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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X25
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない X25
管理番号 1210061 
審判番号 無効2009-890044 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-07 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5173386号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5173386号商標(以下「本件商標」という。)は、「VICTORY CLUB」の文字を標準文字で表してなり、平成19年12月28日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い」を指定商品として、同20年10月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第565185号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ビクトリー」と「勝利」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和33年10月23日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同36年1月25日に設定登録され、その後、平成13年10月24日に第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップ・ずきん・ヘルメット・帽子・冠・水泳帽・足袋を除く。),運動用特殊衣服」を指定商品とする書換登録がなされたものである。
(2)登録第2094735号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和52年6月10日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、平成20年8月13日に第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」を指定商品とする書換登録がなされたものである。
(3)登録第4182765号商標(以下「引用商標3」という。)は、「VICTORY」と「びくとりー」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成9年1月20日に登録出願、第25類「被服(「和服」を除く。),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として、同10年8月28日に設定登録されたものである。
(以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用各商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、一文字分のスペースを介して「VICTORY」と「CLUB」の二語が結合されたものである。
(2)引用各商標の要部がそれぞれ「びくとりー」「victory」「VICTORY」であることは明らかであるところ、「CLUB」の語単独でも商標登録されている(甲第6号証)ことに照らせば、本件商標についても「VICTORY」と「CLUB」の各語が独立して自他商品識別の機能を発揮し得るといえる。
(3)ところで、従来、何らかの語を冠して「○○CLUB」と構成された商標は、当該商標全体としてある種の同好会等の集団・団体を想起させることからこれを一体的に把握し、「CLUB」の前に置かれた語のみからなる商標とは相互に類似しないと判断される傾向も見られる。
しかしながら、今日では「CLUB」の語は、同好の者の集まりを意味する日常語として広く用いられるようになっているため、むしろ自他商品識別力の観点からすれば出所表示機能が希薄になっているので、「CLUB」の前に置かれた語を要部として認識されることも少なくない。とくに学校教育現場においては、「クラブ活動」として大半の生徒が各種運動系や文科系のクラブに所属し課外活動を楽しんでいることに照らせば、もはや「CLUB」の語は一般に広く知れ渡っているといえる。
また、本件商標からは、全体として「勝利クラブ」といった観念が生ずるともいえなくはないが、「勝利クラブ」なる言葉は一般的な成語ではないから、いささかこじつけ的な観念との感は拭えない。
(4)一方、後述するように、引用各商標に基づいて請求人が使用する商標「VICTORY」は、請求人が製造し販売する中学・高等学校の運動用被服の商標として取引者・需要者間において広く知られている。
以上のように、本件商標における「VICTORY」と「CLUB」の二語の結合状態は決して強いものではなく、むしろ、中学・高等学校など学校用衣料品の取引者・需要者においては、請求人の使用商標の周知性と相俟って、「VICTORY」の部分のみを独立して認識することも少なくないとみるべきであるから、当該「VICTORY」の部分に対応して単に「ビクトリー」の称呼や「勝利」なる観念も生ずるというべきである。
(5)したがって、本件商標は、その文字構成から自然に「ビクトリー」の称呼、「勝利」の観念を生ずる引用各商標と、商標が相互に類似しているうえ、指定商品「被服」について相互に抵触しているから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、明治9年に「足袋」の製造業者として現在の岡山県玉野市に創業し、大正13年5月10日に帝国足袋株式会社を設立、昭和5年に学生服の生産を開始した後、帝国興業株式会社(昭和19年)、帝国紡績株式会社(昭和25年)、テイコク株式会社(昭和49年)、トンボ株式会社(平成18年)と数次の社名変更を経ながら、現在に至るまで男女学生服や各種ユニフォームの製造販売を主たる事業としており、その製品は日本全国に販売されている。ちなみに請求人の2008年6月期における学生衣料部門の売上高は179億円超であり、全国首位であった(甲第7号証ないし甲第10号証)。
昭和30年、請求人は「ビクトリー」商標(引用商標1)を付した学生服を発売したが、昭和52年6月になって「VICTORY」商標(引用商標2)をスポーツウェア(児童生徒専用ではなく、一般店頭販売される大人用も含めた運動用衣服)のブランドとして本格採用し、テニス、ソフトボール、サッカー、バレーボール、ゲートボールなどの専用ウェアのほか、ニットシャツ、パーカーなど多品種に亘って提供してきた。なお、販売対象によっては、商標「VICTORYPAL’S」(甲第11号証)や商標「VICTORY APEX」(甲第12号証)、商標「VICTORY X」(甲第13号証)、商標「VICTORY POURFEMM」(甲第14号証)を使い分けながらスポーツウェアとしてのシリーズ展開を行っていた。
平成7年頃からは、販売対象を中学・高等学校における正規の体育授業に使用される体操服や、課外のクラブ活動に使用される運動用被服(スポーツウェア)に集約して現在に至っている。
平成13年、前記商標「VICTORY X」(甲第13号証)を採用したことを契機に、請求人は、商標「VICTORY」を冠したスポーツ教室「ビクトリースポーツ教室」を開催し、全国の小学校、中学校、高等学校に講師を派遣し、講演と実技指導を開始した。講師には、衣笠祥雄(野球)、村田兆治(野球)、山口良治(ラグビー)、永島昭浩(サッカー)、セルジオ越後(サッカー)、松木安太郎(サッカー)、有森裕子(陸上)、沢松奈生子(テニス)などの著名なアスリートを招聘し、平成20年までの7年間に全国39校で開催している(甲第9号証、甲第28号証及び甲第29号証)。
(2)そして、2008年度のスクールスポーツウエア部門における請求人商品の売上高は約30億円であり、全国第4位のシェアであった(甲第23号証)。また、商標「VICTORY」(ビクトリー)を使用した運動用被服の売上高は、2006年度で約11億4千万円、2007年度で約11億3千万円であった(甲第22号証)。
(3)以上のように請求人が使用してきた結果、遅くとも本件商標の登録出願日である平成19年12月28日までには、「VICTORY」商標は、請求人の製造・販売する運動用被服(スクールスポーツウェア)の商標として、特に中学・高等学校関係者を中心に広く知られていたのであり、その状況は現在でも変わらない(甲第13号証ないし甲第29号証)。
(4)一方、本件商標の指定商品は、上記第1のとおりであるところ、これら指定商品中には男女学生服やシャツ、ブラウス、スカーフ、ネクタイなど学校用衣料品として販売されるものも多く含まれているし、また、請求人の製造販売するスポーツウェアが中学・高等学校の課外授業としてのクラブ活動用も主なターゲットとしていることに照らせば、本件商標「VICTORY CLUB」を前記指定商品に使用した場合、需要者に請求人の商標「VICTORY」のセカンドラインであるとか、課外授業としてのクラブ活動用に特化した商品であると認識されるおそれも多分にある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも違反して登録されたものである。
4 以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その構成中「VICTORY CLUB」の各文字が同一の大きさ、同一の書体をもって書され、「VICTORY」の文字と「CLUB」の文字との間に1文字分の間隔があるにしても軽重の差もなく左右対称に一連の状態に横書きしてなるもので、全体としてまとまりよく一体的に看取し得るものである。
これを殊更に「VICTORY」と「CLUB」とに分離して、「VICTORY」を本件商標の要部として看取しなければならない必然性はない。本件商標は、その指定商品の取引者及び需要者の通常の注意をもってした場合でも、一連不可分のものとして看取されるものである。
したがって、本件商標は、その構成全体から「ビクトリークラブ」の一連の称呼のみを生じるものである。そして、「ビクトリークラブ」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
これに対し、引用商標1は、「ビクトリー」と「勝利」の各文字を上下二段に横書きしてなるもので、その構成からして「ビクトリー」と「ショウリ」の称呼、観念を生じるものである。
引用商標2は、請求人の主張によれば、欧文字「V」を模したものである図形の後に続けて「Victory」の欧文字を横書きしてなるもので、その構成からして「ビクトリー」のみの称呼、観念を生じるものである。
引用商標3は、「VICTORY」と「ビクトリー」の各文字を上下二段に横書きしてなるもので、その構成からして「ビクトリー」のみの称呼、観念を生じるものである。
本件商標から生じる「ビクトリークラブ」の称呼と引用各商標から生じる「ビクトリー」の称呼とは、「クラブ」の音の有無の差違を有するものであるから、明確に聴取し得るものである。
また、本件商標の構成中、後半の「CLUB」の文字は、一般に政治、社交、文芸、娯楽その他共通の目的によって集まった人々の団体を意味する語としてよく知られているところであり、団体の名称を表す場合に一般に「○○クラブ」又は「クラブ○○」のように何らかの語の前後に付して使用されているのが実情である。本件商標は、その構成全体から一体不可分の団体の名称として「勝利を求める、好む人々の集まり」程度の意味合いを表したものと認識、理解されるものとみるのが自然である。
従前より、特許庁において、本件商標のように何らかの語の前後に「CLUB」又は「クラブ」の文字を付した商標と、「CLUB」又は「クラブ」の文字を付していない語のみから構成される商標とは非類似であると判断する審判、異議申立の事例は、多数存在する。その中で、第25類「被服」を指定商品とするものの一部として乙第1号証ないし乙第9号証のような事例が存在する。
さらに、本件商標と引用各商標とは、上述したとおり構成上の差違があるから、外観上も相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、その称呼、観念、外観のいずれからしても十分に区別し得る商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、同人が使用する商標「VICTORY」が、遅くとも本件商標の登録出願日までに、請求人の製造・販売する運動用被服の商標として特に中学・高等学校関係者を中心に広く知られており、現在もその状況が変わらないから、本件商標をその指定商品に使用すれば、本件商標の構成中「VICTORY」の文字部分のみが看取されて、請求人の製造・販売する運動用被服と出所の混同を生じるおそれがあると主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号に規定する「商品の出所の混同」は、商標それ自体のみならず、その商品の取引の実情等を十分に考慮して判断すべきであるとするのが、特許庁の審査基準であり、また通説でもある。
以下に説明するように、商品の取引の実情や特許庁における商標登録の実例に照らしてみれば、請求人の「VICTORY」の商標が運動用被服について著名性を獲得しているものとは到底いえない。
先ず、第25類「被服」を指定商品とする登録商標において、その構成中に「VICTORY」又は「ビクトリー」の文字部分を含むものが、乙第10号証ないし乙第17号証のとおり多数存在する(なお、乙第17号証の「商願2008-99892(平成21年4月23日登録査定)」となっていた商標登録出願は、登録第5239341号商標として登録済みである。)。
これらの登録商標は、現在も有効に存続しているだけでなく、少なくともそのいくつかは現にその指定商品に付して使用されていることを、被請求人代理人は当該商標権者から聴取している。
特に、乙第10号証の商標登録第4423686号「VICTORY STAGE」は、請求人が「VICTORY」の商標を付して使用する運動用被服と同種の運動用被服商品(野球ウェア)に現に使用されており、同商標登録の商標権者(訴外美津濃株式会社)が運営するインターネット公式サイトには、当該登録商標が当該商品と共に掲載され、全国に幅広く広告宣伝されている(乙第18号証)。さらに、訴外美津濃株式会社は、様々なスポーツについて「ミズノビクトリークリニック」と称するイベントを全国規模で開催していることが良く知られている(乙第19号証)。
かかる取引の実情、特許庁での登録例等に照らして鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所の混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
3 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当するものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「VICTORY CLUB」の文字を標準文字で表してなるものであって、中間部分に一字程度間隔を有するとしても、各構成文字は同じ書体、同じ大きさで外観上極めてまとまりよく一体的に表されており、また、これより生ずる「ビクトリークラブ」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の構成中の「VICTORY」の文字は、「勝利」等の意味を有する語として、我が国において広く一般に知られており、また、「CLUB」の文字は、「運動、社交など共通の目的によって集まった人々の団体」を意味し、団体の名称を表す場合に「○○○クラブ(CLUB)」「クラブ(CLUB)○○○」のように他の語の前後に付して用いられるものとして、我が国において広く一般に知られているものである。
そして、本件商標は、その構成中「VICTORY」の文字部分のみ抽出し、検討しなければならない特段の事情は見いだすことはできない。
そうとすれば、本件商標は、その構成全体から「勝利のクラブ」のごとき意味合いを認識させる「VICTORY CLUB」という団体名称を表した一体不可分のものとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、「VICTORY CLUB」の文字全体をもって、自他商品識別標識として機能するものであって、その構成文字に相応して「ビクトリークラブ」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものの、「勝利のクラブ」のごとき意味合いを有するものと判断するのが相当である。
なお、請求人は、「本件商標は、『VICTORY』『CLUB』の各語がそれぞれ独立して自他商品識別の機能を発揮し得るといえ、請求人が使用する商標『VICTORY』の周知性と相俟って、中学・高等学校など学校用衣料品の取引者・需要者においては、その構成中の『VICTORY』の部分のみを独立して認識することも少なくないとみるべきである。」旨主張しているが、本件商標が団体名称と認識される一体不可分のものであること上述のとおりであり、また、下述のとおり「VICTORY」、「victory」又は「ビクトリー」の文字が請求人の商標として取引者、需要者の間において広く知られていたものとは認められないから、請求人の主張は採用できない。
(2)引用各商標について
他方、引用各商標は、上記第2のとおり引用商標1は「ビクトリー」と「勝利」の組み合わせ、引用商標2は図形と「victory」の組み合わせ、及び引用商標3は「VICTORY」と「びくとりー」の組み合わせからそれぞれなるものであるから、いずれも「ビクトリー」の称呼及び「勝利」の観念を生じるものである。なお、引用商標1からは、「ショウリ」の称呼も生ずる。
(3)小括
してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観においてはそれらの構成から明確に区別でき、称呼においては「ビクトリークラブ」と「ビクトリー」との比較において、「クラブ」の音の有無という差異によって明確に聴別でき(「ショウリ」との比較においても明確に区別できる。)、さらに、観念においては比較できないものであって相紛れるおそれのないものであるから、両者は、それらの外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の商標「VICTORY」の周知性について
請求の全趣旨及び甲第7号証ないし甲第29号証によれば、次の事実が認められる。
ア 請求人は、昭和30年に、商標の使用態様は不明であるが、「ビクトリー」商標の学生服を発売したこと(甲第8号証)。
イ 請求人は、昭和56年頃から平成20年までの間、継続して、引用商標2と社会通念上同一と認められる商標、「victory」、「ビクトリー」又は「VICTORY」の各商標を、スポーツウエアについて使用していたこと及び平成16年頃から、主に「V」の文字がデザイン化され他の文字より大きく表示されている態様の「VICTORY」商標(以下、「デザイン化されたVICTORY商標」という。)、「VICTORY X」商標を使用していること(甲第8号証、甲第9号証、甲第15号証、甲17号証、甲第21号証及び甲第23号証ないし甲第26号証)。なお、職権による調査によれば、請求人は現在においてもデザイン化されたVICTORY商標等をスポーツウエアについて使用している(http://www.tombow.gr.jp/sportsnew/brand/)。
ウ 商標「VICTORY」(ビクトリー)を使用した運動用被服の売上高は、2005年(平成17年)度が約11億3千万円、2006年(平成18年)度が約11億4千万円、2007年(平成19年)度が約11億4千万円であったこと(甲第22号証)。
エ 請求人は、平成13年から現在まで継続して、「トンボが応援」の文字と共に、デザイン化されたVICTORY商標を中心に「VICTORY」等の商標を使用し、平成20年5月末までに39校でスポーツ教室を開催したこと(甲第9号証、甲第28号証及び甲第29号証)。
これらの事実からすれば、引用商標2(社会通念上同一と認められる商標を含む)及びデザイン化されたVICTORY商標は、中学・高等学校関係者の間で、請求人の製造・販売する運動用被服(スクールスポーツウェア)の商標としてある程度知られていたことは認められるとしても、「VICTORY」、「victory」又は「ビクトリー」の文字は、請求人の商品であることを表すものとして一般の取引者、需要者の間において広く知られていたものとは認めることはできない。
なお、請求人は、「『VICTORY』商標は、請求人がこれを運動用被服(スクールスポーツウェア)等について使用し、また、商標『VICTORY』を冠したスポーツ教室『ビクトリースポーツ教室』を著名なアスリートを招聘し、平成20年までに全国39校で開催した結果、遅くとも本件商標の登録出願日である平成19年12月28日までには、請求人の製造・販売する運動用被服(スクールスポーツウェア)の商標として、特に中学・高等学校関係者を中心に広く知られていた。」旨主張している。
しかしながら、商標「VICTORY」(ビクトリー)を使用した運動用被服の売上高は、2005年度ないし2007年度の3年間,いずれも11億円台にすぎないこと、「VICTORY」、「victory」又は「ビクトリー」の文字は主に商品に関する記述中に認められること及びスポーツ教室においては上記のエで述べたように「トンボが応援」の文字と共に、デザイン化されたVICTORY商標が使用されていることから、請求人の主張は採用できない。
(2)出所の混同のおそれ
「VICTORY」、「victory」又は「ビクトリー」の文字が請求人の商品であることを表すものとして一般の取引者、需要者の間において広く知られていたものとは認められないこと上述のとおりであり、さらに、本件商標と「VICTORY」、「victory」又は「ビクトリー」の各商標とは、上記1(3)で述べたように、それらの外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない別異の商標であるから、被請求人が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人の商標を連想、想記するものとは認められず、その商品を請求人若しくは請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれのないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(引用商標2)

審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-06 
審決日 2009-11-17 
出願番号 商願2007-128630(T2007-128630) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X25)
T 1 11・ 26- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅沼 結香子金子 尚人 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2008-10-17 
登録番号 商標登録第5173386号(T5173386) 
商標の称呼 ビクトリークラブ 
代理人 森 寿夫 
代理人 梅田 明彦 

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