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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X05
審判 全部申立て  登録を維持 X05
審判 全部申立て  登録を維持 X05
管理番号 1216487 
異議申立番号 異議2009-900326 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-08-20 
確定日 2010-04-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5232564号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5232564号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5232564号商標(以下「本件商標」という。)は、「メルシー」の文字と「MERCY」の文字を二段に横書きしてなり、平成20年1月30日に登録出願、第5類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成21年4月28日に登録査定、同年5月22日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の要点
(1)商標法第4条第1項第10号
本件商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の使用に係る周知・著名な商標である「MERCK」及び「メルク」(以下「申立人商標」という。)と外観及び称呼において類似するものであって、本件商標の指定商品は、当該周知・著名商標の使用に係る商品「医薬品」等と類似する。
(2)商標法第4条第1項第15号
本件商標は、前記(1)のとおり、周知・著名な申立人商標と称呼及び外観において類似する商標であるから、これをその指定商品について使用するときには、申立人の業務に係る商品「医薬品、試薬、化学製品」等との間に、出所の混同を生ずるおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第11号
本件商標は、以下のアないしエに示す登録商標と外観及び称呼において類似するものであって、本件商標の指定商品は、上記引用する登録商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
ア 登録第496397号商標(以下「引用商標1」という。)は、「Merck」の文字を横書きしてなり、昭和30年5月31日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和32年2月14日に設定登録され、その後、昭和52年8月3日、昭和62年4月17日、平成9年4月18日及び平成19年2月20日の4回にわたり商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、平成20年7月16日に、指定商品を第1類、第2類、第3類、第5類、第10類、第16類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換の登録がされたものである。
イ 登録第5069563号商標(以下「引用商標2」という。)は、「メルク」の文字を標準文字で書してなり、平成18年10月19日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成19年8月10日に設定登録されたものである。
ウ 登録第5172911号商標(以下「引用商標3」という。)は、「メルク」の文字を標準文字で書してなり、平成18年11月2日に登録出願、第1類、第2類、第3類、第5類、第9類、第10類、第16類、第29類、第30類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成20年10月10日に設定登録されたものである。
エ 登録第5172912号商標(以下「引用商標4」という。)は、「MERCK」の文字及び「メルク」の文字を二段に横書きしてなり、平成18年11月2日に登録出願、第1類、第2類、第3類、第5類、第9類、第10類、第16類、第29類、第30類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成20年10月10日に設定登録されたものである。
(4)むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人商標の周知著名性について
(ア)甲第6号証ないし甲第63号証、甲第67号証ないし甲第182号証、甲第190号証ないし甲第248号証、甲第251号証及び甲第252号証によれば、申立人の事業は、1668年に、ドイツ国に天使薬局を開業したことに始まること、1827年に、アルカロイドの大量生産に成功し、1850年には、ドイツ国に申立人の前身であるE.Merck社が設立され、1995年に、ドイツのダルムシュタットに、申立人である「メルク・コマンデイトゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン(Merck KGaA)」が設立されるまでに、1904年に液晶販売の開始、1934年から1942年にかけて、ビタミンC・B1・E・Kの合成生産の成功、1960年代における無毒性のパール顔料の開発などを行い、ヨーロッパに販売網を確立したこと、申立人が設立された1995年以降は、申立人がメルクグループの全事業を統括する中核となる存在となったこと、申立人は、2007年6月30日の時点において、世界63カ国において、約35,000人の従業員を有する世界的規模の製薬及び化学薬品を製造、販売するグループ会社であること、申立人(その前身会社)は、我が国おける事業展開として、1968年に、グループ会社のメルク・ジャパン株式会社(後にメルク株式会社に社名変更)を東京に設立し、その後、パール顔料及び液晶の研究所等を神奈川県や福島県に設立し、これらの商品の製造、販売を開始したこと、また、医薬品の分野では、申立人(及びその前身会社)は、1990年ころから我が国において、高血圧用剤の販売を開始し、2001年には医薬品事業部を立ち上げ、2003年にはアナフィラキーショック補助治療剤を発売、その他、抗がん剤や風邪治療薬などの医薬品の販売を行っていること、申立人の事業は、後発医薬品市場にも進出し、2007年7月の時点において、後発医薬品グループは、世界90カ国に約4,500人の従業員を有し、世界9カ国に9カ所の生産拠点を有している(なお、我が国における申立人の後発医薬品事業は、1998年1月に、保栄薬工株式会社と合併して設立されたメルク・ホエイ株式会社(メルク製薬株式会社に社名変更)により展開された。)こと、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社の略称を表示するものとして、その製造販売に係る化学製品、医薬品等と関連づけて、本件商標の登録出願前に発行又は掲載された新聞、雑誌、インターネット等の記事、様々な論文等に多数掲載されたこと、などを認めることができる。
(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、申立人及びそのグループ会社は、液晶、顔料等の化学製品、医薬品等を製造、販売する企業として、本件商標の登録出願前より、我が国の液晶の需要者たるパソコン・携帯電話・テレビ等の製造業者、顔料の需要者たる印刷インキ・塗料・化粧品等の製造業者、医薬品製造業者及び医薬品関連事業に従業する者などの間には、広く認識されていたものと認めることができる。そして、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社の略称を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、上記需要者の間に広く認識されていたことを認めることができ、また、申立人が医薬品、化学製品等のメーカーとして著名であることを勘案すると、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品「医薬品、化学製品」等を表示する商標としても、本件商標の登録出願前より、上記需要者の間に広く認識されていたものと推認することができる。
イ 本件商標と申立人商標との類否
(ア)本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「メルシー」の文字と「MERCY」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、上段の片仮名文字部分は、造語と認められる欧文字部分の読みを特定したものと理解されるから、構成全体をもって一体不可分の商標を表したものと認識されるというべきである。そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「メルシー」の称呼を生ずるものであって、構成全体をもって、特定の観念を有しない造語よりなるものとみるのが相当である。
(イ)申立人商標
申立人商標は、「MERCK」及び「メルク」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して、「メルク」の称呼を生ずるものであって、化学製品、医薬品等の分野においては、申立人を想起又は連想する場合が多いとみるのが相当である。
(ウ)本件商標と申立人商標との対比
前記認定のとおり、本件商標は、「メルシー」の文字と「MERCY」の文字を二段に横書きしてなるものであるのに対し、申立人商標は、「MERCK」の文字と「メルク」の文字よりなるものであるところ、本件商標中の「MERCY」の文字部分は、申立人商標中の「MERCK」とは、末尾において、文字そのものの形状がさほど似通っているとはいえない「Y」と「K」の差異を有するものであり、また、本件商標中の片仮名文字部分は、申立人商標中の「メルク」とは、末尾部分において「シー」と「ク」の文字の顕著な差異を有するものである。そして、上記差異は、看者に与える印象において大きく相違するものといえるから、本件商標と申立人商標をそれぞれ時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上互いに見誤るおそれはないというべきである。
また、本件商標より生ずる「メルシー」の称呼と申立人商標より生ずる「メルク」の称呼は、末尾部分において「シー」と「ク」の音の差異を有するものであるから、冗長とはいえない両称呼において、上記差異音が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、称呼上互いに聞き誤るおそれはない。
さらに、本件商標は、特定の語義を有しない造語よりなるものであるから、申立人商標とは、観念上比較することができない。
したがって、本件商標と申立人商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
ウ 以上によれば、本件商標は、申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標ということができないから、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
前記(1)認定のとおり、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社の製造、販売に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の需要者の間に広く認識されていたと推認し得るところである。
しかしながら、本件商標は、申立人商標とは、商標それ自体全く別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標に接する需要者は、これより申立人商標を想起又は連想することはなく、したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が申立人及びそのグループ会社又はこれらと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標と認めることはできない。
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記(1)イ(ア)認定のとおり、「メルシー」の文字と「MERCY」の文字を二段に横書きしてなるものであり、これより「メルシー」の称呼を生じ、かつ、構成全体として造語よりなるものである。
これに対し、引用商標1ないし4は、前記2(3)のとおり、引用商標1は「Merck」の文字を、引用商標2及び3は「メルク」の文字を、また、引用商標4は「MERCK」の文字及び「メルク」の文字を二段に、それぞれ横書きしてなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、いずれも「メルク」の称呼を生ずるものであって、化学品、医薬品等の分野においては、申立人を想起又は連想する場合が多いとみるのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし4より生ずる称呼及び観念の類否については、前記(1)イ(ウ)で認定した本件商標と申立人商標より生ずる称呼及び観念についての対比の理由と同様の理由により、称呼は類似しないものであり、観念においては比較することができないものである。
また、本件商標と引用商標1ないし4の外観についてみるに、本件商標と引用商標1ないし3とは、片仮名文字部分又は欧文字部分の有無の差異を有するばかりでなく、本件商標中の欧文字部分において、引用商標1とは、末尾において、文字そのものの形状がさほど似通っているとはいえない「Y」と「k」の差異を有するものであり、また、本件商標中の片仮名文字部分において、引用商標2及び3の「メルク」とは、末尾部分において「シー」と「ク」の文字の顕著な差異を有するものである。そして、上記差異は、看者に与える印象において大きく相違するものといえるから、本件商標と引用商標1ないし3とを、それぞれ時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上互いに見誤るおそれはないというべきである。さらに、本件商標と引用商標4とは、前記(1)イ(ウ)で認定した本件商標及び申立人商標の外観についての対比の理由と同様の理由により、互いに見誤るおそれはないというべきである。
したがって、本件商標と引用商標1ないし4は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2010-03-31 
出願番号 商願2008-6122(T2008-6122) 
審決分類 T 1 651・ 26- Y (X05)
T 1 651・ 25- Y (X05)
T 1 651・ 271- Y (X05)
最終処分 維持  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 2009-05-22 
登録番号 商標登録第5232564号(T5232564) 
権利者 日本臓器製薬株式会社
商標の称呼 メルシー、マーシー 
代理人 藤井 郁郎 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 藤倉 大作 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 辻居 幸一 
代理人 中村 稔 

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