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審決分類 審判 全部無効 商15条1項2号条約違反など 無効としない Y0942
管理番号 1203825 
審判番号 無効2008-890008 
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-29 
確定日 2009-09-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4767820号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4767820号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成15年4月24日に登録出願、第9類「コンピュータソフトウエア」及び第42類「コンピュータソフトウエアの設計・バージョンアップ,コンピュータソフトウエアの貸与」を指定商品及び指定役務として、同16年3月11日に登録査定がなされ、同年4月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。
1 請求の理由
(1)無効理由
(ア)商標法第46条第1項第3号について
本件商標は、その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたときに該当するから、商標法第46条第1項第3号により無効にされるべきものである。
(イ)不正競争防止法第2条第1項第1号について
請求人は、「Navel ネーブル」の文字を横書きしてなる商願2004一65460号商標及び別掲(2)のとおりの構成からなる2004一65461号商標を出願しているところ、被請求人による冒認出願により先登録された本件商標を理由に、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由通知を受けており、請求人にとって経時的、社会的及び経済的不利益を余儀なくされている。
したがって、本件商標は、不正競争の目的であって、かつ、不正の目的で商標登録を受けたものであるから、不正競争防止法第2条第1項第1号により当然に無効にされるべきものである。
(2)無効原因
請求人により出願された商願2004一65461号商標と本件商標とは、外観上は明らかに同一であり、このことに鑑みれば、請求人により発表された甲第4号証の出版物から盗用されたものと考えられる。被請求人は、元々、請求人と利害関係を有していたことに乗じて、このような登録商標を請求人に無断で出願したことは明らかである。
(ア)商標及び商品・役務の類似について
本件商標は、別掲(1)に示すとおりのものであって、このようなコンピュータグラフィックを用いた態様の商標は珍しいものであり、請求人が出願している別掲(2)の商標とは明らかに外観上類似するものである。
また、本件の指定商品等については、請求人の商標の指定商品等と販売並びに需要者が同一であり、指定商品及び指定役務についても同一ないし類似する商品等である。
(イ)請求人と被請求人との利害関係について
請求人である株式会社オメガビジョン(前身は有限会社オメガビジョン、以下同じ。)の代表取締役会長「鈴木美恵」(以下「鈴木氏」という。)及び株式会社オメガビジョンの代表取締役社長「関厚典」(以下「関氏」という。)の両名は、有限会社オメガビジョン設立前に、被請求人である赤城印刷有限会社の関連会社である有限会社バジルに勤務していた。鈴木氏は、副業による「自費出版」による同人誌活動を1994年以前より行っており、その後1997年10月時点で、鈴木氏の一愛読者であった森下岳士氏と森下富久子氏らと親交を深め、1998年12月迄には、森下氏の父親に当たる和雄氏の経営する赤城印刷有限会社を通じて、鈴木氏の同人誌を出版することとなった。その経緯から、鈴木氏の同人誌を含む版権に興味を示し、森下岳士氏がその後設立した有限会社バジルに鈴木氏を役員として招聘した。
鈴木氏を役員に招聘した後も、有限会社バジルは、ゲームソフト開発事業を主力にして、会社の存続を図ってはいたが、潜在化した社内的諸問題から、鈴木氏は2003年1月15日に退社することとなり、有限会社バジルも実質的に解散に追い込まれた。
その後、2003年2月26日に、有限会社バジルから独立したスタッフで、有限会社オメガビジョンを設立、同年3月25日に、有限会社オメガビジョンの有するPCゲームブランド「Navel」のオフィシャルウェブサイトを開設した。そして、同年3月29日に、キャラクター・コンテンツマガジン「マジキュー・プレミアム MARCH2003」(甲第4号証)を発売し、この号を皮切りに、各雑誌等媒体に、Navelの処女作であるPCゲームソフト「SHUFFLE!」の展開を開始した。
2003年4月24日に、赤城印刷有限会社から、「Navel(ロゴ)」画像を使用した商標登録出願がなされた。「Navel(ロゴ)」の制作による著作権は、有限会社オメガビジョンに帰属していたが、該出願の事実は、「Navel(ロゴ)」の制作元である有限会社オメガビジョンには一切知らされなかった。
2004年6月30日に、有限会社バジルの清算が開始された。清算人に関し、赤城印刷有限会社の代表である森下和雄氏から森下昌子氏に変更となり、その他に、清算人として名を連ねている森下富久子氏も当時有限会社バジルの役員の一人として登録されていた。また、森下富久子氏は赤城印刷有限会社の社員でもあった。
2004年8月に、有限会社バジルからアールビバン株式会社に対する提訴があり、同年12月に、有限会社バジルから関氏(前有限会社オメガビジョン代表取締役社長)及び鈴木氏(前有限会社オメガビジョン代表取締役会長)に対する提訴がなされた。
2005年3月に、請求人が当時有限会社オメガビジョン名義にて出願した商願2004一65460号及び2004一65461号の商標法第4条第1項第11号違反による拒絶理由によって、利害関係人であった被請求人である赤城印刷有限会社名義の登録商標を発見した。

2 弁駁の理由
(1)商標法第46条第1項第3号について
商標法第46条第1項第3号による規定を主張する理由としては、そもそも、本件商標は、その独特な形状から看取されるように、株式会社オメガビジョン社長、関氏発案によるロゴ・マークを明らかに冒用したものであるからである。本件商標は選択物にすぎないという被請求人の主張は、あくまでも一般論であり、このようなデザイン等の創作性が非常に顕著に表れているロゴであることを考慮し、本ロゴ制作がコンピュータ・グラフィックを駆使して制作されているものであることを踏まえると、本件商標が単なる選択物にすぎない等とする主張は、本件審判には必ずしも該当するものではなく、むしろ、冒用する側のモラルを含め、本来商標権者となる者に対して、その商標が帰属されていない事実を問題視しているものである。
よって、請求人としては、本来その出願によって、生じている予約承継をも含めた譲渡そのものが、特許庁への届け出等表見上は成されてはいないけれども、本来は、請求人名義で登録されなければならない事由があったものである。
したがって、こうした事態を踏まえて、商標法第46条第1項第3号の主張を行ったものである。
(2)不正競争防止法第2条第1項第1号について
不正競争防止法第2条第1項第1号による規定を取り上げているのも、そもそも、本件商標が冒用により利害関係者によって出願されているという事実、被請求人は、その後矢継ぎ早に訴訟による業務妨害を請求人に対し行っている事実、更に、被請求人は、これまで何ら商標権を正当に行使したという事実がないのが実情である。そのことから、商標法第4条第1項第19号には、新たな規定として、不正の目的をもって使用する場合にあっては、商標法無効審判を提起することができるものとされており、不正競争防止法第2条第1項第1号の不正競争行為と同様に、かかる不正競争行為への適用を期待するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
本件審判の請求は、以下に述べる理由から明らかに失当である。
(1)商標法第46条第1項第3号について
請求人は、本件商標の出願が恰も冒認出願であるかのように主張するが、そもそも、商標法の保護対象である商標は、特許法の保護対象である発明等とは異なり、創作物ではなく、選択物にすぎないから、特許法第33条に規定する「特許を受ける権利」のようなものは存在せず、あくまでも、商標登録出願により生じた権利が発生するのみであるから、請求人が主張するような冒認出願という概念は商標法には存在しない。
そして、商標法第46条第1項第3号所定の「その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき」とは、例えば、商標登録出願後に、その商標登録出願により生じた権利を他人に譲渡しているにもかかわらず、出願時の名義人のままで商標登録された場合や、商標登録出願後にその商標登録出願により生じた権利が譲渡されていないにもかかわらず、別人名義で商標登録された場合などのように過誤により無権利者に対して登録された場面を想定した無効理由である。
本件商標については、その出願が被請求人名義により平成15年4月24日付で出願された後に、その出願により生じた権利を請求人又はその他の者に譲渡した事実は一切存在せず、その結果、本件商標は、平成16年4月30日付で、商標登録出願により生じた権利を有する請求人名義で商標登録されたものであるから、何ら、商標法第46条第1項第3号の無効理由に該当するものではない。
(2)不正競争防止法第2条第1項第1号について
商標法第46条第1項各号では、商標登録の無効理由を限定列挙しているところ、そもそも、不正競争防止法第2条第1項第1号は、その無効理由に該当しない。また、本件商標の存在を理由として、請求人の商標出願が商標法第4条第1項第11号違反により拒絶されているとしても、何故に、その事実から、本件商標が不正競争防止法第2条第1項第1号所定の不正競争行為に該当するのか不明である。
さらに付言すると、本件商標の出願時において、請求人は、「Navel」の文字より構成される商標の使用を開始した程度であり、そのような商標が請求人の商標として需要者の間に広く認識されていたとは到底考えることはできないから、この点からも、本件商標を出願した被請求人の行為が不正競争防止法第2条第1項第1号所定の不正競争行為に該当することはあり得ない。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第46条第1項第3号所定の無効理由に該当するものではなく、また、不正競争防止法第2条第1項第1号により当然無効にされるものでもない。

第4 当審の判断
(1)商標法第46条第1項第3号について
商標法第46条第1項第3号の趣旨は、その商標登録が登録出願により生じた権利を承継しない者の登録出願に対して、誤って登録がされたときに、そのままにしておくのは不当であることから、そのような商標登録を無効にするものと解される。
これを、本件ついてみれば、被請求人が本件商標の登録出願をなし、同者が商標登録を受けているもので、この間、登録出願によって生じた権利の承継はなかったものと認められることから、本件商標の登録は、その登録出願により生じた権利を承継しない者の登録出願に対して、誤って登録がされたものということはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第3号に違反してされたものではない。
(2)不正競争防止法第2条第1項第1号について
商標法第46条は、商標登録が本条所定の無効理由に該当するときには、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる旨規定されているところ、同条第1項各号に掲げられた無効理由は限定的列挙であって、これらに該当しない限り無効審判により商標登録が無効とされることはない。
しかして、商標法第46条第1項各号によるも、不正競争防止法第2条第1項第1号は、無効理由として規定されていないから、この点についての請求人の主張は採用できない。
(3)なお、請求人は、弁駁書において、商標法第4条第1項第19号の規定の趣旨に触れつつ、不正競争防止法第2条第1項第1号の適用を期待する旨主張しているところ、無効審判においては、当事者が申し立てない理由についても審理することは可能である(商標法第56条において準用する特許法第153条第1項)。
しかしながら、当事者間の利害関係についての請求人の主張には、必ずしも明らかでない点も見受けられるばかりでなく、他の無効理由に該当するものとして審理するに足る充分な証拠も提出されていないから、職権による審理は行わなかった。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第3号に違反してされたものではないから、その登録を無効とすることはできない。また、不正競争防止法第2条第1項第1号により、本件商標の登録を当然無効となし得るものでもない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲



別掲(1)本件商標



別掲(2)商願2004-65461号商標





審理終結日 2008-10-10 
結審通知日 2008-10-15 
審決日 2008-10-28 
出願番号 商願2003-38444(T2003-38444) 
審決分類 T 1 11・ 6- Y (Y0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澁谷 良雄石田 清 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 杉山 和江
小畑 恵一
登録日 2004-04-30 
登録番号 商標登録第4767820号(T4767820) 
商標の称呼 ネーブル、ネーベル、ナベル 
代理人 石田 昌彦 
代理人 川原田 一穂 
代理人 森▲崎▼ 博之 

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