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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X31
管理番号 1208393 
異議申立番号 異議2008-900425 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2008-10-27 
確定日 2009-11-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第5153410号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5153410号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5153410号商標(以下「本件商標」という。)は、「ムーランルージュ」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成19年11月15日に登録出願、第31類「パンジーの花,その他の花,パンジーの苗,その他の苗,パンジーの鉢植え,その他の鉢植え,パンジーの種子類,その他種子類,パンジーの切花,その他の切花,その他の自然の植物及び花,ドライフラワー」を指定商品として、同20年7月25日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第8号、第15号及び第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。

第3 本件商標に対する取消理由(要旨)
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号(以下「本号」という。)において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定しているところ、本号の趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあり(最高裁平成15年(行ヒ)265号判決 判決日 平成16年6月8日)、ことさらに、外国人の人格的利益の保護を除外する理由は存在しないので、本号にいう「他人」には、外国人も含まれると解される。
そこで、以上の観点に立って、本件について検討する。

2 本件商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が、申立人の名称と同一であり、「他人の名称を含む商標」に該当する旨主張しているので、この点について以下、検討する。
職権による証拠調べによれば、商標登録原簿の記載を徴するに、「ムーラン・ルージュ」は、「MOULIN ROUGE」(登録第3028205号商標)、「ムーランルージュ」(登録第4332596号商標)等の商標権を、譲渡により承継し、その移転の登録が、平成18年7月19日にされているものである。
そして、上記承継の際の譲渡証書によれば、譲受人である「ムーラン・ルージュ」(所在:ベルギー王国B?1000・ブリュッセル,リュー・ロワイアル97番フォース・フロア)は、ベルギー王国の法律に基づく法人の正式名称(フルネーム)であることが確認できた。 そして、上記譲受人である「ムーラン・ルージュ」と申立人である「ムーランルージュ」(所在:ベルギー王国,1000 ブリュッセル,リュー ロワイアル 97)とは、表記方法の違いはあるものの、同一の者と認められる。
そうしてみると、申立人である「ムーランルージュ」は、上記移転の登録がされた平成18年7月19日には少なくとも存在していたといえるから、本件商標の登録出願日(平成19年11月15日)はもとより、登録査定時においても存在していたものである。
したがって、本件商標は、申立人の名称と同一であって、他人の名称よりなる商標であり、申立人の承諾を得たものとは認められない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものと認める。

第4 商標権者の意見 (要旨)
1 商標法第4条第1項第8号について
(1)商標法第4条第1項第8号に該当するか否かは、人格的利益の保護という趣旨に鑑み、商標あるいは商品とその他人との関係が一般世人に認識されるか否か、およびそのように認識された結果、その他人の人格権の毀損が客観的に認められるか否かにより決せられるべきとするのが相当である。

(2)商標法第4条第1項第8号の趣旨から、上記(1)のように解釈するべきことは、代表的な書籍における記載から明らかであり、学説上及び実務上も概ね一致しているものと思料する(乙第1号証ないし乙第4号証)。

2 本件商標から申立人の名称を一般世人に認識されず、また申立人の人格権を毀損するとする客観的事情も存在しない点について
(1)本件商標の周知・著名生
ア 本件商標「ムーランルージュ」は、商標権者が、イタリア・ナポリの貴族レナート・ファラオネ・メンネーラ氏が経営する世界最古の種苗会社であるファーメン社(乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証、乙第10号証、乙第11号証、乙第12号証、乙第14号証、乙第18号証)から日本での独占生産販売の許可を得ているパンジーの名称である(乙第6号証、乙第7号証、乙第8号証、乙10号証、乙第14号証)。
また、商標権者は、本件商標を使用したパンジーを「イタリア・ナポリの貴族が育種したゴージャスなフリル咲パンジー」などとし日本全国に出荷しており、数年に亘る盛大かつ継続的な販売活動の結果、一般世人の間で本件商標について「イタリアを思わせるシックで味わいの深いパンジー」「貴族がつくった上品なパンジー」「貴族のドレスを思わせる豪華なフリル咲きパンジー」という印象が定着しているものである。
さらに、イタリア・ナポリの貴族が育種したパンジーは広く日本国内の花愛好家に愛されているため、イタリア・ナポリの貴族が育種したパンジーに使用される本件商標「ムーランルージュ」は、園芸業界及びガーデニング業界において7年前に日本に初めて紹介してから、今日では、テレビ、新聞、園芸雑誌等で多数紹介され、一般世人に広く知られるに至っているものである(乙第8号証ないし乙第18号証)。
イ また、本件商標を使用したパンジーは、国内外の新品種の中から、消費者に推奨できる優れた品種を選んで「生活者の花や緑のあるライフスタイルを質的に向上させる」「新品種の開発・導入の水準を向上させる」「花き産業の発展を図る」を目的に、花き産業関係者の幅広い参加・協力、農林水産省等の後援により創設された「ジャパンフラワーセレクション」のコンテナ苗等部門の冬春の推奨品種にも選ばれているものである(乙第19号証及び乙第20号証)。
ウ したがって、本件商標は、園芸業界及びガーデニング業界において、今や周知・著名な商標として確立されていることは明白である。

(2)本件商標の登録の意図
商標権者は、イタリア・ナポリの貴族レナート・ファラオネ・メンネーラ氏が経営する世界最古の種苗会社であるファーメン社(乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証、乙第10号証、乙第11号証、乙第12号証、乙第14号証、乙第18号証)から日本での独占生産販売の許可を得ているパンジー(乙第6号証、乙第7号証、乙第8号証、乙10号証、乙第14号証)を販売継続するべく、関係会社から承諾の下、出願をし、登録を受けたものである(乙第7号証)。
したがって、商標権者は、本件商標の登録にあたって決して不正の意図等はなく、本件商標の登録により、申立人の人格権を毀損するような客観的事情が生ずるとは到底いえないものである。

(3)「ムーランルージュ」の意味合い
「ムーラン」の語は、「うす」「製麻機械の一種」「風車、風車小屋、粉ひき小屋」「フランス中部、アリエ県の県郡」「フランスの政治家」など多義的な意味合いを有するものであり、「ムーランルージュ」そのものも、第1義的には「赤い風車」である(乙第21号証ないし乙第25号証)。パリの劇場の名称である「ムーランルージュ」も、「赤い風車」が建物に取り付けられていたことから、そのまま名称となったものに過ぎず、劇場名として掲載されているとしても、当該劇場の主体がどこの国の、どの法人であるかという記載は一切なかった(乙第21号証ないし乙第25号証)。
さらに、かつて「新宿ムーランルージュ」なる劇場が我が国に存在していたが、その際にも人格権毀損等の客観的事情が生ずることはなく、パリの劇場「ムーランルージュ」と全く別のものとして一般世人は認識していたとする事実もある(乙第21号証ないし乙第25号証)。
そうすると、「ムーランルージュ」の語を使用したとしても、そもそも「ムーラン」の語が多義的であり、その意味合いとして認識するとしても「赤い風車」であるから、我が国の一般世人は、本件商標を外国法人である申立人の名称であることを認識することは決してないものである。

(4)小括
したがって、本件商標は、園芸業界及びガーデニング業界において商標権者の商標として周知・著名なものとなっていることから、本件商標に接した我が国の一般世人が外国法人である申立人の名称であると認識することは皆無であり、また、「ムーランルージュ」そのものの意味合い及び商標登録に至った経緯に鑑みると、申立人の人格権を毀損する客観的な事情は一切存在しないものである。

(5)結語
以上のとおり、一般世人は、本件商標から、外国法人である申立人の名称を認識することは決してなく、故に申立人の人格権を毀損することは皆無であり、商標権者には本件商標の登録にあたって、不正の意図等まったく存在せず、その他指定商品との関係で申立人の人格権を毀損するような客観的事情も存在しないため、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものではない。

第5 当審の判断
1 本件商標についてした取消理由の通知(上記第3)は妥当であって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。

2 申立人の主な主張について
申立人は、商標法第4条第1項第8号に該当するか否かは、人格的利益の保護という趣旨に鑑み、商標あるいは商品とその他人との関係が一般世人に認識されるか否か、およびそのように認識された結果、その他人の人格権の毀損が客観的に認められるか否かにより決せられるべきとするのが相当であるとし、本件商標が園芸業界及びガーデニング業界において商標権者の商標として周知・著名なものとなっていることから、本件商標に接した我が国の一般世人が外国法人である申立人の名称であると認識することは皆無であり、また、「ムーランルージュ」そのものの意味合い及び商標登録に至った経緯に鑑みると、申立人の人格権を毀損する客観的な事情は一切存在しないものである旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号の趣旨は、申立人も認めるとおり、人格的利益を保護することにあり、そして、申立人が述べるような、商標あるいは商品とその他人との関係が一般世人に認識されるか否か、およびそのように認識された結果、その他人の人格権の毀損が客観的に認められるか否かの要件を加味して、同号の適否を考える余地はないものと解される。
このことは、知財高裁平成21年(行ケ)第10005号事件判決(平成21年5月26日判決言渡)における「・・要するに、同号は、出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無、いずれかが周知著名であるということなどは考慮せず『他人の肖像又は、他人の氏名若しくは名称』を含む商標をもって商標登録を受けることは、そのこと自体によって、その氏名、名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし、その他人の承諾を得ている場合を除き、商標登録を受けることができないとする趣旨に解されるべきものなのである。」旨の判示、及び、知財高裁平成20年(行ケ)第10309号事件判決(平成21年2月26日判決言渡)における「・・ある名称を有する他人にとって、その名称を同人の承諾なく商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることになるものと考えられるのであり、この場合、出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか、いずれが著名あるいは周知であるといったことは、考慮する必要がないことになる。」旨の判示内容からも明らかである。
したがって、申立人の主張は採用することができない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2009-09-09 
出願番号 商願2007-119360(T2007-119360) 
審決分類 T 1 651・ 23- Z (X31)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石塚 文子田口 善久 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 小川 きみえ
野口 美代子
登録日 2008-07-25 
登録番号 商標登録第5153410号(T5153410) 
権利者 有限会社石井フラワーガーデン
商標の称呼 ムーランルージュ 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 木村 純平 
代理人 藤森 裕司 
代理人 岡野 光男 
代理人 飯島 紳行 
代理人 浅村 肇 
代理人 浅村 皓 
代理人 土屋 良弘 
代理人 高原 千鶴子 

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