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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1195485 
審判番号 取消2008-300333 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-03-17 
確定日 2009-03-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4784181号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4784181号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4784181号商標(以下「本件商標」という。)は、「次郎長三国志」の文字を標準文字により表してなり、平成15年12月26日に登録出願され、第9類「スロットマシン」を指定商品として平成16年7月2日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、今日に至るまで3年以上使用されていないことが請求人の調査により明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その不使用を理由とする登録の取消しを免れないものである。
(2)弁駁の理由
(ア)商標法第50条第1項の要件について
商標法第50条第1項は「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用」をすることを登録商標の使用の要件として規定し、かかる使用を被請求人が証明しない限り、商標登録が取り消される旨規定している(同条第2項本文)。
被請求人は、回胴遊技機(パチスロ機、パロット機:以下「本件商品」という。)に関して、商品化の企画を進めており、試作機の段階まで進んでおり、遊技機規則の変更、市場の動向変化のため販売に至っていないものの、今後の状況を勘案しながら商品化に向けて開発の再開を計画している旨主張する。
しかしながら、商標法上の商品とは、流通の場に置かれ、取引の対象となるものであることを要するところ、本件商品は、被請求人も認めるように、販売には至っていない。また、現在においても、被請求人は、本件商品の商品化に向けて開発の再開を、単に計画しているにすぎない。
したがって、現在及び過去においても、本件商品は、一切市場に流通しておらず、商取引の対象となっていないのであって、これが商標法上の商品に該当しないことは明らかであり、仮に、本件商品に本件商標を付していたとしても、これをもって「指定商品についての登録商標の使用」ということはできない。
また、被請求人は、スロットマシンと思しき商品の試作機の写真を乙第1号証として提出している。
しかしながら、該試作機には、本件商標は一切付されておらず、しかも、これが撮影された日時も明らかにされていないのであるから、被請求人の本件商標を使用しているとの主張には理由はなく、本件商標が商標法第50条第2項の規定によって取り消されるべきであることは明らかである。
(イ)商標法第50条第2項ただし書の要件について
念のため、被請求人において、商標法第50条第2項に規定する不使用についての「正当理由」が存在するか検討すると、同項に規定する「正当理由」としては、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が想定される。他方、単なる経営不振、商品開発の遅れ、商品の市場性の欠如等による場合には、正当理由には該当しないと考えられる(青林書院「注解商標法[新版]下巻」1152頁)。
この点、被請求人は、「本件商品の企画化を進めており、試作機の段階まで進んでいたが、遊技機規則の変更、市場の動向変化のため販売に至っていない。しかしながら、今後の状況を勘案しながら商品化に向けて開発を計画しており」と述べるものであり、被請求人が、登録後現在に至るまで、本件商標を付した商品を流通の場に置かなかったことは被請求人の内部事情にすぎず、これを同項に規定する「正当理由」ということはできない。
一方で、被請求人は、「CRジャイアントコング」、「CRドリームカープ」、「CRダイビングタイガー」、「CRドラゴン」、「CRハイパーホーク」、「CRキングシーサー」、「CRミリオンスター」、「CRトラ・トラ・トラ」、「CR山親爺」といった商標が付された商品を、本件商標が登録された平成16年から市場に投入している。したがって、本件商標についても、被請求人が使用をする意思さえあれば使用できたと考えるのが相当であって、本件商標の不使用につき「正当理由」が存在しないことは明らかである。
(ウ)因みに、請求人は、同じく被請求人が名義人となっている商標登録第4784180号に対しても不使用取消審判を請求したところ(取消2008-300332)、被請求人から本件審判事件と全く同じ写真を証拠とする答弁書が提出された。
本件商標及び上記審判事件に係る登録商標「次郎長」は、被請求人のブランドネームというよりは、各商品について個別に使用するプロダクトネームとして使用することを想定していたと推察される。しかしながら、「スロットマシン」の取引分野において、同一の出所を表示する2以上のプロダクトネームが一つの商品に使用されるということは、取引の実情に照らして、極めて考え難いものである。
してみれば、被請求人は、たまたまスロットマシンの試作機(又はその写真)が被請求人の手元にあったことを奇貨として、これを提出したにすぎないとも考えられ、そもそも、被請求人が本件商標を付した商品の開発を計画していたとの主張についても疑わざるを得ない。
(エ)まとめ
以上のように、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていた事実は一切証明されておらず、かつ、不使用についても正当理由が存在することは明らかにされておらず、よって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものである。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
被請求人は、遊技機の製造会社であり、日本遊技機工業組合の一員として主にパチンコ機の製造、販売を行っており、本件商品(回胴遊技機(パチスロ機、パロット機))も事業の一環として企画、開発を行っている。本件商品については、商品化の企画を進めており、試作機の段階まで進んでいたが、遊技機規則の変更、市場の動向変化のため販売にまで至っていない。しかしながら、今後の状況を勘案しながら商品化に向けて開発の再開を計画しており、被請求人としては本件商標を使用しているとの認識であり、万一登録が取り消されると今までの開発費が無駄になり多大な損害が発生する。

4 当審の判断
(1)被請求人は、本件商品について商品化の企画をし試作機の段階まで進んだが、販売にまでは至っていないものの、開発の再開を計画しているので、本件商標を使用していることになる旨主張し、乙第1号証を提出している。
(2)ところで、商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消しの審判が請求された場合には、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないことは同条第2項に規定するところである。また、請求に係る指定商品についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、その指定商品に係る商標登録は取り消されないことは、同項ただし書から明らかである。
そして、商標法第50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として同法第2条第3項、第4項所定の行為がされることを要するものというべきである(東京高裁、平成12(行ケ)第109号、平13.2.28判決)。
(3)これを本件についてみるに、本件商品は、本件商標の指定商品「スロットマシン」の範疇に属する商品と認められるものの、被請求人が自認するように、本件商品は、試作機段階であって販売にまでは至っていないのであるから、市場において独立して商取引の対象として流通している物とはいえないものである。
そうすると、本件商品は、商標法上の商品ということはできず、仮に本件商品について本件商標を使用していたとしても、請求に係る指定商品についての本件商標の使用と認めることはできない。
(4)なお、乙第1号証は、被請求人の主張に照らし、本件商品の試作機を撮影した写真と認められるが、これが何時、何処で誰によって撮影されたものか一切明らかでないし、上記試作機には本件商標が一切表示されていないから、乙第1号証をもって、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に本件商品について使用されていたと認めることはできない。
その他、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に本件商品について使用されていたことを認めるに足る証拠の提出はない。
(5)さらに進んで、被請求人は、「本件商品についての商品化の企画、試作機の作成、開発再開計画」という理由をもって、本件商標の不使用について正当な理由があることを主張するものであると解釈したとしても、商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」としては、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が考えられるところ(特許庁編「工業所有権法逐条解説」参照)、被請求人の上記理由は、これらの場合に該当するものとはいい難い。しかも、被請求人は、単に商品化の企画や開発再開計画等があることを述べるに止まり、具体的な主張・立証を一切していないから、本件商標の不使用について正当な理由があったものと認めることはできない。
(6)以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標をその請求に係る指定商品について使用していることを証明していないものいわなければならない。
したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていなかったものであり、また、使用されていないことについて正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-01-30 
審決日 2009-02-10 
出願番号 商願2003-115675(T2003-115675) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平松 和雄木住野 勝也 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 小畑 恵一
杉山 和江
登録日 2004-07-02 
登録番号 商標登録第4784181号(T4784181) 
商標の称呼 ジロチョーサンゴクシ 

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