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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1210033 
審判番号 取消2008-301328 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-13 
確定日 2010-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5075094号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5075094号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5075094号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成18年10月10日に登録出願、第41類「インターネット・携帯電話による通信を用いて行う動画の提供」を指定役務として、同19年9月7日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第271号証を提出した。
1 請求の理由
以下(1)ないし(5)のとおり、被請求人による本件商標の「インターネット・携帯電話による通信を用いて行う動画の提供」についての使用は、著名な引用商標を容易に連想させる態様からなるものである。
したがって、商標権者の使用に係る商標は、本件商標と類似する商標の使用であって、使用に係る商標を本件商標に係る指定役務に使用した場合、あたかも請求人の業務に係る役務であるかのように混同を生ずるものであるから、本件商標の登録は、商標法第51条の規定により、取り消されるべきものである。
(1)使用商標の使用状況について
ア 被請求人は、インターネットのウェブサイト(URL:http://www.mutube.to.jp/)において、2006(平成18)年ころから、別掲(2)ないし(5)のとおりの構成からなる使用商標1ないし4(以下、これらをまとめて「使用商標」という。)を使用している(甲第9号証及び甲第10号証)。
イ 請求人は、下記の登録商標を有している。
(ア)「YouTube」の文字を標準文字で表してなり、平成18年7月28日に登録出願、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年10月27日に設定登録された登録第4999382号商標(甲第2号証。以下「引用商標1」という。)。
(イ)別掲(6)のとおり、「You」の文字と「Tube」の文字を、ブラウン管をイメージし、周囲を囲む線に多少の膨らみをもたせた長方形の枠で囲み、かかる枠内においてはその背景を赤に着色した構成からなり、平成18年7月28日に登録出願、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年10月27日に設定登録された登録第4999383号商標(甲第3号証。以下「引用商標2」という。また、引用商標1と同2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。)。
そして、引用商標は、その構成文字に相応して、「ユーチューブ」の称呼が生ずる。また、引用商標は、請求人の提供する動画共有サイトの提供に係る商標として著名となっていることは後述のとおりである。
ウ 使用商標は、本件商標の態様と異なり、「My」の文字とともに「Tube」の文字を、引用商標2と同様に、ブラウン管をイメージし、周囲を囲む線に多少の膨らみをもたせた長方形の枠で囲み、かかる枠内の背景は青色に着色した態様に変更されているものである。また、本件商標の欧文字部分の「MyTube」は、明朝体からなるのに対して、使用商標は、かかる文字部分をゴシック体に変更した上で、引用商標2と同一フォント或いは極めて類似するフォントに変更されて使用されているものである。特に、ブラウン管をイメージし、周囲を囲む線に多少の膨らみをもたせた長方形の枠と一体的な構成からなる「Tube」の文字は、縦・横のバランス、文字の太さなどを観察すると、ほぼ同一のレタリングによるものといえる。また、ブラウン管をイメージした、長方形の枠の縦・横の比率及び膨らみの程度などもほとんど同一といえる程までに模して使用されているものである。かかる図形部分は、使用商標の態様として、看者の注意を引く態様となっている。
(2)引用商標の著名性について
引用商標は、請求人が日本及び世界において、動画共有サイトの運営等について使用している著名商標である(甲第4号証ないし甲第8号証及び甲第11号証ないし甲第260号証)。
請求人は、オンラインでの動画配信の先駆者として、引用商標を有名ならしめたユーチューブ リミテッド ライアビリティーカンパニー(以下「ユーチューブ社」という。)を2006(平成18)年11月に買収し完全子会社化したことにより、現在、引用商標の管理を行っている企業である。
ユーチューブ社は、3人の若者によって、2005(平成17)年2月にカリフォルニア州サンマテオで設立されたベンチャー企業であり、動画共有サイト運営の先駆者としての活動のそもそもの始まりは、この3人の若者が、自作のパーティビデオを簡単に友人らに配ったり、交換するための方法として開発したサイトの運営であった。かかるサイトの名称は「YouTube」(以下「ユーチューブ」という。)と名づけられ、引用商標は、同サイトにおける動画配信サービスに係る商標として、以下に述べるとおり、瞬く間に日本のみならず世界のネットユーザーに浸透した。
ユーチューブは、会員登録をすることによって、誰でも容量100MB、再生時間10分以内の動画ファイルをアップロードし公開することができるサイトであり、その動画ファイルは会員登録をしていないユーザーでも無料で閲覧することができる。また、閲覧したい動画のキーワード検索も行うことができ、会員登録したユーザーはさらに閲覧した動画に対するコメントを投稿したり、動画を5段階で評価したりといったこともできる。ユーチューブ社がこうした動画配信サービスを提供する以前は、マルチメディアフォーマットの多様性、ファイル容量の大きさ、ウェブへのアップロード方法の難しさなどが障害となって個人が容易にビデオをウェブ上で公開する手段がなかった。そこで、これに対処すべくユーチューブ社はユーチューブを通して個人が容易にビデオクリップをアップロードし、タグを付け、インターネットや電子メールを通してさらに個人専用のビデオネットワーク経由などにより他の人と共有できるようにした。
ユーチューブは、当初は英語のみで運営されているサイトであったが、サービスを開始して間もなく世界中から日々、6万5千件もの投稿があり、1億件を超える動画が配信されるようになった。当時、日本から視聴している人の数も多く、その数が急増したため、マスコミなどでも頻繁にとり上げられることとなった。2007(平成19)年6月には、日本語のサイトも完成しており、より多くの日本のユーザーのアクセスを容易ならしめている。
2006(平成18)年3月時点では、米国内からのアクセスが1ヶ月あたり800万、日本国内からのアクセスも1ヶ月あたり200万を数えるほどであった。簡単に動画をアップロードし、閲覧も可能であるという利便性から世界的に人気があり、ユーチューブ社がサービスを開始して1年で驚異的に利用者を増やし、現在もそれはとどまるところを知らない。
ユーチューブは、また、手軽に動画が楽しめることからコンテンツ業界にも早くから注目され、米国では、映画制作会社と提携し、映画の予告編がユーチューブで配信されたり、或いは米国のテレビ会社であるCBSや、英国のBBCとも提携をして話題を呼んだ。
ユーチューブは、文化・経済・政治などの各側面からも多様な存在意義を有しており、中でも政治面としては、米国において、「You Choose‘08」を用意し、2008(平成20)年アメリカ合衆国大統領選挙のために、候補者と有権者が直接映像で意見交換をする場を設置した。ここには、民主党・共和党の大統領候補者数名が既に自ら登録を済ませている。候補者は、自分専用のサイトを開設し、宣伝のためのさまざまな映像を流すことができるほか、候補者についての肯定的・否定的なさまざまな動画がここで流されており、多くの人々が見るためその影響力は極めて大きなものとなっている(甲第260号証)。
日本でも、2007(平成19)年12月に、自由民主党、社会民主党、日本共産党が相次いで公式チャンネルを開設し、政策発信や党の活動状況の情報配信を実施し、若い有権者へのアピールを行っている。この他、日本では、ユーチューブが日本語に正式に対応したのを受け、多くの日本企業と提携して単なる動画配信にとどまらない新たな活用法やビジネスモデルが模索されているところである。
ユーチューブ社は、動画配信サービスを始まりとして、絶えずネット業界を革新的にリードする企業として内外からの注目を浴びており、さまざまな側面で、新聞・雑誌・TVなどで数多く取り上げられている(甲第11号証ないし甲第260号証)。また、当然ながら、インターネットにおいても非常に数多く紹介され、インターネットにおける主要な検索エンジンによる検索でも実に多くのヒット数を誇っている(甲第6号証ないし甲第8号証)。
上述したように、ユーチューブ社及びユーチューブの先駆的かつ革新的な活動及び努力の結果、今日では、引用商標は、日本及び世界において著名となるに至っている。
(3)役務等の出所の混同について
被請求人は、使用商標を、インターネットの動画検索サイトの提供を行う役務に使用しており、かかる役務は、請求人が提供する動画共有サイトの提供に係る役務と類似するものである。また、被請求人と請求人の提供役務は、ともにインターネットを通じて行っているものであることから、役務の提供方法を同一にし、需要者も競合することから、役務の提供を受ける需要者は、相紛らわしい両商標の役務に接することになり、本件商標は、請求人の業務に係る役務との出所の混同を生ずるおそれがある。
また、前記(1)で述べたとおり、使用商標は、いずれも著名な引用商標を容易に連想させる態様であるということができ、かかる態様の使用商標に接した需要者は、その態様から、著名な引用商標に係る役務であるかのように認識し、その役務の出所について混同することのみならず、その役務の質について誤認を生ずるおそれがあるといわなければならない。
(4)本件商標と使用商標の類似性について
本件商標は、「マイチューブ」の文字と「MyTube」の文字を二段に併記してなるものである。一方、使用商標は、「MyTube」の文字のみからなるものであり、さらには、「Tube」の文字部分については、全体を長方形の枠で囲み背景を青色に付してなる態様であるから、本件商標とは同一ではない。さらに、使用商標の中には「MyTube」の文字のほか、これに密接して「Plus」あるいは「TV」の文字を付した態様のものも存在するが、かかる使用商標についても、本件商標とは同一とはいえない。 一方、使用商標は、「MyTube」の文字からなる、あるいは「MyTube」の文字が要部と考えられる態様からなることから、称呼は同一であり、使用商標は、本件商標と類似するものである。
(5)被請求人の故意について
被請求人は、使用商標を、インターネットの動画検索サイトの提供を行う役務に使用しており、かかる役務は、請求人が提供する動画共有サイトの提供に係る役務と類似するものである。また、上述のとおり、引用商標を使用した、請求人の動画配信サービスは、ネット業界において先駆的なものであったという事情があり、2005(平成17)年のサービス開設当初から瞬く間にネットユーザに広まると同時に、インターネット、新聞・雑誌・TVなどで数多く取り上げられたことから、被請求人は、使用商標の使用開始当初より、請求人の提供サービスはもちろん、著名な引用商標を知悉していたものといえる。すなわち、被請求人がインターネットの動画検索サイトの提供を行う役務に使用を開始した2006(平成18)年ころは、ちょうど請求人の動画共有サイト及び同サービスの提供に係る商標として、引用商標の需要者の周知度が急上昇した時期と合致することから、被請求人は、使用商標の使用にあたり請求人の業務に係る役務「動画共有サイトの提供」と混同を生ずるとの認識があったと推認されることから、被請求人には故意があったというのが相当である。
2 弁駁の理由
(1)混同のおそれがない旨の主張について
ア 被請求人は、使用商標と引用商標は、使われている文字や色彩、図柄が異なり、混同のおそれがない旨主張する。
しかし、商標法第51条第1項における混同の有無に関しては、需要者保護を目的とする商標法の趣旨にかんがみて、現実に混同を生じている場合のみならず、混同を生ずるおそれがある場合を含むと解される(最判昭60.2.15昭59(行ツ)8号)。ここで、「混同を生ずるおそれ」の有無は、(a)当該商標と他人の表示との類似性の程度、(b)他人の表示の周知著名性及び(c)独創性の程度や、(d)当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者・需要者の共通性(e)その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものであるとされる(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
使用商標は、引用商標と同一の文字からなる「Tube」の語を有し、最初の「My」の部分は、英語の人称代名詞(所有格)を表す語である。一方、引用商標の語頭の「You」は、英語の人称代名詞(主格)を表す語であり、また、本件商標と引用商標の共通する「Tube」の語は、「テレビ、ブラウン管、電子管、チューブ」といった意味内容を有している。
使用商標と引用商標を比較すると、使用商標は、「マイチューブ」の称呼を生ずるが、「マイ」の部分は、非常に短い2音から構成され、「マ」及び「イ」の音は強く発音される音ではなく、中でも、次の語「チューブ」に続く直前の音となる「イ」の音は、弱く発音され、比較的聞き過ごされやすい中間音であることから、「マイチューブ」の称呼を発した際には、強く発音され耳に明瞭に残る「チューブ」の部分が印象に残る。一方、引用商標からは、「ユーチューブ」の称呼が生ずるが、最初の2音「ユー」の部分は、前舌面を硬口蓋に近づけて発する有声摩擦音で比較的弱い音であることから、「ユーチューブ」の称呼を発した際には、強く発音され耳に明瞭に残る「チューブ」の部分が印象に残る。したがって、使用商標と引用商標は、全体として称呼上、相紛れるおそれがあり、称呼上類似する商標である。
次に、使用商標と引用商標は、商標を構成する最初の語が異なるものの、「Tube」の部分を共通にし、かかる語の前に位置する語がいずれも人称代名詞であって、「あなた」との意味を有する「You」と「私の」との意味を有する「My」の違いのみである。そして、使用商標は、その構成する語に応じて「私のチューブ」、「私のテレビ」等の意味内容が生じ得る。一方、引用商標は、その構成する語より、「あなた(の)チューブ」、「あなたのテレビ」等の意味内容を有していることから、観念上非常に密接な関係を有し、両商標は観念上相紛らわしく、類似する商標である。
また、使用商標と引用商標は、人称代名詞の「You」と「My」の違いのみであることから、全体としてみた場合、相紛らわしく外観上も類似する商標である。
引用商標は、請求人により提供される動画共有サイトのサービス内容自体が画期的・独創的で、広く周知されていたことも相まって、造語商標「YouTube」の文字全体のみならず、ブラウン管をイメージし、背景を赤色に着色した長方形内に白抜きで顕著に書された「Tube」の文字を伴う図形部分は、需要者等をして、強く印象付けられているというべきであり、引用商標2は、高い独創性を有するとみるのが相当である。
このように、引用商標2のブラウン管をイメージし、背景を赤色に着色した長方形の図形部分と、使用商標の同じくブラウン管をイメージし、背景を青色に着色した長方形の図形部分は、各商標において最も看者の注意を引く部分となっており、この点においても、両商標の外観は極めて近似し、彼此紛らわしいといえる。
以上より、使用商標と引用商標は、称呼・外観・観念上も類似するものであり、さらに、引用商標は、我が国において、取引者、需要者に広く認識されている。してみれば、被請求人の使用商標の使用は、請求人の業務に係る役務と出所の混同を生ずるものといわざるを得ない。
イ 被請求人は、「Tube」の文字が使われた商標は、平成18年に引用商標が登録される前後にわたって、多数の商標が登録され、また、「Tube」を含む名前のウェブサイトも多く世に存在するとして、「Tube」の文字部分のみでは他の商標との識別機能を有しないと主張し、さらに、「Tube」の文字部分が一致するからといって、使用商標を見た者が引用商標と混同するとは考えられないと主張する。
しかし、請求人は、そもそも「Tube」の語が、第38類あるいは第41類の指定役務との関係で識別力が高いことを主張しているわけではなく、上記アのとおり、全体として両商標が観念上類似するものであること、「Tube」の文字及び図形を伴った全体部分については、最も看者の注意を引く部分であり、使用商標が特に引用商標2と非常に近似した態様に変更されて使用されていることなどを総合的に勘案した場合に、使用商標は引用商標と混同を生ずる旨主張しているものである。
ウ 被請求人は、引用商標の赤い色彩は、見た者に特に強い印象を与えるものであり、他の色の使われた使用商標と混同するおそれはない旨主張する。
しかし、引用商標2が見た者に強い印象を与えるのは、その赤い色彩のみからではなく、むしろ、ブラウン管をイメージした図形とともに白抜きのゴシック文字「Tube」からなる図形全体に非常に高い独創性を有し、この図形を商標として使用している例は他にない。それゆえに、当該ブラウン管をイメージした図形とともに白抜きのゴシック文字「Tube」についてはほぼ同一の態様を有し、背景の色彩のみが変更された態様の図形を伴った使用商標は、特に引用商標2と混同を生じさせる蓋然性が非常に高く、引用商標2との出所のみならず、経済的又は組織的に何らかの関係があるとの「広義の混同」が生じるものといえる。
エ 被請求人は、パソコン用サイトと携帯電話用サイトは全くの別物であり、少なくとも2006(平成18)年10月当時は、被請求人と請求人は、携帯電話用とパソコン用で役務を全く異にしていたとして、役務の提供分野について、混同は生じない旨主張する。
しかし、電子計算機端末と携帯電話は、もともと通信ネットワークであるという点で共通し、電子計算機端末を使用するものであれ、携帯電話端末を使用するものであれ、通信を用いて行う動画の提供はともに需要者を共通にし、役務の手段・目的等が一致する類似の役務である(甲第267号証)。
また、被請求人も記しているとおり、パソコン用に作成されたウェブサイトであっても、ファイル形式を変換して携帯電話用ページを作れば閲覧することは可能であり、これは、2006(平成18)年当時の時点においても、一般ユーザーにとって知られた手段であり、ファイル変換を行うサイトは、かかる時期より前の2001(平成13)年8月に存在していた(甲第269号証及び甲第270号証)。現に、2006(平成18)年12月の時点において、被請求人も「動画共有サイト上にある動画を、簡単に3G携帯電話で閲覧できるサービス『MyTube』β版リリース」と題した、同月5日付けニュースリリースを配信し、動画共有サイト上にある動画を、携帯電話で閲覧できるサービスを開始している(甲第271号証)。
以上より、上記被請求人の主張は当を得ないものである。
オ 被請求人は、「請求人の運営するユーチューブは、2009(平成21)年1月現在において、仮に動画共有サイトとして著名であるとしても、被請求人が使用商標を使用し始めた2006(平成18)年10月ころにおいては事情が異なる。当時のユーチューブは、公式のサービスを開始してから1年も経過しておらず、少なくとも日本においては一般的な知名度は高くなかった」として、引用商標の著名性を否定し、出所の混同のおそれはないと主張する。
しかし、引用商標2は、米国で動画共有サイトのサービスを開始した当初の2005(平成17)年12月から使用(甲第261号証ないし甲第266号証)しており、請求人が提供する引用商標を使用したサイトは、マスコミなどでも頻繁に取り上げられることとなったのは請求の理由のとおりであり、例えば、2006(平成18)年7月13日付けの「FujiSankei Business i」の記事によれば、「『YouTube(ユーチューブ)』を日本国内から視聴している人の数が急増している。・・・日本からの投稿ビデオも多いことから人気を呼び、ネットレイティングスによると、日本家庭からのアクセスだけで、昨年12月に月間20万人だった視聴者数が、今年3月に約10倍の212万人、5月には400万人を突破した。」とあることから、被請求人が使用商標を使用し始めた同年10月ころには、既に日本においても著名となるに至っていたものである。
したがって、使用商標に接した需要者は、その態様から請求人の著名な引用商標に係る役務であるかのごとく認識し、その役務の出所について混同するものであるといえる。
(2)故意がないとの主張について
被請求人は、出所の混同を生ずるおそれがないのだから、それに対する故意も存在しないと主張する。
判例によれば、商標権者が指定商品(指定役務)について登録商標に類似する商標を指定商品等に使用し、又は指定商品(指定役務)に類似する商品(役務)について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用するにあたり、それらの使用の結果、商品等の品質の誤認又は他人の業務に係る商品等と混同を生じさせることを認識していたことをもって商標法第51条第1項の「故意」の要件を満たすとされている(最判昭56年2月24日、東京高判平成10年6月30日)。
これを本件についてみれば、請求人のユーチューブ、引用商標が本件商標の登録出願時以前から我が国において広く知られていたことにかんがみれば、被請求人がユーチューブや、引用商標1はもちろん、特に引用商標2について知悉していたことは明白である。
このことは、2007(平成19)年1月9日付けインターネットのニュースサイト「ASCII24」の記事「2.0企業インタビュー MyTube/Sea’sGardenの畠山寛之氏に聞く」(甲第266号証)の中で、「“MyTube”のトップページ。ロゴはYouTubeをイメージさせるブラウン管(=Tube)を組み合わせたもので、・・・」と記載されていることからもうかがい知ることができるものである。そして、被請求人が請求人の著名商標である引用商標2を意識して、本件商標の使用態様を変更し、使用商標の使用を行ったことは、請求人の運営するユーチューブ(又は著名な引用商標2)との関係で出所の混同が生ずるおそれについての認識があったといわざるを得ない。また、被請求人が本件商標に対して行った態様の変更は、請求人の著名商標に近似させることにより、著名商標の名声にあやかり(不正の目的)需要者等の目を引く「目立つ形態」にしたいという明確な意図をも有していたということができる。
また、被請求人は、「MyTube」に表示されるページには、「会社の概要」として被請求人についての記載があり・・・、それを見れば「MyTube」が「YouTube」と関係がないものであることは一目瞭然であると主張するが、通常、ユーザーがサービスの提供を受けるために閲覧するウェブサイトのページは、フロントページであり、「会社の概要」のページをいちいち閲覧することはまれである。被請求人の提供するフロントページには、使用商標がはっきりと目立つ態様で表示してあり(甲第9号証及び甲第10号証)、それに接したユーザーは、請求人の著名な引用商標と混同を生じるものといえる。また、たとえ、「会社の概要」のページを閲覧して、そこに請求人とは異なる被請求人の名称等が記載されていたとしても、依然として、ユーザーが、被請求人が請求人と経済的又は組織的に何らかの関係があるとの客観的な誤信を招く可能性を払拭することはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、別紙1ないし別紙3及び乙第1号証ないし乙第28号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)請求人は、本件商標の使用が、商標法第51条第1項の要件に該当し、取り消されるべきものであると主張する。
しかし、被請求人は、商標登録の範囲内で本件商標を適正に使用していた(なお、現在被請求人は使用商標の使用を念のため中止している。)。
請求人の主張には、以下のとおり理由がない。
(2)混同のおそれがない
請求人は、同人が運営する動画共有サイト、ユーチューブが世界的に著名であり、本件商標の使用態様は、著名な引用商標を容易に連想させ、役務等の出所の混同を生ずると主張するが、同主張は当を得たものとはいえない。
ア 文字、色彩、図柄の構成上の違い
使用商標と引用商標は、一見して明らかなように、使われている文字や色彩、図柄が異なる。
文字に関して、引用商標では「YouTube」の文字が使われている。この「You」と「Tube」の文字のうち、「Tube」の文字が使われた商標は、2006(平成18)年に引用商標が登録される前後にわたって、多数の商標が登録されている(乙第1号証)。また、「Tube」を含む名前のウェブサイトも、多く世に存在する(乙第2号証)。したがって、「Tube」の部分のみでは他の商標との識別機能を有しないことは明白であり、「You」と「Tube」の各文字が一体的に構成されて初めて商標としての自他役務の識別機能を有するに至っているといえる。これに対し、使用商標で使われているのは、「My」と「Tube」であり、「YouTube」という文字からなる引用商標とは明らかに異なる。
以上のことから、「Tube」の部分が一致するからといって、使用商標を見た者が引用商標と混同するとは考えられない。
また、色彩についても、使用商標のうち三つでは黒の文字に加えて青い四角に白抜きの文字が使われている。また、残る一つについては、黒一色のみ使われている。これに対し、引用商標においては、黒の文字に加えて赤い四角に白抜きの文字が使われている。引用商標の赤い色彩は見た者に特に強い印象を与えるものであり、他の色の使われた使用商標と混同するおそれはない。
さらに、図柄についても、使用商標のうち、テレビをかたどった黒い図形の中に、「MyTubeTV」の文字を入れたものについては、引用商標と明らかに異なる。
イ 役務の違い
被請求人は、2006(平成18)年10月10日に、動画検索サイト「MyTube」を開始しているが、同サイトは、専ら携帯電話における検索サイトとして運営が開始された。その後、被請求人は、パソコン用サイトの運営も始めているが、あくまで被請求人の主軸は携帯電話用サイトにある。
これに対し、請求人のサイト・ユーチューブは、被請求人が「MyTube」の運営を開始した2006(平成18)年10月ころは、専らパソコン用の動画共有サイトであり、携帯電話に対応したのは、2008(平成20)年に入ってからのことである(乙第3号証及び乙第4号証)。
パソコン用に作成されたウェブサイトは一般的には携帯電話で見ることはできず、ファイル形式を変換して携帯電話用ページを作る必要がある。したがって、パソコン用サイトと携帯電話用サイトは全くの別物であり、少なくとも2006(平成18)年10月当時は、被請求人と請求人は、携帯電話用とパソコン用で役務を全く異にしていた。その後も、被請求人は携帯電話用サイトをメイン、請求人はパソコン用サイトをメインとして運営されてきている。
以上より、役務を提供する分野について、被請求人と請求人には違いがあり、混同は生じない。
ウ 引用商標の非周知・著名性
請求人が会社として設立されたのは、2005(平成17)年2月であり、公式にサービスを開始したのは、同年の12月である(甲第4号証の3頁)。これに対して、被請求人が携帯電話における動画検索サイト「MyTube」の運営を始めたのは、先述のように、2006(平成18)年10月10日からである。同時期に被請求人は本件商標の登録出願をしており、使用商標もこのころから使用している。
請求人の運営するユーチューブは、2009(平成21)年1月現在において、仮に動画共有サイトとして著名であるとしても、被請求人が使用商標を使用し始めた2006(平成18)年10月ころにおいては事情が異なる。当時のユーチューブは、公式のサービスを開始してから1年も経過しておらず、少なくとも日本においては一般的な知名度は高くなかった。当時はインターネット事情に詳しい一部の人々の間で知られた存在であったにすぎない。ユーチューブが日本語に対応したのも2007(平成19)年6月になってからのことである(甲第174号証)。したがって、被請求人が自己の運営するサイトに「MyTube」という名称を付けて使用商標を使用していたとしても、引用商標を容易に連想させる状態にはなかったといえる。
また、通常、商標の所有者は、自らの商標と異なる商標を使用してその価値を希釈化することはない。よって、ユーチューブを知っている者が「MyTube」を見たとしても、役務の出所を混同するとは到底考えられない。
以上より、被請求人が「MyTube」という商標を使っていても、出所の混同を生ずるおそれは存在しない。
(3)故意がない
前項で述べたように、出所の混同を生ずるおそれがないのだから、それに対する故意も存在しない。
被請求人は、2005(平成17)年4月にezweb公式サイト「GetSound」に楽曲・コンテンツを提供したのを皮切りに、携帯電話の分野におけるサイト運営・コンテンツ提供などで着実に業績を挙げてきた会社である。このような中、被請求人は、ユーチューブがサービスを行っていなかった携帯電話用の動画検索サイトとして「MyTube」を始めたものであり、ユーチューブとの混同を意図したことは全くない。
また、「MyTube」に表示されるページには、「会社の概要」として被請求人についての記載があり(乙第5号証、甲第9号証の3頁末尾部分を参照。)、それを見れば「MyTube」がユーチューブと関係がないものであることは一目瞭然である。このような記載をサイトの中に載せていること自体、被請求人が請求人のサイトとの混同を意図するものではないことの現れといえる。
以上より、被請求人には出所の混同に対する故意はない。
(4)むすび
したがって、被請求人による使用商標の使用行為は、商標法第51条第1項に該当せず、本件商標の登録は取り消されるべきでない。
2 弁駁に対する答弁の理由
(1)混同のおそれがないことについて
ア 称呼上の類似性について
請求人は、使用商標の「マイチューブ」の称呼と引用商標の「ユーチューブ」の称呼とは、発音の仕方をもとに相紛れるおそれがあると主張する。
しかし、本件商標は、請求人によって登録異議の申立て(異議2007-900551:乙第8号証)を受けたが、「両称呼は、互いに5音という構成において、称呼上重要な要素を占める語頭音を始め、前2音において『マイ』と『ユー』の差異が認められ、その差異が称呼全体に及ぼす影響は大きいといえるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合であっても、十分に聴別し得るものである。」と判断され、登録が維持されているのであり、「マイチューブ」と「ユーチューブ」が称呼上類似しないことは既に客観的にも明確になっている。
イ 観念上の類似性について
請求人自ら述べるように「My」は「私の」、「You」は「あなた」という意味を表す文字であり、日本人であっても容易にその意味を解することのできるものであるから、「My」と「You」が同一の意味であると混同する者はいない。
前記異議事件においても、「観念においては、両商標は相違」すると判断されている。
ウ 外観上の類似性について
請求人は、引用商標2について、ブラウン管をイメージし、多少の膨らみを持たせた赤い長方形内に白抜きで書された「Tube」の文字を伴う図形部分が独創的で、特に印象の強いものであると強調し、使用商標と引用商標2との外観上の類似性を主張する。
しかし、四角形の中に文字を入れるという手法は商標としてありふれたものであり、識別性がないとして拒絶を受けたものも多く存在する(乙第19号証ないし乙第22号証)。
特に、放送・通信関連の分野を中心に、テレビのブラウン管をイメージするやや丸みを帯びた長方形という図形は、標章として頻繁に使用されている。
例えば、雑誌「週刊TVガイド」(株式会社東京ニュース通信社発行)のロゴマークは、ブラウン管を模した丸みを帯びた赤色の長方形に「TVガイド」の文字が入っており、2009(平成21)年現在までほぼ同じ形状のロゴが使用されている(乙第23号証ないし乙第26号証)。
ほかにも、テレビの形をした赤い長方形に白抜きで「TV」の文字からなる図形とその左側に「J-COM」の文字を配した商標が登録(乙第27号証)され、赤い四角形内に白抜きの文字からなる商標が登録(乙第28号証)され、使用されている。
以上のように、ブラウン管をイメージした図形は、請求人が生み出したものでないことは、上記の例より明らかであり、引用商標2の図形部分は、独創性を有するとはいえず、その図形部分の形が似ているというだけで、引用商標と使用商標の混同を生ずるものではない。
また、白抜きになっている「Tube」の文字も、一般的な名詞にすぎず、独創性があるとはいえない。
よって、当該図形部分の形状及び「Tube」の文字だけでは、独創性はなく、他の商標との識別性を有しない。
引用商標2の識別性は、あくまで、図形部分の形状及び赤い色、更にその左側に「You」の文字が加わることで生まれているのである。
使用商標と引用商標2とを比較すると、図形部分の色は、青、赤と明白な違いがあり、両者において、図形部分の左側に使われている文字は「My」と「You」という、文字の意味内容も明らかに異なるものである。
以上のことから、使用商標と引用商標2の全体を総合的にみれば、外観上類似しているということはできず、出所や、経済的・組織的な関係について混同を生じさせるものとはいえない。
エ 役務について
請求人は、動画の提供という役務においては、「携帯電話用」か「パソコン用」かということは、同じ通信ネットワークであるという点でさしたる差異はないなどと主張する。
しかし、請求人も認めるとおり、パソコン用に作られたウェブサイトを携帯電話で閲覧するには、ファイル変換を必要とするのであり、その方法を知らないユーザーはパソコン用サイトを携帯電話で見ることはできない。したがって、ファイル変換という手間を加えなければパソコン用サイトを携帯電話で閲覧することのできない状況では、両者に「さしたる差異」がないとはいえない。
オ 請求人の商標の非周知・著名性について
請求人は、引用商標2について、サービス開始当初から使用していると主張し、甲第261号証ないし甲第265号証を提出しているが、これらはアメリカのウェブサイトの使用例であり、日本のウェブサイトにおいて、2006(平成18)年当時から使用されていたかどうかは明らかではない。本件で問題とすべき周知性・著名性は、日本の取引者・需要者を基準にとらえるべきであり、ここでいう取引者・需要者は、ごく一般的なパソコンユーザーを指すと解するべきである。そして、日本のごく一般的なユーザーは、海外の動画サイトにアクセスすることは少なく、アメリカのウェブサイトに引用商標2が表示されていたとしても、周知性・著名性は認定できない。
また、請求人は、ユーチューブが日本のマスコミに頻繁に取り上げられるようになったとして甲第15号証ないし甲第260号証を挙げている。
しかし、マスコミがわざわざ取り上げて紹介しているということ自体、ユーチューブの知名度が高くない証左である。また、これらの証拠は、引用商標1についてのものであり、引用商標2が2006(平成18)年10月当時から著名であったかどうかは全く示されていない。
(2)故意について
請求人は、「ASCII24」の記事「2.0企業インタビュー」(甲第266号証)を被請求人の故意の根拠に挙げている。
しかし、当該記載は、インタビューをした編集者が記載したものであり、インタビューを受けた畠山寛之の発言ではない。同人のコメントでは、ユーチューブのロゴのことは全く言及されていないため、インタビュー時点で被請求人が引用商標2について知悉していたことの証左にはならない。

第4 当審の判断
1 本件審判は、商標法第51条の規定による商標登録の取消しを求めるものであるところ、同条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。
そこで、被請求人(商標権者)の使用に係る商標が上記規定に該当するか否かについて、以下検討する。
2 被請求人の使用に係る商標
甲第9号証(2008(平成20)年7月14日、同年9月9日及び同月4日にプリントアウトされた被請求人の動画検索に関するウェブページ)によれば、被請求人の使用する使用商標1は、別掲(2)のとおり、「My」の欧文字を黒色のゴシック体で表し、その右に、四隅に丸みをもたせて左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有し、右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施された青地の横長長方形を配し、該横長長方形内に白抜きの太字ゴシック体で「Tube」の欧文字を、「My」の文字部分よりやや小さく表した構成からなるものである。
3 本件商標と使用商標1の類否
(1)本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、「マイチューブ」の片仮名文字と「\」(バックスラッシュ)とを一連に横書きし、その下に、細字ローマン体で表した「My Tube」の欧文字を、上段の「マイチューブ」の文字部分に比べ、幅を短くして横書きしてなるものである。
そして、本件商標は、その構成中の「\」(バックスラッシュ)の部分は、単なる記号等と理解されるものであるから、これより特定の称呼、観念は生じないとみるのが相当であって、本件商標において、自他役務の識別標識としての機能を果たすといえる「マイチューブ」の文字と「My Tube」の文字をもって、「マイチューブ」の称呼及び「私の管」なる観念を生ずるものと認めることができる。
(2)使用商標1
使用商標1は、前記2認定のとおりの構成からなるところ、その構成中の「My」の文字部分と「Tube」の文字部分は、文字の表現方法において、黒色で表されているか、あるいは青地長方形内に白抜きで表されているかの差異を有するとしても、いずれの文字も太字ゴシック体で表され、容易に「My」と「Tube」のつづり字からなると認識されるものであるから、これより「マイチューブ」の称呼を生ずるものであって、「私の管」なる観念を生ずるものと認めることができる。
(3)対比
本件商標と使用商標1とは、後者において、青地の横長長方形を配した点において相違するも、いずれもその構成文字に相応して、「マイチューブ」の称呼及び「私の管」の観念を同じくするものである。
したがって、本件商標と使用商標1は、外観が相違するとしても、なお、称呼及び観念を同じくする類似の商標というべきである。
4 使用商標1の使用に係る役務及び使用時期
(1)甲第9号証は、ウェブページの写しと認められるところ、同号証によれば、以下の事実を認めることができる。なお、甲第9号証が被請求人に係るものであることについて、当事者間に争いはない。
ア 右下に、2008(平成20)年7月14日にプリントアウトされたと解される「2008/07/14」の文字が記載されている写しには、左上に「MyTube?YouTube動画検索?」の記載とともに、使用商標1が表示され、「あのPCサイトが携帯からも綺麗に見れる」、「PCサイトを携帯で綺麗に表示!あの人気PCサイトから、ブログやニュース、さらにはWEB小説も携帯で見れる!」、「あなたのページにも『MyTube』の動画検索窓を設置しませんか?」、「携帯からも動画見放題!」などと記載され、さらに、「YouTube Veoh dailymotion youkuをまとめて検索」などの文字とともに、引用商標2などの標章が表示されている。また、「◎お知らせ(ニュース) (2008/7/9)新コーナー♪発売前の注目曲特集!」、「携帯からも動画見放題! MyTube携帯版にアクセスすれば、携帯からも動画を閲覧することができます!パソコンがないと見れなかった動画が、電車の中でも、待ち合わせ中でも、いつでもどこでも見ることができます!」などと記載されている。
イ 右下に、2008(平成20)年9月9日にプリントアウトされたと解される「2008/09/09」の文字が記載されている写しには、「あなたのページに『MyTube』の動画検索窓を設置できます」、「PC用ページ、携帯用ページにも検索窓が設置できます!」などの記載とともに、使用商標1が表示されている。
さらに、「MyTubeへのリンクはこちらをお使いください」の見出しの下、「MyTubeはリンクフリーです。ご自由にリンクを行っていただけます。イメージバナーは以下の公式バナーをお使いください。」と記載され、その下に3種類のイメージバナーが表示されており、そのいずれにも使用商標1が表示されている。
(2)甲第266号証は、「【2.0企業インタビュー】MyTube/Sea’sGardenの畠山寛之氏に聞く」と題する「ASCII24」のウェブサイトの写しと認められるところ、かかる表題に記載された「Sea’sGarden」の文字は、被請求人の会社概要が記載されたウェブページの写し(乙第5号証)において、被請求人と認められる「運営受託会社 株式会社キーライフ」の記載とともに、「システム企画、開発、保守」の見出しの下に記載された「有限会社sea’sgarden」の欧文字部分のつづりを同じくするものであるから、該「畠山寛之」は、被請求人の関係者と優に推認することができるものである。しかして、甲第266号証において、「2007年1月9日」の見出しの下、「MyTubeは昨年12月初旬にリリースされた動画検索ポータルサービスで、芸能人などの名前やカテゴリーごとに分類されたインデックスから目的のサービスを見つけやすくしているほか、・・・視聴デバイスは、パソコンだけでなく携帯電話機にも対応するのが特長だ。」と記載され、「ケータイでもパソコンでも目的の動画が見つけ出せるポータルサイト」の見出しの下、「[畠山氏]今年(インタビュー時点では2006年)話題になったYouTubeに代表される動画共有サイトで公開されているAPIなどを利用して、動画の検索およびカテゴライズを行うことで、パソコン・携帯ユーザーになるべく簡単に目的の動画を見つけられるようにした動画検索サイトです。」、「[畠山氏]ユーザーが携帯電話機から専用サイト(http://my-tube.mobi/)にアクセスして、動画の視聴をリクエストすると、サーバー側で動画データの取得と、そのユーザーの端末に合わせた変換処理が始まります。処理が終わり次第、ユーザーの端末に動画をダウンロードできるようになり、ユーザーはダウンロードした動画を再生してご覧いただけるという仕組みです。」、「[畠山氏](2006年)10月上旬から企画・開発がはじまりました。」と記載されており、さらに、使用商標1が表示されたコンピュータ用の画面及び携帯電話機用の画面が表示されている。そして、該携帯電話機用の画面には、「YouTube動画変換」の文字が表示されている。
(3)「株式会社KeyLife 年表」と題する別紙3には、「2006.10.10:MyTube 携帯向けサイト運営開始。」、「2006.12:MyTube PC向けサイト運用開始。」との記載がある。
(4)前記(1)ないし(3)で認定した事実によれば、使用商標1が使用された役務は、「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」及び「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」であることが認められ、上記役務は、いずれも本件商標の指定役務に含まれるものということができる。
そして、「株式会社KeyLife 年表」(別紙3)によれば、「2006.12:MyTube PC向けサイト運用開始。」との記載があり、使用商標1が表示されたウェブページ(甲第9号証)に、「◎お知らせ(ニュース) (2008/7/9)新コーナー♪発売前の注目曲特集!」との記載があることをも勘案すると、被請求人は、2006(平成18)年12月から、「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」について、本件商標と類似する使用商標1の使用を開始し、少なくとも2008(平成20)年7月まで、その使用を継続していたものということができる。
また、被請求人が使用商標1を2006(平成18)年10月ころから、「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」に使用したことについては、被請求人は、「平成18年10月10日に、動画検索サイト『MyTube』を開始している。同時期に被請求人は、本件商標の出願をしており、使用商標1もこの頃から使用している。」旨主張しており、当事者間に争いはなく、さらに、被請求人は、平成21年1月22日付け答弁書において、「使用商標の使用を念のため中止している。」と主張しているところ、その中止の時期は明らかにしていない。
しかし、被請求人は、「パソコン用サイトの運営も始めているが、あくまで被請求人の主軸は携帯電話用サイトにある。」と主張していること、上記のとおり、「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」において、使用商標1が2008(平成20)年7月まで使用されていたことを勘案すると、被請求人が該「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」において使用商標1の使用を中止した時期に、「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」においてもその使用を中止したとみるのが自然であるから、該「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」についても、少なくとも2008(平成20)年7月まで使用商標1が継続して使用されていたと優に推認することができるものである。
以上によれば、使用商標1が使用された「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」及び「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」は、いずれも本件商標が設定登録された2007(平成19)年9月7日以降も提供されていたということができる。
5 他人の業務に係る役務との混同
商標法第51条第1項に規定する「故意に他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたとき」に該当するか否かについて判断するに、上記の「他人の業務に係る役務と混同を生ずる」か否かは、当該商標と他人の表示の類似性の程度、他人の表示の周知著名性の程度や、当該商標に係る役務と他人の業務に係る役務との間の性質、用途等における関連性の程度並びに役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らして、当該商標に係る役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
これについて、以下検討する。
(1)引用商標の著名性について
ア 引用商標
(ア)引用商標1は、「YouTube」の欧文字を横書きしてなるものである。
(イ)引用商標2は、別掲(6)のとおり、「You」の文字部分を黒色の太字ゴシック体で表し、その右に、四隅に丸みをもたせて左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有し、右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施された赤地の横長長方形を配し、該横長長方形内に白抜きの太字ゴシック体で「Tube」の文字を、「You」の文字部分と同じ大きさで表した構成からなるものである。
イ 請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)ユーチューブ社は、2005(平成17)年2月に、インターネットを介して動画を共有するユーチューブを運営する企業として米国に設立された法人であり、2006(平成18)年11月に、請求人の子会社となって今日に至っている(甲第4号証、甲第66号証、甲第73号証等)。
(イ)ユーチューブは、ユーザーが無料で動画を共有し、閲覧することができるかつて存在しなかった画期的なサイトとして、2005(平成17)年2月の同サイトの運営開始後、極めて短期間のうちに米国をはじめ、世界中の注目を集め広く知られるようになり、2006(平成18)年11月には、1日当たり1億回の閲覧、同じく6万5千件の動画のアップロードがなされた(甲第12号証、甲第17号証、甲第84号証等)。
(ウ)2007(平成19)年6月には、日本語のサイトも開設された(甲第174号証)が、我が国においては、それ以前の2006(平成18)年2月ころから既にユーチューブを紹介する記事が新聞や雑誌等に取り上げられており、例えば、次のような記事が認められる。
2006(平成18)2月11日付け米国ベンチャー企業情報には、「ユーチューブ-個人消費者向けにインターネット上でビデオ公開の場を提供。」(甲第13号証)、同年6月29日発行の朝日新聞朝刊には、「・・・米ベンチャーが05年2月に設立した『You Tube(ユーチューブ)』だ。米国で昨年末ごろから注目され、毎日7千万本以上の動画が見られている。最近は毎日6万本が追加されるという。利用はすべて無料。日本語でも検索でき、5月に日本から同サイトを訪れた人は410万人。国内ネット利用者の9.7%が訪れた計算(ネットレイティングス調べ)という。」(甲第16号証)、同年8月9日発行の産経新聞東京朝刊には、「火付け役は、米国のベンチャーが昨年2月に開設した『YouTube』(ユーチューブ)だ。無料登録すれば、誰でも自由に投稿でき、視聴もできる点が特徴だ。画像検索で、自分が見たい映像を簡単に探し出せる手軽さも後押しし、利用者はうなぎ上りだ。・・・海外サイトながら、日本からの投稿も多く、日本からの視聴者数は6月に約516万人に上り、国内ネット利用者の12.4%が訪れているという。昨年12月の視聴者数は20万人だったので、わずか半年間で約25倍にも膨れあがったことになる。」(甲第27号証)、同年9月26日発行の「週刊エコノミスト」には、「ネット上で動画を共有するサイト『ユーチューブ』が話題を集めている。・・インターネットで後から見られる米国の動画共有サイト『ユーチューブ(YouTube)』は、日本でもすっかり有名になった。」(甲第55号証)、同年10月7日付け「FujiSankei Business i.」には、「昨年2月に設立したばかりのアメリカの動画投稿サイト、『YouTube(ユーチューブ)』は1日あたりの動画閲覧回数、1億回。日本における閲覧者は700万人を突破したという。」(甲第59号証)、同年11月18日発行の朝日新聞朝刊には、「ユーチューブの1日の閲覧数は1億回だという。日本で10月の1カ月間にネットを使った人の約18%にあたる約808万人が、ユーチューブを利用した」(甲第82号証)、2007(平成19)年3月23日発行の東京読売新聞朝刊には、「米国の動画投稿サイト『YouTube(ユーチューブ)』への日本からの月間利用者(推計)が、2月に1017万人と、初めて1000万人台を突破したと発表した。2005年12月のサイト開設から、14か月の達成で、・・・国内外のサイトで過去最速の1000万人達成となった。」(甲第143号証)、同年8月27日発行の日経ビジネスには、「米国に次いでユーチューブの利用者が多いのは、日本である。今年2月には日本の家庭からの利用者数が月間1000万人に到達(ネットレイティングス調べ)。利用者数が1000万人を超えたサイトとして、国内最速の記録を塗り替えた。」(甲第202号証)、同年11月18日発行の毎日新聞朝刊には、「ユーチューブ 1469万人 月間利用者数 8億703万 月間ページ閲覧数 ネットレイティングス社推計(9月時点)。国内からの利用のみ。」(甲第229号証)。
(エ)ユーチューブは、インターネットで手軽に動画を配信、閲覧することが可能となることから、文化・経済・政治などの各方面からも注目され、例えば、米国においては、2008(平成20)年アメリカ合衆国大統領選挙のために候補者と有権者が直接映像で意見交換をするスペースとして提供したことが話題を集めた(甲第221号証、甲第260号証等)。日本においても、2007(平成19)年12月には自由民主党、社会民主党、翌年1月には日本共産党が相次いで公式チャンネルを開設し、政策発信や党の活動状況の情報配信を行い(甲第236号証、甲第258号証等)、愛知県犬山市観光協会、三重県いなべ市においても、名所、伝統文化、行政情報等をユーチューブを介して配信している(甲第207号証、甲第213号証等)。さらに、民間企業においても、その広告・宣伝的活用法が着目され、単なる動画配信にとどまらない新たな活用法やビジネスモデルが模索されるまでになった(甲第90号証、甲第204号証、甲第243号証、甲第244号証、甲第247号証等)。
また、「You Tube」の語は、2007(平成19)年のYahoo!の検索ワードランキングで第2位となった(甲第260号証)。
そのほか、ユーチューブ社ないし同社に係るユーチューブは、内外からの注目を浴び、2006(平成18)年6月19日発行の日経ビジネスをはじめ、新聞・雑誌・TVなどで数多く取り上げられた(甲第11号証ないし同第259号証)
(オ)英語版のウェブサイトの写しには、一部において色彩を確認することができないものがあるが、引用商標2とほぼ同じ構成態様の商標が表示されている(甲第261号証ないし甲第265号証)。
これらのウェブサイトの写しには、記事の掲載日等と解される「October 9 2006」、「June 27,2006」、「17-Oct-2006」及び「16 August 2006」(甲第262号証ないし甲第265号証)の文字が記載されている。
ウ 上記イにおいて認定した事実によれば、ユーチューブ社は、役務「インターネットによる通信を用いて行う動画共有サイトの提供」を2005(平成17)年2月から開始し、その開始当初から引用商標1を使用するとともに、遅くとも2006(平成18)年6月には該ウェブサイトにおいて、引用商標2の使用(甲第263号証)をしたこと、ユーチューブは、2005(平成17)年2月の運営開始以降、誰でも無料で動画を投稿し、その動画の視聴をすることができる手軽さから米国をはじめとする世界各国で広く知られるようになったこと、我が国においても、2007(平成19)年6月に日本語のウェブサイトが開設されるまでに、極めて多数のインターネット利用者によって、ユーチューブにおける動画が閲覧され、その閲覧者数は、2005(平成17)年12月に20万人であったものが、2006(平成18)年10月には、国内のインターネット利用者の18%にあたる約808万人に上り(甲第82号証)、2007(平成19)年2月には、1017万人と、初めて1000万人台を突破し(甲第143号証)、月間利用者数が1000万人を超えたサイトとして、国内最速の記録を塗り替えるに至ったこと(甲第202号証)、その後も、多数の政党、行政機関、民間企業等がユーチューブを利用していることが認められ、そして、2006(平成18)年10月ないし本件商標が設定登録された2007(平成19)年9月当時の我が国において、パソコンが企業のみならず、一般家庭にも広く普及し、一般の国民の間において、インターネットによる通信を用いて各種情報を簡単に入手することができる状況にあったことをも勘案すると、引用商標は、請求人の子会社の業務に係る役務「インターネットによる通信を用いて行う動画共有サイトの提供」を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成18年10月)はもとより、現在に至るまで、我が国の需要者の間に広く認識されているということができるものである。
これに対して、被請求人は、使用商標1が使用されていた2006(平成18)年10月ころには、引用商標は、我が国において著名性を獲得していなかった旨主張する。
しかし、前記5(1)イ認定のとおり、請求人に係るユーチューブは、多数の新聞等において、誰でも無料で動画を閲覧することができる画期的な動画共有のサイトとして紹介されるとともに、「海外サイトながら、日本からの投稿も多く、日本からの視聴者数は6月(審決注:2006(平成18)年)に約516万人に上り、国内ネット利用者の12.4%が訪れているという。昨年12月の視聴者数は20万人だったので、わずか半年間で約25倍にも膨れあがったことになる。」(甲第27号証)等の記事が認められることからすれば、ユーチューブが外国のウェブサイトであるにもかかわらず、その運営開始後、極めて短期間のうちに我が国の相当数の需要者が該ウェブサイトに強い関心を持っていたというのが相当であり、引用商標は、上記のとおり、使用商標1が使用された2006(平成18)年10月には、既に、需要者の間に広く認識されていたというべきである。
よって、被請求人の上記主張は採用することができない。
(2)使用商標1と引用商標との類似性
ア 使用商標1と引用商標2について
使用商標1は、前記2認定のとおり、「My」の欧文字を黒色のゴシック体で表し、その右に、四隅に丸みをもたせて左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有し、右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施された青地の横長長方形を配し、該横長長方形内に白抜きの太字ゴシック体で「Tube」の欧文字を、「My」の文字部分よりやや小さく表した構成からなるものであって、これより「マイチューブ」の称呼が生じ、「私の管」なる観念が生ずるものである。
一方、引用商標2は、前記5(1)ア(イ)認定のとおり、「You」の文字部分を黒色の太字ゴシック体で表し、その右に、四隅に丸みをもたせて左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有し、右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施された赤地の横長長方形を配し、該横長長方形内に白抜きの太字ゴシック体で「Tube」の欧文字を、「You」の文字部分と同一の大きさで表した構成からなるものであって、これより「ユーチューブ」の称呼が生じ、「あなたの管」なる観念が生ずるものである。
そうすると、使用商標1から生ずる「マイチューブ」の称呼と引用商標2から生ずる「ユーチューブ」の称呼とは、語頭部分において「マイ」と「ユー」の音の差異を有するものであるから、これらの称呼を一連に称呼した場合は聴別し得るものであり、また、観念上も互いに紛れるおそれはない。
しかし、使用商標1と引用商標2の外観についてみるに、両商標は、それぞれの構成中、左に位置する「My」及び「You」の各文字が一般に使用される書体の一つと認められるゴシック体をもって黒色で表してなるのに対して、これらの右に配された「Tube」の欧文字を白抜きで表してなる横長長方形の構成部分が青色又は赤色に着色されていることから、各横長長方形の構成部分が「My」及び「You」の各文字部分よりも看者の注意を強く引き、印象に残るとみるのが自然である。
これに対して、被請求人は、テレビのブラウン管をイメージするやや丸みを帯びた長方形は、標章として頻繁に使用されているから、引用商標2の図形部分は、独創性を有するとはいえず、白抜きで表された「Tube」の文字も、一般的な名詞にすぎず、独創性があるとはいえないから、引用商標2は、当該図形部分の形状及び「Tube」の文字だけでは、独創性はない旨主張する。
しかし、引用商標2の構成中の「Tube」の文字を有する図形部分は、四隅に丸みをもたせて、左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有しており、さらに、右上部分にグラデーションが施されている、といった構成を組み合わせた結果、全体として丸みを帯びた立体的な様相を呈する図形として看取されるものであるばかりでなく、かかる構成態様からなる図形と白抜きで表した「Tube」の文字の組合せからなる標章が多数の者によって頻繁に使用されている事実も認められないものであるから、引用商標2は、その構成中の図形部分が白抜きで表した「Tube」の欧文字を有することも相まって、看者に与える印象が極めて強いというのが相当である。
よって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
そして、使用商標1と引用商標2は、それぞれの構成中、左に位置する文字部分において、「My」であるか、「You」であるか、横長長方形内の文字が左に位置する文字に比べ、やや小さいか同一であるか、また、右に配された横長長方形の地色が青色であるか、赤色であるかの差異を有するとしても、両者は、横長長方形内に同一の綴り字である「Tube」の欧文字を白抜きで表してなること、該欧文字が太字ゴシック体で表されていること、該欧文字は第1文字が大文字で表され、これに続く文字が小文字で表されていること、図形部分が横長長方形であること、該横長長方形は、四隅に丸みをもたせて左右の2辺において、わずかな膨らみを有していること、さらに、その右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施されていることを同じくするものである。
そうすると、使用商標1と引用商標2とは、その構成全体において、看者に与える印象が強く、構成の軌を一にする「Tube」の文字を配した図形部分を有する点において、共通にするものであるから、これらの共通点は、前記差異点をはるかに凌ぎ、一層強く印象付けられ、看者に与える外観上の印象が極めて近似するものといわなければならない。
したがって、使用商標1と引用商標2は、称呼及び観念において相違するとしてもなお、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合は、互いに紛れるおそれがあるというべきであり、外観上の類似性は極めて高いものといわなければならない。
イ 使用商標1と引用商標1について
請求人は、使用商標1は引用商標1とも類似すると主張するため、更に進んで、両商標の類似性について検討する。
使用商標1は、前記のとおり、「マイチューブ」の称呼を生ずるものであって、「私の管」なる観念を生ずるものである。
一方、引用商標1は、「YouTube」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより「ユーチューブ」の称呼が生ずるものであって、「あなたは管」なる観念が生ずるものである。
そうすると、使用商標1から生ずる「マイチューブ」の称呼と引用商標1から生ずる「ユーチューブ」の称呼とは、語頭部分において「マイ」と「ユー」の顕著な音の差異を有するものであるから、これらの称呼を一連に称呼した場合においては聴別し得るものであり、また、観念上も互いに紛れるおそれはない。
さらに、使用商標1は、前記2のとおり、横長長方形の図形を有するのに対して、引用商標1は、欧文字を普通に用いられる態様で表してなるものであるから、両商標は、外観上顕著な差異を有するものである。
したがって、使用商標1と引用商標1とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。
(3)役務の関連性等
使用商標1に係る役務は、前記4(4)認定のとおり、「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」及び「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」である。
一方、引用商標2に係る役務は、前記5(1)ウのとおり、「インターネットによる通信を用いて行う動画共有サイトの提供」である。
そうすると、使用商標1に係る役務中、「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」と引用商標2に係る役務とは、いずれも、動画を閲覧する点及びインターネットによる通信を介して提供される点を同じくし、その需要者は、パソコンを用いて該役務の提供を受けるものであるから、役務の提供の目的、役務の提供の手段、役務の提供に関連する物品、需要者の範囲等を同じくする類似の役務である。
また、使用商標1に係る役務中、「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」と引用商標2に係る役務についてみるに、被請求人は、パソコンで閲覧するウェブページにおいて、パソコンと同様に携帯電話機でも動画を閲覧することができることを宣伝し(甲第9号証)、さらに、被請求人に係る携帯電話機用の画面には、「YouTube動画変換」の文字が表示(甲第266号証)されていることなどからすれば、被請求人の提供する役務「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」には、請求人に係るユーチューブから検索された動画がその需要者のパソコン又は携帯電話機に配信される場合があるというのが相当である。
そして、本件商標が設定登録された2007(平成19)年9月の時点において、インターネット及び携帯電話機は、一般に広く普及し、使用されていたというのが相当であることをも勘案すると、使用商標1が使用された役務「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」と引用商標2に係る役務「インターネットによる通信を利用して行う動画共有サイトの提供」とは、パソコンを利用するか、携帯電話機を利用するかの相違があるにすぎず、動画の閲覧をする点において同じくするものであり、両役務は、極めて密接な関連性を有する類似の役務というべきであり、その需要者も共通にする場合があるというべきである。
加えて、使用商標1と引用商標2とが使用される役務の需要者は、いずれも特別の専門知識を有しない者を含むものであり、商標等について常に細心の注意を払うとは限らないといわなければならない。
これに対して、被請求人は、動画検索サイト「MyTube」は、パソコン用サイトの運営も始めているが、主軸は携帯電話機用サイトにあるとして、同人の提供する役務「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」と請求人の提供する役務「インターネットを介して行う動画共有サイトの提供」とは、役務が相違する旨主張する。
しかし、被請求人の主軸が携帯電話機用サイトであるからといって、パソコン用サイトの運営が否定されるものではなく、前記認定のとおり、請求人及び被請求人の提供に係る上記役務は、動画の配信という役務の内容において近似するばかりでなく、被請求人が提供する役務には、請求人に係るユーチューブから検索された動画が使用される場合があること、両役務の需要者が共通する場合が多いことなどを併せ考慮すれば、両者の役務は、極めて密接な関係があるというべきである。
したがって、被請求人の上記主張は理由がない。
(4)小括
以上によれば、被請求人が使用商標1を使用した2006(平成18)年10月には、引用商標2が請求人の子会社の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されており、その状態は、現在も継続していること、使用商標1と引用商標2との類似性は極めて高いこと、使用商標1の使用に係る役務と引用商標2の使用に係る役務とは、極めて密接な関連性を有する類似する役務であること、両者の需要者も共通しており、その需要者は、通常は特別の専門知識を有するものではないことなどを総合して考慮すれば、使用商標1を「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」及び「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」について使用した場合、これに接する需要者をして、引用商標2を連想又は想起し、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
6 故意について
商標法第51条第1項にいう「故意」とは、指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定役務に類似する役務についての登録商標と同一又はこれに類似する商標の使用にあたり、その使用の結果、他人の業務に係る役務と混同を生じさせることを認識していたことをもって足り、必ずしも他人の登録商標又は周知商標に近似させたいとの意図をもってこれを使用していたことまでを必要としないと解される(最高裁昭和56年5月24日第三小法廷参照)。
これを本件についてみるに、前記5(3)で認定したとおり、被請求人は、その提供に係る役務「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」において、請求人の配信する動画を需要者の携帯電話に配信する場合もあるものと認めることができるばかりでなく、被請求人に係るウェブページ(甲第9号証)には、引用商標2が表示されていることが認められる。
また、前記4(2)で認定したとおり、被請求人に関連する者と推認されるSea’sGarden(乙第5号証)の畠山寛之に対するインタビュー記事(甲第266号証)において、同人が「今年(2006年)話題になったYouTubeに代表される動画共有サイトで公開されているAPIなどを利用して、動画の検索およびカテゴライズを行うことで、パソコン・携帯ユーザーになるべく簡単に目的の動画を見つけられるようにした動画検索サイトです。」、「(2006年)10月上旬から企画・開発がはじまりました。」と述べていたほか、「YouTubeが英語ページでとっつきにくいのに、日本で流行っていること。」と述べていた事実が認められる。
以上の事実を勘案すると、被請求人は、使用商標1を使用した2006(平成18)年10月時点において、引用商標2の存在を十分に知っていたといわざるを得ない。
そして、本件商標は、「マイチューブ\」の片仮名文字及び記号と細字ローマン体で表した「My Tube」の欧文字からなるのに対して、使用商標1は、本件商標の構成中の欧文字部分のみを太字のゴシック体をもって表すばかりでなく、「Tube」の文字部分は、四隅に丸みをもたせて左右の2辺がそれぞれわずかな膨らみを有し、右上部分に立体的な様相を呈するグラデーションが施された横長長方形を配した上で、該横長長方形内に白抜きで表されており、該「Tube」の文字を有する図形部分は、引用商標2の「Tube」の文字を有する図形部分と外観上極めて近似する構成形態というべきものであり、使用商標1は、登録商標の使用において普通に行われる程度の変更を加えたものとは到底いえないものである。
そうすると、被請求人は、引用商標2の存在を十分に知っていながら、本件商標に変更を加え、引用商標2に外観上近似させた使用商標1を使用していたものと優に推認することができ、使用商標1を「携帯電話による通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」及び「インターネットによる通信を用いて行う動画(検索サイト)の提供」に使用すれば、請求人の業務に係る役務と混同を生じさせることを認識していたものというべきである。
したがって、上記被請求人の行為には、故意があったものといわざるを得ない。
これに対して、被請求人は、ユーチューブがサービスを行っていなかった携帯電話用の動画検索サイトとして「MyTube」を始めたものであり、ユーチューブとの混同を意図したことは全くなく、また、使用商標1が表示されるウェブページには、「会社の概要」として被請求人についての記載があり(乙第5号証、甲第9号証)、それを見れば、使用商標1がユーチューブと関係がないものであることは一目瞭然であって、このような記載をサイトの中に載せていること自体、被請求人が請求人のサイトとの混同を意図するものではないことの現れといえる旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、使用商標1は、請求人に係るユーチューブから検索された動画がその需要者の携帯電話に配信されるなど、請求人の提供する役務と密接な関係を有する役務について使用される商標であること、使用商標1は、これが使用された2006(平成18)年10月の時点はもとより、本件商標が設定登録された2007(平成19)年9月7日以降において、我が国の需要者の間に広く認識されていた引用商標2に外観上極めて近似する態様で使用されたこと等を総合すれば、被請求人が使用商標1をその業務に係る役務について使用する行為には、故意があったものと推認することができるから、この点に関する被請求人の主張は理由がない。
なお、使用商標1が表示されるウェブページ(甲第9号証)には、「会社概要」の文字の記載が認められるものの、そこに「会社概要」についての具体的な記載があるわけではなく、これをクリックしなければ内容を見ることができないのみならず、「会社概要」の記載は、ウェブページの末尾に小さく表示されているところからすれば、「会社概要」の項目をクリックする者は、さほど多いものとみることができない。
よって、被請求人のウェブページ上に「会社概要」の項目の掲載があることをもって、被請求人には、請求人のサイトとの混同を意図するものではないとの被請求人の主張も理由がない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標の商標権者(被請求人)が故意に本件商標の指定役務についての本件商標に類似する商標を使用し、他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたものであるから、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)使用商標1

(色彩については、原本参照)

(3)使用商標2

(色彩については、原本参照)

(4)使用商標3

(色彩については、原本参照)

(5)使用商標4


(6)引用商標2

(色彩については、原本参照)

審理終結日 2009-11-09 
結審通知日 2009-11-11 
審決日 2009-11-26 
出願番号 商願2006-98611(T2006-98611) 
審決分類 T 1 31・ 3- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
登録日 2007-09-07 
登録番号 商標登録第5075094号(T5075094) 
商標の称呼 マイチューブ 
代理人 増岡 研介 
代理人 松下 賢一郎 
代理人 増岡 章三 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 片山 哲章 
代理人 細井 貞行 

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