわち、請求人は、甲第6号証において、上下2段に併記された構成文字の商標に係る審決例にあって、これらを常に一体不可分のものとして把握しなければならないとする特段の理由がない場合を取り上げているにすぎず、引用商標に係る指定商品には、高価な商品が多く含まれており、これに接する取引者、需要者は、その構成全体をもって、より注意深く、慎重に、一体不可分のものと認識し、把握するとみるのが取引界の経験則であるから、引用商標は、その構成文字全体に相応して、「ロッカカルデローニ」の一連の称呼のみをもって、取引に資されることが取引の実際であるものと判断するのが相当といえる(昭和39年(行ツ)第110号、平成7年(行ケ)第52号参照)。
そうすると、本件商標より生ずる「ロッカ」の称呼と引用商標より生ずる「ロッカカルデローニ」の称呼とを一連に称呼するときは、その音数の差異とあいまって、その音感、音調が異なり、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛れるおそれはないものである。
(4)小括
そうすると、本件商標の指定商品において、引用商標の指定商品に含まれるものがあるとしても、本件商標と引用商標とは、前記のとおり、その外観、称呼及び観念のいずれよりみても非類似の商標であるといわざるを得ず、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)周知・著名性の立証
請求人が提出した甲各号証によれば、引用商標は、一定程度の周知性は認められるとしても、未だ周知商標又は著名商標とは認めることができないものであり、請求人において、商標審査基準に定める、その商標の需要者の認識の程度を推定し、その大小ないし高低等により識別力の有無を判断するに足りる証拠方法としての a)実際に使用している商標並びに商品又は役務 b)使用開始時期、使用期間、使用地域 c)生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)などに関する十分な証拠を提出しているとは認められないところである。
すなわち、請求人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標、参考商標及び「ROCCA」ブランドは、ロッカ社の小売店(ブティック)の店名や宝石・宝飾品及び腕時計のブランドとして、イタリア国及び日本国内において周知・著名性を獲得した商標となっていたものである旨主張するのみであって、それらを立証するに足りる前記の証拠を提出しているとは必ずしもいえないのである。
そして、請求人提出の甲各号証に徴するに、引用商標及び参考商標と同一の態様の商標を発見することはできないこと、また、「ROCCA」ブランドとは、いかなる態様の標章を特定するものであるかについても明白でない。
したがって、少なくとも、引用商標が本件商標の登録出願時及びその登録査定時においても、ロッカ社の小売店(ブティック)の店名や宝石・宝飾品及び腕時計のブランドとして、イタリア国及び日本国内において周知・著名性を獲得した商標となっていたものであることについて、十分に立証されていない。
(2)具体的使用事実
請求人は、150年もの歴史をもつ「ROCCA」と「CALDERONI」の両ブランドが、今日1つになり、気品・名声・階級及び専門技術を兼ね備えた宝石・宝飾品や腕時計などの高級ブランドとして、極めて高い名声を獲得しているものである旨主張しているが、その詳細な記述に合致するものを甲第14号証の2及び甲第20号証において、発見することはできなかった。
また、請求人は、「現に、この『ROCCA』と『CALDERONI』のブランドを1つに表した引用商標は、指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品に付されてイタリアのみならず、世界各国で盛大に販売されてきたところである。」旨主張しているが、甲第12号証ないし甲第19号証には訳文の添付がなく、その記述内容の真偽を判断することはできず、また、引用商標と基幹商標とが混在することからしても、かかる請求人の主張は、一貫性がなく、合理的でない。
さらに、請求人は、「日本国内では、東京都港区に1店、横浜市に2店、長野県北佐久郡に1店出店し、各店にて、引用商標等を付した指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品を販売してきた。」旨主張するが、我が国内に所在の各店舗にて、引用商標等を付した指輪やネックレスなどの宝石や宝飾品を販売してきたという事実はない。
また、請求人は、引用商標及び参考商標等を所有するロッカ社をダミアーニ社が買収したことについて、ファッション専門日刊紙「WWD(ウイメンズ・ウエア・デイリー)」やアラブ首長国連邦のビジネス情報サイト「アラビアンビジネスコム」などでも取り上げられ、日本国においてもロッカ社のミラノのモンテナポレオーネ通りの小売店が名店として紹介されるまでに至っている旨主張するが、提出された甲第21号証ないし甲第23号証は、部分翻訳であって、引用商標の周知性について、例えば、生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)が必ずしも立証されているものではない。
(3)小括
そうすると、前記のとおり、本件商標と引用商標とが非類似の商標と判断されること、また、宝石・宝飾品及び腕時計について、引用商標が需要者の間で広く認識されるに至っていたと認められないものであるから、本件商標が「ROCCA」の欧文字よりなるとしても、そのことのみをもって、これに接する需要者が直ちに請求人の業務に係る商品に使用される引用商標を想起又は連想するものとみることはできない。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、該商品が請求人又は同人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
4 商標法第4条第1項第19号について
前記のとおり、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標ではない。
また、請求人は、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドは、本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成18(2006)年ころには、ロッカ社の小売店の店名や宝石・宝飾品及び腕時計のブランドとして、イタリア国及び日本国内において広く知られ周知・著名性を獲得した商標となっていたものであると主張するにとどまり、引用商標が需要者の間に広く知られている事実(使用時期、使用範囲、使用頻度)を示す資料、被請求人が本件商標を使用した場合、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあることを示す、不正目的の認定資料等の提出を行っていないものである。
そして、被請求人の代表者である川上は、甲第25号証の陳述書に対して、「ROCCA」の店舗名の名付けの経緯、商標登録出願の経緯、本件商標の使用により、「ROCCA」ブランドについてフリーライドがないこと及び引用商標に係る事業規模の拡大の計画に多大な影響を与えることがない旨反論している(乙第6号証)。
そうすると、引用商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、また、本件商標と同一又は類似の商標ではない。さらに、不正目的を認定するに足りる証拠の提出もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、当審も、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断するので、以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ROCCA」の欧文字を表した構成からなるものであるところ、該文字が「糸巻き棒、城塞、岩」等の意味を有するイタリア語(小学館 伊和中辞典:乙第2号証)ないしイタリアを含む欧米人の氏(アルファベットから引く外国人名よみ方字典:甲第3号証、「名前資料館」とするウェブページ:甲第4号証)を表すものであることが認められるとしても、これらが我が国の需要者において一般に親しまれているものとはいい難く、かつ、該「ROCCA」の欧文字が、かかる意味を有する語として広く知られているとみるべき証拠も見いだせないから、該欧文字に接する需要者は、特定の意味合いを有する外国語、或いはイタリア人に係る特定の氏を認識するものではないというのが相当である。
これに対して、被請求人は、本件商標を構成する「ROCCA」の欧文字は、「糸巻き棒、城塞、岩」等を意味するイタリア語であるから、本件商標は、特定の意味合いを生ずる旨主張する。
しかし、被請求人は、本件商標の出願手続において、平成18年8月18日受付の意見書(甲第28号証)を提出しているところ、その意見の内容において、「本願商標からは特定の観念は生じません。」との記載があることが認められる。
そうすると、請求人が主張するとおり、被請求人は、本件商標の出願に係る手続において、本件商標から特定の観念が生じないことを自ら主張していたものであるから、そのような被請求人が、本件審判に至って、これと明らかに矛盾する主張をすることは信義則上許されないというべきであり、被請求人の上記主張は採用することができない。
してみると、本件商標は、特定の観念を生じない一種の造語というべきものであり、その構成文字に相応して、「ロッカ」の称呼を生じるものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲(1)のとおり、上部に扇状様の図形を表し、その下に「ROCCA」の欧文字を大きく表し、該「ROCCA」の欧文字と近接して該文字部分の幅と同じ幅に「CALDERONI」の欧文字をやや小さく表した構成からなるところ、その図形部分と欧文字部分とは、これらを常に不可分一体のものとしてみるべき特段の事情を見いだし得ないものであるから、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものである。
しかして、引用商標の構成中の欧文字部分を構成する「ROCCA」と「CALDERONI」の各文字については、前者の「ROCCA」の欧文字は、前記(1)のとおり、特定の観念を生じないものであり、後者の「CALDERONI」の文字は、甲第3号証及び甲第4号証によれば、外国人名ないしイタリア人の氏を表すものであることが認められるとしても、該「CALDERONI」の文字が外国人の氏又は名を表すものとして、我が国の需要者において一般に親しまれているとみるべき証拠を見いだせないから、引用商標の欧文字部分は、直ちに外国人の氏又は名を認識するということができず、構成文字全体をもって特定の観念を生じない一種の造語というのが相当である。
そして、引用商標は、構成文字全体に相応して、「ロッカカルデローニ」の称呼を生ずるものと認められるところ、該称呼は、「ロッカ」と「カルデローニ」の間に一拍おくとしても、「ロッカカルデローニ」の称呼自体が格別に冗長にわたるものでなく、無理なく一連に称呼されるものであって、後半の「カルデローニ」の部分が省略されるようなものではない。
また、引用商標は、その構成中の欧文字部分において、「ROCCA」と「CALDERONI」の各文字部分の大きさが異なるとしても、いずれも書体を同じくし、かつ、文字幅もそろえて併記されているばかりでなく、各文字部分が近接して表されている構成からなるものであるから、かかる構成にあっては、引用商標の欧文字部分が外観上まとまりよく一体的に表してなるものと看取されるものである。
加えて、我が国における引用商標の使用状況をみるに、請求人の提出に係る甲各号証によれば、後記3(1)のとおり、ロッカ社は、東京都内に1店、横浜市内に2店、長野県に1店の小売店を有するところ(甲第12号証等)、これらの店頭写真には、長野県の店頭を除き、「CALDELONI」ないし「CALDERONI GIOIELLI」の欧文字の使用が認められるものの、「ROCCA」の欧文字の使用は見いだせず、長野県の店頭写真に至っては、いかなる標章が使用されているかさえ明らかでない。
また、欧文字で書された2001年ないし2005年のロッカ社に係るカタログ(甲第12号証ないし甲第19号証)は、これらが我が国において配布されたものか不明であるが、仮に、我が国において配布されたものとしてみた場合にあっても、該カタログには、引用商標の下部に、イタリア語で「宝石と時計」の意味を表す(甲第35号証及び請求人の主張)「GIOIELLI E OROLOGI」の小さな文字を加えた基幹商標又は引用商標が多数掲載されているのに対し、「ROCCA」の欧文字は、時計の文字盤(甲第15号証)及びイタリア国内の「トリノ」、「ミラノ」、「マントヴァ」及び「パドヴァ」に所在する店頭に表示されるにとどまるほか、「Why Rocca Calderoni」、「Rocca Calderoni is」のように、「Calderoni」の欧文字と組み合わせて使用されているものがほとんどであるから、引用商標の構成中の「ROCCA」の欧文字部分が独立して本件商標の登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
かかる引用商標ないし「ROCCA」の欧文字の使用状況を踏まえると、我が国の取引者、需要者は、引用商標に接した場合、殊更、その構成中の「ROCCA」の欧文字部分に着目し、これを分離、抽出して取引に資するものということはできず、ほかに、該「ROCCA」の欧文字部分が、独立して認識されるとみなければならない特段の事情も認められない。
これに対して、請求人は、引用商標の欧文字部分において、「ROCCA」の欧文字が大きく表した構成であること、「ロッカカルデローニ」の称呼が冗長であって、2音節になることや中間において「カ」の音が重なること、2つの異なるブランドを1つに表した商標であり、かつ、「ROCCA」の欧文字は、ロッカ社により長年使用されてきた商標であり、ロッカ社の略称を直感することを理由として、引用商標からは、単に「ロッカ」氏の観念や「ロッカ」の称呼をも生じる旨主張する。
しかし、たとえ、引用商標から生ずる「ロッカカルデローニ」の称呼は、中間において「カ」の音が重なるとしても、前述のとおり、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録査定時において、「ROCCA」の欧文字が我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないばかりでなく、引用商標は、「ROCCA」と「CALDERONI」の2つのブランドを組み合わせたものとして、我が国の需要者が理解、把握しているとみるべき事情も見いだせないものであって、引用商標の構成文字全体から生ずる称呼は、無理なく一連に称呼し得るものであり、引用商標の欧文字部分は、「ROCCA」の欧文字が「CALDERONI」の欧文字より大きく表されているとしても、書体を同じくするうえ、いずれの文字部分の幅も同じくし近接して表された構成からなり、外観上、不可分一体に認識、把握されるものであるから、引用商標は、殊更「ROCCA」の文字部分に着目し、これを分離、抽出して商取引に資されるものということはできない。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。
そうすると、引用商標の構成中の欧文字部分は、その構成全体をもって取引に資される不可分一体のものというべきである。
したがって、引用商標は、その構成中の図形部分はもとより欧文字部分が特定の観念を生じない一種の造語というべきものであり、その構成文字に相応して、「ロッカカルデローニ」の称呼のみを生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の比較
そこで、本件商標と引用商標の欧文字部分とを比較するに、両者は前記構成のとおり、「CALDERONI」の欧文字の有無からして、外観上明らかに区別できるものであり、これに相応して生じる称呼も当然に「カルデローニ」の音の有無から構成音数の差違が顕著であり、称呼上相紛れるおそれはないものである。また、両者は、前記のとおり、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念については、比較することができない。
(4)小括
そうすると、本件商標と引用商標とは、これを同一又は類似の商品に使用しても、需要者をして当該商品が同一の事業主の製造販売に係る商品であるかのように商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当であるから、本件商標は、引用商標に類似する商標であるということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
これに対して、請求人は、判決や審決を引用して本件商標と引用商標は類似すると主張しているが、判決・審決例で取り上げられている各商標の構成やかかる使用状況などは、いずれも本件とはその構成や状況などを異にするばかりでなく、商標の類否判断は、各商標につき個別具体的に判断されるべきのものであるから、請求人が挙げるような事例があるからといって、本件商標と引用商標についての上記判断が左右されることにはならない。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標等の周知・著名性
請求人は、引用商標、参考商標及び「ROCCA」のブランドは、イタリア国威及び日本国内において、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、ロッカ社のブランドを表示するものとして周知・著名性を獲得した商標となっていたと主張するところ、同人のいう「『ROCCA』のブランド」とは、要するに、「ROCCA」の欧文字(以下「ROCCA」標章という。)を指すものと解される。
そこで、引用商標、参考商標及び「ROCCA」標章(以下「引用商標等」という。)に関し、本件商標の登録出願時である平成18年2月9日及び登録査定時である同年11月30日において、その周知・著名性が甲第12号証ないし甲第24号証により立証し得たかについて検討する。
ア 甲第12号証及び甲第13号証は、前者が表紙頁から16頁まで、後者が17頁以降の抜粋頁に分割された「2001年ロッカ社カタログ抜粋」の写しとするものであり、基幹商標が表紙、2頁、5頁、7頁、9頁、10頁、15頁に掲載され、引用商標が指輪、ネックレスなどの宝飾品と共に16頁ないし19頁、22頁、23頁、54頁、55頁、76頁、77頁、86頁、90頁、108頁、109頁及び110頁に掲載されている。
また、6頁には、「BOUTIQUES」の見出しの下、「ROCCA」の欧文字が表示された建物の写真(8頁に掲載されたミラノ店の拡大写真と解される。)が掲載され、さらに、店頭写真を17個掲載した8頁ないし11頁には、店頭に「ROCCA」の欧文字を表示するものが「トリノ」、「ミラノ」及び「マントヴァ」に所在すること、同じく「ROCCA1872」と掲載するものが「パドヴァ」に所在することの掲載が認められるほか、その余の「東京」、「横浜」、「バンコク」の店舗には、「CALDERONI」ないし「CALDERONI GIOIELLI」の文字が掲載されており、「長野」の店舗に使用されている標章は見当たらない。
そして、当該カタログには、これら店頭写真以外に「ROCCA」標章及び参考商標を使用していたような具体的な事実を見いだすことができず、さらに、かかるカタログが配布された地域は、明らかでない。
イ 甲第14号証の1は、「2002年ロッカ社カタログ抜粋」の写しとするものであり、表紙に引用商標の欧文字部分が掲載されているほかは、基幹商標が指輪、ネックレスなどの宝飾品とともに掲載されていることが認められる以外、引用商標の欧文字部分、参考商標及び「ROCCA」標章については、その掲載を見いだせない。
そして、最終葉には、「CopyrightR(審決注:「R」は、○内に付されている。以下「R」と表す。)2002 by Rocca S.p.A.」と記載されている。
また、甲第14号証の2は、同号証の1の3葉目にある頁とその訳文であり、その訳文には「貴重な話」との表題で、ロッカ社について、1872年に腕時計屋としてミラノで創業したアルベルト・ロッカ(Alberto Rocca)とその工房に関連すること、同じく1840年にミラノで創設されたカルデローニ宝石店(Caldeloni Jewels)に関連することや、これらが一つの存在となり店舗チェーンが作り出された旨の記述がされているが、その統合された時期やその後の各店舗における店名ほかその営業状況などは不明である。
しかして、かかるカタログが配布された地域は、明らかでない。
ウ 甲第15号証は、「2003年ロッカ社カタログ抜粋」の写しとするものであり、表紙以下4葉目、7葉目、9葉目、12葉目、14葉目、16葉目、18葉目、20葉目、22葉目、25葉目、26葉目、28葉目、30葉目ないし32葉目に基幹商標が掲載され、また、引用商標が刻印された指輪(18葉目等)などの宝飾品が掲載され、さらに、10葉目に、時計の文字版に「ROCCA 1872」の文字が横書きで表示されていることが認められるほか、当該カタログには、「ROCCA」標章及び参考商標の具体的な使用を見いだすことができない。
そして、7葉目にイタリア国内のトリノに2店、ミラノに2店、そのほかに7店、スイス国内に2店、日本国内の東京都に1店、横浜市に2店、長野県に1店及びタイ国内のバンコクに1店の計18店の小売店の所在地についての記載がされている。
また、最終葉には、「CopyrightR 2003 by Rocca S.p.A.」と記載されている。
しかして、かかるカタログが配布された地域は、明らかでない。
エ 甲第16号証及び甲第17号証は、分割された「2004年ロッカ社カタログ抜粋」の写しとするものである。
甲第16号証には、表紙、2葉目、5葉目、7葉目、8葉目、10葉目、12葉目、14葉目、16葉目及び18葉目に基幹商標が掲載されているほか、引用商標が刻印された指輪(9葉目等)などの宝飾品が掲載されていることが認められるが、当該カタログには、「ROCCA」標章及び参考商標の具体的な使用を見いだすことができない。
また、3葉目にイタリア国内のトリノに2店、ミラノに2店、そのほかに8店、スイス国内に2店、日本国内の東京都に1店、横浜市に2店、長野県に1店及びタイ国内のバンコクに1店の計19店の小売店の所在地についての記載がされている。
甲第17号証には、2葉目、4葉目、6葉目、10葉目、11葉目、14葉目及び15葉目に基幹商標が掲載されているほか、引用商標が刻印された指輪(5葉目等)などの宝飾品が掲載されていることが認められるが、当該カタログには、「ROCCA」標章及び参考商標の具体的な使用を見いだすことができない。
また、最終葉には、「CopyrightR 2004 by Rocca S.p.A.」と記載されている。
しかして、かかるカタログが配布された地域は、明らかでない。
オ 甲第18号証及び甲第19号証は、分割された「2005年ロッカ社カタログ抜粋」の写しとするものである。
甲第18号証には、表紙、16葉目、18葉目及び20葉目に基幹商標が掲載され、引用商標が刻印された指輪(18葉目)などの宝飾品が掲載されていることが認められるほか、頁の中央部に横書きされた黒色の帯に、白抜きで「Why Rocca Calderoni」(4葉目)、「Rocca Calderoni is」(11葉目)と掲載されていることが認められるが、当該カタログには、「ROCCA」標章及び参考商標の具体的な使用を見いだすことができない。
また、13葉目にイタリア国内のトリノに2店、ミラノに2店、そのほかに10店、スイス国内に2店、日本国内の東京都に1店、横浜市に2店、長野県に1店及びタイ国内のバンコクに1店の計21店の小売店の所在地についての記載がされている。
甲第19号証には、2葉目、4葉目、9葉目、11葉目及び12葉目に基幹商標が掲載されているほか、引用商標が刻印された指輪(5葉目等)などの宝飾品が掲載されていることが認められるが、当該カタログには、「ROCCA」標章及び参考商標の具体的な使用を見いだすことができない。
また、最終葉には、「CopyrightR 2005 by Rocca S.p.A.」と記載されている。
しかして、かかるカタログが配布された地域は、明らかでない。
カ 甲第20号証の1は、「ダミアーニグループ平成20(2008)年9月16日報道資料及び翻訳文」とするものであるところ、その訳文には、「2008年9月16日(ミラノ発)」として、ダミアーニ社がロッカ社を買収すると発表したことや、「Roccaグループは、イタリア全土にわたる屈指の流通網として、高級宝石・腕時計の部門において全国的規模に確立されており、1794年の創業時にRocca一族が時計製造業において始めたものであり、後に皇室の公式供給者となった。」、「Roccaは、超一流の宝石・腕時計ブランドの小売りを行っており、そのブランドを通して伝統と歴史をプラスの評価へと変えたグループにまさしくふさわしい。・・・全体としてイタリア的スタイルの優秀さに焦点を当て続けることにより、国際的な認知と評価を獲得した。」などの記述が認められる。
しかして、かかる報道資料が配布された地域は、明らかでない。
キ 甲第20号証の2は、「『Historical shop and places of Turin』第140頁及び翻訳文」とするものであるところ、1葉目は、「negozi e locali storici di torino」と題する書籍の表紙の写し、2葉目は、「73 Rocca」の見出しが記載された140頁の写し、3葉目は、該第140頁の英訳、4葉目は、その和訳と解されるものである。
そして、4葉目の訳文には、「宝石と金細工職人 73 Rocca」を見出しとして、アルベルト・ロッカやトリノ市の店舗に関する紹介などの記述が認められる。
なお、1葉目の表紙の左側に黒く欠けた「2006」の表示があるが、奥付やその訳文の添付もないから、その発行日及び発行地域などは明らかでない。
ク 甲第21号証は、「Borsa Italiana『DAMIANI』頁及び部分翻訳文」とするものであり、その訳文には、「会社説明」を見出しとして、ダミアーニ社を説明する中に「世界で最も著名な時計と宝石の国際ブランドの小売り販売において、200年以上にわたる専門的知識を有するイタリアの一流チェーンであるRocca1794(ロッカ1794)を所有している。」旨記載されていることが認められる。
そして、甲第21号証は、イタリアにおける会社情報にあっての「ダミアーニ社」を紹介するものとみられ、左端中段に「Update:12/06/09」の記載があることから、平成21(2009)年6月12日の情報と解される。
ケ 甲第22号証は、「平成20(2008)年10月1日付け『WWD』記事及び部分翻訳文」とするものであり、その訳文には、「Damiani(ダミアーニ)社、至福の販売契約に署名」の表題の下に、「ブランド『Calderoni(カルデローニ)』1840」の再生、Rocca SpA(ロッカ ソシエテ、ペル、アチオニ)小売店チェーンの買収」と記載されていることが認められる。
しかして、かかる記事が配布された地域は、明らかでない。
コ 甲第23号証は、「アラビアンビジネスコム記事(HP)及び部分翻訳文」とするものであり、その訳文には、「2009年7月15日(水)アラブ首長国連邦時間11時29分」として、「9月に最高級宝石時計小売店チェーンであるRocca SpA(ロッカ ソシエテ、ペル、アチオニ)社を981万ドルで買収したことは、ダミアーニ社の世界制覇の兆しであり、イタリアとスイスにある直営店22店舗が加わり、小売売上高を三倍増させる見込みである。」と記載されていることが認められる。
サ 甲第24号証は、「『ちょい枯れおやじの腕時計指南』HP」とする個人のウェブページの写しであり、「2006年3月下旬、土曜日で天気も晴れ、ということでミラノの繁華街は相変わらず賑わう。・・・そんなモンテナポレオーネに面した名店の一つに、”ROCCA CALDERONI”がある。・・・やはり『時計店』は良い。”PISA”と並ぶイタリアの老舗。Rolexや、Patek Philippe等の正規代理店でもあるこの店で・・・」と記載されていることが認められる。
シ 以上のアないしサの認定事実及び請求人の主張によれば、以下のように判断するのが相当である。
ロッカ社は、時計製造業として1794年に創業、後に皇室の公式供給者となり、以来、時計と宝石の小売販売を行い、イタリア、スイス、日本及びタイに直営店を22店舗有していたが、平成20(2008)年9月にダミアーニ社に買収されている(甲第20号証の1、甲第23号証)。
そして、ロッカ社に係る欧文字で書されたカタログには、指輪、ネックレスなどの宝飾品について基幹商標及び引用商標が多数表示されており、該欧文字は、そのほとんどが英語表記とも異なること、ロッカ社がイタリアに在することからすれば、これらのカタログが主にイタリア国内において使用されていたと推測し得るものである。
そこで、「ROCCA」標章についてみるに、甲第12号証ないし甲第19号証のカタログに該標章が独立して使用されている例は、時計の文字盤に表示(甲第15号証)されているほか、イタリア国内の「トリノ」、「ミラノ」、「マントヴァ」及び「パドヴァ」に所在する店頭にも表示されているものであるが、そのほかは、上記のとおり、基幹商標ないし引用商標、「Why Rocca Calderoni」、「Rocca Calderoni is」のように、「Calderoni」の欧文字と組み合わせて使用されているものがほとんどである。
なお、イタリア以外の小売店についてみるに、スイス国内に2店、日本国内4店及びタイ国内に1店の計7店舗であって、東京及び横浜における各店頭においては、「CALDERONI GIOLETTI」の表示が認められるものの、「ROCCA」標章が表示されていたことまでは認められないものであり、長野店に至っては、いかなる標章が使用されているか明らかではない(甲第12号証)。
また、平成20(2008)年9月にダミアーニ社がロッカ社を買収したことや両社に関する企業情報の記述(甲第20号証の1、甲第21号証ないし甲第23号証)、「Rocca」の見出しの下で、トリノ市に所在する宝石と金細工商の老舗としての紹介(甲第20号証の2)がされていることなどは認められるが、いずれも本件商標の登録出願後のものであるばかりか、報道資料(甲第20号証の1)は、ダミアーニ社の作成になるものであって、客観性に乏しいものといわざるを得ないものであり、第三者によって作成された記事は、わずかに甲第21号証ないし甲第23号証のみである。そして、トリノ市の店舗についての書籍(甲第20号証の2)にあっても、トリノ市にある他の店舗とともにロッカ社の2店舗中の一店舗が掲載されたにとどまるものである。
さらに、我が国においてもミラノの小売店が名店として紹介されるまでに至っているとして提出された個人のウェブページ(甲第24号証)は、ミラノの小売店に関する記述であることが認められるが、その店名も「”ROCCA CALDERONI”」と記載され、「ROCCA」標章が単独で紹介されているものでもない。
加えて、ロッカ社に係るカタログ(甲第12号証ないし甲第19号証)は、欧文字によって書されているものであって、我が国において配布されたものであるか否かは明らかではなく、その配布地域、配布部数及び配布期間などが不明であり、また、請求人の提出に係る甲各号証によっては、ロッカ社あるいはその小売店に関する営業状況(販売数、売上高など)、宣伝広告の実績(期間、地域、回数など)などの取引状況も明らかではない。
以上によれば、ロッカ社は、「イタリアの一流チェーンであるRocca1794」と紹介(甲第21号証)されていることを勘案すると、同人の使用に係る基幹商標及び引用商標は、イタリアにおける需要者の間において一定程度知られているものと推測することができるが、ロッカ社の使用する商標は、上記のとおり、基幹商標及び引用商標を主とするものであり、「ROCCA」標章の使用は、わずかに時計ほか、イタリア国内の店舗を中心に使用されるにとどまるものである。
そうすると、請求人の提出に係る証拠をもって、直ちに基幹商標及び引用商標等は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ロッカ社の業務に係る時計、宝飾品に使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
(2)出所の混同のおそれ
本件商標と引用商標等とは、たとえ、使用に係る商品及び需要者を同じくするものであるとしても、前記2(4)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるうえ、前記(1)シのとおり、基幹商標及び引用商標等が本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国の需要者の間において広く認識されていたものではないことから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、基幹商標及び引用商標等を連想又は想起するものとはいえず、請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
4 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標等との類似
本件商標は、その外観、称呼及び観念において、引用商標と類似する商標でないこと、前記2で認定したとおりである。
一方、本件商標と「ROCCA」標章とは、つづり字を同じくするものであるから、これらは同一又は類似するものである。
(2)引用商標等の周知性
前記3(1)アないしサで認定した事実によれば、基幹商標及び引用商標等は、同シのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
次に、イタリアにおける需要者の知名度についてみるに、基幹商標及び引用商標は、前記3(1)シのとおり、かかる需要者の間において一定程度知られていたと推測されるものである。
しかして、発行年月日が明らかでないロッカ社のトリノ市在の店舗を老舗として紹介する書籍(甲第20号証の2)、本件商標の登録出願後に係る「世界で最も著名な時計と宝石の国際ブランドの小売り販売において、200年以上にわたる専門的知識を有するイタリアの一流チェーンであるRocca1794(ロッカ1794)・・・」(甲第21号証)及び「9月に最高級宝石時計小売店チェーンであるRocca SpA(ロッカ ソシエテ、ペル、アチオニ)社・・・」(甲第23号証)と掲載された各記事からすると、少なくともイタリア国において、ロッカ社は、時計、宝石等を取り扱う小売商として知られていることを推測し得るものであるが、前記3(1)のとおり、ロッカ社が同人の業務に係る商品に表示する商標として使用するものは、その多くが基幹商標及び引用商標であって、「ROCCA」標章は、甲第15号証のカタログ中に掲載された時計の文字盤、イタリア国内の「トリノ」、「ミラノ」、「マントヴァ」及び「パドヴァ」に所在する店頭に表示されている(甲第12号証)ことが、わずかに認められるにすぎないものである。
そうすると、請求人の提出に係る証拠によって、「ROCCA」標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ロッカ社の業務に係る商品を表示するものとしてイタリアにおける需要者の間に広く認識されていたということはできない。
(3)不正の目的について
ア 請求人は、被請求人が宝石、宝飾品及び時計の小売を行う業者であるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時である平成18(2006)年ころには、引用商標等がロッカ社のブランドとしてイタリア及び我が国において広く知られた商標であったことは熟知していたというべきであり、これは、平成15(2003)年7月ころの出店以前において、被請求人の同月ころの鹿児島市の出店に際し、同人の現常務取締役である川上幹生(以下「川上」という。)の強い希望に押され、また、被請求人を応援する意味から、小売店の店名として使用することのみを承諾したのにもかかわらず、本件商標を登録出願したということは、ロッカ社の「ROCCA」のブランドの名声にただ乗りする意図を有していたものであり、また、ロッカ社の日本国内の参入を阻止する目的を有していたものであって、さらには、ロッカ社が被請求人を応援すべく「ROCCA」のブランドを小売店の店名として使用するに至った協力と信頼を裏切る信義則に反する意図を有していことは明らかというべきである旨主張し、甲第25号証を提出している。
イ そこで、甲第25号証をみるに、これは、ダミアーニ社の関連会社であり請求人が100%出資する日本法人のダミアーニ・ジャパン株式会社(以下「ダミアーニジャパン社」という。)の管理本部長、高橋信義(以下「高橋」という。)による平成21年7月17日付け陳述書であるところ、その一部には、要旨次のような記載がある。
(ア)ダミアーニ社の代々の社長は、代々ロッカ社の社長と深い親交を結んできました。
(イ)株式会社鈴屋(被請求人)の川上が福岡市にあったダミアーニのフランチャイズ店で就業したことを契機に、被請求人が鹿児島市内に自社の宝飾の小売店を出店するについて、川上は、ダミアーニの主要取引先であった「ROCCA」という店舗があることを知り、これを店舗名にしたいとの強い希望を出してきました。これを知った、ダミアーニ社の3代目社長グイドー・ダミアーニは、2003年7月ころ、ロッカ社の社長カルロ・フォンタナにこの川上の希望を伝えました。このような経緯で被請求人は「ROCCA」という名前を同人の小売店名として使用することになったと報告されています。
(ウ)このときは、鹿児島におけるダミアーニ及びダミアーニの関連ブランドの将来の発展を考慮し、被請求人を多少なりとも応援してあげようという趣旨で、被請求人の小売店名として使うことに協力したにすぎませんでした。
(エ)グイドー・ダミアーニは、被請求人が「ROCCA」のブランド名で宝石や宝飾品の製造販売をすることや「ROCCA」の商標出願をすることまでは予想もしていないと報告されています。また、カルロ・フォンタナも被請求人が宝石や宝飾品の製造販売や商標出願までするのであれば、同小売店の店名として使用することの承諾すらしなかったと思います。
(オ)ダミアーニジャパン社としても、被請求人の同小売店の出店以前から、福岡のフランチャイズ店を通じ宝飾関係のビジネスとして、被請求人と経営上の意見交換などをしていたと報告されています。出店当時から川上とダミアーニジャパン社とは良好な関係を築いており被請求人は、「ROCCA」という名前を使うことについて、協力を得ただけであることを十分理解していたはずと思われます。
(カ)被請求人は、ロッカ社はもちろん、ダミアーニジャパン社に対して、「ROCCA」のブランド名で宝石や宝飾品を製造し販売することの許諾を求めたこともありませんでしたし、当然、「ROCCA」の宝石や宝飾品などについて商標出願することの許諾を求めたこともありませんでした。ロッカ社はもちろん、ダミアーニジャパン社が被請求人に対し「ROCCA」ブランドの宝石や宝飾品を製造販売することや商標の登録を許諾した事実もありません。
また、被請求人の陳述書(乙第6号証)には、2003年7月にダミアーニ社のグイドー・ダミアーニが鹿児島に来たときに、友好の証として、ほかの名前が決まっていたにも関わらず同人から名付けてもらった旨記載されている。
ウ 前記イの認定事実によれば、高橋の陳述内容は、同人が直接関わったものではなく、報告を受けたものあるいは同人の憶測を述べるにとどまり、陳述書以外にこの報告内容を裏付けるに足りる具体的な事実関係等が全く示されていないものである。
しかし、ダミアーニ社やロッカ社が、かつて被請求人の事業展開に協力した旨述べる事情については、上記のとおり、具体的な事実関係が全く明らかでないものの、高橋は、「出店当時から川上とダミアーニジャパン社とは良好な関係を築いていた」旨述べていること、また、被請求人の陳述書(乙第6号証)によれば、ダミアーニ社の3代目社長グイドー・ダミアーニとは面識があったことが認められるから、平成15(2003)年7月ころに、ダミアーニ社と被請求人の真意が何であったのかという事情はともかく、少なくとも、請求人の親会社であるダミアーニ社のグイドー・ダミアーニが被請求人による店名を「ROCCA」とする宝石や宝飾品、腕時計の小売店についての出店を容認したものと推察することができる。
そして、被請求人が平成15(2003)年7月ころに鹿児島市に宝石・宝飾品や腕時計の小売店を出店したとする時には、ロッカ社は、既に日本において東京、横浜及び長野に小売店を出店しており、同店において、「CALDERONI」ないし「CALDERONI GIOIELLI」の標章を表示しているものの(甲第12号証)、「ROCCA」標章の表示は、認められないものであり、また、ロッカ社は、同年10月2日に引用商標を登録出願し、同15年1月24日にこれが商標登録されているところである。
そのうえ、ロッカ社の使用する商標は、前記3(1)のとおり、基幹商標及び引用商標を主とするものであって、「ROCCA」標章の使用は、わずかに時計ほか、イタリア国内の店舗を中心に使用されるにとどまり、「CALDERONI」の欧文字との組合せがほとんどであること、また、高橋の陳述によれば、ダミアーニ社の関連会社であり請求人が100%出資するダミアーニ・ジャパン社は、「(平成15年7月ころの鹿児島市の)出店当時から川上とダミアーニジャパン社とは良好な関係を築いて」いたうえ、ロッカ社が自社のブランドである「ROCCA」標章を被請求人の小売店の店名に使用することを承諾したとされていることをも総合勘案すると、たとえ、ロッカ社等が本件商標の商標登録までを承諾したものではないとしても、引用商標の登録出願から5年も経過した後の平成18年2月9日にされた本件商標の登録出願自体が、ロッカ社の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の不正の目的をもって使用をするためのものではないといわざるをえない。
むしろ、被請求人は、宝石、腕時計等の小売店を出店した以上、その取り扱いに係る商品について、店名である「ROCCA」の欧文字を使用するのは一般の商取引における通常の行為ということができるものであるから、被請求人は、「ROCCA」の欧文字を安定して使用できることを確保するために本件商標の登録出願をし、商標登録を受けたとみるのが自然である。
そのほか、本件商標は、ロッカ社の「ROCCA」標章の名声にただ乗りする意図や店名として使用するに至った協力と信頼を裏切る信義則に反する意図を有して登録出願された旨の請求人の主張についても、これら事情を併せ考慮するに、本件商標の取得ないし使用を論難する請求人の主張は、根拠不十分であって妥当性に欠けるものといわなければならない。
以上のとおり、本件商標の商標法第4条第1項第19号違反を述べる請求人の主張はいずれも妥当でなく、その理由をもって本件商標の登録を無効とすることはできない。
そうすると、本件商標は、請求人の提出に係る証拠をもって直ちに不正の目的をもって使用をするものに該当するということができない。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識された商標と同一又は類似であるともいえず、かつ、不正の目的をもって使用をするものということもできない。このほか述べる請求人の主張をもって、上記認定を覆すことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
5 結語
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項により、これを無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標

(色彩については、原本参照)

(2)参考商標


審理終結日 2010-02-02 
結審通知日 2010-02-05 
審決日 2010-02-25 
出願番号 商願2006-11028(T2006-11028) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y14)
T 1 11・ 222- Y (Y14)
T 1 11・ 263- Y (Y14)
T 1 11・ 271- Y (Y14)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 渡邉 健司 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 酒井 福造
末武 久佳
登録日 2006-12-22 
登録番号 商標登録第5013294号(T5013294) 
商標の称呼 ロッカ 
代理人 八木澤 史彦 
代理人 鈴木 正夫 
代理人 小椋 崇吉 
代理人 正林 真之 
代理人 富樫 竜一 
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