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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1200467 
審判番号 取消2007-301606 
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-12-07 
確定日 2009-06-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2476926号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2476926号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、第17類に属する願書に記載のとおりの商品を指定して、昭和52年2月21日に登録出願された昭和52年商標登録願第10967号に係る商標登録出願を分割し、新たな商標登録出願として、昭和63年12月5日に登録出願されたものであり、第17類「洋服、コ?ト」を指定商品として平成4年11月30日に設定登録され、その後、同14年9月10日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
また、指定商品については、平成16年6月30日に指定商品の書換登録がされ、第25類「洋服,コ?ト」と書き換えられている。
なお、本商標権については、専用使用権者を「田村駒株式会社」として、地域「日本全国」、期間「平成23年12月31日迄」、内容「全指定商品」とする専用使用権が平成19年1月16日付で設定登録されている。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第6号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて何等正当な理由が存することも認められないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
答弁書で示された証拠方法によるも、本件商標の使用事実は十分に証明されているとはいえない。
(1)通常使用権の設定について
答弁書によると、被請求人は、2001年11月10日、田村駒株式会社(以下「田村駒」という。)に対し、2002年1月1日から4年間、本件商標の使用について独占的通常使用権を設定し、かつ、田村駒はモリリン株式会社(以下「モリリン」という。)に対し、本件商標の通常使用権を許諾している(乙第2号証)。
しかしながら、当該契約書(乙第2号証)で使用許諾されている商標は、本件商標(第2476926号)ではない(乙第2号証最終頁参照)。
請求人の調べたところでは、被請求人は、世界的に本件商標を含め4タイプの鷲図形の商標を使用及び出願・登録している(甲第4号証)。
わが国では、このうちのA、B及びDタイプが出願・登録されており、本件商標は、Aタイプである。そして、契約書別紙の記載商標中の鷲図形は、明らかにBタイプである。
以上のように、少なくとも、提出証拠からは、特に本件商標に関する田村駒とモリリン間の通常使用権の許諾の存在について、強く疑問を感じざるを得ない。
(2)モリリンが本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることについて
(ア)使用の事実について
被請求人は、乙第4号証により、モリリンが2007年8月に、本件商標を付した商品を製造・販売したことが証明されている旨主張している。
しかしながら、乙第4号証については、被請求人がいうように、この証拠で2007年8月にライル&スコットブランドの商品「ブルゾン・ジャケット」の販売の事実は証明されているかもしれないが、これらの書類では、本件商標はどこにも表示されておらず、この証拠だけでは、本件商標の使用の事実は証明されていない。また、乙第3号証の写真の商標は、本件商標(Aタイプ)ではなく、Bタイプの商標であり、乙第3号証のカタログの提出のみで、これを来店顧客に頒布したとみるのは困難である。そして、これらの商品に付された商標は、後述するように、本件商標と同一性のある商標ではないから、これによっても、本件商標が商品「ブルゾン・ジャケット」に使用された事実は何等証明されていない。
(イ)本件商標と使用商標との同一性について
被請求人は、本件商標と乙第3号証で示した商標(以下「使用商標」という。)とがほぼ同一の図形からなり、同一の称呼及び観念が生じるものであるから、両商標は社会通念上同一の商標である旨主張している。
しかしながら、まず、図形商標の同一性を考察する場合において、同一の称呼及び観念(ここでは、犬の図形なら犬の、鷲の図形なら鷲の称呼及び観念が生じるというレベルの話である。)が生じるのは当然の前提である。
図形商標の場合、社会通念上同一といえるのは外観において同視される商標(50条1項括弧書)の場合のみであり、不使用取消審判における登録商標の使用の認定に関する運用(甲第5号証)に示すように、外観において同視される商標とは、登録商標の図形の構成態様自体は変えずに白黒を反転させたり、背景を付したりした場合である。一方、一定の観念を生ずる図形と当該観念を表すものと認められる図形による表示態様の相互間の使用は、社会通念上同一とは認められず、このように、図形商標の場合、その同一性の範囲は広くないのである。
上述のとおり、被請求人は、世界的に本件商標を含め4タイプの鷲図形の商標を使用及び出願・登録している(甲第4号証)。
本件商標はAタイプであり、乙第3号証の3の商標は明らかにBタイプである。このような同一の観念を生ずる図形商標相互間において、登録商標と表示・表現態様の異なるタイプの違う商標は、上記の運用基準に照らした場合、登録商標と外観上同視できる社会通念上同一の商標ということはできないと考えるのが妥当であり、しかも、このBタイプは、登録第4264323号として登録されているものであるから(甲第6号証)、乙第3号証の商標の使用は、登録第4264323号商標の使用なのである。
そうすると、乙第3号証に示す商標の使用を本件商標の使用として認めるのは、不使用商標対策の一つである連合商標制度の廃止の趣旨にも反することになる。
(ウ)以上のとおり、答弁書の使用証拠に示されている使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものでもなく、本件商標の使用の事実を証明しているものとはいえないから、被請求人提出の証拠によっては、被請求人等によって、審判請求登録前3年以内に本件商標が使用されたことは何等証明されていない。

第3 被請求人の主張(要旨)
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第15号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)通常使用権の設定
被請求人は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国に本店を有する外国法人であるところ、2001年11月10日、田村駒に対し、2002年1月1日から4年間、日本国内における本件商標の使用について独占的通常使用権を設定した(乙第1号証)。
さらに、田村駒は、モリリンとの間で、本件商標を付した商品の製造及び販売に関する契約(以下「本件契約」という。)を締結し、同社に対して本件商標の通常使用権を設定していた(乙第2号証)。
(2)本件商標の使用
本件商標は、審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、その通常使用権者又は専用使用権者によって、指定商品中の「ジャケット」について使用されている。
すなわち、モリリンは、審判請求の予告登録前3年以内である2007年8月に、本件商標を付した商品の製造・販売を行っている(乙第1ないし第10号証)。
(3)本件契約の内容
本件契約に基づく取引は、形式的には、田村駒がモリリンに対して、本件商標が付されたブルゾン・ジャケット(以下「本件商品」という。)の製造を委託し(本件契約第5条)、同社より原価で本件商品を仕入れて(同第10条第1項)、その原価に108%を乗じた価格で同社に再販売するというものであるが(同条第3項)、実質的には、モリリンが製造・販売し、本件商品の原価の8%のロイヤリティーを田村駒に対して支払うというものであった。
(4)モリリンが本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることについて
(ア)使用の事実
乙第3号証は、本件商品が掲載されたカタログであり、このカタログは、2007年8月初旬に、モリリンが展開している各店舗において消費者に頒布されたものであって、本件商品が掲載されている箇所の品番(「37584015」及び「37584016」)が乙第4号証の品番(「37584015」及び「37584016」)と一致していることから、乙4号証に表示された商品が本件商品であることが分かる。
そして、乙第4号証は、モリリンの田村駒に対する2007年8月の本件商品の実績報告兼請求書であって、表中の6行目及び7行目の記載によれば、モリリンは、田村駒に対して、同月に、「37584015」の品番の本件商品を800着及び「37584016」の品番の本件商品を921着納入しており、これは、実際には、同月、モリリンが本件商品を同数だけ製造・販売し、それによってロイヤリティーが発生したことを示している。
(イ)本件商標と使用商標との同一性
本件商標と本件商品の商標(以下「使用商標」という。)とは、ほぼ同一の図形からなり、同一の称呼及び観念が生じるものであることから、社会通念上同一の商標である。
すなわち、本件商標の外観は、一羽の左向きの鷲(猛禽類)が翼を高く上げ、口を開けながら、頭部をやや上部に向けて飛んでいるものである。鷲の特徴は、「嘴・爪はともに曲がり、両眼は鋭く、翼は長大」なことであり(乙第5号証)、また、猛禽類の特徴は、「他の鳥類や小動物を捕食し、上嘴は湾曲して鋭く、翼は強大で、飛行は迅速、足に鋭い鉤爪がある」ことである(乙第6号証)。
本件商標の鳥は、上嘴が湾曲して鋭く、眼が鋭く、翼が長大で、鉤爪が鋭く曲がっていることから、それが鷲(猛禽類)であることは一目瞭然である。
他方、使用商標についてみても、一羽の左向きの鷲(猛禽類)が翼を高く上げ、口を開けながら、頭部をやや上部に向けて飛んでいる点で同一性があり、また、本件商標と使用商標とは、羽、胴体、頭、足及び尻尾の大きさの各比率がほぼ共通し、羽を広げた角度も約45度と同一であって、さらに、本件商標と使用商標とはいずれも動感が無く、やや図案化されている点で同一性があることから、本件商標と使用商標とは外観においてほぼ同一の図形である。
また、本件商標と使用商標は、いずれも「鷲」・「イーグル」という称呼及び「鷲」という観念を生じる。これについては、被請求人のブランド商品が「鷲の紋章」、「イーグルの紋章」として一般需要者に広く親しまれていることがなによりの証左である。
被請求人のブランド商品は、全世界において幅広く販売されており、日本国内においても、「鷲の紋章」、「イーグルの紋章」を使用する唯一のブランドとして一般需用者に広く知られている(乙第7ないし第10号証)。
そして、上記で示したとおり、使用商標と本件商標とは、ほぼ同一の図形からなるものであるから、本件商標にとどまらず、使用商標についても、看者に「鷲」を観念させ、かつ、「鷲」、「イーグル」を称呼させ、ひいては被請求人のブランドであることを想起させることは明らかであることから、本件商標と使用商標の称呼及び観念は同一である。
(5)結語
以上のとおり、乙第1ないし第10号証によって、本件商標の通常使用権者が請求に係る指定商品中、第25類「ジャケット」について、審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において本件商標の使用をしていた事実は明白である。
したがって、本件審判請求には理由がない。

第4 当審の判断
(1)被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第1号証の1(英文)及び2(訳文)は、2001年11月7日に(幾つかある当事者間の署名の日付のうち、最も遅い日付のもの)、被請求人と田村駒との間において締結された実施許諾契約書である。これによれば、被請求人は、田村駒との間において、2002年1月1日から4年間、日本国内における本件商標の使用について独占的通常使用権許諾契約を締結しており、該契約書の16「終了」の項には、「いずれの当事者も、12ケ月前に書面で通知することにより、2006年12月31日以降いつでも、本契約を終了することができる。」と記載されている。そして、添付されている別紙1の「本件許諾製品」の中には、「上着」等の商品が記載されており、別紙2の「本件マーク」の中には、本商標権(登録第2476926号)の外、複数の商標権が表示されている。
乙第2号証は、平成18年10月20日付の「ライルアンドスコット製品の製造及び販売に関する契約書」と題する書面であり、前文には、「田村駒株式会社(以下甲という)とモリリン株式会社(以下乙という)とは、甲が英国ライル・アンド・スコット社(以下ライセンサーという)と締結したアグリーメント(以下実施許諾契約という)により日本における独占的製造販売権を有する『ライル・アンド・スコット』ブランド製品について、別紙に記載された商標(審決注 別掲(2)に示すとおりの構成からなる商標であり、以下『使用契約に係る商標』という。)を付した製品の製造及び販売に関し、次のとおり契約を締結する。」と記載されており、22条の契約条項からなっている。そして、第1条(製品)には、「乙は、使用契約に係る商標を付した下記のライル・アンド・スコットブランド製品のうち、乙が希望し、甲が次条以下の条件でこれを承諾する製品(以下『本製品』という)に限り、独占的かつ継続的な供給を甲に申し入れる事ができる。」旨記載されており、その製品名として「メンズニット・カットソー・ブルゾン及び事前に承認するその他商品」と記載されている。
乙第3号証は、被請求人の主張によれば、ブルゾン・ジャケットが掲載されたカタログとのことである(発行日の記載は確認できない)。表紙の左側中央部分には、使用契約に係る商標が表示されており(なお、使用契約に係る商標は、「LYLE & SCOTT」の文字の下には「COLLECTION」の文字が小さく書されているが、カタログに表示されている商標は、「COLLECTION」の文字ではなく「BLACK LABEL」の文字である)、その下には、「MORIRIN CO.,LTD.」と記載されている。また、表紙の右側中央部分には、使用契約に係る商標中の鷲の図形と思しき図形が表示されており、その下には、「2007 AUTUMN&WINTER COLLECTION」と記載されている。そして、カタログの3枚目の左側には、胸部分に別掲(3)に示したとおりの構成からなる商標が付されたブルゾンを着た人物の写真が「37584016」の品番や価格とともに大きく掲載されており、左肩には使用契約に係る商標も小さく表示されている。また、カタログの3枚目の右側には、該ブルゾン(37584016)の写真が他の商品写真とともに掲載されている。
乙第4号証は、2007年9月10日付の「ライル&スコット実績報告兼請求書」と題する書面であり、同年8月分の実績について、モリリン株式会社東京支店が田村駒に報告したものであり、報告内容の7行目には、商品名「バラクーダブルゾン」、品番「37584016」、製造数量「921」等が納入価格(製造原価)、納入金額とともに記載されている。
(2)上記において認定した事実を総合すれば、以下のように判断される。(ア)被請求人の日本国内における独占的通常使用権者と認められる田村駒から再使用権(通常使用権)を許諾されたモリリンは、本件審判の請求の登録(平成19年12月27日)前3年以内である平成19年(2007年)8月当時に、商品番号「37584016」のバラクーダブルゾン921着の製造実績を納入価格(製造原価)等とともに、田村駒に報告していたことを認めることができる。そして、このブルゾンの品番「37584016」は、乙第3号証のカタログの3枚目に掲載されているブルゾンの品番と符合していることから、該ブルゾンは、乙第3号証のカタログの3枚目に掲載されているブルゾンであったものとみることができる。
この点について、被請求人は、「田村駒とモリリンとの間で締結された本件契約に基づく取引は、形式的には、田村駒がモリリンに対して、使用契約に係る商標が付されたブルゾン・ジャケットの製造を委託し(本件契約第5条)、同社より原価で本件商品を仕入れて(同第10条第1項)、その原価に108%を乗じた価格で同社に再販売するというものであるが(同条第3項)、実質的には、モリリンが製造・販売し、本件商品の原価の8%のロイヤリティーを田村駒に対して支払うというものであった。」と述べている。
そうとすると、モリリンは、平成19年(2007年)8月当時において、乙第3号証に掲載されている別掲(3)の商標が付された商品番号「37584016」のバラクーダブルゾン921着を製造し、その全量であるか否かは別にしても、既に、該商品を販売していたものと推認することができる。
(イ)そこで、モリリンが該ブルゾン・ジャケットについて使用している商標が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについてみるに、乙第3号証の表紙部分に表示されている使用契約に係る商標(別掲(2)に示した構成からなる商標)が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かはさて措いて、乙第3号証の3枚目に掲載されているブルゾン・ジャケットに直接付されている商標(別掲(3)に示した構成からなる商標)が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについて検討する。
別掲(3)に示した商標は、周辺を黒く縁取りされた鷲と思しき図形からなるものであり、また、本件商標も別掲(1)に示したとおり、周辺を黒く縁取りされた鷲と思しき図形からなるものであるが、両商標は、仔細にみれば、首の向きや全体の姿勢に微妙な差異があるものといえる。
しかしながら、この両商標に共通する黒塗りの縁取りは、商標の構成からみた場合には、単なる輪郭線などとは異なり、鷲と思しき形状部分と縁取りの黒地の部分とが混然一体に構成されており、全体として、鷲をモチーフにしたワッペンの如き印象を与えるものであって、縁取り部分がその構成に与える影響は、決して小さくないものである。
そうとすると、両商標は、これを離隔観察した場合には、その微妙な差異は捨象され、いずれも鷲をモチーフにしたワッペンを表したかの如き構成の商標として理解・認識されるものであるから、モリリンがブルゾン・ジャケットに付して使用している別掲(3)に示した商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とみても差し支えないものということができる。
(ウ)次に、モリリンがブルゾン・ジャケットに付して使用している別掲(3)に示した商標の使用が田村駒とモリリンとの間で締結された乙第2号証の契約内容に含まれているものであるか否かについて検討する。
モリリンが該ブルゾン・ジャケットに付して使用している商標は、別掲(3)に示した商標であり、これは、乙第2号証の契約において、使用が許諾されている別掲(2)に示した商標とは異なるものである。
そして、乙第2号証の契約の前文には、「・・・別紙に記載された商標(別掲(2)に示した商標)を付した製品の製造及び販売に関し、次のとおり契約を締結する。」と記載されており、この文言のみからみれば、別掲(3)に示した商標の使用がその契約内容に含まれているものとはいえない。
しかしながら、該契約の第7条(製品見本等の提供)には、「乙は、本製品の製造に先立ち、商品見本を各2点、甲に無償にて提出し、その製造を開始する前に甲の書面による承認を得るものとする。乙が甲に提出する前項の見本は、本生産予定の商品見本のことをいう。」と記載されている。
この条項からみれば、田村駒(甲)は、モリリン(乙)による別掲(3)に示した商標を付したブルゾンの製造・販売を承認していたものとみることができる。そして、通常使用権の許諾は、口頭ないしは黙示の意思表示でも足りるものと解されていることからみれば、田村駒は、モリリンに対して、別掲(3)に示した商標の使用についても黙示的に再使用権(通常使用権)を許諾していたものとみるのが相当である。
(エ)そうとすれば、被請求人の日本国内における独占的通常使用権者と認められる田村駒から再使用権(通常使用権)を許諾されたモリリンは、本件審判の請求の登録前3年以内に、「ブルゾン・ジャケット」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたものということができる。そして、乙第3号証のカタログに表されている「ブルゾン・ジャケット」は、取消請求に係る指定商品に包含されている商品である。
(3)請求人の主な反論について
(ア)請求人は、「本件商標は、被請求人が使用・出願・登録している4タイプの鷲図形商標(甲第4号証)のうちのAタイプの商標であるのに対して、モリリンが田村駒から使用許諾されている商標(乙第2号証の最終頁に表示されている商標)は、Bタイプの商標であり、乙第3号証の商標もBタイプの商標であって、本件商標の使用ではない」旨主張している。
確かに、モリリンが田村駒から使用許諾されている商標は、別掲(2)に示したとおりの構成からなるものであるから、本件商標とは、その全体の構成において明らかな差異があり、鷲と思しき図形の構成においても差異があるものということができる。
しかしながら、当審において使用の事実を認定したのは、乙第3号証のカタログの3枚目の写真にある「37584016」の品番の付いたブルゾンに表示されている商標であり、これが本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標であることは、前記したとおりであるから、この点についての請求人の主張は採用できない。
(イ)請求人は、「乙第4号証の書類には、本件商標がどこにも表示されておらず、また、乙第3号証のカタログの提出のみで、これを来店した顧客に頒布したとみるのは困難である」旨主張している。
確かに、乙第4号証の書類には、本件商標の記載はないが、前記したとおり、乙第4号証に記載されている商品名と品番は、乙第3号証のカタログの3枚目に掲載されている商品及びその品番と符合しており、このことからみれば、モリリンは、乙第3号証のカタログの3枚目に掲載されている別掲(3)に示した商標を付したブルゾンの製造・販売をしていたものということができる。そして、乙第3号証のカタログに掲載されている商品の製造・販売が行われていたことからみれば、該カタログも顧客に頒布されていたものとみるのが自然である。
そうとすれば、請求人の主張は、いずれも理由のないものといわなければならない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、本件審判の請求に係る第25類の指定商品に包含されている「ブルゾン・ジャケット」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)使用契約に係る商標


別掲(3)ブルゾンの胸部分の商標


(色彩の詳細は原本参照)

審理終結日 2009-01-27 
結審通知日 2009-01-30 
審決日 2009-02-17 
出願番号 商願昭63-136247 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 1992-11-30 
登録番号 商標登録第2476926号(T2476926) 
代理人 影島 広泰 
代理人 鈴木 博久 
代理人 高柴 忠夫 
復代理人 知念 芳文 
代理人 牛島 信 
代理人 志賀 正武 
代理人 渡邊 隆 
代理人 稗田 直己 

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