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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X03
管理番号 1205180 
審判番号 無効2008-890097 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-03 
確定日 2009-09-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5118553号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5118553号商標(以下「本件商標」という。)は、「PASHANA」の欧文字を標準文字で書してなり、平成19年9月13日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品として、同20年3月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第2421120号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和61年5月8日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年6月30日に設定登録され、その後、同14年1月22日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同年5月29日に、指定商品を第3類「化粧品,香料類」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
2 登録第2454335号商標(以下「引用B商標」という。)は、「パシャ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和63年3月17日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年9月30日に設定登録され、その後、同14年10月8日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同16年1月14日に、指定商品を第3類「化粧品,香料類」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
3 登録第2335884号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、1985年11月12日にオランダ国、ベルギー国、ルクセンブルク国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、昭和61年4月16日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年9月30日に設定登録され、その後、同13年7月24日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同14年1月16日に、指定商品を第3類「香料類,化粧品」とする指定商品の書換の登録がされたものである。
(上記1ないし3の登録商標をまとめていうときは、以下単に「引用商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第8号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標の類否
本件商標は、その構成に応じて「パシャナ」の称呼を生じる。
引用A及びB商標は、それぞれの構成に応じて、いずれも「パシャ」の称呼を生じる。
引用C商標は、欧文字を三段に横書きしてなるから、それぞれの文字から称呼が生じ、「パシャ」の称呼が生じる。
本件商標より生じる「パシャナ」の称呼と引用商標から生じる「パシャ」の称呼を比較すると、両者は最初の「パ」「シャ」の2音を共通にし、語尾において「ナ」の有無の差異を有するにすぎない。
語頭の「パ」は、両唇を合わせて破裂させる無声破裂音であり、力の入る音であって、明るく跳ねるように響く、印象の強い音でもある。そして、それに続く「シャ」は、舌端を前硬口蓋に寄せて発音する無声摩擦子音であり、これも印象に残りやすい強い音である。
一方、本件商標の第3音である「ナ」の音は、柔らかく軽い音感の清音であり、しかも聴取されにくい語尾にあるから、極めて弱く発音され、ほとんど印象に残らない。
そうすると、本件商標と引用商標は、強く響き、印象に残りやすい音である「パ」「シャ」を明確に聴取されやすい語頭において共通にするものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは両者の語調・語感は極めて近似したものとなり、称呼上相紛らわしい類似の商標であることは明らかである。
(2)指定商品の抵触
本件商標の指定商品中「化粧品,香料類」は、引用商標の指定商品と抵触する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)「PASHA」の周知・著名性
請求人の歴史は、1847年に創始者であるルイ=フランソワ・カルティエがパリに開いた工房に始まる。以来、現在まで、請求人の製品は、ヨーロッパ各国の王室や数々の著名人に愛用され、「王の宝石商であり、宝石商の王」として確固たる地位を築き上げてきた。
「PASHA」は、1930年代、当時モロッコの太守(パシャ)であったハージ・タミール・エル・メズアリ・エル・グラウィから「自宅のプールで泳ぐときに着けられる時計が欲しい」という要望を受けて作られた防水型腕時計が元になった商品シリーズであり、請求人の商品の中でも「タンク」シリーズ等と並んで大変人気があり、請求人を象徴するシリーズの一つである(甲第1ないし第6号証)。
現在では、ステンレススチール素材の「パシャC」「パシャシータイマー」、イエローゴールド・ホワイトゴールド・ピンクゴールドの「パシヤ 32mm」、大型の「バシャ 42mm」などのラインナップがあり、やや大ぶりの時計でありながら男性のみならず女性にも人気を博している。
そして、「PASHA」「パシャ」の名を冠した商品として、万年筆、ボールペン、財布、セカンドバック等の革製品、ライター、フレグランスなどがあり、それぞれ人気を博している(甲第7号証の1ないし8)。
このように、永年にわたって、また幅広い分野の商品に使用された結果、「PASHA」「パシャ」の商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者に広く知られるようになった。
(2)出所の混同を生ずるおそれ
前記1で述べたとおり、本件商標と引用商標は称呼上相紛らわしい類似する商標である。
また、商標審査基準の商標法第4条第1項第15号の項においても、「他人の著名な商標と他の文字又は図形と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなども含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱う」とされている。
さらに、請求人と被請求人が扱う商品についてみても、請求人が第3類「化粧品」に属するフレグランス(香水)に引用商標を使用している(甲第7号証の8)のに対し、被請求人は、本件商標を第3類の「化粧品」に属するヘアローションに使用している(甲第8号証)。
以上より、本件商標は、請求人の商標として我が国の需要者に広く知られている「PASHA」を含むものであり、請求人と被請求人が共に第3類「化粧品」に属する商品にそれぞれ引用商標、本件商標を使用しているから、本件商標が使用された場合には、その商品が請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかのつながりを有する者の業務に係る商品であると誤認混同を生ずるおそれがある。
3 むすび
上述のように、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、前記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)称呼及び観念について
ア 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「PASHANA」の文字を標準文字で書してなるものであるから、その構成文字に相応して、「パシャナ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生じない造語よりなるものと認める。
イ 引用商標
(ア)引用A商標は、別掲(1)のとおり、その構成文字がやや図案化されているが、「Pasha」の文字を書したものと理解されるといえるから、これより「パシャ」の称呼を生ずるものであって、「パシャ(オスマン帝国の文武高官の称号)」を意味するトルコ語に由来する語と認めることができるが、該語は、我が国においては馴染みの薄い語といえるから、特定の観念を想起させない造語を表したと理解されるとみるのが相当である。
(イ)引用B商標は、前記第2の2のとおり、「パシャ」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「パシャ」の称呼を生ずるものであって、引用A商標と同様の理由により、特定の観念を想起させない造語を表したと理解されるとみるのが相当である。
(ウ)引用C商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中、上段に横書きされた文字は、引用A商標と同一の構成よりなるものであり、中段の「de」は「ドゥ」と発音され、「?の」を意味するフランス語として我が国においても知られているといえる。また、下段の「Cartier」の文字部分は、我が国において「カルティエ」と称呼され、請求人の略称ないし請求人の業務に係る商品「時計、香水」等を表示する商標として、本件商標の登録出願時には既に、その需要者の間に広く認識されていたと認め得るところである。
そうすると、引用C商標は、構成全体から「パシャドゥカルティエ」の称呼及び「カルティエのパシャ」の意味合いを生ずるものと認めることができる。
しかし、上記認定のとおり、引用C商標中の「Cartier」の文字部分は、その著名性故に、これが独立して自他商品の識別機能を発揮するといえること、「Pasha」の文字部分が特定の観念を想起させない造語を表したと理解されることに加え、後記2に認定するように、「PASHA」又は「パシャ」の文字よりなる商標(これらの商標をまとめて、以下「請求人商標」という。)が請求人の業務に係る商品「化粧品,香料類」はもとより、「時計」を表示するものとして、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないことを併せ考慮すると、引用C商標からは、その構成中の「Cartier」の文字部分より単に「カルティエ」の称呼をも生ずるとしても、単に「パシャ」の称呼は生じないといわなければならない。
したがって、引用C商標は、その構成文字に相応して「パシャドゥカルティエ」の称呼及び「カルティエ」の称呼を生ずるものであって、請求人又は請求人に由来する商品を想起するものということができる。
ウ 称呼及び観念の類否について
(ア)本件商標より生ずる「パシャナ」の称呼と引用A及びB商標より生ずる「パシャ」の称呼を比較するに、両称呼は、「パシャ」の音を同じくし、末尾において「ナ」の音の有無の差異を有するものであるところ、本件商標を全体として称呼するときは、「パ」「シャ」「ナ」と、1音1音明確に称呼されるのに対し、引用A及びB商標をそれぞれ全体として称呼するときは、語頭の「パ」の音が強く発音され、第2音の「シャ」が比較的弱く発音されるといえるから、両称呼の全体の語調は異なるばかりでなく、差異音である「ナ」の音も明瞭に聴取されるものといえる。
そうすると、差異音「ナ」が、きわめて短い称呼といえる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものではなく、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、その語調、語感が相違したものとなり、互いに聞き誤るおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標と引用A及びB商標とは、称呼上類似する商標ということはできない。
(イ)本件商標より生ずる「パシャナ」の称呼と引用C商標より生ずる「パシャドゥカルティエ」及び「カルティエ」の称呼は、構成する音数、音質、音感等において顕著な差異を有するものであるから、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤るおそれはないものと認める。
(ウ)本件商標は、前記認定のとおり、特定の観念を有しない造語よりなるものであるから、引用商標とは、観念上比較することができない。
(2)外観について
本件商標及び引用商標は、前記(1)ア及びイ認定のとおりの構成よりなるものであるから、外観上明らかに区別し得るものと認める。
(3)まとめ
以上によれば、本件商標と引用商標は、称呼、観念及び外観のいずれの点においても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人商標の著名性について
ア 甲第1ないし第6号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)「世界の一流品大図鑑’90」(平成2年5月30日、株式会社講談社発行。甲第1号証)には、「CARTIER/カルティエ」の表示のもと、時計の写真のわきに「パシャクロック」の文字が記載されている。
(イ)「男の一流品大図鑑’90」(平成元年12月1日、株式会社講談社発行。甲第2号証)には、大きく表示された「CARTIER/カルティエ」のもと、時計の写真のわきに「パシャ」の文字が記載されている。
(ウ)「男の一流品大図鑑’91」(平成2年11月26日、株式会社講談社発行。甲第3号証)には、大きく表示された「CARTIER/カルティエ」のもと、時計の写真のわきに「パシャ」の文字が記載されている。
(エ)「世界の腕時計/特集 カルティエ2002」(平成14年8月20日、株式会社ワールドフォトプレス発行。甲第4号証)には、時計の写真のわきに「パシャ ドゥ カルティエ トゥールビヨン」などの文字が記載されている。
(オ)「大人の高級腕時計2003・2004」(2003年12月10日、株式会社小学館発行。甲第5号証)には、大きく表示された「CARTIER/カルティエ」のもと、「『パシャ』のトゥールビヨンも見逃せない逸品。」などの説明文と共に、時計の写真のわきに「パシャ ドゥ カルティエ トゥールビヨン」などの文字が記載されている。
(カ)「Cartier/2006/Cartier Watch Line Up」(世界の腕時計No.82 特別綴じ込み付録。甲第6号証)には、「PASHA STEEL/パシャ スチール」、「PASHA 32mm/パシャ 32ミリ」、「PASHA 42mm/パシャ 42ミリ」の文字のもと、時計の写真が掲載されている。
なお、甲第7号証の1ないし7は、プリントアウトされた日付が2008年(平成20年)10月1日であり、また、甲第7号証の8は、プリントアウトされた日付が2008年9月19日であって、これらが本件商標の登録査定日(平成20年2月7日)前に掲載されたことを認めるに足る裏付け証拠の提出はない。
イ 上記アによれば、請求人の取扱いに係る商品「時計」には、「PASHA/パシャ」なる商標(請求人商標)を表示した商品が存在することが認められ、請求人商標は、高級時計を愛好する者など一部の需要者には、ある程度知られていたことが窺えるが、「CARTIER/カルティエ」の表示の圧倒的著名性に比べ、その周知性は広く一般の需要者に及んでいるものとは認めることができない。加えて、請求人商標が請求人の業務に係る商品「香水」等を表示するものとして、本件商標の登録出願時に既に、需要者の間に広く認識されていたという事実を認めることができる証拠の提出はない。
(2)出所の混同について
前記(1)認定のとおり、請求人商標は、高級時計を愛好する者など一部の需要者には、ある程度知られていたとしても、広く一般の需要者の間に認識されていたものとはいえない。また、前記1認定のとおり、本件商標は、引用商標とは、商標それ自体において異なるものである。
そうすると、本件商標に接する化粧品等の需要者が、これより直ちに請求人の業務に係る時計に使用される請求人商標を想起又は連想するものとみることはできない。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用A商標



(2)引用C商標



審理終結日 2009-04-27 
結審通知日 2009-05-01 
審決日 2009-05-12 
出願番号 商願2007-97334(T2007-97334) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X03)
T 1 11・ 262- Y (X03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 英一郎 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 2008-03-14 
登録番号 商標登録第5118553号(T5118553) 
商標の称呼 パシャナ 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 山崎 和香子 
代理人 小谷 悦司 
代理人 加藤 義明 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 

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