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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1195454 
審判番号 取消2007-300499 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-04-20 
確定日 2009-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4205118号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4205118号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4205118号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成9年5月15日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同10年10月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証(登録原簿及び商標公報の写し)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁の要旨
ア 本件商標の使用について
被請求人が使用を主張している商標は、乙第2号証及び乙第3号証に記載されているものと理解される。
(ア)乙第2号証に記載されている商標(以下「使用商標1」という。)は、欧文字「ClarifyCRM」であり、被請求人は、「CRM」は「Clarify」ソフトウエアの品質・用途を表示するものであって、「Clarify」部分が要部として機能している旨述べている。
しかしながら、「Clarify」と「CRM」はスペースを空けることなく、まとまり良く一体可分的に結合されている。また、「ClarifyCRM」から生じると思われる称呼「クラリファイシーアールエム」又は「クラリファイクラム」は、一気一連に称呼できるものである。
したがって、使用商標1は、一体として「ClarifyCRM」と認識・把握されるものであり、「Clarify」部分が要部として抽出して認識・把握されるものではない。
本件商標は、クリーム色の横長の長方形内の下部に、横書きの欧文字「CLARIFY」並びに青色の円図形及び臙脂色の正方形(その内側には突起を有する円図形が青色の円図形と重なるように白抜きで描かれている)から構成されている。
しかしながら、使用商標1は、本件商標を構成する図形部分を全く欠いている。また、上述のとおり、使用商標1は、本件商標に含まれていない欧文字「CRM」を含んでいる。
被請求人は、図形部分について、特定の観念を認識させるようなものではなく、また、それ自体が顕著な識別性を有するものではないものであって、需要者をして、単なる背景のデザインと理解されると述べている。
しかしながら、本件商標を構成する図形は、本件商標の外枠と言えるクリーム色の横長の長方形の中央部分に、鮮やかな色彩を付して描かれている。それゆえ、本件商標に接した需要者は、本件商標中の図形部分に自然と着目するものである。また、本件商標の中央部分に描かれている突起を有する円図形は、暖色といえる臙脂色の中に描かれていることから、同突起を有する円図形は太陽を連想させるものである。
したがって、被請求人が主張するように、本件商標を構成する図形部分は、単なる背景のデザインではなく、本件商標に接した需要者に強い印象を与える部分であり、識別力を有する部分である。
以上のとおり、本件商標と使用商標1とは識別力を有する部分において著しく異なっているので、両商標は、社会通念上同一の商標とは認められない。
(イ)乙第3号証に記載されている商標(以下「使用商標2」という。)は、欧文字「amdocs」、「clarify」、「crm」並びに赤色、濃い黄色、薄い黄色及び青色で描かれた4つの四角形から構成されている。被請求人は、「amdocs」は「Clarify」製品の供給者を示し、「crm」は「Clarify」ソフトウエアの品質・用途を表示しているものであるから、「Clarify」部分がペットネームとして機能している旨主張している。
しかしながら、「amdocs」が「Clarify」製品の供給者を表示するとの主張は、証拠による裏付けを欠く被請求人の単なる主張に過ぎない。また、「crm」については、取引者・需要者が辞書・事典を引かずとも、その内容を把握・認識できる程、日本国内において知られている語句とも認められない。
したがって、「clarify」部分がペットネームとして機能しているという被請求人の主張は、根拠に基づかない被請求人の独断的主張に過ぎず、到底認められない。
また、使用商標2の図形部分につき、被請求人は、特定の観念を認識させるようなものではなく、また、それ自体が顕著な識別性を有するものではない旨述べている。
しかしながら、使用商標2の図形部分には色彩が付されており、かつ、その1色(青色)は、欧文字「clarify」部分と同色であるので、使用商標2に接した取引者・需要者は、同図形部分に着目するものである。
したがって、同図形部分が顕著な識別性を有しない旨の被請求人の主張は認められない。
以上のとおり、「clarify」部分が使用商標2の要部として抽出して認識・把握されるものではない。また、本件商標及び使用商標2を構成する図形の外観及び描かれている位置(本件商標はその中央部分であるのに対し、使用商標2はその左上である)は全く異なる。
したがって、本件商標と使用商標2とは、その構成が著しく異なっており、両商標は、社会通念上同一の商標とは認められない。
イ 本件商標が取消請求に係る指定商品に使用されているか否かについて
被請求人は、「Clarify」ソフトウェアが販売されていたと主張するのみで、「Clarify」ソフトウェアに本件商標が付されている事実を証明していない。
したがって、本件商標が取消請求に係る指定商品に使用されていることは証明されていない。
ウ 被請求人提出の証拠について
被請求人が提出した各証拠は、本件審判請求登録前3年以内に、本件商標が継続して使用されていたことを証明する証拠とはならない。
乙第1号証は、被請求人がNotel Networks社の「Clarify」部門を買収した事実を記載するのみであり、本件商標の使用事実の証拠とはならない。
乙第2号証にはその発行時の記載がなく、乙第2号証によっては、本件商標の使用時期は証明されない。しかも、本件商標と使用商標1とは、社会通念上同一の商標とも認められないから、乙第2号証は、本件商標の使用事実の証拠とならない。
乙第3号証は、株式会社CIJのウェブサイトであるが、乙第3号証には、株式会社CIJがソフトウェアを販売している旨の記載はなく、「開発元:米国 Amdocs」、「国内販売元:アムドックス」の記載があるにすぎない。同事実からすると、株式会社CIJがソフトウェアを販売しているという被請求人の主張は、乙第3号証の記載と異なる。また、被請求人と株式会社CIJとの関係を全く説明しておらず、株式会社CIJが使用権を有することは証明されていない。そして、上述のとおり、本件商標と使用商標2とは、社会通念上同一の商標と認められない。したがって、乙第3号証は、本件商標の使用事実の証拠とならない。
乙第4号証は、用語説明のために提出されたものであり、本件商標の使用を証明するものではない。
エ まとめ
以上述べたとおり、被請求人の提出した証拠によっては、本件商標が本件審判請求登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれかによって、継続して使用されていたことは証明されていない。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁及び弁駁に対する答弁をし、その理由を以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
被請求人は、本件商標を審判請求前3年以内において我が国において現実に使用しているものである。
(1)被請求人は、1982年に設立された法人であって、2001年にNotel Network社の「Clarify」部門を買収した(乙第1号証)。被請求人が本件商標を使用している商品がこの「Clarify」、即ち、統合顧客管理システムのためのソフトウェアであって、被請求人から直接、あるいは株式会社CIJ等を通じて我が国の顧客に対して販売されている。
乙第2号証は、「Clarify」製品の説明書である。本説明書は、英語で作成されているが、その3頁には、「Viewing Japanese Translation(日本での使用における変換についての説明)」の項目があり、当該項目においては、以下のような記載がある。
日本における使用に際して適切な変換、フォントの表示を確実にするべく、以下の手順を実行してください。
1.Actuateサーバーをスタートさせる前にenvファイルにおける次のシンボルを規定してください。
2.AC SERVER HOME/etc/acserverconfig.xmlファイルにおいて、次のタグを設定してください。
3.AC SERVER HOME/lang.iniファイルにおいて、フルパスネームを用いてCLFY TRANSLATION FILE トークンをClfyTranslationKanji.txtファイルに設定してください。両ファイルが同じディレクトリにあってもこれを行ってください。
(2)また、株式会社CIJのウェブサイトにおいては、「Clarify」製品について、以下のような紹介がされている(乙第3号証)。
「amdocs Clarify CRM」は、統合顧客管理システムのためのソフトウェア製品群です。これにより、多種多様な顧客ニーズに対し、効率的かつ的確に応じることができ、顧客を見据えた業務の効率化、ビジネスチャンスの獲得を確実に実現できます。全世界で、サービス業をはじめ、金融、公共、通信、製造、開発等、様々な分野の約650社、約111,000ライセンスの導入実績を持ちます。国内導入は、1996年末に後発でスタートしましたが、製品に対する米国、欧州における高い評価等により、50社60サイトを数えるまでに伸びております(国内導入実績/株式会社アドバンテスト エプソン販売株式会社 シャープ株式会社 株式会社ジー・サーチ 住友金属工業株式会社 日本オフィス・システム株式会社 日本電気株式会社 富士通株式会社 モトローラ株式会社 株式会社リコー)。
(3)「Clarify」ソフトウェアが過去3年間、我が国において、被請求人あるいは株式会社CIJを通じて販売されていたことは上記した通りであるところ、この「ソフトウェア」が本件商標の指定商品に含まれるものであることは明らかである。
そして、乙第2号証の「製品の説明書」の表紙には大きく「ClarifyCRM」の表示があるところ、この「CRM」は、乙第4号証(現代用語の基礎知識)に解説されているように、「顧客に関する情報を収集・分析し、顧客ごとに適切なアプローチを行うことによって長期的視点から良好な関係を築いて自社の顧客として囲い込み、収益率の極大化を図るマーケティング手法」を意味する「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」の略語であって、「Clarify」ソフトウェアの品質・用途を端的に表示する用語である。したがって、「Clarify」の部分が要部として機能していることは明らかである。
また、乙第3号証のウェブサイトにおいては、青い細線で表記した「amdocs」の文字を左端に、青い太線で表記した「clarify」の文字を中央に、濃い紺色で表記した「crm」の文字を右端に各々配したものが画面上顕著に表示されているものであるところ、「amdocs」は「Clarify」製品の供給者である被請求人のことを指し、「crm」は上記したとおりであるから、この表示においても、「clarify」の部分がペットネームとして機能していること明白である。
そして、本件商標の構成中、図形部分からは特定の観念を認識させるようなものではなく、また、それ自体が顕著な識別性を有するものではないものであって、需要者をして、単なる背景のデザインと理解されるものである。
したがって、本件商標にあっては、その欧文字「Clarify」の部分が要部として捉えられるものである。
そうとすれば、本件商標と上記使用商標とは、社会通念上の同一性を実質的に有するものである。
(4)弁駁に対する答弁
ア 宣誓供述書の提出
被請求人は、新たに日本アムドックス株式会社の宣誓供述書及び訳文(乙第5号証)並びに被請求人の宣誓供述書及び訳文(乙第6号証)を提出する。
当該宣誓供述書に添付した証拠Bにおいては、日本語で作成された日本の顧客向けの「CLARIFY」製品のパンフレットが含まれている(なお、乙第6号証の被請求人の宣誓供述書に添付されるべき証拠A及び証拠Bは、乙第5号証の日本アムドックス株式会社の宣誓供述書に添付された証拠A及び証拠Bと各々同じものである。)。
イ 本件商標と乙各号証に表された商標との同一性ついて
(ア)請求人は、その弁駁(前記2(2)ア)において、「『CLARIFY』部分がペットネームとして機能している、という被請求人の主張は根拠に基づかない独断的主張に過ぎない。」旨主張され、「CLARIFY」を商標として使用しているとの被請求人の主張を否定している。
しかしながら、例えば、乙第5号証及び乙第6号証に添付した証拠B中の日本語で記載されたパンフレットにおいては、「重要な成果をもたらすCRMソリューション」の表題の下、「カスタマ リレーションシップ マネジメント(CRM)ソリューションを導入する企業が増えています。CRMソリューションは企業独自のビジネスニーズに合わせた調整が容易で、業界のベストプラクティスを支援する機能を備えています。」、あるいは「貴社のCRMソリューションのコストを抑える効率のよい配備・保守機能」、「CRMニーズが拡大するにつれ、CRMソリューションもまた拡大しなければなりません。」といった説明がなされており、「CLARIFY」製品が「CRM」用のものであることが容易に理解でき、取引者・需要者も当然にそのことを認識し、「CLARIFY」製品を購入しているものであること明らかである。
また、乙第3号証においては、「開発元:米国Amdocs」、「国内販売元:アムドックス」といった説明がなされているものであって、これにより、通常の注意力を持つ需要者であれば、「CLARIFY」製品の供給者が「Amdocs」であることが容易に理解されるものである。
さらに、上記証拠B中の日本語のパンフレットにおいては、例えば、「CLARIFY各バージョンからのアップグレード」といった項目が設けられているものであって、このことからも、「CLARIFY」が製品の名称であることが認識できるものである。
以上のとおり、「CLARIFY」は製品の名称そのもの、言い換えればペットネームとして使用されているものであって、被請求人の主張は根拠を持つものである。
(イ)また、請求人は、弁駁(前記2(2)ア(ア))において、「本件商標を構成する図形、鮮やかな色彩を付して描かれている。それゆえ、本件商標に接した需要者は、本件商標の図形部分に自然と着目するものである。また、本件商標の中央部分に描かれている突起を有する円図形は、太陽を連想させるものである。従って、本件商標を構成する図形部分は、単なる背景のデザインではなく、本件商標に接した需要者に強い印象を与える部分であり、識別力を有する部分である。」と主張され、本件商標と乙各号証に表された商標との同一性を否定している。
しかしながら、本件商標を構成する円形、四角形の図形自体はありふれたものであって格別の顕著性を有するものではない。また、複数の突起を有する円図形についても、請求人が主張するように、太陽を連想させる程度のものであって、このような主要な自然物をモチーフとした図形は商標の構成要素として頻繁に用いられているものであり、それ自体が自他の製品の識別のために資するようなものではない。
これらの図形を組み合わせた本件商標の図形部分からは特定の観念、イメージを想起・認識させるものでもなく、単なる背景の図形と理解され、「CLARIFY」の文字部分を強調するために表示されている付記的なものに過ぎない。
本件商標において、他社製品との区別に資する要部となるのは「CLARIFY」の文字部分であることは明白であって、これと同じ文字を有し、これを中心に表示されている乙各号証に表された商標は、本件商標の社会通念上同一性の範囲内にあるものである。
なお、参考のために、文字と図形とを結合させた登録商標と、その内の文字のみからなる使用商標との同一性が争われ、使用商標を登録商標の社会通念上同一の範囲内と認めた審決例を添付する(乙第7号証及び乙第8号証)。
ウ 本件商標が使用されている商品について
請求人は、その弁駁(前記2(2)イ)において、「被請求人は、『CLARIFY』ソフトウエアが販売されていた、と主張するのみで、『CLARIFY』ソフトウエアに本件商標が付されている事実を証明していない。したがって、本件商標が、本件審判請求に係る指定商品に使用されていることは証明されていない。」と主張している。
商標法は、その2条3項において商標の「使用」について定めており、1号から8号の各号に具体的な使用行為を規定しているところ、当該各号に規定された行為は商標法50条における「使用」に該当するものである。
この点、2条3項8号には「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付けて展示し、頒布する行為、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」が商標の使用行為と定められているものである。
被請求人が提出した乙各号証として提出した証拠が当該規定における「頒布された、あるいは電磁的方法により提供された広告」であることは明らかである。
したがって、「Clarify」製品に本件商標を付していたことを立証するまでもなく、被請求人が本件商標を使用していることは乙各号証によって明らかであると考える。
エ その他
請求人は、その弁駁(前記2(2)ウ)において、「乙第2号証には、その発行時の記載がなく、乙第2号証によっては、本件商標の使用時期は証明されない。」、「乙第3号証には、株式会社CIJがソフトウエアを販売している旨の記載はなく、・・・また、被請求人と株式会社CIJとの関係を説明しておらず、株式会社CIJが使用権を有することは証明されていない。」と主張している。
しかしながら、乙第5号証及び乙第6号証として提出する宣誓供述書においては、「6.ソフトウエアCLARIFYは長年にわたり日本中の顧客により使用されメンテナンスされてきており、現在もそうである。特に、2007年の5月11日から過去3年に亘り継続使用されてきている。」と宣誓しており、例えば、これらに添付した証拠B中の「AMDOCS CRM8.9J PLATFORM GUIDE」においては、その「Change History」の項目において、「31-Aug-2006 Initial version of this document」、「30-Sept-2006 Update to document additional support provide in R8.9 SRI」、「17-oct-2006 Added Actuate and clarified Windows 2003 version」、「01-Dec-2006 Modified OS Vendor and version and Web Brower」の説明がなされているものであって、これによっても、本件商標が、その審判請求の予告登録前3年以内に使用されていたことがわかるものである。
また、上記宣誓供述書の項目7においては、「日本国においてソフトウエアCLARIFYに対する使用権を有する再販者と顧客には、Computer Institute of Japanが含まれるが、これらの会社に限定されるわけではない。・・・これらの使用権は2007年5月11日から過去3年に亘り日本国において継続的に使用されている。」と宣誓されているところ、この「Computer Institute of Japan」は上記株式会社CIJのことである。このことは、乙第3号証として提出した株式会社CIJのウエブサイトにおける「Copyright1995-2006 Computer Institute of Japan, Ltd. All rights reserved.」の表示からも明らかである。
(4)以上のように、商標権者である被請求人は、直接に、あるいは株式会社CIJを通じて、本件審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内において、本件商標を請求に係る商品について使用していることを証明したので、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取消されるべきものではない。

4 当審の判断
(1)被請求人は、本件商標を取消請求に係る商品について使用していた旨主張して、乙第1号証ないし同第8号証を提出している。
そこで、被請求人の提出に係る乙各号証をみるに、乙第1号証は、被請求人のウェブサイトであり、被請求人の会社沿革が記載されており、2001年の欄には、Notel Networks社の「Clarify」部門を買収した旨記載されている。
乙第2号証は、英語で記載されている「Clarify」製品の説明書であり、表題部分には、別掲(2)に示すとおり、「ClarifyCRM」なる商標(使用商標1)が表示されており、3頁には、「Viewing Japanese Translation(日本での使用における変換についての説明)」の項目があり、日本における使用に際して適切な変換、フォントの表示を確実にするための手順が記載されている。
乙第3号証は、株式会社CIJのウェブサイトであり、表題部分には、別掲(3)のとおりの構成からなる商標(使用商標2)が表示されている。そして、「Clarify」製品の説明として、「amdocs Clarify CRMは、統合顧客管理システムのためのソフトウェア製品群です。これにより、多種多様な顧客ニーズに対し、効率的かつ的確に応じることができ、顧客を見据えた業務の効率化、ビジネスチャンスの獲得を確実に実現できます。全世界で、サービス業をはじめ、金融、公共、通信、製造、開発等、様々な分野の約650社、約111,000ライセンスの導入実績を持ちます。国内導入は、1996年末に後発でスタートしましたが、製品に対する米国、欧州における高い評価等により、50社60サイトを数えるまでに伸びております。」と記載されており、開発元として「米国Amdocs」、国内販売元として「アムドックス」と記載され、該ソフトウェア製品群のラインナップや国内導入実績が記載されている。
乙第4号証は、「現代用語の基礎知識2007」であり、「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」についての解説が記載されている。
乙第5号証は、被請求人の日本法人である日本アムドックス株式会社の代表取締役社長の宣誓供述書及びその訳文と認められ、また、乙第6号証は、被請求人の副本部長の宣誓供述書及びその訳文と認められる。そして、それらに添付の証拠B中の日本語のパンフレットには、使用商標1及び使用商標2と同様の商標が記載されていることが認められる。
乙第7号証及び乙第8号証は、本件商標と各使用商標とが社会通念上同一であることを証明するための参考としての審決例である。
(2)上記において認定した事実によれば、被請求人が使用商標1及び使用商標2のもとに販売していたとする「統合顧客管理システムのためのソフトウェア」が取消請求に係る本件商標の指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」に属する商品であることは認められるとしても、以下の理由により、本件商標が本件審判請求登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれかによって使用されていたものとは認められない。
使用商標1及び使用商標2が本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについてみるに、本件商標は、別掲(1)に示したとおり、図形と文字部分からなるところ、その構成は、赤色方形図形(該方形内には、太陽が光を放っているかの如き図形が白抜きに表されている)を一番下にして、その上に、該赤色方形図形の左下四分の一程度に重なるように、青色の円図形を表し、その円図形の上に、文字の一部が重なるように「CLARIFY」の欧文字を表した構成からなるものであり、その図形と重なった「A」の文字部分は白抜きに表現されている。
なお、請求人及び被請求人は、本件商標の構成について、クリーム色の横長の長方形内に文字と図形が描かれている旨述べているが、願書に貼付されている商標見本は、通常の白色の用紙に文字と図形が表されているものであり、クリーム色の横長の長方形を確認することはできない。
上記した構成からみれば、本件商標は、図形部分と「CLARIFY」の文字部分とが、いずれに軽重があるともいえない態様をもって構成されており、商標全体として把握されるほかに、図形部分及び「CLARIFY」の文字部分とがそれぞれ独自に自他商品の識別機能を有するものであることから、その片一方のみの構成では社会通念上同一と認められる商標とはなり得ないものである。
一方、使用商標1は、別掲(2)に示したとおり、「ClarifyCRM」の構成からなるものであり、使用商標2は、別掲(3)に示したとおり、青色の細字で書された「amdocs」と青色の太字で書された「clarify」と濃青色の太字で書された「crm」の各欧文字を一連に表し、該欧文字の左上部分に、赤色、黄色及び青色で縁取りされた形状の異なる3つの四角形を配した構成からなるものである。
そうとすれば、使用商標1及び使用商標2は、その構成中の「Clarify」の文字部分が被請求人の主張しているように、他の文字部分から分離して理解・認識し得るものであるとしても、該各使用商標には、本件商標において自他商品の識別機能を有する図形部分が全く表されていないから、少なくとも、この点において、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認められない。また、使用商標2には図形も配されているが、該図形は、本件商標における図形とは全く別異のものである。
この点について、被請求人は、本件商標構成中の図形部分は特定の観念を認識させるようなものではなく、それ自体が顕著な識別性を有するものではないものであって、需要者をして、単なる背景のデザインと理解されるものである旨主張している。
しかしながら、上記認定のとおり、本件商標における図形部分は、彩色された独特な構成態様からなる図形として顕著に表されており、単なる輪郭図形や背景図形として捉えられる性質のものではなく、看者にも強い印象を与えるものであるから、本件商標は、商標全体として把握されるほかに、図形部分と「CLARIFY」の文字部分とがそれぞれ独自に自他商品の識別機能を有するものであって、かつ、それらが一体となった構成からなる商標というべきであるから、この点についての被請求人の主張は採用できない。
(3)以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む)の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていないものである。
したがって、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
(1)本件商標(色彩については原本参照)


(2)使用商標1


(3)使用商標2(色彩については原本参照)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

審理終結日 2008-10-17 
結審通知日 2008-10-23 
審決日 2008-11-05 
出願番号 商願平9-116014 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 義三守屋 友宏 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 酒井 福造
鈴木 修
登録日 1998-10-30 
登録番号 商標登録第4205118号(T4205118) 
商標の称呼 クラリファイ 
代理人 石川 義雄 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 小出 俊實 

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