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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効としない Y28
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y28
審判 全部無効 観念類似 無効としない Y28
管理番号 1216379 
審判番号 無効2008-890107 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-31 
確定日 2010-04-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5055603号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5055603号商標(以下「本件商標」という。)は、「BBパワー」の文字を横書きしてなり、第28類「釣り具」を指定商品として、平成18年12月25日に登録出願、同19年6月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録商標は、以下の1ないし3のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。以下、これらをまとめていうときは、単に「引用商標」という。

1 登録第3199225号商標(以下「引用商標1」という。)は、「パワー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成5年6月8日に登録出願、第31類「加工釣り餌・活き餌・その他の釣り用餌」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、同18年6月6日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

2 登録第3245832号商標(以下「引用商標2」という。)は、「パワー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成6年1月31日に登録出願、第28類「ルアー釣り用擬餌に付着させるための釣り用油,ぎじ針・ぎじ餌・その他の釣り具」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録され、その後、同19年1月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

3 登録第4950707号商標(以下「引用商標3」という。)は、「POWER」の欧文字を横書きしてなり、平成17年7月5日に登録出願、第28類「擬餌,その他の釣り具」及び第31類「加工釣り餌,生き餌,その他の釣り用餌」を指定商品として、同18年5月12日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。

1 請求の理由
(1)本件商標について
ア 本件商標「BBパワー」は、欧文字と片仮名文字を結合してなるものであるから、視覚上分離してみられるばかりでなく、その構成中「BB」の文字はローマ字2字よりなるもので、ローマ字の1字又は2字は、一般に自己の業務に係る商品の品番、型式、規格等を表示する記号又は符号として、取引上類型的に採用使用されており、これは釣り具を取り扱う業界においてもみられるところである。
また、本件商標を構成する「BB」と「パワー」の文字は、観念上必ずしも一体不可分のものとしてみなければならない格別の事情も認め難いところである。
そうすると、本件商標において自他商品の識別標識としての機能を果たす要部は、後半部の「パワー」の文字部分にあるものと判断するのが相当である。

イ 本件商標の構成中「BB」の文字は、釣りの業界及び釣りの愛好家の間で、「商品の品番、型式、規格等を表示する記号又は符号」として、また、「ボールベアリング」若しくは「ブラックバス」の略称として一般的に広く知られ使用されている(甲第5号証ないし甲第7号証)。

ウ また、欧文字2字と片仮名文字を結合してなる商標についての審決例(甲第8号証ないし甲第11号証)からみても、本件商標の要部は、後半部の「パワー」の文字部分にあると判断するのが妥当である。

エ してみれば、本願商標を構成する「BB」の文字部分は、自他商品の識別力を有しないか、極めてそれが弱い部分であるといえるから、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標の要部を「パワー」の文字部分にあると理解し、この文字部分をもって取引に当たることも決して少なくないものというべきである。
そうとすれば、本件商標は、その構成中の「パワー」の文字部分に相応して「パワー」の称呼及び観念を生ずるものである。

(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、いずれもその構成から「パワー」の称呼、観念を生ずるものである。

(3)商標法第4条第1項第11号の該当性について
本件商標は、上述したとおり、「パワー」の称呼、観念を生じるものであるのに対して、引用商標も、上述したとおり、いずれも「パワー」の称呼、観念を生じるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、観念において同一又は類似する商標である。
そして、本件商標と引用商標の指定商品は、商品区分第28類の「釣り具」及び第31類の「釣り用餌」において、同一又は類似するものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標中の「BB」部分について
ア 「BB」単独の自他商品識別力について
「BB」部分自体は、ローマ文字のゴシック体を普通に用いられる方法で表示してなるものであるところ、商標審査基準では、「ローマ文字の1字若しくは2字からなるとき、・・・本号の規定に該当する」(七.第3条第1項第5号2.(1))と規定していることから、「BB」部分自体の商標については「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」と判断されるべきものである。
よって、「BB」単独の文字からは自他商品識別力が生じることがなく、「BB」の文字単独でも「識別力を有する」とする被請求人の主張には全く理由がない。

イ 本件商標中における「BB」部分の自他商品識別力について
被請求人は、「需要者から見れば、仮に『BB』という記載があったとしてもそれが、ブラックバスの意味なのか、ボールベアリングの意味なのか、それとも別の意味なのかが不明ということになる」から識別力がないということにはならない旨主張している。
しかしながら、商品に付された「BB」の記号がブラックバスの意味なのか、ボールベアリングの意味なのか、それとも別の意味なのかということと、商標の識別性判断とは全く別の事項であって、被請求人の主張には理由がない。
被請求人の主張に基づくならば、横一本の単純な直線であっても、需要者から見れば漢数字の「一」なのか、ローマ文字の「1」を横にしたものなのか、道路を抽象的に表したものであるのか、それとも別の意味を有するものか意味不明となり、識別力を備えるものとなってしまう。しかし、単純な横一本の線に識別力のないことは論ずるまでもないものである。そして、少なくとも釣りの業界及び釣りの愛好家の間では、本件商標中の「BB」なる文字が「ボールベアリング」若しくは「ブラックバス」の略称として一般的に広く知られ使用されている事実があり、「BB」なる文字を一般的な表現方法で表示したものは、商品「釣り具」について自他商品識別力がないことは明らかである。

ウ また、被請求人は、「『BB』とは、特定の意味をもたない造語である。そうであれば、需要者は、『BB』の文字が商標中に存在する場合、ある特定の製品の種類、用途を直接示す概念であると認識するとまではいえず、識別力がないということにはならないといえる。」と主張している。
しかしながら、「BB」なる文字は、そもそも「造語」ではない。「造語」とは、「新たにことばを造ること」(広辞苑)である。よって、「BB」は、新たな言葉ではなく単なる記号又は符号にすぎないものである。そして、本件商標中の「BB」の部分は、普通に用いられる方法で同大に並べられたローマ字2文字からなるものであるから、釣り具を取り扱う業界においても一般に自己の業務に係る商品の品番、型式、規格等を表示する記号又は符号として、取引上類型的に使用されるものであって「造語」ではない。
したがって、この点において被請求人の主張は失当である。

エ また、被請求人は、「何らかの製品名を示す略称であったとしても、略称の使用が独自の識別力を有することも十分考えられる。」と主張しているが、「BB」の使用が「独自の自他商品識別力を有する」ことについての証拠が全く示されておらず、また、被請求人主張の如き事実は全くないものであるから、被請求人の上記主張は根拠がなく、被請求人の独断によるものであって理由がない。

オ また、被請求人は、「引用審決例は、いずれもアルファベット部分を除いた部分が・・・それ自体識別力の高いものである。」ことを理由に「引用審決例と本件では事案を異にする」と主張しているが、当該主張には全く理由がない。
引用審決における商標は、全て本件商標と同様に、左側商標が欧文字2字と片仮名文字を結合してなるものである。また、後記(2)にて詳述の如く、本件商標は引用審決例の商標と同様に、アルファベット部分である「BB」を除いた「パワー」の部分に自他商品識別力が生じるものである。
よって、本件商標と引用審決例とは事案を異にするものではなく、引用審決例からも、本件商標中の「BB」部分が自他商品識別力を有しないものであると言えるから、「たとえ『BB』のようなアルファベット2文字からなる部分であっても、残りの部分と比較して識別力が特に劣っているような事情がない場合には、識別力を失わないものと考えることができる」とする被請求人の主張には理由がない。

(2)本件商標中の「パワー」部分について
ア 被請求人は、「本件商標中『パワー』の部分は、商品の品質等を示すものにすぎ」ない、また、「『パワー』の語が、本件商標の指定商品である『釣り具』の商品名の一部に使われるような場合には、強度、耐久力に優れていることを示すような、品質、性能を示す語にすぎない」と主張するが、被請求人の上記主張には理由がなく、失当である。
(ア)「パワー」とは「力」や「権力」、「勢力」、「軍事力」(広辞苑)を意味するものであるが、「パワー」なる語と、商品である「釣り具」との関連性は全くない。
被請求人が提出した乙第2号証ないし乙第9号証では、「パワー」の語が「釣り具」の性能や品質を表す語として使用されている事実は全くないことから、取引者や需要者が「パワー」の語から「釣り具」の性能や品質を想起することはできないものである。よって、「パワー」の語は商品「釣り具」の品質や性能を示す語ではなく、「パワー」の語を商品「釣り具」に使用した場合には、取引者や需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであって、「パワー」の語に自他商品識別力が生じることは明かである。

(イ)また、本件商標の「パワー」部分が自他商品識別力を有することは、特許庁の審査例(甲第12号証ないし甲第34号証)からも明らかであるから、本件商標中の「パワー」部分についても自他商品識別力が生じることは言うまでもない。

イ したがって、「パワー」の語は、商品「釣り具」に使用した場合に自他商品識別力を有するものであるから、本件商標においても「パワー」部分のみから称呼、観念が生じることは明らかである。よって、本件商標は「パワー」部分のみにおいて自他商品識別力を発揮し得るものであるから、この部分について「商品の品質等を示すものにすぎない」とする被請求人の主張は被請求人の独断によるものであって、理由がない。

ウ また、被請求人は、「引用商標は、直ちに本件商標中の要部といえるほどの周知性や著名性も備えない。」旨主張する。
しかしながら、商標の要部を判断するのに、その要部とされる部分に著名性等が必要であるとする主張そのものが失当である。
なぜなら、被請求人の主張を前提にすれば、存在する大多数の商標が要部を有しないものとなってしまう。請求人は、識別力のある語と識別力のない語との結合からなる商標は、識別力のある語の部分が要部であることを主張しているものである。
よって、引用商標は、自他商品識別力を有するものであるとともに、「BB」部分については何らの識別力も有しないものであるから、本件商標中の「パワー」部分のみに称呼、観念が生じることは明らかである。

エ さらに、被請求人は、「『パワー』の語のついた商標だけでも、特許電子図書館(独立行政法人工業所有権情報・研修館)の商標の初心者向け検索においても、4,058件にも及ぶ登録又は出願がなされていて(乙第1号証)識別能力は弱い。」と主張しているが、当該主張についても全く根拠のない被請求人の独断によるものであり、理由がない。
そもそも、特許庁において商標登録がなされているということは、その商標に各々識別力が備わっているということであり、どれほど多数の登録商標が存在しようと、その登録商標は各々識別力を有するものであることは明白である。むしろ、同一の標章に多くの登録商標が存在するなら、その多くの登録商標が、いずれも厳しい識別性の審査を多数回繰り返したということになるから、その標章は識別力の高い商標ということができる。
そして、請求人が特許電子図書館において、「パワー」又は「POWER」単独で称呼、観念を生じる登録商標を検索した結果、33件の登録商標(甲第35号証)が該当した。そして、これら33件の商標は、少なくとも33回の識別力の審査をクリアーしたものであって、商標法上の全ての登録要件を備えたものであり、該商標からは「パワー」又は「POWER」単独で自他商品識別力を発揮し得るものである。
したがって、被請求人の上記主張には全く理由がない。

オ また、請求人は、「『パワー』の語が、本件商標の指定商品である『釣り具』の商品名の一部に使われるような場合には、強度、耐久力に優れていることを示すような、品質、性能を示す語にすぎない」と主張しているが、当該主張についても被請求人の独断によるものであって、理由がない。
すなわち、前記アのとおり、「パワー」及び「POWER」の語を商品「釣り具」に使用しても、取引者又は需要者が「パワー」の語から商品「釣り具」の性能や品質を想起することは不可能である。よって、引用商標を商品「釣り具」に使用した場合には、自他商品識別力を発揮し得ることは明らかである。
したがって、被請求人の上記主張には理由がない。

カ 乙第2号証ないし乙第8号証について
乙第2号証ないし乙第8号証には、商標中の「パワー」部分と、該商標を付した製品が「強度、耐久性に優れている」こととの関係について具体的に表示されておらず、「パワー」部分と製品の強度、耐久性との関係については不明である。そして、「パワー」自体又はその意味内容である「強度」や「力」と、商品「釣り具」との関連性は全く存在せず、取引者や需要者が「パワー」の語から釣り具の性能や品質を想起することは不可能なものである。
よって、乙第2号証ないし乙第8号証は、「パワー」部分が「強度、耐久性に優れている」ということを示すものであるという証拠には到底なり得ないものであるから、被請求人の上記主張には全く理由がない。

(3)本件商標「BBパワー」について
ア 被請求人は、「本件商標は『BBパワー』として一体のものであり、単なる『パワー』のみの観念は生じない。」と主張するとともに、「『BBパワー』は外観上一体のまとまりを有しているもので、その称呼も『ビービーパワー』であり、これをよどみなく称呼することが可能である。したがって、これを一体として判断することに不自然なことはなく、それ自体意味のない『BB』と『パワー』に分離して判断しなければならない理由はない。」と主張している。
しかし、本件商標「BBパワー」は、欧文字と片仮名文字を結合してなるものであるから、欧文字部分である「BB」と、片仮名文字部分である「パワー」とは、視覚上分離してみられるものである。また、「BB」は単なる商品記号であって、「BB」の文字と「パワー」の文字を結合することにより、全体として熟語的意味合いを生ずるものではない。そして、「釣り具」における取引者・需要者からみれば、「BB」の文字部分は上記のとおり、あくまでも商品の品番、形式、規格等を表示する記号又は符号などを理解させるものであるとともに、「パワー」の文字部分は、上記のとおり自他商品識別力を有すると理解させるものであって、本件商標がその構成の全体をもって一体不可分の造語を表したものとしか認識されないような特別な事情は見いだせない。
したがって、本件商標「BBパワー」は「パワー」の部分についてのみ自他商品識別機能が発揮されるものであるから、被請求人の上記主張については全く理由がない。

イ また、被請求人は、「欧文字2文字と、指定商品との関係で、識別力が高くない単語を組み合わせた商標の登録が認められた審決例の存在」として2つの審決例(乙第19号証及び乙第20号証)を示した上で、この2つの審決例の存在を理由に「『BBパワー』として一体となった場合は、尚更、特定の意味を有しない一種の造語となると考えることができる。」旨主張しているが、本件商標と上記審決例は事案を全く異にするものであるから、被請求人の上記主張には理由がない。

ウ さらに、被請求人は、「『BBパワー』からは『パワー』のみの観念は生じない。なお『BBパワー』の語は、全体として特定の意味合いを持つ語ではなく、かつ、品質表示語として取引上一般に使用されている語ともいえない(乙第21号証)。そうであれば、本件商標についても自他商品識別力に問題はないことは当然である。」と主張している。
しかしながら、本件商標は一体として自他商品識別力が発揮されるのではなく、「パワー」にのみ自他商品識別力が生じるものである。よって、本件商標「BBパワー」からは「パワー」のみの称呼、観念が生じるものであるから、被請求人の上記主張には何の根拠もないものである。

エ 被請求人は、乙第11号証ないし乙第18号証及び乙第22号証ないし乙第26号証の存在を理由として、「『パワー』と一体となって『BBパワー』となった場合には、独自の識別力を備えた別個の商標となるものであり『パワー』の商標と類似する商標とはいえない。」旨主張している。
しかしながら、乙第11号証ないし乙第18号証及び乙第22号証ないし乙第26号証の各商標は、それぞれ同書同大の欧文字又は片仮名文字を、普通に用いられる方法で一連に表示されたものであるから、本件とは全く事案を異にし、比較の対象となり得ないものである。
したがって、被請求人の上記主張は根拠のないものであって、理由がない。

(4)むすび
本件商標は、引用商標と「パワー」の称呼・観念を共通にする類似のものであり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであって、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証を提出した。

1 理由の骨子
本件商標は「BBパワー」として一体のものであり、単なる「パワー」のみの観念は生じない。
まず、「BB」は、単なる品番等を示す規格ではなく、この部分自体も識別力を有する。
本件商標中「パワー」の部分は、商品の品質等を示すものにすぎず、この部分のみでは識別力を有しない上、引用商標は、直ちに本件商標の要部といえるほどの周知性や著名性も備えていない。
「パワー」と別の単語を組み合わせた登録商標は多数存在し、仮に「BB」が、商品の品質や、用途等を示す言葉である余地があったとしても、パワーと一体となることによって独自の識別力を有するに至るものである。
以上より、本件商標「BBパワー」は独自の識別力をもつ商標であり、引用商標と同一又は類似するものではないので、商標法4条第1項第11号には該当せず、本件請求には理由がない。

2 「BBパワー」は、一体の商標である。
請求人は「BBパワー」を一体不可分として見るべきものではないと主張する。しかし「BBパワー」は外観上一体のまとまりを有しているもので、その称呼も「ビービーパワー」であり、これをよどみなく称呼することが可能である。
したがって、これを一体として判断することに不自然なことはなく、それ自体意味のない「BB」と「パワー」に分離して判断しなければならない理由はない。

3 商標中「BB」部分の識別力
請求人は、本件商標中「BB」の部分について、「BB」は、単なる商品の番号や、ブラックバスの略称、ボールベアリングの略称等に広く使用されるものであるから、この部分に識別力はないと主張する。
しかし、この主張は、「BB」が、何らかの略称として使用される場合があるとしても、その意味が特定されていないことも示している。
すなわち、需要者から見れば、仮に「BB」という記載があったとしてもそれが、ブラックバスの意味なのか、ボールベアリングの意味なのか、それとも別の意味なのかが不明ということになるのである。
ちなみに、被請求人としても「BB」という文字を「ブラックバス」あるいは「ボールベアリング」といった特定の具体的な名称の略称としては使用していない。「BB」とは、特定の意味をもたない造語である。
そうであれば、需要者は、「BB」の文字が商標中に存在する場合、ある特定の製品の種類、用途を直接示す概念であると認識するとまではいえず、識別力がないということにはならないといえる。
また、何らかの製品名を示す略称であったとしても、略称の使用が独自の識別カを有することも十分考えられる。
したがって、請求人の主張するように「BB」部分に識別力がないとの主張は、理由がない。

4 「パワー」の語は、商品の品質、性能を示す語である。
請求人は、本件商標の要部は「パワー」であると主張する。しかし「パワー」の語は「SEIKO」「SONY」といった著名商標と異なることは明らかであり「パワー」の語のついた商標だけでも、特許電子図書館(独立行政法人工業所有権情報・研修館)の商標の初心者向け検索においても、4,058件にも及ぶ登録又は出願がなされていて(乙第1号証)識別能力は弱い。
また、「パワー」の語が、本件商標の指定商品である「釣り具」の商品名の一部に使われるような場合には、強度、耐久力に優れていることを示すような、品質、性能を示す語にすぎないといえる(乙第2号証ないし乙第10号証)から、それ自体で識別力を有するものではない。

5 「パワー」と一般名称を組み合わせた指定商品の他商標の存在
たとえ、請求人主張のとおり「BB」が単なる記号で、品番を示すもので識別力がない、又は、商品の普通名称を示すとする余地があるとしても、「パワー」と一体となって「BBパワー」となった場合には、独自の識別力を備えた別個の商標となるものであり「パワー」の商標と類似する商標とはいえない。
実際に、「釣り具」を指定商品に含む商標の中には、「パワースーツ」、「POWER HANGER」、「POWER MAGIC」、「マリンパワー MARINE POWER」、「パワーフィンガー」、「パワースピード」、「BIGPOWER」及び「ホリデーパワー」(乙第11号証ないし乙第18号証)などの登録商標が存在する。
これらの商標の存在からは「パワー」の語と、商品の普通名称、一般的な単語との接合した商標であったとしても、接合した商標は、構成全体をもって独自の識別力を有すると評価できる場合が数多く存在するといえる。
すなわち、これらの商標からは「パワー」のみの観念が想起されるようなことはないといえる。

6 引用審決例について
請求人は、4件の審決例を挙げ「BB」部分には、識別力がないと主張する。
しかしながら、引用審決例と本件には、異なる事情があり、審決の存在が本件の結論を左右するものではない。
まず、引用審決例は、いずれも商標中のアルファベット2文字の組み合わせ部分について、識別力なしと判断したものである。
しかし、実際にアルファベット2文字からなる部分を含む商標や、アルファベット2文字のみからなる商標も存在する。
そして、引用審決例はいずれも、アルファベット2文字を除いた部分が「プロセス」「フロン」「クラッド」「ハイセラ」といったようにそれ自体一般的に通用し、親しまれているとは言えない単語であり、それ自体識別力の高いものである。
このうち「フロン」は、地球温暖化等の問題についての認識が、高まっている現在においては、一般的な単語ともいえるが、審決のあった昭和63年当時においては、現在ほど一般的な単語とは言えなかったといえる。
これらの単語に対し、本件商標より「BB」の部分を除いた「パワー」の単語については、上述のとおり我が国において一般的であり、かつ、商品名等に頻繁に使用されている単語であって、それ自体の識別力は非常に低い。
そうであれば、たとえ「BB」のようなアルファベット2文字からなる部分であっても、残りの部分と比較して識別力が特に劣っているような事情がない場合には、識別力を失わないものと考えることができるのであり、引用審決例と本件では事案を異にするものであるといえる。

7 欧文字2文字と別の単語を組み合わせた商標に関する他の審決例の存在
欧文字2文字と、指定商品との関係で、識別力が高くない単語を組み合わせた商標の登録が認められた審決例の存在について述べておく。
第9類を指定商品とする出願商標「DB-Wide」についての拒絶査定不服審判(不服2003-22447)の審決(乙第19号証)及び第9類、第28類を指定商品とする出願商標「EA MOBILE」についての拒絶査定不服審判(不服2007-9903)の審決(乙第20号証)では、「DB」「EA」といった欧文字2文字が指定商品との関係において、品番、型式等にも使用される言葉であることを前提とし、また、「Wide」「MOBILE」の語についても「ワイド型テレビ」「移動体通信」を意味する語であって、指定商品である第9類との関係では識別力の低い語であるといえるが、このような場合であっても「DB-Wide」「EA MOBILE」というように、接合した場合は、特定の意味を有しない一種の造語になると判断している。
そして、繰り返しになるが、本件商標においても「パワー」という語は、指定商品である「釣り具」においては、強度の高いことを表す品質表示語であって識別力は低い上、被請求人としては、特定の意味をもたない造語として「BB」という文字を使用しており、まして、これが「BBパワー」として一体となった場合は、尚更、特定の意味を有しない一種の造語となると考えることができる。
そうであれば、「BBパワー」からは「パワー」のみの観念は生じない。
なお、「BBパワー」の語は、全体として特定の意味合いを持つ語ではなく、かつ、品質表示語として取引上一般に使用されている語ともいえない(乙第21号証)。
本件商標についても自他商品識別力に間題がないことは当然である。

8 「BB」と商品名を直接示した単語との組み合わせの登録商標の存在
第25類で「BBJACKET ビービージャケット」、「BBSKIRT ビービースカート」及び「BBSHIRTS ビービーシャツ」(乙第22号証ないし乙第24号証)等の登録商標が存在する。
「JACKET ジャケット」「SKIRT スカート」「SHIRT シャツ」の語は、指定商品である第25類においては、いずれも商品の種類を示す語といえ、識別力は低い語である。
仮に「BB」の部分の識別力が皆無であるとの請求人の主張どおりであれば、これらの商標も識別力を有しないことになりかねない。
しかし、実際はこのような商標の登録が認められており、これらの商標の存在は「BB」と別の単語を組み合わせた商標が「BB」の部分も含めた構成全体として十分な自他識別力を有することを示している。

9 「BB」と既登録の商標の語を組み合わせた登録商標の存在
「BB」と既登録の商標を組み合わせた商標の登録例として、指定商品「電気通信機械器具」において「BBExpert ビービーエキスパート」と「Expert」とが(乙第25号証及び乙第27号証)、また、指定商品「配電用又は制御用の機械器具,電気通信機械器具」において「BBTRAVEL ビービートラベル」と「TRAVELトラベル」とが(乙第26号証及び乙第28号証)がそれぞれ併存登録されている。
仮に「BB」の部分に識別力がないとすれば、これらの商標から生ずる観念は同じであることになり、双方が登録されることはないはずである。それにもかかわらず、これらが併存登録されているということは、「BB」の2文字が付くことによって「BB」が付いていない商標とは別の観念、識別力を生じることを示しているのである。
本請求についてもこれらと同様に、「BBパワー」は「パワー」とは別の観念、識別力を生じ、「BBパワー」が「パワー」の類似商標であるとの主張は理由がない。

10 まとめ
以上より、本件商標「BBパワー」は「BB」それ自体が、特定の観念を有しない造語である上「BBパワー」という形で一体をなすことによって、独自の識別力をもつものであり、それ自体が、識別力が低く、観念としては「力」の観念を有するにすぎない「パワー」商標とは、到底類似せず、請求人の主張には理由がない。

第5 当審の判断
1 本件商標について
(1)本件商標の外観、称呼及び観念について
本件商標は、「BB」の欧文字と「パワー」の片仮名文字を一般的なゴシック体で「BBパワー」と一連に横書きしてなるところ、本件商標を構成する各文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであって、また、その構成全体より生ずる「ビービーパワー」の称呼も冗長でなく、一連によどみなく称呼できるものである。
そして、たとえ、本件商標を構成する前半の欧文字が、ローマ字の「B」を「BB」と2つ連ねたものであって、このようなローマ字2字が、一般に、商品の品番、型式、規格等を表示する記号又は符号として、取引上類型的に採択使用されることがあるとしても、後半の「パワー」の文字自体も「力、権力」等の意味を有する平易な外来語であって、しかも、この語に他の語が冠され「○○パワー」のように表示された場合には、通常、「○○の有する力や効力(パワー)」程の意味合いで使用され、認識されることの方がむしろ多いというべきであるから、前記構成からなる本件商標にあっては、その前半の「BB」の欧文字部分が商品の記号又は符号を表示するものとして、直ちに理解、認識されるものとはいい難く、また、他に「パワー」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情も見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって不可分一体ものとして認識、把握されるとみるのが自然であるから、その構成全体に相応した「ビービーパワー」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
また、本件商標は、その構成中「BB」の欧文字部分からは、直ちに特定の観念を生じさせないものというべきであるが、構成全体としてみると、漠然とながらも「BB(と呼ばれるもの)の有する力や効力(パワー)」といった程度の観念を生じさせるものということができる。
(2)請求人の主張に対して
請求人は、本件商標は、欧文字と片仮名文字を結合してなるものであるから、視覚上分離してみられる旨主張する。
しかし、本件商標は、その文字の種類こそ欧文字と片仮名文字とで異なるものの、前記のとおり、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同じ間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであって、その称呼及び観念上からみても、分離して把握すべき理由は見当たらないものである。
また、 請求人は、本件商標を構成する「BB」の欧文字について、商品の品番、型式、規格等を表示する記号又は符号として理解されるものであるとか、釣りの業界及び釣りの愛好家の間では「ボールベアリング」又は「ブラックバス」の略称として一般的に広く知られ使用されている事実がある(甲第5号証ないし甲第7号証)から、指定商品「釣り具」との関係では自他商品の識別力がない旨主張する。
しかし、本件商標の構成においては、「BB」の欧文字は、前記のとおり、商品の記号又は符号を表示するものとして、直ちに理解、認識されるものとはいい難いものである。
また、請求人の提出に係る甲第5号証ないし甲第7号証によれば、「BB」の欧文字が「ボールベアリング」又は「ブラックバス」の略称として使用されている例があることを認めることができるとしても、例えば、「ZPI/ジーピーアイ防錆Sic-BB/ボールベアリング」や「…BB-Xハイパーフォース入荷!SA-RB/A-RB.錆を寄せ付けないボールベアリング『A-RB』。…」のような使用(甲第6号証)であったり、「ブラックバス(以後BBと略)…」や「ブラックバス(以下BB)…」などと定義して使用(甲第7号証)されていたりするほか、「【フィッシングマックス】ソアレBB 1000S」というウェブ見出しの下、「BBはBLOOD BROTHER(血縁関係のある兄弟)の意味です。」との記載(甲第5号証)や「リール>エギング派-シマノ セフィアBB 2500S-アオリイカ釣り専門…」というウェブ見出しの下にも、同じく「BBはBLOOD BROTHER(血縁関係のある兄弟)の意味です。」との記載(甲第6号証)もあることからすると、「釣り具」を取り扱う業界においては、いまだ「BB」の語が「ボールベアリング」又は「ブラックバス」の略称として一般的に使用され、理解、認識されているものとまでは認めることができず、したがって、これより直ちに特定の観念を生ずるものということはできないものと判断せざるを得ない。また、仮に、本件商標の「BB」が、請求人の主張どおり、「ボールベアリング」又は「ブラックバス」の略称として理解、認識されることがあるとしても、その場合には、前記のとおり、本件商標からは「ボールベアリングの有する力や効力(パワー)」又は「ブラックバスの有する力や効力(パワー)」といった観念を生じさせることになるから、やはり、本件商標は一体のものとして看取されるものといわなければならない。
その他、請求人は、欧文字2字と片仮名文字とを結合してなる商標について4件の審決例(甲第8号証ないし甲第11号証)を挙げて、本件商標の「BB」部分には識別力がない旨主張するが、本件商標は、前記のとおり、観念的にも一体のものとして理解、認識される「BBパワー」の文字よりなるものであるから、それらの審決例とは、事案を異にするものといわざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

2 引用商標について
前記第2のとおり、引用商標1及び2は、「パワー」の片仮名文字よりなり、また、引用商標3は、「POWER」の欧文字よりなるものであるから、引用商標からは、いずれも「パワー」の称呼及び「力、能力」等の観念を生ずるものである。

3 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、前記のとおり、語頭部分における「BB」の欧文字の有無という顕著な差異を有してなるから、両者は相違する。
また、その称呼についても、前記のとおり、本件商標は、「ビービーパワー」の称呼のみを生ずるのに対し、引用商標は、いずれも「パワー」の称呼を生ずるものであるから、その語頭部分において「ビービー」の音の有無という差異を有するものであって、明らかに聴別し得るものである。
そして、本件商標からは、漠然とながらも「BB(と呼ばれるもの)の有する力や効力(パワー)」といった程度の観念を生じさせるのに対し、引用商標からは単に「力、能力」といった観念しか生じさせないものであるから、両者は観念上も相違するものといえる。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

4 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-06-03 
結審通知日 2009-06-08 
審決日 2009-06-30 
出願番号 商願2006-121819(T2006-121819) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (Y28)
T 1 11・ 262- Y (Y28)
T 1 11・ 261- Y (Y28)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 清川 恵子
田村 正明
登録日 2007-06-22 
登録番号 商標登録第5055603号(T5055603) 
商標の称呼 ビイビイパワー 
代理人 村上 博一 
代理人 特許業務法人 銀座総合特許事務所 

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