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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 030
管理番号 1209966 
審判番号 取消2007-301470 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2009-12-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3080538号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成20年11月11日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10482号 平成21年 6月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3080538号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「忠臣蔵」の文字を縦書きしてなり、平成4年5月25日に登録出願、第30類「米,脱穀済み大麦,食用粉類,穀物の加工品」を指定商品として平成7年10月31日に設定登録され、その後、平成17年10月25日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中『第30類 米,脱穀済み大麦,食用粉類,強化米』についての登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
請求人が鋭意調査した限りにおいては、本件商標がその指定商品中「米,脱穀済み大麦,食用粉類,強化米」に関して、商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されている事実を発見することはできなかった。
また、商標登録原簿を見ても、専用使用権及び通常使用権は設定登録されておらず、許諾を受けた通常使用権者等による使用の事実もない。
更には、本件商標を使用していないことについての正当な理由も認めることができない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その指定商品中「米,脱穀済み大麦,食用粉類,強化米」についての登録を取消すべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人提出に係る証拠の不当性
被請求人は、本件商標が使用されている事実を立証するために各号証を証拠方法として挙げている。しかるに、各号証をつぶさに検討するに、その殆どが証拠方法として適格性を欠くものである。
ア 乙第1号証及び乙第2号証について
被請求人は、「乙第1号証は、平成12年12月11日の商経アドバイスの、被請求人の広告が掲載された頁の写しである。また、乙第2号証は、平成16年8月14日の毎日新聞の、被請求人の広告が掲載された頁の写しである。」と主張する。
しかしながら、被請求人は、本件審判において、審判請求の登録日である平成19年11月29日前3年以内の本件商標の使用を立証しなくてはならないところ、乙第1号証は、日付が「平成12年12月11日」とされている。すなわち、本件審判請求の登録日からすると約7年前であって、「登録前3年」よりはるか以前のものである。
また、乙第2号証も、日付が「平成16年8月14日」とされ、本件審判請求の登録前3年より以前のものである。
したがって、乙第1号証及び乙第2号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内の使用は何ら立証されていない。
ここで、被請求人は「乙第1号証及び乙第2号証の広告は、本件審判請求の登録前から3年以上前のものであるが、乙第2号証の広告を掲載してからわずか3ないし4ヶ月の間に被請求人が米の取引を中止するとは考えにくく、本件審判請求の登録日から3年以内に被請求人が米に『忠臣蔵』という標章を使用して米の取引を行っていることが十分に推認される。」と主張するが、当該主張の根拠は甚だ薄弱である。
なぜなら、広告を掲載するという行為と、その後商品を継続して製造販売しているか否かとは、必然的な関係がない。特に、食品分野に属する商品においては、周知のごとく、商品のライフサイクルが短いものが多く、広告が掲載されてから数ヶ月以内に商品の製造販売が中止されるケースは多々存在するからである。
なお、付言するに、乙第1号証及び乙第2号証は、商標法第2条第3項第8号に規定されている商標の「使用」には該当しない。
乙第1号証及び乙第2号証には、それぞれ「忠臣蔵」の文字が記載された欄が見受けられるものの、同欄に「忠臣蔵」の文字と並列して縦書きで「竜花塩」、「ポッポヤ鉄道員」、「秀菜 逸菜」、「天守閣」、「博多山笠」、「味度証」、「スーパードライス」の文字が記載され、さらにそのすぐ下又は左横には、横書きの太い黒字で大書きされた「鉄道員」、「雪ノ両国橋」の文字や縦書き及び白抜きで「忠臣蔵」の文字が記載されている。
以上のとおり、乙第1号証及び乙第2号証の同欄には「忠臣蔵」の他、多くの文字が趣旨不明確なまま、雑然と記載されている。そのため、乙第1号証及び乙第2号証の同欄に接した需要者は、一般的に、いずれの出所を表すものか判断することができないとともに、この記載が何のためのものかを理解することができない。まして、乙第1号証及び乙第2号証の同欄を「広告」として把握することはできない。
したがって、乙第1号証及び乙第2号証は、商標の重要な機能の一つである出所表示機能を何ら発揮していない上、そもそも「米」についての「広告」とはいえないから、商標の「使用」に該当しない。
イ 乙第3号証について
被請求人は、「乙第3号証は、被請求人の名刺であり」と主張する。
しかしながら、「名刺」は、単に「名刺」が存在することにより商標の使用が推定されるものではなく、あくまで商品との関係でいかなる使用がなされたかが問題となるものである。この点、被請求人において何ら主張されていない。
さらに、乙第1号証及び乙第2号証について述べたように、乙第3号証は、「忠臣蔵」の文字と並列して縦書きで「竜花塩(リュウカエン)」、「ポッポヤ鉄道員」、「秀菜 逸菜」、「天守閣」、「博多山笠」、「味度証」、「スーパードライス 」の文字が記載され、また、「忠臣蔵」の左横には、縦書きの「ポッポヤ」の文字と左横書き一連の「鉄道員」の文字及びその下に地模様のような標章が配されたものである。
一般的に、乙第3号証に接した需要者において、「忠臣蔵」の他多くの文字が記載されていることから、いずれの出所を表すものか定かではなく、商標の重要な機能の一つである出所表示機能は何ら発揮されていない。すなわち、乙第3号証からは「忠臣蔵」の商標が付された商品がいかなる品質のものなのか、価格はいくらなのか、どこで販売されているかが一切不明であり、仮に、乙第3号証で興味を持った需要者がいたとしても、乙第3号証記載の電話番号に電話をして詳細を確認せねばならず、乙第3号証のみで商品が市場に流通しているとはいえないものである。
また、乙第3号証は、左下に横書きで「松本」と被請求人の苗字が記載されているだけで、名は記載されていない。そのため、乙第3号証は「名刺」として使用されることがあるのかさえ定かではない。
ウ 乙第5号証について
被請求人は、「乙第5号証は、・・・株式会社純情米いわて(審決注:以下「純情米いわて社」という。)からセラの苑の被請求人に送付されてきた、お米代金預り金残高表である。この乙第5号証により、セラの苑という屋号を使用して被請求人が、継続的に純情米いわて社と米の取引を行っていることがわかる。」と主張する。
しかしながら、乙第5号証「お米代金預り金残高表」については、以下の点で信憑性に疑いがある。
a.当該書類に純情米いわて社の会社印が押印されていない。
b.当該書類の作成者として表示されている「小原」なる人物の印ではなく、何故か「佐々木」なる印が押印されている。
c.「伝票NO」なる項目が存在し、おそらくは「伝票ナンバー」を意味すると考えられるにも関わらず、当該「伝票NO」に照合する伝票の写し等が証拠として何ら添付されていない。本証拠の作成日付は「平成20年1月5日」とされており、つい1月程前の書類であるから書類の散逸等は到底考えられず、伝票の写し等が添付されていない点は極めて不自然といわざるを得ない。
d.「前ページより」と記載されて複数ページがあるかのごとき体裁であるにもかかわらず、ページ数が記載されていない。
なお、仮に「米の取引」があったとしても、当該書類には何ら「忠臣蔵」の記載が見受けられず、本件商標「忠臣蔵」が付された米が取引されていたか否かは、乙第5号証からは全く不明である。
したがって、乙第5号証は、本件商標の「使用」を立証する証拠として評価することはできない。
エ 乙第6号証について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、「乙第6号証は、・・・純情米いわて社への証明願であり、被請求人が純情米いわて社に本件商標を付した受発注用紙をFAXしていたことを証明するものである。」と主張する。
しかしながら、乙第6号証の「証明願」に関しては、証拠の真正に関して不自然な点が多く見受けられる。
(イ)添付「受発注用紙」についての疑義
被請求人は、乙第6号証に添付の「受発注用紙」なる書面について「被請求人がFAXし、純情米いわて社が受信した受発注用紙」と主張している。
しかしながら、「受発注用紙」については、以下の点で信憑性に疑いがある。
a.「ご依頼主」欄の内「名前」欄内の一部が黒塗りされている。被請求人の主張によれば、「ご依頼主」は被請求人自身のはずであるから、「名前」を黒塗りする理由はない。
b.「お届け先」欄内の罫線の一部が消えている。そのため、「受発注用紙」は、紙を切り貼りしたものをコピーしたものである可能性がある。
c.1枚目の受発注用紙は、「19.2.15」及び「19.629.」との記載がされている。仮に、かかる記載が日付を表すとすれば、2つの異なる記載があるのは不自然である。なお、「申込月日」の欄は、あえて空欄のままである。
d.2枚目の「受発注用紙」は、あえて縦と横が別にされて綴じられていることから一見分かりにくいが、実際は1枚目の「受発注用紙」と全く同じものである。ただし、「19.7.30」との記載が追加されている点が、1枚目の「受発注用紙」と異なる。なお、被請求人は、「同じ注文内容である場合には、前回使用した受発注用紙に、日付等の必要事項を書き加えて再度その受発注用紙を使用していた。」と主張する。しかし、以前の「日付」を消去していないのは、不自然である。
e.「受発注用紙」なのに受付日等の記載がなく、その他「受注」について何ら記載されていない。一般的な商取引の現場において、商品の受発注に関し、いつ注文を受け付けたかという受注日時の特定は、極めて重要な要素である。特に「米」という食品に属する商品において消費期限等の問題も併せ考慮すると、一般の商品に比し、日付はより重要な要素と考えられる。ところが、当該「受発注用紙」は、複数の「日付」が併記されて混乱を招くにもかかわらず、純情米いわて社が受注日を記載していないのは極めて不自然である。
(ウ)添付「受発注用紙」におけるFAX受信日時の不存在
被請求人は、乙第6号証に添付の「受発注用紙」なる書面について「被請求人がFAXし、純情米いわて社が受信した受発注用紙」と主張している。
しかしながら、いずれの「受発注用紙」にもFAXの受信日時が記載されていない。これでは、いつFAXで受信したのか何ら客観的に証明されたことにはならない。
ここで、被請求人は「被請求人がFAXし、純情米いわて社が受信した受発注用紙は、同社に多数保管されていたものの、それらの受発注用紙は、同社の保管サイズに合わせるため、FAXの受信日時が記されているヘッダー部分が切り取られた状態で同社内に保管されていた。」と主張している。
しかしながら、上記主張は極めて不自然である。すなわち、純情米いわて社は、FAXの受信用紙のサイズを当初から「同社の保管サイズ」に合わせて設定しておけば足りる。にもかかわらず、FAXを受信する毎に、同社の保管サイズに合わせるため、受信した受発注用紙のFAXの受信日時が記されているヘッダー部分を切り取らなくてはならないというのは、あまりに不自然である。
また、上述のとおり、「米」という食品については、受注日時の特定は極めて重要な要素である。そのため、仮にFAXの受注用紙のサイズが「同社の保管サイズ」と異なっていたとしても、折りたたんで保管すれば足りるのであって、わざわざ切り取るようなことはあり得ない。
さらに、万一、純情米いわて社が、FAXのヘッダー部分を切り取っていたとしても、当該「受発注用紙」に受注日時を改めて記載するなどして然るべきところ、乙第6号証添付の「受発注用紙」にはかかる記載は存在しない。
(エ)添付「お届け伝票」についての疑義
乙第6号証添付の「お届け伝票」についても多くの不自然な点が見受けられる。特に、以下の点で、本当に発送された伝票控えなのか否かについて疑義が生じる。
まず、添付「お届け伝票」の右端に「売場控」とあることから、これより添付「お届け伝票」は、差出人の控え書類であるということになる。通常、宅配便を依頼すると、宅配業者は、集荷又は持込を問わず、日付入りの領収印を必ず押印することになっている。この点に関しては、ペリカン便の営業主体である日本通運株式会社にも確認しているところである。しかるところ、乙第6号証添付の「お届け伝票」3枚を見るに、いずれにも領収印が押印されていない。
次に、添付「お届け伝票」は、右下段に「集配・持込 ・・・」なる欄が存在する。これは荷物のサイズ・重量を示す欄であって、宅配業者は、荷を受け取った際、必ず同欄の該当箇所に○印を記載することになっている。これは、送料が同欄のいずれに該当するかにより決まるからである。しかるところ、添付「お届け伝票」3枚を見るに、同欄にはいずれも何らの記載もない。また、通常、伝票には送料の合計金額が記載されるが、いずれの添付「お届け伝票」にも送料の金額が記載されていない。
さらに、添付「お届け伝票」は、2枚目と3枚目の「お問合せ伝票番号」が以下のとおり逆になっており、過去にさかのぼっている。
a.2枚目の「お届け伝票」
「07年06月30日」付け
「お問合せ伝票番号」:「298-62-185-5151」
b.3枚目の「お届け伝票」
「07年08月01日」付け(2枚目より後の日付)
「お問合せ伝票番号」:「298-62-185-4123」
以上を考慮すると日付の異なる3枚の伝票が偶然にも全て領収印やサイズ、金額が何ら記載されていないこと、及び伝票番号が過去にさかのぼっていることは、誠に持って不可思議としか言い様がなく、証拠の信憑性に疑念を持たざるを得ない。請求人においては原本の確認を是非にも要求するものである。
(オ)「使用」の立証の不存在
仮に、純情米いわて社が顧客SYに「米を発送」していたとしても、乙第6号証添付の「お届け伝票」3枚は、「商品名」欄にそれぞれ「ムセンひとめぼれ5kg×4」、「ムセンひとめ5k×4」、「ムセンひとめぼれ5k×4」との記載があるにすぎない。すなわち、いずれにも「忠臣蔵」の文字は存在しない。
他方、添付「お届け伝票」は、3枚すべてにおいて、左下空欄に「純情米宅配キャンペーン!」なる文字が印刷されている。
したがって、添付「お届け伝票」は、本件商標が付された商品が発送されたかについて何ら立証していないから、「使用」を立証するものではない。
(カ)乙第5号証との間の矛盾
乙第6号証添付の「お届け伝票」は、乙第5号証「お米代金預り金残高表」との関係で一部矛盾点が存在している。
上記「お届け伝票」によれば、純情米いわて社から顧客SY宛に、「07年06月30日」、「07年08月01日」の各々の日付で、それぞれ5kg包装の米4袋が発送されたということになっている。
しかし、乙第5号証「お米代金預り金残高表」には「07年06月30日」発送分に対応の「平成19年6月30日」付け「請求額」欄には「9,000」と記載されており、これは請求金額が9,000円であることを示すものと考えられる。他方、「07年08月01日」発送分に対応する「平成19年8月1日」付け「請求額」欄には「18,000」と記載されており、これは請求金額が18,000円であることを示すものと考えられる。
そのため、被請求人は、同じ5kg包装の米4袋を発送したことになっているにも関わらず、それぞれ請求金額が9,000円と18,000円で2倍も異なっており、極めて不自然である。
ここで、純情米いわて社のホームページを見るに、「取り扱い商品一覧」と題するページには、後述する乙第8号証の別紙2の写真と同一の米の包装袋を使用した「無洗米ひとめぼれ」なる商品が掲載されており、5kg×2袋で5,200円(内税)で販売されているとの事実が窺える(甲第3号証)。そのため、被請求人の主張によれば、「2007年(平成19年)8月1日に、乙第6号証に添付された2枚目の受発注用紙の写しに示されたお届先に、当該受発注用紙の写しに記載された注文品(注:「ムセンひとめぼれ5k×4)が発送された」とのことであるから、約1万円前後の代金となるはずである。ところが、「平成19年8月1日」付け「請求額」欄には「18,000円」と記載されており、いかにも不自然である。
したがって、乙第6号証及び乙第5号証についても、その真正について重大な疑義がある。
(キ)証拠としての「伝票」の不存在
さらに不可思議な点として、乙第5号証の「お米代金預り金残高表」において一覧表中に「伝票NO」なる項目が存在し、おそらくは「伝票ナンバー」を意味すると考えられる。
そうだとすれば、被請求人が米の取引があったと主張する平成19年6月29日に対応する「平成19年6月30日」には伝票NO「110,944,699」の伝票が、平成19年7月30日に対応する「平成19年8月1日」には伝票NO「110,953,563」の伝票が、それぞれ存在していたことになる。
しかしながら、当該伝票は、いまだ提出されていない。仮に、被請求人において米の取引が行われたと主張するならば、証明願もさることながら、当然に上記伝票ナンバーの書類も証拠として提出されて然るべきところ、当該伝票に関しては何ら提出されていない点も理解に苦しむものである。
(ク)結論
以上のとおり、乙第6号証の「証明願」は、証拠の真正が極めて疑わしい。そのため、被請求人は、本件商標の「使用」について何ら立証できていない。
オ 乙第7号証について
被請求人は、「乙第7号証は、顧客NYへの証明願である。」と主張するが、乙第7号証は、「顧客NY」が「セラの苑より2ないし3年前に2ないし3回、平成19年11月22日頃に1回、米を購入している」、「セラの苑に平成19年11月20日頃に『忠臣蔵を5kg下さい』と電話により注文した」などとの主張を述べるにすぎない。
他方、上記を証明できる取引書類(領収証、請求書等)などの客観的な補充証拠は、一切提出されていない。そうした証拠が提出されてこそ初めて証明願の客観性が担保されるものである。本件においては、これらの補充証拠が提出されていない以上、証拠方法としての客観性が担保されていない。
したがって、乙第7号証は、本件商標の「使用」を証明したことにはならない。
カ 乙第8号証及び乙第9号証について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、「乙第8号証及び乙第9号証により、本件審判の登録前3年以内に日本国内において本件商標の商標権者である被請求人が、その指定商品中『米』の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を継続して付していたこと、及びその標章を付したものを継続して譲渡していたことが証明される」旨主張する。
しかし、以下に述べるように、上記主張も失当である。
(イ)「社会通念上同一」の商標の使用への不該当
被請求人は、「乙第8号証及び乙第9号証にいずれも添付された別紙2に示す米袋には、別紙1に示すシールと同じシールが貼り付けられている」として、「本件商標と社会通念上同一と認められる標章を継続して付していた」と主張する。
しかし、これは「社会通念上同一」の商標の使用には決して該当しないものである。別紙2の態様を見ると、上述の純情米いわて社が製造販売する「無洗米ひとめぼれ」の「米袋」に単に別紙1の「シール」を貼ったのみであることが容易に理解できる。
すなわち、別紙2の「米袋」からは、別紙1の「シール」だけでなく、「純情米いわて」の文字や、別紙1の「シール」の下に楕円形の緑色の二つの図形からなる標章(登録番号第4619661号、権利者「株式会社純情米いわて」、指定商品「米」その他)も容易に看取されるものである。
したがって、その外観からはとても「忠臣蔵」の文字のみよりなる本件商標と「社会通念上同一」の商標の使用には該当しないことは明白である。
(ウ)不使用取消審判制度の制度趣旨からの潜脱
さらに、別の観点から、このように第三者の製造販売している商品の包装等に、登録商標と同一又は類似の商標を貼付することにより不使用を免れるのであれば、別紙1のような「シール」さえ用意しておけば、いかようにも不使用を免れることが可能となってしまう。これでは、不使用取消審判制度の制度趣旨が潜脱されてしまう。
したがって、別紙1の「シール」を純情米いわて社が製造販売する「無洗米ひとめぼれ」の「米袋」に貼付したことをもって「使用」と評価することはできない。
(エ)出所表示の侵害
また、商標の機能論からもこのような使用は商標の「使用」には該当しない。すなわち、商標が「使用」されているといえるためには、商標が商品の自他識別・出所表示として使用されていること、いわゆる商標的使用がなされていることが必要である。
しかるところ、本件に関しては、別紙2のような態様は、商品の出所が「セラの苑」なのか、「純情米いわて社」なのかが定かではなく、需要者層において出所の混同が生ずるおそれがあることは明白である。このように出所表示を害するような商標の態様は正当な商標の「使用」には該当しないものである。
キ 乙第10号証について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、「乙第10号証の1及び2は、セラの苑が顧客SYへ宅配便にて米を発送した際の控え書類である。」と主張する。
しかし、これに関しても矛盾する点が存在する。
(イ)重さにおける矛盾
被請求人の主張によれば、「被請求人は、基本的には、5kg単位の米袋で米を販売している」とのことである。また、乙第10号証の2の「品名」欄には「コメ」なる文字に続いて太いペンで「5k」と記載されており、被請求人の主張によれば、「被請求人が発送後の確認作業において書き加えたものである」とされている。さらに、被請求人が提出した乙第9号証に添付の別紙2の米袋には「5kg」の文字が印字されている。
そこで、請求人においてヤマト運輸株式会社に確認したところ、仮に「5kg単位の米袋」を発送するのであれば「サイズ80」すなわち「80cm以内、5kgまで」が適用されて、中部地域で発送する場合の代金は950円となるはずとのことであった。他方、「サイズ60」の場合は、「60cm以内、2kgまで」を意味するから、重さ2kg以内のものしか発送できないとのことであった。
しかるに、乙第10号証「控え書類」によれば、セラの苑からSY宛に「サイズ60」で「合計740円」を「2件1,480円」で発送されたことになっている。これは、重さ2kg以内の商品を2個、発送されたことにしかならない。
また、2kg以内の商品を2個送る場合、1件にまとめても4kgにすぎず重くないこと、「サイズ80」1件にまとめれば950円であって「2件1,480円」よりも料金が安いことからして、1件にまとめて送るのが通常である。ところが、本件では、わざわざ2件に分けていることから、2件の発送先はそれぞれ異なるものと考えられる。
したがって、乙第10号証「控え書類」は、重さに矛盾があることからして、「米を発送した際の控え書類」ではない。
(ウ)乙第10号証の1の「お届け先」についての疑義
乙第10号証の1「控え書類」は、「お届け先」が「ギフ県総合医センター、西病棟9F小児患者SA(Y)様」とされている。
ここで、「ギフ県総合医センター」とは、「岐阜県総合医療センター(所在地:岐阜県岐阜市野一色4-6-1)」のことと考えられる。また、「SA」とは同所に入院中の「小児患者」であって、SYの娘と考えられる。
そのため、乙第10号証の1「控え書類」は、岐阜県総合医療センター「西病棟9F」小児科に入院中の「小児患者」である「SA」に宛てて、病室に直接、お見舞いの品物(2kg以内)を発送したことの「控え書類」と考えられる。
「小児」とは「小さなこども。幼児」を意味するところ(広辞苑第6版)、病院に入院している「小児患者」に対して、お見舞いの品物として、病室に直接「米を発送」することは、通常は考えられない。
したがって、乙第10号証の1「控え書類」は、「米を発送した際の控え書類」ではない。
(エ)乙第10号証の1の「品名」欄についての疑義
また、乙第10号証の1「控え書類」の「品名」欄にて使用されている筆記具は、「お届け先」欄で使用されている筆記具とは明らかに異なる。この点についても原本の確認を求める次第である。
(オ)乙第10号証の2の「品名」欄についての疑義
乙第10号証の2「控え書類」は、「品名」欄に「ヨウコサマ コメ5k」と記載されているのみで、本件商標「忠臣蔵」が付された米が送られたか否か不明であり、「使用」の証明にはなっていない。
また、乙第10号証の2は、「品名」欄において「ヨウコサマ」、「コメ」、「5k」のいずれの文字に関してもすべて筆記具が異なっており、非常に不自然な印象を受ける。これについても原本の確認を求める次第である。
(カ)「SY」以外の「お届け先」の不存在
被請求人が乙第10号証として提出した「宅配便にて米を発送した際の控え書類」は、住所表記は異なるものの、その宛先はいずれもSYのわずか1名のみである。
乙第7号証及び乙第8号証の「証明願」を作成したとされる他の2名(NY、NT)に関しては、「宅配便にて米を発送した際の控え書類」などの伝票等は一切提出されておらず、他への発送書類も存在しない。
したがって、乙第10号証は、本件商標が付された商品が市場に流通していないことをむしろ立証している。
(2)まとめ
以上のとおり、被請求人が提出したいずれの証拠方法によっても、「被請求人は、本件商標を、その指定商品『米』について、継続して3年以上日本国内において使用している実績がある。」とは認められない。
その他、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において被請求人、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって本件商標の指定商品中「米,脱穀済み大麦,食用粉類,強化米」について「使用」されたとの事実は、一切存在しない。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出し、さらに、平成20年(行ケ)第10482号審決取消事件の審決取消判決が確定後、乙第11号証ないし乙第30号証(枝番号を含む。)及び検乙第1号証を提出した。
1 本件商標の使用実績
本件商標の商標権者である被請求人は、本件商標を、その指定商品中「米」について、継続して3年以上日本国内において使用している実績があるため、以下にそれを立証する。
(1)はじめに
被請求人は、平成2年頃、米を炊く際、セラミックスを釜に入れ、米をそのセラミックスと一緒に炊くと水分子が作用して米が安全かつ短時間のうちに非常においしく炊けることを発見した。そこで、被請求人は、そのセラミックスを販売するとともに、安価でありながらもそのセラミックスと一緒に炊くとおいしくなる米を選定し、その選定した米に「忠臣蔵」という標章を使用して米の取引を行っている。被請求人は、平成4年頃から米について「忠臣蔵」という標章を使用して米の取引を行っている。
(2)広告掲載の実績
被請求人は、平成5年から複数回にわたって新聞に広告を掲載している。乙第1号証は、平成12年12月11日付けの商経アドバイスの、被請求人の広告が掲載された頁である。また、乙第2号証は、平成16年8月14日付けの毎日新聞の、被請求人の広告が掲載された頁の写しである。
乙第1号証の広告には、「商標30類」という横書きの記載の下方左端に縦書きで「忠臣蔵」と記されている。また、その縦書きの「忠臣蔵」の下には「コメ」と横書きで記されている。一方、乙第2号証の広告には、広告中最も大きな書体を用いて白抜きで縦書きに「忠臣蔵」と記されている。また、右上には、横書きで「無洗米」と記されている。さらに、右側には四角で囲った中に縦書きで「忠臣蔵」とも記され、その四角の上には横書きで「商標30」という記載がある。
ここで、被請求人は、米の取引においては、セラノ苑あるいはセラの苑という屋号を使用している。乙第1号証の広告には、右の下隅に横書きで「セラノ苑ノ米」という被請求人の屋号とともに商品名を記した記載があり、左側には、縦書きで被請求人の住所と被請求人の名字である松本が記されている。また、乙第2号証の広告には、「セラノ苑ノ米」という被請求人の屋号とともに商品名を記した記載の下に、被請求人の電話番号と同じ電話番号及び被請求人の住所と同じ住所を記し、一番下に被請求人の名字である松本と記してある。
なお、乙第3号証は、被請求人の名刺であり、この名刺にも乙第2号証の広告と同じように、セラノ苑ノ米という被請求人の屋号とともに商品名を記した記載の下に、被請求人の電話番号と同じ電話番号及び被請求人の住所と同じ住所を記し、一番下に被請求人の名字である松本と記してある。
乙第1号証及び乙第2号証の広告は、本件審判請求の登録前から3年以上前のものであるが、乙第2号証の広告を掲載してからわずか3ないし4ヶ月の間に被請求人が米の取引を中止するとは考えにくく、本件審判請求の登録日から3年以内に被請求人が米に「忠臣蔵」という標章を使用して米の取引を行っていることが十分に推認される。
(3)商品発注の実績
被請求人は、基本的には、5kg単位の米袋で米を販売している。被請求人は当初、自分で米を仕入れてその米の米袋に「忠臣蔵」という標章を付して顧客に販売していたが、高齢になってきたこともあり、10kg、20kg、30kgといった5kg単位の米袋が複数になる場合には、純情米いわて社にセラの苑という屋号のもと受発注用紙を出し、純情米いわて社から被請求人の顧客に被請求人名で直接発送してもらう販売形態をとることもあるようになってきた。
乙第4号証は、純情米いわて社の履歴事項全部証明書である。また、乙第5号証は、乙第4号証の履歴事項全部証明書によって証明される純情米いわて社からセラの苑の被請求人に送付されてきた、お米代金預り金残高表である。この乙第5号証により、セラの苑という屋号を使用して被請求人が、継続的に純情米いわて社と米の取引を行っていることがわかる。
乙第6号証は、乙第4号証の履歴事項全部証明書によって証明される純情米いわて社への証明願であり、被請求人が純情米いわて社に本件商標を付した受発注用紙をFAXしていたことを証明するものである。乙第6号証は、被請求人から被請求人代理人である吉延彰広が依頼を受け、吉延彰広が純情米いわて社に出向き、事情を説明して同社内で証明願を起案し、同社が内容をよく確認した上で後日証明したものである。
被請求人がFAXし、純情米いわて社が受信した受発注用紙は、同社に多数保管されていたものの、それらの受発注用紙は、同社の保管サイズに合わせるため、FAXの受信日時が記されているヘッダー部分が切り取られた状態で同社内に保管されていた。そのため、被請求人がFAXした受発注用紙を、純情米いわて社が受信した正確な日時がわからない状態であった。しかしながら、純情米いわて社が宅配便にて米を発送した際の控えであるお届け伝票が、同社内で発見された。発見されたお届け伝票から、純情米いわて社に多数保管されていた受発注用紙のうちの2枚について、同社が受信した事実を証明したものである。純情米いわて社に保管されていた、これら2枚の受発注用紙の写しは、同社内で発見された3枚のお届け伝票の写しとともに乙第6号証に添付されている。
乙第6号証に添付された2枚の受発注用紙の写しのいずれにも、縦書きで「忠臣蔵」と大きく白抜きで記されており、その「忠臣蔵」と記された右斜め上には「登録商標」と横書きで記されている。したがって、乙第6号証に添付された2枚の受発注用紙の写しのいずれにも、本件商標と社会通念上同一と認められる標章が記されているといえる。さらに、これら2枚の受発注用紙の写しのいずれにも、注文品の欄に「無洗米ひとめぼれ」という米の銘柄の記載がある。
また、乙第6号証に添付された1枚目の受発注用紙の写しには、左側に示された「お届先」という表示の下に「19.2.15」という手書きの文字が示されており、さらにその手書きの文字の下には「19.6 29.貴社の都合良い日で結構いつでも」という手書きの文字が示されている。乙第6号証に添付さた2枚目の受発注用紙の写しには「19.6 29.貴社の都合良い日で結構いつでも」という手書きの文字の下に「19.7.30」という手書きの文字が示されている。ここで、乙第6号証に添付された1枚目と2枚目の受発注用紙の写しを見比べてみると、2枚目の受発注用紙の写しは、1枚目の受発注用紙の写しに「19.7.30」という手書きの文字が加えられただけのものであることがわかり、被請求人が、同じ注文内容である場合には、前回使用した受発注用紙に、日付等の必要事項を書き加えて再度その受発注用紙を使用していたことがうかがえる。
一方、乙第6号証に添付された2枚目のお届け伝票の写しによれば、2007年(平成19年)6月30日に、乙第6号証に添付された1枚目の受発注用紙の写しに示されたお届先に、当該受発注用紙の写しに記載された注文品が発送されたことがわかる。乙第6号証に添付された3枚目のお届け伝票の写しによれば、2007年(平成19年)8月1日に、乙第6号証に添付された2枚目の受発注用紙の写しに示されたお届先に、当該受発注用紙の写しに記載された注文品が発送されたことがわかる。
以上より、純情米いわて社は、受発注用紙に示された手書きの日付の翌日か翌々日に米を発送していることがわかる。純情米いわて社は、この事実を根拠に、同社が、乙第6号証に写しが添付された2枚の受発注用紙それぞれを、平成19年11月15日から1年以内前に受信したという事実を証明した。ただし、乙第6号証に添付された1枚目の「19.6 29.」という文字が書き加えられた受発注用紙を、平成19年6月28日や同年同月30日に受信していたかもしれないので、平成19年6月29日という特定の日付に受信したということまでは証明できず、乙第6号証に添付された2枚目の「19.7.30」という文字が書き加えられた受発注用紙についても、同様な理由により特定の日付に受信したということまでは証明していない。
なお、純情米いわて社内では、「お届先」という表示の下に「19.2.15」という手書きの文字のみが示された受発注用紙は残念ながら見つからなかったが、乙第6号証に写しが添付された1枚目のお届け伝票の原本は発見されたので、このお届け伝票の写しも乙第6号証に併せて添付している。
乙第6号証により、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標の商標権者である被請求人が、その指定商品「米」に関する取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付して頒布する行為を行っていたことが証明される。
(4)商品販売の実績
また、被請求人は、5kg単位の米袋が1ないし2個であれば、依然として自分で米を仕入れてその米の米袋に「忠臣蔵」という標章を付して顧客に販売している。被請求人は、自分で仕入れた米の米袋に貼る標章の原図を自分でデザインし、その原図をカラーコピーして使用している。乙第7号証ないし乙第9号証はいずれも、被請求人の顧客への証明願である。
乙第7号証ないし乙第9号証はいずれも、被請求人から依頼を受けた被請求人代理人吉延彰広が各証明者に事情を説明して各証明者の前で証明願を起案し、各証明者が内容をよく確認した上で証明したものである。
乙第7号証は、顧客NYへの証明願である。NYによる証明の事実をまとめると、NYは、セラの苑という屋号の被請求人から、平成19年11月27日前3年以内に米を複数回購入し、セラの苑が販売する米が忠臣蔵というブランドの米であることを知っていたということになる。
乙第8号証は、顧客NTへの証明願であり、乙第9号証は、顧客SYへの証明願である。乙第8号証及び乙第9号証にいずれも添付された別紙1に示すシールには、歌舞伎におけるまねき看板を模した図形の中に縦書きで「忠臣蔵」と大きく白字で記されており、その「忠臣蔵」と記された右斜め上には「登録商標」と横書きで記されている。したがって、乙第8号証及び乙第9号証にいずれも添付された別紙1に示すシールには、本件商標と社会通念上同一と認められる標章が記されているといえる。また、「忠臣蔵」と記された下には、セラノ苑ノ米という被請求人の屋号とともに商品名を記した記載と、セラノ苑という被請求人の屋号の記載と、被請求人の電話番号と同じ電話番号及び被請求人の住所と同じ住所が記されている。
また、乙第8号証及び乙第9号証にいずれも添付された別紙2に示す米袋には、別紙1に示すシールと同じシールが貼り付けられている。
したがって、顧客NTによる証明の事実をまとめると、NTは、セラの苑という屋号の被請求人から、平成18年正月頃以降から現在まで継続的に米を購入し、平成19年11月27日より以前に本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付された米袋の米を複数回購入したということになる。
また、顧客SYによる証明の事実をまとめると、SYは、セラの苑という屋号の被請求人から、平成18年夏以降から現在まで継続的に米を購入し、平成19年11月27日より以前に(少なくとも平成19年春から秋にかけて)本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付された米袋の米を複数回購入したということになる。
乙第10号証の1及び2は、セラの苑がSYへ宅配便にて米を発送した際の控え書類である。これら乙第10号証の1及び2は、被請求人の自宅において見つかったものであり、被請求人がセラの苑という屋号のもと、乙第9号証の証明願を受けて証明したSYへ宅配便にて米を実際に発送していた証拠になる。なお、青色のマジックで書かれた文字は、被請求人が発送後の確認作業において書き加えたものである。
少なくとも乙第8号証及び乙第9号証により、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標の商標権者である被請求人が、その指定商品中「米」の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を継続して付していたこと、及びその標章を付したものを継続して譲渡していたことが証明される。
2 弁駁に対する答弁
請求人は、弁駁書において「被請求人は、本件商標が使用されている事実を立証するために各号証を証拠方法として挙げている。しかるに、各号証をつぶさに検討するに、その殆どが証拠方法として適格性を欠くものである。」と主張している。
しかしながら、被請求人は請求人の上記主張を総て容認することができない。なお、以下に説明していない事項について被請求人が請求人の主張を容認したというものではない。
(1)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証ないし乙第3号証によって、被請求人は、以前より、米の取引においては、セラノ苑あるいはセラの苑という屋号を使用していること。が十分にうかがえる。
(2)乙第6号証について
ご依頼主の欄の黒塗りは「松本」という被請求人の名字を消したものである。これは、純情米いわて社に対して、乙第6号証に添付した受発注用紙のお届先に記載した顧客SYに注文品を発送する際に「セラの苑 松本」という依頼主の表記ではなく、「セラの苑」という依頼主の表記で発送することを指示した結果である。現に、乙第6号証に添付したお届け伝票のご依頼主の表記が「セラの苑」になっている。
請求人は、このお届け伝票について疑義を述べているが、請求人が主張することは、純情米いわて社と日本通運(株)盛岡ペリカンとの間で決められた商取引に関することであり、被請求人にとっては不知の事柄である。被請求人としては、歴とした純情米いわて社が、一個人である被請求人に対して、同社が保管していたこれらのお届け伝票(写し)3枚を根拠に、代表者印という印鑑を用いて証明していただいたことを証拠として提出するまでである。なお、お届け伝票におけるお問合せ伝票番号が日付けに対して前後することは、純情米いわて社が、無記入のお届け伝票を最初から複数枚所持しておいて、それら複数枚のお届け伝票の中からランダムにお届け伝票を使用していけば生じる、ごく普通のことであると考える。
また、請求人は、受発注用紙についても疑義を述べている。被請求人が先の答弁書で述べたように、被請求人は、同じ注文内容である場合には、前回使用した受発注用紙に、日付等の必要事項を書き加えて再度その受発注用紙を使用していた。被請求人は、申込日付の欄に日付を記入することなく、お届け先の下に記載している。また、前回の日付を消去することなく、今回の申込日を追記している。こうすることは、被請求人の自由であり、現に、純情米いわて社が、これらの受発注用紙の注文内容を理解して、注文品の発送を行っていることは、乙第6号証に添付したお届け伝票からしても明らかなことである。さらに、請求人が主張する「『受発注用紙』は、複数の『日付』が併記されていて混乱を招くにもかかわらず、『純情米いわて社』が受注日を記載していないのは極めて不自然である」とか、「『受信した受発注用紙』の『FAXの受信日時が記されているヘッダー部分』を『切り取ら』なくてはならないことは、あまりにも不自然である。」等の主張は、純情米いわて社の業務のやり方に関することであり、被請求人にとっては不知の事柄である。被請求人としては、歴とした純情米いわて社が、代表者印という印鑑を用いて証明していただいたことを証拠として提出するまでである。
また、請求人は、乙第5号証との間の矛盾を指摘する。乙第5号証に記載された請求額の多くは、9000円か18000円である。請求人が指摘するように、「ムセンひとめぼれ5k×4」では、約1万円前後の代金となるはずである。ということからして、若干の値引きの結果、9000円という請求額が「ムセンひとめぼれ5k×4」の請求額であると窺える。したがって、平成19年6月30日に9000円が請求されていることからしても、乙第6号証に添付した1枚目の受発注用紙における発注がなされていたことがわかる。同年8月1日の請求額が18000円であることについては、乙第6号証に添付した2枚目の受発注用紙における取引とは別の取引における請求が含まれていることが窺える。要するに、乙第6号証に添付した受発注用紙に記入されている日付の1ないし2日後に請求がなされているということからしても、乙第6号証に添付した受発注用紙における発注がなされていたことは明らかである。しかも、純情米いわて社から被請求人に送られてきた、乙第5号証のお米代金預り金残高表では、セラの苑 松本 様宛になっており、乙第6号証に添付した受発注用紙が被請求人からFAXされたと純情米いわて社が認識していることに疑いの余地はない。
さらに、請求人は「伝票」の不存在を理由に「被請求人と純情米いわて社との米の取引」について疑義を主張するが、被請求人は、乙第6号証によって「本件審判の請求の登録前3年以内に継続して日本国内において本件登録商標の商標権者である被請求人が、商品区分第30類に属する指定商品「米」に関する取引書類(受発注用紙)に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付して頒布する行為を行っていた」ことを証明することが第1の目的であり、「被請求人と純情米いわて社との米の取引」を行っていたことを証明することが第1の目的ではない。
(3)以上のとおり、乙第6号証によって、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に継続して日本国内において、本件審判事件の取消しに係る指定商品に含まれる「米」につき本件商標を使用していることは、明らかなことである。
また、請求人は弁駁書において乙第7号証以降の証拠についても種々述べているが、ここで説明するまでもなく、これら乙第7号証以降の証拠によっても、被請求人は、本件審判請求登録前3年以内に継続して日本国内において、本件審判事件の取消しに係る指定商品に含まれる「米」につき本件登録商標を使用していることは、明らかなことである。
3 結論
以上の如く、被請求人(商標権者)は、本件審判請求の予告登録日である平成19年11月27日前3年以内に継続して日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「米」につき本件商標を使用している。
よって、商標法第50条第1項の規定により本件商標の指定商品中「米,脱穀済み大麦,食用粉類,強化米」についての登録を取り消すとの請求人の主張には理由がなく、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
被請求人の提出した乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
1 被請求人の本件商標の利用の有無とその態様
(1)被請求人による米の仕入れ
被請求人は、「セラの苑」の屋号で、少なくとも平成17年9月から同20年12月までの間、株式会社純情米いわてが販売する「無洗米ひとめぼれ(5kg)」(以下「本件米」という。)を継続的に購入しており(乙第5号証、乙第21号証、乙第30号証)、平成17年9月から同19年10月までの購入量は合計108袋であった(乙第21号証)。
(2)被請求人による米の販売
被請求人は、平成17年4月ころから現在に至るまでの間、顧客からの電話や葉書などによる注文を受け、上記(1)のとおり購入した本件米を顧客に販売してきたが、その配送方法については、被請求人が株式会社純情米いわてに発注し、同社が顧客に対して本件米を配送する方法(乙第6号証、乙第18号証、乙第22号証の1ないし3)と、上記(1)のとおり被請求人が同社から購入した本件米を被請求人自身が顧客に配送する方法とがあった(乙第18号証、乙第19号証)。
上記注文において、顧客は、被請求人により配送される本件米を「忠臣蔵」の名称を記載する方法、又は、「忠臣蔵」及び「ひとめぼれ(ヒトメボレ)」の名称を並記する方法により特定している(乙第20号証の1ないし3)。
(3)本件米の仕入れ時の包装
上記(1)のとおり被請求人が株式会社純情米いわてから購入した本件米は、ポリエチレン製の米袋(以下「本件袋」という。)に入れられているが、本件袋の表面には、その中央に「無洗米」の文字が大きく横書きで印刷され、その下に「岩手県産 ひとめぼれ」との文字、上部中央やや右寄りに株式会社純情米いわてを商標権者とする登録商標である図形商標、その左に縦書きで「とがずに炊ける」との文字、左右に小さく「無洗米 岩手県産 ひとめぼれ」の文字が印刷され、最下部には株式会社純情米いわての登録商標と「純情米いわて 無洗米 岩手県産 ひとめぼれ」の文字が比較的小さくまとまった形で印刷されている(検乙第1号証)。
(4)本件米の販売時の包装
他方、上記(2)のとおり被請求人が本件米を顧客に配送する際には、株式会社純情米いわてから仕入れた際の本件袋の表面に以下のようなラベル(以下「本件ラベル」という。)を貼付した上で宅配便により配送している(乙第18号証、乙第19号証、検乙第1号証)。
「中央やや上寄りの囲みの中に大きく「忠臣蔵」と、同囲み内の左下隅に小さく「雪ノ両国橋」とそれぞれ記載され、同囲み外の上部に「登録商標」の文字、同下部には「安心の美味」、「不許複製」及び「セラノ苑ノ米」の文字が印刷され、最下部に「セラノ苑」との文字並びに電話番号及び住所が記載されているラベル」
なお、本件袋が縦35ないし40cm、横約30cmの大きさであるのに対し、本件ラベルは縦11cm弱、横7cm弱程度の大きさであるため、本件袋へ本件ラベルを貼付した後も、本件米が株式会社純情米いわての販売に係る「無洗米 岩手県産 ひとめぼれ」であることは容易に認識することができる(検乙第1号証)。
2 被請求人の商標法第50条にいう本件商標の使用の有無
(1)商標法第50条にいう「使用」の意義
商標法第50条第1項は「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品…についての登録商標…の使用をしていないときは、何人も、その指定商品…に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定するところ、商標法第2条第3項は、ここにいう「使用」とは、同項各号が掲げる行為であると規定し、同項1号は「商品又は商品の包装に標章を付する行為」を、同項2号は「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」を例示している。
(2)被請求人による本件商標の使用の有無
被請求人は、上記1で認定した事実によると、本件米を株式会社純情米いわてから購入し、これを顧客に販売していたものであり、本件米は、株式会社純情米いわてから仕入れたものであっても、これをいわば「転売」していた被請求人の「商品」であるということもできるところ、本件袋は本件米の「包装」であって、本件袋に「忠臣蔵」の文字、すなわち、本件商標を表示した本件ラベルを貼付する行為は、本件米の包装に「標章」を付する行為に当たるということができる。
そして、また、被請求人は、証拠(乙第20号証の1ないし3)によると、本件審判請求登録日(平成19年11月29日)の前1ないし2か月の間にも顧客から葉書による注文を受けていることが認められるほか、上記1(1)のとおり、本件審判請求登録日前の約3年間における被請求人による本件米の購入量が108袋であったことも考慮すると、被請求人は、本件審判請求登録日前3年以内において、指定商品である「米」の包装に標章を付するとともに、当該「米」の包装に標章を付したものを譲渡していたものと推認することができる。
してみれば、本件袋に本件ラベルを貼付して本件米を販売した被請求人の行為は、商標法第2条第3項第1号及び第2号に例示された商標の使用に該当する行為であるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標を本件審判請求に係る指定商品「米」に使用したものと認めることができる。
3 むすび
以上のとおり、被請求人が提出した証拠を総合勘案すれば、本件商標は、被請求人(商標権者)により、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定商品のうち「米」について使用されていたと認められる。
したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る指定商品についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲(本件商標)



審理終結日 2008-10-23 
結審通知日 2008-10-30 
審決日 2009-11-16 
出願番号 商願平4-116695 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (030)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
稲村 秀子
登録日 1995-10-31 
登録番号 商標登録第3080538号(T3080538) 
商標の称呼 チューシングラ 
代理人 稲葉 民安 
代理人 小川 雅也 
代理人 松浦 恵治 
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