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審決分類 審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09141620
管理番号 1214626 
審判番号 無効2008-890112 
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-11-11 
確定日 2010-03-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4967769号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成21年3月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10211号、平成21年12月 1日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4967769号の指定商品中、第9類「全指定商品」、第14類「全指定商品」、第16類「全指定商品」、及び第20類「全指定商品」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4967769号商標(以下「本件商標」という。)は、「ANTHROPOLOGIE」の欧文字と「アンソロポロジー」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成17年11月2日に登録出願、第3類、第9類、第14類、第16類、第20類、第21類、第26類、第28類及び第34類に属する閉鎖商標原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同18年6月13日に登録査定、同年7月7日に設定登録されたものである。その後、本件商標の商標権は、権利放棄によって、同21年1月19日に登録の抹消がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
本件商標は、その欧文字部分が請求人の有する米国登録商標(甲第1号証、甲第2号証。以下、「本件各米国商標」という。)と同一である。下段の片仮名表記は、その発音を記したものにすぎない。
請求人は、本件各米国商標をブランド名の一つとして使用し、女性用の被服等の販売を行っており、本件各米国商標は継続して使用され、新聞、雑誌、TV等に掲載、報道されている(甲第4号証ないし甲第10号証)。また、請求人は、米国内では、1992年10月31日に、「ANTHROPOLOGIE」の1号店をオープンして以来、2005年11月以前に73店舗、現時点では、米国、カナダ、ヨーロッパを中心に、112店舗もの小売店を展開している。
これらの事実及び証拠から分かるとおり、本件各米国商標は、本件商標の出願時点及び査定時において、少なくとも、女性用被服及びかばん類等について、「少なくとも、アメリカ合衆国の需要者の間に広く認識されている商標」であった。
そして、被請求人のウェブサイトに掲載されている会社沿革によれば、被請求人は、平成15年(2003年)1月、「海外ブランドの発掘を目的とし、米国ニューヨーク市に事務所を設立」し、平成19年(2007年)3月には、「アメリカに於けるカジュアルウェアのテストマーケティングの目的で、ニューヨーク州に『Crymson USA INC.』を設立」している。被請求人は、本件商標の出願時、米国において服飾業界の調査活動等を行っており、また、有名被服ブランドのライセンス事業も行っている(甲第13号証)。
そうとすれば、被請求人は、本件各米国商標を知るに至り、請求人が築き上げてきたブランドとしての価値や宣伝力に「ただ乗り」する不正な目的をもって登録に及んだことは明らかである。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であり、不正の目的をもって使用するものであるから商標法第4条第1項第19号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、答弁していない。

第4 当審の判断
請求人の主張の全趣旨及び甲第3号証ないし甲第13号証によれば、次の事実を認めることができる。
1 本件各米国商標の周知性について
(1)請求人は、「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用した商品の広告を米国の新聞「ザ・ニューヨーク・タイムズ」に掲載することによる宣伝活動を行っている(甲第4号証)。
(2)2004年(平成16年)11月、米国の雑誌「Forbes」に請求人のCEO(最高経営責任者)と「ANTHROPOLOGIE」を取り上げた記事が掲載された(甲第5号証)。
(3)請求人は、アメリカ合衆国ペンシルバニア州に主たる営業所を有するペンシルバニア州籍の法人である(甲第11号)。
(4)請求人は、1989年(平成元年)から「ANTHROPOLOGIE」の商標を女性用被服及びハンドバッグ等に使用している(甲第11号証)。
(5)請求人は、1992年(平成4年)10月31日、「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用した店舗を米国で開店し、2005年(平成17年)11月以前までに米国で73店舗を運営するようになり,さらに同月には3店舗を開店させ、2008年(平成20年)8月8日の時点では米国で112店舗を運営している(甲第11号証)。
(6)1998年(平成10年)、「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用したカタログが初めて発行され、2005年(平成17年)1月31日までに約7,877万部が頒布され、さらに2006年(平成16年)1月31日までの間に約2,438万部が頒布された(甲第11号証)。
(7)請求人が開設した「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用したウェブサイトでは、1998年(平成10年)12月から女性用被服及びハンドバッグ等の商品を購入することができるようになり、2004年(平成16年)9月1日から2005年(平成17年)10月31日までの間のユニーク・ビジット(訪問者を頁ごとの重複カウントなしで算出した数)の数は約1,364万件であった(甲第11号証、甲第12号証)。
(8)上記の本件各米国商標を使用した店舗の数、カタログ頒布部数、ウェブサイトの開設状況及びその利用状況等の事実関係によれば、本件商標の登録出願の日(平成17年11月2日)及び登録査定の日(平成18年6月13日)において,本件各米国商標は少なくとも米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需要者の間に広く認識されていた商標であると推認することができる。
2 不正の目的について
(1) 被請求人は、昭和59年(1984年)1月26日に設立された衣料品の製造・販売等を目的とする株式会社であり、複数のカジュアルウェアのブランドを使用してカジュアルウェアの卸売り、販売及びブランドライセンス事業を行っている(甲第13号証)。
被請求人は、昭和59年1月に卸売業を開始し,同年8月には小売業に進出することを目的として都内に出店し、平成10年9月には卸売事業における季越品(シーズンを過ぎた商品)の販売を目的とするアウトレット店舗を都内に出店し、平成12年12月には商品の安定生産及び生産コスト削減を目的として中国江蘇省無錫市に設立された有限公司に合弁事業として出資した(甲第13号証)。
被請求人は、平成15年1月に海外ブランドの発掘を目的として米国ニューヨーク市に事務所を設立し、平成19年3月に米国におけるカジュアルウェアのテストマーケティングを目的としてニューヨーク州に「Crymson USA INC.」を設立した(甲第13号証)。
(2)上記(1)の事実によれば、被請求人は、昭和59年に設立された会社であり、カジュアルウェアの販売や被服のブランドライセンス事業を行っており、外国の服飾ブランドについても専門知識を有していたものと推認できる。
そして、被請求人は平成15年1月には海外ブランドの発掘を目的として米国ニューヨーク市に事務所を設立していたのであるから、本件商標を出願した平成17年11月2日の時点で、当時米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需要者の間に広く認識されていた本件各米国商標を知っていたとみるのが自然である。
また、本件商標は、前記のとおり「ANTHROPOLOGIE」の欧文字と「アンソロポロジー」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなるものである。これに対し、本件各米国商標は「ANTHROPOLOGIE」の欧文字からなるものである。そして、両商標は、いずれもその構成文字に相応して「アンソロポロジー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そうとすれば、両者は、「ANTHROPOLOGIE」の欧文字の綴り及び「アンソロポロジー」の称呼を同じくするものであって、観念においては比較することができないものであるから、類似の商標と認められる。
してみれば、「ANTHROPOLOGIE」の語が仏語及び独語の「人類学」意味する語であるとしても、当該語は英語の辞書には掲載されていないこと、本件各米国商標が米国において周知性を有していること、本件商標と本件各米国商標とが類似する商標であること、両者の商品が互いに関連のある商品であること及び被請求人の事業活動を考慮すると、被請求人は本件各米国商標が周知であることを知りながら、本件商標を自ら使用することによって不当な利益を得るため本件商標の登録出願をしたものと推認するのが相当である。
したがって、被請求人は本件商標を使用するにつき不正の目的を有していたというべきである。
3 被請求人は何ら答弁していない。
4 小括
上記1ないし3によれば、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている本件各米国商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 結語
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
審理終結日 2009-02-17 
結審通知日 2009-02-20 
審決日 2009-03-25 
出願番号 商願2005-103139(T2005-103139) 
審決分類 T 1 12・ 222- Z (Y09141620)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2006-07-07 
登録番号 商標登録第4967769号(T4967769) 
商標の称呼 アンソロポロジー、アンソロポロジエ 
代理人 木下 洋平 

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