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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1205146 
審判番号 取消2008-301282 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-03 
確定日 2009-09-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4417762号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4417762号商標の指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4417762号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成11年8月2日に登録出願され、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,レコード,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,火災報知機,ガス漏れ警報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,盗難警報器,保安用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,磁心,抵抗線,電極,溶接マスク,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,検卵器,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,メトロノーム」を指定商品として平成12年9月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第4号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者(又は通常使用権者)によって、指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」については、一度も使用された事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録が取消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人は、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品中「遠隔測定制御機械器具」(電気通信機械器具)及び「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ,消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)について使用されてきたと主張しているが、以下の理由から、これらの使用は商標法第50条の要件を満たすものではないから、その主張は失当である。
(2)商標法第50条第2項によれば、「審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品または指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明」すれば、その指定商品等に係る商標登録の取り消しを免れることとされている。
しかしながら、以下に述べるとおり、被請求人が本件商標を使用していると主張する商品「遠隔操作盤(PCL0401)」(乙第8、第9、第12、第13及び第15号証)、「自動盤」(乙第8、第9及び第14号証)、「遠隔操作盤」(乙第8、第9及び第14号証)は、「電気通信機械器具」及び「電子応用機械器具及びその部品」のいずれの範疇にも属する商品ではなく、「消防ポンプ」の附属品にすぎない。
(3)乙第8及び第9号証は被請求人のカタログ写し、乙第12、第13及び第15号証は被請求人のウェブサイト写しであるが、乙第8号証10頁には、消防ポンプ本体操作パネル(以下「操作パネル」という。)の説明として、「状況に応じて、自動吸水・手動放水・中継送水をワンタッチ切換。さらに、放水圧力制御・放水流量制御も自在に設定可能。」と記載されており、操作パネルの各項目にも「手動放水」「自動吸水」「中継送水」「圧力制御」「流量制御」の表示が記載されている。また、操作パネルの操作方法の説明によると、操作パネルのタッチパネルを押すだけで、マイコン制御の全自動運転が始まり、吸水・放水を始めるとされている。写真から、当該操作パネルは消防ポンプ本体に組み込まれるものであることは明らかであり、その上記目的・用途・機能・構成から考えても、これが「消防ポンプ」を構成する一部品であり、「電気通信機械器具」又は「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属するものではないことは明らかである。
平成21年1月7日付け答弁書7頁において被請求人は、「この『ラビット遠隔操作盤(PCL0401)』は、消防ポンプ本体操作部とパネル部の構成が共通することからも明らかなとおり、矢印(a)で示した枠内で紹介される基本制御を行うことができるものであるとともに、矢印(b)で示した説明文より明らかなとおり、遠隔からデジタルケーブル方式によって、放水流量や放水圧力を測定し、その値に応じて自動で流量や圧力を調整するなど、遠隔からの種々の操作・制御を行うことができるものである。」と述べている。また、乙第8号証10頁には、「遠隔操作盤(オプション)により、離れた場所からのポンプ操作が可能。積載車などに威力を発揮します。」と記載されており、当該商品が「消防ポンプ」のオプショナルとして掲載されている。被請求人の当該主張、乙第8号証の商品説明及び「遠隔操作盤(PCL0401)」の構成に鑑みると、「遠隔操作盤(PCL0401)」は、単に、遠隔からのデジタルケーブル方式によって、上記操作パネルを遠隔に設置したにすぎず、目的・用途・機能・構成は全て、上記操作パネルと同様であると理解できる。被請求人が本件商標を使用していると主張する「遠隔操作盤(PCL0401)」は、上記操作パネルと同様、専ら「消防ポンプ」の附属品としてその操作・制御を行うものにすぎないのであるから、「電気通信機械器具」又は「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属するものではないと思料する。
なお、乙第9号証12頁、乙第12及び第13号証に記載されている商品は、「消防ポンプ」の品番及び「遠隔操作盤」自体の品番「PCL0401」から、明らかに乙第8号証10頁に記載されているのと同じものを指していると思われる。したがって、上記のとおり、これらに掲載されている「遠隔操作盤(PCL0401)」についても、「電気通信機械器具」又は「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属するものではないと思料する。
(4)同答弁書7頁及び8頁において、被請求人は、「遠隔操作盤(PCL0401)」がマイコン制御であることを根拠として当該商品が「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ,消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)としての側面を有していると主張している。
しかしながら、単に動作がマイコン制御されているからといって、直ちに当該商品が「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属する商品であるとはいえない。これは、マイコンにより動作が制御されている機械器具類は極めて多いが、例えば、自動車や炊飯器の動作がマイコンにより電子制御されているからといって、自動車や炊飯器が「電子応用機械器具」の範疇に属する商品であるといえないのと同様である。したがって、当該被請求人の主張は失当である。
(5)同答弁書7頁において、被請求人は、「『ラビット遠隔操作盤(PCL0401)』が、遠隔からのデジタルケーブル等の通信手段によって、測定された放水圧力の制御や測定された放水流量の制御等を行うための機械器具であることからすれば、放水圧力制御用又は放水流量制御用の遠隔測定制御機械器具類に分類される商品として、少なくとも国際分類第9類『電気通信機械器具』中『遠隔測定制御機械器具』に該当する商品である」と主張している。
しかしながら、上記のマイコン同様、デジタルケーブル等の通信手段を使用して制御等行うからといって、直ちに当該商品が「電気通信機械器具」の範疇に属する商品であるとはいえない。上述のとおり、「遠隔操作盤(PCL0401)」は、明らかに、専ら「消防ポンプ」の附属品としてその制御・測定を行うにすぎないからである。また、昨今、デジタルケーブル等を使用して何等かの制御を行う機械器具類は極めて多く、例えば、「電子計算機」は、デジタルケーブル等の通信手段を用いてプリンター等の制御を行うからといって、「電気通信機械器具」の範疇に属する商品とはならないことは明白である。さらに、特許庁の特許電子図書館(以下「IPDL」という。)の「商品・役務名リスト」によると、「消火設備用制御装置」は、「09G02」という類似群コードが付与されており(甲第1号証)、「消火ポンプ」と同じ範疇に属する商品であると判断されている。このことは、デジタルケーブル等を使用して「消火装置」の制御を行っているからといって、直ちに「電気通信機械器具」の範疇に属する商品であるということにはならないことを裏付けるものであると思料する。よって、当該被請求人の主張は失当である。
(6)同答弁書8頁において、被請求人は、「この『ラビット遠隔操作盤(PCL0401)』は、専ら当該消防ポンプのみに使用されるものではなく、消防車についての使用等の汎用性を有するものである。」と述べているため、この点について検討する。
確かに、乙第9号証20頁に掲載されている「操作盤」の構成を見ると、乙第8号証10頁に掲載されている「操作パネル」と同じ構成であり、同じ商品を指しているように見受けられる。しかしながら、当該商品が「遠隔操作盤(PCL0401)」と同じ商品を指しているとしても、このことから直ちに「遠隔操作盤(PCL0401)が汎用性を有する商品であるということを意味しない。
すなわち、乙第8号証17頁、乙第9号証20頁及び15頁に掲載されている「小型全自動消防車 固定配管タイプ」の説明によると「全自動操作は、左右側板と消防ポンプ本体の3箇所から可能。」と記載されている。同号証同頁の写真を見ると、当該消防車は、「消防ポンプ」を搭載しており、当該「消防ポンプ」は、その構成から、乙第8号証9頁、乙第9号証13頁及び乙第12号証に掲載されている「全自動消防ポンプ」であることは明らかである。乙第8号証10頁、乙第9号証12頁及び第13号証の説明によると、当該「全自動消防ポンプ」は「操作パネル」を有しているとのことであるから、上記「小型全自動消防車 固定配管タイプ」の説明に記載されている全自動操作が可能な「消防ポンプ」本体とは、この「操作パネル」を有する「全自動消防ポンプ」のことを指すものと推測される。また、「小型全自動消防車 固定配管タイプ」の側面のホース近くに、乙第8号証17頁、乙第9号証20頁及び15頁に掲載されている「操作盤」と同じものが設置されているようである。同号証同頁の上記説明から、この「操作盤」が左右側面から全自動操作を可能にしているものと思われる。乙第8号証10頁及び乙第9号証12頁の「遠隔操作盤(オプション)により、離れた場所からのポンプ操作が可能。積載車などに威力を発揮します。」との説明に鑑みると、「消防ポンプ」を積載している消防車においては、「消防ポンプ」を遠隔から操作する必要があり、その操作を行うための操作盤を「小型全自動消防車 固定配管タイプ」の左右側面に設置したと考えるのが自然であろう。そうとすれば、「遠隔操作盤(PCL0401)」は、被請求人が主張するように汎用性を有する商品でなく、専ら「消防ポンプ」の附属品として「消防ポンプ」の操作・制御のために使用されるものであるということになる。したがって、同答弁書と共に提出された証拠によっては、「遠隔操作盤(PCL0401)」が汎用性を有する商品であることを立証できていないと思料する。
(7)同答弁書8頁において、被請求人は、「同カタログ10頁矢印(c)で示した個所における『通話機能(要オプション)』により、筒先員とポンプ員との対話も可能。状況報告や行動要請などを瞬時に行えます。」との記載から、被請求人が、上述以外にも、「通話装置(電気通信機械器具)の販売を取扱うことが明らかとなる。」と述べている。
しかしながら、乙第8号証10頁のその他の説明に鑑みると、同号証同頁の「消防ポンプ」を用いて消火活動を行う際に筒先員とポンプ員の間で連絡を取り合う必要があるため、「遠隔操作盤(PCL0401)」又は消防ポンプの附属品であると考えられる「筒先操作装置」に通話機能をつけたにすぎないと推測される。当該「通話機能」は「遠隔操作盤(PCL0401)」及び「筒先操作装置」において付随的な機能にすぎず、これをもって本件商標を「通話装置(電気通信機械器具)」について使用していることにはならないであろう。この点、「電子計算機」で通話ができる(通話機能がある)からといって、これを「通話装置(電気通信機械器具)」であるといえないのと同様である。したがって、当該被請求人の主張は失当である。
(8)同答弁書8頁及び9頁において、被請求人は、乙第8号証11頁及び12頁に掲載されている「遠隔操作盤」及び「自動盤」について、「マイクロコンピュータにより構成されるものではなく、また、『ラビット操作盤(PCL0401)』のような極めて多数の測定・制御を行う機能を有するものではない。しかしながら、全体のシステムの始動等を遠隔より行うことができる点では、『電気通信機械器具』の部類に属するものである。」と述べている。
しかしながら、同号証12頁には、「常駐室等に設置された遠隔操作盤のボタンを押すだけでポンプが作動、散水を始めます。」と記載されており、同号証11頁には、「遠隔操作盤・自動盤」が「スイッチONで即座に全自動運転」である旨が記載されている。また、同号証11頁の「システムフロー図」によると、「自動盤」「遠隔操作盤」が「消防ポンプ」と一体となって吸水・消火活動を行っていることは明らかである。被請求人のホームページに掲載されているこれらの商品の仕様書によると、「自動盤」は、「操作電源」「始動不能」「運転」「停止」「吸水/放水/不能」「運転」「停止」の項目から構成されており、「遠隔操作盤」は、「始動指示」「操作電源」「始動」の項目から構成されている(甲第2ないし第4号証)。
上記の記載及び構成から、「自動盤」は、上記「遠隔操作盤(PCL0401)」と同様、専ら「消防ポンプ」の附属品として、その操作・制御を行うためのものであることは明らかである。また、上記「システムフロー図」によると、「遠隔操作盤」は、「自動盤」と連結されており、「自動盤」同様、「消防ポンプ」と一体となって吸水・消火活動を行うものであることは明らかであるため、「遠隔操作盤」も、専ら「消防ポンプ」の附属品として、その操作・制御を行うものであると考えるのが自然であろう。また、上記のとおり、IPDLの「商品・役務名リスト」によると、「消火設備用制御装置」には、「09G02」という「消火ポンプ」と同じ類似群コードが付与されており(甲第1号証)、「自動盤」「遠隔操作盤」は、その目的・用途・機能・構成から、「消火設備用制御装置」であるといえるであろう。さらに、被請求人は、「システムの始動等を遠隔より行うことができる」ことをもって、当該商品が「電気通信機械器具」の範疇に属する商品であると主張しているようであるが、その根拠は明確とされていない。
なお、乙第9号証14頁及び15頁、乙第14号証に記載されている商品は、写真及び「消防ポンプ」の品番等から、乙第8号証11頁及び12頁に記載されているのと同じものを指していると思われる。したがって、上記のとおり、これらに掲載されている「自動盤」「遠隔操作盤」についても、「電気通信機械器具」の範疇に属するものではないと思料する。
したがって、「自動盤」「遠隔操作盤」が「電気通信機械器具」の範疇に属するとの被請求人の主張は失当である。
(9)特許庁においても、「ガスケットをコンピュータ制御により生産するシステム」及び「当該システムを構成するコントロールユニット」についての登録商標の使用について、同様の理由から「電子応用機械器具」に属する商品についての当該商標の使用に該当しないと判断された審決(参考資料1)、「WEBカメラ」「ネットワークカメラ」をその機能、目的、用途に照らし、「盗難警報機」に属する商品(装置)であると判断し、請求人の当該商品が「電気通信機械器具」に属するものであるとの主張を斥けた審決(参考資料2)が存在している。被請求人が本件商標を使用していると主張する「遠隔操作盤(PCL0401)」「自動盤」「遠隔操作盤」のいずれも、専ら「消防ポンプ」の操作・制御に用いられる附属品であり、その機能、目的、用途等に鑑みると、明らかに「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」のいずれの範疇にも属さない商品である点は上述のとおりである。
(10)以上より、被請求人は、平成21年1月7日付け審判事件答弁書によっては、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」についての本件商標の使用をしていることを証明していないのであるから、商標法第50条第2項の要件を満たさず、その指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」に係る商標登録の取り消しを免れることはできない。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第22号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件商標の使用事実の要点
被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内はもとより、従来より継続してその請求に係る指定商品中「遠隔測定制御機械器具」(電気通信機械器具)及び「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ,消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)について、本件商標を使用している。
2 本件商標の使用の事実
(1)商標の使用者
(ア)本件商標を使用する製品「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、被請求人の製造・販売に係る製品のひとつであるところ、その製造過程においては、被請求人からの製造委託に基づき、委託先第三者(制御機械メーカー)が、製品自体の製造及びその包装容器に本件商標を付する工程を行っている(乙第3及び第4号証)。
それ故、乙第5号証(出荷検査報告書)には、前記製品の検査責任者として委託先第三者(納入者)の社名並びに責任者名が示されるとともに、その納品先として「→(株)マキタ沼津 品質管理課」が示されている。
上記製品の販売に関しては、乙第6号証として提出する被請求人作成の「売掛金得意先別補助元帳」に、その発行者(販売者)として、被請求人本人を示す「マキタ沼津」の表示がある。
(イ)乙第7号証(枝番号を含む。)は、前記製品を含む被請求人の各種防災製品についての「ラビット防災機器総合カタログ」(乙第8号証)に関する納品書類である。
このうち、乙第7号証の1は、企画デザイン及び製作費等についての納品書であり、カタログ制作業者の住所・名称が示されるほか、納品の宛先が「(株)マキタ沼津 業務部」であることが示されている。乙第7号証の2は、実際に完成したカタログについての納品書であるところ、同じくカタログ制作業者の住所・名称が示されるほか、納品の宛先が「(株)マキタ沼津 業務部営業企画課」であることが示されている。
(ウ)乙第8号証は、2007年8月に被請求人の社名が「株式会社マキタ沼津」に変更された後に使用している「ラビット防災機器総合カタログ」であり、その裏表紙には、被請求人本人の現在の名称「株式会社マキタ沼津」が示されるとともに、その本社の所在地として「本社 〒410-8535 静岡県沼津市大岡35」の表示があり、その他に各事業部・営業所の所在地が示されている。
なお、同カタログは、カタログ掲載商品の販売のため、特約店や商社を通じて広く国内各地域において頒布されるものである。
また、被請求人のウェブサイトでは、「ラビット防災機器総合カタログ」と同様の内容が従来より公開されている。
(エ)乙第9号証は、被請求人が2007年8月に社名を変更するまで使用していた「ラビット防災機器・総合カタログ」であり、その掲載商品の販売のため、特約店や商社を通じて国内各地域において頒布されたものである。同カタログの裏表紙には、被請求人本人の旧名称である「富士ロビン株式会社」の表示とともに、その本社の所在地として「本社 〒410-8535 静岡県沼津市大岡35」の表示があり、その他に各事業部・営業所の所在地が示されている。また、前記「富士ロビン株式会社」の名称が、被請求人の旧名称であることは、乙第1号証において明らかである(参考として名称変更の時期について簡潔に補足するため、乙第21号証を提出する)。
(オ)乙第11ないし第15号証は、現時点における被請求人のウェブサイトについてのものであるため、本件審判の請求登録前のサイトの状態を簡易に補足するため、WWW上のARCHIVEサイトとして世界的に知られるウェブサイト「INTERNET ARCHIVE-WAYBACK MACHINE」において、被請求人ウェブサイトの2008年1月13日時点までのログ及びリストをプリントアウトしたものを乙第16ないし第20号証として提出する。
これらのログは、イメージデータが表示されない状態ではあったが、いずれのページにおけるテキストデータのみを見ても、2008年1月13日以前の内容が、現時点の内容と概ね同一の製品群が紹介されているものであることが容易に確認できるほか、各ページにおけるURL及び「Copyright(C) 2007 Makita Numazu Corporation All Rights Reserved.」の表示より、何れのページも被請求人が運営するウェブサイトにおいて公開されていたものであることが明らかとなる。
(2)使用に係る商品
(ア)乙第3号証(枝番号を含む。)は、被請求人の製造・販売に係る「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」が包装された状態を撮影した写真であり、当該包装の容器には、「RABBIT\名称:REMOTO CONTROLLER(E)\製品番号:PCL****0401\R793009」のラベルが付されている。なお、当該写真は、以下のとおり撮影されたものである。
・撮影年月日平成20年12月25日
・撮影者の住所及び氏名 静岡県沼津市大岡35株式会社マキタ沼津内 木村啓二郎
(イ)乙第8号証の「ラビット防災機器総合カタログ」には、被請求人の製造・販売に係る一連の「ラビット防災機器」商品群各種が掲載されており、その第10頁には、被請求人の製造・販売に係る「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」の写真が掲載されている。
この「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、消防ポンプ本体操作部とパネル部の構成が共通することからも明らかなとおり、矢印(a)で示した枠内で紹介される基本制御を行うことができるものであるとともに、矢印(b)で示した説明文より明らかなとおり、遠隔からデジタルケーブル方式によって、放水流量や放水圧力を測定し、その値に応じて自動で流量や圧力を調整するなど、遠隔からの種々の操作・制御を行うことができるものである。
すなわち、具体的にはそのパネル構成から明らかなとおり、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、別の場所で稼働する消防ポンプのエンジン回転数、放水圧力、放水流量、冷却水温を測定した値をパネル上で数値として確認することができ、また、始動操作による燃料コックの開閉指示、スロットルの調整、セルスタータによるエンジンの作動、真空ポンプによる呼水指示、呼水の有無の感知、放水開始、放水圧力の自動制御、放水流量の自動制御等の各動作を別の場所から行うことがことができる電子式測定制御装置である。
また、これらの測定・制御についてのプログラムが、マイクロコンピュータ自体によって実行されるものであることからすれば、操作パネルにおける各種スイッチや表示部は、いずれもマイクロコンピュータの入出力用デバイスないし表示用デバイスに過ぎないものと見ることも可能であるから、これらはマイクロコンピュータの附属品としての側面も有する。
したがって、以上の複合的・多面的な機能及び構成よりなる「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、入出力用デバイス及び表示用デバイスを備えたマイクロコンピュータ又はこれを応用した電子制御装置にほかならない。
(ウ)そこで、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」が、商標法上如何なる商品に該当するのかを検討する。
先ず、上述の構成より、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」が、遠隔からのデジタルケーブル等の通信手段によって、測定された放水圧力の制御や測定された放水流量の制御等を行うための機械器具であることからすれば、放水圧力制御用又は放水流量制御用の遠隔測定制御機械器具等に分類される商品として、少なくとも国際分類第9類「電気通信機械器具」中の「遠隔測定制御機械器具」に該当する商品であることは明らかである。
また、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、前述のとおり、放水圧力・放水流量の自動制御など種々の制御を電子的に行うものであるから、「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)としての側面を有する商品であることも明らかである。
一方、放水圧力・放水流量の自動制御など種々の制御をマイクロコンピュータ自体が行うものであることからすれば、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」自体が、入出力用及び表示用のデバイスを備えたマイクロコンピュ一タにほかならず、制御プログラムを実行して消防ポンプや防災機器を制御する「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ」としての側面を有する商品であることも明らかである。
さらに、同頁において表示される、単体で独立して取引される「流量計」等と同様、同第9頁に表示の消防ポンプとは別個独立に取引されるものであることも明らかであり、現に、その販売実績が乙第6号証において示されているとおりである。もっとも、この「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」は、専ら当該消防ポンプのみに使用されるものではなく、消防車についての使用等の汎用性を有するものである。
(エ)乙第8号証の「ラビット防災機器総合カタログ」には、その他に、以下の各製品も掲載されている。
同カタログ第10頁矢印(c)で示した個所における「通話機能(要オプション)により、筒先員とポンプ員との対話も可能。状況報告や行動要請などを瞬時に行えます。」との記載から、被請求人が、上述以外にも、通話装置(電気通信機械器具)の販売を取り扱うことが明らかとなる。当該通話装置を用いて緊急時の消防活動等を迅速・円滑に行うためのものである。
同第11頁及び第12頁においては、文化財・設備の全自動消火システムとして、マイクロコンピュータを応用したシステム等が表示されている。ここで表示されている「遠隔操作盤」「自動盤」自体は、前記「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」とは異なり、マイクロコンピュータにより構成されるものではなく、また、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」のような極めて多数の測定・制御を行う機能を有するものではない。しかしながら、全体のシステムの始動等を遠隔より行うことができる点では、「電気通信機械器具」の部類に属するものである。
また、例えば、文化財について利用する場合には「自動盤」も購入し、その他の設備に使用する場合には「遠隔操作盤」のみを購入するなど、防災対象に応じたシステムの組み合わせにおける任意性を有する。すなわち、トータルの防災システムとして提供するものとしても、何れの商品を購入し設置するか等については自由度が大きいため、総合的な防災システムに用いられる消防ポンプ、火災報知機、火災センサ等と同様に、それぞれが単独の取引性を有する商品であることは明らかである。
その他、同17頁においても、前記「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」と同一の製品が表示されている。
なお、これらの製品に関しては、被請求人のウェブサイトでも公開されている。
(オ)乙第9号証の「ラビット防災機器・総合カタログ」には、被請求人の製造・販売に係る一連の「ラビット防災機器」商品群各種が掲載されており、その第12頁には「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」の写真が掲載されているが、その性質、用途並びに販売形態等については、乙第8号証について前述したとおりである。
また、同第12頁における通話装置に関する記載や、同第14頁及び第15頁における文化財・設備のトータル消防システムについての記載について、それらのシステム、構成、機能、販売形態等についても、乙第8号証について前述したとおりである。
その他、同第20頁においても、前記「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」と同一の製品が表示されている。
(カ)以上のとおり、乙第8及び第9号証よりすれば、被請求人は、その社名変更以前より、現在に至るまで継続して、「Rabbit」ブランドのもとに「遠隔測定制御機械器具」(電気通信機械器具)及び「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ,消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)を製造、販売ないしその広告等を行っていることが明らかである。
(3)使用に係る商標
乙第3号証(枝番号を含む。)の各写真においては、被請求人の製造・販売に係る製品「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」の包装容器のラベルに本件商標が表示されていることが認められる。特にラベル部分を拡大した乙第3号証の3においては、本件商標の表示のほか、ともに、「REMOTO CONTROLLER(E)」、「PCL****0401」及び「R793009」の各表示が付されていることがより明確に確認できる。乙第4号証は、前記ラベルのシート原本であり、被請求人は、前述のとおり前記製品を委託製造しているため、当該委託先より入手したものである。
そして、乙第3(枝番号を含む。)及び第4号証におけるラベルには、本件商標と同一形状に係る「Rabbit」の文字を色彩を付さず輪郭のみで表した商標が表示されているところ、当該商標の態様は、「色彩を登録商標と同一にするとすれば登録商標と同一の商標であると認められる商標」であり、商標法第70条第1項より、商標法第50条第1項における「登録商標」に含まれるものである。
また、乙第11ないし第15号証における被請求人のウェブサイトの各ページにおいても、同様の態様よりなる本件商標が表示されている。また、本件審判の請求登録前のサイトの状態を簡易に補足するため提出した乙第16ないし第20号証中の各ログにおいても、前述のとおり、イメージデータが表示されない状態ではあるものの、現在の被請求人のウェブサイトの各ページにおける本件商標の表示部分に相当する部分にイメージデータを表示するためのブランクが存在することのほか、そのブランクには概ね「ラビット」の文字が表示されていることからすれば、このブランクには本件商標が表示されていたことは容易に想到される。現に、当該ブランクのリンク先は、乙第22号証に示されるとおり、Rabbitのgifデータを参照する「http://www.makitanumazu.co.jp.way_back_stub/img_rabbit/rabbit_copy2.gif」となっている(第17号証についての例)。
さらに、乙第8及び第9号証における表紙及び見開き右頁の全頁右上に、本件商標を赤色等で表示した商標が表示されているところ(乙第9号証では、裏表紙も含む。)、これらの使商標の態様は、いずれも「色彩を登録商標と同一にするとすれば登録商標と同一の商標であると認められる商標」であり、商標法第70条第1項より、商標法第50条第1項における「登録商標」に含まれるものである。
したがって、カタログ掲載の全商品が、被請求人の製造・販売に係る一連の防災機器のブランドとして、本件商標のもとに製造・販売されていることが明らかとなる。
(4)使用時期
(ア)乙第3号証の3に表示されるとおり、「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」の包装容器に付されたラベルの右下余白には、その製品のロットナンバーが記入されることとなっている。これは、附属品を含めて一つに梱包された「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」を、その梱包単位毎のロットとして出荷時期その他の管理をするためのものであり、乙第3号証に示される製品のロットナンバーの記載と乙第5号証の「出荷検査報告書」との関係において、当該製品が製造された時期が明らかとなる。
すなわち、乙第5号証の「出荷検査報告書」は、委託製造された「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」が、被請求人の規格に適合するか否かの検査を経て、被請求人宛てに納品される際に委託先より発行されるものであるところ、その「納入者記載事項」欄には、「ロットNo.」として「R793001?R793010」と記載されている。
一方、前掲乙第3号証における製品包装容器のロットナンバーは「R793009」であるから、検査報告書記載のロットナンバーの範囲内に属するものである。
したがって、報告書記載のロットナンバー「R793001?R793010」が、その報告に係る検査及び納入の対象となった製品のロットナンバーを意味していることは明らかであり、結果として、これに含まれるロットナンバーの付与された前掲乙第3号証に係る製品が、平成19年9月22日付の検査報告書において検査及び納入の対象となった製品であることが明らかとなる。
(イ)乙第6号証は、平成20年7月1日に被請求人により作成された平成20年6月度分の「売掛金得意先別補助元帳」であるところ、表のタイトル行を除く第2行目には、「出荷年月日」の列に「20.6.27」と、「形式名」の列に「リモートコントローラ(PCL0401)」と、「数量」の列に「2」とそれぞれ記載されている。これらの記載が、平成20年6月27日に本件製品が2台販売された事実を示すことが自明であることはもとより、本件商標の付された「ラビット遠隔操作盤(PCL0401)」(Rabbit\REMOTO CONTROLLER(E)\PCL****0401)が、現に、それ自体単独で商品として取引されている事実が証明される。
(ウ)乙第7号証は、本件製品を含む被請求人の防災関連製品のカタログ制作に関する納品書類であり、乙第7号証の1は、企画デザイン及び製作費等についての納品書であるところ、平成20年5月30日に納品された事実が示されている。
また、乙第7号証の2は、実際に完成したカタログについての納品書であるところ、平成20年6月4日に5000部が納品された事実が示されている。
(エ)乙第8号証は、被請求人が社名を「株式会社マキタ沼津」に変更後、使用しているカタログであるところ、具体的には、2008年5月に発行されたものであり、被請求人が社名変更後も継続して本件商標を使用していることが証明される。
乙第9号証は、被請求人が、旧名称「富士ロビン株式会社」より現在の名称に変更されるまで使用していたカタログであるところ、具体的には、2005年3月に発行されたものであり、これにより、被請求人が社名変更が行われた2007年8月前後に渡り、継続して本件商標を使用していたことが証明される。
(オ)乙第10号証は、被請求人の作成に係る平成14年1月16日付け「カタログの制作年月、増刷年月、カタログ登録番号の付番の取り扱い」と題する文書である。これは、カタログに記載する制作年月等に関する被請求人社内における取り扱いを取りまとめたものであり、社名変更前はもとより社名変更後も引き続き、当該文書に記載された取り扱いに基づき、カタログへの年月記載が行われている。
そこで、当該文書に基づいて乙第8号証のカタログを確認すると、その裏表紙中央下方には、「JH-E」の文字が記載されており、前記取り扱いによれば、年については「J」=「0」、「H」=「8」を、月については「E」=5月を意味するため、「2008年5月」の制作に係ることを意味することが明らかである。
また、乙第9号証の裏表紙右下方には、「JE-C」の文字が記載されており、前記取り扱いによれば、年は西暦下二桁で表されることとなっていることから「J」=「0」、「E」=「5」で「2005年」を意味し、月については「C」=「3月」を意味するため、結果として「2005年3月」の制作に係ることを意味することが明らかである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人(被請求人による委託製造者を含む。)が指定商品中「遠隔測定制御機械器具」(電気通信機械器具)及び「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ,消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」(電子応用機械器具及びその部品)について使用していることが明らかであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用に係る商品について
被請求人は、本件請求に係る指定商品「電気通信機械器具」中の「遠隔測定制御機械器具」並びに「電子応用機械器具及びその部品」中の「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ、消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」について本件商標を使用している旨主張し、証拠を提出しているので、上記商品について検討する。
(1)被請求人は、「ラビット防災機器総合カタログ」(Fire fighting Equipment Series)と題する商品カタログ(乙第8号証:以下「Aカタログ」という。)の10頁、「ラビット防災機器・総合カタログ」と題する商品カタログ(乙第9号証:以下「Bカタログ」という。)の12頁にそれぞれ掲載された「遠隔操作盤(PCL0401)」(以下「使用商品A」という。)、Aカタログの11頁及び12頁並びにBカタログの14頁及び15頁にそれぞれ掲載された「遠隔操作盤」(以下「使用商品B」という。)及び「自動盤」(以下「使用商品C」という。)を掲げ、これら使用商品AないしCは、上記「遠隔測定制御機械器具」又は「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ、消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」の範疇に属すべき商品である旨主張している。
(2)上記主張の根拠として、被請求人は次のように述べている。
先ず、使用商品Aは、遠隔からのデジタルケーブル等の通信手段によって、測定された放水圧力の制御や測定された放水流量の制御等を行うための機械器具であるから、放水圧力制御用又は放水流量制御用の遠隔測定制御機械器具に分類される商品として「電気通信機械器具」中の「遠隔測定制御機械器具」に該当する。また、使用商品Aは、放水圧力・放水流量の自動制御など種々の制御を電子的に行うものであるから、「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」の側面を有し、制御プログラムを実行して消防ポンプや防災機器を制御する「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ」としての側面も有する。さらに、使用商品Aは、通話機能を有することから、「電気通信機械器具」中の「通話装置」にも該当する。
次に、使用商品B及びCは、使用商品Aのような極めて多数の測定・制御を行う機能を有するものではないが、全体のシステムの始動等を遠隔より行うことができる点では、「電気通信機械器具」の部類に属するものである。
(3)そこで、先ず使用商品Aについてみるに、Aカタログの9頁には「ラビット全自動消防ポンプ」と題する商品の写真が掲載され、同10頁には、「状況に応じて、自動吸水・手動放水・中継送水をワンタッチ切換。さらに、放水圧力制御・放水流量制御も自在に設定可能。」との表題の下に、操作パネルの写真と共にその説明がされている。
しかして、上記消防ポンプの写真によれば、該ポンプの上面に上記操作パネルと同一と思われる表示盤が付されていることが明らかであり、上記操作パネルの説明と併せ考慮すれば、上記操作パネルは上記消防ポンプの本体に組み込まれているものといえる。
そして、上記操作パネル自体には、「手動放水」、「自動吸水」、「中継送水」、「圧力制御」、「流量制御」、「電源」、「始動」、「停止」等の項目が表示されており、その説明として、「見やすく操作しやすいデジタル表示の操作パネル」、「タッチパネルを押すだけ。あとはマイコン制御の完全自動運転」等と記載されている。さらに、同10頁には、「筒先からポンプの運転を制御する筒先操作機能(要オプション)により筒先員の判断による効率的な運転・放水が可能。」、「通話機能(要オプション)により、筒先員とポンプ員との対話も可能。状況報告や行動要請などを瞬時に行えます。」、「遠隔操作盤(オプション)により、離れた場所からのポンプ操作が可能。」、「筒先操作・通話・遠隔操作の各機能はデジタルケーブル通信方式。配線は最小限で、メンテナンス性にも優れています。」等の記述がされ、「OPTIONAL」の項に使用商品Aの写真が掲載されている。使用商品Aの写真によれば、使用商品Aには上記操作パネルと同様の項目が表示されていることが明らかである。
さらに、「全自動・Eタイプ」のポンプが掲載されているBカタログの12頁には、「本機と同一仕様のオペレーションパネルをセットした遠隔操作盤(オプション)により、離れた場所からもポンプ操作が可能。」と記載されている。
以上によれば、上記操作パネルは、その目的、用途、機能、構成等に照らしても、上記消防ポンプを構成する一部品というべきであり、独立した商品としての「電気通信機械器具」の範疇に属する商品と認めることはできない。また、使用商品Aは、遠隔からのデジタルケーブル方式により、上記操作パネルを遠隔に設置したものにすぎず、その目的、用途、機能、構成等は全て上記操作パネルと同一であって、上記操作パネル同様、専ら上記消防ポンプの付属品としてその操作、制御を行うものというべきであるから、独立した商品としての「遠隔測定制御機械器具」と認めることはできない。
さらに、使用商品Aの制御がマイクロコンピュータにより行われるとしても、そのことによって直ちに使用商品Aが「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ、消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」であるとして、「電子応用機械器具」の範疇に属する商品ということはできない。なぜならば、使用商品Aは、上記消防ポンプの付属品ないしは構成の一部品にすぎず、独立した商品としてのマイクロコンピュータや電子制御装置ではないからである。このことは、現在、マイクロコンピュータにより動作が制御されている商品は数多あり、例えば、カメラや炊飯器の動作がマイクロコンピュータにより制御されているからといって、カメラや炊飯器がマイクロコンピュータや電子応用機械器具であるとはいえないことからも自明である。
同様に、使用商品Aが通話機能を有するとしても、それは使用商品Aに付随する一機能にすぎず、そのことのみをもって、使用商品Aが「電気通信機械器具」の範疇に属する商品と認めることはできない。
また、Bカタログの12頁及び被請求人のウェブサイト(乙第12号証)に掲載されている使用商品Aについても、Aカタログとほぼ同様の内容が記載されている。
(4)なお、被請求人は、使用商品Aは専ら消防ポンプのみに使用されるものでなく、消防車についての使用等の汎用性を有するものである旨主張しているので、この点について検討する。
被請求人は、使用商品Aは小型全自動消防車を紹介しているAカタログの17頁及びBカタログの20頁にも掲載されていると主張しているが、各カタログの上記頁によれば、掲載されている「操作盤」は、消防自動車の左右側板と消防ポンプ本体の3か所から全自動操作を可能とするために取り付けられている「全自動操作パネル」であるから、消防自動車の一構成部品であって、また、使用商品Aの左下部部分にあるスイッチ及び差込みジャックがないから、使用商品Aとは同一の製品とはいえないものである。
なお、Aカタログの17頁及びBカタログの20頁に掲載されている消防車の写真によれば、当該消防車に搭載の消防ポンプはその形状、構成からしてAカタログの9頁並びにBカタログの12頁及び13頁に掲載された全自動消防ポンプと同一の商品と認められ、また、上記操作盤は、当該全自動ポンプの操作パネルと表示を共通するものであるから、ポンプを自動操作させるための構成部品であるというべきであって、消防ポンプを積載した消防車において消防ポンプを遠隔から操作する必要から、該消防車の左右側面に設置されているとみるのが自然である。この点から見ても上記操作盤と表示を共通にする使用商品Aは、専ら消防ポンプの操作、制御のために使用されるものであって、消防ポンプの付属品というべきものであるから、使用商品Aは汎用性を有するものとは認め難く、被請求人の主張は採用することができない。
(5)以上のとおりであるから、使用商品Aは、「電気通信機械器具」中の「遠隔測定制御機械器具」又は「電子応用機械器具及びその部品」中の「消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用のマイクロコンピュータ、消防ポンプ制御用又は防災用機械器具制御用の電子制御装置」の範疇に属する商品ということはできない。
(6)次に、使用商品B及びCについてみるに、Aカタログの11頁及び12頁には、見開きで「全自動消火システム:文化財・設備」、「全自動消火システム:保安ポンプ」、「先進の全自動消火システムが文化遺産、公共施設を火災・延焼から守ります。」及び「始動?散水まで全自動運転!LPガスプラントに最適な低コストの設備です。」の表題の下に、消防ポンプ、遠隔操作盤(使用商品B)、自動盤(使用商品C)、バッテリー等の写真、システムフロー図、全自動消火システム<文化財・設備・保安ポンプ>主仕様等が掲載され、商品説明として、「常駐室等に設置された遠隔操作盤のボタンを押すだけでポンプが作動、散水を始めます。」、「自動充電器を標準装備。保安電力の保有装置を必要としません。」、「吐出圧力を現場に合わせて自在設定。散水量に応じて自動的にエンジン回転調整を行います。」、「エンジン始動時・停止時および真空ポンプ作動時それぞれに最適なエンジン回転に自動制御し、安全且つ確実な運転をします。」等の記述がされている。
そして、上記システムフロー図及び商品説明によれば、使用商品B及びCは消防ポンプと一体になって吸水、散水等の動作を行っているものといえるから、使用商品Aと同様、専ら消防ポンプの付属品として、その操作・制御を行うものというべきである。
なお、Bカタログの14頁及び15頁に掲載されている使用商品B及びCについても、Aカタログとほぼ同様の内容が記載されている。
したがって、使用商品B及びCは、独立した商品としての「遠隔測定制御機械器具」と認めることはできない。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人が本件商標を使用しているとする使用商品AないしCは、いずれも請求に係る指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」に属する商品とは認められないから、たとえ、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が本件審判の請求の登録前3年以内に使用商品AないしCについて使用されていたとしても、かかる本件商標の使用をもって、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る上記指定商品について使用していることを証明したものとは認められない。
その他、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について本件商標が使用されていることを認めるに足る証拠はない。
したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていなかったものといわざるを得ず、かつ、その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その指定商品中の上記商品についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)本件商標


審理終結日 2009-07-14 
結審通知日 2009-07-17 
審決日 2009-07-31 
出願番号 商願平11-69217 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
内山 進
登録日 2000-09-14 
登録番号 商標登録第4417762号(T4417762) 
商標の称呼 ラビット 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 
代理人 青島 恵美 
代理人 大房 孝次 
代理人 足立 泉 
代理人 谷山 尚史 
代理人 中田 和博 

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