• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009890098 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X25
審判 全部申立て  登録を維持 X25
管理番号 1208409 
異議申立番号 異議2009-900120 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-03-27 
確定日 2009-12-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5193734号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5193734号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5193734号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成20年4月10日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年11月6日に登録査定、同21年1月9日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(25)のとおりであり、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2693723号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年8月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年9月14日に第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(2)登録第2704525号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成7年2月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年6月29日に第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(3)登録第2693724号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年8月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年9月14日に第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(4)登録第2671515号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年6月29日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年8月17日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(5)登録第1587778号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、昭和49年12月26日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年5月26日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、平成16年9月22日に第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(6)登録第2609079号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、昭和49年12月26日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成5年12月24日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同16年3月3日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(7)登録第1423465号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、昭和49年12月26日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年6月27日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされているものである。

(8)登録第2693722号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年8月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年9月14日に第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(9)登録第2671514号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、昭和61年2月7日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年6月29日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同17年8月17日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(10)登録第2708505号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同7年7月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同18年1月4日に第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(11)登録第2593080号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年10月29日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同16年5月26日に第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(12)登録第4025668号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年7月11日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同20年5月28日に第24類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(13)登録第4180654号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年8月21日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同20年11月5日に第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(14)登録第4376378号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。

(15)登録第4378318号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年4月21日に設定登録されたものである。

(16)登録第4376377号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。

(17)登録第4399811号商標(以下「引用商標17」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、平成11年4月1日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年7月14日に設定登録されたものである。

(18)登録第2528490号商標(以下「引用商標18」という。)は、別掲(8)のとおりの構成よりなり、平成2年12月14日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年4月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同16年12月15日に第14類及び第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(19)登録第2160863号商標(以下「引用商標19」という。)は、別掲(9)のとおりの構成よりなり、昭和62年5月29日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、同21年7月22日に第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(20)登録第2190105号商標(以下「引用商標20」という。)は、別掲(9)のとおりの構成よりなり、昭和62年5月29日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年11月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、同21年8月19日に第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(21)登録第2147023号商標(以下「引用商標21」という。)は、別掲(9)のとおりの構成よりなり、昭和62年5月29日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年6月23日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、同21年4月30日に第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(22)登録第2199877号商標(以下「引用商標22」という。)は、別掲(9)のとおりの構成よりなり、昭和62年5月29日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年12月25日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、同21年10月14日に第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

(23)登録第4522864号商標(以下「引用商標23」という。)は、別掲(10)のとおりの構成よりなり、平成12年4月6日に立体商標として登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年11月16日に設定登録されたものである。

(24)登録第4522862号商標(以下「引用商標24」という。)は、別掲(11)のとおりの構成よりなり、平成12年4月6日に立体商標として登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年11月16日に設定登録されたものである。

(25)登録第4522863号商標(以下「引用商標25」という。)は、別掲(12)のとおりの構成よりなり、平成12年4月6日に立体商標として登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年11月16日に設定登録されたものである。

以上の(1)ないし(25)の登録商標を一括していうときは「引用各商標」という。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は、仮想垂直線に対して右方向に傾けた黒塗りの長さが均等な細長の長方形様図形を、当該長方形様図形の幅のおよそ2分の1程度の間隔をもって4本並べた図形よりなるものであって、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に使用するものである。

(2)引用商標1ないし引用商標25は、細長の長方形様図形、台形、台形様図形若しくは帯状の図形(以下「長方形等」という。)を均等間隔で3本並べた図形(以下「3本線の図形」という。)を構成の基調とする商標、又は、「3本線(スリーストライプス)」の観念を生じる商標であり、申立人の取扱に係る被服、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴等に永年使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時には申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして世界的に広く認識されていたものである(甲第26号証ないし甲第84号証、甲第87号証、甲第89号証ないし甲第94号証、甲第96号証ないし甲第120号証)。

(3)引用商標1ないし引用商標18及び引用商標23ないし引用商標25は、3本線の図形から構成されるものであり、本件商標の構成と比較すると、これらを構成する長方形様図形等が4本と3本の差異があるものの、いずれも、細長の長方形等を均等間隔で互いに平行に垂直方向からやや傾けて配置している点を共通にするものであり、この点において、構成の軌跡を一にするということができる。
とりわけ、引用商標1ないし引用商標4(若しくは、その構成中の図形部分)は、仮想垂直線に対して左方向に傾けた長さが均等な細長の長方形様図形を、当該長方形様図形の3分の1程度の幅をもって均等間隔で3本並べた図形よりなるものであり、長さが均等な細長の長方形様図形を、当該長方形様図形の幅よりも狭い幅をもって均等間隔で並べた図形である点、当該図形全体の輪郭線の形状が二組の相対する二辺が互いに平行な四角形の図形印象を与える点において、本件商標と構成の軌跡を一にする。

(4)本件商標がその指定商品に使用されるときには、商品の地色により、色彩を施したり、色彩を変更することが想定される。本件商標を構成する4本線の図形は、商品の地色、地色と本件商標の色彩との配色の仕方等によって、4本線の図形が明確に看取されない場合がある。また、甲第85号証及び甲第86号証に例示するように、色彩の組み合わせの仕方によって、4本線の図形よりも、むしろ、当該4本線の各線で区切られた余白部分に形成される白抜きの3本線の図形のほうが視覚的に強調され、「3本線」の図形として看取されることも十分に起こり得る。

(5)本件商標の指定商品は、申立人の主要取扱商品である被服、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴を含むものである。引用商標23ないし引用商標25に示す立体商標に例示されるとおり、3本線の靴、衣服等にサイドラインとして表示する構成は、申立人が長年継続使用し、申立人の商品表示として広く認識されているものである(甲第97号証ないし甲第118号証)。本件商標が指定商品に使用されるときにサイドラインとして表示される可能性は否定できない。

(6) 本件商標と引用商標構成中の細長の長方形様図形は、仮想垂直線に対する傾斜方向が異なるが、申立人による引用商標の使用は、例えば、引用商標23に示す靴の立体商標からも明らかなように、商品の両側面にサイドラインとして左右対称に表示する態様において需要者の間に広く知られている。したがって、実際の取引の場面では、本件商標と引用商標の構成中の細長の長方形様図形が右方向に傾斜しているか、あるいは、左方向に傾斜しているかといった相違点は、本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合に当該商品の出所の混同を回避できる程度に大きな相違点とはいえない。

(7)本件商標及び引用商標1ないし引用商標4(若しくは、その構成中の図形部分)においては、仮想垂直線に対して一方向に傾けた複数の長さの等しい細長の長方形様図形の幅よりも狭い均等間隔で並べてなる構成が看者の注意を惹きつける重要なデザインポイント、すなわち、識別性の中核をなしている。当該長方形様図形の数が3本か4本かという相違や、その長さ、幅、傾斜方向等における僅かな差異は、両商標の構成の軌跡及び外観印象における高い類似性を凌駕して出所混同のおそれを打ち消すことができる程度に大きな相違点とはいえない。細長の台形様図形を均等間隔で並べた4本線の図形から構成される件外商標登録第4370503号についてなされた登録無効の確定審決(甲第94号証)及び件外商標登録第4839608号についてなされた登録取消の確定異議決定(甲第120号証)の要旨はこれと同趣旨のものである。また、諸外国においても、申立人の所有する3本線の商標に基づき、4本線を基調とする商標の登録取消、使用差止請求等を認容する判決が数多くなされている(甲第96号証の1ないし13)。

(8)本件商標の指定商品の最終需要者は一般の消費者である。また、当該指定商品は、その用途、価格、使用環境や洗浄等による消耗・劣化等の可能性という観点からみて、長期間にわたり使用するものというよりは、比較的短期間で買い替える可能性が高い消耗品を多く含む。したがって、通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。

(9)上記観点に照らせば、本件商標が指定商品に使用される場合、申立人又は申立人と何らかの経済的若しくは組織的関係を有する者の業務に係る商品と誤信され、その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである。

(10)平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件における平成16年10月20日東京高裁判決で説示されているとおり、商標法第4条第1項第15号は、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される(甲第95号証)。本件商標は、申立人の主力商品である被服、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴等に使用されるものであり、かつ、その使用態様によっては「3本線」と誤認されるおそれが高いものである。したがって、本件商標の登録は、世界的に広く認識されている申立人の3本線商標の顧客吸引力へのフリーライド及びダイリューション行為を実質的に助長することになりかねず、販売店等の取引者及び一般消費者を混乱させる可能性が高いものであり、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神に反するものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、フリーライド、ダイリューションの防止という観点からみても、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることが明らかである。

3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、申立人の長年の営業努力によって築かれた引用各商標及び3本線の商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドするものであり、また、本件商標がその指定商品に使用されたときには、世界的な著名商標である引用各商標等の3本線の商標の出所表示機能が希釈化され、申立人が経済的及び精神的損害を被るおそれが高い。
よって、本件商標は、社会一般道徳及び国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。

4 むすび
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

第3 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、仮想垂直線に対して右方向に傾けた黒塗り細長の長方形様の図形を、当該長方形様の図形の幅のおよそ2分の1程度の間隔をもって4本並べた構成からなるものであり、その全体の形状は、菱形状図形を形成するものである。

(2)引用商標
ア 引用商標1及び引用商標2並びに引用商標3及び引用商標4の構成中の図形部分は、別掲(2)及び(3)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやゝ傾け、かつ、左右の縦線を波形にした黒塗り縦長の長方形様の図形を3本描いてなるところ、3本の図形はいずれも同じ長さで、その間隔は黒塗り長方形様の図形の幅の3分の1程度である。

イ 引用商標5ないし引用商標7は、別掲(4)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にわずかに傾け、かつ、左右の縦線を波形にした縦長の長方形様の輪郭図形を3本描いてなるところ、3本の輪郭図形は、左方向に向かって順次やゝ短くなり、その間隔は輪郭図形の幅とほぼ同じ程度である。

ウ 引用商標8及び引用商標9の構成中の図形部分は、別掲(5)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやゝ傾けた細長の黒塗り台形様図形を、該図形の幅とほぼ同じ間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くした図形よりなるものである。

エ 引用商標10ないし引用商標17の図形部分は、別掲(6)及び(7)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやゝ傾けた黒塗り台形様図形を、該図形の幅の3分の1程度の間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものは最も短く、右方向に向かって順次長くした図形よりなるものである。

オ 引用商標18は、別掲(8)のとおり、仮想垂直線に対し、右方向に傾けた細長の台形輪郭図形を、極めて狭い間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も長くし、右方向に向かって順次短くした図形よりなるものである。また、3本の台形輪郭図形の上底部と下底部の内側には、それぞれ輪郭に沿って線が引かれているものである。

カ 引用商標19ないし引用商標22は、別掲(9)のとおり、「THE BRAND WITH THE 3 STRIPES」の文字よりなるものである。

キ 引用商標23の靴の左右の側面に描かれた図形部分は、別掲(10)のとおり、仮想垂直線に対し、左方向(右方向)にやゝ傾けた細長の黒塗り台形様図形を、該図形の幅より狭い間隔をもって3本並べ、そのうちのつま先側に位置するものを最も短くし、かかと側に向かって順次長くした図形よりなるものである。

ク 引用商標24の上着の襟から袖にかけての図形部分及び引用商標25のズボンの両側面に描かれた図形部分は、別掲(11)及び(12)のとおり、黒塗りの長さが均等な細長の帯状の図形を当該帯状の図形の幅とほぼ同じ幅の間隔をもって3本並べた図形よりなるものである。

(3)本件商標と引用各商標の図形部分との比較
本件商標の構成は、上記したとおり、仮想垂直線に対して右方向に傾けた黒塗りの細長の長方形様図形を当該長方形様図形の幅のおよそ2分の1程度の間隔をもって4本並べたものであり、その全体の形状は、菱形状図形を形成するものであって、これに接する取引者・需要者も一見して菱形状図形を表したものと理解・認識し、記憶にとどめるものということができる。
これに対して、引用商標1及び引用商標2並びに引用商標3及び引用商標4の図形部分は、当該商標又は当該図形部分を構成する3本の縦長長方形様の縦線が左右とも波形になっており、その部分の視覚的印象が極めて強いことから、全体の形状も菱形を表したものとは認識し難いものである。
そして、引用商標5ないし引用商標25の全体の形状が、菱形状の図形とは全く別異の構成からなるものであることは明らかである。
そうとすれば、本件商標と引用各商標の図形部分とは、構成態様において判然と区別し得る差異を有しており、この差異は、比較的簡潔な構成からなるこれら商標の外観に与える影響は大きく、その構成全体から受ける視覚的印象も明らかに異にするものであるから、これらを時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。
また、本件商標は、その構成からみて、特定の称呼及び観念をもって取引に供されるものとは認められないから、本件商標と引用各商標とは、称呼及び観念については比較すべくもない。
なお、申立人は、審決例等を挙げているが、それらの審決例等で争われている商標は、本件商標とは商標の構成を異にするものであって、事案を異にするものというべきであるから、上記認定に影響を及ぼすものとは認められない。
したがって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

2 商標法第4条第1項第15号及び同第7号について
上記したとおり、本件商標と引用各商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、他にその出所の混同を生ずるおそれがあるとすべき格別の事情も見いだし得ないから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
また、本件商標と引用各商標との関係は、上記のとおりに理解されるものであるから、本件商標が引用各商標の信用にフリーライドすることを意図して出願されたものとはいい難く、本件商標の出願・登録をしたことが国際信義に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるということはできない。

3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲


(1)本件商標




(2)引用商標1、引用商標2




(3)引用商標3、引用商標4




(4)引用商標5、引用商標6、引用商標7




(5)引用商標8、引用商標9




(6)引用商標10、引用商標11、引用商標12、引用商標13




(7)引用商標14、引用商標15、引用商標16、引用商標17




(8)引用商標18




(9)引用商標19、引用商標20、引用商標21、引用商標22




(10)引用商標23






(11)引用商標24






(12)引用商標25









異議決定日 2009-11-19 
出願番号 商願2008-32591(T2008-32591) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (X25)
T 1 651・ 271- Y (X25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
登録日 2009-01-09 
登録番号 商標登録第5193734号(T5193734) 
権利者 株式会社ワコール
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 
代理人 中熊 眞由美 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ