• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1216358 
審判番号 取消2009-300386 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-03-31 
確定日 2010-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4598300号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4598300号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4598300号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成13年12月7日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同14年8月23日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成21年4月20日にされたものである。

2 請求人の主張(要点)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
請求人が調査したところによれば、本件商標は、その指定商品について、日本国内において今日に至るまで継続して3年以上にわたり被請求人によって使用されていない。また、本件商標の登録原簿には専用使用権又は通常使用権の設定登録がなされておらず、他に、被請求人の許諾を受け、上記指定商品について本件商標を使用している者も見いだし得なかった。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証は、いずれも商標法第50条第1項にいう指定商品についての登録商標の使用を証明するに足るものではない。
被請求人は、乙第1号証に係る証明書が平成20年3月に、被請求人の経営する店舗において当該証明書に添付のチラシが配布されたことを証明するものであると主張している。しかしながら、当該証明書の署名者は、被請求人である株式会社ネットワークの代表取締役であり、同書面は、いわば、被請求人本人が本件商標の使用を宣言しているにすぎず、そもそも客観性を欠くものといわざるを得ない。
たとえ、該証明書に記載の事項が真実であるとしても、同書面において添付のチラシが被請求人の店舗において配布されたとの記述はあるものの、配布の対象が誰であったのか明らかにされていない。つまり、被請求人が同チラシを店舗に配布したにすぎないのであれば、これは単に運営会社である被請求人がその経営する店舗に配布した内部資料でしかない。
したがって、当該チラシが実際に商品を購入する消費者に頒布されたものであることが客観的に証明されない限り、その存在のみをもって、本件商標を付した商品が現実に市場において販売されたことを証明するものであるとはいえない。
また、「チラシ」とは、一枚刷りの紙からなる商品やサービスの販売・提供を促進する目的で頒布されるものであるのが通例であり、配布されたとするチラシもこれ1枚で完結しているものと考えられる。そうとすると、同チラシには、素材等の商品自体に関する情報やその販売場所、購入方法等、消費者が商品の購入を検討する際に参考にするであろう情報が十分に記載されておらず、本来のチラシとしての役割を果たしているとは到底いえないことからも、これが消費者に配布された可能性は低いものと考えるのが妥当である。
さらに、チラシ作成時において、同掲載商品の製造販売が行われなかったことは、証明書において、被請求人である商標権者の代表取締役が自認しているとおりである。
上記のとおり、乙第1号証をもってしては、本件商標が本件審判の要証期間内に日本国内において、被服について使用していたことを証明することはできない。
乙第2号証は、乙第1号証の証明書に記載のあるTシャツの商品サンプルの写真であると見受けられるところ、同写真の撮影日は、本件審判の要証期間経過後の平成21年6月18日である。したがって、撮影されたTシャツが本件審判の要証期間内に存在したことを証明するものではないことは明らかである。
さらに、乙第2号証に表されたTシャツの写真と乙第1号証のチラシに表されたTシャツの画像を比較すると、胸の部分にプリントされた本件商標を含むロゴの大きさ及び位置が相違しているのが見て取れることから、乙第1号証と乙第2号証に表されたTシャツは別種の商品であると考えられる。
そうとすると、被請求人の主張の前提である平成20年3月の時点において、乙第1号証に掲載のTシャツが存在したという事実には疑義があるものといわざるを得ない。
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証は、いずれも、商標法第50条第1項にいう指定商品についての登録商標の使用を証明するに足るものではなく、本件商標は、取消しを免れないものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証を提出した。
本件商標は、以下のとおり、その指定商品中「第32類(審決注:「第25類」の誤記と認められる。)被服」について、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、被請求人(商標権者)が使用している。
乙第1号証の証明書に示されているように、平成20年3月に、被請求人は、被請求人が経営する「DOG DEPT」の各店舗において、該証明書添付のチラシを配布し、サンプル商品を展示している。
乙第2号証の写真(Tシャツの全体及び商標使用部)は、その際に展示した商品サンプルである。
被請求人は、常時、スポット的にこのようなチラシを以て、前記各店舗において製品の受注を行い、その受注状況に応じた小ロット製品の製造販売を行っている。
乙第1号証及び同第2号証を客観的に証明すべく、被請求人の取引先による証明書を提出する(乙第3号証)。
また、商品サンプルの展示として、2008年4月3日に「DOG DEPT 鵠沼店」において被請求人の代表者が撮影した写真が見つかったので提出する(乙第4号証及び同第5号証)。
加えて、平成21年11月20日付けの審尋に対し、同年12月28日付けで回答した(乙第3号証ないし同第5号証を提出)が、被請求人の本件商標を使用していた状況及び事情について、さらに釈明する。被請求人は、被請求人製品(本件審判に係る商標を使用した商品を含む)の販売を、直営店においてのみ行う販売態様を採っており、卸売等は行っていない。したがって、卸売等に関し、他社との間における取引書類のごときものはない。また、昨今の不況の折、すべての商品についてすぐさま販売するのではなく、取りあえず店頭にて試験的に販売をし、評価が高く、売上が好調な商品のみ恒常的に製造し、販売を行う体勢を取っている(乙第6号証)。
以上より、被請求人は、サンプル商品(被服)及び当該商品に関する広告に本件商標を付し、それを展示及び頒布していたことは明らかである。
よって、本件審判請求には理由がない。

4 当審の判断
(1)被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第1号証は、被請求人(商標権者)である株式会社ネットワークの代表者山田孝夫による特許庁審判長あての平成21年6月17日付けの「証明書」と題する書面であり、「添付のチラシは、平成20年3月に商品サンプルを作成し、弊社が運営する『DOG GARDEN RESORT 軽井沢』及び『DOG DEPT 鵠沼店』その他の直営店において受注生産するために配布したものに相違ありません。弊社は常時このような方法で、スポット的に受注状況に応じた小ロットの製品の製造販売を行っています。なお、本件の場合の受注状況は芳しくなく、その時点では結局製造販売は行いませんでしたが、再度、若干デザインを変更したり、商品を変更したりして、引き続き本件商標を使用する予定でおります。」と記載されている。そして、該「添付のチラシ」は、Tシャツと帽子を紹介した一葉の紙であり、Tシャツを紹介した欄には、男性が着ているTシャツの胸部分に別掲(2)に示したとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されており、その右側には、色彩を異にする使用商標の3つのパターンが表示されており、下欄には、「No. ドッグトリップ-T」、「Price. ¥3,800」、「Size. S.M.L」及び「Color. ホワイト・ネイビー・グレー」と記載されている。なお、該チラシには、取扱者を特定し得る名称、住所、電話番号等の記載がない。
乙第2号証は、使用商標が表示されているTシャツの全体写真と該商標部分の拡大写真であり、下欄には、撮影日として「平成21年6月18日」、撮影者として「弁理士 斎藤貴広」、撮影場所として代理人弁理士の事務所の住所が記載されている。
乙第3号証は、一葉の紙の上段に被請求人である株式会社ネットワークの代表者山田孝夫による「証明願」、同じく下段に株式会社イングラム代表取締役加藤勉の平成21年12月16日付けの「証明書」を配した書面であり、「証明願」には、商標として本件商標を表し、その下に「当社のブランドである上記商標を用いた『被服』が掲載された広告を、平成20年3月の時点において、弊社が経営する『DOG GARDEN RESORT 軽井沢』及び『DOG DEPT 鵠沼店』において頒布したことをご証明ください。」と記載されており、「証明書」には、「株式会社ネットワーク 殿」及び「上記事実に相違ないことを証明いたします。」と記載されている。
乙第4号証は、ハンガーに掛けられた使用商標が表示されているTシャツ等の写真であり、日付として「2008.04.03」と表示されている。
乙第5号証は、使用商標が表示されているTシャツが他のTシャツ等とともに撮られた写真であり、日付として「2008.04.03」と表示されている。
乙第6号証は、被請求人の代表者による特許庁審判長あての平成22年2月9日付けの「事情説明書」と題する書面であり、「2.当社の販売態様」として「当社は、当社製品(本件審判に係る商標を使用した商品を含む)の販売を、直営店においてのみ行う販売態様を採っており、卸売等は行っていません。従って、他社との間における取引書類の如きものはありません。また、昨今の不況の折、全ての商品について、すぐさま販売するのではなく、取りあえず店頭にて、試験的に販売をし、評価が高く、売上が好調な商品のみ恒常的に製造し、販売を行う体勢を取っています。」及び「3.使用証明の方法」として「当社は、上述のとおり、直営店においてのみ当社製品を販売して、それ以外では販売していないこと、及び、本件商標を付した商品は、現時点では、試験販売のみ行っていることから、本件商標の使用の証明につきましては、先般提出したような証明書類のみとなってしまいます。なお、本件商標は、今後も使用してく予定であります。」と記載されている。
(2)被請求人は、上記乙号証により、本件審判の請求の登録(平成21年4月20日)前3年以内に、本件商標を取消請求に係る指定商品中の「被服」に使用していたことが明らかである旨述べている。
確かに、乙第1号証に添付の「チラシ」に掲載されているTシャツ並びに同第2号証、同第4号証及び同第5号証に写されている「商品サンプル(Tシャツ)」には、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標が表示されていることを認めることができる。そして、「Tシャツ」は、取消請求に係る指定商品中「被服」の範ちゅうに含まれるものであること、また、使用商標が本件商標と社会通念上同一のものであることについて、当事者間に争いはない。
しかしながら、乙第1号証の証明書は、被請求人(商標権者)の代表者による「証明書」と題する書面であり、同書面は、いわば、被請求人本人が本件商標の使用をしていた旨述べているにすぎないものであって、そもそも客観性に欠けるものといわなければならない。しかも、乙第1号証に添付の「チラシ」には、素材等の商品自体に関する情報やその販売場所、購入方法等、消費者が商品の購入を検討する際に参考にするであろう情報が十分に記載されておらず、頒布を目的とするチラシの体裁としては極めて不自然なものであり、本来のチラシとしての役割を果たしているものであるかどうかも疑わしい。
そして、被請求人は、「Tシャツ」の受注生産のために、同人の店舗である「DOG GARDEN RESORT 軽井沢」や「DOG DEPT 鵠沼店」その他の直営店において、乙第2号証に表示された「Tシャツ」を「商品サンプル」として展示し、乙第1号証に添付の「チラシ」を配布していた旨主張しているが、乙第2号証は、本件の要証明期間の後に被請求人代理人が撮影したものであり、本件審判の請求の登録前3年以内における本件商標の使用を直接証明しているものではない。
一方、被請求人は、乙第1号証及び同第2号証を客観的に証明すべく、被請求人の取引先による証明書を乙第3号証として提出しているが、該証拠は、下段の証明書中、日付け及び住所・名称・代表者の欄を空欄にして、あらかじめ被請求人が作成したものに、「月日」の記載並びに「株式会社イングラム代表取締役加藤勉」のゴム印及び会社印の押印がされたものであって、いかなる証拠に基づいて証明したものであるか不明であり、証明者は、単に取引者というものであって、証明能力は低いといわざるを得ない。また、被請求人は、「2008年4月3日に『DOG DEPT 鵠沼店』において被請求人の代表者が撮影した写真が見つかったので証拠として提出する。」として、乙第4号証及び同第5号証を提出しているが、カメラにおける日付表示機能は、過去の日付に簡単に修正できるものであり、商品サンプルが、2008年4月3日に「DOG DEPT 鵠沼店」において展示されたとは、にわかには信じ難い。したがって、これらにより、乙第1号証及び同第2号証が客観的に証明されたことにはならない。
してみると、上記乙各号証をもってしては、該商品サンプルが実際に店舗において展示されたこと、並びに該チラシが実際に店舗において展示され、又は、顧客に配布されたことを把握することができない。
登録商標の使用の事実の証明は、新聞、雑誌等への広告の事実、取引の際使用された納品伝票、仕入伝票等の取引書類その他、登録商標が使用されていた事実を客観的に認め得るに足るような資料によってなされるべきであり、被請求人(商標権者)の代表者による証明書等は、上記のような取引書類等とともに提出されてはじめて、取引の事実を補強するために有効なものとはなり得るが、そのような証明書のみによっては、登録商標の使用の事実を客観的に証明したものとはいい難い。
そして、被請求人は、他に、本件商標をその指定商品について使用をしていたことを裏付けるに足りる証拠を提出していない。
なお、当審において、被請求人に対して、請求人提出の弁駁書副本の送付に際し、「弁駁に対して答弁があれば答弁書を提出されたい。」旨の記載とともに、別途「被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証をもっては、本件商標の使用を客観的に証明したものとは認め難い。要証期間内において、本件商標の使用事実を客観的に証明できる証拠を提出した上でその旨主張立証されたい。」旨の審尋を例示を挙げて行ったところ、被請求人からは、答弁書の提出はなく、前記の乙第3号証ないし同第5号証を証拠方法とする回答書のみの提出であった。そして、前記の乙第6号証を追加する第2答弁書が提出されたが、「当社は、上述のとおり、直営店においてのみ当社製品を販売して、それ以外では販売していないこと、及び、本件商標を付した商品は、現時点では、試験販売のみ行っていることから、本件商標の使用の証明につきましては、先般提出したような証明書類のみとなってしまいます。なお、本件商標は、今後も使用してく予定であります。」との事情説明を内容とするものであり、乙第1号証の証明書の「なお、本件の場合の受注状況は芳しくなく、その時点では結局製造販売は行いませんでしたが、再度、若干デザインを変更したり、商品を変更したりして、引き続き本件商標を使用する予定でおります。」との記載等も考え合わせ、被請求人の立証は尽きていると判断して、審理を終結した。
(3)以上のとおり、被請求人の答弁及び回答書の全趣旨並びに乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
したがって、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
(1)本件商標


(2)使用商標が表示された「チラシ」の一部分



審理終結日 2010-02-23 
結審通知日 2010-02-26 
審決日 2010-03-12 
出願番号 商願2001-109485(T2001-109485) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 千里 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 2002-08-23 
登録番号 商標登録第4598300号(T4598300) 
商標の称呼 ドッグトリップ 
代理人 齋藤 貴広 
代理人 田中 克郎 
代理人 石田 昌彦 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 稲葉 良幸 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ