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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 103 |
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管理番号 | 1216359 |
審判番号 | 取消2009-300745 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2009-07-01 |
確定日 | 2010-04-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2055167号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2055167号商標の指定商品中、「化粧品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2055167号商標(以下「本件商標」という。)は、「ルコンフォール」の片仮名文字を書してなり、昭和60年12月27日に登録出願、第4類「化粧品、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和63年6月24日に設定登録され、その後、平成20年6月17日に2回目の存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品を第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」とする書換登録が平成20年7月2日にされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。 1 取消の理由 本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用されていない。よって、本件商標は、その指定商品中「化粧品」についての登録を取消すべきものである。 2 弁駁 被請求人は、乙第1号証ないし乙第7号証を提出しているが、これらの証拠は、以下に述べるとおり、被請求人の主張を裏付けるものではなく、その主張は理由がない。 (1)乙各号証について (ア)乙第1号証は、商標権者(被請求人)とフランスのランコム パルファムエ ボーテ エ カンパニイ(以下「ランコム社」という。)との間の本件商標に関する通常使用権許諾契約書であるとのことであるが、その許諾商品は「男性用スキンケア化粧品」とされている(第1条)。 しかるに、乙第2号証ないし乙第6号証にかかる商品は、「After Sun」(乙第2号証、乙第3号証)、「アフターサンミルクタンエクステンダー」(乙第4号証)、「アフターサンフェースクリーム」、「アフターサンジェル フェース&ボディ」、「アフターサンミルク フェース&ボディ」(乙第5号証)及び乙第6号証に示す商品も同様に「After Sun Cream」等であり、これらの商品は、「男性用化粧品」と分類される化粧品ではなく、該許諾契約の対象商品ではない。 したがって、そもそも、乙第2号証ないし乙第6号証の商品は、該通常使用権許諾契約に基づいての許諾された商標を使用しているものではないから、ランコム社は通常使用権者として使用していることにはならない。 (イ)乙2号証ないし乙第5号証(なお、乙第6号証に掲載された商品に付されている商標は判読できない。)において、商品若しくはその広告に付されている別掲(1)のとおりの2段構成よりなる商標(以下「SOLEILRECONFORT商標1」という。)及び「SOLEIL」(「O」にアクサン-シルコンフレクス記号が付してある。以下同じ。)と「RECONFORT」を空白を挟んで横書きしてなる商標(以下「SOLEILRECONFORT商標2」という。)は、後述するように本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 (ウ)乙第2号証には日付がなく、かかる商品が本件審判請求の登録日前3年以内にランコム社により製造販売されたことを示すものではない。 (エ)乙第3号証は、本件審判請求の登録日後である2009年8月18日に打ち出されたランコム社の「After Sun」商品にかかる同社ウェブサイトであって、この時点で当該商品がウェブサイト上に掲載されていたことを示すにすぎない。そして、これはフランスの会社である同社のフランス語によるウェブサイトであって、これに「After Sun」の商品が掲載されたり、SOLEILRECONFORT商標1及びSOLEILRECONFORT商標2が表示されていたとしても、それは、日本国内での使用を示すものではない。 (オ)乙第4号証は、本件審判請求の登録日後である2009年8月17日に打ち出された「Cosmetic Party」という並行輸入業者のウェブサイトであって、「商品は『海外在庫品です』」との記載があり、当該業者が海外で仕入れたランコム社の化粧品を販売のため提供していることを示すにすぎず、ランコム社による日本国内における商標の使用を示し得るものではない。 (カ)乙第5号証は、本件審判請求の登録日後の2009年8月17日の打ち出された「Beauty Store」という並行輸入業者のウェブサイトであって、その2枚目、4枚目、5枚目に「<香港発送商品>」とあるように、当該業者が香港で仕入れた商品を販売するため提供していることを示すにすぎず、ランコム社による日本国内における商標の使用を示し得るものではない。 (キ)乙第6号証は、本件審判請求の登録日後の2009年8月25日(1、2、5、6枚目)及び2009年8月26日(3、4、7、8枚目)に打ち出されたのイギリスの「ciao」という会社のウェブサイトの関連ページであり、同社が単にランコム社製の「After Sun」の商品を仕入れて同社のネットを通じて販売しているということ、及びこのウェブサイトにある「(On Ciao since:12/2007)」等の記載は、このウェブサイトに2007年12月から当該商品が載せてあることを示し得るにすぎず、ランコム社による日本国内における商標の使用や本件審判請求の登録前3年以内に「After Sun」の商品を日本で販売したことを示すものでない。 (2)本件商標との社会通念上同一性について (ア)SOLEILRECONFORT商標1は、上段の「SOLEIL」(「O」にアクサン-シルコンフレクス記号が付してある。以下同じ。)の文字を大書し、その下段に近接して、かつ、両端がほぼ上段の文字幅と同じになるように小書した「RECONFORT」を配したものであって、全体が一体として一個の標章を構成している。 してみれば、SOLEILRECONFORT商標1が「RECONFORT」はもとより本件商標「ルコンフォール」と同一性の範囲外にあることは、明白である。 (イ)SOLEILRECONFORT商標2は、「SOLEIL RECONFORT」の欧文字が同書・同大で一体に配されている。そして、SOLEILRECONFORT商標1が一体として一個の標章を構成していること上述のとおりであって、SOLEILRECONFORT商標2はこれを受けての表示であり、かかる構成文字を分けて認識するべき理由はないから、SOLEILRECONFORT商標2は一体としてのみ把握すべきものであり、「RECONFORT」と社会通念上同一ではなく、もとより、本件商標「ルコンフォール」とも社会通念上同一ではない。 (3)まとめ よって、乙第2号証ないし乙第7号証は、本件審判請求の登録日前3年以内に、日本国内において、通常使用権者であるとされるランコム社が、本件商標「ルコンフォール」及びこれと社会通念上同一とされる「RECONFORT」を「After Sun」化粧品に使用したことを証するものではないから、被請求人の答弁は理由がない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)乙第1号証は、商標権者(被請求人)がランコム社と締結した通常使用権許諾契約書の写しであり、本件商標及び登録商標第2087168号「RECONFORT」の2件を、許諾期間を2004年1月1日から2008年12月31日とする契約を締結した。 (2)乙第2号証は、本件商標を付したランコム社の商品のパッケージ(別掲(2))である。商品名称は以下のとおりである。 「SOLEIL RECONFORT CREME VISAGE HYDRATANTE FRAICHEUR ET APAISEMENT(英語表記:AFTER SUN HYDRATION CREAM FRESH AND SOOTHING)」 「SOLEIL RECONFORT GELEE FRISSON HYDRATANTE VISAGE ET CORPS(英語表記:AFTER SUN COOLING HYDRATING GEL FACE AND BODY)」 「SOLEIL RECONFORT LAIT HYDRATANTE PROLONGATEUR DE BRONZADE VISAGE ET CORPS」 (3)乙第3号証は、ランコム社のウェブサイトにて、乙第2号証で示すランコム社の商品がインターネット上で販売されていることを示すものである。 (4)乙第4号証は、化粧品販売サイト「コスメティックパーティー」にて、乙第2号証で示した本件商標を付したランコム社の商品がインターネット上で販売されていることを示すものである。 (5)乙第5号証は、化粧品販売サイト「アイビューティーストア」にて、乙第2号証で示した本件商標を付したランコム社の商品がインターネット上で販売されていることを示すものである。 (6)乙第6号証は、化粧品販売サイト「Ciao!」にて、乙第2号証で示した本件商標を付したランコム社の商品がインターネット上で販売されていることを示すものである。 乙第6号証によれば、本件商標を付したランコム社の商品が「Ciao!」サイトに2007年12月に掲載されたことを示す記載「On Ciao since:12/2007」、「Listed on Ciao since:03/12/2007」を確認することができ、本件商標を付したランコム社の商品が2007年12月には、化粧品販売サイト「Ciao!」に掲載され販売されていたといえる。 したがって、本件商標が、本取消審判の請求日から3年以内である2007年12月の時点で使用されていたことは明らかである。 (7)社会通念上の同一性について 乙第2号証ないし乙第6号証に示す商品に付された使用されている商標「RECONFORT」(以下「使用商標」という。)と本件商標「ルコンフォール」とは、前者が欧文字で後者が片仮名で書かれているものの、使用商標を称呼すれば、「ルコンフォール」と称呼される。また、乙第7号証に示すように、登録商標第2087168号「RECONFORT」には「ルコンフォール」の称呼が付与されていることから、本件商標と使用商標とは、商標法第50条第1項に規定する「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」である。よって、本件使用商標が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることは明らかである。 (8)まとめ 以上のとおり、本件商標の通常使用権者であるランコム社は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判の取消請求に係る指定商品及びこれに属する「化粧品」について、本件審判請求の3年以内に日本国内において使用しているから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきものではない。 2 弁駁に対する答弁 (1)請求人は、被請求人が提出した証拠資料に記載のランコム社のRECONFORTシリーズ製品は「男性用スキンケア化粧品」と分類される化粧品ではないから、通常使用権許諾契約(乙第1号証)の対象商品ではない、と主張している。 しかしながら、化粧品業界において、「男性用スキンケア化粧品」というジャンルの明確な定義は存在していない。上記ランコム社のRECONFORTシリーズ製品は、日焼け止め等の商品のシリーズであり、性別を問わない化粧品である。このような男女の性別と関係なく使用する日焼け止め等の商品を乙第1号証記載商品の許諾範囲内であるとすることは至極妥当である。 (2)請求人は、乙第3号証(2009年8月18日打ち出し)、乙第4号証(2009年8月17日打ち出し)、乙第5号証(2009年8月17日打ち出し)のウェブサイトは、本件審判請求の登録後である上記打ち出し日にウェブサイトのページに記載されていたということを示すにすぎず、証拠価値はない、と主張している。 しかし、化粧品業界では、国の内外を問わず、おおむね発売後3か月以内の製品には、「新製品」であることが消費者に分かるように、「新発売」、「新製品」、「新」、「リニューアル」、「NEW」などの「新たに発売された」ことが分かるような文字や文言が付記されることが通例であるが、ランコム社RECONFORTシリーズ製品が掲載されている乙第3号証において「新製品」であることを示す表示は全くない。したがって、ランコム社では被請求人が打ち出した2009年8月18日の少なくとも3か月以上前には、該当商品が発売されていたことは明らかである。乙第6号証のランコム社以外のウェブサイトにおいて、2007年12月には、ランコム社RECONFORTシリーズ製品が掲載されていた。 (3)請求人は、乙第3号証は、フランスの会社であるランコム社のフランス語のウェブサイトであり、乙第6号証は、英国Ciao社のウェブサイトであって、我が国における商標の使用を示すものではない、と主張している。 しかし、直ちに日本国での商標の使用があったということはできないにしても、近時のインターネット上での商品情報の取得がグローバルな範囲に及んでいることをも考慮すれば、日本在住の需要者がこれによって商品情報の取得をして商品の取引に資することはないとまではいうことができない。 よって、上記ウェブサイトに掲載されていることは十分商標の使用に足るものである。 (4)請求人は、乙第4号証及び乙第5号証のウェブサイトは、並行輸入業者のサイトであり、当該並行輸入業者が海外で仕入れたランコム社製品を販売のために提供しているにすぎない、と主張している。 しかしながら、並行輸入業者のサイトであっても掲載されているランコム社RECONFORTシリーズ製品の出所表示機能及び品質保証機能が害されているわけではなく、本件商標が付されたランコム社RECONFORTシリーズ製品が本サイト上に展示されている時点で、需要者はランコム社のRECONFORTシリーズ製品と認識するため、商標としての機能を果たしている。 (5)請求人は、乙第2号証ないし乙第6号証の商品に付された商標は、「SOLEIL」と「RECONFORT」とを一体として一個の標章を構成しているものであり、本件商標の同一性の範囲外である、と主張している。 しかし、化粧品業界では、商品の容器のパーケージの態様は、登録商標の近傍に他の文字・文言や図形などを組み合わせて使用する場合、書体や態様を同一でない表記を使用する場合が多く、需要者が、商品に記載されている情報をどこまで認識するかということは、一人ひとりの例えば、観察力、注意力、商品需要の程度、化粧品に関する興味・関心の程度等により異なるのであり、本件ランコム社RECONFORTシリーズ製品を、需要者は、「RECONFORT」シリーズ商品とも認識すると考えるのが妥当である。 したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の範囲内である。 第4 当審の判断 被請求人は、本件商標を通常使用権者であるランコム社が取消請求に係る商品について使用していた旨述べて、乙第1号証ないし乙第7号証を提出している。 1 提出された乙各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第1号証は、商標権者(被請求人)とランコム社との間における本件商標及び登録商標第2087168号にかかる2003年(平成15年)6月10日付けの通常使用権許諾契約書の写しとするものであり、第1条(使用許諾)に「1.許諾商品:男性用スキンケア化粧品」、「2.許諾地域:日本国内全域」及び「3.許諾期間:2004年から2008年12月31日(第9条に定める更新後も含む)」等の記載がされている。 (2)乙第3号証は、2009年(平成21年)8月18日に打ち出されたランコム社のフランス語によるウェブサイトの写し3ページであって、各ページは、それぞれ「SOLEIL RECONFORT」の見出しの下に商品写真が掲載され、価格(単位はユーロ)が記載されている。 (3)乙第2号証は、上記ウェブサイトの写しに掲載されている各商品の拡大写真(別掲(2))と認められるところ、それぞれの商品の中央部分に「SOLEIL」を大きく配し、その下に「RECONFORT」(使用商標)を配してなり、さらに、その下に青い輪郭内に「AFTER SUN」と記載されている。 (4)乙第4号証は、2009年(平成21年)8月17日に打ち出された「Cosmetic Party」と題するインターネット販売に係るウェブサイトであって、これに「ランコム ソレイユ リコンフォートアフターサンミルクタンエクステンダー(フェース&ボディ)」、「Lancome Soleil Reconfort After Sun Milk Tan Extender (Face & Body)」、「ランコム(Lancome)」の表示とともに、乙第2号証の3個の商品写真の中央の商品の写真が掲載されている。 (5)乙第5号証は、2009年(平成21年)8月17日に打ち出された「Beauty Store」と題するインターネット販売に係る3つの商品のウェブサイトであって、それぞれ、「ランコム ソレイユアフターサンフェースクリーム フレッシュ&スームシング 50ml/1.69oz」及び「LANCOME Soleil Reconfort After Sun Face Cream Fresh & Soothing 50ml/1.69oz」、「ランコム ソレイユアフターサンジェル フェース&ボディ 150ml/5oz」及び「LANCOME Soleil Reconfort After Sun Cooling Gel Hydrating Face & Body 150ml/5oz」、「ランコム ソレイユ アフターサンミルク フェース&ボディ 150ml/5oz」及び「LANCOME Soleil Reconfort After Sun Milk Tan Extender (Face & Body) 150ml/5oz」との表示の下に、乙第2号証にある3個の商品の写真、価格、商品説明等が記載されている。 (6)乙第6号証は、2009年(平成21年)8月25日及び同26日に打ち出されたのイギリスの「ciao」という会社のインターネット販売に係る、英語によるウェブサイトであって、「Lancome」、「Soleil」、「Reconfort」、「After Sun」、「Face」、「Cream &」、「Soothing」、「After Sun-」、「Cream(On」、「Ciao since:」及び「12/2007)」などの記載、「Lancome Soleil Reconfort After Sun Face Cream & Soothing」の記載、乙第2号証の3個の商品と思しきものの掲載、「Listed on Ciao since:03/12/2007」の記載がされ、販売価格についてはイギリスの貨幣単位である「?」により表示されている。 (7)乙第7号証は、登録第2087168号商標の称呼検索結果の打ち出し情報であって、「【商標(検索用)】RECONFORT」及び「【称呼】ルコンフォール,レコンフォート」の掲載が認められる。 2 上記において認定した事実によれば、被請求人は、ランコム社に男性用スキンケア商品について、2004年から2008年12月31日を許諾期間として本件商標の使用を許諾していることから、上記期間においてランコム社は、本件商標の通常使用権者であると認められる。 そして、ランコム社は、使用商標を使用した日焼け後の化粧用クリーム、ジェル、ミルク(以下これらを「使用商品」という。)を、2007年12月ころには、英国等の外国において販売し、我が国においては、乙第4号証及び乙第5号証が作成された2009年(平成21年)8月17日にインターネット販売業者によって販売したことが認められる。 しかしながら、我が国で販売したことが認められる2009年(平成21年)8月17日は、本件審判の予告登録日後であり、かつ、ランコム社が本件商標の通常使用権者であると認められるのは、2008年(平成20年)12月31日までであり、その後に契約を更新した事実も確認することができないことからすれば、上記販売日においてランコム社は本件商標の通常使用権者とは認めることができない。 したがって、被請求人の提出した証拠によっては、通常使用権者であるランコム社が本件審判の予告登録前3年以内に我が国において本件商標を使用していたものと認めることはできない。 被請求人は、フランスのランコム社のウェブサイト(乙第2号証)及びイギリスのCiao社のウェブサイト(乙第6号証)は、直ちに日本国での商標の使用があったということはできないにしても近時のインターネット上での商品情報の取得がグローバルな範囲に及んでいることをも考慮すれば、日本在住の需要者がこれによって商品情報の取得をして商品の取引に資することはないとまではいうことができない、旨主張しているが、上記ウェブサイトは、いずれも外国におけるウェブサイトであり、その内容もすべてフランス語若しくは英語で表示されたものであって、価格もユーロ及びポンドを単位として掲載されているものであるから、日本の需要者を対象としたものとは認められない。したがって、上記ウェブサイトをもって我が国における本件商標の使用ということはできない。 また、被請求人は、インターネット販売業者による使用商品の販売の事実を示すウェブサイトの写し(乙第4号証及び乙第5号証)の打ち出しが本件審判の請求の登録(平成21年7月17日)後の2009年(平成21年)8月17日であるとしても、化粧品業界の通例として、おおむね発売後3か月以内の製品に付記する、「新製品」であることを示す表示は全くないことから、被請求人が打ち出した2009年8月17日の少なくとも3か月以上前には、該当商品が発売されていたことは明らかである旨主張している。 しかしながら、そのような取引の実情があることを示す証拠は何ら提出されていないし、仮に当該取引の実情があったとしても、ランコム社が通常使用権者と認めうるのは平成20年12月31日までであるから、上記ウエブサイトをもって、通常使用権者が使用商標を使用しているとはを認めることができない。 さらに、被請求人は、乙第6号証のイギリスのCiao社のウェブサイトに使用商品が2007年7月より掲載されていたことをもって、使用商品は、同時期より販売されていたと主張するが、上記ウェブサイトは、外国で販売されていた事実を示すとしても、外国において販売されている商品が同時期に必ず我が国においても販売されているとはいえないから、外国において商品が販売されていた事実をもって、我が国における通常使用権者による使用の事実を認めることはできない。 そして、被請求人は、要証明期間内に取引の事実があるならば、取引書類等の提出により立証することは困難なことではないにもかかわらず、請求人の弁駁に対して、化粧品業界では通例である「新製品」であることを示す表示は全くないから、ランコム社では被請求人が打ち出した2009年8月18日の少なくとも3か月以上前には、該当商品が発売されていたことは明らかである、また、乙第6号証のランコム社以外のウェブサイトにおいて、2007年12月には、ランコム社RECONFORTシリーズ製品が掲載されていたなどと主張するのみで、我が国における具体的な取引の事実を何ら立証していない。 3 使用商品について 使用商品は、いずれも日焼け後の化粧用のクリーム、ジェル、ミルクであると認められるから、本件審判請求に係る商品「化粧品」に含まれる商品であると認められる。 請求人は、ランコム社に通常使用権を許諾している商品は、「男性用スキンケア化粧品」であるところ、使用商品は、上記許諾の対象商品ではない旨主張しているが、使用商品は、女性のみが使用する特有の商品とはいうことができないから、「男性用スキンケア化粧品」の範ちゅうの商品と見て差し支えない。 4 使用商標について 請求人は、乙第2号証ないし乙第6号証に掲示された商標は、「SOLEIL」と「RECONFORT」を一体として一個の標章を構成しており、「RECONFORT」はもとより、本件商標「ルコンフォール」と同一性の範囲外にあり、これと社会通念上同一の商標を使用を示すものではない旨主張している。 しかしながら、使用商品におけるパッケージ表面に表示された「SOLEIL」と「RECONFORT」とは、別段に記載してなるばかりでなく、構成各文字の大きさにおいても顕著な差違を有してなり、視覚上容易に分離して看取されるものであり、また、それを構成する欧文字の「SOLEIL」と「RECONFORT」の両語が結合して熟語的な意味合いを理解するともいい難いものであるから、両文字が常に一体不可分にのみ認識されるとはいうことができず、「RECONFORT」(使用商標)の部分も独立して看取される場合もあるというべきである。そして、使用商標は、「ルコンフォール」と称呼され、「慰め。励まし。」の観念を有するから、と本件商標「ルコンフォート」とは、ローマ文字及び片仮名文字の表示を相互に変更するものであって上記称呼及び観念を共通にする社会通念上同一の商標と認められる。 5 むすび 以上のとおりであるから、ランコム社が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を男性用スキンケア商品であり本件審判請求に係る「化粧品」に包含されるスキンケア商品について使用した事実があるとしても、ランコム社が通常使用権を有している期間内に我が国において、使用商標を使用していたものとは認めることができない。 してみれば、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品について本件商標を使用していたことを証明したものとはいえない。また、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。 したがって、本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1) (2) (色彩については、原本参照) |
審理終結日 | 2010-02-26 |
結審通知日 | 2010-03-02 |
審決日 | 2010-03-15 |
出願番号 | 商願昭60-130178 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(103)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
芦葉 松美 |
特許庁審判官 |
岩崎 良子 内山 進 |
登録日 | 1988-06-24 |
登録番号 | 商標登録第2055167号(T2055167) |
商標の称呼 | ルコンフォール |
代理人 | 古木 睦美 |
代理人 | 佐藤 雅巳 |