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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025 |
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管理番号 | 1218208 |
審判番号 | 取消2009-300376 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2009-03-30 |
確定日 | 2010-05-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3287113号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第3287113号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNICO」の欧文字と「ユニコ」の片仮名文字とを上下2段に横書きしてなり、平成6年8月4日に登録出願、第25類「洋服,コート」を指定商品として同9年4月25日に設定登録され、同19年4月3日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成21年4月17日にされている。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件商標についての登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人は、通常使用権者であるマツオインターナショナル株式会社(以下「マツオ社」ということがある。)が本件商標を「洋服,コート」について使用しているので本件審判請求は成り立たない旨主張しているが、上記主張は、立証されているとはいえない。 (1)商品パンフレットについて 乙第4号証のパンフレットの版下と称されるものが実際に何時から存在し、印刷され、かつ、それが配布されたのか立証が不十分であり不明である。コンピューターグラフィックス技術によって処理される昨今、提出されたデザイン画を製作すること並びに修正することは簡単に行い得るものである。 また、乙第5号証の請求書に記載されている「Mic・800部」なるものが乙第4号証のパンフレットの版下と称するものを示唆するのかは明らかではない。 (2)本件商標が「洋服,コート」について使用されていなかったことは、以下の点から明らかである。 (ア)被請求人は、乙第4号証のパンフレットの版下には「UNICO」なる文字が入っており、パンフレットに掲載された商品は、2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)の「UNICO」シリーズの商品である旨主張する。 しかし、実際に、本件商標を使用しているとするマツオ社のインターネット上のホームページを検索しても、「Sensounico ショップブランド」のレーベルとして「dedier/デディエ」(審決注:第2文字目の「e」の文字にはアクサンテギュが付されている。以下これを省略して表す。)が「2008年秋冬コレクションよりデビュー」していることがアップデートされ(甲第1号証の34/35)、プレスリリース(甲第1号証の2/35)にも、「2008年3月25日新レーベル『dedier』08AWよりデビュー!」としかなく、「UNICO」シリーズのレーベルの商品は、それ以前からのブランドやレーベルにもラインアップされておらず、2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)」の「UNICO」シリーズの商品を裏付けるものは何ら存在しない。 マツオ社のインターネット上のホームページでは、同社が所有し使用しているブランド(ショップブランド名)、レーベル(シリーズ商品・洋服の商標)をコンセプトを含めて事細かに掲載して宣伝している。しかるに、被請求人が「2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)」の「UNICO」シリーズの商品のためのものであると主張し、パンフレットの表紙に「UNICO」と銘打つほどのシリーズ商品と称されるものがホームページ上の製品紹介にも載せられず、タグ、値札それらの見本も保管されておらず、全くその存在が見当たらないということは不自然なことである。しかも、乙第5号証の請求書の4頁目の2008年7月31日付け伝票No.51905において、「DM(2008’AW-12ブランド21種)」の印刷物59905枚を印刷しているのであるから、その中にも当然「2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)」の「UNICO」シリーズの商品が含まれているものと推測されるが、乙第4号証の版下以外存在しないということは通常あり得ないことであると思われる。 (イ)被請求人は、乙第5号証の請求書の3頁目の伝票No.51905の「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」のうちの「Mic・800部」が乙第4号証の版下を印刷したものであると主張する。 しかし、株式会社パピアプラッツ(以下「パピアプラッツ社」という。)からマツオ社へ出される乙第5号証の請求書には、発注品目がブランド名・レーベル名と共に商品明細として記載されており、特に、パンフレットやダイレクトメールに関しては、必ずといっていいほどブランド名・レーベル名が表記されている。例えば、伝票No.51905には「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」とされており、レーベル「Less/レス」のカタログであることが明記されている。その他にも、No.51901等には「イオコム」、No.51907等には「慈雨」、No.51910等には「センソDM」、No.51905には「M2」等々とブランド毎あるいはレーベル毎の品目を事細かに具体的に記述してパンフレット等の印刷代金が請求されている。 しかるに、被請求人が「2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)」の「UNICO」シリーズの商品のためのパンフレットであるとしながら、「UNICO」シリーズ商品としてのブランドあるいはレーベル名のみが慣習に反して表記されずに、「Mic・800部」と表記されたことは不自然なことである。 したがって、乙第5号証の請求書の伝票No.51905の「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」の「Mic・800部」は、乙第4号証の版下を指すとは限らない。 (ウ)マツオ社は、昭和60年12月に、松尾産業株式会社のアパレル部門を分離独立して、株式会社センソユニコとして設立されたものであり、設立以来使われていた社名「センソユニコ」を2007年8月1日に現在の社名「マツオインターナショナル株式会社」へと社名変更したものである。 その際に、社名として使われていた「センソユニコ」をブランド名として継続していくために、現在展開されているショップ名は引き続き使用して行くことが宣言されている(甲第1号証2、3/35)。つまり、2007年8月1日以前から、「Sensounico/センソユニコ」は、ショップ名(サービスマーク)として使用されており、洋服について使用する商標としては使用されていなかったことは容易に推測される。 また、インターネットの検索エンジン「google」によって、「マツオインターナショナル」を検索キーワードとした検索の結果、5710件もの検索結果が得られたが、マツオ社との関連では、「Sensounico/センソユニコ」の情報は存在しても、「UNICO/ユニコ」なるシリーズの洋服に関する情報はヒットせず(甲第3号証)、「マツオインターナショナル ユニコ」を検索キーワードとした検索結果でも、200件以上の検索結果が得らたが、マツオ社の「センソユニコ」の情報や株式会社センソユニコの情報であって、「UNICO/ユニコ」なるシリーズの洋服に関する情報はヒットしなかった(甲第4号証)。さらに、「ユニコ 洋服」を検索キーワードとした検索の結果も、8010件もの検索結果が得られたが、「センソユニコショップ」に関するものであり、「UNICO/ユニコ」なるシリーズの洋服に関する情報はヒットしなかった(甲第5号証)。 (エ)マツオ社が公表しているショップインフォメーション(甲第2号証)には、日本全国の店舗名とその店舗で扱っているレーベル名の一覧が示されているが、その中には、百貨店向けには「?Sensounico」のショップブランド名を使用しているが、洋服の商標を示すレーベル名としては「UNICO/ユニコ」なるシリーズの洋服を取り扱っている店舗は全く存在しない。 被請求人が「UNICO」シリーズの商品のためのものであると主張しているレーベルブランドの商品でありながら、どの店舗にも取り扱われていないということは不自然である。被請求人は、「当該商品パンフレットは店舗に来店する顧客に頒布されていたものであり、既にその全てを頒布完了してその在庫がないため、版下を提出する」としているが、取り扱っている店舗が存在しないにもかかわらず頒布されたということには矛盾がある。被請求人が主張するように、「UNICO」と銘打たれたシリーズの一連の被服等のパンフレットが印刷・配布されたとすると、単品の商品ではなく、シリーズものとなる規模のブランドの商品を宣伝し発売したとすれば、被請求人の日常の宣伝活動・経済活動の規模、更にはインターネットによる情報の量から判断して、その痕跡がどこかに残されるものであって、真偽を疑わざるを得ない版下のみしか残されていないというのはいかにも不自然といわざるを得ない。 (オ)以上、指定商品「洋服,コート」についての本件商標の使用は見受けられず、被請求人は、その事実を立証したとはいえない。 (3)マツオ社は、パピアプラッツ社の2000社以上もの取引先の中でも主要取引先の第3番目に挙げられる同社の主たる取引先である(甲第8号証)。このことから、マツオ社は、パピアプラッツ社にとって、極めて重要な顧客・主要取引先であって、マツオ社の不利益となることはできない立場にあることが推量される。そして、純粋に客観的立場に立てない関係であることを完全に否定できないことを思料すれば、その証明書には全面的な信頼をおくことができず、信ぴょう性が低いものといわざるを得ない。 加えて、パピアプラッツ社においては、データ入稿については、その都度、電子データによる入稿システムを採用しており(甲第8号証)、「データ入稿時のお願い」の中で「入稿データには必ずバックアップを取っておいてください」と注意を促していることから、印刷物の納品後における入稿データの保管責任は、発注者側にあり、パピアプラッツ社側にはないと思料される。パピアプラッツ社は、マツオ社以外にも2000社にも及ぶ取引先を有していることから、社員22名の会社組織でその膨大な入稿データを全て整理し、かつ、保存することは現実には困難であり、その中の膨大な過去の入稿データの中から特定の入稿データの詳細を証明することは不可能と思われる。 しかも、パピアプラッツ社の発行する乙第5号証の請求書からも明らかなように、「Mic・800部」なる印刷物を請け負い、伝票No.51905として納品したことが事実であったとしても、同じ伝票ナンバーで納品されている印刷物は他にもあり、膨大な取引の中での印刷物の特定は納品詳細である商品名で特定する他方法はないと推量される。 したがって、ほぼ1年前に、「Mic」なるタイトルの印刷物を納品したことを証明できても、その版下内容まで証明できる術はなく、版下内容についての証明(乙第7号証)は、信ぴょう性に欠けるものである。 (4)被請求人は、パピアプラッツ社発行の納品書(乙第9号証)から「G001 カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」の品番・品名のカタログが納品されたと主張する。 しかし、「Less・1380部」の表記が、2001年より販売されているSensounicoショップブランドのレーベル「Less/レス」のカタログであることを推認できるとしても、「Mic・800部」の表記は、「Mic」のレーベル・標章のカタログであることを示唆しているにすぎない。 仮に、「Mic」の語が、被請求人の主張する「Matsuo international corporation」の略称であると解釈しても、「Matsuo international corporation」のカタログ、あるいは「Mic」のロゴが表記されたカタログを想起できるにすぎず、「Mic Lifestyle」なる標章を印刷した印刷物が、「Mic」と略称されて納品されたものと推認できたとしても、カタログの「Mic・800部」が直ちに乙第4号証の版下に係る印刷物を真実印刷したことを証明するものではない。 パピアプラッツ社が納品した「G001 カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」の品番・品名のカタログは、乙第4号証の版下とは別の版下に係る印刷物であることを完全に否定できるものではない。 また、被請求人の所有する「SENSO UNICO(センソユニコ)」のブランドは、洋服のブランド情報を提供するウェブページの全4084ブランド(甲第9号証及び甲第10号証)にも挙げられているように周知といえるものと推認されるが、上記ブランド情報の中には「UNICO(ユニコ)」は存在せず、商標権者や通常使用権者と無関係な取引者によって、洋服について「UNICO(ユニコ)」の商標が使われているにすぎない(甲第11号証及び甲第12号証)。 一方、マツオ社は、「SENSO UNICO(センソユニコ)」や「慈雨」、「イム」などの商標を付したタグを洋服、値札などに取り付けて販売している(甲第12号証及び甲第13号証) したがって、実際にカタログを印刷し、本件商標を付した商品を販売したのであれば、商品見本、タグ、値札及びカタログの実物も全く存在せず、自己保有していた版下しか存在しないというのは極めて不自然なことである。 しかも、版下はパソコン上で簡単に作成できる電子データであるから、「SENSO UNICO」のロゴから「SENSO」を切り取って「UNICO」のみを残すような修正をすることは可能である。 したがって、唯一残っている版下が、真実印刷されたものとはいえず、乙第9号証の証明は、それが乙第4号証の版下のものであると信じるに足る合理的かつ十分な証明はなされていない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む。)を提出した。 本件商標は、本件審判請求の登録前3年間、その指定商品中、「洋服,コート」について日本国内において使用されている。 1 被請求人と通常使用権者 被請求人は、マツオ社に対して本件商標についての使用許諾を与えており、本件商標の使用者は、マツオ社である。 マツオ社は、被請求人の関連会社であり、「松尾憲久」が両社の代表取締役を務めている(乙第3号証の1及び2)。 2 本件商標を表示した商品パンフレット 本件商標を使用している事実を明らかにするため、その製造に係る商品パンフレットの版下(乙第4号証)及び当該パンフレットの印刷会社からのパンフレット印刷代金の請求書(乙第5号証)を証拠として提出する。 乙第4号証に示す商品パンフレットの版下は、マツオ社が販売する被服等のパンフレットのものであり、この商品パンフレットは、2008年の秋冬の被服用のものである。当該パンフレットは、800部を印刷したものであるが、既に、そのすべてを頒布完了してその在庫が無いため、ここにその版下を提出したものである。当該パンフレットは、マツオ社が経営する店舗に置かれていたもので、その店舗に来店する顧客に頒布されていた。 当該パンフレットに掲載された商品は、その表紙の左下に大きく「UNICO」の欧文字が表示されているとおり、「UNICO」と銘打たれたシリーズの一連の被服等である。当該パンフレットには、その下部に英語で記載されているとおり、「スカート(Skirt)、ズボン(pants)」の商品が掲載されており、これら商品は、請求に係る商品「洋服,コート」に含まれるものである。 当該パンフレットの裏面の中央には、マツオ社の英文名「Matsuo International Corporation」の記載があり、また、この裏面の印刷範囲外の左上の部分には「08AW MIC LIFEstyle UNICO」の文字があり、このパンフレットが「2008年AUTUMN-WINTER(秋冬用)の「UNICO」シリーズの商品のためのものであることが示されている。 乙第5号証に示すパンフレット印刷代金の請求書は、マツオ社がパピアプラッツ社(埼玉県さいたま市所在)に発注した当該パンフレットその他の印刷代金の請求書である。 上記請求書は、2008年8月18日に発行された複数の案件が多数含まれいるところ、「年月日」の欄が「08 731」と記載されている請求書のうち、「伝票No.」の欄が「51905」と表示されているもので、商品名として「Mic・800部」と記載されている欄が前記パンフレットの印刷に関するものである。 3 本件商標と使用商標 本件商標は、欧文字の「UNICO」と片仮名文字の「ユニコ」とを上下2段に併記してなるものである。 これに対して、乙第4号証に示した商品パンフレットに表示された文字は欧文字の「UNICO」(以下「使用商標」という。)のみであるが、乙第6号証の英和辞典の「uni」の綴りで始まる英単語の発音例に照らしてみれば、使用商標は「ユニコ」と読まれ、かつ、表記されるのが自然なものであるから、本件商標と使用商標とは社会通念上同一の商標と認められるべきものである。 4 商品パンフレットが印刷された事実について (1)乙第7号証に示す証明書は、パピアプラッツ社が乙第4号証に示す版下の商品パンフレットを800部印刷し、2008年7月31日に印刷してマツオ社に2008年7月31日に納品したことを証明したものである。これらの日付及び部数は、乙第5号証に示す請求書に記載のものと一致している。 請求人は、マツオ社はパピアプラッツ社にとって顧客であるから、乙第7号証には全面的な信頼がおけない旨主張する。 しかし、乙第7号証は、パピアプラッツ社の代表者が押印しているのであり、当事者が証明した重要な証拠となり得るものである。 (2)乙第8号証は、本件商標を表示した商品パンフレット(カタログ)の印刷前にパピアプラッツ社からマツオ社へ提示された平成20年7月10日付け見積書である。 当該見積書中、品名が「B4・2つ折り→仕上りB5」、数量が「800」、金額が「150,600」(円)と記載されたものが本件商品パンフレットである。上記カタログは、別件のカタログと同時に見積もられており、これら2件の合計見積金額は、「226,640」と表示されている。 (3)乙第9号証は、パピアプラッツ社が所有する商品パンフレットの納品書(控)の写しであり、納品の日付は「2008年7月31日」、伝票No.は「51905」と表示されている。 その「品番・品名」の欄の3段目には、「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」と表示され、その金額欄には2種のカタログの合計で「226,640」と表示されており、前記見積書におけるカタログ2種の品名、数量及び金額と一致するものであって、当該納品書は、パピアプラッツ社が前記カタログ2種を印刷してマツオ社に納品したことを示す。 この印刷代金の請求書が乙第5号証であり、その「年月日」の欄に「2008年7月31日」(納品日)、「伝票No.の欄に「51905」、商品名の欄に「Less・1380部/Mic・800部」、金額の欄に「Less・1380部」と「Mic・800部」の表示された商品パンフレットの合算の金額である「226,640」の表示がなされたものが前記納品書と一致するものである。 (4)このように、乙第7号証ないし乙第9号証及び乙第5号証により、本件商標を表示した商品パンフレットが真実作成されたことが証明されるものである。 5 パピアプラッツ社とマツオ社の印刷物の依頼等について パピアプラッツ社のホームページ(甲第8号証)において、「データ入稿時のお願い お預かり可能なデータ」として「MO、CD-R」が挙げられているが、マツオ社とパピアプラッツ社とは、印刷の取引に際しては、簡便・迅速性を重視してインターネットを通じて行っている。 また、本件商品パンフレットの場合、マツオ社が作成したデータをそのままパピアプラッツ社が印刷するものであるから、校正の必要もないものである。 したがって、両者の取引形態からすれば、物として残る取引書類が少ないことは自然なものである。 請求人は、パピアプラッツ社がホームページ上で「入稿データには必ずバックアップを取っておいてください。」と注意が促されており、入稿データの保管責任は発注者側にあり、全顧客の入稿データは膨大なものであるから、これをパピアプラッツ社が整理・保存することは不可能であって、同社が発行した乙第7号証は信ぴょう性に欠ける旨主張する。 しかし、上記入稿データに関する注意書は、不測の事態に備えた発注者に対するお願いであり、保管責任がどちら側にあるということではなく、また、膨大なデータであってもコンピュータ内に十分保管可能である。 現実に、当該入稿データは、受注者側も保管していたから証明書を発行したのである。 6 洋服、コートを販売した事実について (1)乙第12号証は、本件商品パンフレットを置いていた14件の店舗のリストである。 (2)乙第13号証の1ないし3は、乙第12号証中の「京阪百貨店くずはモール店」における2008年9月22日、同月27日及び2009年1月14日の売上伝票である。 これら売上伝票の「ブランド」の欄に「MIC LS(unico)」と表示された商品が本件商品パンフレットに記載の商品であって、その左端の品番の欄には本件商品パンフレットに記載の品番が表示されている。上記「MIC LS」の文字は、本件商品パンフレットの表紙右上に表示された「Mic」の文字と「Lifestyle」の文字の略である。 乙第13号証の4は、上記店舗における使用商標を使用した商品タグの半券及び売上報告の取引メモ伝票の写しである。商品タグの半券には、「A384960084010A」の記号が表示されており、2けた目から9けた目の「38496008」の数字が品番であり、これが本件商品パンフレットの2ページ目に掲載された同品番の「Pants」である。 (3)乙第14号証の1は、(株)松菱が経営する「百貨店・津松菱」内店舗(乙第12号証)の2008年8月26日における売上伝票であり、「ブランド」の欄に「MIC LS(unico)」と表示された商品が本件商品パンフレットに記載の商品であって、その左端の品番の欄には本件商品パンフレットに記載の品番が表示されている。 乙第14号証の2は、上記店舗において商品を販売した際、その商品タグの半券を切り取ってノートに貼付した売上記録のノートの写しであり、この半券にも商品の品番が表示されている。 その他、乙第15号証ないし乙第19号証についても、乙第14号証と同様である。 7 請求人の主張について 請求人は、マツオ社のホームページ等において、「UNICO」の文字が表示されておらず、不自然である旨主張する。 しかし、本件商標は、「Mic(Lifestyle)」の文字からなる商標のもとに使用するサブブランドのシリーズ名であるところ、インターネットの検索結果やその他媒体等でみられる「UNICO」の文字の多寡の程度は、被請求人の商品企画の方針又は販売活動等の結果によるものであって、自然不自然の問題ではない。 8 結び 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年間、その指定商品「洋服,コート」について日本国内において使用されているので、本件審判請求には理由がない。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第3号証の1は、被請求人(松尾産業株式会社)の会社履歴書であり、その記載事項によれば、「代表者」の欄には「松尾憲久」とあり、「主な販売先」には「マツオインターナショナル(株)」ほかの社名が記載されている。 また、乙第3号証の2は、マツオ社の会社履歴書であり、その記載事項によれば、「商号」の欄に「マツオインターナショナル株式会社」、「代表者」の欄には「松尾憲久」、「事業所」の欄には本社として「東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目20-10」、「取扱品目」の欄には「婦人服、服飾雑貨、生活雑貨」、関連会社には「松尾産業株式会社」と各記載されている。 (2)乙第5号証は、パピアプラッツ社がマツオ社に宛てた08年8月18日付けの「請求書」の写しであり、パピアプラッツ社の名称及び住所の欄には、同社に係る印影が認められ、その3枚目の最下行の「年月日」、「伝票No.」、「商品名」及び「金額」の各欄に、それぞれ「08 731」、「51905」、「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」及び「226,640」と記載されている。 (3)乙第7号証は、パピアプラッツ社がマツオ社に宛てた平成21年6月1日付けの「証明書」と題する書面であり、「埼玉県さいたま市見沼区東大宮5-35-10 株式会社パピアプラッツ 代表者 天野美恵子」の記載にパピアプラッツ社の代表取締役の印とおぼしき押印がされており、「次の事項は事実の通り相違ないことを証明いたします。」として、「御社の業務に係る商品『洋服、コート』の別紙版下に示す商品パンフレットは、弊社において印刷し、下記の時期に下記部数を御社へ納品したものであること。《納品時期》2008年7月31日 《印刷部数》800部」と記載されている。 そして、別紙として添付された2枚の版下(以下「本件パンフレット」という。)には、1枚目の枠外左上に、「08AW MIC LIFEstyle UNICO」の文字が記載され、左側中央に「Matsuo International Corporation」及び「4-20-10 Sendagaya Shibuya-ku Tokyo」ほかの記載があり、左側中央に記載されたかかる欧文字は、マツオ社の会社履歴書(乙第3号証の2)に記載された商号及び本社の住所を英語表記したものと認められる。 また、1枚目の版下の右上には、やや図案化した「MIC」の欧文字と「Lifestyle」の欧文字、右側の下部には「UNICO」の欧文字がそれぞれ記載されている。 2枚目の版下には、左側に花束を手にした女性の写真が掲載され、その下に、「Skirt(38499013)col.02¥10,290」ほかの記載があり、さらに、右側には、クッションを抱え、ズボンをはいた女性の写真が掲載され、その下に「Pants(38496016)col.10¥10,290」ほかの記載がある。 なお、本件パンフレットである版下を別紙とする証明書には、前記パピアプラッツ社の代表取締役の印影とおぼしき印影の割印がある。 (4)乙第8号証は、パピアプラッツ社がマツオ社に宛てた平成20年7月10日付けの「御見積書」の写しであり、「品名」の欄の2行目から4行目に、「B4・2つ折り→仕上りB5」、「A4・2つ折り→仕上りA5」及び「上記2種同時面付けの場合」と記載され、これらに対応する「数量」の欄には、「800」、「1,380」及び「2,180」、同様に「金額」の欄には、「150,600」、「150,420」及び「226,640」とそれぞれ記載されている。 (5)乙第9号証は、パピアプラッツ社がマツオ社に宛てた08年7月31日付けの「納品書(控)」の写しであり、右上に「伝票No 51905」との記載があり、「品番・品名」の欄の3行目には、「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」、金額の欄の3行目に「226,640」と記載されている。 そして、上記「08年7月31日」、「51950」、「カタログ2種(Less・1380部/Mic・800部)」及び「226,640」の各記載は、乙第5号証の3枚目の最下行の「年月日」、「伝票No.」、「商品名」及び「金額」の各欄の記載と符合するものである。 また、上記「品番・品名」の欄に記載された「1380部」及び「800部」と金額「226,640」は、乙第8号証の数量及び金額とも符合する。 2 前記1の認定事実によれば、以下のとおり判断することができる。 (1)使用商標について 本件商標は、「UNIKO」の欧文字と「ユニコ」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなるところ、その構成中の「UNICO」の欧文字部分は、特定の語義を有しない造語と認められるものであり、また、「ユニコ」の片仮名文字部分は、該「UNICO」の欧文字から生ずる読みを無理なく特定したものと認められるから、本件商標は、「ユニコ」の称呼を生ずるものである。 一方、本件パンフレットに表示された使用商標は、「UNICO」の欧文字を横書きしてなるものであり、これより英語読み風の「ユニコ」の自然な称呼を生ずるものである。 そして、使用商標は、本件商標の構成中の欧文字部分とつづり字を同じくするうえ、「ユニコ」の称呼も同じくするものであるから、本件商標と社会通念上同一というべきである。 (2)本件商標の使用をする商品について 乙第7号証の証明書に添付の本件パンフレットに記載された「Skirt」の文字によれば、請求に係る指定商品中「洋服」の範ちゅうに含まれる「スカート」と認められ、同じく「Pants」の文字は、該文字の上に掲載された衣服を身にまとった女性の写真をも総合してみれば、これも「洋服」の範ちゅうに含まれる「パンツ(ズボン)」というべきである。 (3)本件商標の使用者について 乙第3号証の1及び2によれば、被請求人とマツオ社の代表者は、いずれも松尾憲久であり、同号証の1の「主な販売先」には「マツオインターナショナル(株)」、同号証の2の「関連会社」には「松尾産業株式会社」とそれぞれ記載されていること、さらに、被請求人は、マツオ社に対して本件商標についての使用許諾を与えた旨述べていることからすれば、被請求人は、マツオ社に対して本件商標の使用について黙示に許諾したものと認められる。 したがって、マツオ社は、本件商標に係る商標権の通常使用権者ということができる。 (4)本件商標の使用時期について 乙第5号証の「請求書」3枚目に記載された「伝票No.」の欄の「51905」に対応する「年月日」の欄の「08 731」、乙第7号証の「証明書」に記載された「《納品時期》2008年7月31日」及び乙第9号証の「納品書(控)」に記載された「08年7月31日」によれば、本件パンフレットは、2008(平成20)年7月31日にパピアプラッツ社からマツオ社に納品されたというべきである。 さらに、乙第7号証の証明書に別紙として添付された本件パンフレットの1枚目の枠外左上には、「08AW MIC LIFEstyle UNICO」の文字が記載されているところ、本件指定商品を取り扱う洋服業界においては、季節毎に取扱い商品を入れ替えて、かかる商品を紹介する広告等に、西暦の下2けたと、秋(AUTUMN)から冬(WINTER)の時期を表す「AW」の略語を組み合わせて取引上普通に使用されているのが実情であるから、上記枠外に記載された「08AW」の文字からは、平成20(2008)年の秋冬用を表すものと理解、把握することができるものであり、本件パンフレットは、これが納品された平成20年7月31日以降、遅くとも同年秋頃にはマツオ社によって頒布されたものと優に推認することができる。 そうすると、本件パンフレットは、本件審判の請求の登録前3年以内に頒布されたものというべきである。 (5)小括 前記(1)ないし(4)によれば、通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中、「洋服」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布したというべきである。 (6)請求人の主張等について ア 請求人は、マツオ社はパピアプラッツ社にとって、極めて重要な顧客・主要取引先であって、マツオ社の不利益となることはできない立場にあると推量され、また、パピアプラッツ社は、マツオ社以外にも2000社にも及ぶ取引先を有していることから、膨大な入稿データを全て整理し、かつ、保存することは現実には困難であるから、乙第7号証の証明書は、客観性、信ぴょう性が低い旨主張する。 しかし、たとえ、パピアプラッツ社が膨大なデータを取り扱っているとしても、近時の電子計算機システムの進展にかんがみれば、入稿データの保存・整理がさほど困難なものではないとみるのが自然であり、そして、乙第7号証の証明書には、パピアプラッツ社の代表者名の記載に一部重ねるように同社の代表取締役の印とおぼしき押印がされ、かつ、証明書と添付の版下にも同じ印影の割印がなされているばかりか、その証明内容もパピアプラッツ社とマツオ社の本件パンフレットに係る取引書類(乙第5号証及び乙第9号証)と符合するものであることからすれば、本件パンフレットは、パピアプラッツ社によって、マツオ社に納品されたといわなければならない。 そして、請求人の上記主張は、何らの裏付けとなる証左がなく、独自の推論を述べるにすぎないというほかない。 イ 請求人は、マツオ社はそのホームページに、ブランド及びレーベルを事細かに掲載して宣伝しており、2008年秋冬コレクションよりデビューしているのは「dedier/デディエ」であって、使用商標は、インターネットの検索結果においても、マツオ社による使用が見当たらず、使用商標を付した商品タグ、値札も存在しないのは極めて不自然である旨主張する。 確かにマツオ社は、同人のウェブページ(甲第1号証)において、多数のブランドを掲載していることが認められるが、使用商標のほか、乙第5号証の5枚目に記載された「Mic」又は乙第7号証の版下に表示された「Mic Lifestyle」の各文字についても、かかるウェブページには見当たらないものであるから、マツオ社のウェブページには、同社の使用に係るすべてのブランドが掲載されているものとはいい難いのであって、該ウェブページに使用商標が掲載されていないことをもって、被請求人の提出に係る証拠を不自然ということはできない。 また、商標法第50条第1項の規定による商標登録の取消審判が請求された場合には、いかなる証拠をもって同条第2項所定の要件事実を証明するかは専ら被請求人にゆだねられているのであり、請求人の主張する使用商標を付した商品タグや値札の提出がないとしても、前記のとおり、乙第3号証、乙第5号証及び乙第7号証ないし乙第9号証をもって、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中、「洋服」について本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしたことが認められるものである。 したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 ウ 被請求人は、マツオ社の社員を証人とする証人尋問申立書を提出したが、本件については、証人尋問を行うまでもなく、上記のとおり判断し得るところであるから、証人尋問は行わないこととした。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が請求に係る指定商品中、「洋服」について本件商標の使用をしていたことを証明したものといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-16 |
結審通知日 | 2010-03-18 |
審決日 | 2010-03-30 |
出願番号 | 商願平6-79856 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(025)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
末武 久佳 酒井 福造 |
登録日 | 1997-04-25 |
登録番号 | 商標登録第3287113号(T3287113) |
商標の称呼 | ユニコ |
代理人 | 鮫島 武信 |