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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X20 |
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管理番号 | 1203793 |
審判番号 | 不服2008-17447 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-08 |
確定日 | 2009-08-20 |
事件の表示 | 商願2007- 78374拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの6方向の図で表された構成よりなり、第20類「保護帽収納掛け具」を指定商品とし、平成19年7月12日に立体商標として登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要旨 原査定は、「本願商標は、ヘルメット形状のものを保持することができるような物品の形状のみを表したものと認められるものであるから、これを本願指定商品に使用するときには、単にその商品の形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。 そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。 また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。 そうとすれば、その立体商標が指定商品との関係において、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものについては、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。 (2)本願商標は、別掲のとおり、四角い板状の平面基板から、2つの湾曲した保持形状の突起した部分を有しており、そして、当該部それぞれの接合ラインとも言うべき部分に沿って空いた、2つの穴が存在する立体的形状よりなるものである。 そして、指定商品との関係においては、2つの保持形状部分の湾曲が、一見して、保護帽(ヘルメット)の外表面の形状を意識したものであることを看取させ、その湾曲に合わせてヘルメットを収納する商品「保護帽収納掛け具」(ヘルメットラック)であろうことを、容易に理解させ得るものである。 また、請求人(出願人)提出の資料1、2及び4からも明らかなとおり、形状の詳細な部分においては相違があるものの、ヘルメットの外側の形状に合わせた湾曲部分を利用してヘルメットを収納する商品や、同じく資料3のヘルメットラックのように、左右の突起物を利用し、収納する商品を、複数の事業者が製造、販売していることからすれば、2つの保持形状部分は、特異な形状とはいい難く、また、見る者に特別な印象を与える形状ともいい難いものである。 さらに、本願商標構成中の2つの穴も、長方形がかった楕円の如き形状であり、特段、特異な形状というべきほどのものではなく、また、見る者に特別な印象を与える形状であるともいえないものである。 そうとすると、本願商標に係る立体的形状は全体として、本願指定商品の用途、機能から予測し難いような特異な形状や特別な印象を与える装飾的形状等を備えているものとはいい難く、需要者等にとっては、本願商標から、これらの保護帽を収納するための商品が一般的に採択し得る機能又は美感を感得し、当該商品の形状そのものを認識するにとどまるものと判断するのが相当であり、本願商標に係る形状自体が自他商品の識別力を有しているとも認めがたいものである。 (3)請求人の主張について (ア)請求人は、「本願立体形状は、ヘルメットラックとして、新規且つ斬新で極めて特異な形状、形態を有するものであって、従来のヘルメットラックの形状或いは構造とは似ても似つかない形状のものであることから、本願立体形状は、ヘルメット形状のものを保持する為に従来から使用されている物品の形状のみを普通に用いられる方法で表示したものでない」旨主張している。 しかしながら、商標法第3条第1項第3号の商品の品質、形状等を表示する標章とは、商品の品質、形状等を表示する標章として認識され得るものであれば足り、その標章が現実に使用されていることは、必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第76号判決参照)から、たとえ、本願商標と同一の形状からなる商品が存在しないとしても、本願商標をその指定商品に使用するときは、商品の形状を表したものと理解させるにすぎないこと前記認定のとおりである。 (イ)また、請求人は、(1)ヘルメットの国内に於ける製造販売実績は、日本安全帽工業会の平成19年度の統計によると、約600万個であり、そのうち、株式会社谷沢製作所の製造販売個数は全体の40%を超える約240万個となっている。一方、ヘルメットラックに関しても、同工業会の統計から推定すると平成19年度で1個掛けに換算して、約25万個が国内で製造販売されたものと判断されている。(2)出願人は、上記した株式会社谷沢製作所と本願商標出願に係る立体商標であるヘルメットラックについて平成12年3月に独占的供給契約を締結しており、以後現在まで、本願出願人が製造した当該ヘルメットラックを継続的に株式会社谷沢製作所に対して独占的に供給し、株式会社谷沢製作所は当該ヘルメットラックを独占的に国内で販売してきている。(3)過去3年間に於ける本願出願人が株式会社谷沢製作所に対して供給した当該ヘルメットラックの年間平均個数は142480個となっている。(4)株式会社谷沢製作所による、当該ヘルメットラックの年間販売数は、前記したヘルメットラックの国内に於ける年間販売推定個数に対して約57%の市場占有率を維持している事が理解される。などの取引状況を述べた上で、「ヘルメットラックの市場占有率から明らかな通り、本願に係る商標を有する当該ヘルメットラックは、当該特定の環境に関連した者の間で、広く周知になっている事は明白であり、その結果、本願に係る商標が自他識別能力を有している」旨主張している。 しかしながら、請求人の主張からすれば、ヘルメットラックの平成19年度における国内における製造販売数は、推定によるものであり、そこから算出された市場占有率も推定の域を出ないものと考えるのが相当であるから、本願商標に係る形状自体が自他商品の識別力を有していることを表す根拠資料とするには、十分なものとはいい難い。 また、請求人提出の資料9及び10からすると、本願商標における立体的形状と同じと判断し得る商品は、1個掛けの商品(ST#821R及びST#821RM)であり、それ以外の商品を含ませる、或いは1個掛けに換算した上で算出した数から出した製造販売数や占有率では、本願商標に係る形状自体が自他商品の識別力を有していることを表す根拠資料とするには、十分なものとはいい難い。 さらに、請求人(出願人)が製造販売したヘルメットラックは、株式会社谷沢製作所から、“エコラック”の名称で市販されていること、また、その宣伝広告も、資料9及び資料10によれば、その商品の写真とともに「独自の優れた形状により、収納するヘルメットの形を問わ(ない)」、「マーク部分も傷つけない」、ニュータイプのヘルメットハンガーであるとして、その商品の形状が優れた機能であることを宣伝広告していることからすると、これに接する取引者、需要者は、「エコラック」を自他商品の識別標識として捉え、本願商標に係る立体形状は、単に商品の形状として認識するにとどまり、それ自体が、商品の出所を表す識別標識として捉えることはないというべきである。 よって、請求人の主張はいずれも採用できない。 (4)してみれば、本願商標は、これをその指定商品である「保護帽収納掛け具」に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎないものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。 以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
<別掲> 本願商標 |
審理終結日 | 2009-06-22 |
結審通知日 | 2009-06-23 |
審決日 | 2009-07-07 |
出願番号 | 商願2007-78374(T2007-78374) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(X20)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今田 三男 |
特許庁審判長 |
内山 進 |
特許庁審判官 |
赤星 直昭 井出 英一郎 |
代理人 | 斉藤 武彦 |
代理人 | 畑 泰之 |