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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y16
管理番号 1198961 
審判番号 無効2008-890018 
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-19 
確定日 2009-05-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4646716号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4646716号商標(以下「本件商標」という。)は、(別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、平成14年5月10日に登録出願、別掲(2)に記載する第16類、第35類及び第41類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成15年2月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中、第16類『印刷物』について登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第64号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

2 請求の利益について
請求人及び請求人の関連会社は、甲第2号証の1ないし甲第2号証の71に示す登録商標をはじめとして、「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用した雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行している(以下「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標をこれらの商品や役務に使用したものを総称して「ウォーカーシリーズ」という。)。また、甲第2号証の72に示すように、請求人は前述の甲第2号証の1ないし甲第2号証の71に示す商標を含めて194件の「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標について登録を受けている(又は出願中である。)。なお、上記の「関連会社」とは、請求人と会社法上の子会社または会計上の連結子会社の関係にあり、上記雑誌等の発行に際し、請求人が商標権等の使用許諾を与えている会社をいう(以下「請求人」と記載した場合、関連会社も含めるものとする)。
請求人が今後、この「ウォーカーシリーズ」を発行していく上で、本件商標が存在していると、本件商標と同一または類似する商標を印刷物(雑誌やムック等)や電子出版物に使用することができなくなる。また、本件商標が使用された印刷物や電子出版物が市場で販売された場合には、その印刷物や電子出版物が請求人によって製造または販売されているものと需要者に誤認混同を与えることがあり、請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある。したがって、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。

3 無効理由の要旨
(1)請求人は、平成2年(1990年)に、雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を創刊し、以後、「『東京/Tokyo』等の都市名・地域名」や「『メンズ/MEN’S』等の情報の対象」といった「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」の語を組み合わせた商標を使用した雑誌を複数創刊してきた。
これらの「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌、ムック等の印刷物は、商品の品質の良さのみならず請求人の商標戦略や販売促進活動の効果もあって、需要者・取引者に広く受け入れられた。また、多数の新聞や雑誌の媒体にも取り上げられている。
さらに、請求人は、「ウォーカーシリーズ」を出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ・インターネット等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっており、ラジオ・テレビ、そしてインターネットにおいてもウォーカーシリーズの展開を行っている。
加えて、請求人は、出版・放送・インターネット等の分野以外の業種の企業との提携により「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を雑誌・ムック等の印刷物以外の商品・役務にも活用し、請求人の主たる商品である雑誌・ムック等の「印刷物」についての「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を需要者・取引者にさらに周知・著名に認識させるという相乗効果を生み出している。
その結果、請求人の主たる商品である雑誌・ムック等の「印刷物」についての「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を需要者・取引者に、さらに周知・著名に認識させるという相乗効果を生み出している。
そして、本件商標の出願日及び登録査定時、さらには現在においても、雑誌・ムック等の印刷物について「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標は、日本国内において周知・著名な商標となっている。
(2)雑誌・ムック等の印刷物について「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標(その中でもとりわけ東京ウォーカー)は、過去の特許庁や裁判所の判断においても周知・著名なことが認められている。また、請求人は、他社との交渉においても請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標の周知性・著名性に基づいて、他社が雑誌・ムック等の印刷物について「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用することを止めさせている。
(3)本件商標は、「チケット」を意味する英語「ticket」と、「歩く人」を意味する英語「walker」を一連に書してなり、その上段に「ticket walker」の表音表記である「チケットウォーカー」が併記されたものである。すなわち、この商標は「情報を示す語(ticket/チケット)+ウォーカー(walker)」という構成からなる。
そうとすれば、本件商標は、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標と構成が同一であることなどから、本件商標の指定商品中「印刷物」に使用した場合、需要者・取引者は、直ちに請求人又は請求人と関連のある者が発行する「印刷物」であると想起することは必然である。
また、商標権者は、他人が築いてきたブランドイメージにフリーライドするという不正競争の目的も持ってブランド展開を行っていることが明らかであるから、この点を鑑みても、本件商標は無効とされるべきである。

4 無効理由の証拠について
商標法第4条第1項第15号の判断時期は、「商標の出願時」及び「登録査定時」である(商標法第4条第3項)。したがって、本件商標の出願日(平成14年5月10日)及び登録査定時(平成15年1月9日)、さらには、現在においても本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であることを、以下説明する。
(1)請求人の「ウォーカーシリーズ」における商標の使用実績について
ア 請求人は、甲第2号証の1ないし72に示す登録商標をはじめとした、ウォーカーシリーズを、本件商標の出願日前より、そして、本件商標の登録査定時においても、さらには、現在に至るまで多数発行している。
請求人は平成2年(1990年)3月の都市情報誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」の創刊を皮切りに、15の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行してきた。
また、請求人は、この雑誌等の媒体を通じて提供される「『都市・地域』又は『ゲーム』、『ファミリー』等の情報を示す語(以下「情報を示す語」という。)+ウォーカー(Walker)」というブランドを広め、さらにはその価値を高めるため、定期的に発行される雑誌等の他に、流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供すべく、上記以外にも、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌や、ムック、書籍、フリーマガジン等を種々発行している。
イ 「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用した「ウォーカーシリーズ」について
(a)使用の事実について
甲第3号証の1ないし8は、請求人が公開するホームページの情報であり、現在、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズが8誌あることを示している。
甲第3号証の9ないし16は、国立国会図書館のデータベースから検索した上記8誌に関する情報である。
甲第4号証の2ないし甲第11号証の12の14は、請求人が定期的に発行する雑誌の一部の写しである。
上記証拠に示されるように、請求人は、「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とから構成される商標を、商品「雑誌」について長年にわたって継続して使用している。
(b)雑誌の販売部数に関するレポート(写し)について
甲第12号証の1ないし14は、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用した雑誌の販売部数に関する、社団法人日本ABC協会のレポート(1992年ないし2005年上半期)の写しである。上記「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用した雑誌の販売部数は、雑誌(週刊誌、隔週刊誌及び月刊誌も含む。)の販売部数としては非常に多いといえる。
(c)ビデオリサーチ雑誌閲読率ランキングについて
甲第13号証の1の1ないし7の3は、株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」の写しであり、甲第13号証の8ないし14は、前記閲読率に関する分析等の報告書「MAGASCENE」の一部写しである。
「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズ全体は、第3位又は第4位という高い閲読率を、平成11年以来、7年間という長期にわたって、一貫して維持している。
(d)新聞・雑誌に掲載された記事について
「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌は、多数の新聞媒体にも取り上げられ(甲第14号証の1ないし376、甲第16号証の1ないし57)、さらに一般誌や経済誌の雑誌媒体及び書籍にも取り上げられ、紹介されている(甲第15号証の1ないし68)。
(e)日本有名商標集への掲載について
以上に述べた使用実績(及び後述する裁判所及び特許庁の判断)が考慮されて、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標のうち定期的に発行している8誌に係る登録商標が日本有名商標集に選定されている。甲第18号証の1に示す書籍は、社団法人日本国際知的財産保護協会(AIPPI・JAPAN)が、日本における有名商標と選定したものを収録し、2004年に発行した書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の写しである。この書籍に掲載された商標は、特許庁作成の審査便覧においても「(『日本有名商標集』に)掲載されている商標については、原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱うものとする。」と定めている(甲第18号証の2)。甲第18号証の1に示すように、第16類「印刷物」を指定商品とする「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標が日本国の有名商標として選定されている。したがって、甲第2号証の2、13ないし15、22、26、28、39及び45の商標は、「原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取り扱う」べき商標である。
なお、この書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(日本有名商標集)の第3版発行は、2004年である。第2版が発行された1998年には、請求人が掲載を希望しなかっただけで、仮に本件商標の出願日以前の1998年に掲載を希望すれば、前述の甲第5号証の1ないし甲第8号証の59や、後述する判決等から明らかなように、当然にして当時発行していた「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の登録商標は選定されていたことには疑いがない。
(f)「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズのまとめ
雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物についての「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標の使用実績に鑑みれば、商標の構成中に「都市名又は地域名を表す語」と「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標は、請求人の発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されているものである。
ウ 「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズについて
請求人は、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために、各種の「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」商標を使用した雑誌、ムック、書籍、フリーマガジン等を本件商標の出願日前より現在に至るまで多数発行している。その結果、現在においては「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」商標(ブランド)は、同じ出所より発行されている雑誌等であると、需要者及び取引者に認知された周知著名な商標(ブランド)となっていることを、以下、説明する。
(a)使用の事実について
請求人は、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を通して提供される情報の対象を「都市・地域」というカテゴリではなく、「ゲームの情報」や「家族向けの情報」のように情報を特定の内容に特化した「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等も、本件商標の出願日より前から現在に至るまで多数発行している(甲第20号証の1ないし甲第25号証の97)。
(b)マガジンデータの資料について
甲第20号証の1ないし甲第24号証の2の23に示す請求人が発行している(していた)種々の「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌のうち、定期的に発行している(していた)雑誌については、社団法人日本雑誌協会から発行される「マガジンデータ」(1995年及び1996年は「会員社発行雑誌媒体資料」という名称)に発行部数が掲載されている(甲第26号証の1ないし甲第26号証の11)。
当該資料から、本件商標登録出願時までに発行されていた「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌は、平成12年(2000年)を除けば、1号あたり合計で50万部以上発行されていた。
したがって、これらの雑誌を実際に購入しなくとも、かなり多くの需要者・取引者が「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標が使用された雑誌や増刊号を目にする機会があったことになる。
(c)新聞・雑誌記事への掲載について
「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌等は、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズの雑誌と同様に、多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲第27号証の1ないし94)。
(d)インターネットを利用した取引状況について
現在も、インターネットオークションで過去に発行された「月刊ゲームウォーカーやメンズウォーカー」が個人間で取引されていたり、個人のホームページやプログで紹介されたりしている(甲第28号証の1の1ないし2の10)。
(e)「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズのまとめ
上記「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの使用実績及び新聞記事に鑑みれば、「その他の情報を示す語」+「ウォーカー(Walker)」の商標も、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の商標と同様に、請求人が発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されていることは明らかである。
エ ウォーカーシリーズの宣伝・広告等の販売促進活動について
(a)店頭等におけるキャンペーンについて
請求人は、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめとする「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌について需要者・取引者に広く認識してもらうために、雑誌の創刊時には、戦略的、かつ、大々的にキャンペーンを行ってきた。また、多くの需要者が見込める時期(例えば、入学時期や入社時期の4月やゴールデンウィーク等)や、雑誌創刊○○周年記念の時期も同様に戦略的、かつ、大々的にキャンペーンを行ってきた。
(b)各種媒体での広告等について
請求人は、街頭でのキャンペーンの他に、新聞広告・電車の中吊り広告及びラジオやテレビなどの広告等によっても販売促進活動を行ってきた。
甲第30号証の2の1ないし2の21には、新聞に掲載された広告の写しの例である。特に甲第30号証の2の17、2の19及び2の20の広告は、甲第30号証の5の10及び5の12に示す「Walkerフェスティバル」等のイベント開催前に掲載されたものである。
(c)請求人が開催するイベントについて
請求人は、創刊時だけではなく、販売促進活動の一環として定期的に「Tokyo Walker」や「Kyushu Walker」の商標を使用したイベントを各都市・各地域において開催している。また、これまで説明してきたように「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」のウォーカーシリーズを各都市・各地域ごとに展開していった結果、ウォーカーシリーズの雑誌は全国に拡大することになった。これに伴い、甲第30号証の5の2、5の7、5の10、5の11及び5の12に示すように、請求人は「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた。
(d)新聞・雑誌に掲載された記事について
請求人が多大な費用を費やして宣伝・広告してきた事実などは、多数の新聞媒体にも取り上げられている。
(e)ウォーカーシリーズの宣伝・広告等の販売促進活動についてのまとめ 以上のように、請求人は、多大な広告費を投じて大々的なキャンペーンや種々のイベントを開催し、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌を需要者・取引者に広く認識させる活動を行ってきた。
そして、これらの活動が、ウォーカーシリーズの雑誌を、需要者に周知・著名なものとする要因の一つであったことに疑いはない。
オ 他の企業や団体等との共同によるウォーカーシリーズの発行について
(a)請求人は、このウォーカーシリーズのブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等とともに「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した雑誌やフリーマガジンを多数発行している。また、甲第29号証の1及び2に示すように、請求人自身もこの種の雑誌やフリーマガジンの発行について自社の宣伝媒体で広告している。
また、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」シリーズや「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」シリーズの中には、他の企業や団体等との共同で(又は依頼を受けて)制作されたものもある。
これらの雑誌やフリーマガジンの共同発行者(又は依頼者)を見ると、わが国の一般需要者に広く知られた有名企業や、政府機関等が多数含まれている。すなわち、一般需要者に何らかの情報を提供するための媒体として、周知・著名なウォーカーシリーズの揺るぎないブランド力を利用して、自社の商品等を紹介しようと試みる企業や団体が多数存在していることを示している。
自社の商品等を紹介するために「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を雑誌やフリーマガジン等に使用したいという他の企業や団体等のニーズが存在するという事実も、ウォーカーシリーズが需要者・取引者の間に広く浸透していることの一つの裏付けである。
(b)また、これらの雑誌やフリーマガジンには、新聞雑誌媒体に取り上げられているものも多数存在している。
カ 出版物以外の商品・役務へのウォーカーシリーズの活用について
請求人は、出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ・インターネット等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっており、ウォーカーシリーズもその戦略に則って事業展開を行っている。すなわち、雑誌で圧倒的な販売部数を誇るウォーカーシリーズを、雑誌やムック等の出版物の範囲にとどまることなく、ラジオ・テレビ、そしてインターネットにおいても展開してきたのである。
また、請求人は出版・放送・インターネット等の分野の業種以外の他の業種の企業との提携も積極的に行っており、その事業展開にも多数、「ウォーカー(Walker)」の商標を用いている。
(a)ラジオ番組・テレビ番組へのウォーカーシリーズの活用
請求人は、ニッポン放送とタイアップをして1999年10月に「サウンドウォーカー」というタイトルのラジオ番組放送を開始した。これは、首都圏の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌と連動しており、各エリアのグルメ、ファッション、イベント情報を放送するものであった。
この「サウンドウォーカー」以外でもラジオやテレビなどの番組において「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」は活用されている。
(b)ウェブサイト上のウォーカーシリーズについて
請求人は、インターネット上のウェブサイトを出版物と連動させて、相乗効果を生み出すことを1995年ごろから開始しており、現在、請求人は「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の公式サイト「Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)を展開するに至っている。
(c)その他の事業者との協賛・提携について
請求人は出版・放送・インターネット等の分野はもちろんのこと、それ以外の業種の企業とも積極的に提携を進め、さらにその提携後の事業展開でも「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用してきた。
キ 請求人の「ウォーカーシリーズ」における商標の使用実績についてのまとめ
以上のとおり、請求人が「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」を含む商標を使用し、雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等を多数発行していることから、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌等が需要者・取引者の間に広く認識されていることは明らかである。
また、本件商標の出願日及び登録査定日において、さらには登録後においても、請求人は時には他の企業と提携し、また時には独自でさまざまな分野の商品・役務に「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を活用してきたことも明らかである。
このように、「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせて、雑誌や書籍、フリーマガジン等の商標として複数種類使用すること、また、誌面においても需要者に「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせた商標は請求人の商標であるとの認識を形成させるように工夫を凝らしていること、さらにはさまざまな分野の商品・役務について「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わた商標を使用し「ウォーカーシリーズ」として統一されたブランドイメージを形成していくという請求人の企業活動により、「ウォーカー(Walker)」の語を含む雑誌や書籍、フリーマガジン等は、請求人の「ウォーカーシリーズ」となんらかの関連があるものとして、一般需要者・取引者に認識されている。
なお、甲第14号証、甲第15号証(いずれも枝番を含む。)等に示す新聞・雑誌記事の一部には、近年、インターネットの普及が主な原因でウォーカーシリーズの雑誌の発行部数・販売部数が低下している旨の記事がある(例えば、甲第15号証の42及び48)。
このことは否定し得ない事実ではあるが、発行部数・販売部数の低下は請求人の発行する「ウォーカーシリーズ」の雑誌に限ったことではなく、雑誌(その中でもとりわけ情報誌)全体の部数が低下しているのである。
また、近年の情報誌の発行部数や販売部数が減少している代表例としてウォーカーシリーズが取り上げられていることは、ウォーカーシリーズの雑誌が、インターネットの普及前から、需要者・取引者にとって圧倒的に認知されている雑誌であることを裏付けるものである。
さらに、このような状況においても、ウォーカーシリーズの雑誌全体の販売部数は、いまだ他の一般誌と比較してもその販売部数は多く、閲読率も高順位に位置している。この事実は「ウォーカーシリーズ」が、現在もなお周知・著名であり、高いブランド力を誇っているからに他ならない。
(2)裁判所及び特許庁における過去の判断について
請求人のウォーカーシリーズの商標(その中でもとりわけ「東京ウォーカー/Tokyo Walker」)が全国的に周知・著名な商標であることは、特許庁及び裁判所においても認められている。
ア 平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件について
甲第34号証は、請求人が被告となった平成15年(行ケ)第171号審決取消請求事件における判決の謄本の写しである。この判決では、「本件商標(『TokyoWalker』)の登録査定日(平成9年2月13日)においてはもとより、登録出願日(平成6年9月1日)においても、雑誌名としてではあるが、『TokyoWalker』の標章は、全国で周知著名となっていた」ことが認定され、「一般消費者が被服等の本件商標の指定商品を購入ないし取引する際に、本件商標『TokyoWalker』に接した場合にも、容易に『TokyoWalker』を一体不可分のものとして認識し、被告ないしは上記雑誌に関係する商品であると想起するものと推認される。この点は、被服等の取引業者についても同様であって、業者ゆえに一般消費者以上に本件各引用商標を知っているとは推察されるが、そのことが上記認定を妨げるものではない。」と「東京ウォーカー/Tokyo Walker」という「雑誌」の絶対的な著名性ゆえに、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」の商標の周知性は他の商品(「被服等」)についても及ぶ旨の判断がなされている。
イ 商標「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の審査結果について
甲第35号証の1ないし3は「仙台ウォーカー」(商願平10-68044号)の書誌情報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、提供者が提供した情報が考慮されて、平成11年10月27日起案の拒絶理由通知書において、「東京都千代田区在所の『株式会社角川書店』が『Tokyo Walker』をはじめ、シリーズで発行している印刷物のタイトル構成と酷似するものであり、同シリーズは1998年1?6月期の平均販売部数が、『Tokyo Walker』『Kansai Walker』『Tokai Walker』の3シリーズだけでも988,105部と多数発行している実情があることよりすれば、本件商標に接する需要者は、『地方名(地域名)』の一つである『仙台』の語と『ウォーカー』の語より構成される本願商標を付された商品も、上記シリーズの一つとして『株式会社角川書店』の業務と関連のある商品であると認識する場合も少なくない」との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
ウ 商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の審査結果について
甲第36号証の1ないし3は、商標「ザ ウォーカー/The Walker」(商願2005-3201号)の公開商標公報、拒絶理由通知書の写し及び拒絶査定の謄本の写しである。この審査においては、提供者が提供した情報が考慮されて、平成17年8月1日起案の拒絶理由通知書において、「東京都千代田区在の角川ホールディングスに関連する者により『東京ウォーカー(Tokyo Walker)』を始めとする各地の地名など『ウォーカー(Walker)』の文字を結合した『各種のウォーカー(Walker)』名の雑誌の商標として使用され、本願の出願時前において、これらの商標は、需要者の間に広く認識されているところ、本件商標は『ウォーカー』『Walker』の文字を要部とするものであるから、これを本願の指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、同社又は同社と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるか如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。」との理由が通知され、拒絶査定が確定している。
エ 平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件について
甲第37号証の1ないし7は、請求人が原告となった平成9年(ヨ)第22076号商標権仮処分命令申立事件における仮処分決定の謄本の写し及び債権者主張書面の写しである。この決定では、請求人の申立を相当と認定し、雑誌について商標「投稿ウォーカー」の使用差し止めを求める仮処分命令の申し立てを認めている。請求人は、債権者主張書面において、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめ、当時定期的に発行されていた「関西ウォーカー/Kansai Walker」、「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」、「マンスリーウォーカー/Monthly Walker」、「東海ウォーカー/Tokai Walker」、「メンズウォーカー/MEN' S WALKER」、「ワールドウォーカー/World Walker」、「九州ウォーカー/Kyushu Walker」といったウォーカーシリーズの著名性を強く主張している。
オ 異議申立事件(異議2005-90151号)について
甲第38号証は登録商標「函館ウォーカーズ/マニュアル」(登録第4827714号)に対する商標異議申立における取消理由通知書の写しである。本件は未だ審理に係属しているものの、この異議申立の審理においては、提供者の異議申立が考慮されて、平成17年12月26日起案の取消理由通知書において「(日本国内外の)都市名又は地域名に『Walker』又は『ウォーカー』の語を結合した商標は、申立人の取扱いに係る情報誌の題号を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、わが国の需要者の間に広く認識されていたとみるのが相当である。」との理由が通知されている。
カ 商標「中国ウォーカー」(商願2006-3473号)の審査結果について
甲第39号証の1及び2は、商標権者の出願である「中国ウォーカー」(商願2006-3473号)の公開商標公報及び拒絶理由通知書の写しである。
この審査においては、請求人が刊行物等提出などの手続きをとらずして「この商標登録出願に係る商標は、『中国地方の略。』、『中華人民共和国』の意味を有する『中国』の文字と、『歩行者、散歩する人』の意味を有する『Walker』の文字の表音の片仮名表記と認められる『ウォーカー』の文字とを一連に書した『中国ウォーカー』の文字からなるところ、この文字は、『東京都千代田区富士見2丁目13番3号』に住所を有する『株式会社角川ホールディングス』が発行している印刷物等のタイトルである『Tokyo Walker』を初めとする、『○○(地方名、地域名)ウォーカー/Walker』の構成からなるシリーズと酷似する構成であると認められるから、本願商標が付された商品(役務)に接する取引者、需要者は、該商品(役務)を、前記シリーズの一つや、関連のあるものとして認識することも少なくないというのが相当である。」との判断がなされた。なお、商標出願人はこの拒絶理由に対して商品「印刷物」を削除するを補正行った。
キ 商願2005-82046拒絶査定不服審判事件について
甲第61号証は、拒絶査定不服審判事件の審決の写しである。請求人は登録第4637180号商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」に係る防護標章登録出願を行い、原査定において拒絶査定がなされたものの、審判部において「請求人の取り扱いにかかる商品である東京を始めとする地域に関するファッション、グルメ、娯楽等の情報を紹介する『都市情報誌』の題号として永年使用され、その間、新聞、テレビ等の媒体を通じて広範な宣伝、広告活動を行った結果、現在においては、上記商品の題号を表示するものとして取引者、需要者に広く認識されているものである」ことや、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」の需要者層については「本件登録商標が、請求人の販売に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者に広く認識され、かつ、その需要者は、年齢、性別、職種等を問わない広い分野にわたる一般消費者と認められること」等の判断がなされている。
ク 以上、甲第34号証ないし甲第39号証の2に示す特許庁及び裁判所における判断からも、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標が全国的に周知・著名な商標であることは疑いようのない事実であることが明らかである。
(3)請求人のウォーカーシリーズに対する需要者・取引者の認識について ア 過去の請求人の対応について
ウォーカーシリーズが、全国的に周知性を獲得し、そして著名性を獲得していくにしたがって、そのブランドイメージにフリーライド又は利用しようとする(あやかろうとする)第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の使用や商標出願が多くなってきた。
請求人は、自社のウォーカーシリーズのブランド力を低下又は損なわないように、単に商標出願された第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」ではなく、実際に市場に流通している第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」や市場に流通する可能性があるという情報を得た第三者の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」に対して強い姿勢で対応しており、地道に使用中止の効果を上げてきた。
そして、対応を採ったほとんどの第三者が『「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標は、請求人のウォーカーシリーズのブランドと似せている又はイメージを利用している』という意識を持っているからこそ、請求人の要請に対して、陳謝の意を込めた回答を請求人に送ってきたり、商標出願の取り下げ等に応じてきたのである。
なお、甲第12号証に1ないし14に示す雑誌の販売部数に関するレポート及び甲第26号証1ないし11に示すマガジンデータから、請求人以外の社団法人日本雑誌協会に加盟している出版社が「ウォーカー/Walker」の語を含むタイトルの雑誌を発行していないことは明らかである。
イ 最近の混同事例について
上述のように、請求人は「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の雑誌等を発行するのみならず、他人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標の使用そのものを排除してきた。
しかしながら、それでもなお、知的財産制度に詳しくない第三者が「ウォーカー(Walker)」の語を用いて、出版物を発行している事実が存在し、インターネット上の掲示板に『「情報を示す語」と「ウォーカー(Walker)」といえば角川』という認識を前提とすることによる書き込みがなされたり、「角川グループと何か関係のあるブランドでしょうか?」といった趣旨の問い合わせが、請求人の関連会社に多数きている。
(4)混同の生ずるおそれについて
ア 本件商標と請求人のウォーカーシリーズの雑誌等に使用されているブランドとの対比
本件商標は、情報を示す語である「入場券」等を意味する英語「ticket」と、「歩く人」を意味する英語「walker」を一連に書してなり、その上段に、「ticket walker」の表音表記である「チケットウォーカー」が併記されている。したがって、本件商標は「情報を示す語(ticket/チケット)+ウォーカー( walker)」という構成からなる。
一方、甲第2号証の1ないし甲第45号証及び甲第59号証ないし甲第61号証から明らかなように、本件商標の出願日及び登録査定日において、さらには登録後においても、請求人が発行する各種の雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等に使用されている「情報を示す語+ウォーカー( Walker)」の商標、すなわちウォーカーシリーズのブランドは全国的に著名なブランドであって、その著名性は現在に至るも維持され、また著名性の程度は日々増大している。
そして、過去に請求人から発行されたウォーカーシリーズの雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の部数、種類、流通地域、年数、誌面構成、ウォーカーシリーズのウェブサイト上での展開、他社とのタイアップ、ウォーカーシリーズの雑誌やウェブサイトの著名性や周知性等の実情、需要者・取引者の認識、さらには新聞・雑誌における請求人の「情報を示す語十ウォーカー(Walker)」の紹介のされ方等々を総合的に考慮すれば、仮に、ある一つの「* * ウォーカー( Walker)」という雑誌やフリーマガジンそのものを知らない需要者・取引者であっても、雑誌等の商品に「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標が使用された場合には、需要者・取引者は、直ちに請求人又は請求人と関連のあるものが発行する雑誌であると想起することは必然である。
さらに、上述のように本件商標は、「入場券」等を意味する英語「ticket」と、「歩く人」を意味する英語 「walker」を一連に書してなり、その上段に「ticket walker」の表音表記である「チケットウォーカー」が併記されたものである。
これまで説明してきたように、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌やウェブサイトは、各媒体を通じて、映画・演劇・コンサート等や飲食店の各種情報を紹介するものである。そして、甲第4号証ないし甲第11号証に示したように、演劇やコンサート、映画の試写会等の鑑賞券を先行して予約できたり、飲食店の割引チケット(クーポン)が掲載されていることが非常に多い。
したがって、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」で構成される本件商標「チケットウォーカー/ticket walker」が、その指定商品「印刷物」に使用された場合には、本件商標に接した需要者・取引者は、「演劇やコンサート、映画の試写会等の鑑賞券」や「飲食店の割引チケット(クーポン)」の情報が掲載されたウォーカーシリーズの雑誌、すなわち、請求人が雑誌やムック等においてたびたび掲載する「チケット情報」に特化したウォーカーシリーズの雑誌等が出版されたと認識する又は認識するおそれがあることから、当然にして、本件商標「チケットウォーカー/ticket walker」は、請求人のウォーカーシリーズの雑誌と出所の混同の生じるおそれがある商標である。
これらの事実を考慮すれば、請求人が雑誌・ムック等の「印刷物」に使用する「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」と同様の構成からなる本件商標をその指定商品「印刷物」に使用した場合、需要者・取引者間に請求人の製造にかかる商品であると誤認・混同が生ずるおそれがあることは明白である。
イ 被請求人が使用する「ウォーカー/Walker」の語の意味合いについて
請求人が「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を広く使用した結果、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標中の「ウォーカー(Walker)」の語は、「情報を提供する」ことの代名詞のように需要者・取引者に認識される状況が形成されるに至っている。この状況は、請求人のウォーカーシリーズのブランドの著名性から生じたものである。
これに対して、被請求人も「ウォーカー/walker」の語を、『情報を提供する』という意味合いで使用している事実がある。この事実からも、「誤認/混同を生ずるおそれがある」という請求人の主張は認められるべきである。
(5)被請求人の不正競争目的について
被請求人は、他人が築いてきたブランドイメージにフリーライドするという不正競争目的も持ってブランド展開を行っていることが明らかであり、この点を鑑みても、本件商標は無効とされるべきである。
ア 被請求人のブランド展開について
請求人のウォーカーシリーズは全国的に周知・著名であり、一般の需要者・取引者であれば「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」で構成される商標を使用した出版物については、請求人の発行するウォーカーシリーズと当然にして関係があるものと認識されることは必定である。
これに対して、被請求人は、甲第47号証の1に示すように、携帯電話を通じて女性を対象にした情報提供を行ったり、女性ものの被服やアクセサリー等の通販事業を行ったりする事業者である。そして携帯電話の各サイトでは請求人と同様に『情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を用いて種々のブランド展開を行っている。
被請求人は、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標に化体している信用を利用する目的で商標を決定しており、被請求人が請求人のウォーカーシリーズの周知性・著名性にフリーライドする目的で商標を決定して、商標出願していることは明白である。
イ 被請求人の商標出願の戦略について
被請求人の商標出願の戦略も明らかに不正競争目的を感じるものである。 甲第53号証に示すように平成18年1月19日に被請求人は「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を第16類、第35類、第41類の商品・役務を指定して1日で80件もの商標を出願をしている。
ウ 被請求人の雑誌等の出版物を意図した広告について
被請求人(及びその関連会社)は、被請求人の関連会社である「株式会社響谷フミキ・クルーズ」の名義で取得した商標である「ファッションウォーカー/Fashion Walker」を使用したファッションウェブマガジンの展開を開始しているが、インターネット上で展開されるものとはいえ、その構成は明らかに雑誌そのものであり、当該サービスを開始するに当たって使用された電車の吊り広告には、「創刊」と表記し、テレビ広告の際にも「ファッション誌」であることを強調している。
このような被請求人の使用は、明らかに雑誌等の出版物を意識した、言い換えれば、出版物に請求人が使用する「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標と関係があることを感じさせる不正な使用態様であり、ブランドイメージへのフリーライドの意思が十分にうかがえる。
そして、被請求人が請求人のウォーカーシリーズのブランドイメージにフリーライドし、さらには業務上の信用を乗っ取るかのような行為をしている以上、本件商標が出版物に使用された場合には、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標と、混同を生ずることになるものと確信する。
(6)以上述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

5 答弁に対する弁駁
(1)「都市名又は地域名+ウォーカー」がシリーズ商品として認識されていない旨の答弁に対して
請求人の発行する「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の配本地域について、偏りがあることは認めるが、1つの地域に複数種類の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌が配本されている事実には誤りはない。また、全国の書店での「WakerClub」という企画の実施や定期的に「関西ウォーカー/KansaiWalker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の年間購読を雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等を通じて宣伝広告している。
したがって、各地域で「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を見た全国の需要者・取引者が、当該需要者・取引者の居住する地域以外の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を実際に目にし購入する機会があったことに疑いはない。
また、「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の各雑誌の誌面内において、他の地域の雑誌と合同で又は連動してイベントを企画していることを告知したり、合同の懸賞等も実施したりしている等の事実より、各地域において広く知られた「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌の需要者・取引者は、いわば兄弟誌・姉妹誌といえる、他の地域の「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌を知り得る状態にあったのである。
以上のように、全国の需要者・取引者が、少なくとも「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の雑誌をシリーズ商品であると認識していたことに疑いはない。
(2)出所の混同が生ずるおそれがない旨の答弁に対して
ア 「ウォーカー(Walker)」が商品「印刷物」について自他商品識別力を有しない旨の答弁に対して
被請求人の主張は、「ウォーカー(Walker)」の語は商品「印刷物」について自他商品識別力がなく、それゆえに角川グループの雑誌等を想起することはなく、出所の混同を生ずるおそれはないと主張しているものと解する。
しかしながら、「ウォーカー(Walker)」という英語には、元々「歩き回る人」という意味しか存在せず、「○○に関する情報を提供する『東京ウォーカー/TokyoWalker』等と同様の角川グループの雑誌」という意味合いにおいて「ウォーカー(Walker)」の語は「情報提供の代名詞」として認識されるのであって、被請求人の主張は、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」といえば、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等に代表される角川グループの情報誌という需要者及び取引者の認識を、ただで利用しようとする被請求人の詭弁である。
イ 「○○ウォーカー」すべての態様の商標にまで出所混同を生ずる範囲が及ぶ可能性がない旨の答弁に対して
商品「印刷物」について「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を、請求人以外の第三者が一般的、かつ、大々的に使用している事実・状況は、本件商標の出願時及び登録査定時において請求人の知る限り存在しない。
しかも「ウォーカー(Walker)」という語が上記アで述べたような意味合いで「情報を提供する」ための代名詞のようになった認識を、請求人のウォーカーシリーズの存在故に、被請求人を含めて需要者・取引者がもつようになっている状況下では、例えば、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を知っている需要者・取引者が、本件商標のような「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌等に接した場合、「ウォーカー(Walker)」の語の前に「情報を示す語」が記載されているという商標の構成が共通であるという点から、「著名情報雑誌『東京ウォーカー/TokyoWalker』と関連する雑誌である」と混同することは当然といえる。そもそも需要者・取引者は、『都市名又は地域名』(を示す名詞)と「その他の情報を示す語」(都市名又は地域名以外の名詞)を区別して認識したり、両者の間に質的な差異を認めたりしているとは通常考え難い。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む)を提出した。
1 請求人の利益について
請求人の利害関係そのものについては争わない。
2 無効理由について
(1)請求人の「ウォーカーシリーズ」における商標の使用実績について
ア 請求人が主張する194件の登録商標及び出願中の商標のうち、少なくとも請求人が使用したと主張しているものは31件(約16%)にとどまり、その他の163件はストック商標若しくは防衛的に取得した商標と思われ、いずれにせよ未使用である。
イ 仮に、請求人が甲第4号証以下の情報誌を発行していたとしても、本件商標の出願時及び登録査定時に発行されていたのは、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」「関西ウォーカー/Kansai Walker」「東海ウォーカー/Tokai Walker」「九州ウォーカー/Kyushu Walker」「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」「千葉ウォーカー/Chiba Walker」「神戸ウォーカー/Kobe Walker」「北海道ウォーカー/Hokkaido Walker」のみであり、その他は既に廃刊、または未発行だったから、本件商標が出願時及び登録査定時に商標法第4条第1項第15号に該当していたかどうかの判断には無関係である。
ウ 請求人は「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標の使用状況について述べているが、本件商標の登録以後の事情が多く含まれている。
本件商標の登録以後の事情は、商標法第4条第1項第15号の要件とは無関係である。
(2)「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用した「ウォーカーシリーズ」について
ア 反論の前にまず明らかにしておきたいが、請求人は審判請求書において恰も一般に使用されているかの如く「ウォーカーシリーズ」なる造語を頻繁に使用しているが、「ウォーカーシリーズ」の語は請求人自身及び一部の記事以外には使用されておらず、一般の需要者・取引者にこれら商品がシリーズ商品として認識され、かつ「ウォーカーシリーズ」と称されている事実を証する証拠は見当たらない。
イ 請求人は、出版業界のみで通用する不正確な数字や無意味な調査結果を挙げているが、これが審判や裁判における立証を果たすものではなく、結局本件商標の出願時及び登録査定時には「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等のリージョナル誌が、それぞれ各発行地域(東京30km圏、関西、名古屋、北部九州、札幌)においてある程度の周知性を獲得していたことが証明されたにとどまり、これを遙かに超えてシリーズ商品として全国的に著名であり、「ウォーカー」の語のみを保護するに足る法益が存在したと認められる理由は認められない。
ウ 本件商標の出願時及び登録査定時の「都市名又は地域名を表す語」と「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標の使用状況よりすると、仮に各商標に冠された各都市や地域それぞれにおいては請求人の発行するリージョナル誌の題名として地域限定的に周知性を獲得していたとしても、その都市や地域以外の需要者は雑誌が発行されていることすら知る由もなく、ましてや「ウォーカー」が請求人の発行に係るシリーズ商品を表すものとして認識していた事実が存在したとは到底認められない。
(3)「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」からなる商標を使用した「ウォーカーシリーズ」について
「その他の情報を示す語+ウォーカー(Walker)」からなる商標の使用の事実として挙げられている各雑誌のうち「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」「マンスリーウォーカー/Monthly Walker」「ワールドウォーカー/World Walker」及び「メンズウォーカー/MENS’WALKER」は本件商標出願前に相次いで廃刊になったもの、その他は単発的に発行された増刊号又は本件商標登録後に発行が開始されたものである。
「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」「マンスリーウォーカー/Monthly Walker」「ワールドウォーカー/World Walker」及び「メンズウォーカー/MENS’WALKER」は、他にも事情があったのかもしれないが、廃刊されたのであるから採算が取れないほど売れなかったのであろう。売れなくて廃刊になった雑誌の商標が周知である、と主張するとは世間一般の常識に照らせば奇異という他はない。
(4)以上のように、請求人は「請求人の『ウォーカーシリーズ』における商標の使用実績について」において大量の証拠を提出するとともに長々と論じてはいるが、多くは本件商標の出願時・登録時において出所混同が生じるおそれがあるか否かとは無関係の内容であり、結局本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するにも拘わらず登録されたものとは認められない。 何故ならば、請求人提出の各証拠によると、本件商標の出願時及び登録査定時に、請求人が「ウォーカー(Walker)」の語を含む商標を使用していたのは、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等のリージョナル誌のみであり、これらはリージョナル誌であるため当然に発行地域がそれぞれ異なるから、各地域の需要者はそれぞれ一種類の「○○ウォーカー」しか目にすることはないので、「ウォーカーは請求人のシリーズ商品に共通する表示である」との認識を形成する状況が想定し得ないからである。
本件出願時及び登録査定時には、請求人は8誌の各リージョナル誌、すなわち「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」「東海ウォーカー」「九州ウォーカー」「千葉ウォーカー」「北海道ウォーカー」及び「神戸ウォーカー」しか、「○○ウォーカー」の態様の商標を附した雑誌を発行していなかった。よって、仮に「ウォーカー」が請求人のシリーズ商品を表示するものだったとしても、そのシリーズ商品は「都市名又は地域名+ウォーカー」のリージョナル誌のシリーズであると需要者に認識されていた、とみるのが相当である。
(5)裁判所及び特許庁における過去の判断について
請求人の挙げた判決例・審決例等は、商標の構成等において本件と事案を異にするものであり、それらの判決例・審決例をもって本件の出所混同の判断の基準とするのは適切ではない。
また、ある登録商標が無効にされるか否かの判断は、個々の登録商標ごとに個別具体的に検討判断されるべきことは明らかであることよりすると、請求人の挙げている判決例等に拘束されるものではない。
請求人の挙げた各判決例等は本件商標の出願・登録査定時に「請求人のウォーカーシリーズの商標が全国的に周知・著名な商標であること」には何ら関わりのないものである。
(6)請求人のウォーカーシリーズに対する需要者・取引者の認識について
請求人は、「第三者の『情報を示す語+ウォーカー(Walker)』の使用や商標出願が、多くなってきた。」と述べているが、これはいつの時点のことなのか、毎年何件あって前年比どれぐらい増加したのかなど何も事実が示されていない。
よって、これは単なる請求人の感想であって、審判請求書に記載すべき事柄ではない。また請求人は、「多くなってきた」理由を「ウォーカーシリーズが、全国的に周知性を獲得し、そして著名性を獲得していくにしたがって、そのブランドイメージにフリーライドまたは利用しようとする(あやかろうとする)」からであると断じているが、請求人の願望に過ぎない。
「ウォーカー(Walker)」は「情報を提供することの代名詞」なので当業界において採択されやすい、という事情に原因を求める方が、より合理的である。雑誌の題号は、その雑誌の内容を端的に表すものが採択されやすい、という当業界の慣例がある。
(7)混同の生ずるおそれについて
「ウォーカー/walker」は、請求人も自認しているように、「情報提供の代名詞」を意味する自他商品識別機能を有さない語である。よって、出所の混同は生じない。
(8)「商標権者の不正競争目的について」に対する反論
被請求人は、他人のブランドイメージにフリーライドするような行為は一切行っていない。
よって、被請求人は、「不正競争目的」なるものは有していない。
(9)まとめ
以上のように、本件商標は商標法第4条第1項台15号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはないので、本案に入って審理する。
1 本件商標と請求人使用商標の類似について
本件商標は、前記第1のとおり、「チケットウォーカー」の片仮名文字及び「ticket walker」の欧文字を上下二段に横書きしてなるものであり、「チケットウォーカー」の片仮名文字が、「ticket walker」の欧文字の読みを表したものと無理なく理解し得るものである。
そして、「チケットウォーカー」及び「ticket walker」の構成文字は、それぞれ同じ書体でまとまりよく一体的に表してなるものであるから、外観上一体のものとして把握し得るものである。
また、「チケットウォーカー」及び「ticket walker」より生ずる「チケットウォーカー」の称呼も冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、本件商標構成中「ticket」の文字部分は、「入場券」の意味を有する語として、極めて平易な英語であり、また、「walker」の文字は、「散歩する人、歩く人」等の意味を有する極めて平易な英語であるが、これらを結合してなる本件商標は、全体として特定の意味合いを有しない造語とみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、「チケットウォーカー」及び「ticket walker」の構成文字をもって一体不可分の構成よりなるものと認識され、それぞれの構成文字に相応して「チケットウォーカー」の一連の称呼のみを生ずるものというべきである。
そして、本件商標を「チケット/ticket」と「ウォーカー/walker」の各文字に分離して把握、認識しなければならない特段の事情があるものとは認められない。
他方、請求人が引用する「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を始め、「関西ウォーカー/Kansai Walker」「東海ウォーカー/Tokai Walker」「九州ウォーカー/Kyushu Walker」等(以下「請求人使用商標」という。)は、まとまりよく一体的に表されているものであるから、外観上一体のものとして把握し得るものである。
また、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」から生ずる「トウキョウウォーカー」、「関西ウォーカー/Kansai Walker」から生ずる「カンサイウォーカー」、「東海ウォーカー/Tokai Walker」から生ずる「トウカイウォーカー」、「九州ウォーカー/Kyushu Walker」から生ずる「キュウシュウウォーカー」等の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、請求人使用商標は、それぞれの構成文字に相応して「トウキョウウォーカー」、「カンサイウォーカー」、「トウカイウォーカー」、「キュウシュウウォーカー」等の称呼及び「東京を歩く人」、「関西を歩く人」、「東海を歩く人」、「九州を歩く人」等の各観念を生ずるものである。
そうとすれば、請求人使用商標から「ウォーカー/Walker」の文字部分のみを抽出して、称呼、観念しなければならない特段の事情は認められない。
してみれば、請求人使用商標の構成中「東京/Tokyo」「関西/Kansai」等の文字部分が、我が国の地名を表す語として使用される場合があるとしても、かかる構成においては、需要者間に、全体をもって一体不可分の構成からなる商標として認識され、把握されるものとみるのが自然である。
そこで、本件商標と請求人使用商標とを比較するに、その構成中「ウォーカー/walker」の文字部分を共通にしているものの、両商標の外観、称呼及び観念は上記で述べたとおりであるから、両商標は、外観、称呼及び観念を異にする別異の商標であるというべきである。

2 出所混同のおそれについて
甲第12号証の1ないし14によれば、請求人は、平成2年3月の「東京ウォーカー」(TokyoWalker)の創刊より長年にわたり、請求人使用商標を雑誌(以下「請求人使用商品」という。)に使用していた事実が認められる。
請求人使用商品の表紙上部には、「Tokyo Walker」との雑誌名が大きく目を引く形で記載されている。そして、該雑誌は、社団法人日本ABC協会発行の「レポート(1992年から2005年上半期)」(甲第12号証)によれば、雑誌「Tokyo Walker」の各号ごとの販売部数は、平成4年が約28万部、平成5年が約38万部、平成6年が約42万部、平成7年が約42万部、平成8年が約40万部、平成9年が約37万部、平成10年が約29万部、平成11年が約24万部、平成12年が約17万部、平成13年が約14万部、平成14年が約11万部、平成15年の上半期が11万部となっていて、該雑誌「Tokyo Walker」をさきがけとして、平成6年6月に「関西ウォーカー/Kansai Walker」、平成8年7月に「東海ウォーカー/Tokai Walker」、平成9年6月に「九州ウォーカー/Kyusyu Walker」などのタイトルを付した各地域ごとの総合情報誌を続々と創刊していったことが認められる。
そうとすると、本件商標の出願時及び登録査定時において、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を初めとする「都市名又は地域名+ウォーカー(Walker)」の構成からなる請求人使用商標は、取引者・需要者の間に広く知られていたものといえる。しかしながら、これらは雑誌名として構成全体が一体不可分に認識される形で周知著名となっていたものというべきである。
そして、本件商標と請求人使用商標とが別異の商標であることは、上記1で述べたとおりであり、他に両商標間には誤認、混同を生じさせる理由は見いだし得ない。
したがって、本件商標と請求人使用商標とが、その構成中「ウォーカー/Walker」の文字部分を共通にしているとしても、本件商標に接する需要者・取引者は、これより請求人使用商標を連想、想起したり、その商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

3 請求人の主張
請求人は、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標を使用した雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等が周知・著名であるとし、本件商標は、請求人の「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の商標と構成が同一であることから、本件商標の指定商品中「印刷物」に使用した場合、需要者・取引者は、直ちに請求人又は請求人と関連がある者が発行する「印刷物」であると想起するのが必然である旨を主張している。
しかしながら、請求人の提出に係る証拠によっては、請求人使用商標のほか、「ゲームウォーカー」、「メンズウォーカー」等地名以外の語による商標の使用の事実が認められるとしても、本件商標の出願時及び登録査定時において、「情報を示す語+ウォーカー(Walker)」の構成の商標であれば、請求人又は請求人と関係のある者の業務に係る印刷物であることを表示するというほど著名であるとは、認めることができないから、この点についての請求人の主張は採用できない。
また、その他の請求人の主張及び証拠をもってしても、本件審判の結論を覆すに足りない。

4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第4646716号商標)


(2)本件指定商品及び指定役務
第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,電気式鉛筆削り,装飾塗工用ブラシ,紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」
第35類「インターネットによる広告,その他の広告,ウェブサイト上の広告スペースの貸与,コンピュータ通信を用いて行う電子メールによる広告物の配布,郵便による広告物の配布,その他の広告物の配布,広告に関する情報の提供,トレーディングスタンプの発行,インターネットによりデータベースを利用させる事業の管理又は運営及びそのための一般事務の代理又は代行,コンピュータによる顧客管理,コンピュータによる経営の診断又は経営に関する助言,情報処理及び情報通信ネットワークの運営に関する事業の経営の診断及び指導・その他の技術に関する経営の診断及び指導,商品の通信販売に関する情報の提供,電子計算機端末による商品の販売に関する情報の提供,書籍の販売に関する情報の提供,情報通信関連機器の販売に関する情報の提供,新商品の販売に関する情報の提供・その他の商品の販売に関する情報の提供,建物又は土地に関する市場調査,コンピュータによる市場調査,その他の市場調査,ホテルの事業の管理,経営管理者・科学技術者・通訳のあっせん,その他の職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供,競売の運営(インターネットオークションの運営を含む。),新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,通信販売に関する事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,一般事務の代理又は代行,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング及び電子計算機によるファイル管理,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与,コンピュータデータベースへの情報構築及び情報編集,建物又は土地に関する事業の企画,魚・花市場における相場に関する情報の提供,電子計算機端末による企業情報の提供,その他の企業情報の提供,事業の経営及び管理のための製品計画・商品の販売促進の企画に関する情報の提供,インターネットを利用した企業経営に関する情報の提供,経営の診断及び指導に関する情報の提供,事業の管理又は運営に関する情報の提供,輸出入に関する事務の代理又は代行に関する情報の提供,企業の経営管理に関するコンサルティング,企業経営に関する情報の提供,企業経営ノウハウに関する情報の提供,市場及び販売戦略に関する指導及び助言,事業の管理・運営及び組織に関する助言又は援助,新事業の経営・管理に関する製品計画・商品の販売促進の企画についての助言・指導,電子計算機の操作に関する助言,インターネットドメイン名取得申請手続きの事務の代行,受託による広告用看板の制作,アンケート調査に関する情報の提供,インターネットにおける商品の展示即売会の企画・運営又は開催,商品の展示即売会の企画・運営又は開催,商品の売買契約の媒介又は取次ぎ」
第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授に関する情報の提供,研究用教材に関する情報の提供およびその仲介,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナー・研修会・講習会の企画・運営又は開催,セミナー・研修会・講習会の企画又は運営に関する情報の提供,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオ・コンパクトディスク・光学式ビデオディスクの制作(映像・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組等の制作における演出,映像機器・音声機器等であって放送番組等の制作に使用されるものの操作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,キャンプの企画・運営又は開催,その他のスポーツの興行の企画・運営又は開催,パーティーの企画又は運営,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,インターネットにおけるフリーマーケット興行の企画・運営又は開催,フリーマーケット興行の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供又はこれらに関する情報の提供,通訳,翻訳,書画の貸与,写真の撮影,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,美術品の貸与,メガホンの貸与,舞台用小道具の貸与,インターネットを利用した興行場の座席の手配その他の興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,録画済みマイクロフィルムの貸与,おもちゃの貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,美術用モデルの提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲーム又はカラオケのための映像及び楽曲・歌詞の提供,ビデオテープの編集,インターネット又はコンピュータネットワークを通じた対戦ゲームの提供,通信回線を利用したゲームの提供,インターネット上のゲーム大会の企画・運営・開催,インターネット上で遊戯する電子ゲームの提供,その他の対戦ゲーム大会の企画・運営・開催,CD-ROM原盤の制作,家庭用テレビゲームおもちゃ専用のプログラムを記憶させた磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM・RAM及び磁気テープの貸与,テレビゲームイベントの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営に関する情報の提供,ビデオテープ映画の上映に関する情報の提供,コンピュータグラフィックスによる映画の制作,映画の上映・制作又は配給に関する情報の提供,演芸の上演・演劇の演出又は上演・音楽の演奏に関する情報の提供,放送番組の制作に関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)又はこれらに関する情報の提供,放送番組等の制作における演出又はこれらに関する情報の提供,テレビジョン受信機の貸与に関する情報の提供,ラジオ受信機の貸与に関する情報の提供,図書の貸与に関する情報の提供,レコード又は録音済み磁気テープの貸与・録画済み磁気テープの貸与に関する情報の提供,電子計算機端末による通信を用いた映画・演芸・演劇又は音楽の演奏に関する書籍・ビデオテープ及びオーディオテープの貸与」

審理終結日 2009-03-09 
結審通知日 2009-03-11 
審決日 2009-04-13 
出願番号 商願2002-38352(T2002-38352) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Y16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
内山 進
登録日 2003-02-21 
登録番号 商標登録第4646716号(T4646716) 
商標の称呼 チケットウオーカー 
代理人 山田 朋彦 
代理人 網野 友康 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 初瀬 俊哉 

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