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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z16
管理番号 1199000 
審判番号 無効2007-890006 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-25 
確定日 2009-04-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4539127号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4539127号商標(以下「本件商標」という。)は、「girls walker」の欧文字及び「ガールズウォーカー」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、平成12年11月22日に登録出願され、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,かるた,歌がるた,トランプ,花札,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),昆虫採集用具,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,印刷用インテル,活字,装飾塗工用ブラシ,封ろう,マーキング用孔開型板,観賞魚用水槽及びその附属品,電気鉛筆削り機,製本用クロス,製本用ひも,プラスチック製包装用袋,プラスチック製簡易買物袋,紙製簡易買物袋,育苗用下敷紙,紙製立て看板,化粧落とし用紙ナプキン 」を指定商品として、同14年1月25日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を指定商品中、第16類『印刷物』について無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第68号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 請求の利益について
本件審判請求人(以下「請求人」という。)及び請求人の関連会社は、後述のとおり、甲第2号証の1ないし52に示す登録商標をはじめとして「ウォーカー(Walker)」(以下、「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標をこれらの商品や役務に使用したものを総称して「ウォーカーシリーズ」という。)の語を含む商標を使用した、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行している。また、甲第2号証の53に示すように、請求人は前述の甲第2号証の1ないし甲第2号証の52に示す商標を含めて148件の「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標について登録を受けている(又は出願中である)。なお、上記の「関連会社」とは、請求人と会社法上の子会社または会計上の連結子会社の関係にあり、上記雑誌等の発行に際し、請求人が商標権等の使用許諾を与えている会社をいう(以下、「請求人」と記載した場合、関連会社も含めるものとする。)。
請求人が今後、このウォーカーシリーズを発行していく上で、本件商標が存在していると、本件商標と同一または類似する商標を印刷物(雑誌やムック等)に使用することができなくなる。また本件商標が使用された印刷物が市場で販売された場合には、その印刷物が請求人によって製造または販売されているものと需要者に誤認混同を与えることがあり、請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある。
したがって、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。
3 無効理由の要旨
商標法第4条第1項第15号の判断時期は、「商標の出願時」及び「登録査定時」である(商標法第4条第3項)。したがって、以下に本件商標の出願日(平成12年11月22日)及び登録査定時(平成13年11月26日)、さらには現在においても、本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」である。
4 無効理由の証拠について
(1)請求人の「ウォーカーシリーズ」における商標の使用実績について
請求人は甲第2号証の1ないし52に示す登録商標をはじめとして「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用した、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等(ウォーカーシリーズ)を、本件商標の出願日前より、そして、本件商標の登録査定時においても、さらには現在に至るまで多数発行している。
請求人は1990年10月の都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の創刊を皮切りに、以下の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行してきた。
また、請求人は、この雑誌等の媒体を通じて提供される「『都市・地域』又は『ゲーム』、『ファミリー』等の情報を示す語(以下、「情報を示す語」という。)+ウォーカー(Walker)」というブランドを広め、さらにはその価値を高めるため、定期的に発行される雑誌等の他に、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供すべく、上記以外にも、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌や、ムック、書籍、フリーマガジン等を種々発行している。なお、前述の「フリーマガジン」(媒体の綴じ方によっては「フリーペーパー」ともいわれるが、本審判請求書では統一して「フリーマガジン」とする。)とは、「無料で配布する情報誌(紙)で、イベント、タウン、ショップ、求人求職、住宅・不動産、グルメ・飲食店、ショッピング、演劇、エステ・美容、レジャー・旅行、各種教室など多岐にわたる情報を記事と広告で伝える」もので、雑誌・新聞と同様の商品としての性質と、広告等の役務としての性質を併せ持つものと考えることができる印刷された紙媒体である。
ア 「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用したウォーカーシリーズについて
(a)使用の事実について
甲第3号証の1ないし8は、請求人が公開するホームページの情報であり、現在、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズが8誌あることを示している。
(b)雑誌の販売部数に関するレポート(写し)について
甲第5号証の1ないし14は、社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート(1992年?2005年上半期)の写しである。
(c)ビデオリサーチ雑誌閲読率ランキングについて
甲第6号証の1の1ないし甲第6号証の7の3は、株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」の写しである。株式会社ビデオリサーチはテレビ番組の視聴率調査等で有名な、マーケティング調査全般を行う企業である。また、「閲読」とは、その雑誌がどれだけの人に読まれているかを示すものであり、例えばコンビニエンスストアで立ち読みした場合や知人から借りた場合のように、購入しなくとも「閲読している」ということになり、このような需要者のパーセンテージを示すものが「閲読率」になる。すなわち「雑誌閲読率ランキング」における閲統率は、読者における雑誌の認知度を示すものである。
(d)新聞・雑誌に掲載された記事について
「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌は、多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲第7号証の1の1ないし17)。
本件商標の出願日及び登録査定前、さらには登録後のいずれの時期においても、甲第5号証の1ないし14に示す雑誌の販売部数に関するレポート、甲第6号証の1の1ないし7の3に示す需要者の閲読率ランキング、甲第7号証の1ないし17に示す新聞記事、甲第8号証の1ないし6に示す雑誌記事という第三者が発行した客観的な情報から「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標が全国的に周知著名な商標であることは明らかである。また、後述するように、請求人は、この「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために、各種の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」商標を使用した雑誌、ムック、書籍、フリーマガジン等を本件商標の出願日前より現在に至るまで多数発行している。したがって現在においては、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標(ブランド)は、同じ出所より発行されている雑誌等であると、需要者及び取引者に認知された周知著名な商標(ブランド)となっている。
(e)日本有名商標集への掲載について
以上に述べた使用実績(及び後述する裁判所及び特許庁の判断)が考慮されて、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標のうち定期的に発行している8誌に係る登録商標が日本有名商標集に選定されている。甲第9号証の1に示す書籍は、社団怯人日本国際知的財産保護協会(AIPPI・JAPAN)が、日本における有名商標と選定したものを収録し、2004年に発行した書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の写しである。この書籍に掲載された商標は、特許庁作成の審査便覧においても「(『日本有名商標集』に)掲載されている商標については、原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱うものとする。」と定めている(甲第9号証の2)。甲第9号証の1に示すように、第16類「印刷物」を指定商品とする「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標が日本国の有名商標として選定されている。したがって甲第2号証の2、甲第2号証の13、甲第2号証の14、甲第2号証の15、甲第2号証の22、甲第2号証の26、甲第2号証の28、甲第2号証の39、及び、甲第2号証の45の商標は、「原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱う」べき商標である。
なお、この書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の第3版発行は、2004年である。第2版が発行された1998年には、請求人が掲載を希望しなかっただけで、仮に本件商標の出願日以前の1998年に掲載を希望すれば、前述の甲第5号証の1ないし甲第8号証の6や後述する判決等から明らかなように、当然にして当時発行していた「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標は選定されていたものと確信する。
(f)増刊号、ムック、書籍、フリーマガジンについて
上述したように、請求人は定期的に発行している雑誌の他、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供すべく「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの書籍や「東京ウォーカー/TokyoWalker」や「関西ウォーカー/KansaiWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジンを種々発行している(甲第10号証の1ないし甲第10号証の33)。
(g)「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズのまとめ
以上に説明した「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの使用実績に鑑みれば、商標の構成中に「都市名又は地域名を表す語」と「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標は、請求人が発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されているものである。
イ 「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズについて
次に、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために、各種の「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」商標を使用した雑誌、ムック、書籍、フリーマガジン等を本件商標の出願日前より現在に至るまで多数発行し、現在においては、「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」商標(ブランド)は、同じ出所より発行されている雑誌等であると、需要者及び取引者に認知された周知著名な商標(ブランド)となっていることを説明する。
(a)使用の事実について
請求人は、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を通して提供される情報の対象を「都市・地域」というカテゴリではなく、「ゲームの情報」や「家族向けの情報」のように情報を特定の内容に特化した「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等も本件商標の出願日より前から現在に至るまで多数発行している(甲第11号証の1ないし甲第11号証の38の46)。
(b)マガジンデータの資料について
甲第11号証の1ないし甲第11号証の38の46に示す請求人が種々の「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌のうち、定期的に発行している(していた)雑誌については、社団法人日本雑誌協会から発行される「マガジンデータ」(1995年及び1996年は「会員社発行雑誌媒体資料」という名称)に発行部数が掲載されている。なお、上述したように「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの発行部数も掲載されている。
(c)新聞・雑誌に掲載された記事について
また、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌と同様に、これらの雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等は多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲第13号証の1ないし甲第13号証の20)。
(d)インターネットを利用した取引状況について
現在も、インターネットオークションで過去に発行されたゲームウォーカーやメンズウォーカーが個人間で取引されていたり、個人のホームページやプログで紹介されている。
(e)「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズのまとめ
上記「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの使用実績及び新聞記事に鑑みれば、「その他の情報を示す語」+「ウォーカー(Walker)」の商標も、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標と同様に、請求人が発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されていることは明らかである。
ウ 他の企業や団体等との共同によるウォーカーシリーズの発行について
これまで説明してきたように、請求人のウォーカーシリーズが全国の需要者・取引者に広く知られていることに疑いがない。さらに請求人は、このウォーカーシリーズのブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等とともに「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した雑誌やフリーマガジンを多数発行している。また、甲第15号証の1及び甲第15号証の2に示すように、請求人自身もこの発行について自社の宣伝媒体で広告している。
(a)使用の事実について
甲第16号証の1ないし8は、その一例を示すものである。
また、上述した「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズや「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの中には、他の企業や団体等との共同で(又は依頼を受けて)制作されたものもある。
これらの雑誌やフリーマガジンの共同発行者(又は依頼者)を見ると、わが国の一般需要者に広く知られた有名企業や、政府機関等が多数含まれている。
すなわち、上記証拠は、一般需要者に何らかの情報を提供するための媒体として、周知・著名なウォーカーシリーズの揺るぎないブランド力を利用して、自社の商品等を紹介しようと試みる企業や団体が多数存在していることを示している。
(b)新聞・雑誌に掲載された記事について
また、新聞雑誌媒体に取り上げられているものも多数存在している(甲第17号証の1ないし甲第17号証の4)。
(c)他の企業や団体等との共同でのウォーカーシリーズが発行されていることのまとめ
このように自社の商品等を紹介するために「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を雑誌やフリーマガジン等に使用したいという他の企業や団体等のニーズが存在するという事実もまた、ウォーカーシリーズが需要者・取引者の間に広く浸透していることの一つの裏付けである。
以上、上記ア?ウで説明してきたように、請求人が「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」を含む商標を使用し、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行していることから、「ウォーカーシリーズ」が需要者・取引者の間に広く認識されていることは明らかである。
このように、「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせて、雑誌や書籍、フリーマガジン等の商標として複数種類使用すること(及び後述するミニ情報掲載欄の名称として「情報を示す語」と「ウオーカー(Walker)」を使用すること)により、「ウォーカーシリーズ」として統一されたブランドイメージを形成していくという請求人の企業活動により、「ウォーカー(Walker)」の語を含む雑誌や書籍、フリーマガジン等は、請求人の「ウォーカーシリーズ」となんらかの関連があるものとして、一般需要者・取引者に認識されている。
(2)裁判所及び特許庁における過去の判断について
請求人のウォーカーシリーズの商標(その中でもとりわけ「東京ウォーカー/TokyoWalker」)が全国的に周知・著名な商標であることは、特許庁及び裁判所においても認められている。
ア 平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件について
甲第18号証は、請求人が被告となった平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件における判決の謄本の写しである。この判決では、『本件商標(「TokyoWalker」)の登録査定日(平成9年2月13日)においてはもとより、登録出願日(平成6年9月1日)においても、雑誌名としてではあるが、「TokyoWalker」との標章は、全国で周知著名となっていた』ことが認定され、『一般消費者が被服等の本件商標の指定商品を購入ないし取引する際に、本件商標「TokyoWalker」に接した場合にも、容易に「TokyoWalker」を一体不可分のものとして認識し、被告ないしは上記雑誌に関係する商品であると想起するものと推認される。この点は、被服等の取引業者についても同様であって、業者ゆえに一般消費者以上に本件各引用商標を知っているとは推察されるが、そのことが上記認定を妨げるものではない。』と「東京ウォーカー/TokyoWalker」という「雑誌」の絶対的な著名性ゆえに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の商標の周知性は他の商品(「被服等」)についても及ぶ旨の判断がなされている。
イ 商標「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の審査結果について
甲第19号証の1ないし3は「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の書誌情報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、提供者が提供した情報が考慮されて、平成11年10月27日起案の拒絶理由通知書において、『東京都千代田区在所の「株式会社角川書店」が「TokyoWalker」をはじめ、シリーズで発行している印刷物のタイトル構成と酷似するものであり、同シリーズは1998年1?6月期の平均販売部数が、「TokyoWalker」「KansaiWalker」「TokaiWalker」の3シリーズだけでも988、105部と多数発行している実情があることよりすれば、本件商標に接する需要者は、「地方名(地域名)」の一つである「仙台」の語と「ウォーカー」の語より構成される本願商標を付された商品も上記シリーズの一つとして「株式会社角川書店」の業務と関連のある商品であると認識する場合も少なくない』との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
ウ 商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の審査結果について
甲第20号証の1ないし3は商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の公開商標公報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、提供者が提供した情報が考慮されて、平成17年8月1日起案の拒絶理由通知書において、『東京都千代田区在の角川ホールディングスに関連する者により「東京ウォーカー(TokyoWalker)」を始めとする各地の地名など「ウォーカー(Walker)」の文字を結合した「各種のウォーカー(Walker)」名の雑誌の商標として使用され、本願の出願時前において、これらの商標は、需要者の間に広く認識されているところ、本件商標は、「ウォーカー」「Walker」の文字を要部とするものでありますから、これを本願の指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、同社又は同社と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるか如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めます。』との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
エ 平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件について
甲第21号証の1ないし7は、請求人が原告となった平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件における仮処分決定の謄本の写し及び債権者主張書面の写しである。この決定では、請求人の申立を相当と認定し、雑誌について商標「投稿ウォーカー」の使用差し止めを求める仮処分命令の申し立てを認めている。請求人は債権者主張書面において、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ、当時定期的に発行されていた「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「月刊ゲームウォーカー/GameWalker」、「マンスリーウォーカー/MonthlyWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「メンズウォーカー/MEN' SWALKER」、「ワールドウォーカー/WorldWalker」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」といったウォーカーシリーズの著名性を強く主張している。
オ 異議申立事件(異議2005-90151号)について
甲第22号証は登録商標「函館ウォーカーズ/マニュアル」(登録第4827714号)に対する商標異議申立における取消理由通知書の写しである。本件は未だ審理に係属しているものの、この異議申立の審理においては、提供者の異議申立が考慮されて、平成17年12月26日起案の取消理由通知書において、『(日本国内外の)都市名又は地域名に「Walker」又は「ウォーカー」の語を結合した商標は、申立人の取扱いに係る情報誌の題号を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、わが国の需要者の間に広く認識されていたとみるのが相当である。』との理由が通知されている。
カ 商標「中国ウォーカー」(商願2006-003473号)の審査結果について
甲第23号証の1及び甲第23号証の2は、商標権者の出願である「中国ウォーカー」(商願2006-003473号)の公開商標公報及び拒絶理由通知書の写しである。
この審査においては、請求人が刊行物等提出などの手続きをとらずして『この商標登録出願に係る商標は、「中国地方の略。」、「中華人民共和国」の意味を有する「中国」の文字と、「歩行者、散歩する人」の意味を有する「Walker」の文字の表音の片仮名表記と認められる「ウォーカー」の文字とを一連に書した「中国ウォーカー」の文字からなるところ、この文字は、「東京都千代田区富士見2丁目13番3号」に住所を有する「株式会社角川ホールディングス」が発行している印刷物等のタイトルである、「TokyoWalker」を初めとする、「○○(地方名、地域名)ウォーカー/Walker」の構成からなるシリーズと酷似する構成であると認められますから、本願商標が付された商品(役務)に接する取引者、需要者は、該商品(役務)を、前記シリーズの一つや、関連のあるものとして認識することも少なくないというのが相当です。』との判断がなされた。なお、商標出願人はこの拒絶理由に対して商品「印刷物」を補正する削除を行った。
以上、甲第18号証ないし甲第23号証の2に示す特許庁及び裁判所における判断からも、請求人のウォーカーシリーズの商標が全国的に周知・著名な商標であることは疑いようのない事実であることが明らかである。
(3)請求人のウォーカーシリーズに対する需要者・取引者の認識について
ア 過去の請求人の対応について
ウォーカーシリーズが、全国的に周知性を獲得し、そして著名性を獲得していくにしたがって、そのブランドイメージにフリーライドまたは利用しようとする(あやかろうとする)第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の使用や商標出願が、多くなってきた。
請求人は、自社のウォーカーシリーズのブランド力を低下または損なわないように、単に商標出願された第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」ではなく、実際に市場に流通している第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」や市場に流通する可能性があるという情報を得た第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」に対して、つまり、実際に第三者により使用されているまたは使用される可能性がある「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の使用を重視して、これらの第三者の使用に対しても強い姿勢で対応しており、地道に使用中止の効果を上げてきた。
請求人は、自社のウォーカーシリーズのブランド力を損なわないように種々の対応を第三者に対して採ってきた。
そして、対応を採ったほとんどの第三者が『「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標は、請求人のウォーカーシリーズのブランドと似せているまたはイメージを利用している』という意識を持っているからこそ、請求人の要請に対して、陳謝の意を込めた回答を請求人に送ってきたり、商標出願の取り下げ等に応じてきたのである。
なお、甲第5号証の1ないし14に示す雑誌の販売部数に関するレポート、及び、甲第12号証の1ないし11に示すマガジンデータから、請求人以外の社団法人日本雑誌協会に加盟している出版社が「ウォーカー/Walker」の語を含むタイトルの雑誌を発行していないことは明らかである。
イ 最近の混同事例について
上述のように請求人は、ウォーカーシリーズの雑誌等を発行するのみならず、他人の情報を示す語+ウォーカーの商標の使用そのものを排除してきた。
しかしながら、それでもなお、知的財産制度に詳しくない第三者が「ウォーカー(Walker)」の語を用いて、出版物を発行している事実が存在している。これらの行為に対しても、その事実の内容を考慮しながら、適宜に対応策を取ることを検討・準備している。
(4)混同の生ずるおそれについて
以上の甲第2号証の1ないし甲第29号証から明らかなように、本件商標の出願日及び登録査定日において、さらには登録後においても、請求人が発行する各種のウォーカーシリーズの雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等に使用されている「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」のブランドは全国的に著名なブランドであって、その著名性は現在に至るも維持されている。
さらに、定期的に発行している「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの誌面には、各情報記事の分野(例えば、「音楽」や「映画」等)ごとにコーナーを設けており、そのコーナーの欄外に「MUSIC WALKER」、「MOVIE WALKER」、「SPORT SWALKER」、「ART WALKER」等のミニ情報掲載欄のコーナー名を永年に亘って使用している。これらコーナー名に「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」を使用しているのは、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の標章は、請求人または請求人の関連会社が発行する雑誌等の商標となんらかの関連があるものであるということを、需要者に浸透させることを意図しているためである。すなわちこれらのコーナー名の存在は、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」のブランドイメージを雑誌等の内容と関連付けて需要者の記憶の中に形成していくために、請求人が積極的に採用してきた商標戦略の一つの現れである。
本件商標の「情報を示す語」である「girls/ガールズ」及び請求人が発行してきた雑誌の「情報を示す語」である「MEN'S/メンズ」は、複数を示す「S」が付加されているか、所有を表すアポストロフィーの「S」を付しているかの相違はあるものの、ともに「人」を表す名詞に「s」が付加された語であるという点では共通する。したがって、本件商標は、請求人の「メンズウォーカー/MEN'SWALKER」と非常に構成の発想が近似した商標であるといえる。
よって、請求人の「メンズウォーカー/MEN'SWALKER」という雑誌が存在し、また需要者・取引者にウォーカーシリーズの存在が広く知られていた事実から考えると、本件商標は「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の中でもとりわけ出所の混同の生じる可能性の高い商標であることは疑いようもない。
(5)商標権者の不正競争目的について
なお商標権者は、他人が築いてきたブランドイメージにフリーライドするという不正競争目的も持ってブランド展開を行っていることが明らかであり、この点を鑑みても、本件商標は無効とされるべきである。
ア 商標権者のブランド展開について
請求人のウォーカーシリーズは全国的に周知・著名であり、一般の需要者・取引者であれば「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」で構成される商標を使用した出版物については、請求人の発行するウォーカーシリーズと当然にして関係があるものと認識されることは必定である。
イ 商標権者の商標出願の戦略について
さらに、商標権者の商標出願の戦略も明らかに不正競争目的を感じるものである。甲第40号証に示すように平成18年1月19日に商標権者は「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を第16類、第35類、第41類の商品・役務を指定して1日で80件もの商標を出願をしている。1日に何件、どのような商標出願をしようとも、それは何ら制限されているものではないが、このような出願はめったに例を見ない。
ウ 商標権者の雑誌等の出版物を意図した広告について
商標権者の関連会社に「株式会社響谷フミキ・クルーズ」という会社が存在しており、これは商標権者の代表取締役である大濱史太郎氏の同族会社であり、「株式会社響谷フミキ・クルーズ」が商標権者の関連会社であることは、甲第41号証に示す「株式会社響谷フミキ・クルーズ」の商標出願である「ファッションウォーカー/FashionWalker」(商願2005-26725号)の審査経過における意見書からも明らかである。
以上に示した商標権者(及びその関連会社)による雑誌等の出版物を意図した事業展開を考慮すると、本件商標についてもいずれ出版物に使用される可能性が極めて高いものと考えられる。
そして、上記ア及びイで述べたように、商標権者が請求人のウォーカーシリーズのブランドイメージにフリーライドし、さらには業務上の信用を乗っ取るかのような行為をしている以上、本件商標が出版物に使用された場合には、請求人のウォーカーシリーズの商標と、混同を生ずることになるものと確信する。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
5 弁駁書
被請求人は、「請求人の『ウォーカーシリーズ』における商標の使用実績について(審判請求書第6頁第8行以下)」に対する反論(答弁書第4頁第7行ないし第12頁第28行)において、請求人の提出した証拠に対して反論し、『請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌・雑誌の増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等が周知・著名ではなく、本件商標がその指定商品「印刷物」について使用されても、需要者・取引者間に混同が生ずるおそれはない』旨、主張する。
しかしながら、請求人が提出した甲第2号証(請求人の既登録商標の列挙)、甲第4号証、甲第10号証、甲第16号証(ウォーカーシリーズの雑誌・雑誌の増刊号・ムック・フリーマガジン等の使用実績)に対する反論は、いずれも事実を曲解して反論しているに過ぎない。
また、甲第5号証等のデータ、甲第6号証の調査等に対する反論は、ほとんどが被請求人の独自の理解・認識に基づく反論が繰り返されており、全く信憑性がないばかりか誤りである。
さらに、審判請求書でも述べたように、請求人は1990年3月の「東京ウォーカー/TokyoWalker」創刊以来、複数種類かつ大量に「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌・雑誌の増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等に使用してきており、さらに請求人の商標戦略から「○○ウォーカー(Walker)」は請求人の製造にかかる商品であると需要者・取引者が認識していることは紛れもない事実である。
したがって、新聞や雑誌にもウォーカーシリーズの雑誌及びこれに関する事業展開が多数掲載されている。
以上から、雑誌・雑誌の増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物についての請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標は全国的に周知・著名であり、被請求人の答弁は失当といわざるを得ない。
また、商品「印刷物」について「ウォーカー(Wa1ker)」の語を含んだ「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を請求人以外の第三者が一般的、かつ、大々的に使用している事実・状況は、本件商標の出願時及び登録査定時において請求人の知る限り存在せず、被請求人が主張するような、「ウォーカー(Wa1ker)」の語が「情報提供の代名詞」の意味合いが生じるようになった結果、特定の商品の出所を示さなくなっているというような事実・状況もまた存在しない。
むしろ、本件商標の出願時及び登録査定時において、雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Wa1ker」、「関西ウォーカー/Kansai Walker」、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」等の「情報を示す語+ウォーカー(Walekr)」の商標を永年使用した結果、雑誌等の印刷物の「○○ウォーカー」といえば『○○に関する情報を提供する「東京ウォーカー/TokyoWalker」等と同様の角川グループの雑誌』という意味合いで需要者・取引者が認識するのは必然である。
したがって、本件商標のような「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を商品「印刷物」に使用した場合、需要者・取引者間に混同が生ずる可能性は確実に存在するというべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む)を提出した。
1 請求人の利益について
「2 請求の利益について」について
請求人の利害関係そのものについては争わない。
2 無効理由について
(1)請求人の「『ウォーカーシリーズ』における商標の使用実績について(審判請求書第6頁第8行以下)」に対する反論
請求人はまず「請求人は甲第2号証の1ないし52に示す登録商標を始めとして『ウォーカー(Walker)』の語を含む商標を使用した、雑誌…等を…多数発行していると主張する。「登録商標をはじめとして」なる表現は、恰も「甲第2号証の1ないし52に示す登録商標を全て雑誌等に使用しており、その他にも未登録商標を多数使用している」かの如き印象を導く表現であるが、甲2号証の53と甲第3号証以下とを照合すると、「甲第2号証の1ないし53の148件」(審判請求書第3頁第11行)の登録商標及び出願中の商標のうち、少なくとも請求人が使用したと主張しているものは31件(約21%)にとどまり、その他の117件はストック商標若しくは防衛的に取得した商標と思われ、いずれにせよ未使用である。
次に、請求人は「東京ウォーカー/Tokyo Walker」のほか「ハイウェイウォーカー/HighwayWalker」まで16誌の情報誌を現在までに発行してきた、とのことであるが、本件商標の出願時及び登録査定時(平成14年(2002年)3月28日)にはそのうち半分の「東京ウォーカー/Tokyo Walker」「関西ウォーカー/Kansai Walker」「東海ウォーカー/Tokai Walker」「九州ウォーカー/Kyushu Walker」「横浜ウオーカー/YOKOHAMA Walker」「千葉ウォーカー/Chiba Walker」「神戸ウォーカー/Kobe Walker」「北海道ウォーカー/Hokkaido Walker」の8誌のみが発行されており、登録査定時にその他は既に廃刊、または未発行だったから、本件商標が出願時及び登録査定時に商標法第4条第1項第15号に該当していたかどうかの判断には無関係である。
また、「神戸ウォーカー/Kobe Walker」「北海道ウォーカー/Hokkaido Waker」はそれぞれ本件商標登録出願の5ヶ月前に刊行が開始されたに過ぎず、「九州ウォーカー/Kyushu Walker」「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」「千葉ウォーカー/Chiba Walker」はそれぞれ本件商標登録出願の約3年、2年、1年前から発行されたものであって、これらが短期間に周知・著名性を獲得していたとは認めがたい。
請求人は「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標の使用状況について述べているが、本件商標の登録以後の事情が多く含まれており、何故このような商標法第4条第1項第15号の要件とは無関係の事情について長々と主張しなければならないのか理解に苦しむところである。
次に「『都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)』からなる商標を使用したウォーカーシリーズについて」(審判請求書第8頁第28行以下)について反論する。
反論の前にまず明らかにしておきたいが、請求人は審判請求書において恰も一般に使用されているかの如く「ウォーカーシリーズ」なる造語を頻繁に使用しているが、「ウォーカーシリーズ」の語は請求人自身の使用及び請求人の意図通りに記述されたいわゆる提灯記事中に二、三見受けられる以外、
一般の需要者・取引者にこれら商品がシリーズ商品として認識され、かつ「ウォーカーシリーズ」と称されている事実を証する証拠は見当たらない。
したがって、請求人による「ウォーカーシリーズ」の連発は、審判官殿に「ウォーカーシリーズ」が一般に使用されているかのような誤った心証を植え付けようとする請求人のテクニックであるものと解さざるを得ず、よって被請求人は、審判請求書の記述を引用する場合以外には「ウォーカーシリーズ」なる語を極力使用しないこととする。
請求人は、出版業界のみで通用する不正確な数字や無意味な調査結果を挙げているが、これが審判や裁判における立証を果たすものではなく、結局本件商標の出願時及び登録査定時には「東京ウォーカー/TokyoWalker」「関西ウォーカー/KansaiWalker」及び「東海ウォーカー/TokaiWalker」の3つが、それぞれ各発行地域において請求人により継続的に使用されてきたことが辛うじて証明されたにとどまり、これを遙かに超えてシリーズ商品として全国的に著名であり、「ウォーカー」の語のみを保護するに足る法益が存在したと認められる理由は認められない。
次に、審判請求書第16頁第26行「日本有名商標集への掲載について」は、2004年の発行なので本件審理に影響を及ぼさない。請求人は1998年に掲載を希望すれば選定されていたものと確信する、と述べているが独善的な推測にすぎない。
以上のように、請求人は「請求人の『ウォーカーシリーズ』における商標の使用実績について」において大量の証拠を提出するとともに長々と論じてはいるが、多くは本件商標の出願・登録時において出所混同が生じるおそれがあるか否かとは無関係の内容であり、結局本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するにも拘わらず登録されたものとは認められない。何故ならば、請求人提出の各証拠によると、本件商標の出願及び登録時に、請求人が「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用していたのは、実質的には「東京ウォーカー/TokyoWalker」「関西ウォーカー/KansaiWalker」及び「東海ウォーカー/TokaiWalker」のみであり、加えてこれらはリージョナル誌であって発行地域がそれぞれ異なるから、各地域の需要者はそれぞれ一種類の「○○ウォーカー」しか目にすることはないので、「ウォーカーは請求人のシリーズ商品に共通する表示である」との認識を形成する状況が想定し得ないからである。
(2)「裁判所及び特許庁における過去の判断について」に対する反論
請求人の挙げた判決例・審決例等は、商標の構成等において本件と事案を異にするものであり、それらの判決例・審決例をもって本件の出所混同の判断の基準とするのは適切ではない。また、ある登録商標が無効にされるか否かの判断は、個々の登録商標ごとに個別具体的に検討判断されるべきことは明らかであることよりすると、請求人の挙げている判決例等に拘束されるものではない。
請求人の挙げた各判決例等は本件商標の出願・登録時に「請求人のウォーカーシリーズの商標が全国的に周知・著名な商標であること」には何ら関わりのないものである。
(3)「請求人のウォーカーシリーズに対する需要者・取引者の認識について」に対する反論
審判請求書第37頁第9行以下において請求人は、「第三者の『情報を示す語+ウォーカー(Walker)』の使用や商標出願が、多くなってきた。」と述べているが、これはいつの時点のことなのか、毎年何件あって前年比どれぐらい増加したのかなど何も事実が示されていない。
よって、これは単なる請求人の感想であって、審判請求書に記載すべき事柄ではない。また請求人は、「多くなってきた」理由を「ウォーカーシリーズが、全国的に周知性を獲得し、そして著名性を獲得していくにしたがって、そのブランドイメージにフリーライドまたは利用しようとする(あやかろうとする)」からであると断じているが、請求人の願望に過ぎない。「ウォーカー(Walker)」は「散歩する人」「歩き回る人」を意味する既成語であって、事物を表す語を冠してその事物に関する情報を媒介する雑誌や書籍の特徴を表すのにぴったりな語なので当業界において採択されやすい、という事情に原因を求める方が、より合理的である。
(4)「混同の生ずるおそれについて」に対する反論
繰り返し述べてきたように、本件商標の出願時及び登録時には、「情報を示す語+ウォーカー(walker)」の商標が請求人のシリーズ商品を表示するものとして周知著名であったとは到底認められない。
ミニ情報掲載欄に「ウォーカー」を含む表記を付したとしても、これを「天声人語」と同一視するのは、かなり無理がある。
(5)「商標権者の不正競争目的について」に対する反論
被請求人は、他人のブランドイメージにフリーライドするような行為は一切行っていない。
よって、被請求人は、「不正競争目的」なるものは有していない。
3 第2答弁書
(1)反論の要約
審判請求書及び弁駁書の全趣旨に対する被請求人の反論は、要するに(a)本件出願時及び登録査定時に、「ウォーカー」が請求人の製造・販売に係るシリーズ商品を表示するものとして著名だったという事実は存在しない(b)たとえ(a)の事実が存在していたとしても、本件商標との間で出所混同を生ずるおそれはないという2点に集約される。
(2)著名性について
「東京ウォーカー」等、「都市名又は地域名+ウォーカー」の態様の商標が附された個々のリージョナル誌が、商標に冠せられた都市又は地域において、本件出願時及び登録査定時には、それぞれある程度の周知・著名性を獲得していたことは被請求人も認める。
しかしながら、請求人の提出した全証拠を総合するも、需要者・取引者が「ウォーカー(Walker)」の文字より直ちに請求人のシリーズ商品を想起するに至っていたとは認め難い。
(3)出所混同を生ずるおそれについて
(a)シリーズ商品の範囲について
仮に、本件出願時又は登録査定時に「ウォーカー」の語が請求人のシリーズ商品を表示するものとして著名だったとしても、掲載される情報の種類や編集方針が共通する「リージョナル誌」のシリーズ商品の表示であると需要者・取引者に認識されていたにとどまり、従って「都市名又は地域名+ウォーカー」の態様に限れば出所混同を生ずるおそれが認められたかも知れないが、都市名又は地域名以外の語を冠した「○○ウォーカー」すべての態様の商標にまで出所混同を生ずる範囲が及ぶ可能性はない。
(b)「ウォーカー」の文字より想起される意味について
請求人は、「『ウォーカー(Walker)』という英語が、『情報を提供する』ための代名詞のようになった認識を、被請求人も含めて需要者・取引者が持つようになったのは、請求人のウォーカーシリーズの存在があったからであって…」(弁駁書第33頁第1行以下)、「繰り返しになるが『「ウォーカー(Walker)」=情報提供の代名詞』のような意味合いを被請求人を含め需要者・取引者に認識させたのは請求人である」(弁駁書第49頁第1行以下)と主張し、「ウォーカー(Walker)」が情報提供の代名詞」の意味合いを有すると需要者・取引者が認識していることを自ら認めている。
請求人の商標管理の不手際に原因があったにせよ、もともと「ウォーカー」がそのような意味を有していたにせよ、いずれにしても「ウォーカー」が「情報提供の代名詞」として需要者・取引者に認識されていることは請求人及び被請求人の双方とも認める争いのない事実であり、結果として「情報提供の代名詞」の意味を有するが故に、同業者により書籍やムック等の題号に「○○(都市名又は地域名以外の語)ウォーカー」の態様が好んで使用され、また多数の商標登録がなされているという事実が派生したことに変わりはない。もちろん「ウォーカー(Walker)」を使用・登録している出版業界に属する者に「ウォーカー(Walker)といえば角川」のような認識があったとは認められない。これら当業界の者は請求人が証拠として提出した記事や広告の最も多くに目を通している類の者であるはずだが、効果は薄かったようである。請求人は、乙第3号証の4の「ミステリーウォーカー」について、「請求人が長年に亘って使用してきたウォーカーシリーズの商標が、作者や編集者の意識の中に記憶されていることの表れである」と解釈しているが(弁駁書第44頁第14行以下)、作者や編集者が「請求人が独占使用する商標」であることを意識していれば、むしろ商標の採択や構成の類似を避けようとするのが通常である。
したがって、「ガールズウォーカー」と「girlswalker」との文宇を二段併記してなる本件商標は、請求人の希望や被請求人の商標採択の意図に拘わらず、「女の子に関する情報を提供するもの」との一連の観念を需要者・取引者に認識させ、請求人のリージョナル誌のシリーズを連想させることはない。
(4)その他
(a)本件商標登録査定後の被請求人による「ウォーカー」の使用について
請求人は弁駁書第8頁第11行以下で「請求人が商標のブランド力の維持・発展に努力をしてきたことを主張したものである」と述べているが、認める。
(b)「だめんず・うぉーかー」について
被請求人が「だめんず・うぉーかー」を意図的に乙第3号証から外したことは認める。被請求人は実は「だめんず・うぉーかー」が請求人自身の発行に係るものと思いこんでいた。請求人から他の者の発行と知らされて驚き、同時にドラマ化までされた大ヒットコミックが「だめんず・うぉーかー」なる題号で発行されているのを、「ウォーカー」ブランドの維持・発展に意欲的な請求人ともあろうものが、連載当初から現在に至るまで永年にわたり放置したままであることに、また驚いた次第である。
(c)閲読率について
甲第59号証によれば、調査は都市部(全国7地区)でのみ行われ、この全国7地区は請求人がリージョナル誌を配本している区域とほぼ重なっているので、請求人のリージョナル誌の閲読率だけが発行部数などに比べて他誌よりも異常に高い数値を示す理由、すなわち請求人のリージョナル誌の配本比率が一部地域に著しく偏っているためであることがよく理解できた。全国7地区の人口は、甲第59号証によれば約4000万人で日本の総人ロの1/3であるから、他の地域性に乏しい一般の雑誌と単純に数値で比較するときにはその分割り引かなければならないのではないかと不思議に思うが、このような客観的・学術的な分析を敢えて行わないのが、請求人のいうところの「出版業界・広告業界の常識」なのであろう。
(d)立証の趣旨について
弁駁書第58頁第12行以下に「被請求人の答弁が失当であることを立証する」との記載があるが意味が不明であり、請求人の意図が理解できない。
(e)請求人の主張について
審判請求書における請求人の主張の骨子は、「○○ウォーカー」が請求人の発行に係る雑誌等のシリーズ商品の表示として著名であるから、「○○ウォーカー」の態様である本件商標が商品「印刷物」に使用された場合に、恰も請求人の発行に係るものと需要者・取引者が出所の誤認を生ずるおそれがある、というものであると被請求人は解釈して第1答弁書を提出し、本第2答弁書において上記のように答弁した。
(5)まとめ
以上のように本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。
(1)本件商標との類似関係について
請求人の提出に係る甲第3号証(枝番号を含む。以下、単に甲号証を付した場合は、枝番号も含む。)によれば、請求人は、平成2年3月の「東京ウォーカー」の創刊より長年にわたり、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始め「関西ウォーカー/KansaiWalker」「東海ウォーカー/TokaiWalker」「九州ウォーカー/KyushuWalker」等(以下「請求人使用商標」という。)を雑誌、ムック、書籍、フリーマガジン等(以下「請求人使用商品」という。)に使用していた事実があり、これらの事実よりすると、請求人の業務に係る請求人使用商品の商標として一定の使用実績を得ているものと認められる。
しかして、本件商標は、前記第1のとおり「girls walker」の欧文字及び「ガールズウォーカー」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなるものであるところ、該構成文字は、同じ書体でまとまりよく一体的に表してなるものであり、殊更、これを「girls」「ガールズ」と「walker」「ウォーカー」の各文字部分とに分離して把握、認識しなければならない特段の事由が存するものとも認められないものであり、また、構成全体より生ずる「ガールズウォーカー」の称呼も冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成を「girls」と「walker」及び「ガールズ」と「ウォーカー」の各文字よりなるとみた場合、「girls(ガールズ)」は「少女」を、「walker(ウォーカー)」は「歩く人」をそれぞれ意味する英単語又は外来語として一般に知られているといえるから、本件商標は、「girls」と「walker」の2つの英単語を並記し、その読みとして「ガールズウォーカー」の片仮名文字を併記したものとみるのが自然であって、請求人の使用実績を考慮しても、「walker」及び「ウォーカー」の文字部分より請求人使用商標を連想、想起させるものと判断することができない。
そうとすれば、本件商標は、視覚上においても観念上においても「girls」、「ガールズ」と「walker」、「ウォーカー」との両文字間には軽重の差を見出すことができないから、構成全体をもって一体不可分の構成よりなるものと認識され、それぞれの構成文字に相応して「ガールズウォーカー」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない一種の造語よりなるものと判断するのが相当である。
請求人使用商標は、上記に示したとおり「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」等の構成よりなるものであって、それぞれの構成文字に相応して「トウキョウウォーカー」、「カンサイウォーカー」、「トウカイウォーカー」、「キュウシュウウォーカー」等の称呼を生ずるものというのが相当であるから、本件商標とは、称呼において非類似の商標であり、かつ、観念、外観においても類似の商標ということはできない。
(2)出所混同のおそれについて
請求人使用商標についてみると、これらはまとまりよく一体的に表されているものであるから、外観上一体として把握し得るものであること、「東京ウォーカー/TokyoWalker」から生ずる「トウキョウウォーカー」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」から生ずる「カンサイウォーカー」等の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであること、殊更これを「東京」「Tokyo」と「ウォーカー」「Walker」とか「関西」「Kansai」と「ウォーカー」「Walker」等の文字部分に分離して、称呼、観念しなければならない特段の事情が存するとも認められないこと、当該構成中の「東京/Tokyo」「関西/Kansai」等の文字部分が、我が国の首都名、都市名及び産地、販売地名を表す語として使用される場合があるとしても、かかる構成においては、需要者間に、全体をもって一体不可分の構成の商標として認識し、把握されるものとみるのが自然である。
請求人が請求人使用商品に使用している請求人使用商標については、提出された証拠(甲第4号証、甲第10号証、甲第11号証)によれば、例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」についてみた場合、その態様は、「T」「W」が大文字、その余が小文字の欧文字であり、「Tokyo」と「Walker」との間にはスペースがないという特徴がみられる。
請求人使用商品の表紙上部には、「TokyoWalker」との雑誌名が大きく目を引く形で記載されている。そして、該雑誌は、社団法人日本ABC協会発行の「レポート(1992年?2005年上半期)」(甲第5号証)によれば、雑誌「TokyoWalker」の各号ごとの販売部数は、平成4年の平均が約28万部、平成5年の平均が約38万部、平成6年の平均が約42万部、平成7年の平均が約42万部、平成8年の平均が約40万部、平成9年の平均が約37万部、平成10年の平均が約29万部、平成11年の平均が約24万部、平成12年の平均が約17万部、平成13年の平均が約14万部、平成14年の平均が約11万部、平成15年の上半期の平均が11万部、平成16年の平均が10万部、平成17年の平均が10万部となっていて、該雑誌「TokyoWalker」をさきがけとして、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」などのタイトルを付した各地域ごとの総合情報誌を続々と創刊していったことが認められ、雑誌名としてではあるが、「東京ウォーカー/TokyoWalker」の標章は、周知著名となっていたことが認められるが、これらは雑誌名として一体不可分に認識される形で「東京ウォーカー/TokyoWalker」が周知著名となっていたものと認められる。
ところで、本件商標の請求に係る指定商品は、「印刷物」であるが、請求に係る指定商品は、その性質から、需要者は一般消費者であると認められるところ、請求人使用商標は雑誌の表紙上部に大きく目を引く形で記載されており、かつ、その他の証拠よりしても表示態様は「○○Walker」と一連一体のものと認められることからすると、本件商標の登録出願日及び登録査定日の当時において、一般消費者が雑誌等を購入ないし取引する際に、本件商標「girls walker/ガールズウォーカー」に接した場合に、容易に「girls walker/ガールズウォーカー」を一体不可分のものとして認識し、請求人ないしは上記「TokyoWalker」という雑誌に関係する商品であると想起するものとは認められない。
この点は、雑誌等の取引業者についても同様であって、業者ゆえに一般消費者以上に請求人の雑誌を知っているものと推察され、混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
請求人は、本件商標の識別標識としての要部は、後半部の「ウォーカー/Walker」の文字部分であることを主張するが、前記のとおり、雑誌等の一般消費者が本件商標に接した場合に、請求人主張のように認識するものとは認められない。
その他、請求人主張の無効事由は、採用することができない。
上記のとおり、本件商標は、請求人の使用している各商標と類似するものではなく、非類似であると認められ、他に両商標間には誤認、混同を生じさせる事由は見出し得ないから、本件商標と請求人使用商標とが、その構成中「ウォーカー/Walker」の文字を共通にしているとしても、本件商標に接する需要者・取引者は、これより請求人使用商標を連想、想起したり、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-08-05 
結審通知日 2008-08-11 
審決日 2008-08-27 
出願番号 商願2000-126300(T2000-126300) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Z16)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 石田 清
小畑 恵一
登録日 2002-01-25 
登録番号 商標登録第4539127号(T4539127) 
商標の称呼 ガールズウオーカー 
代理人 網野 友康 
代理人 初瀬 俊哉 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 山田 朋彦 

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