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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X09
管理番号 1219912 
審判番号 不服2008-32908 
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2010-06-30 
事件の表示 商願2007-127554拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第9類「消火器,消火栓,消防用ホースノズル,水・泡・ガス又は粉末を用いた消火設備,およびそれらの部品並びに付属品」を指定商品として、平成19年12月27日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同20年9月16日付け手続補正書により、第9類「消火器,およびそれらの部品並びに付属品」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、赤色正方形図形内に、指定商品との関係において、消火器及び火と思しき図形を白抜きして表示してなるものであるところ、両図形に酷似した図形がJIS規格において消火器や火を示す図形として用いられていることからすれば、本願商標を補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質(内容、機能)、形状、用途を表したものと理解するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知(要点)
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、請求人に対して通知した職権による証拠調べの結果は、以下のとおりである。
1 JIS(日本工業規格)における記載
(1)別掲(2)(ア)(以下、(2)を省略する。)のとおり、消火設備のある場所の表示又は消火器自体を表示する、赤地に白ぬきの消火器の側面図が、安全図記号として使用されている(日本規格協会発行「JIS 案内用図記号 JIS Z8210」19頁)。
(2)別掲(イ)が、防火標識の消火器を表す図記号標識として使用されている(日本規格協会発行「JIS 安全標識-一般的事項 JIS Z9104」8頁)。
(3)別掲(ウ)が、消火器を表す建災防統一安全標識として使用されている(日本規格協会発行 「JISハンドブック 図記号」1986年4月12日 1053頁)。
(4)別掲(エ)の絵記号が、火を表す絵記号として使用されている(日本規格協会発行「JIS コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則 JIS T0103」34頁)。
(5)法規で定められた危険物の輸送過程において、取扱い者などの安全をはかり、船舶、航空機、車両その他輸送関連機器および他の貨物に対する損傷事故を防止するため包装に施す表示マーク中に、「可燃性ガス、引火性液体、可燃性固体、自然発火しやすい物質、水と作用して可燃性ガスを発生する物質、酸化性物質、有機過酸化物」の表示とともに、炎の図形が、別掲(オ)のとおり使用されている(前掲「JISハンドブック 図記号」793頁及び794頁)。
(6)安全標識は、「安全色と幾何学的形状を組み合わせた基本形によって、一般的な安全のメッセージを伝え、図記号を加えることによって、特定の安全のメッセージを伝える標識」と定義されているところ、消防器具及び消火器に使用される防火を意味する安全標識については、別掲(カ)のとおり、安全色が赤色、幾何学的形状として正方形及び横長長方形、対比色及び図記号が白色とされている(日本規格協会発行「JIS 安全色及び安全標識-産業環境及び案内用安全標識のデザイン通則 JIS Z 9101」2頁及び4頁)。
2 書籍における記載
(1)普通火災(木材、紙、布などが燃える火災)、油火災、電気火災(電気設備や器具などが燃える火災)の表示とともに、炎とその炎の発生原因となる対象物が、別掲(キ)のとおり図形で示されている(東京都消防設備協同組合編集・発行 「消火器マニュアル」3頁)。
(2)消火器購入時の注意点「消火器は、国家検定合格品を選ぶこと。」の記載とともに、消火器が、別掲(ク)のとおり図形で示されている(前掲「消火器マニュアル」3頁)。
(3)消火器による消し方のポイントのイラストに、消火器と炎の組み合わせが、別掲(ケ)のとおり図形で示されている(前掲「消火器マニュアル」7頁)。
(4)泡消火設備に関する用語及び蓄積機能に関する用語の説明のイラストに、炎が、別掲(コ)のとおり図形で示されている(株式会社学芸出版社発行 「イラストでわかる消防設備士用語集」79頁、113頁)。
(5)消火器具の設置・維持の基準中「建築物のどの場所からも、歩行距離20m以内の場所に設置すること」の記載とともに、消火器と炎が、別掲(サ)のとおり図形で示されている(株式会社学芸出版社発行 「イラストレーション消防法(建築物)」35頁)。
3 インターネットにおける検索
(1)「FOTOSEARCH」のウェブサイトにおいて、「クリップアート-火、火、消火器」の記載とともに、消火器と炎の組み合わせが、別掲(シ)のとおり図形で示されている
(http://www.fotosearch.jp/LIQ119/vl0004b032/)。
(2)北海道池田町のウェブサイトにおいて、「消火器の種類」の標題のもと、「消火器には下記のような種類・特徴があります。」の記載とともに、消火器と炎が、別掲(ス)のとおり図形で示されている
(http://www.town.hokkaido-ikeda.lg.jp/page_2654.html)。
(3)松本市のウェブサイトにおいて、「消火器の使い方」の記載とともに、消火器と炎が、別掲(セ)のとおり図形で示されている
(http://www.city.matsumoto.nagano.jp/bosai/taisaku/bousaikasaiwofusegu/index.html)。
(4)「FOTOSEARCH」のウェブサイトにおいて「写真館、イメージ館-火、消火器」の記載とともに、消火器が、別掲(ソ)のとおり図形で示されている
(http://www.fotosearch.jp/CSP194/k1948073/)。
(5)「FOTOSEARCH」のウェブサイトにおいて、「グラフィックアート-火、消火器」の記載とともに、消火器が、別掲(タ)のとおり図形で示されている
(http://www.fotosearch.jp/OMU118/01p0356/)。
(6)「アヤハディオ ネットショッピング」のウェブサイトにおいて、「エアゾール式簡易消火具ファイヤー・バスター」という製品の側面に、炎とその炎の発生原因となる対象物が、別掲(チ)のとおり図形で示されている
(http://www.ayahadio.jp/search/img.asp?shopcd=17341&item=4931554600599)。
(7)「買う市ショッピング」のサイトに「簡単消火器『ボンペットBP100』」という製品があり、「自動消火」という製品の使用方法の記載とともに、炎が、別掲(ツ)のとおり図形で示されている
(http://mall.cau1.com/t/unicom/item5349644.html)。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
前記第3の「証拠調べ通知」に対して、請求人は、平成22年3月17日付け意見書において、以下のように述べている。
1 JIS規格の案内用図記号に示されている消火器の図形及びJIS規格の案内標識に示されている消火器並びにJISハンドブック図記号に示されている消火器の図形と本願標章の一部に使用されている消火器の図形とは、ハンドル部分の形状やホースの形状などで明らかに区別できる。また、炎の図形及び消火器と思しき図形と炎の図形の配置には充分なオリジナリティが認められるものであり、さらに、消火器と思しき図形と炎の図形を、左右に並べて配置することにより不離一体のものとして組み合わせたものは、引用された各資料には、「インターネットにおける検索」の項目(1)の図形(別掲(シ))を除いては表現されていない。また、この図形に記載されている消火器及び炎の形状は、本願商標における消火器及び炎の形状とは、相違しており、本願商標の図形には充分なオリジナリティが認められる。さらに、消火器と炎の図形を不離一体のものとして組み合わせること自体が、消火器という商品を普通に表示する域を脱している。
2 「書籍における記載」の項目(1)ないし(5)、「インターネットにおける検索」の項目(2)ないし(7)までに示されているイラスト図形(別掲(キ)ないし(サ)、(ス)ないし(ツ))は、消火器の使用方法や火災の種類を単に示しているだけであり、これをもって、具体的な消火装置を感じさせるという機能はない。
3 本願商標である「赤色の正方形内に配された、消火器と思しき白抜きれた図形及び炎と思しき白抜きされた図形」からは、炎を思わせる図形と消火器を想像させる図形の2つのものから消火装置や消火器を想像させるのである。この場合、「想像させる」ということは、商品の「品質・用途」を間接的に表示していることに他ならないのであるから、商標法第3条第1項第3号の規定に該当しないものである。
4 図形商標にあっては、一見して、その商品がどのようなものかを消費者に認識させることも1つの大きな機能であると考えられるのであるから、指定商品の「効能」や「用途」を暗示する図形を採用するのは図形商標としては通常行為としてなされることであり、同様の「効能」や「用途」を暗示する図形は1つに特定できるものではなく、多数考えられることからすると、本願商標を登録しても、第3者に不測の不利益を与えるとは考えられない。
5 以上から、本願商標は、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を間接的に表現したものと判断するべきであり、その商品の品質(内容、機能)、形状、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標には該当しない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、別掲(1)のとおり、赤を地色とした正方形内の左側に、消火器とおぼしき白抜きされた図形(以下「本願図形A」という。)を配し、右側に炎とおぼしき白抜きされた図形(以下「本願図形B」という。)を配してなるものである。
ところで、前記第3の証拠調べ通知に記載した事実によれば、日本工業規格において、消火器を表示する図形として別掲(ア)ないし(ウ)が、また、火を表示する図形として、別掲(エ)及び(オ)が、それぞれ制定されている。そして、日本工業規格の案内用図記号の序文によれば、この規格は、不特定多数の人々が利用する場所、建物、印刷物などに、言葉によらない表現による「案内」に用いる図記号を規定したものであるとされている。さらに、図記号は、言語から独立して情報を伝える1つの意味をもつ、視覚的に知覚される図形と定義されている。
このようなことから、この種の図記号は、一見してその表現内容を理解できるような抽象化されたデザインからなることが一つの特徴といえるものである。
そこで、本願図形A及び別掲(ア)ないし(ウ)を比較すると、両者は、ともに消火器の特徴であるといえる消火器本体部分、レバー部分、ホース及びノズル部分を抽象化してなる構成であり、各構成部分の形状が酷似しており、全体としても同一といってよい程に酷似したデザインからなるものと認められ、かつ、白抜きされた図形である点も共通しているものである。
また、本願図形B及び別掲(エ)及び(オ)についても比較すると、両者は、ともに火や炎の特徴であるといえる外炎、内炎を抽象化して表したものと一見して理解させる構成からなるものであり、単に、火や炎であることを認識させる点において共通しているものである。
さらに、赤を地色とした正方形内に、図記号を白色とするレイアウトは、日本工業規格によれば、防火を意味し、消火器などに使用するものとされている(別掲(カ))。
そして、消火器及び炎を抽象化した図形を左右に配し、しかもそれらを白抜きで表した本願商標と構成の軌を一にする図形(別掲(シ))が、イラスト素材を取り扱うウェブサイト上で使用されている。
また、消火器を表す図形は、別掲(ク)、(ソ)及び(タ)のように消火器の説明及び上記のイラスト素材を取り扱うウェブサイト上で使用され、さらに、消火器を取り扱う業界において、炎とそれを消すための消火器を表す図形は、別掲(ケ)、(サ)、(ス)及び(セ)のように消火器の使用方法や設置の説明として使用され、そして、消火器の使用対象となる炎の図形は、別掲(キ)、(コ)、(チ)及び(ツ)のように外炎などを描いた構成で使用されている事実が認められる。
以上のことからすれば、本願商標は、「消火器」及び「炎」を端的に表す図形からなるものと容易に認識させるものであり、そして、炎の図形が消火の対象として描かれ、また、消火器の図形が該商品の取り扱いの説明に使用されるなど、「消火器」及び「炎」を表すものは、生活において特に重要な情報として使用されている実情を考慮すると、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、この商品が「消火器」又は「消火器用の商品」であることを認識させるにすぎず、単に商品の品質・用途を表示するにとどまり、自他商品の識別標識としては機能しないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、日本工業規格の消火器を表示する別掲(ア)ないし(ウ)の図形と本願図形Aとは明らかに区別でき、また、炎の図形及び炎の図形と消火器の図形との配置には充分なオリジナリティが認められる旨主張しているが、別掲(シ)のように、本願商標と構成の軌を一にする使用例があること、また、本願商標を構成するそれぞれの図形と酷似する図形は、前記1のとおり、消火器並びに炎を表すものとして使用されているものであり、たとえ、これらの組み合わせが日本工業規格において制定されていないとしても、ことさら、これらの図形の配置や組み合わせ自体に識別力があるとはいい難いものであることから、請求人の主張は失当である。
(2)請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきと主張するが、それら過去の登録例は、指定商品の内容及び商標の具体的な構成などにおいて、本件とは事案を異にするものであり、また、登録出願された商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるかどうかの判断は、当該商標の構成態様と指定商品に基づいて、個別具体的に判断されるものであって、それらの登録例に拘束される理由はないから、請求人の主張は採用することができない。
3 むすび
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本願商標
(色彩については、原本参照。)


(2)証拠調べ通知において引用した図形(以下、色彩については、原本参照。)
(ア)


(イ)


(ウ)


(エ)


(オ)


(カ)


(キ)


(ク)


(ケ)


(コ)


(サ)


(シ)


(ス)


(セ)


(ソ)


(タ)


(チ)


(ツ)


審理終結日 2010-04-19 
結審通知日 2010-04-23 
審決日 2010-05-10 
出願番号 商願2007-127554(T2007-127554) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎古森 美和 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 大島 勉
酒井 福造
代理人 鈴江 正二 

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