• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111
管理番号 1210001 
審判番号 取消2008-300575 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-05-09 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2215473号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2215473号商標の指定商品中、「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2215473号商標(以下「本件商標」という。)は、「eyes」の文字を書してなり、昭和61年6月3日に登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁及び口頭審理における陳述を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人の調査するところによると、本件商標は、その指定商品中「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者により使用されている事実を発見することができなかった。
また、本件商標の指定商品中「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」について、専用使用権者又は通常使用権者により使用されている事実も発見することができなかった。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」について、その登録を取り消すべきものである。
(2)弁駁
ア 被請求人の主張について
被請求人は、本件商標を、その指定商品中の「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」(以下「本件商品」という。)について、本件審判請求前(予告登録前)3年以内に使用しているので、本件審判の請求は成り立たない旨の主張をしている。
しかし、以下に述べるように、被請求人の主張には理由がなく、本件商標は、本件商品について、その登録を取り消すべきものである。
イ 本件商標の商標法第50条第1項の該当性について
第一に、乙第1号証のオリジナルモデルのカタログの外観について検討する。
ここで、乙第1号証のオリジナルモデルのカタログと全く同一の「DynaBook G8 Limited Edition」のオリジナルモデルの真正カタログ(甲第1号証)を提出する。
すなわち、甲第1号証は、東芝株式会社(以下「東芝」という。)の東芝PCに係る「DynaBook G8 Limited Edition」(世界限定100台)のオリジナルモデル、いわゆる、漆モデルのカタログである。
上記の甲第1号証の漆モデルのカタログは、東京都港区芝浦1-1-1(東芝ビルディング)に所在の東芝PC第一事業部PCマーケティング部の担当者より、直接入手したものである。
したがって、甲第1号証の漆モデルのカタログは、東芝の「DynaBook G8 Limited Edition」のまぎれもないホンモノの漆モデルのカタログであり、実際に使用されている、実物の漆モデルのカタログである。
そこで、甲第1号証と乙第1号証とを比較検討してみると、甲第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁には、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が同書体で、文字の大小はあるものの、「G8」を中心に左右にまとまりよく印刷されているのみで、「eyes」の文字は印刷されていない。
他方、乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁には、「DynaBook G8 Limited Edition」の右端に、前記文字とは著しく相違する書体よりなる、黄色の「eyes」の文字が挿入されている。
この「eyes」の文字は、とって付けたような印象を与えるものである。
この意味するところは、甲第1号証の漆モデルのカタログが示すように、当該カタログの1頁及び2頁には、当該カタログの印刷時の当初から、「eyes」の文字は存在しなかった、あるいは、印刷されていなかったということであり、乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に、「eyes」の文字が挿入されているのは不自然である。
上述の点に加え、乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に印刷されている「eyes」の文字の書体及び色彩が、甲第1号証及び乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に印刷されている「DynaBook G8 Limited Edition」の文字の書体及び色彩と著しく異なっている点も、通常の登録商標の使用態様から考えてみると、異常な使用態様といわざるをえない。
すなわち、甲第1号証及び乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に印刷されている「DynaBook G8 Limited Edition」と乙第1号証の漆モデルのカタログに印刷されている「eyes」の文字と比較して、「eyes」の文字が浮いてみえる。
事実、甲第1号証及び乙第1号証の漆モデルのカタログの5頁の右上には、ともに、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が小さく印刷されているだけであり、「eyes」の文字は印刷されていない。
ということは、本件審判事件の使用証拠用に、画像加工のためのフォトレタッチ・ソフトウェア等を駆使して、「eyes」の文字を、乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に挿入したといわざるをえない、といったら言い過ぎであろうか。
また、乙第1号証の漆モデルのカタログの5頁の右上には、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が印刷されているだけであり、「eyes」の文字は印刷されていないのであるが、乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁に印刷された「DynaBook G8 Limited Edition eyes」と比較して、非常に不自然である。
その理由を考えてみると、乙第1号証の漆モデルのカタログの5頁の右上に「eyes」文字が印刷されていないのは、同カタログの5頁の右上には、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が右詰まりで小さく印刷されていることから、その文字の右横に「eyes」の文字を挿入するスペースがなく、「eyes」の文字を印刷することができなかったということを意味している、といったら言い過ぎであろうか。
そもそも、ノートPCの超有名なブランドである、東芝の「DynaBook G8 Limited Edition」の漆モデルのカタログの中に、ノートPCの「DynaBook」との関係において、趣旨のよくわからない、意味不明の「eyes」を挿入させること自体無理があり、かつ、無理を承知で印刷したこと自体、まったくもって、無謀の極みであるといわざるをえない。
第二に、乙第1号証の漆モデルのカタログの内容について検討する。
甲第1号証及び乙第1号証の漆モデルのカタログの3頁において、「漆」のモダンアートと「DynaBook G8」について、「至高の芸術と現代の最先端技術との出会い。いま新たなる神話が始まろうとしている。」から始まる説明文があり、「”DynaBook G8 Limited Edition”生産台数100台かぎり。」、「”DyanaBook G8 Limited Edition”だけの無限の艶と色づくり。」及び「品位のある風格を放つ”DynaBook G8 Limited Edition”。」との記載はあるが、その説明文の中には、「”DynaBook G8 Limited Edition eyes”」の記載は全くない。
乙第1号証の漆モデルのカタログの1頁及び2頁のように、「DynaBook G8 Limited Edition eyes」と印刷されているのであれば、当然のことながら、乙第1号証の漆モデルのカタログの3頁にも、「”DynaBook G8 Limited Edition eyes”」と記載されてしかるべきはずなのに、「”DyanaBook G8 LimitedEdition”」の後に「eyes」の文字が記載されていないのである。
このように、乙第1号証の漆モデルのカタログの3頁に記載されている「DynaBook G8 Limited Edition」の説明文についても、また、上述したように、「”DynaBook G8 Limited Edition eyes”」のように、「eyes」の文字が記載されていないのは不自然である。
以上の二つの点に照らして、乙第1号証ないし同第5号証は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標を本件商品について使用していたという事実を証明するものでないことは明らかである。
したがって、本件商標は、本件商品について商標法第50条第1項の規定に該当し、その登録を取り消すべきものである。
(3)口頭審理における陳述
乙第1号証カタログの「eyes」の文字は、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字と色調が異なり、文字が盛り上がっているので、後から印刷したものと思われる。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証を提出した。
(1)請求人は、本件商標に関し、「電子応用機械器具(医療機械器具を除く。)」については、継続して3年以上日本国内において使用されている事実がないとの理由により、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきとの主張である。
しかし、被請求人は、以下の理由により、請求人の主張事実を認めることはできない。
(2)被請求人は、請求人が本件審判請求において一部取消を求める「電子応用機械器具(医療機械器具を除く。)」内に含有されている「電子計算機」について、本件商標を日本国内で3年以内に使用している事実を、添付の登録商標の使用説明書と共に証明するものである。
先ず、乙第1号証は、東芝が、2003年5月からノートブック型コンピータとして販売を開始した、「DynaBookG8Limited Edition eyes」の商品カタログである。ここで、上記ノートブック型コンピュータは、その外装蓋の表面に日本伝統の漆芸技法によって、「椿」を題材にした蒔絵が装飾されているものであり、プレミアム商品として発表されたものである。また、当該商品は、上記カタログにも記載があるように、蒔絵による装飾が長時間を要する手作業を必要とするものであり、更に当該商品が具備する審美性も美術品の城に到達するものとして高い評価を得、その結果、希少商品として企業のオーナー等から垂涎のアイテムとして好評を博し、現在でも月間2?3台の製造を行っている。
以上のことから、上記乙第1号証により、本件商標は、東芝のノートブック型コンピュータのスタンダード版「DynaBookG8Limited Edition」におけるプレミアム商品「eyes」として表示されていることが容易に理解され、結局、「ノートブック型コンピュータ」即ち、「電子計算機」が含有される「電子応用機械器具(医療機械器具を除く。)」に、本件登録商標「eyes」が使用されていることは明らかである。
(3)商標の使用者
本件商標の権利者は被請求人である坂本漆芸株式会社(以下「坂本漆芸」という。)であるが、当該登録商標については、株式会社坂本乙造商店(以下「坂本乙造商店」という。)に対しては当該登録商標の設定登録当初から、東芝については2003年5月から通常使用権が許諾されている。ただし、この通常使用権については設定登録はされていない。
上記乙第1号証より、本件商標は通常使用権者である東芝によって、本件審判請求前3年以内に日本国内において、その取り消しに係る指定商品「電子応用機械器具(医療機械器具を除く。)」に含有される、「電子計算機」について使用されていること明らかである。
次に、乙第2号証は、坂本漆芸の履歴事項全部証明書であり、乙第3号証は、坂本乙造商店の履歴事項全部証明書でる。ここで、上記両会社の本店所在地は、福島県会津若松市大町一丁目4番51号であり、また、両会社の代表取締役は、いづれも坂本朝夫である。そこでの両会社の位置づけは坂本漆芸が、商品の企画開発を行い坂本乙造商店が当該商品の商品開発及びプロデュースを行なって業務連携を図っている。このような関係から、上記乙第1号証に係る商品カタログの3頁目には、当該商品の開発プロデュースを担当した坂本乙造商店 代表取締役 坂本朝夫のコメントが掲載されている。
続いて、乙第4号証は、坂本漆芸の定時株主総会議事録の写しであり、乙第5号証は、坂本乙造商店の定時株主総会議事録の写しである。上記証拠は、上記両会社の取締役並びに監査役が現在も役員の任期期間中である事実を示すものである。
(4)口頭審理における陳述
被請求人は、本件口頭審理期日に出頭していない。

4 当審の判断
(1)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は、商品カタログと認められるところ、表紙には「DynaBook G8 Limited Edition eyes」の表示があり、その「DynaBook G8 Limited Edition」の文字部分と「eyes」の文字部分とは色彩、書体及び印刷方法を異にしている。
そして、「世界限定100台」の表示の下に、「TOSHIBA」と表示した椿の花柄を施したノート型パソコンの写真が掲載されている。また、左上部には「TOSHIBA」の表示、右上部には四角枠内に「2003-5」の表示、その下に「ノートPC」の文字が表示されている。
さらに、裏表紙には「TOSHIBA」、「株式会社東芝 デジタルメディアネットワーク社」の表示がある。
イ 上記カタログの2頁には、中央に「TOSHIBA」と表示した椿の花柄を施したノート型パソコンの写真が掲載され、下部に「世界限定100台」の表示及び「DynaBook G8 Limited Edition eyes」の表示があり、その「DynaBook G8 Limited Edition」の文字部分と「eyes」の文字部分とは、表紙同様、色彩、書体及び印刷方法を異にしている。
ウ 上記カタログの3頁には、本文中に「”DynaBook G8 Limited Edition”」の表示があるものの、「eyes」の文字は見当たらない。また、同頁下部には、「うるし・・・第三の価値」と題し、「ノートPCと、漆による艶めいた新しいスタイル・・・」などの「株式会社坂本乙造商店 代表取締役社長 坂本朝夫」の談話が掲載されている。
エ 上記カタログの4頁ないし7頁には、当該パソコンの機能や仕様が掲載され、7頁には「本カタログに表示されている数値及び表現は2003年5月現在のものです。」と表示されている。また、5頁及び7頁の右上部には、表紙同様の態様で、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が表示されているものの、これらの頁に「eyes」の文字は見当たらない。
オ 被請求人に係る履歴事項全部証明書(乙第2号証)によれば、被請求人は、昭和39年9月11日に設立された法人であり、福島県会津若松市に本店をおき、「合成樹脂原料の製造及び販売、電気機械器具の製造及び販売」等を目的とする法人であって、その代表取締役は坂本朝夫であることが認められる。
また、坂本乙造商店に係る履歴事項全部証明書(乙第3号証)によれば、同社は、昭和62年9月9日に設立された法人であり、福島県会津若松市に本店をおき、「漆・漆器、家具・装備品等の製造及び販売」等を目的とするものであって、その代表取締役は坂本朝夫であることが認められる。
カ 被請求人の定時株式総会議事録(乙第4号証)によれば、平成18年9月25日に総株主8名による総会が開催されたこと、17年度事業報告及び決算報告承認の件ほかが議案とされたこと、坂本朝夫取締役ほかが出席したことが認められる。また、坂本乙造商店の定時株式総会議事録(乙第5号証)によれば、平成18年9月25日に総株主5名による総会が開催されたこと、17年度事業報告及び決算報告承認の件ほかが議案とされたこと、坂本朝夫取締役ほかが出席したことが認められる。
(2)本件商標の使用について
ア 本件商標は、「eyes」の文字からなるものである。
イ 乙第1号証の商品カタログには、表紙及び2頁に「DynaBook G8 Limited Edition eyes」の文字が表示されているが、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字と「eyes」の文字とは、その書体及び色彩を異にしており、かつ、「eyes」の文字のみインクの盛り上がりが確認できる。また、3頁、5頁及び7頁には、「DynaBook G8 Limited Edition」の文字が表示されているものの、「eyes」の文字は見あたらず、その表示に整合性がなく不自然である。
してみれば、乙第1号証の商品カタログの表紙及び2頁に表示された「eyes」の文字は、該カタログに後から印刷されたものと推認せざるを得ない。
ウ さらに、当該カタログの表紙には、右上の四角枠内に「2003-5」の表示及び7頁に「2003年5月現在」の表示があり、これと「2003年5月から通常使用権を許諾した」旨の被請求人の主張を併せると、このカタログが2003年5月期のカタログであると推認し得るものであるが、これ自体では、本件審判請求の登録前3年以内(以下「本件期間内」という。)に現に頒布等されたことが明らかであるとまでは認めることができず、他に当該時期の頒布等を窺わせる資料(本件期間内に現に取引がされたことなどを示すもの)もないから、結局、当該カタログをもって、本件期間内に本件商標の使用がなされたものであると認めることはできない。
(3)通常使用権者について
乙第1号証の商品カタログには、「TOSHIBA」、「株式会社東芝」の表示があることから、当該カタログは、東芝に係る商品(ノート型パーソナルコンピュータ)のカタログと認められる。そして、当該カタログ中には、「うるし・・・第三の価値」と題して、坂本乙造商店の代表取締役坂本朝夫の談話が掲載されていることが認められるが、当該談話からは、坂本乙造商店が当該カタログ掲載商品の漆加工を行ったことは認められるとしても、この掲載記事から直ちに被請求人から東芝への使用許諾があったことを導きだすことは到底無理というべきであり、ほかに、東芝に対して本件商標の使用を許諾した旨の被請求人の主張を直接裏付け得る証左はみいだせない。
上記カタログのほか(乙第2号証ないし同第5号証)は、被請求人と坂本乙造商店との関係等を示すに止まり、本件商標の使用を直接示すものではない。そして、通常使用権者とする坂本乙造商店の本件商標の使用を窺わせる証左はないから、結局、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が本件期間内に使用をされたことを明らかにしたとは認められない。
他に、本件商標が本件期間内に使用をされたことを認め得る証拠はなく、不使用に係る正当理由についての主張及び立証もない。
(4)まとめ
したがって、本件商標は、商標登録の取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって本件期間内に使用をされたとは認められないものであるから、商標法第50条の規定により、その登録の取消しを免れないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-11-04 
結審通知日 2009-11-06 
審決日 2009-11-18 
出願番号 商願昭61-58348 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (111)
最終処分 成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
内山 進
登録日 1990-03-27 
登録番号 商標登録第2215473号(T2215473) 
商標の称呼 アイズ 
代理人 本名 昭 
代理人 堀 城之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ