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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X31
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X31
管理番号 1197336 
審判番号 不服2008-14381 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-09 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 商願2007- 93122拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「土佐マンゴー」の文字を標準文字で横書きしてなり、第31類「マンゴー」を指定商品として、平成19年8月30日に登録出願されたものであり、その後、指定商品については、原審における同20年4月15日付けの手続補正書において、第31類「高知県産のマンゴー」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係から、『高知県全域を占める旧国名』と看取される『土佐』の文字と商品名である『マンゴー』とを結合した『土佐マンゴー』の文字を、標準文字で書してなるにすぎないものであるから、これを本願指定商品に使用するときは、単に商品の産地・品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記産地商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。なお、出願人は、商標法第3条第2項の主張をしているものと受け止められるので、進んで判断するに、その証拠について、『高知県の中でも数の少ない、しかも一番生産量の多いマンゴー農家』等の記載は見られるが、十分に証明しているものと認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審において通知した審尋
請求人に対して、平成20年12月2日付けで次の事項について回答を求めた。

請求人は、請求の理由において、「既に使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであり、商標法第3条第2項の適用を主張する。」と述べるとともに、第1号証ないし第6号証として、商品チラシ、商品に貼付するラベル及び商品注文書を提出している。
しかしながら、これらの証拠によれば、本願商標が商品「マンゴー」に使用されていることは認められるものの、本願商標の使用開始時期、使用期間、使用地域、本願商標を使用した商品の生産又は販売の数量(生産量、売上高やシェア等)、広告宣伝の方法及び回数、並びに一般紙、業界紙、雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容等の使用状況に関する事実については確認することができないものであり、商標法第3条第2項の適用の有無を判断するための客観的証拠は不十分であるといえる。
よって、請求人が提出した証拠によっては、本願商標が、その指定商品に使用された結果、請求人の業務に係るものとして、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていると認めることができない。
ところで、請求人は、「商標法第3条第2項の審理に際して、使用状況を必要に応じて補充する準備がある」旨述べている。
そこで、当合議体は、請求人にこの点について意見を求めるとともに、商標が使用により識別力を有するに至ったかについて総合勘案して判断するために必要な証拠の提出を求めるものである。

第4 審尋に対する請求人の回答
請求人は、上記第3の審尋に対し、平成21年1月14日付け回答書において、次のように回答した。

本願商標に対して商標法第3条第2項の適用を主張するとともに、本願商標が「既に使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」であることを明らかとする。
1 出願人の陳述書を第7号証として提出し、これにより、本願商標の商標権による保護を必要としていること、本願商標「土佐マンゴー」が識別標識として現に機能していること、本願商標を商標権によって保護することが流通秩序の維持確立に貢献することを説明する。
2 出願人は商標法第3条第2項の適用に際して、一般的に必要とされる多量の宣伝広告活動の資料を提出することができない。出願人が栽培し、本願商標「土佐マンゴー」を使用して販売する「高知県産のマンゴー」については、数多くの新聞・TV・雑誌等のメディアの取材を受けているが、出願人自身が手元に収集保管しているものは少ない。また、出願人自身が多大の費用をかけて大規模な宣伝活動を展開しているものでもない。例えば、インターネットの検索エンジン「Yahoo」で「”土佐マンゴー”」を検索したところ、「749件」がヒットしたが、これらは全て出願人が栽培して販売した「土佐マンゴー」に関するものであるが、出願人自らが掲載したものは1件もない。出願人はホームページさえ開設していない。これらは、出願人或いは出願人が卸売りした業者から仕入れた販売業者の販売のための記事や、購入したユーザーの感想、ブログ等の記事である。
3 本願商標の使用開始時期・販売量等について、第7号証に示すとおり、出願人は高知県内では誰も栽培していなかった「マンゴー」の栽培に着手し、平成12年10月13日に苗木100本を定植して栽培を開始した。そして、平成13年より本願商標「土佐マンゴー」を採択して、本願商標「土佐マンゴー」の下に初出荷を行い、現在までその生産量・販売量を順調に増やしている。平成14年の収穫量は1400個(420キロ)で売上高は84万円に過ぎなかったものが、平成20年には33アールの果樹園で栽培し、収穫量は24000個(6810キロ)で売上高は2012万円であった。これらは、青果物の卸売会社、次いで地元の伊野町農業協同組合を通じての出荷、及び出願人の直接販売を行ってきた。出願人が直接販売するマンゴーは、全国1200カ所を超える届け先に販売されている。
4 平成17年までの期間は、高知県内でマンゴーを栽培・販売しているのは出願人のみであり、平成18年より他の者もマンゴーの栽培に着手しているが、その栽培量はごくわずかである。そして、市場においては出願人の「土佐マンゴー」がブランドとして確立していたため、他の栽培者は「土佐マンゴー」との混同を避けるため、本願商標とは異なる商標で販売している。
5 現況において出願人が提出することができる証拠は今回提出するものであるが、全体を精査すれば、本願商標が「既に使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」であり、本願商標を商標権によって保護することが流通秩序の維持確立に貢献することが理解できると考える。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、「土佐マンゴー」の文字を標準文字で書してなるところ、該構成中の「土佐」の文字が、「旧国名。今の高知県。高知県中部、仁淀川下流に沿う市。」を意味する語として知られているものであり、また、「マンゴー」の文字についても、「枝の頂に黄色小花を付け、楕円形、黄色の核果を結ぶ。美味。独特の異臭がある。代表的な熱帯果実で世界で広く栽培。」(いずれも株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)を意味する語として知られているものと認められる。
してみると、本願商標は、補正後の指定商品との関係から、高知県の旧国名であり現在の高知県であることを看取させる「土佐」の文字と商品名である「マンゴー」とを結合したもの、すなわち「高知県で生産されたマンゴー」であると理解させるにとどまり、単に商品の品質、産地を表示したものと認識させるにすぎないといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項について
請求人は、請求の理由において、「既に使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであり、商標法第3条第2項の適用を主張する。」と述べるとともに、第1号証ないし第25号証(「枝番号」を含む。以下、「枝番号」全てを引用するときはその「枝番号」を省略する。)を提出している。
ところで、ある商標が使用により自他商品識別力を認められることについて、平成19年(行ケ)第10050号判決(知的財産高等裁判所 平成19年10月31日判決言渡)は、商標法第3条第2項の趣旨について、「当該商標が,本来であれば,自他商品識別力を持たないとされる標章であっても,特定人が当該商標をその業務に係る商品,役務に使用した結果,当該商品等から,商品等の出所と特定の事業者との関連を認識することができる程度に,広く知られるに至った場合には,登録商標として保護を与えない実質的な理由に乏しいといえること,当該商標の使用によって,商品等の出所であると認識された事業者による独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者等に,当該商標を使用する余地を残しておく公益的な要請は喪失したとして差し支えないことにあるものと解される。商標が商標法3条2項の規定により商標登録を受けることができるものであるかを判断するに当たっては,上記の観点を勘案して,当該商標及び商品,役務の性質・態様,取引の実情等を総合考慮すべきである。」及び「商標法3条2項に該当する商標と認められるためには,当該商標から,商品等の出所と特定の事業者との関連を認識することができる程度に広く知られるに至ったといえる必要があり,取引者,需要者に,偶然,広告を見たとか,個人的な関係があるとか,一般的とはいえない特別な関心を持っていたため,知られていたと評価されるような場合に当該商標の保護を認めることは相当でないし,また,商標権が全国的に及ぶことからも,地域的に限られた範囲においてのみ,知られているといえるような場合においても,その商標が広く知られているとして保護するのは相当ではない。」旨判示している。
そして、上記判決の趣旨からすると、商標法第3条第2項の要件を具備し登録が認められるための要件は、(1)実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者、需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、(2)出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、が必要であると解される。
そこで、以上の観点を踏まえて、請求人提出の証拠等について検討する。
(ア)第1号証ないし第3号証は、「商品チラシ」であるが、当該チラシには、本願商標と同一と見なすことができる「土佐マンゴー」の文字及び請求人の氏名が記載されている。
しかしながら、該チラシについては、出願人自らの宣伝広告活動に係るものである旨主張するが、チラシの作成時期、作成数量、使用開始時期、使用期間、それが頒布された地域の範囲や頒布の方法等について確認することができない。
(イ)第4号証及び第5号証は、「商品に貼付するラベル」であるが、当該ラベルのうち上段に貼られた小ラベルには、本願商標と同一と見なすことができる「土佐マンゴー」の文字、請求人の氏名が記載されている。また、下段のラベルには、請求人の氏名が記載されているものの、本願商標若しくはそれと同視できる程度の商標について確認することができない。
ところで、該ラベルについては、出願人自らの宣伝広告活動に係るものである旨主張するが、ラベルの作成時期、作成数量、使用開始時期、使用期間、それが使用された地域の範囲等について確認することができない。
(ウ)第6号証は、「土佐マンゴー注文書」であるが、当該注文書には、本願商標と同一と見なすことができる「土佐マンゴー」の文字及び請求人の氏名が記載されている。
しかしながら、該注文書は、出願人自らの宣伝広告活動に係るものである旨主張するが、注文書の作成時期、作成数量、使用開始時期、使用期間、それが使用された地域の範囲や使用の方法等について確認することができない。
(エ)第7号証は、「出願人の陳述書」であるが、当該書面には、平成13年から出荷が始まったこと、平成20年までの収穫数、東京、大阪の市場にも出荷していること等についての記載があるが、当該書面は請求人自身が作成したものであって、収穫数等の内容について、客観的に認めるに足りる証拠の添付はない。
(オ)第8号証は、「土佐マンゴー栽培における履歴」と題する書面であるが、請求人が生産したマンゴーについて、平成13年から出荷が始まったこと等の記載があるが、その内容について、客観的に認めるに足りる証拠の添付はない。
(カ)第9号証ないし第15号証は、高知県吾川郡いの町長、伊野町農業協同組合等が証明した「証明書」である。
ところで、これら証明書は、商標の使用が開始された年月について記載されているところ、第11号証ないし第14号証は「平成15年6月から」と記載されているが、第15号証-1ないし16は、上記使用開始の年月が、「平成15年6月から」を除いた「平成13年4月から」から「平成20年6月から」までのいずれかの年月が記載されているものである。また、これら証明書については、第15号証-3の証明者の住所が島根県であり、第15号証-5の証明者の住所が東京都大田区であり、この2通以外の証明書は、証明者がいずれも高知県内に住所を置く者であることが認められる。
さらに、これらの証明書は、同一の内容の書面に、証明者が証明者欄に記名、押印して作成されたものである。
してみると、これらの証明書は、本願商標と同一と見なすことができる「土佐マンゴー」の文字及び請求人の氏名が記載されているものであるとしても、商標の使用開始時期について確認することができないばかりか、各証明書の証明者がいかなる事実に基づき証明しているのかが不明であることから、これら証明書の客観性は直ちに認め難く、証拠力に乏しいものであるといわざるを得ない。
(キ)第16号証は、一般需要者(消費者)の「証明書」である。
そして、これら証明書は、本願商標と同一と見なすことができる「土佐マンゴー」の文字について証明したものであるが、定型の書面に、証明者が証明書の作成日及び使用開始の年月の数字を記載し、証明者欄に記名、押印して作成されたもので、各証明書の証明者がいかなる事実に基づき証明しているのかが不明であることから、これら証明書の客観性は直ちに認め難く、証拠力に乏しいものであるといわざるを得ない。
また、第16号証は、37通提出されているが、証明者はいずれも高知県内に住所を置く者と認められる。
(ク)第17号証ないし第21号証は、平成20年(2008年)の作成日に係る「届け先マスタプルーフリスト」と題する出願人の顧客リストを抜粋したもの及び宅配業者から請求人への請求書の写しである。
これらの書面によると、高知県内を含む国内各地に商品「マンゴー」が発送されたということができるが、商品「マンゴー」が一般の取引者、需要者において普通に取引、購入される商品であることからすれば、該書面はわずか1年分にかかる書面であり、かつ、それらに記載されている発送先の数や発送の個数は、一般の取引者、需要者にまで全国的に知られている程に多数であるということはできないものである。
(ケ)第22号証は、株式会社テレビ高知で放送された取材内容(動画)を収納したDVDであるが、内容を確認したところ、請求人が高知県においてマンゴーを生産していることは認められるが、本願商標の使用については確認することができない。
(コ)第23号証及び第24号証は、新聞記事を検索するデータベースからの高知新聞及び日本農業新聞の記事検索結果であるが、これらの検索結果の新聞記事においては、請求人が高知県においてマンゴーを生産していることは認められるが、本願商標の使用については確認することができない。
(サ)第25号証は、販売を行う取引業者に係るインターネットのウェブページや個人のブログを記載したウェブページの記載の写しであるが、これらウェブページの記載中には、本願商標「土佐マンゴー」と異なる記載がされているもの(例えば、第25号証-1には「アップル土佐マンゴー」や「土佐アップルマンゴー」の使用例)や、請求人氏名の記載が確認することができないもの(第25号証-5)も含まれており、さらに、個人が作成するブログについては、これがどのように本願商標について広告、宣伝するものであるのかについては不明であることから、これらウェブページによって、本願商標が広く知られたものであるということまでを認めることはできない。
以上、請求人が提出した各証拠を総合して判断すると、本願商標については、これを使用した商品についての使用開始時期、使用した期間・地域、生産の数量、売上高等について、客観的裏付けがないものであり、かつ、これらの数字が、同業者間において、どれくらいの営業規模を示し、どれくらいの市場占有率であるのか不明であり、使用状況を示す事実としては不十分である。さらに、本願商標の広告宣伝のされた期間、地域及び規模、一般紙・業界紙、雑誌等における記事の掲載の回数及び内容等の状況に関する事実についての客観的証拠についても、いまだに不十分であるといわざるを得ない。
してみると、請求人の提出に係る各証拠によっては、本願商標がその指定商品に使用をされた結果、全国的に及ぶ範囲の取引者、需要者が、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものということができない。
なお、請求人は、「出願人が栽培し、本願商標『土佐マンゴー』を使用して販売する『高知県産のマンゴー』については、数多くの新聞・TV・雑誌等のメディアの取材を受けているが、出願人自身が手元に収集保管しているものは少ない。また、出願人自身が多大の費用をかけて大規模な宣伝活動を展開しているものでもない。これは出願人が『土佐マンゴー』の品質によって確たる地位を築いてきたからに他ならず、膨大な宣伝量によって実体の伴わない、或いは実際の商品と遊離した周知性を確保したものではないからである。」である旨述べている。
しかしながら、請求人自身が多大の費用をかけて大規模な宣伝活動を行うことができない事情があるとしても、請求人の主張並びに提出された全証拠をみても、本願商標を採択して初出荷を行ったとする平成13年から現在に至る数年間で、本願指定商品の取引者、需要者の間で全国的に認識されるに至ったということを確認することができない以上、請求人の主張は採用することができない。
さらに、請求人は、「市場においては出願人の『土佐マンゴー』がブランドとして確立していたため、他の栽培者は『土佐マンゴー』との混同を避けるため、異なる商標で販売している。よって、出願人以外に『土佐マンゴー』を識別標識として使用する必要のある者はいない。」旨主張するが、取引市場において、本願商標が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものに至っていると認められないこと、上記のとおりであり、かつ、本願商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものである。
したがって、この点についての請求人の主張も採用することができない。
3 結論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、これを理由に本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-03-06 
結審通知日 2009-03-09 
審決日 2009-03-23 
出願番号 商願2007-93122(T2007-93122) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X31)
T 1 8・ 17- Z (X31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 小畑 恵一
杉本 克治
商標の称呼 トサマンゴー 
代理人 田中 幹人 

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