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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X03
管理番号 1199186 
異議申立番号 異議2008-900183 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2008-04-24 
確定日 2009-05-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第5108014号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5108014号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5108014号商標(以下「本件商標」という。)は、「ノーブルボルドー」の文字を標準文字により表してなり、平成19年6月21日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類,香料類,つけづめ・つけまつ毛,化粧用コットン」を指定商品として平成20年1月25日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要点)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、結論同旨の決定を求めると主張し、その理由として要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第61号証を提出した。
本件商標は、片仮名文字「ノーブルボルドー」の標準文字からなるところ、その構成中「ボルドー」の文字は、ワインの著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理、統制されている世界的に著名な地名である。
本件商標は、厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「ボルドー」の高い名声、信用、評判にフリーライドし、前記原産地統制名称の高い名声、信用、評判の稀釈化を引き起こすものであるところ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するに適さないというべきであり、また商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、商標法第43条の3第2項に基づき、その登録は取り消されるべきものである。

3 本件商標の登録に対する取消理由
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)岩波書店1998年11月11日発行「広辞苑第5版」(甲第2号証)の「ボルドー【Bordeaux】」の項には、「フランス南西部、ガロンヌ川に沿う港市。葡萄酒の集散地。また、砂糖・ブランデー・綿織物などを産出する。ボルドー地方から産する葡萄酒。赤葡萄酒はクラレットとも呼ぶ。・・・」と記載されている。
(イ)三省堂1987年3月30日発行「コンサイス外国地名事典」<改訂版>(甲第3号証)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス南西部、ジロンド県の県都、港湾・工業都市。・・・ブドウ酒の輸出港として有名。・・・」と記載されている。
(ウ)柴田書店1982年5月20日発行「新版世界の酒事典」(甲第5号証)の「ボルドー(Bordeaux)」の項には、「フランスの代表的なぶどう酒の産地。・・・行政的にジロンド県産のものにかぎってゆるされる名称で、ジロンド県は最上級のぶどう酒を産するメドック、グラーブ、ソーテルヌ、サン・テミリヨンの四地区と、これにつぐポムロール、アントル、ドゥ・メール、コート、バリュスなどの地区に分かれている。・・・フランスのぶどう酒産出地域は、大きくボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの三地方に分けられるが、なかでもボルドー地方は量質ともに第1位で、フランス総生産量の実に3分の2を占め、年産約8,000万ガロンを産出している。この地方のぶどう酒は、ブケ(発酵と熟成過程でうまれる香り)、アロマ(ぶどうの品種による香り)、パルフュム(口にふくんだときの香り)がよく、酒質も色もひじょうにすぐれている。そのぶどう栽培地の土壌は、表面が粘土質で、その下に小石や砂の層があり、農作物の作付けにはむかないが、ぶどうの栽培には最適の条件を備えている。」と記載されている。
(エ)柴田書店昭和56年6月15日発行「洋酒小事典」(甲第6号証)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス西部にある世界的に有名なワインの産地。赤、白のワインを産し、赤ワインをクラレットと呼ぶ場合が多い。・・・」と記載されている。
(オ)早川書房1996年3月31日5版発行「ワインの女王」(甲第7号証)には、その表紙に「・・・ワイン生産地としてボルドー最大の特色は『シャトー・ワイン』が特有の制度として確立している点にある。・・・肝心かなめの点は、シャトーの持主がシャトー周辺の自己所有畑で、自らぶどう栽培に当たり、建物附属の醸造所でワインを造り、樽貯蔵し、自ら瓶詰めしたワインに限って、そのシャトー名を冠せるところにある。」「ボルドーを知らずしてワインを語るなかれ!」「繊細な香りと豊かなコク。酒の王にしてワインの女王。ボルドー・ワインに乾杯!」と記載され、その48頁には、「名酒となるはずのワインに他の地方のワインや質のおちるぶどうからつくつたワインを混ぜる不心得者が横行したし、今でもあとを絶たない。これを防ぐため、フランスではAC(Appellation Controllee)制度が生まれ、現在では他の国も見習いだしている。『原産地名統制呼称』とも訳されているこの制度は、一定の地域で、それぞれ法令の要求する条件(使うぶどうとか最大生産量など)を守ったものだけに、その地域名を名乗ることを認めるというものである。」と、69頁には、「ラベルに、この表示を地方名と組み合わせて表示することがー場合によっては表示してはならないことがーフランスではワイン生産者に義務づけられているが、この表示するしくみが、アペラシオン・コントローレ(Appellation d'Origine Controllee 略してAOCまたはAC)制度である。日本では『原産地名統制呼称』とか『原産地名管理呼称』と訳している。」と、71頁には、「これをボルドーでみると、まずAC『ボルドー・ワイン』がある。これは・・・ボルドー市を中心としたジロンド県内の広大な地域である。」とそれぞれ記載されている。
(カ)サントリー1998年12月1日発行「世界のワインカタログ1999by Suntory」(甲第8号証)には、「ボルドー」の見出しの下に「ボルドーの葡萄園は、ジロンド河の両岸とガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、銘醸地がひしめくフランスの中でも、質・量とも群を抜いて名高い地域です。ボルドーワインは恵まれた自然風土の中で育まれた複数の葡萄品種の組み合わせから生まれ、長い熟成期間を経て、繊細な風味と香りを身につけています。文字どおり、“ワインの女王”にふさわしい優雅な個性です。・・・ボルドーのワインは、原産地呼称統制ワイン-AOCが多く、フランス全体のAOC生産量の2割強を占めています。世界の産地の中で最も名高いボルドーといわれるゆえんです。」と記載され、ボルドーのAOCワインを生産している代表的ワインの地区として、メドック地区、グラーヴ地区、ソーテルヌ地区、サンテミリオン地区、ポムロール地区、フロンサック地区及びアントル・ドゥー・メール地区が紹介されている。
(キ)日本経済新聞社1996年9月30日発行「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(甲第9号証)には、PART3「ボルドー BORDEAUX」の見出しの下に、「ボルドーのワインについて語るならば、シャトーについて触れなくてはならない。ボルドーのシャトーは、文字通りの絢爛豪華な城館もあるが、ごく普通のワイン農家といった建物もあり、醸造所と考えた方がいい。シャトーが所有する畑から穫れたぶどうを自分のシャトーでワインにする。すなわちシャトー元詰めがボルドーワインの基本的考え方だ。」と記載され、Chateau Lafite-Rothschildシャトー・ラフィット・ロートシルト、Chateau Margauxシャトー・マルゴー、Chateau Mouton Rothschildシャトー・ムートン・ロートシルト、Chateau Lagrangeシャトー・ラグランジュ及びChateau Beychevelleシャトー・ベイシュヴェルが紹介されている。
(ク)ネスコ(日本映像出版株式会社)/文藝春秋1991年5月27日発行/発売「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(甲第10号証)の80頁には、「Bordeaux ボルドー」の見出しと地図が掲げられ、81頁には「・・・ボルドーはこの世で最大の上質ワイン産出区域だ。ジロンド県全体がワインづくりにかかわり、全部がボルドーなのだ。産出量はブルゴーニュをはるかにしのぎ、1983年には5億1,000万リットルを産した。・・・」と記載され、82頁には、「ボルドー 品質決定要因」の見出しの下に「ぶどう栽培・ワイン醸造にとってボルドー地方がもっている利点を数え上げるのは簡単だ。海に近く、河川が縫うように走っているため、気候が温和で安定し、大西洋側に森林があって強い潮風を遮り、降雨が少なく、基盤岩が豊富に無機物を含んでいる反面、表土は全般に全くやせており、多くの場合、非常に分厚い。」と記載されている。
(ケ)講談社昭和63年5月17日第1刷発行「世界の名酒事典」別冊「世界の名ワイン事典」(甲第12号証)の32頁ないし37頁において、ワイン大国フランスで昔から銘醸の地として名高い、ボルドーとブルゴーニュを取り上げ、両地方の歴史から、気候風土の違い、そして銘酒選びまでを紹介しており、32頁には「なぜボルドーとブルゴーニュか」の見出しの下に「このようなワインの王国でも、その代表格となると、やはり、ボルドーとブルゴーニュになってしまうのである。この二つの地方は、世界のワインの最高峰と目される極上物を頂点に、中級から下級に至るワインを産出しているが、・・・これらの二つの地方はその赤ワインのタイプが際立った対照をなしていて、『ワイン』そのものの指標的存在となっているということである。また、白ワインも同様にブルゴーニュは辛口、ボルドーは甘口が世界の模範的存在になっている。」と記載されている。
(コ)講談社昭和55年5月30日第1刷発行「世界の名酒事典'80改訂版」(甲第13号証)の160頁には、「ボルドー・ワインの特徴」の見出しの下に「ボルドー・ワインとは、ジロンド県内の十三のぶどう栽培地域のいずれかで、A・O・Cの規定にもとづいてつくられたワインをいう。それ以外の地域でつくられたワインをブレンドしたものは、ボルドー・ワインを名のることはできない。十三のぶどう栽培地域は、1(丸付き数字)メドック、2(丸付き数字)グラーヴ、・・・。ボルドーが世界に誇るワインのほとんどは、ここで生産される。」と記載され、次頁には、メドック地区のワイン、サンテステーフ村のワイン、格付け特選銘柄の一覧表及び具体的製品の紹介が記載されている。そして、ほぼ同様の内容が講談社発行「世界の名酒事典」の'82-'83年度版、'84-'85年度版、'87-'88年版、'90年版ないし2000年版及び2002年版(甲第14号証ないし甲第28号証)にも記載されている。
(サ)申立人のインターネットホームページ(http://japon.vins-bordeaux.fr/)(甲第29号証)には、最新ニュース、イベント&プロモーション、ボルドーワインの知識及びデータベースの各項目が掲載され、「最新ニュース ボルドーワイン2001年の輸出動向」の見出しの下には、「輸出先7位の日本(13万hl)は、97年に急増したあと、98年に急減。2000年からは安定した伸びを示し、2001は数量ベースで8%の増となった。」との掲載がある。
(シ)読売新聞社1986年4月17日発行「The一流品 決定版」(甲第32号証)の250頁には、「FRENCHWINEフランスワイン」、「ボルドー地区」の見出しの下に、「ボルドー地区は、大西洋に面した南西フランスに位置し、世界で最も広大なぶどう栽培地帯である。ジロンド河、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、ここでできる赤ワインは“クラレット”と呼ばれるワインの女王と称賛される。鮮やかな紅色が特徴。ボルドーワインで登場するのがシャトー。城というより、ぶどう園全体を指している。一八五五年に地域、畑(シャトー)別に格付けが決められ今日に至っている。」と記載され、以下に各シャトーのワインが紹介されている。そして、読売新聞社発行「The一流品」のPART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)の各誌にも同様の趣旨の記載がある(甲第33ないし第35号証)。
(2)上記認定事実によれば、「BORDEAUX」及び「ボルドー」の語は、フランス南西部の地名であり、フランスの代表的なぶどう酒の産地であって同地で作られるぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、ぶどう酒について世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍及び雑誌などにおいてボルドーについての説明がなされていること、世界の名酒事典及び一流品を紹介する雑誌などにおいてボルドー産の具体的製品が紹介されていること、我が国の2001年における「ボルドー地方で作られるぶどう酒」の輸入量が世界第7位で13万hlと多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願時には既に「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていたというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものというのが相当である。
(3)次に、「BORDEAUX」及び「ボルドー」の名称の保護に関しては、上記認定事実のほか、フランス食品振興会(SOPEXA)1987年発行「フランスのワインとスピリッツ」(甲第4号証)によれば、その18頁及び19頁において、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(ア)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(イ)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)(ウ)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(エ)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、また、同書の20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「フランス西南部(ボルドーを含む)」が記載されていることが認められる。
さらに、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット(甲第11号証)、フランス国原産地統制名称の国際的保護のためのINTO(Institut National des Appellation d'Origine)のアクションに関するメモ(甲第30号証)及び1935年7月30日付けフランス国政令「原産地統制呼称法」抜粋(甲第31号証)によれば、フランスでは、1935年に原産地統制名称法を制定し、上記INAOは、原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること、INAOは、申立人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていることなどが認められる。
(4)一方、本件商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「ノーブル」の文字が、「高潔な、気高い、高貴の」の意味を有する英語「noble」に由来する同義の外来語として知られているものであり、また、全体として既成の観念を有する一連の熟語として親しまれているものとはいえないから、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情は見当たらない。
(5)以上を総合勘案すると、本件商標は、「ノーブル」と「ボルドー」の二語からなるものとして認識し把握され、しかも、「ボルドー」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味する語として登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の気候、風土を利用して優れた品質のぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、著名な「BORDEAUX」及び「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

4 当審の判断
当審において、商標権者に対し、上記3の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。
そして、上記3の取消理由は妥当なものと認められるので、本件商標の登録は、この取消理由により、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2009-03-26 
出願番号 商願2007-63733(T2007-63733) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (X03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 井出 英一郎 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 杉山 和江
小畑 恵一
登録日 2008-01-25 
登録番号 商標登録第5108014号(T5108014) 
権利者 株式会社ナリス化粧品
商標の称呼 ノーブルボルドー、ノーブル 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 

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