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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1208172 
審判番号 取消2008-300146 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-02-01 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4722991号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4722991号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成15年2月17日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年10月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
また、本件審判の請求の登録日は、平成20年2月20日である。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由、平成20年5月27日付け提出の弁駁書(以下、「平成20年5月27日付け提出の弁駁書」を「第1弁駁書」という。)、口頭審理陳述要領書、口頭審理及び平成21年1月15日付け提出の弁駁書(以下、「平成21年1月15日付け提出の弁駁書」を「第2弁駁書」という。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。

2 第1弁駁書及び口頭審理陳述要領書
(1)乙第2号証について
被服の表面、胸部中央のほとんど全面にわたり、大きく、複数の色で彩色を施した図柄は、一般には、専ら、その表現の装飾的あるいは意匠的効果である「面白い感じ」「楽しい感じ」「可愛い感じ」などのイメージを需要者に与え、その表現のされた商品の購買意欲を喚起させることを目的として表示されているものである。
そうとすれば、一般顧客が上記の図柄が付された商品を買い求めるのは、上記の図柄の意匠的効果によるものと考えられる。
してみれば、一般顧客が、上記の図柄が付された商品の製造元・出所を知り又は確認する「目じるし」として、上記の図柄を認識するといえない。
判決においても、上記の図柄による使用態様は、商標としての使用ではないと解されている(昭和49年(ワ)第393号 大阪地方裁判所昭和51年2月24日判決)。
そこで、かかる観点から乙第2号証をみるに、同号証は、Tシャツの写真であるところ、当該Tシャツの表面の胸部中央には、彩色が施された図柄(図柄と文字の組合せを含む。)が表されている。
上記の図柄は、上記判決にいう表示態様と同様であり、専ら、その表現の装飾的あるいは意匠的効果である「面白い感じ」「楽しい感じ」「可愛い感じ」などのイメージを需要者に与え、その表現のされた商品の購買意欲を喚起させることを目的として表示されているものである。
被請求人は、上記の図柄が、「文字と特徴のある図形との結合により、自他商品出所表示の標識として機能するものであって、美的な印象を与えるデザインであるとともに、自他商品・役務識別標識として用いられている表示態様である」旨主張する。
確かに、商品に付された図柄が、美的な印象を与えるとともに、自他商品・自他役務識別標識として用いられることは、あり得る。
意匠法第5条第2号は、「他人の業務と混同を生ずるおそれがある意匠」は、意匠登録を受けることができないことを規定しており、物品に付された図柄が識別標識としての商標として機能する可能性を認めている。
しかしながら、商品に付された図柄が、意匠的効果に加えて識別標識としての商標として機能するのは、商品に付された図柄であればすべてこれに該当するものではなく、商品に付された図柄が需要者の間に広く認識されていることを要するものである。
被服の胸部中央のほとんど全面わたり大きく色彩を付して表示された図柄は、当該図柄が需要者の間に広く認識されており、特定の製造者又は販売者のものであると認識される特別な場合を除き、商標としての自他商品識別力は、有さないと考えるべきである。
しかして、乙第2号証において、Tシャツの胸部中央のほとんど全面わたり大きく色彩を付して表示された図柄が、需要者の間に広く認識されているとは考えられず、また、その立証もされていない以上、上記の図柄に商標としての自他商品識別力があるとはいえない。
そうとすれば、一般顧客は、上記の図柄の装飾的あるいは意匠的効果の故に、乙第2号証のTシャツを買い求めるものと考えられる。
してみれば、乙第2号証中のTシャツにおける上記の図柄の使用態様は、自他商品識別標識としての商標としての使用ではない。
また、商品の識別標識としての商標は、その性質からいって、えり吊りネーム、吊り札、包装袋等に表示されるのが通常である。
この点についてみるに、乙第2号証中のTシャツの襟元部分には、「miKiSPORTS」との標章を記載したラベルが付されており、襟元から吊り下げられている吊り札には、レジスターマークらしきものが付された「羽根の生えた馬のような図形」や「ミキスポーツ・ベア」なる標章が付されている。
これら「miKiSPORTS」、「羽根の生えた馬のような図形」及び「ミキスポーツ・ベア」なる標章が、本件商標についての商標法第50条第1項にいう社会通念上同一と認められる商標でないことは、明白である。
さらに、吊り札のような印刷物は、現在にあっては、家庭用のパソコン及びプリンターを用いれば、きわめて容易に短期間で作成することができるものであり、無地のTシャツに図柄等のプリントを施したものを作成することでさえ、パソコンのプリンタを使用することで、家庭でも簡単に作成できるものである。特に被服の業界においては、無地のTシャツに図柄等のプリントを施したものを作成することは、複雑な金型の作成や商品化のための試験を伴うものではなく、きわめて容易に短期間で行うことができるものである(甲第3号証)。
さらに、乙第2号証中のTシャツ及び吊り札が本件審判請求登録前に存在していたかどうか客観的に明らかではなく、また、乙第2号証と乙第3号証ないし乙第5号証との関係も確証を得ることができない。
加えて、被請求人は、その通常使用権者のみならず被請求人自らが本件商標を付した商品を販売し、また、被請求人及び通常使用権者が本件商標を付した商品を展示し、広告している旨を主張するが、これについては、なんら客観的な証拠を提出していない。

(2)乙第3号証について
乙第3号証は、本件商標の通常使用権者であるとする「シビルスポーツ株式会社」(以下「シビルスポーツ」という。)に対して、その生産を請け負ったとする「マツユー」が発行した、平成18年3月10日付け、納品書、請求書であるとして提出されている。
しかし、かかる納品書、請求書は、どこでも入手できる市販の伝票に全て手書きされたものであり、取引の日付を本件審判請求の登録前3年以内とし、審判請求の登録後に作成することは、極めて容易であり、その信憑性に乏しいといわざるを得ない。
請求人は、マツユーの企業規模がいかなるものかは知らないが、業として被服を製作する法人であるマツユーが、No.127にもなる取引伝票に会社のゴム印も使用せず発行することは、通常考えられないことであり、この点についても、極めて不自然である。
また、仮に、この伝票がマツユーが発行したものであるとしても、懇意にしている取引業者であれば、被請求人の依頼によりあたかも平成18年3月10日付けの取引があったかのように書類を作成したことも十分に考えられる。

(3)乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証は、シビルスポーツが、被服販売業者である「納米里プラザ」及び「株式会社クレセントコーポレーション」に対して、それぞれ提出したとする、平成18年3月23日付け納品書として提出されている。
しかし、当該納品書は、シビルスポーツが自ら発行したのみであって、何ら客観性のないものである。
しかも、かかる伝票は、シビルスポーツの専用用紙ではあるものの、本来コンピュータ用の連帳式の伝票であり、かかる伝票に手書きされた点をもってしても、審判請求の登録後に作成された可能性を否定できず、極めて不自然である。
確かに、コンピュータ用の連帳式の伝票であっても、特別な事情により手書きすることはあり得る。
しかし、シビルスポーツは、被請求人も自認するように、「各種衣料、衣料用雑貨、スポーツ用品などの製造、販売を行っている。その取扱いにかかる商品は、多種多様な商品に及んでいる。」ものであり、請求人の調査では、楽天市場でも大々的にインターネット上の店舗を開き、その他、生協等にも多数の商品を大々的に販売している。
以上の事実からみて、手書きによる納品伝票は、極めて不自然であり、乙第4号証及び乙第5号証は、特別な伝票であると解さざるを得ない。

3 口頭審理及び第2弁駁書
(1)乙第2号証の現物シャツには、中のタグに製造者表示として、住所又は電話番号を表示しなければならないのに、乙第2号証の現物シャツにはその記載がないので実際に販売されたものではないのではないか。

(2)乙第8号証及び乙第9号証の現物シャツには、両現物シャツとも長袖で、印刷された色合い、形状などから同じロットで製造したと思われるのに、タグの製造者表示が違うのは変である。乙第8号証は製造者表示に電話番号の記載がない。乙第9号証は電話番号の記載がある。

(3)マツユーについて法務局(福井県武生支局)に法人登記の存在を確認したところ、コンピュータ化された法人データはない(甲第6号証)。法務局では平成16年6月7日からデータをコンピュータ化し、その時点に存在していればコンピュータでデータが取れた。データがないということは、平成18年当時には、マツユーはなかったのではないか。

4 まとめ
以上述べたように、乙第2号証の表面の中央胸部に彩色が施された図柄を付すことは、本件商標の商標としての使用には、当たらない。
しかも、乙第3号証ないし乙第5号証との関係も明らかではない上に、何れの証拠も客観性及び信憑性の乏しいものであること、平成18年当時にはマツユーはなかったのではないか思われること等を併せ考えると、本件被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは、認められない。

第3 被請求人の答弁
1 被請求人は、結論同趣旨の審決を求め、平成20年4月3日付け提出の答弁書(以下、「平成20年4月3日付け提出の答弁書」を「第1答弁書」という。)、口頭審理陳述要領書、口頭審理及び平成21年1月8日付け提出の答弁書(以下、「平成21年1月8日付け提出の答弁書」を「第2答弁書」という。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第18号証を提出した。

2 第1答弁書
(1)被請求人の概要
被請求人は、昭和40年3月金沢大学法文学部を卒業、貿易商社、被服関係企業の社員、役員を務めた後、昭和57年6月シビルスポーツを設立し、現在に至っている。

(2)本件商標の使用の概要
本件商標は、平成15年10月31日付で登録され、以来、被請求人自ら及び被請求人が使用を許諾した通常使用権者は、本件商標の指定商品に属する各種商品を製造し、その製造に係る商品について本件商標を付し(商標法第2条第3項第1号)、また、これを付した商品を販売している(商標法第2条第3項第2号)。
さらに、当該商品を展示し、広告している(商標法第2条第3項第2号及び同第8号)。
本件商標権者及びその通常使用権者であり出願人が代表者を務めるシビルスポーツ(福井県越前市平出一丁目1番23号)は、各種衣料品、衣料用雑貨、スポーツ用品などの製造、販売を行っている。
その取扱いに係る商品は、多種多様な商品に及んでいる。
本件商標権者、その通常使用権者は、その製造、販売に係る商品について、本件審判請求の予告登録前、過去3年以内に本件商標を使用している。

(3)本件商標の使用
ア 本件商標の使用について、本件商標権者及びその通常使用権者であるシビルスポーツは、可愛らしいイメージをもったキャラクターを表わした本件商標「MiKi SPORTS CLUB及び図形」(ミキスポーツベア)をその製造、販売にかかる各種商品に使用してきた。
乙第2号証は、本件商標権者及びその通常使用権者であるシビルスポーツの取扱に係るTシャツの写真であって、第1頁は包装された状態の表面、裏面及び中心部の拡大写真、第2頁は商品の表面、裏面の写真、第3頁は、商標部及び下げ札の拡大写真である。
乙第2号証に示すとおり、Tシャツの表面、胸部に、本件商標が表わされている。
当該Tシャツの表面、胸部の図形は、「MiKi SPORTS CLUB」の文字と特徴ある図形の結合により、自他商品出所表示の標識として機能するものであって、美的な印象を与えるデザインであるとともに、自他商品・役務識別標識として用いられている表示態様であって、これが自他商品・役務識別標識たる商標の使用を構成することは、当然である。
この文字と図形の結合からなる表示について、これが愛らしい図形であって、デザインとしての側面をも有するとしても、これが自他商品・役務識別標識としての商標の側面を基本とする商標の表示、商標としての使用であることは、明白である。

イ 本件商標を付した商品の製造について、その一例を説明すると、乙第3号証は、被請求人の通常使用権者であるシビルスポーツに対し、その生産を請け負ったマツユー(住所 福井県越前市高瀬二丁目2番6号)が、本件商標が付された商品である半袖Tシャツ計75枚、長袖Tシャツ計36枚を平成18年3月10日付で納品したことを示す納品書、請求書である。
ここに記載されている「ミキスポーツベア」の表示は、本件商標であるクマ(ベア)が表わされた本件商標を付した商品であることを示している(乙第2号証に示す下げ札に「ミキスポーツ・ベア」と表示している。)。
商品について、半袖Tシャツとして、商品の内容が示され、サイズにより各25枚、計75枚を納品し、請求していることが示されている。さらに、本件商標を付した長袖Tシャツについても、同日付で、各12枚、計36枚の納品と請求がなされていることが示されている。
以上により、本件請求に係る指定商品中の商品、被服について、本件商標「MiKi SPORTS CLUB及び図形」が付されたことが示されている(商標法第2条第3項第1号)。

ウ 本件商標が付された商品の販売の一例について、被請求人の通常使用権者であるシビルスポーツは、被服販売業者である納米里プラザ(住所 静岡県駿東郡長泉町納米里382-9)に対して、本件商標を付した半袖Tシャツを各サイズ20枚、計60枚、1枚400円にて、平成18年3月23日付で販売した。
同時に、本件商標を付した長袖Tシャツについて、各サイズ10枚、計30枚、1枚500円で販売したことが示されている(乙第4号証)。ここで、納品書に記載されている「ミキスポーツベア」は、本件商標であるクマ(ベア)が表わされた本件商標を付した商品であることを示している(乙第2号証第3頁の商品写真には、商品の下げ礼に「ミキスポーツ・ベア」と表示していることが示されていることで分かる。)。

エ 本件商標が付された商品の販売に関する他の一例について、乙第5号証に示すとおり、被請求人の通常使用権者であるシビルスポーツは、被服販売業者、株式会社クレセントコーポレーション(住所 大阪市西区靭本町一丁目)に対して、本件商標を付した上記製造にかかる半袖Tシャツを各サイズ4枚、計12枚、単価1枚400円にて、平成18年3月23日付で販売した。
ここで、納品書に記載されている「ミキスポーツベア」は、本件商標であるクマ(ベア)が表わされた本件商標を付した商品である。
以上により、本件商標を商品に付し、これを付した商品を市場で販売していた事実が示されている(商標法第2条第3項第1号及び同第2号)。
これら各証拠に示される使用者、シビルスポーツが、本件商標権者が使用を許諾した通常使用権者であることは、本件商標権者、通常使用権者の作成に係る確認書(乙第6号証)により証明されている。

オ 乙第2号証として提示した写真に示されるとおり、商品、被服の範ちゅうに属するTシャツ表面胸部に本件商標が付され、販売されている。
これら商品の表面、胸部の中央に図案化された顕著な構成態様で表示された本件商標が表示され、この表示は、その構成態様よりして明らかなとおり、自他商品識別力としての本件商標の使用を構成するものである。
よって、本件商標が、被請求人の通常使用権者シビルスポーツにより、商品被服の範ちゅうに属するTシャツについて、本件不使用取消審判請求の予告登録日前、過去3年以内に使用されていたことは、明白である。

3 口頭審理陳述要領書
(1)乙第2号証として提出したTシャツ(サイズ110)について、サイズの異なる商品の写真を、乙第8号証(サイズ140)及び乙第9号証(サイズ100)として提出する。

(2)乙第2号証、乙第8号証及び乙第9号証と同様の多色染めで標章を表示したものの在庫の一部及び単色染めで標章を表示したものの在庫の一部を乙第10号証及び乙第11号証として、それぞれ提出する。

(3)マツユー作成の書類には、乙第4号証と同様に手書きでなされているものがあることを証するために、乙第12号証を提出する。

(4)乙第4号証(納品書(元帳))に対応する納品書(控)の写しを乙第13号証として提出する。

(5)請求人は、被請求人が、「楽天市場でもインターネット上の店舗を開き」と主張するが、被請求人がインターネット上の店舗を開いたのは、平成20年2月からであって、当時は、まだインターネット上の店舗を開いてはいない。

4 口頭審理
乙第8号証及び乙第9号証は、商品化したが上手くいかなかったので、試作、在庫のようなものである。
したがって、中のタグに相違があるかもしれない。
実際に販売したものは手元にない。

5 第2答弁書
乙第3号証が作成された当時、「マツユー」が存在していた証拠として、乙第15号証ないし乙第18号証を提出する。

6 結び
乙各号証に示すとおり、被請求人の通常使用権者、シビルスポーツにより、本件商標は、商品被服の範ちゅうに属するTシャツについて、本件不使用取消審判請求の予告登録日前、過去3年以内に展示、販売され使用されていた事実が証明されている。
以上により、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当するものではなく、その登録が維持されるべきものであって、本件審判請求は、理由がない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第2号証について
乙第2号証の1頁目は、包装された「半袖Tシャツ」の表面、裏面及び中心部の拡大写真であり、同号証の2頁目は、当該「半袖Tシャツ」の表面及び裏面であり、同号証の3頁目は、当該「半袖Tシャツ」の中央部の拡大写真及び当該「半袖Tシャツ」の下げ札の拡大写真である。
そして、当該「半袖Tシャツ」の胸の部分には、大きく、別掲(2)の構成からなる商標(以下、「使用商標」という。)が表示されている。
本件商標と使用商標とは、色彩を同一とすればほぼ同一の商標と認められるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
また、当該下げ札には、「ミキスポーツ・ベア」、「Tシャツ」、「シロ」、「110」、「シビルスポーツ株式会社」の表示がある。
そうとすれば、乙第2号証から、シビルスポーツが、商品「Tシャツ」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したことを認めることができる。

(2)乙第3号証について
乙第3号証は、作成日と認められる欄及び「No.」欄に「18年3月10日」及び「127」の表示があり、宛名と認められる欄に「シビルスポーツ」の表示があり、発行者と認められる欄に「マツユー」の表示があり、品名等の欄に「(品名)ミキスポーツ・ベア 半袖Tシャツ白110 (数量) 25 (単価)350 (金額(税抜・税込))8750」等の表示があり、欄外に「コクヨ ウ-320」の表示がある書面の写しである。
乙第3号証は、以上の様式及び表示から、請求書、納品書又は仕切書の表示がないとしても、「請求書、納品書又は仕切書」であると推認することができる。
また、「18年3月10日」は、「平成18年3月10日」を表示していると解するのが自然である。
そうとすれば、乙第3号証からは、「平成18年3月10日」に「マツユー」が、「シビルスポーツ」に対して、「請求書、納品書又は仕切書」を発行したことを認めることができる。
そして、乙第3号証の宛名と認められる欄に記載されている「シビルスポーツ」の表示及び同号証の品名欄に記載されている「ミキスポーツ・ベア 半袖Tシャツ白110」の表示は、乙第2号証の下げ札に記載されている「ミキスポーツ・ベア」「Tシャツ」、「シロ」、「110」、「シビルスポーツ株式会社」の表示に対応しており、また、乙第3号証の品名欄に記載されている「半袖Tシャツ白」の表示は、別掲2に表示されている白色の半袖Tシャツと対応している。
してみれば、乙第3号証の品名欄「半袖Tシャツ白110」に記載されている商品は、乙第2号証に表示されている「Tシャツ」であると推認することができる。

(3)乙第4号証について
乙第4号証は、シビルスポーツから、「納米里プラザ」に宛てた、「平成18年3月23日」付けの「納品書(元帳)」の写しであり、品名等の欄に「(品番・品名)ミキスポーツ ベア 半袖Tシャツ (色)シロ (サイズ明細)110 20 120 20 130 20 (合計数)60 (単価)400 (金額)24000」等の表示がある。
そして、乙第4号証の「シビルスポーツ株式会社」の表示及び同号証の品番・品名欄等に記載されている「(品番・品名)ミキスポーツ ベア 半袖Tシャツ (色)シロ (サイズ明細)110 」の表示は、乙第2号証の下げ札に記載されている「ミキスポーツ・ベア」、「Tシャツ」、「シロ」、「110」、「シビルスポーツ株式会社」の表示に対応しており、また、乙第4号証の品番・品名欄に記載されている「半袖Tシャツ」の表示及び色欄に記載されている「シロ」の表示は、別掲2に表示されている白色の半袖Tシャツと対応している。
してみれば、乙第4号証の品番・品名欄「半袖Tシャツ」に記載されている商品は、乙第2号証に表示されている「Tシャツ」であると推認することができる。

(4)乙第5号証について
乙第5号証は、シビルスポーツから、「株式会社クレセントコーポレーション」に宛てた、「18年3月23日」付けの「納品書(元帳)」の写しであり、品名等の欄に「(品番・品名)ミキスポーツ ベア 半袖Tシャツ (色)白 (サイズ明細)110 4 120 4 130 4 (合計数)12 (単価)400 (金額)4800」等の表示がある。 しかして、「18年3月23日」は、「平成18年3月23日」を表示していると解するのが自然である。
そして、乙第5号証の「シビルスポーツ株式会社」の表示及び同号証の品番・品名欄等に記載されている「(品番・品名)ミキスポーツ ベア 半袖Tシャツ (色)白 (サイズ明細)110 」の表示は、乙第2号証の下げ札に記載されている「ミキスポーツ・ベア」、「Tシャツ」、「シロ」、「110」、「シビルスポーツ株式会社」の表示に対応しており、また、乙第5号証の品番・品名欄に記載されている「半袖Tシャツ」の表示及び色欄に記載されている「シロ」の表示は、別掲2に表示されている白色の半袖Tシャツと対応している。
してみれば、乙第5号証の品番・品名欄「半袖Tシャツ」に記載されている商品は、乙第2号証に表示されている「Tシャツ」であると推認することができる。

(5)乙第6号証について
乙第6号証は、旧商標権者(内藤義勝)とシビルスポーツの間の本件商標に係る、平成20年3月25日付けの通常使用権の許諾契約の確認書であるところ、「1.甲は、乙に対し、本件商標の使用に関する下記通常使用権を許諾している。商品:第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴 期間:平成15年12月2日より」及び「5.本許諾契約は、その締結の日から10年とする。」との各記載がある。
また、口頭審理調書によれば、本件商標に係る商標権は、旧商標権者からシビルスポーツに移転され、平成20年11月25日に、その移転の登録がなされているものである。
以上の事実から、シビルスポーツは、平成15年12月2日から、商標権者になるまでの間、本件商標の通常使用権者であったと認められる。

(6)乙第14号証について
乙第14号証は、マツユーの経営者による、マツユーの事業に関する報告書であるところ、「平成18年12月20日繊維関係の事業を営んでいた事に相違ありません。」、「平成18年当時シビルスポーツ株式会社より委嘱を受け各種繊維製品の縫製加工を行って居りました。同社より大柄のミキスポーツベアの図柄をプリントした各種Tシャツを製造し納入しました。当社の廃業に伴い各種の記録も処分してしまいましたが特徴ある図柄は記憶して居ります。」及び「当方の納品書などの書類は手書きでした。平成18年3月10日付番号127の伝票について当方で作成したことには相違ありません。シビルスポーツ株式会社様より委嘱を受け地元で縫製、プリントして納品したものです。」との各記載があり、署名、捺印がされているものである。

2 商標的使用について
別掲(3)の使用態様において、使用商標が「Tシャツ」の胸部の上半部にわたっていることから、使用商標は全体としての意匠的な機能を果たしているということができる。
しかしながら、ある図形が特定の業務を行う者の商品又は役務について使用する標章として商標法第2条第1項所定の商標に当たるかどうかと、これが物品の外形において視覚を通じて美感を起こさせる創作として意匠法第2条所定の意匠に当たるかどうかは、次元を異にするものであって、何ら矛盾背反するものではなく、物品に係るある図形が視覚を通じて美感を起こさせる場合に、これに接した取引者、需要者において、当該標章を使用する者の業務に係る商品又は役務であることを認識することは十分に可能であるから,商標と意匠の双方に当たる図形ということに何ら不都合はない。
そうすると、使用標章が、意匠的な機能を果たしているからといって、標章としての自他識別力が当然に否定されるものではなく、これが同時に商標にも該当するということは何ら妨げられるものではない(平成14年(行ケ)第500号 東京高等裁判所平成15年3月26日判決参照)。
本件において,使用商標の上記の使用態様に照らせば、使用商標は、仮に、意匠的な機能を果たしているとしても標章としての自他商品識別標識としての機能をも果たしているというべきである。
請求人は、「被服の胸部中央のほとんど全面わたり大きく色彩を付して表示された図柄は、その図柄が需要者の間に広く認識されている特定の製造者又は販売者のものであると認識される特別な場合を除き、商標として自他商品についての識別力は、有さないと考えるべきである。」旨主張する。
請求人の上記主張の根拠は、必ずしも明確とはいえない。
そして、本件商標の使用が自他商品識別標識としての機能を有する使用であるかどうかは、本件商標がどのような態様で商品に使用されたかという点において論じられるべきであるから、上記の使用態様が自他商品識別標識としての機能を有するためには本件商標が需要者の間に広く認識されているとことを要するということはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用しない。

3 上記1(1)、(2)、(5)及び(6)で認定した事実によれば、本件商標に係る通常使用権者であるシビルスポーツが、本件審判の請求登録前3年以内である「平成18年3月10日」に、本件審判の請求に係る指定商品中に属する「Tシャツ」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付する行為(商標法第2条第3項第1号)を行ったものと推認することができる。
また、上記1(1)、(3)及び(5)で認定した事実によれば、本件商標に係る通常使用権者であるシビルスポーツが、「納米里プラザ」に対して、本件審判の請求登録前3年以内である「平成18年3月23日」に、本件審判の請求に係る指定商品中に属する「Tシャツ」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)を行ったものと推認することができる。
さらに、上記1(1)、(4)及び(5)で認定した事実によれば、本件商標に係る通常使用権者であるシビルスポーツが、「株式会社クレセントコーポレーション」に対して、本件審判の請求登録前3年以内である「平成18年3月23日」に、本件審判の請求に係る指定商品中に属する「Tシャツ」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)を行ったものと推認することができる。

4 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第2号証ないし乙第5号証は、容易に作成できるものであるから、証拠として信憑性がない旨主張する。
しかしながら、仮に、乙第2号証ないし乙第5号証を作成することが容易であるとしても、その事実のみで、同各号証が真正でないということはできない。
また、乙第14号証において、マツユーの経営者が、平成18年12月20日繊維関係の事業を営んでいた事、平成18年当時シビルスポーツより委嘱を受け各種繊維製品の縫製加工を行っていた旨述べているところ、同号証の真正を疑わせるような不自然な点は存在しない。
してみれば、平成18年当時にはマツユーはなかったいうこともできない。
したがって、請求人の上記主張は採用しない。

(2)請求人は、乙第3号証にゴム印がないこと、乙第3号証ないし乙第5号証が手書きされたものであることをもって、証拠として信憑性がない旨主張する。
しかしながら、ゴム印がなくても、また、手書きであっても納品書、請求書、領収書は、その役割を果たし得るものであるから、ゴム印がないこと又は手書きであることのみをもって、乙第3号証ないし乙第5号証が真正でないということはできない
しかも、乙第3号証については、発行者が手書きで記載したことを認めている(乙第14号証)。
したがって、上記主張についての請求人の主張は採用しない。

(3)請求人は、乙第3号証について、「懇意にしている取引業者であれば、被請求人の依頼によりあたかも平成18年3月10日付けの取引があったかのように書類を作成したことも十分に考えられる。」旨主張する。
しかしながら、請求人は、上記主張をするのみであり、上記主張に係る事実を推認させる証拠を何ら提出していない。
してみれば、上記主張は、請求人の単なる憶測にすぎないものといわざるをえない。
したがって、上記主張についての請求人の主張は採用しない。

(4)その他の請求人の主張及び証拠をもってしても、当審の判断を覆すには足りない。

4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者であるシビルスポーツが、請求に係る指定商品中の「Tシャツ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標




(2)使用商標


(色彩は、原本参照)

(3)使用商標の使用態様(乙第2号証)



(色彩は、原本参照)




審理終結日 2009-09-08 
結審通知日 2009-09-11 
審決日 2009-09-29 
出願番号 商願2003-11552(T2003-11552) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 清川 恵子
田村 正明
登録日 2003-10-31 
登録番号 商標登録第4722991号(T4722991) 
商標の称呼 ミキスポーツニセンサンクラブ、ミキスポーツ、ミキ、ニセンサンクラブ、ニゼロゼロサンクラブ、クラブ、ミキスポーツクラブ 
代理人 高橋 康夫 
復代理人 安田 幹雄 
代理人 安田 敏雄 

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