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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200810900 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条一般 登録を受けられない商標 登録しない X25
管理番号 1208171 
審判番号 不服2008-10902 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2009-11-13 
事件の表示 商願2007- 35415拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,靴下,スカーフ,手袋,ネクタイ,マフラー,帽子,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成19年3月28日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、別掲(1)のとおり、文字と図形とを結合した構成からなる商標であって、その態様は、肉太の書体で大きく表された『BUTA』の欧文字の右角に、左横向きに跳躍をしている翼の生えた豚と思しき動物のシルエット図形を配し、その上部に『BUTA』の欧文字を細字で小さく配してなるものであり、その指定商品は、願書記載のとおりであって、『洋服,靴下,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)』等の商品を含むものである。しかるに、本願商標を構成する図形部分にみられる上記特徴は、ドイツ連邦共和国在の『プーマ アーゲー ルドルフ ダスラー スポーツ』が、スポーツシューズ、被服等に使用して取引者・需要者に周知・著名な商標(別掲(2)参照。以下『引用商標』という。)である図形部分と共通するものであって、また、本願商標を構成する『BUTA』の欧文字は、引用商標の欧文字部分(PUMA)と同様の書体であって、文字数及び2文字目の『U』と4文字目の『A』を共通にするものであるから、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者に、当該他人の周知・著名商標をパロディー化したものであると容易に理解、認識させるものというべきである。しかして、出願人は、本願商標の登録出願にあたって、当該他人の承諾を得ているものとは認められない。そうすると、かかる構成からなる本願商標を当該他人の承諾もなく、出願人が、本願商標の指定商品に使用することは、当該他人の周知・著名商標の名声に便乗し、その顧客吸引力にフリーライドするものといえ、これは、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
商標法第4条第1項第7号は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。その趣旨は、商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、他人の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められる限り、商取引の秩序を乱すものと解するのが相当である。
そして、他人が築き上げた著名性を有する標章と同一又は類似の商標であって、その著名性にフリーライドすることや、その著名性や名声を希釈、毀損することなど不正の目的をもって出願したものは、商取引の秩序を乱し、ひては社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである。
そこで、これを本件商標について検討する。
(1)引用商標の著名性について
引用商標に係るドイツ連邦共和国のプーマ社(Puma AG Rudolf Dassler Sport)(以下「プーマ社」という。)は、スポーツ用品・スポーツウエア等を製造販売する世界的に知られた企業である。1920年にアディ・ダスラー及びルドルフ・ダスラー兄弟が靴を販売する「ダスラー兄弟社」を設立したのが始まりであり、その後、兄弟は1948年(昭和23年)にそれぞれ独立し、弟がプーマ社を設立した。
プーマ社は、1949年から俊敏に獲物を追い詰め必ず仕留めるアメリカライオンのピューマから命名した「PUMA」の文字及びピューマの図形をプーマ社のブランドとしてスポーツシューズに使用開始した。
プーマ社のスポーツシューズ、特にサッカーシューズにおいては、ペレ、ヨハン・クライフ、ディエゴ・マラドーナ、ローター・マテウスなど、世界でもトップクラスのプレイヤー達に使用され、サッカー以外でも、陸上競技等の一流選手によって使用されている。
1980年代には、「PUMA」の文字とピューマの図形を組み合わせた引用商標を、各種スポーツシューズをはじめ、帽子、ポロシャツ、Tシャツ、ショートパンツ、靴下、時計などに幅広く使用し、現在に至るまで長年使用した結果、本願商標の出願時及び査定時において、引用商標はプーマ社の業務に係る商品を表示する商標として我が国のみならず世界的に広く認識されている。
(2)本願商標と引用商標の類似性について
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるなるところ、構成中の大きく顕著に表された「BUTA」の文字部分は、縦線を太く、横線を細く、かつ、角部分に丸みを持たせた縦長の書体で、あたかも横長の長方形の枠内にはめ込まれた如く表され、また、図形部分は、背中に羽根のある豚と思しき動物が該文字部分に右側から左上方に向けて飛んでいるかのような姿を側面から捉えたシルエット図形からからなるものである。そして、その上部に「BUTA」の文字を小さく細い線で表してなるものである。
一方、引用商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなるなるところ、構成中の「PUMA」の文字部分は、縦線を太く、横線を細く、かつ、角部分に丸みを持たせた縦長の書体で、あたかも横長の長方形の枠内にはめ込まれた如く表され、また、図形部分は、該文字部分を飛び越えるように右側から左上方に向けて跳躍するネコ科の大型動物と思しき動物を側面から捉えたシルエット図形からなるものである。
そこで本願商標と引用商標について検討するに、両者は、4個の欧文字が、横書きで大きく表示されている点、その右上方に四足動物が右側から左上方に向けて前足と後ろ足を揃え飛び上がる様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通するものである。
さらに、本願商標の構成中顕著に表された「BUTA」の文字部分と、引用商標の「PUMA」の文字部分は、一文字目において「B」と「U」及び三文字目において「T」と「M」の文字の相違があるものの、他の2文字を同じにするものであり、かつ、各構成文字は、横線を細く、角部分に丸みを持たせた縦長の書体で、いずれも横長の長方形の長方形の枠内にはめ込まれた如く表されている点で共通するものである。
そうとすると、本願商標は、その構成を仔細に観察した場合はともかく、全体として捉えたときには、引用商標と構成の軌を一にし、外観上近似するものとみるのが相当である。
(3)本願商標が商道徳に反し、社会公共の利益に反するか否かについて
本願商標は、前記のとおり、引用商標のモチーフの一つとなっている「ピューマ」の図形部分を「豚とおぼしき動物」に置き換え、欧文字部分も、あえて引用商標の「PUMA」と同じ4文字からなる「BUTA」とし、引用商標の書体とほぼ同様に酷似させて表したものであるから、請求人(出願人)が意図的に、周知、著名な引用商標の特徴を一見してわかる程度に残したまま外観を変更したものであって、本願商標に接する取引者、需要者に引用商標を想起させるとともに、引用商標について滑稽で風刺的な印象を与えることにより、顧客の購買意欲を刺激することを意図しているものと推認できる。
このことは、近年、インターネット上のオークションサイト等において、本件商標と同様に4個の欧文字と該文字部分の右上方に動物のシルエット図形を配した構成よりなる標章を付した商品「Tシャツ、ステッカー」等が、「PUMA」のパロディー商品と称し、以下のとおり販売されている事情からもうかがえる。
(a)「Yahoo!オークション」サイトにおいて、「パロディステッカー PUMA改 PAMA!! パロステ(14)・・・商品説明 文字だけが残る、切り文字ステッカーで製作した、パロディステッカー プーマがアフロ頭になってパーマという、パロステ。」の記載がある。
(http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h131794216)
(b)「ウーマンエキサイト・オークション」サイトにおいて、「未使用!BUTA Tシャツ ◆商品説明◆PUMA!?のパロディ!?面白くて購入しましたが気に入っていただけなかったので。タグなどは外してしまってありませんが未使用です。」 の記載がある。
(http://auction.woman.excite.co.jp/item/126429609)
(c)「Yahoo!オークション」サイトにおいて、「●★プーマパロディー パンダTシャツ 黄L新品 未使用品レア★● 現在の価格1,800円」の記載がある。
(http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m54684899?u=peace34567papa)
しかして、パロディーとは、文学作品の一型式。よく知られた文学作品の文体や韻律を模し、内容を変えて滑稽化・風刺化した文学。日本の替え歌・狂歌などもこの類。また、広く絵画・写真などを題材としたものをいう(広辞苑 第6版)。
してみれば、本願商標は、プーマ社が、永年スポーツシューズ等に使用し取引者、需要者の間に広く知られている商標と承知の上で、当該他人の承諾もなく、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る等の目的のもとに、請求人(出願人)が引用商標の有する特徴を模倣して出願し、登録を受けようとしたものといわざるを得ず、かかる行為によって、引用商標自体に化体した信用・名声及び顧客吸引力を希釈化させ、あるいは損なうおそれがあるものといわなければならない。
以上のとおり、本願商標を登録することは、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)という商標法の精神に反し、商取引の秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当し、商道徳に反し、社会公共の利益に反するというべきである。
したがって、商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本願商標


別掲(2)引用商標


審理終結日 2009-09-04 
結審通知日 2009-09-09 
審決日 2009-09-28 
出願番号 商願2007-35415(T2007-35415) 
審決分類 T 1 8・ 2- Z (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 正明石戸 拓郎 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
商標の称呼 ブタ 
代理人 金丸 清隆 
代理人 佐川 慎悟 
代理人 小林 基子 

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