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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X25
審判 全部申立て  登録を維持 X25
審判 全部申立て  登録を維持 X25
管理番号 1200589 
異議申立番号 異議2008-900315 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2008-08-13 
確定日 2009-06-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5146211号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5146211号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5146211号商標(以下、「本件商標」という。)は、「PRINCESS」の文字を標準文字で書してなり、第25類「和服,帯,帯揚げ,帯揚げしん,腰ひも,腰巻,じゅばん,だて締め,だて巻き,長着,羽織,羽織ひも,はかま,半えり,腰帯,細帯,帯じめ,帯結び紐,帯芯,帯板,帯枕,袋帯」を指定商品として、平成19年11月27日に登録出願、同20年6月27日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要点)
(1)「京都きもの工房グループ」 の説明
商標法第4条第1項第10号及び同第19号の「他人」に該当する「京都きもの工房グループ」は、地域一番の振袖専門店を達成すべく全国各地のきもの販売店を会員(平成20年4月1日現在の加盟店36店)として組織された任意団体である(甲第5号証及び甲第6号証)。

(2)商標法第4条第1項第10号の該当性について
「PRINCESS」の文字よりなる商標及び「PRINCESS FURISODE」の文字よりなる商標(以下、両商標をまとめて「引用商標」という。)は、本件商標の登録出願の時に、日本国内において他人(京都きもの工房グル一プ)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。
本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

(3)商標法第4条第1項第19号の該当性について
本件商標は、他人(京都きもの工房グループ)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標である。
本件商標に係る出願人は、「京都きもの工房グループ」に無許可で、当該グループが使用する引用商標と同一又は類似する商標である本件商標について商標登録出願を行い、その後、当該事実に関する一切の告知及び合理的な説明をせずして「京都きもの工房グループ」を脱会している。
したがって、本件商標の登録出願は、本件商標が所定の指定商品等において未だ我が国において登録されていないことを奇貨として、不正の利益を得る等の目的のもとに出願されたものであることは明らかである。
しかも、引用商標は、振袖及び振袖関連商品との関係において品質等を直接的に示すものではなく、指定商品等との関係において造語の一類型に該当するものである。
当該事実からも本件商標は、不正の目的をもって使用するものであることが認められる(商標審査基準参照)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
出願人による、本件商標の登録出願は、信義則、ひいては社会公共の利益・社会一般の道徳観念に反するものであることが認められる。
すなわち、本件商標の出願人による登録出願の経緯は、上記(3)で述べたとおり、著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を求めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

(5)証拠関係
ア 甲第1号証(「PRINCESS mode FURISODE」を表題とするカタログ)の説明
甲第1号証は、「京都きもの工房グループ」の会員により全国の需要者に頒布された、振袖及び振袖関連商品に関する広告宣伝媒体である。
同号証は、需要者である振袖購買者層への訴求力及び好感度を向上させるべく、需要者層に適合させた著名人をモデルとした表紙及び内容により構成されたものとなっている。
ここで、甲第4号証(「京都きもの工房グループ」事務局が管理する買掛帳の写し)によれば、本願出願日前である平成18年(2006年)12月ないし平成19年(2007年)6月の間に、甲第1号証(甲第4号証の項目において「振袖Bブック(倖田)」に該当するもの)が120,000 部発行されている。
なお、同号証や、後述する甲第2号証、甲第3号証及び甲第9号証ないし甲第12号証は、「京都きもの工房グループ」の会員(会員が利用を認めた非会員を含む。)のみが共通に利用することができる販促ツール(カタログ)として用いられていたものである。
そして、当該販促ツールの、会員からの発注受付及び印刷業者への発注業務等は、「京都きもの工房グループ」の事務局が担当して行われていたものである(甲第4号証及び甲第5号証の第2章第2条、甲第6号証を参照)。
また、当該販促ツールは、約60万人の需要者層(年齢層及び性別により概ね限定される。)に対し、主としてダイレクトメ一ルにより頒布されたものである。
したがって、需要者層において、「京都きもの工房グループ」が使用する引用商標の認識度は、極めて高いものであることが理解できる。

イ 甲第2号証(「PRINCESS FURISODE」を表題とするカタログ)の説明
甲第2号証は、「京都きもの工房グループ」の会員により全国の需要者に頒布された振袖及び振袖関連商品に関する広告宣伝媒体である。
同号証は、需要者である振袖購買者層への訴求力及び好感度を向上させるべく需要者層に適合させた著名人をモデルとした表紙及び内容により構成されたものとなっている。
ここで、甲第4号証によれば、本件商標の出願日前である平成19年(2007年)7月ないし本件商標の出願日前までの間に、甲第2号証(甲第4号証の項目において「ベッキーリセパンフ」に該当するもの)が 45,663部発行(本件商標の出願日以降は 67,223部)されている。

ウ 甲第3号証(「PRINCESS FURISODE」を表題とするカタログ)の説明
甲第3号証は、「京都きもの工房グループ」の会員により全国の需要者に頒布された、振袖及び振袖関連商品に関する広告宣伝媒体である。
同号証は、需要者である振袖購買者層への訴求力及び好感度を向上させるべく需要者層に適合させた著名人をモデルとした表紙及び内容により構成されたものとなっている。
ここで、甲第4号証によれば、本件商標の出願日前である平成19年(2007年)11月6日 ないし本件商標の出願日前までの間に、甲第3号証(甲第4号証の項目において「長谷川潤振袖Aブック」に該当するもの)が25,881部(本件商標の出願日以降は 72,071部)発行されている。

不正の目的及びいわゆる公序良俗違反の理由
甲第7号証(平成20年(2008年)2月1日発行の雑誌「月刊ポップティーン」の写し)及び甲第8号証(京都きもの工房グループが取引先等に送付した平成20年4月14日付け報告書面)並びに甲第4号証(日付及び項目欄を参照されたい。)によると、本件商標の出願人である株式会社びわ桜及び株式会社貴善は、本件商標の出願日以前及び本件商標の出願日以降の2008年4月1日までの期間において、「京都きもの工房グループ」の会員であって、かつ、当該会員の下で引用商標を使用した振袖及び振袖関連商品の販売等を行っており、さらには、「京都きもの工房グループ」事務局に対して広告宣伝媒体であるカタログの発注を行っていた事実が明らかである。

(6)その他
甲第9号証ないし甲第12号証は、本件商標の登録出願日以降において、「京都きもの工房グループ」の会員により全国の需要者に頒布された、振袖及び振袖関連商品に関する広告宣伝媒体である。
ここで、甲第4号証によれば、これらの甲各号証が平成20年(2008年)4月末現在で次のとおり発行されている。
甲第9号証(Princess FURISODE カタログ〔甲第4号証の項目において「リアディゾン振袖 Bブック」に該当するもの〕)100,889部
甲第10号証( Princess FURISODE カタログ〔甲第4号証の項目において「振袖高級A4パンフ」 に該当するもの〕)65,264部
甲第11号証( Princess FURISODE カタログ〔甲第4号証の項目において「C パンフ」 に該当するもの〕) 80,700 部
甲第12号証( PrincessFURISODE Premium Version カタログ〔甲第4号証の項目において「振袖ダイジェストDM」に該当するもの〕)11,400部
以上より、本件商標の登録出願日以降もなお、引用商標は、他人(京都きもの工房グループ)の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であることが認められる。

(7)結び
以上詳述したように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものとして、同法第43条の3第2項の規定に基づき取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)手続補正書の取扱いについて
本件商標は、平成20年6月27日に設定登録がなされ、その商標掲載公報が同年7月29日に発行されたものである。
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、本件登録異議の申立てを同年8月13日に行い、同申立書には申立ての理由及び証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証の表示をしたが、その原本又は写しの提出をしていなかったので、同年12月12日差し出しの宅配便により、甲第1号証ないし甲第12号証の原本又は写しの補充を補正内容とする手続補正書を提出した。
しかしながら、上記手続補正書により補正された甲第1号証ないし甲第12号証の原本又は写しについては、商標法第43条の4第2項ただし書の規定により許容される所定の期間を経過していることから、職権により収集した資料として取り扱うこととする。

(2)証拠の認定
ア 甲第1号証
甲第1号証は、「PRINCESS mode FURISODE」を表題とする、振袖のセット買い上げ及び同レンタルセット等のカタログである。
同号証の表題および28頁右上に「PRINCESS mode FURISODE」、16頁に左上に「Princess style」の表記がある。
同号証裏表紙には、「あかね振袖館&振袖ギャラリーaim」と表されており、同人がカタログの発行者であることを想起させる。
同号証の発行日の記載は認められないが、裏表紙には「平成20年春 祝 成人式」「’07新作振袖300枚同時発表!!」の表記がある。
なお、同号証には、「京都きもの工房グループ」の表示はない。

イ 甲第2号証
甲第2号証は、「女の子はみんなプリンセス」「PRINCESS FURISODE」を表題とする、振袖のセット買い上げ及び同レンタルセット等のカタログであり、裏表紙にも同じ表題が表されている。
同号証の振袖を着たモデルの写真の大部分には、右下又は左下に、小さく「PRINCESS no.○○○」(○○○は、3桁の数字、以下同じ。)と表されている。
同号証表紙及び裏表紙下部に「きものにしむら」と大きく表されており、同人がカタログの発行者であることを想起させる。
同号証の発行日の記載は認められない。
なお、同号証には、「京都きもの工房グループ」表示はない。

ウ 甲第3号証
甲第3号証は、「女のコはみんなプリンセス」「Princess Furisode」を表題とする、振袖のセット買い上げ及び同レンタルセット等のカタログであり、裏表紙にも同じ表題が表されている。
同号証の振袖を着たモデルの写真の大部分には、右下又は左下に、小さく「PRINCESS no.○○○」と表されている。
同号証裏表紙下部に「京都ふりそで工房」と大きく表されており、同人がカタログの発行者であることを想起させる。
同号証の発行日の記載は認められない。
なお、同号証には、「京都きもの工房グループ」表示はない。

エ 甲第4号証
甲第4号証は、「京都きもの工房グループ」事務局が管理する買掛帳の写しと認められるところ、次の事実が認められる。
(ア)「平成18年度(第2期)買掛帳」の項に「日付 12 15 項目 振袖B(当審注:Bは、○で囲まれている。以下同じ。)ブック(倖田)あかね 数量 3,050」の表示がある。

(イ)「平成19年度(第3期)買掛帳」の項に「日付 10 19 項目 ベッキーリセパンフ きものにしむら 数量 1,400」の表示がある。

(ウ)「平成19年度(第3期)買掛帳」の項に「長谷川潤振袖Aブック」の表示がある。

オ 甲第6号証
甲第6号証は、「京都きもの工房グループ加盟店名簿」と認められるところ、「小売店名」として「1 京都ふりそで工房・神戸」、「8 きものにしむら」及び「10 振袖ギャラリーaim (株)あかね振袖館」等の表示がある。

カ 甲第7号証
甲第7号証は、雑誌POPTEENの2008年2月号(角川春樹事務所、2008年2月1日発行)の表紙、裏表紙、「京都きもの工房」の宣伝の頁の写しと認められるところ、2ページ目に「Princess」「FURISODE」の表示がある。
しかしながら、甲第7号証は、本件商標の登録出願後に発行されたものである。

(3)上記(2)で認定した事実から、「京都きもの工房」の加盟店である「京都ふりそで工房・神戸」、「きものにしむら」及び「振袖ギャラリーaim (株)あかね振袖館」が、振袖のセット買い上げ及び同レンタルセット等のカタログ(甲第1号証ないし甲第3号証)を発行したことは推認することができる。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、「京都きもの工房グループ」の表示はなく、また、一般の取引者・需要者は、いずれの者が「京都きもの工房グループ」の会員であるかを知らないというべきであるから、甲第1号証ないし甲第3号証のカタログを受け取った取引者・需要者が、当該カタログが「京都きもの工房グループ」又はその会員によるものであると理解することはないと解するのが自然である。
また、甲第1号証ないし甲第3号証が本件商標の登録出願日前に発行されたかどうかについては、甲第1号証ないし甲第3号証の発行日の日付が不明であるため、認定することができない。
この点について、申立人は、甲第1号証のカタログは甲第4号証の「振袖Bブック(倖田)」に、甲第2号証のカタログは甲第4号証の「ベッキーリセパンフ」に、及び甲第3号証のカタログは甲第4号証の「長谷川潤振袖Aブック」に、それぞれ該当すると主張し、併せて、甲第1号証が、120,000部、甲第2号証が、45,663 部発行(本件商標の登録出願日以降は 67,223 部)部発行及び甲第3号証が、25,881部(本件商標の登録出願日以降は 72,071部)発行された旨も主張する。
しかしながら、甲第1号証のカタログは甲第4号証の「振袖Bブック(倖田)」に、甲第2号証のカタログは甲第4号証の「ベッキーリセパンフ」に、及び甲第3号証のカタログは甲第4号証の「長谷川潤振袖Aブック」 に、それぞれ該当するとする主張を裏付ける証左は何ら提出されていないから、この点についての申立人の主張は採用しない。
また、仮に、この点についての申立人の主張を採用したとしても、甲第4号証が「買掛帳」であることよりすれば、同号証に記載されている「日付」は、発行日ではなく請求書の日付等であると解するのが自然である。
そうとすれば、甲第4号証によっては、甲第1号証ないし甲第3号証の発行日についての立証はされていないというべきである。
さらに、請求人は、甲第1号証ないし甲第3号証が、約60万人の需要者者層に対して、主として、ダイレクトメールにより頒布された旨主張する。
しかしながら、いつ、誰に対してダイレクトメールを頒布したか等具体的な頒布の状況については何ら主張および立証がされていないから、その主張は採用しない。
加えて、本件商標の登録出願前の「京都きもの工房グループ」の会員による使用時期は不明であること、「京都きもの工房グループ」の広告媒体がカタログに限定されていること及び甲第7号証、甲第9号証ないし甲第12号証は、本件商標の登録出願日以降に使用された広告媒体であること等をも併せ考慮すると、引用商標が本件商標の登録出願の時に周知性を獲得していたことを認めることはできない。

(4)商標法第4条第1項第10号及び同第19号の該当性について
上記(2)で認定した事実からすれば、引用商標が、本件商標の登録出願の時に、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に認識されていたと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反して登録されたものでない。

(5)商標法第4条第1項第7号の該当性について
商標権者と申立人が役員を務める「京都きもの工房グル一プ」又はその会員との間における本件商標の帰属に関する争いは、当事者同士の私的問題として解決すべきであって、公益を害すると評価すべき場合には当たらなというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでない。

(6)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項7号、同第10号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2009-06-01 
出願番号 商願2007-118940(T2007-118940) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (X25)
T 1 651・ 222- Y (X25)
T 1 651・ 25- Y (X25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 2008-06-27 
登録番号 商標登録第5146211号(T5146211) 
権利者 株式会社貴善 株式会社びわ桜
商標の称呼 プリンセス 
代理人 宮澤 岳志 
代理人 赤澤 一博 
代理人 赤澤 一博 
代理人 宮澤 岳志 

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