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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007890090 審決 商標
無効2007890089 審決 商標
無効2007890091 審決 商標
無効2007890094 審決 商標
無効2007890086 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y14
管理番号 1200477 
審判番号 無効2007-890087 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-19 
確定日 2009-07-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4911557号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4911557号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4911557号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成からなり、平成17年5月18日に登録出願され、第14類「貴金属,キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,時計,貴金属製喫煙用具」を指定商品として、同年10月12日に登録査定、同年12月2日に設定登録されたものである。

第2 請求人主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。なお、甲第9号証は、審判請求書に添付のものと弁駁書に添付のものとが提出されているため、前者を「甲第9号証の1」とし、後者を「甲第9号証の2」とする。)を提出した。
1 請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号及び同第5号により、無効にすべきものである。
(2) 無効原因
ア 商標法第4条第1項第7号について
(ア)本件商標は、請求人の会社創設者であるガボール・ナギー(以下「ガボール」という。)がデザインし請求人が製造販売してきたシルバージュエリーの要部を商標出願したものである。
請求人は、平成6年(1994年)にガボールのデザインによるシルバーアクセサリーのカタログを作成し、同7年(1995年)6月1日に米国おいて発行しているが、そこには本件商標と同一のデザインが立体形状として掲載されている(甲第2号証の1)。同デザインカタログは、平成13年(2001年)に米国において、著作権番号VA-1-091-208として国会図書館に登録されている(甲第2号証の2)。
別掲(2)の構成からなる「ハッピースカル」と称されるこの笑うスカルのデザイン(以下「引用標章」という。)は、ガボールの最も代表的デザインの一つであり、シルバーアクセサリー界で「スカル」といえば、このガボールのハッピースカルが第一番に登場する。
それは、数々のアクセサリー著名雑誌のグラビア写真からも明らかである(甲第3号証の1ないし6)。ガボールが死亡したときの特集記事では「追悼ガボール」、「Requiem for GABOR」の頁は一面をこのハッピースカルが埋め尽くし、あたかも、ハッピースカルがガボール自身のように装丁されている(甲第3号証の2)。ガボール亡き後も、ガボールはスカルデザインのカリスマであり、「スカル・キング」とも呼ばれている(甲第3号証の6)。したがって、需要者はこの「スカル」デザインを見ればすぐにガボールの製品と認識するのである。
本件商標と引用標章の立体形状を比較すれば、両標章が同一又は極めて類似していることは明らかである。
(イ)被請求人は、引用標章に係るデザインがガボールのものとして有名であることを知りながら、というよりは、その著名性を利用する目的で、請求人、あるいは、ガボールが平成11年(1999年)1月16日に死亡後、引用標章に係るデザインに関する権利を承継した妻マリア・ナギー(請求人の代表者、以下「マリア」という。)の許諾をとらずに、本件商標の登録を受けたものである。
なお、被請求人が、数年前より、インターネットサイト及び日本の提携ショップで引用標章のデザインを含む請求人のシルバー製品のコピー商品を販売しており(甲第4号証の1ないし3)、請求人は、多大な被害を被っている。
また、被請求人は、「被請求人の登録商標目録」(甲第5号証の1)にリストアップされているとおり、本件商標のほかにも同様に立体形状を平面図化した標章を12件も登録しているが、そのいずれもガボールのシルバーアクセサリーのモチーフを盗用していることは、同比較表(甲第5号証の2)を見れば一目瞭然である。
さらに、被請求人は、ガボールのデザインを立体商標として商標登録出願して、特許庁に拒絶されている(甲第6号証)。
(ウ)被請求人は、ガボールのデザインを盗用し商標登録を受けたのみならず、その登録商標13件を根拠として、請求人のシルバージュエリー代理店及び販売店14社に対し「請求人のシルバーアクセサリーのデザインが同商標登録の権利を侵害している。」という旨の見当違いの警告書(甲第7号証)を送付した。
さらに、被請求人が運営する「GABOR INC USA」(以下「ユーエスエー社」という。)のホームページ(www.GABOR-silver.com)(甲第4号証の1)の付属ページにおいて、「下記業者はGABOR INC USA(GIUSA)の商標権利を侵害している非公認業者です。GIUSA商品をお求めの場合には、GIUSA公認ショップよりお求めください。」と表記し、請求人の製品の販売店14社の名称・住所をリストアップし、その各名称部分に各販売店宛の上記警告書のPDFファイルをリンクするということをしている(甲第8号証の1及び2)。
(エ)このように、他人の製品のデザインを盗用して商標登録出願するというだけでも卑劣な行為であるにもかかわらず、その上、その不当に獲得した商標権をもとに正当な権利者を脅すという公正な取引秩序に反する行為は、許されるはずがない。
したがって、本件商標及び他の12件は、商標法第4条第1項第7号の不登録事由「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものであるから、同法第46条第1項第5号により、その登録を取り消されるべきものである。
なお、他の12件の登録商標についても、平成19年6月19日付けで登録無効審判請求を提出している。
イ 商標法第4条第1項第15号について
本件商標及びその他12件は、ガボールのデザインであることから、被請求人が指定商品に使用すると、請求人の製造販売するガボールの製品を雑誌等で知るシルバーアクセサリー需要者は、本件商標が付された商品が請求人のガボール製品であると誤認する可能性が極めて大きい。
被請求人は、自身の運営する会社のウェブサイト、提携ショップにおいてガボール製品のコピー品をあたかも真正品であるかのごとく宣伝し、販売しており、実際に市場において、製品の出所について大きな混乱がおこっている。
このように商品のデザインが創案者のものであると知られている又は創案者の特徴・個性を表すものとして需要者に強く印象づけられている場合において、その意匠デザインを他人が商標として使えば、需要者はその商標を付した商品はそのデザインの創案者の商品と関係があると思うのは当然である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の不登録事由にも該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人の前述行為及びその他一連の悪徳行為に対し、平成19年3月22日付けで「営業誹謗行為差止請求事件」の訴訟を東京地方裁判所に提起した(甲第9号証の1)。
2 平成20年3月19日付け提出の弁駁書
(1)本件商標は、前記1(2)ア(ア)で述べたとおり、ガボールが創作したシルバーアクセサリーのデザインをそのまま平面的なデザインとしたものである。
ガボールは、請求人を設立し、請求人を通じて彼のデザインしたシルバーアクセサリーを製造・販売していた。したがって、かかるデザイン(意匠)に係る権利が、ガボール及び請求人に帰属していたことは明らかである。
(2)被請求人は、本件商標の元になったシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)に対する権利が被請求人に帰属しており、したがって、本件商標の真の権利者であると主張している。
そして、本件商標のもととなったシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)に係る権利が被請求人に帰属する根拠として、次の2つの契約書を挙げている。
ア 「Gabor Nagy」(ガボール)と「Gaboratory International,Inc.」(ガボラトリー・インターナショナル・インク、以下「インターナショナル社」という。)との間の、平成10年(1998年)12月10日付け契約書(乙第2号証、以下「第1契約書」という。)
イ 「Gaboratory International,Inc.」(インターナショナル社)と「CDM Exchange Co.」(シーディーエム・エクスチェンジ・カンパニー、以下「CDM社」という。)との間の平成15年(2003年)9月5日付け契約書(乙第9号証、以下「第2契約書」という。)
(3)被請求人の上記(2)の主張は、根拠がない。
ア 東京地方裁判所平成20年2月27日判決(甲第9号証の2)について
本判決は、請求人が、ユーエスエー社及びその代表者であると自称している被請求人を被告として提訴した訴訟のうち、ユーエスエー社に対する訴訟の判決である。
ユーエスエー社は、適正な呼び出しを受けたにもかかわらず、応訴しなかったので、東京地方裁判所は欠席判決により、原告(請求人)の申立を認めた。
本判決は、本件商標を含む被請求人名義の商標登録13件全てが、商標法第4条第1項第10号(第15号のミスタイプ)及び同第7号に該当し、それぞれ、同法第46条第1項第1号及び同第5号に基づき無効とされるべき商標であり、したがって、このように明らかな無効理由のある商標権に基づきその権利を行使することは、本件の権利行使の態様からみて、虚偽の事実の告知あるいは流布として、不正競争防止法第2条第1項第14号の営業誹謗行為に該当するとして、当該権利行使行為(競争相手への商標権侵害の警告状送付行為)の差止めと、損害賠償を認めた。
なお、もう一人の被告(被請求人)については、領事送達を二度試みたが、二度とも正式の受領署名がとれず、現在東京地方裁判所が三度目の領事送達を試みているところである。
ユーエスエー社の代表者である被請求人(甲第6号証では、ユーエスエー社が本件商標の所有者であると述べており、ユーエスエー社は、実質的に被請求人と同一である。)が、上記(2)ア及びイの書証をもとに、自己が本件商標を含む13件の商標登録の正当な所有者であると主張して、裁判所で正々堂々と争わず、特許庁でのみ今回のような主張を行っているのは全く理解に苦しむといわざるを得ない。
イ インターナショナル社は、本件商標のもとになったシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)に関する権利をガボールあるいは請求人から取得していない。
インターナショナル社は、ガボールブランド事業の権利者でないことを認めている(甲第10号証の1及び2)。
請求人は、米国商標「GABOR」(以下「米国商標1」という。)、別掲3の構成からなる米国商標(以下「米国商標2」という。)及び別掲4の構成からなる米国商標(以下「米国商標3」という。)の不正出願/登録及び同商標並びにガボールのデザイン(意匠)の無権限使用の取消し、差止め等を求めて、平成15年(2003年)7月29日にインターナショナル社を米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提訴(以下「米国訴訟1」という。)し、同地方裁判所を通じて、平成16年(2004年)8月に当該訴訟につき、原告(請求人)、被告(インターナショナル社)間で和解(甲第10号証の1及び2)が成立した。
この和解で被告は、上記米国商標1ないし3を含む「GABOR」及び「GABORATORY」関連商標及びガボールのデザイン(意匠)に対する権利を有していないことを認めている。
和解契約書のポイントは以下の点である:
(ア)被告は、米国登録商標番号2696716号(審決注:米国商標1)を原告に譲渡すること(譲渡証書作成交付済-甲第10号証の2)(登録商標「GABOR」の原告側への譲渡)
(イ)被告は、米国特許商標庁に出願中の商標出願番号78/006129号(審決注:米国商標2)及び商標出願番号78/076328号(審決注:米国商標3)の出願を放棄すること;また、被告らは、「GABOR」若しくは「GABORATORY」の語句を含む標章、あるいは混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章の登録等は一切試みないこと(インターナショナル社商標出願の放棄)
(ウ)原告は、米国特許商標庁商標審判部に被告の出願の放棄を通知し、商標無効審判手続きを終了させるための手続をとること(商標無効審判申立の取下げ)
(エ)被告らは、原告の商標出願番号78/078466号「GABORATORY」(紋章デザイン付)、及びその他原告が「GABOR」若しくは「GABORATORY」の語句を含む標章の登録出願をすること及び原告による「GABOR」若しくは「GABORATORY」標章の使用に対し、反対せず、また異議申立てもしないこと(原告による商標登録及び商標使用に対し異議申立てをしないこと)
(オ)被告らは、被告自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも「GABOR」若しくは「GABORATORY」の標章あるいは混乱を来たすほどこれらの標章に酷似した標章を含んだ宝飾品、アクセサリーを一切提供、製造、ライセンス許諾、市販、販売あるいはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと(商標不使用の同意)
(カ)被告らは、被告自身、その承継人、ライセンシー、代理店のいずれも「原告のカタログ」若しくは「被告のカタログ」に描写されている商品と殆ど同一のものか、あるいは酷似しているために原告の製品を知悉しているバイヤーが、当該製品は当然、原告が製造したものと信じ込まれてしまう可能性のある宝飾品又はアクセサリーを一切、製造、ライセンス許諾、市販、販売あるいはそれらについての広告の掲載、頒布をしないこと(ガボールのデザイン(意匠)不使用の同意)
(キ)本契約の署名と同時に、被告らは、被告又はその関係会社、それらの従業員、役員が占有あるいは管理している被告のカタログに掲載されている宝飾品、アクセサリーも含め、ガボールのデザイン(意匠)に基づいている宝飾品、アクセサリーの製造に使用されていた、又は使用可能なオリジナルの金型及び生産用の金型をすべて原告代理人に引き渡すこと(金型の引き渡し)
上記の和解内容から明らかなように、被告(インターナショナル社)は、自社がガボール関連商標、デザインの所有者でないことを認め、商標登録の原告(請求人)への譲渡、商標登録出願の取り下げ、今後本件デザインを含む、ガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーを製造販売しないこと、金型を原告(請求人)に引き渡すこと等を約束した。
この訴訟において、第1契約書に基づく主張は一切なされていない。
請求人は、インターナショナル社が上記和解契約の約定を履行しないので、平成19年(2007年)7月19日、インターナショナル社らに対し、同和解契約の履行等を求めて、米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提訴した(甲第11号証)。
この訴訟において、請求人は、インターナショナル社が上記和解契約に違反して登録を受け、さらに、CDM社に名義変更した米国商標1ないし3の抹消を求めた。
また、請求人は、インターナショナル社が上記和解契約で約定した本件デザインを含むガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーの製造、販売の禁止も求めている。
この訴訟において、インターナショナル社は応訴せずに近々欠席判決が下される予定である(甲第11号証)。
当然のことながら、この訴訟において、第1契約書に基づく主張は一切なされていない。
請求人は、第1契約書のガボールの署名は自署でなく偽造と考えているが、原本による証拠調べが必要であり、写しでは証拠能力も証拠価値も全くないといえる(署名と本文をつぎはぎし、それをコピーすれば第1契約書の作成は可能である)。
もし、このまま欠席判決が下されれば、米国の裁判所により、上記商標登録は全て無効と認定され、米国特許商標庁がこれらの商標登録を取り消すことになる。その結果、これらの商標登録に基づく権利の主張は一切認められないことになる(甲第11号証)。
このように、被請求人が本件無効審判において自己の権利の根拠として主張する米国商標1ないし3の登録は、全て裁判所により無効と宣告されること明らかである。
第1契約書には、事業譲渡の対価の記載も、従業員、金型の引渡し等についての記載もなく、事業譲渡契約としては不完全であり、また、上述のようにガボールの署名も真正なものと思われず、この契約書が上記米国訴訟において一度も言及されていないことも考えると、証拠的価値は皆無といわざるを得ない。
ウ CDM社は、本件商標のもとになったシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)に係る権利をインターナショナル社から取得していない。
被請求人は、第2契約書により、CDM社が、インターナショナル社から本件デザイン(意匠)に係る権利を取得したと主張している。
しかしながら、インターナショナル社は、本件デザインに係るシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)の権利について、ガボールから取得をしておらず、無権利者から権利を取得することは有り得ない。
なお、第2契約書は、後述の訴訟(甲第12号証)において当事者適格を認める決定的な証拠となり得たにも拘らず証拠として提出されておらず、同判決後back dateで作成されたこと明らかであるが、たとえそれが真正なものであったとしても、無効な権利の譲渡であり、それによりCDM社が本件デザイン(意匠)に係る権利を取得することはあり得ない。
CDM社が本件デザイン(意匠)に係る権利をインターナショナル社から取得していないことは、米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所の判決により確定している(甲第12号証)。
CDM社こと被請求人は、請求人、マリア等を被告として平成19年(2007年)6月15日に米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に、商標権侵害、不正競争防止法等に基づき、「GABOR」及び「GABORATORY」関連の商標を使用したガボールのデザインにかかわるシルバーアクセサリーの製造、販売、広告等の禁止を求める訴訟(以下「米国訴訟2」という。)を提起した。
これに対し、請求人らは、平成19年(2007年)8月30日に、CDM社が商標及びデザインに係わる著作権(日本の意匠権に該当)に対する所有者でないことの確認の求め、請求棄却の申立て(motion)を提出した。
そして、上記連邦地方裁判所は、Trialを含む本案審理に入ることなく、平成19年(2007年)11月6日付け判決書をもって、CDM社は「GABOR」及び「GABORATORY」関連の米国登録商標の所有権者でないこと及びガボールがデザインしたシルバーアクセサリーにかかわる著作権(日本の意匠権に相当)の所有者でないことを宣告し、CDM社こと被請求人の訴えを棄却した。なお、被請求人は、20日以内に訴状を訂正の上、再出訴することが認められていたが、かかる再出訴期間内に出訴しなかったため本件訴え棄却が確定している。
この訴訟では、第2契約書は証拠として提出されておらず、裁判所により乙第6号証及び乙第7号証では、権利の譲渡を受けたことの証拠にはならないと指摘されて、判決後急遽、第2契約書を作成したものと思われる。
第2契約書にも、権利譲渡の対価の記載がなく、事業譲渡契約としては不完全といわざるを得ない。
いずれにせよ、CDM社は、本件デザイン(意匠)に対する権利者(所有者)ではないと米国の裁判所により判決が下され、同判決は既に確定している(甲第12号証に使用されているWith Prejudiceという法律用語は、本件につきCDM社(原告)には再出訴が許されないということを意味しており、本判決は20日間の不服申立期間が経過しており、すでに確定している。)。
エ 以上により、CDM社が本件商標のもとになったガボールの創作したシルバーアクセサリーのデザイン(意匠)の権利者であるという被請求人の主張は理由がなく、本件デザインに係る権利は、マリア及び請求人に帰属すること明らかである。
(4)結論
上記東京地方裁判所の判決で認定しているように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものである。
3 平成20年8月22日付け提出の弁駁書
本件商標のもとになった立体形状(デザイン)と同一のシルバージュエリーを日本で販売していたユーエスエー社の日本における総輸入販売代理店を相手とする商標権侵害差止等請求事件において、東京地方裁判所は、平成20年6月18日付けで、本件商標他11件の商標登録のもとになった立体形状(デザイン)の権利者は本件請求人であり、被請求人の関連会社が販売するシルバージュエリーは、請求人の周知な商品表示(デザイン)と同一のデザインのため出所の混同を惹起するとして、不正競争防止法第2条第1項第1号に基づき、当該輸入販売代理店に対し、本件商標のもとになった立体形状(デザイン)のシルバージュエリーをはじめとする10種類のシルバージュエリーの販売差止め及び損害賠償の支払いを命じた(甲第13号証)。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証(枝番を含む。)を提出した。
1 平成20年1月21日付け提出の答弁書
(1)事件の経緯
ガボールから一切の権利の譲渡を受けたインターナショナル社は、さらにCDM社の代表者である被請求人にガボールブランドのシルバーアクセサリーの商標権を含む一切の事業を譲渡した。マリアが日本において平成19年(2007年)に「GABOR」商標の登録を得た事を奇貨として、請求人が、本件無効審判を請求したものである。
しかしながら、請求人の主張は、以下に述べるとおり明らかに誤りであって妥当性を欠き、本件商標は何ら無効にされるべき理由はないものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人は、インターナショナル社と商品の販売契約を締結し、後に商標権を含む一切のガボール事業の譲渡を受けたCDM社の代表者である。
イ ガボールは、日頃、多量のアルコール摂取によりその死亡証明書(乙第1号証、同号証の1)記載のとおり、慢性の肝臓病を患い、病気により死期が迫っていることを知り、永年シルバー・ジュエリー製作の片腕であったスティーブ・ガーラック(以下「スティーブ」という。)が後継者になることを望んだ。
スティーブは、シルバーアクセサリーの職人であり、事業経営の経験も無く、事業を始める資金も無かったので、ガボールとスティーブの永年の友人であったマリオン・イエハンス(以下「マリオン」という。)に相談した。その結果、マリオンが新しい事業の財政と経営を引き受け、インターナショナル社をネバダ法人として設立し、スティーブは、シルバーアクセサリーの職人としてデザイン及び製作を担当して、ガボールとインターナショナル社の間に平成10年(1998年)12月10日付けで事業の譲渡契約が締結された(第1契約書)。
ウ ガボールの死後、インターナショナル社は、契約に従い、残されたマスター・ピース(原型)とその鋳型と職人達を引継ぎ、ガボールの妻マリアは、請求人を閉鎖した。
インターナショナル社は、米国特許商標庁に米国商標1ないし3を出願し登録を受けた。
エ 被請求人のCDM社は、米国及び日本における輸出・販売業者として、スティーブとマリオンのインターナショナル社と商品の販売に関し、平成15年(2003年)7月31日(乙第6号証、同号証の1)及び同年8月24日(乙第7号証、同号証の1)に契約を締結した。さらに、平成15年(2003年)9月3日の商標権譲渡契約(乙第8号証、同号証の1)に基き、同年9月5日(乙第9号証、同号証の1)にインターナショナル社の全ての商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾の譲渡を受けた。
オ CDM社は、インターナショナル社よりガボール・ブランドのシルバーアクセサリー商品の提供を受け、日本各地の販売業者にガボール・ブランドの商品の供給を継続し、契約に基づいて被請求人が日本にガボール・ブランドの各商品形状を商標登録したところ、マリアが閉鎖していた請求人を突然再開し、ガボールとの結婚証明書及び死亡証明書を日本特許庁に提出して法律上の相続人であると主張して、平成19年(2007年)に「GABOR」商標を日本に登録することを得た。
カ 日本及びアジア全域に亘る商標の使用、製造販売の独占権を取得したCDM社は、日本国内において、米国商標1ないし3を付したユーエスエー社製造のシルバーアクセサリーの商品を積極的に展開して広く周知させた。
キ 被請求人は、インターナショナル社所有であった米国商標1ないし3の商標権の譲渡を受け(乙第10号証ないし乙第12号証)、米国では名実共に商標権者となった。
そして、CDM社は、第2契約書に示すように、名実共にガボールのシルバーアクセサリー・ビジネスの商標権、著作権、製造権、販売権、顧客、事業の暖簾の承継人となった。
ク マリアは、単にガボールの妻としての相続人であり、米国においても日本においても、「GABOR」関連商標のシルバーアクセサリー事業の相続人ではない。
ケ 米国におけるGABORブランドの正当な商標権者であり、また、米国における正当なGABORブランド事業の継承者であるCDM社の代表者である被請求人が、商品を日本に輸出するに際し、デザインを商標登録出願すること及び登録されたGABORブランドの商標権に基づき商標権侵害者に警告を発するのは正当な行為である。
本件商標は、他人のデザインを盗用したものでなく、自社のデザインを商標登録したもので商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本号において、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいう。
米国におけるGABORブランドの正当な商標権者であり、米国における正当なGABORブランド事業の継承者である被請求人が、ガボールの真正商品を販売し、商標を全国的に周知させた。
本条に定める「他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある場合」とは請求人のことである。
イ CDM社は、日本において商標「GABOR」関連商標を周知せしめたもので、米国における商標「GABOR」関連の商標権者であり、商標「GABOR」関連事業の真の承継人である。
被請求人はガボールのデザインを侵害から守るため、立体商標として登録出願したが、立体商標の登録要件を充足しないとの理由により、商標法第3条第1項第3号により登録されなかったもので、ガボールのデザインを盗用したとの理由で拒絶されたものではない(乙第13号証及び乙第14号証)。
(4)まとめ
以上のように、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではない。
よって、本件審判の請求は成り立たない。
2 平成20年9月12日付け提出の答弁書
(1)本件商標のデザインについて
請求人は、本件商標のデザインに「係る権利」を観念し、これがガボール及び請求人に帰属していたと主張する。
しかし、本件商標のデザインは意匠登録されていないところ、当該主張が、デザインの周知性の帰属主体を論じているのであれば、このような帰属主体は請求人ではなくガボールである。
これは、本件商標のデザインが付された商品を含むシルバーアクセサリー等をデザインし、これを製造・販売していたのはすべてガボールであること、請求人の商品であるシルバーアクセサリーのブランド名が彼の名称をとって「ガボール」と称されていたこと、雑誌記事等でも、これら商品のブランド名は「ガボール」、「ガボールブランド」と称され(甲第3号証の1、同号証の2、同号証の5及び同号証の6)、請求人の名称に言及されることはなかったことから明らかである。
(2)ガボールブランドの事業の承継について
ア 事業譲渡契約(第1契約書)について
(ア)事業譲渡の動機について
ガボールは、事業譲渡契約書の作成された平成10年(1998年)12月以前より、慢性のアルコール中毒症状にあり、また、これに起因する、極めて治療困難な肝臓疾患である肝硬変を数年に渡って患っている状況にあり、医師からは、このまま飲酒を続ければ、近い将来に死に至るという警告を受けていた。
しかし、ガボールは、かかる状態となるに至っても飲酒を止めることはなく、むしろその度合いを深めていたため、病状はさらに悪化の一途を辿っていた。そして、これに伴って、ガボールブランドの経営や、シルバーアクセサリーの創作・デザインに対する意欲ないし気力を次第に喪失している状況にあった。
ガボールは、このような状況において、同人が最も信頼していたアクセサリー職人であり、また友人でもあるスティーブに対して、自分が死亡した場合には、同人がスティーブとともに発展させてきたガボールブランドを引き継ぎ、その事業を継続して欲しいという希望をもつようになっていた。
その一方、ガボールの妻マリアは、当時、ガボールと同様にアルコール中毒の状態にあり、また、ガボールブランドの事業ないし請求人の業務には、元来、全く関与しておらず、会社経営又はアクセサリー製造に関しても、何らの知識・経験を有していなかった。
したがって、少なくとも当時の状況において、マリアにガボールブランドを継承し、その事業を継続する能力はなかったのであり、ガボールの死後、シルバーアクセサリーの事業を継承していける人物は、事実上、スティーブのみであるという状況にあった。
そこで、ガボールは、近い将来に仮に自分が死去した場合には、ガボールブランドの事業をスティーブに引き継がせたいと考え、平成10年(1998年)の12月初旬、そのような意思を具体的に外部に表明・表示するため、遺言書(乙第15号証)を作成し、これをガボール製品のオリジナルの金型(乙第17号証)とともに、スティーブに託したのである。
なお、ガボールが、長年のアルコール中毒に起因する肝硬変を患い、これが原因となって死亡したという事実は、ガボールの死亡時に作成された、米国カリフォルニア州ロサンゼルス・パサデナ市厚生課作成にかかる死亡確認書(乙第1号証)において、同人の死亡原因として、「アルコール中毒(CHRONIC ALCOHOLISM)による肝硬変(LIVER CIRRHOSIS)」と記載され、その病歴について、「数年来(YEARS)」と記載されていることからも明らかである。
以上のとおり、ガボールが数年に渡ってアルコール中毒症状に起因する肝硬変を患っている状況にあり、医師からは近い将来に死に至るという事実を告げられていたことに鑑みれば、自らの死期を予感したガボールが、最も信頼する職人であり友人であるスティーブに対して、ガボールブランドを引き継ぎ、その事業を継続して欲しいと願うのは極めて自然な心情であり、ガボールには、スティーブに対する遺言書の作成及びその後の事業譲渡契約(第1契約書)を締結する十分な動機があったといえる。
(イ)事業譲渡契約書の作成について
スティーブと同様にガボールと数年来の友人であったマリオンは、上記遺言の内容を具体化し、ガボール死去の際に、ガボールブランドの権利承継を円滑に行い、将来的に第三者に対する対抗力を確保しておくため、ガボールと合意の上、遺言書(乙第15号証)の交付から間もない時期である、平成10年(1998年)12月10日に事業譲渡契約(第1契約書)を締結した。
当時、マリオンは、本業である建設業の傍ら、モータサイクルの製造を通じて知り合ったガボール及びスティーブと親交を深めており、時折、請求人におけるガボール製品の日本への輸出にかかる相手方との交渉や、その事務処理を行うなどしていた。一方、職人であるスティーブは、会社経営それ自体については、積極的な興味関心を有していなかった。
このような経緯から、遺言書により表明されたガボールブランドの事業の具体的な権利関係の処理についてはマリオンに託され、ガボールとマリオンとの間で、事業譲渡契約(第1契約書)が、締結されることとなったのである。
なお、当該契約書の当事者は、マリオンではなくインターナショナル社となっているが、これは、当時、マリオンが使用していたいわば屋号である。
そして、第1契約書は、マリオン自身が2通を作成し、スティーブ宅において、ガボールとの間で相互に署名の上、各自がその1通を保有した。
この点、請求人は、第1契約書に対価や従業員、金型の引渡し等についての記載がなく、事業譲渡契約としては不完全であるなどと主張するが、同契約書は、インターナショナル社がガボールブランドに関する事業を承継したことを第三者に対抗するために作成されたものであり、マリオンがそのために必要な最低限の内容を記載したからにすぎない。
また、対価である20万ドルについては、マリオンがその全てを支出し、ガボールに対して現金で交付し、これに対し、ガボールが領収書(乙第16号証)に署名したうえで、マリオンに交付した。
現金授受による取引は、米国のシルバーアクセサリー業界においては、商慣習といえるものであり、本件における事業譲渡契約の対価の現金授受もその慣習に従ったものである。
そして、20万ドルという対価は、基本的には当時のガボール製品のオリジナル金型の個数(100個以上)を根拠として算出したものである。同時に、ガボールは、仲間を大切にする人間で、親しい友人に対して感謝の念を表すために、贈り物をする習慣があったことから、マリオンは、事業譲渡自体が、遺言書(乙第15号証)に基づく、ガボールからの贈与であるという認識も有していた。
したがって、その対価は、当時のガボール製品のオリジナル金型の個数のみならず、かかる点も併せ考慮した上で決定された対価であった。
さらに、請求人が、ガボール及びパスカル・ザザ(以下「ザザ」という。)により平成6年(1994年)に設立された際に出資された金額が15万ドルであったこと(乙第19号証)からすれば、上記20万ドルの対価は、極めて妥当だったということができる。
(ウ)金型の承継について
スティーブないしインターナショナル社が、ガボールより、ガボール製品の製造のための生命線といえるオリジナル金型を承継し、所有していた事実は、当該事業譲渡契約に基づくガボールブランドの事業承継の事実を裏付けるものである。
現在は、CDM社の所有下にある金型(乙第17号証)がオリジナルの金型であることは、平成16年(2004年)8月の請求人とインターナショナル社との米国における極秘和解契約(甲第10号証)において、請求人自身がインターナショナル社に対して、オリジナルの金型の引き渡しを求めていること等からも明らかである。
しかも、仮に、第1契約書が偽造文書であり、事業譲渡が実際にはなされていないというのであれば、請求人は、オリジナルの金型をスティーブないしインターナショナル社が持ち去った時点で、当該金型を取り返すのが通常の対応というべきところ、事業譲渡後5年半以上が経過した上記極秘和解契約の締結時にその引渡しを求めるまで、何らの措置も採ってこなかった。
そして、インターナショナル社は、後記に述べるザザの脅迫があるまでは、オリジナルの金型を利用して、平穏無事にガボール製品の製造・日本への輸出を継続してきたのである。
(エ)署名の同一性について
請求人は、第1契約書の署名はガボール本人によりなされたものではなく、当該契約書は、偽造文書であると主張する。
そこで、被請求人は、ガボールの署名の真正を立証するため、平成6年(1994年)4月8日付けの請求人定款(乙第20号証)、同9年(1997年)8月9日付けでガボール及びワキサカ有限会社(以下「ワキサカ」という。)との間で締結された、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)を追加証拠として提出する。
上記各証拠の署名を検討すると、まず、請求人の定款(乙第20号証)の署名と、第1契約書及び領収書(乙第16号証)の署名は、いずれも特徴ある1番目の文字「g」、2番目の文字「n」、また3番目の「r」に似た文字の部分において、筆順及び筆圧がほとんど同一といえ、また、文字相互の間隔も同一である。また、上記定款(乙第20号証)の各署名と、遺言書(乙第15号証)の、不鮮明ではあるが、「n」と「r」の文字の部分の筆順及び筆圧は、ほとんど同一といえる。
また、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)の署名は、遺言書(乙第15号証)、第1契約書及び領収書(乙第16号証)の署名と筆圧においてやや異なるが、特長ある「g」及び「n」の部分における筆順や文字全体の形は同一であり、また、文字相互の間隔も同一といえる。
かかる点からすれば、第1契約書 、乙第15号証、乙第16号証、乙第20号証及び乙第21号証の署名は全て、同一人物により作成されたものであり、乙第20号証及び乙第21号証がガボール自身の真正な署名であることはもとより明らかであることからすれば、遺言書(乙第15号証)並びに第1契約書及び領収書(乙第16号証)の署名もまた、真にガボール自身により作成されたものというべきである。
なお、乙第20号証及び乙第21号証については、いずれも、一連の紛争が開始されるはるか以前の、ガボール存命中に作成されたものである。請求人定款(乙第20号証)は、米国州務長官の検印のあるものであり、これが真正に作成されたものであることに疑いの余地はない。
一方、「日本国における版権と商標に関する契約」(乙第21号証)についても、平成9年(1997年)に、ガボールと当時の日本の輸入代理店であったワキサカとの間で締結されたものである。当時、ワキサカが請求人の製品を日本に輸入していた事実には争いはなく、また、契約書それ自体の内容においても、何ら請求人ないしCDM社と利害関係を有するものではないから、当該契約書(乙第21号証)は真にガボールにより作成されたものであり、その署名も同人のものといえる。
したがって、乙第20号証及び乙第21号証は、いずれもガボールの真正な署名が記載された書面として、十分な信用性を有する。
この点、請求人は、署名と本文とをつぎはぎし、それをコピーすれば第1契約書の作成は可能であると主張する。
しかしながら、第1契約書 、乙第15号証、乙第16号証、乙第20号証及び乙第21号証の署名を比較すれば明らかなとおり、各署名は、それぞれ特徴的な部分において極めて類似してはいるが、これらを重ねても同一とはならない。
仮に、請求人の主張するように、事業譲渡契約書等が署名をつぎはぎして偽造されたものというのであれば、同一の署名があってしかるべきであるところ、それがないのは、各署名が全て真にガボールによりなされたからに他ならない。また、そもそも、遺言書(乙第15号証)の署名は、マーク上に重なってなされており、請求人のいうつぎはぎの方法による偽造は不可能である。
(3)原本不提出の点について
ア 請求人は、第1契約書の原本の取調べがなされなければ、その証拠能力も証拠価値も全くなく、また、原本の提出がないことが、同契約書が偽造文書であることの根拠の一つであると主張する。
イ しかしながら、仮にこれが偽造された文書であるとすれば、当初から、原本とされる文書の提出がなされてしかるべきである。すなわち、ある文書の成立の真正を主張する場合に、その原本を提出できないことは、一般的に、当該文書の提出者にとって、不利な事実認定がなされる可能性を高めるものである。
そうとすれば、偽造文書を作成した者が、その真正を偽ろうとする場合には、写しではなく、偽造文書の「原本」を提出しようと考えるのが自然であって、むしろ、偽造文書の「写し」を提出することは、偽造行為の目的自体を失わせしめるものである。
かかる傾向は、その文書の真正が事実認定において極めて重要な要素と認められる場合には、さらに顕著になるというべきである。
ウ また、本件のように、遺言書(乙第15号証)、第1契約書及び領収書(乙第16号証)の作成が、平成10年(1998年)12月とおよそ10年も前に遡り、相当以上の時間が経過している上、その作成場所が海外であるような場合には、当事者が、常に原本を提出できるとは限らないのであり、このような場合に、原本が提示されていない事実を、過度に重視すべきでない。
さらに、ある紛争が生じた場合、決定的な書証となる文書の原本が、これを提示されれば不利益を蒙る一方当事者により奪われる事態は、十分に発生し得ることであって、この場合、原本を奪われた当事者が、原本を提示できないために常に敗訴するとすれば、強奪等の不法行為を誘発することとなるのであり、不合理というほかない。
エ むしろ、重要なのは原本を提示できない理由である。
本件において、原本が提示できない理由は、以下のとおり、請求人の株主であったザザが、遺言書(乙第15号証)等の原本を保持していたマリオンに対し、マフィアないしギャング組織との関わりを背景にして、執拗に脅迫や嫌がらせを続けた上、すべての原本を同人から奪い取ったことにより、請求人は、これらの証拠の原本を入手できなかったというものである。
オ すなわち、マリオンは、遺言書(乙第15号証)や第1契約書等の作成後、これらガボールブランドの事業に係るインターナショナル社の権利を証する書面の原本を一括して保管していた。
インターナショナル社は、ガボールの死後、平成13年(2001年)5月29日に法人化し、さらに同年5月ないし7月の間に、米国商標1ないし3(乙第3号証ないし乙第5号証)の出願を行うとともに、ガボール製品の製造及び日本に対する輸出等を行っていた。
これに対し、マリアは、平成14年(2002年)頃まで、インターナショナル社によるガボール製品の製造・輸出等につき、何ら異議を述べることもなかった。
カ ところが、平成14年(2002年)になって、スティーブやマリオンに対し、ザザから、直接相対で、または電話やe-mailを通じて、「ザザに対して権利関係書類及びオリジナルの金型を引き渡すとともに、インターナショナル社の事業を中止しなければ、背後にあるマフィアないしギャング組織が、スティーブやマリオンの生命を奪うことになる。」旨の執拗な脅迫が開始されるようになった。かかる脅迫は、時に銃を用いて行われるほどの悪質なものであった。
さらに、平成15年(2003年)7月29日には、請求人からインターナショナル社に対する訴訟が提起され(乙第22号証)、また、ザザによるマリオンらに対する脅迫や嫌がらせも、継続して行われていた。
なお、このころ、ザザは、オリジナルの金型を強奪するため、インターナショナル社の工場に押し入ろうとしたため、ロサンゼルス郡特別機動隊(SWAT)により包囲されるという事件を発生させている(乙第23号証)。
キ このような状況において、マリオンは、当初こそ脅しに屈することなく事業を継続していたが、ザザによる度重なる脅迫に、生命の危険を感じるとともに、さらに訴訟追行に伴う費用の負担も大きかったため、平成16年(2004年)に至って、ついに、ザザに対して権利関係書類の原本を引き渡した上、上記訴訟において、全く真意に基づかない極秘和解契約(甲第10号証)を締結することとしたのである。
なお、オリジナルの金型については、平成15年(2003年)7月31日ないし同年9月5日に至る一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)でガボールブランドの事業がインターナショナル社からCDM社に譲渡された段階で、インターナショナル社からCDM社に引き渡されており、マリオンの手許には残っていなかった(乙第17号証)。
ク 本件における遺言書(乙第15号証)、第1契約書及び領収書(乙第16号証)の原本の提出が不可能となったのは、以上の理由に基づくものであるから、これをもって遺言書(乙第15号証)並びに第1契約書及び領収書(乙第16号証)の成立の真正を否定する根拠とはなし得ず、また、第1契約書の証拠価値を減殺するということはできない。
(4)請求人の主張に対する反論
ア 東京地方裁判所平成20年2月27日判決(甲第9号証の2)について
同訴訟において、ユーエスエー社が応訴していないのは、請求人の指摘するとおりである。
これは、被請求人が、ユーエスエー社が米国法人であり、日本の裁判所に管轄権が認められないことから、法的手続に則った適正な送達がなされていないと考えたからにすぎない。すなわち、被請求人としては、本案で争うまでもなく、同訴訟がそもそも訴訟要件を欠き却下されるべきものと考えていたのである。したがって、同訴訟において請求人からの請求を争わなかったのは、本件審判事件における被請求人の態度と何ら矛盾しない。
イ 極秘和解契約(甲第10号証)について
請求人は、平成15年(2003年)7月29日に米国カリフォルニア州連邦地方裁判所にインターナショナル社に対して提起した訴訟において、インターナショナル社が、第1契約書等を証拠として提出することなく、請求人との間で、平成16年8月に極秘和解契約(甲第10号証)を締結したことを指摘する。
しかし、そもそも当該極秘和解契約が締結されたのは、インターナショナル社がCDM社に対して平成15年(2003年)7月31日ないし同年9月5日に至る一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)で、ガボールブランドの事業がインターナショナル社からCDM社に譲渡された後である。すなわち、極秘和解契約当時、インターナショナル社は無権利者であったのだから、請求人がインターナショナル社より権利を取得することはない。
なお、インターナショナル社がこのような行為を行ったのは、ザザからの度重なる脅迫行為によりマリオンが生命の危険を感じるとともに、訴訟追行に伴う費用の負担が大きくなってきたためであり、真意に基づくものではない。
また、インターナショナル社は、CDM社に対しガボールブランドに関する事業を譲渡した後は、自ら事業を行っておらず、実質的な不利益もなかった。
このため、インターナショナル社は、やむなく真実と反する内容の和解を締結したのである。
また、ガボールブランドに関する事業を譲渡した後のインターナショナル社が、自己を当事者とする訴訟でそれほど熱心な態度をとらないことは十分ありうることであり、これが脅迫下にあればなおさらである。
したがって、同訴訟におけるインターナショナル社の対応が被請求人の提出する証拠の証拠価値を直接左右するものではない。
ウ 米国訴訟2に係る平成19年(2007年)11月6日判決(甲第12号証)について
請求人は、同訴訟において、第2契約書が提出されていなかったことをもって証拠価値がないと主張する。
しかしながら、第2契約書は、インターナショナル社及びCDM社が署名した有効な契約であって、同訴訟で被請求人が当該契約書を提出しなかったのは、乙第6号証及び乙第7号証の提出により立証が十分であると考えたにすぎない。
その後、被請求人は、連邦裁判所からの棄却判決が出された際、依頼していた弁護士より、請求人らが米国国内では侵害商品を販売しておらず、損害が発生したこととはならないため、いずれにせよ損害賠償請求をすることはできないなどの説明を受けた。
このため、被請求人は、不服申し立てをしたとしても、損害賠償を勝ち取れないのであれば意味がないと考え、そのまま何らの措置も採らなかった。
(5)商標法第4条第1項第7号について
ア 請求人は、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法第4条第1項第7号)に該当するとし、その根拠として、被請求人が、(ア)本件商標の著名性を利用する目的で、そのデザインを盗用して商標登録出願したこと、(イ)請求人の代理店及び販売店に対して警告書(甲第7号証)を発送したこと及び(ウ)ユーエスエー社のウェブサイトにおいて請求人の販売店を「非公認業者」と紹介し、同様の警告書を掲載したこと(ただし、上記警告書及びウェブサイトの作成名義はいずれも被請求人でなくユーエスエー社である。)が公正な取引秩序に反する行為であることを挙げる。
イ しかしながら、前記(2)において主張したとおり、ガボールによる遺言書(乙第15号証)及び第1契約書に基づき、ガボールの死亡した平成11年(1999年)1月以降、その事業及びこれにかかる権利のすべては、ガボール及び請求人からインターナショナル社に譲渡され、さらに同15年(2003年)7月31日ないし同年9月5日に至るインターナショナル社とCDM社との間の一連の契約(乙第6号証ないし乙第9号証)を通じて、インターナショナル社からCDM社に譲渡されたものであり、CDM社は、ガボールブランドに関する事業を行う正当な権利を有する。
他方、請求人は、インターナショナル社に対しガボールブランドに関する事業を譲渡した結果、これにかかる権限を失った。しかるに、請求人は、ガボールブランドに関する事業の利権を得るため、オリジナルの金型を保有しないにもかかわらず、ガボールブランドの製品を突如製造・販売するに至ったのであって、むしろ公正な取引秩序に反する行為を行っているのは請求人である。
そうとすれば、CDM社は、本件商標を使用する排他的な権限を有し、CDM社による本件商標の登録は何ら公序良俗を害するものではない。
この点、被請求人は、CDM社の代表者であるところ、会社の営業にかかる商標を代表者名義で商標登録することは一般的に行われることであり、特段の問題はない。
ウ 小括
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には該当しない。
(6)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、本件商標が、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」(商標法第4条第1項第15号)に該当すると主張する。
しかしながら、前記(2)のとおり、CDM社は、ガボールから、ガボールブランドに関する事業を承継したインターナショナル社より、平成15年(2003年)7月31日から同年9月5日にかけて、同事業及びこれにかかる権利のすべてを承継したのであるから、CDM社が本件商標を指定商品に使用しても、商品の出所につき混同を生ずるおそれはない。
過去の審決においても、出願人が商標の使用者から承諾を得ていたことを理由として、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがなく、本号に該当しないとした例がある(審判平1-11972)。
そして、CDM社の代表者である被請求人が本件商標を出願した場合も、同様に、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には該当しない。

第4 登録無効の理由の通知
当審において、商標法第56条第1項で準用する特許法第153条第1項の規定による当事者が申し立てない理由について審理したところ、審判長は、同第2項の規定によりその審理の結果を当事者に対し要旨以下のとおり通知し、意見を申し立てる機会を与えた。
1 本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおりの図形からなるところ、甲第2号証の1及び甲第3号証の1ないし6によれば、該図形は、請求人会社ガボラトリー・インクの創設者であるガボールのデザインに係るシルバーアクセサリー(ウォレットチェーン、キーチェーン、ペンダント、ペンダントトップ、リング、ブレスレット等)を構成する立体形状(請求人のいう「ハッピースカル」(別掲(2))を含め、以下、一括して「引用標章等」ということがある。)の一部を平面図として表したものと認められる。
そして、上記シルバーアクセサリーを掲載したカタログは、ガボラトリー・インクによって平成17年(1995年)6月1日に最初に発行されたものとして米国において著作権登録がされており(甲第2号証の2)、また、上記シルバーアクセサリーについては、我が国において本件商標の登録出願前に発行された雑誌にガボールのデザインに係るものとして写真と共に紹介されている(甲第3号証の1ないし6)。
特に、平成14年6月30日発行と認められる雑誌「シルバーアクセ完全FILE6」(甲第3号証の3)の64頁には、「没後は、妻のマリアが『ガボラトリーinc』を継承している。」と記述されている。同じく、雑誌「GETON! Silver 7(ゲットオン!シルバー7)」(甲第3号証の6)には、「スカールモチーフの魅力」と題する頁において、本件商標と類似するハッピースカルが用いられているシルバーアクセサリーの写真と共に、「スカルといえばガボール、といわれるほどのカリスマブランド。デザイナーのガボール・ナギー氏は、1998年に他界したが、妻のマリアがブランドを再稼働。現在でも信奉者が後を絶たない。・・・」との記述がされている。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)請求人及び被請求人の主張によれば、ガボールが平成11年(1999年)1月16日に死亡したこと(乙第1号証)から、上記1にいうガボールのデザインによるシルバーアクセサリーの立体形状(引用標章等)に係るデザインに関する権利をはじめ、ガボールが生前にデザインし請求人が販売していたシルバーアクセサリー製品(以下「ガボール製品」という。)やその販売権、商標権等の帰属を巡って両当事者間に争いが生じたことが認められる。
(2)被請求人は、引用標章等に係るデザインに関する権利をはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等については、平成10年(1998年)12月10日付け第1契約書によりインターナショナル社がガボールから譲渡を受け、さらに、平成15年(2003年)9月5日付け第2契約書によりCDM社がインターナショナル社から譲渡を受けた旨主張している。
また、被請求人は、インターナショナル社と商品の販売に関し、平成15年(2003年)7月31日付け契約書(乙第6号証)及び同年8月24日付け契約書(乙第7号証)を交わし、日本及びアジア全域に亘る商標の使用、製造販売の独占権を取得した旨主張している。
そして、乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第10号証ないし乙第12号証によれば、ガボール製品についての基本的な商標ともいえる、米国商標1ないし3については、米国においてインターナショナル社によって、平成13年(2001年)6月13日、同年5月29日及び同年7月30日にそれぞれ登録出願され、同15年(2003年)3月11日及び同18年(2006年)1月10日にそれぞれ登録され、その後、CDM社に譲渡され同19年(2007年)4月6日及び同月10日に譲渡の登録がされたことが認められる。
なお、乙第3号証ないし乙第5号証の訳文として提出された乙第3号証の1、乙第4号証の1及び乙第5号証の1は、原文には存在しない「最新の登記上の所有者」及び「譲渡記録」が記載されており、正確なものではない。
(3)しかしながら、第1契約書及び第2契約書に基づく被請求人の上記主張は、米国における一連の訴訟の経緯に照らすと直ちには首肯し難いものである。
すなわち、請求人は、インターナショナル社を被告として、米国商標1ないし3の不正出願/登録及び同商標並びにガボールのデザインの無権限使用の取消、差止等を求める米国訴訟1を平成15年(2003年)7月29日に米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提起したが、同裁判所を通じて同16年(2004年)8月に当該訴訟につき当事者間に和解が成立した(甲第10号証)。
当該和解契約書は、a)米国商標1のガボラトリー・インク(請求人)側への譲渡、b)インターナショナル社は、米国商標2及び3の出願を放棄し、米国商標1ないし3に酷似した標章の登録等を行わないこと、c)ガボラトリー・インクは、米国特許商標庁での商標無効審判申立を取り下げること、d)インターナショナル社は、ガボラトリー・インクによる商標登録及び商標使用に対し異議申立てをしないこと、e)インターナショナル社は、米国商標1ないし3及びこれらに類似する商標を使用しないこと、f)インターナショナル社は、ガボールのデザインを使用しないこと、g)インターナショナル社は、ガボール製品に係る金型をガボラトリー・インクに引き渡すこと、などを骨子とするものといえる。
請求人は、インターナショナル社が上記和解契約の約定を履行しないので、平成19年(2007年)7月19日に和解契約の履行等を求める訴訟を米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提起した(甲第11号証)。
他方、CDM社の代表者である被請求人は、平成19年(2007年)6月15日に請求人、マリア・ナギー等を被告として、米国商標1ないし3を根拠に商標権侵害等に基づきガボール製品の製造、販売、広告等の禁止を求める米国訴訟2を米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に提起したが、逆に被告からCDM社はガボール製品に関する商標及びデザインに係る著作権に対する所有者でないことの確認を求める請求棄却の申立てがされた結果、被請求人の訴えが棄却された(甲第12号証)。
これら米国における一連の訴訟の経緯からすると、インターナショナル社がガボールの生前に同人から引用標章に係るデザインをはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等を譲り受けたとする被請求人の主張は俄には信じ難く、むしろ、上記和解契約の内容からすれば、インターナショナル社はガボールから上記諸権利を譲り受けていないものと推認される。
そうすると、CDM社が米国商標1ないし3について登録簿上の名義人となっているとしても、元々権利を有していないインターナショナル社からCDM社又は被請求人が上記諸権利を取得することはないといわざるを得ない。
そして、上記被請求人が提起した米国訴訟2の判決(甲第12号証)においても、被請求人が当審において提出した乙第6号証及び乙第7号証の契約書によっては、被請求人はインターナショナル社から標章に係る権利の譲渡を受けたものとは認められないと認定されているのである。
また、CDM社又は被請求人が引用標章等に係るデザインをはじめ、ガボール製品関連の商標権、著作権、製造権、販売権等を譲り受けたとする根拠として重要といえるべき第1契約書及び第2契約書は、上記米国訴訟において証拠として提出されていない。
(4)以上を総合勘案すると、被請求人は、ガボール製品及び引用標章に係るデザイン等がガボール及び請求人に帰属するものであることを熟知した上で、引用標章が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、上記1のとおり引用標章の一部を平面図とした本件商標を、請求人に無断で剽窃的に登録出願し登録を受けたものというべきである。
(5)他方、ガボールのデザインに係るシルバーアクセサリーは、上記1のとおり、ガボール及び請求人の業務に係るものとして本件商標の登録出願前に既に我が国においても紹介されており、その特異なデザインとも相俟って、この種商品のマニアの間には相当程度知られていたものと推認されることから、該マニアが本件商標から上記シルバーアクセサリーを連想、想起する場合も少なからずあるものというべきである。
(6)そうすると、かかる被請求人の行為は、他人(請求人)の製品のデザインを当該他人に無断で商標として剽窃的に登録出願し、市場に無用の混乱を生じさせ、公正な商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効にすべきものである。

第5 請求人の意見
請求人は、前記第4の登録無効の理由の通知に対し何ら答弁をしていない。

第6 被請求人の意見
被請求人は、前記第4の登録無効の理由の通知に対して、要旨以下のように意見を述べるとともに、追加の証拠として、乙第24号証ないし乙第28号証を提出した。
1 登録無効の理由における事実認定の誤り
登録無効の理由に係る判断は、米国訴訟1及び2の理解が不十分であるため、結果として、事実認定を誤ったものであり、CDM社又は被請求人は、ガボールから事業を承継したインターナショナル社より、有効にガボールブランドにかかる事業を譲り受けたものである。
2 和解契約について
(1)はじめに
登録無効の理由の通知は、和解契約書の内容からすれば、インターナショナル社はガボールから上記諸権利を譲り受けていないものと推認されると判断するが、請求人がインターナショナル社を提訴したのは平成15年(2003年)7月29日、和解契約が締結されたのは同16年(2004年)8月であって、ガボールがインターナショナル社に対し、ガボール事業を譲渡した同10年(1998年)12月(第1契約書)よりはるかに後である。しかも、その内容は、後記(3)にて詳述するとおり、請求人がインターナショナル社に対し、7500ドルを支払うというものである。
したがって、このように、和解契約締結より5年以上前にガボール事業を譲り受けたインターナショナル社が請求人との間で締結した和解契約の内容が、譲渡後の事情を無視して、上記ガボール事業の譲渡そのものを否定することとなるという結論は、論理の飛躍というほかなく、根拠が不明である。
(2)和解契約締結の理由
ア インターナショナル社が和解契約を締結したのは、以下の理由によるものであり、むしろガボールからインターナショナル社に対するガボール事業の譲渡を裏付けるものである。
イ 米国訴訟1が提起された平成15年(2003年)7月の1年ほど前より、インターナショナル社代表者であるマリオンが、ザザから生命の危険を感じるほどの悪質な脅迫を受けていたことは、前記第3 2(3)カ記載のとおりである。
しかも、インターナショナル社は、米国訴訟1が提起される直前に、CDM社との間で、乙第6号証を締結したのを皮切りに、平成15年(2003年)9月には、ガボールブランドに関する事業を全てCDM社に譲渡したため(乙第7号証ないし乙第9号証)、和解契約締結当時、ガボールブランドに関して一切の権利を有しておらず、自らはガボール事業を行っていなかった。そのため、インターナショナル社は、和解契約締結当時、もはや、請求人からの提訴に対し全力で争い保全すべき権利そのものを有しておらず、米国訴訟1に対応する実質的理由を失っていた。
ウ 請求人からの提訴後、マリオンは、ザザによる脅迫の執拗さにいよいよ生命の危険を身近に感じ、加えて訴訟追行に伴う費用の負担が増加したため、訴訟追行に対する熱意を減少させていった。しかも、すでにCDM社に対して事業を譲渡していたインターナショナル社にとって、和解契約を締結することに実質的な不利益はなく、むしろ、和解契約は、請求人がインターナショナル社に対して7500ドルを支払うというインターナショナル社に有利とも言える内容であった(甲第10号証、審決注:甲第17号証とあるのは誤りと認める。以下同じ。)。
だからこそ、インターナショナル社は和解契約を締結したのであり、和解契約を締結した事実をもって、インターナショナル社がガボールからガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったことの根拠とすることはできない。
(3)和解契約の内容
ア また、和解契約の内容を見れば、むしろ、請求人自身、インターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたと認めていたことが見て取れる。
イ すなわち、和解契約において、請求人は、インターナショナル社らに対し、7500ドルを支払うこととしている(甲第10号証)。
この点、米国訴訟1は、登録無効の理由の通知が認めるところの無権利者たるインターナショナル社による商標権侵害等を理由として提起された訴訟であるが、事実インターナショナル社がガボールブランドに関して何らの権利も有していたことがないのであれば、和解に当たって、インターナショナル社が請求人に何らかの解決金を支払うことこそあれ、インターナショナル社が請求人から金員の支払を受けることなどありえない。和解契約が、完全な無権利者であるインターナショナル社が剽窃的に米国における各商標権を登録したのを、真の権利者である請求人が取り返すという前提事実の下でなされたものであるというならば、あえて請求人がインターナショナル社に対して対価を支払う理由など一切無い。
それにもかかわらず、和解契約において、インターナショナル社が対価を得ていたことは、和解契約締結当時、インターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたことを、請求人自身が認めていたことの重大な裏づけといえる。
(4)以上からすれば、和解契約締結の事実が、インターナショナル社がガボールからガボールブランドにかかる事業を譲り受けていなかったことの根拠とならないことは明らかであり、むしろ、和解契約は、その内容からすると、現にインターナショナル社が当該事業を譲り受けていたことの根拠とすらなるものである。
(5)なお、請求人が提起した和解契約の履行等を求める訴訟(甲第11号証)については、平成20年(2008年)6月10日、インターナショナル社及びマリオンに対して欠席判決が出されたものの(乙第24号証)、これに対し、マリオン及びインターナショナル社は、アメリカ合衆国カリフォルニア州中央地区裁判所に対し、当該欠席判決の取消しを求める申立てを行った(乙第25号証)。というのも当該欠席判決により、マリオンらは、本件和解契約の履行だけでなく、損害を賠償する必要が生じた(乙第24号証)ことから、取消をしなければ、マリオン自身大きな損害を負うこととなったためである。
当該申立ての結果、インターナショナル社の申立ては認められなかったが、マリオンの申立てについては、同人に対して適切な送達がなされていなかったとして、マリオンに対する欠席判決は取り消された(乙第26号証)。
そして、欠席判決が取り消されたことにより、請求人の請求の当否を判断すべく改めて実体審理が開始される予定であったが、請求人は、欠席判決取消後、実体審理に入り事案が解明されることを恐れたのか、平成20年(2008年)年11月13日、マリオンに対する全ての請求を取り下げた(乙第27号証)。
また、インターナショナル社は後記3で述べるとおり、平成17年(2005年)6月に解散していたのである(乙第28号証)から、上記和解契約の履行等を求める訴訟(甲第11号証)に対応することはできなかったものであり、また、欠席判決を執行することも事実上不可能である。
したがって、登録無効の理由の通知の指摘する当該米国訴訟も、ガボールからインターナショナル社に対するガボール事業の譲渡の事実を何ら左右するものではない。
3 米国訴訟2について
(1)登録無効の理由の通知は、米国訴訟2の判決において、「CDM社こと被請求人はインターナショナル社から標章にかかる権利の譲渡を受けたものと認められないと認定されている」ことも、CDM社ないし被請求人がガボールブランドに関する権利を有しないことの根拠の一つとしている。
しかし、上記認定は、証拠として第1契約書及び第2契約書が提出されていないことに基づくもので、そもそも本件とは事実認定の基礎となるべき資料が異なるため、本件における事実認定が米国訴訟2における判断に拘束される理由はない。そして、本審判手続において提出された証拠を検討すれば、前記第3 2(2)及び(3)において詳細に主張したとおり、ガボールブランドにかかる事業が、ガボールからインターナショナル社、さらに同社からCDM社に移転したことは明らかである。
(2)また、登録無効の理由の通知は、第1契約書及び第2契約書が米国訴訟2において証拠提出されていないことの不自然性を指摘するが、これも、前記第3 2(4)ウに記載した事情により証拠提出しなかったまでであり、何ら不自然な点は見当たらない。
同米国訴訟2において証拠として提出されたインターナショナル社・CDM社間の平成15年(2003年)8月24日付け契約書(乙第7号証)によれば、インターナショナル社に解散、通常業務の停止等の事象が生じた場合、インターナショナル社はCDM社に対して米国及び日本の商標権を与えることとされている(乙第7号証「権利の譲渡(TRANSFER OF RIGHTS」の項)ところ、インターナショナル社は、米国訴訟2の提起された平成19年(2007年)6月より以前の平成17(2005年)年6月1日に、「廃止(REVOKE)」となった(乙第28号証)。この「廃止」が法律上どのような状態であるか明らかではないが、少なくとも、この時点において、インターナショナル社が、乙第7号証における商標権移転の条件である、通常業務の停止状態にあったことは明らかである。
そして、乙第7号証の上記条項の規定に従えば、米国における商標権の所有権はCDM社に移転したこととなるため、被請求人の米国の弁護士は、立証上何ら問題ないものと判断し、乙第8号証及び乙第9号証については証拠として提出しなかったと思われる。
(3)したがって、米国訴訟2の結果及び証拠の提出経過も、CDM社のガボールブランドにかかる事業の譲受を否定する根拠とはならない。
4 結論
(1)以上より、CDM社によるガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う権利の承継を否定する根拠とならず、CDM社が同事業及びそれに伴う権利を有効に譲り受けたことは明らかである。
(2)したがって、被請求人が、「ガボール製品及び引用標章に係るデザイン等がガボール及び請求人ガボラトリー・インクに帰属するものであることを熟知した上で、引用標章がわが国において商標登録されていないことを寄貨として、」、「本件商標を、請求人に無断で剽窃的に登録出願し登録を受けた」ということはできない。
そして、有効に上記事業及び権利を承継したCDM社の代表者である被請求人が、自ら登録を受けた本件商標を根拠とし、請求人の代理店らに警告書を発するなどの措置をとることは、商標の権利者として当然の行為であり、何ら不当な点はない。
以上より、上記の被請求人の行為が、市場に無用の混乱を生じさせるものでもなければ、公正な商取引の秩序を乱す行為であるともいえず、国際信義に反するものでないことは明らかであって、本件商標が、商標法第4条1項7号に反して登録されたものであるとはいえない。

第7 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いが無く、当審も、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断するため、以下、本案に入って審理する。
2 前記第4の登録無効の理由の通知は、妥当なものと認められるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
3 被請求人の答弁及び登録無効の理由の通知に対する意見について
(1)被請求人は、「被請求人が代表者となっているCDM社が、ガボールの事業を承継した。」旨主張し、その証拠として、第1契約書、平成15年(2003年)7月31日付け契約書(乙第6号証)、同年8月24日付け契約書(乙第7号証)、同年9月3日付け契約書(乙第8号証)、第2契約書、遺言書(乙第15号証)及び領収書(乙第16号証)の各写し(以下、まとめて「契約書等の写し」という。)を提出している。
しかしながら、契約書等の写しについて原本の提示はなく、当該写しに対応する原本が実際に作成されたのか、さらに、手書きの部分が真実ガボールのものであるかを認めるに足りる証拠の提出もない。
また、被請求人は、契約書等の原本を提出できない理由として、インターナショナル社を設立したマリオンが、請求人の株主であるザザに権利関係書類の原本を引き渡したためである旨主張しているが、これを証する証拠の提出もない。
加えて、第1契約書についてみると、平成19年(ワ)第4876号判決(平成20年6月18日言渡(甲第13号証))中、「第2 事案の概要 2前提事実(1)当事者等」によれば、「ガボール(平成11年1月16日死亡)は、昭和63年ころから、自らの工房でシルバーアクセサリー等を製造し,これを販売してきた。平成6年に原告会社(審決注:本件請求人)が設立された後は,原告会社が,ガボールの事業を承継し,シルバーアクセサリー等を製造,販売していた。(争いのない事実,弁論の全趣旨)」旨の記載が認められる。
一方、被請求人は、平成20年1月21日付け答弁書において、「ガボールとガボラトリー・インターナショナル(審決注:ガボラトリー・インターナショナル・インクとあるのは誤りと認める。インターナショナル社の設立は、同13年(2001年)5月29日(乙第28号証)である。)間に1998年12月10日付けで事業の譲渡契約が締結された。」旨主張し、さらに、同20年9月12日付け答弁書において、「事業譲渡契約(乙第2号証)が、ガボールとマリオンとの間で締結されることとなったのである。なお、同契約書の当事者は、マリオンではなくインターナショナル社となっているが、これは、当時、イエハンスが使用していたいわば屋号である。」旨主張している。
そして、第1契約書には、第1段落において、「この(所有権)契約は、ガボール・ナギーと(“ナギー”)とガボラトリー・インターナショナル(“GI”)の間に1998年12月10日付けで作られ締結された。」、第5段落において、「・・・全ての権利、タイトル、全ての世界中の商標、著作権、製造、販売、オリジナルのシルバー原型・鋳型と、“ガボール”と“ガボラトリー”のマークによって象徴され、そして、そのマークの使用に関係する事業の暖簾を譲渡する・・・」との各記載及び署名の欄には、「ガボール・ナギー、プレジデント ガボラトリー・インク」との記載が認められる。
以上によれば、第1契約書に記載された1998年(平成10年)12月10日当時、ガボール製品に係る鋳型、著作権、事業の暖簾等の権利は、ガボールが専有するものではなく、少なくとも請求人と共有されていたと優に推認できるものであるが、第1契約書の第1段落における当事者の記載からは、請求人ではなくガボール本人が、マリオンが屋号として使用していたガボラトリー・インターナショナルと事業譲渡等について契約したものと認められる。
しかしながら、法人の権利に関する契約をする場合には、代表者個人名ではなく法人名を明記するのが通常といい得るものであるところ、たとえ、第1契約書の第2段落において、「ガボール単独で請求人のために、この契約を締結する全ての権限と権力を持っている。」旨の記載があり、署名の欄に請求人の名称が記載されているとしても、請求人の名称のもとではなく、ガボールが請求人に係る事業を他人に譲渡するというのはいささか不自然なものといわなければならい。
そうすると、請求人に係る事業等もマリオンに譲渡されたとは認めることができない。
以上のとおりであるから、契約書等の写しは、採用することができない証拠というほかない。
したがって、CDM社がガボールの事業を承継したと認めることはできない。
(2)被請求人は、「和解契約(甲第10号証、以下『米国和解契約』という。)が締結されたのは、(a)マリオンが、ザザから、生命の危険を感じるほどの悪質な脅迫を受けていたこと、(b)米国和解契約締結当時、インターナショナル社は、ガーボールブランドに関する事業の全てをCDM社に譲渡していたため、同社は保全すべき権利そのものを有しておらず、訴訟で争う実質的理由を失っていたこと、(c)契約内容が、請求人がインターナショナル社に対して7500ドル支払うという、同社にとって有利とも言える内容であったことによるものである。したがって、米国和解契約が締結された事実をもって、インターナショナル社が、ガボールからガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったことの根拠とすることはできない。」旨主張している。
しかしながら、(a)については、被請求人は、脅迫を受けていたとの主張をするのみで、その事実を証する書面等を何ら提出していない。
また、(b)については、仮に、インターナショナル社が、米国和解契約締結時において、ガーボールブランドに関する事業についてなんら権利を持っていなかったとしても、それによって、同社が、米国和解契約によって生ずる債務(米国商標1の請求人側への譲渡、米国商標2及び3の出願の放棄等)について、その履行を免れることができないことは当然である。
そして、インターナショナル社は、当該債務を履行できなければ、請求人から、債務不履行による損害賠償等の請求をされることについて十分に予測し得たはずであるから、被請求人の「訴訟で争う実質的理由を失っていた」との主張は、理解し難い。
さらに、(c)については、米国和解契約では、「請求人が、インターナショナル社に対して7500ドル支払う」という内容のみではなく、米国商標1の商標権の請求人側へ譲渡、米国商標2及び3の出願放棄等、インターナショナル社が負うべき負担についても定められている。
そうとすれば、米国和解契約の内容が、インターナショナル社にとって有利であったということは、一概にいうことはできない。
以上のとおり、米国和解契約締結の経緯に関する(a)ないし(c)の主張は、いずれも首肯し難いものである。
加えて、米国和解契約締結の際に、インターナショナル社が、自己にとって有利な証拠となる契約書等の写しの存在を主張していないのは不自然というほかない。
以上の点を、総合的に考慮すれば、インターナショナル社は、ガボールから、ガボールブランドにかかる事業及びそれに伴う諸権利を譲り受けていなかったために、米国和解契約締結時に契約書等の写しの存在を主張し得なかったとみるが自然である。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用することができない。
(3)被請求人は、「米国和解契約において、請求人は、インターナショナル社らに対し、7500ドルを支払うこととしている。米国和解契約が、完全な無権利者であるインターナショナル社が剽窃的に米国における各商標権を登録したのを、真の権利者である請求人が取り返すという前提事実の下でなされたものであるというならば、あえて、請求人がインターナショナル社に対して対価を支払う理由など一切無い。にもかかわらず、米国和解契約において、インターナショナル社が対価を得ていたことは、米国和解契約締結当時、インターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたことを、請求人自身が認めていたことの重大な裏づけといえる。」旨主張している。
しかしながら、米国和解契約で請求人がインターナショナル社に7500ドル支払うとされたこととインターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していたこととを結びつける理由は、米国和解契約書の記載において見いだすことはできない。
そうとすれば、米国和解契約において、請求人から、インターナショナル社に7500ドルを支払うとされたからといって、米国和解契約締結当時、インターナショナル社が、ガボールブランドに関する権利を有していたということはできない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用することができない。
(4)被請求人は、「米国和解契約の履行を求める米国での訴訟(甲第11号証)について、マリオンに対する訴訟は、請求人によって取り下げられている(乙第27号証)、また、インターナショナル社は、解散している(乙第28号証)から、当該訴訟をもって、インターナショナル社がガボールブランドに関する権利を有していなかったことの根拠とすることはできない。」旨主張している。
しかしながら、最終的にはマリオンに対する訴訟が取り下げられたとはいえ、当該訴訟の審理中に、マリオンが、自己にとって有利な証拠となる契約書等の存在を主張していないのは不自然であるというほかない。
そうとすれば、当該訴訟の経緯は、インターナショナル社が、ガボールブランドに関する権利を有していなかったと推論する根拠となり得るものである。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用することができない。
(5)被請求人は、「米国訴訟2において、被請求人の米国の弁護士が、『乙第7号証の「権利の譲渡」の項によって、インターナショナル社からCDM社に権利が譲渡されるので、立証の必要がない』と判断したため、乙第8号証及び第2契約書を提出しなかったと思われる。」旨主張している。
しかしながら、被請求人が、当該弁護士の判断について述べている内容は、被請求人の憶測にすぎないから、この点についての被請求人の主張は採用することができない。
(6)その他の被請求人の主張及び証拠をもってしても、上記2の認定を覆すに足りない。
4 まとめ
本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号に基づきその登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用標章


(3)米国商標2


(4)米国商標3


審理終結日 2009-01-26 
結審通知日 2009-01-28 
審決日 2009-02-19 
出願番号 商願2005-43308(T2005-43308) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y14)
最終処分 成立 
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 田村 正明
末武 久佳
登録日 2005-12-02 
登録番号 商標登録第4911557号(T4911557) 
代理人 中川 康生 
代理人 山嵜 進 
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