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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111
管理番号 1193973 
審判番号 取消2006-30402 
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-03-31 
確定日 2009-03-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第1296174号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成19年11月13日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10102号平成20年10月29日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第1296174号商標の「第11類 電気通信機械器具,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1296174号商標(以下「本件商標」という。)は、「シュアー」の文字を横書きしてなり、昭和48年5月31日に登録出願され、第11類「電気機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、同52年9月1日に設定登録されたものであり、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
また、本件審判の請求の登録は、平成18年4月21日になされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁及び口頭陳述要領書並びに上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「電気通信機械器具,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」について、今日に至るまで3年以上使用されていない。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「電気通信機械器具,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」について、その登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁及び口頭陳述要領書
(1)通常使用権について
ア 被請求人は、「前商標権者である石崎貞博(以下「前商標権者」という。)が、株式会社石崎電気製作所(以下「石崎電機製作所」という。)に対して、本件商標についての通常使用権を許諾した。」と主張する。
しかしながら、次に述べるように、本件商標について、商標権者又は前商標権者が、石崎電機製作所に通常使用権を許諾していたかどうかは、非常に疑わしい。
イ 乙第1号証は、「商標権使用許諾書」であり、前商標権者が、石崎電機製作所に対して、本件商標、登録第792786号商標及び同第1824763号商標についての商標権の使用を許諾する旨が記載されている。
しかしながら、乙第1号証は、次に述べるように、不自然な点が多い。
(ア)当該許諾書に記載されている日付が不自然である。
当該許諾書に記載されている日付は、昭和60年12月26日となっている。
一方、当該許諾書で商標権使用許諾の対象としてなっている商標登録第1824763号の設定登録日は、昭和60年12月25日であり、当該許諾書に記載されている日付(同26日)の前日である。
当該許諾書に記載されている日付が正しいとすれば、商標権者は、設定登録日の翌日に、登録番号を知っていたということになる。
しかしながら、現在においても、商標権者が商標登録番号を最初に知り得るのは特許庁から商標登録証を受理する際であり、通常、設定登録日から3週間後ないし5週間後である。
つまり、登録日の翌日に登録番号を知っていたということは、通常の商標実務からすると、到底あり得ないというべきである。
それを、今より情報通信の手段が発達していなかった昭和60年当時において、設定登録日の翌日に、商標権者が、その商標登録番号を知っていたというのは、不自然というほかない。
(イ)当該許諾書には、使用許諾の具体的な条件はおろか、通常使用権専用使用権の別、有償・無償の別、許諾の期間といった基本的な条件についても一切規定されておらず不自然である。
(ウ)当該許諾書を作成する意義がそもそも見いだし難い
前商標権者と石崎電機製作所との関係に鑑みれば、乙第1号証のような書面を作成する意義は見いだし難い。
(エ)連合商標との関係において不自然である
当該許諾書に記載されている日付である昭和60年12月26日当時、被請求人は、乙第1号証に記載された本件商標、登録第792786号商標及び同第1824763号商標以外に、これらの連合商標として、同第1327838号商標及び同第1327839号商標を有していた(なお、当該連合商標に係る商標権は、現在は存続期間満了により消滅している(甲第1号証ないし甲第3号証))。
そして、当該連合商標は、乙第1号証が作成された昭和60年12月26日には既に登録されていたものである。
そうとすれば、当該連合商標は、本件商標と同じ称呼を生ずるものであり、また、本件商標の連合商標とされていたものであるから、本件商標について使用許諾をするのであれば、他の2件の登録商標と併せて、当該連合商標商標についても使用を許諾するのが自然である。
それにもかかわらず、前商標権者あるいは石崎電機製作所が、何故にこれらを乙第1号証の使用許諾の対象にしなかったのかは、疑問をもたざるを得ない。
ウ 乙第3号証は、「商標に関する覚書」であり、前商標権者の行った、本件商標、登録第792786号商標及び同第1824763号商標についての商標権の使用許諾が商標権者の下でも引き続き有効であることを、商標権者と石崎電機製作所との間で確認する旨が記載されている。
しかしながら、この覚書がいかなる経緯で作成されたのかは、明らかではない。
すなわち、本件商標にかかる商標権は、前商標権者が死去した平成17年4月14日に相続により、商標権者に移転していたものであるが、商標権者が、自らが代表取締役となっている石崎電機製作所に対して権利行使をするはずがない。
そうとすれば、特段の事情も存在しないのに、わざわざ乙第3号証のような書面を作成したことになり不自然である。
ちなみに、相続等の一般承継による商標権の移転があった場合、新商標権者は、その旨を、遅滞なく特許庁長官に届け出なければならない(商標法第35条、特許法98条2項)ところ、本件商標に関する相続を原因とする商標権の移転登録は、平成18年6月13日まで行われていない。
仮に、乙第3号証が、本件商標に関する権利関係を明確化するために作成されたのだとすると、それと前後して本件商標についての相続を原因とする商標権の移転の届出もなされるのが自然である。
これらの点に鑑みると、乙第3号証は、本件審判請求の提起後に、これを知った被請求人及び石崎電機製作所とが作成し、日付をバックデイトした可能性があるものといわざるを得ない。
エ 乙第4号証は、石崎電機製作所の作成にかかる「宣誓書」であり、同社が、前商標権者及び商標権者から、本件登録商標の通常使用権の許諾を受けた旨が記載されている。
しかしながら、石崎電機製作所は、商標権者が代表取締役を勤める同族会社であり、本件に関し、石崎電機製作所と被請求人の利害関係は完全に一致する。
よって、乙第4号証は、商標権者が作成しているものと変わらないのであり、何ら客観性がないので、信用することができない。
(2)本件商標の使用の事実について
ア 被請求人は、商標権者又は前商標権者自身による本件商標の使用は一切主張していない。
イ 被請求人は、石崎電機製作所が、2004年6月末から同7月にかけて、2.1Chスピーカーシステムについて、これを共同開発株式会社(以下「共同開発」という。)に注文し買い受け(乙第6号証及び乙第7号証)、株式会社アズマ(以下「アズマ」という。)に対して転売し(乙第5号証ないし乙第8号証)、その際に本件商標を使用したと主張している。
また、被請求人は、石崎電機製作所が、2005年8月に、同様の取引をし、その際に本件商標を使用したと主張している(乙第9号証ないし乙第12号証)。
ウ しかしながら、本件商標の使用の事実は、次に述べるとおり、乙第5号証ないし乙第12号証を通じて、一切証明されていない。
本件商標は、片仮名文字「シュアー」からなる商標であるが、乙第6号証、乙第7号証、乙第10号証及び乙第11号証には「シュアー」は一切使用されていない。
また、乙第5号証及び乙第9号証には「商品名」欄に「シュアー」の記載があるが、いずれにも日付が記載されておらず、その作成年月日は証明されているとはいえない。
乙第5号証の左側の製品写真には、「SURE」の文字が見えるが、鮮明ではなく、本件商標「シュアー」とは異なる。
乙第9号証の製品写真には、「SURE」の文字が見えるが、鮮明ではなく、本件商標「シュアー」とは異なる。乙第9号証の製品写真には、商標は写っていない。
さらに、乙第9号証及び乙第12号証においては、上半分に黒地に白抜きで「SURE」と表示され、下半分に白地に黒抜きで「シュアー」と表示され、これらが全体として一体をなすロゴが表示されているが、標章の構成においては本件商標と同一である「シュアー」の部分の独立性は失われており、このロゴも本件商標と社会通念上同一とはいえない。
乙第6号証、乙第7号証、乙第10号証及び乙第11号証には、本件商標はおろか、類似といい得る商標すら一切使用されていない。
エ 乙第5号証ないし乙第12号証には、不自然な点がある。
乙第5号証及び乙第9号証は、「商品案内書」であるが、いずれにも日付が記載されておらず、その作成年月日が証明されていない。
また、乙第6号証ないし乙第8号証及び乙第10号証ないし乙第12号証は、「納品書」、「領収書」及び「納品書(控)」であるが、いずれにも、通し番号が記載されていない。特に、乙第8号証及び乙第12号証には、「伝票番号」及び「受注番号」の欄があるが、いずれも空欄であり、被請求人の通常の業務の過程で作成されたものか、疑問の余地が残る。
さらに、被請求人は、本件商標の使用につき、乙第5号証ないし乙第12号証を提出し、わずか2回の取引の存在を主張するのみであり、また、いずれの取引においても、商品が10個、代金総額として約1万円ないし3万円が授受されたのみである。
(3)結 語
以上のとおり、本件商標の使用は一切証明されておらず、本件商標は、その指定商品中「電機通信機械器具、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」について、その不使用を理由とする取り消しを免れないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、答弁書、口頭陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として、乙第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、通常使用権者が、少なくとも平成16年7月1日以降、商品「スピーカー」(電気通信機械器具/電気通信機械器具の部品及び付属品)について使用している。
なお、請求人が審判請求書において被請求人とした前商標権者は、平成17年4月14日に死亡し、同18年6月13日付けで相続の一般承継による商標権移転登録申請書を提出済みである。
したがって、相続人である石崎博章が本件商標の権利者となるので、本答弁書において、石崎博章が被請求人として答弁する。
(2)通常使用権について
本件商標の通常使用権者は、東京都台東区元浅草1丁目15番15号に所在する石崎電機製作所である(乙第1号証)。
石崎電機製作所は、乙第1号証の商標権使用許諾締結時には、その住所を東京都台東区東上野1丁目27番11号に置いていたが、その後、東京都台東区東上野3丁目28番4号に移転し、さらに、上記現住所に移転したものである(乙第2号証の1及び2)。
そして、商標権者と石崎電機製作所の「覚書」を乙第3号証として提出し、石崎電機製作所の「宣誓書」を乙第4号証として提出する。
乙第1号証から乙第4号証からも明らかなとおり、前商標権者は、石崎電機製作所に本件登録商標の使用権を許諾した当時、石崎電機製作所の代表取締役であり、また、商標権者は、石崎電機製作所の現代表取締役である。
(3)本件商標の使用の事実について
ア 「2.1Chスピーカー SSP-110」についての本件商標の使用
(ア)石崎電機製作所は、平成15年より、アズマとの電気通信機械器具を含む電気製品のOEM製品の開発に取り組むと共に、スピーカーの開発を開始した。
そして、石崎電機製作所は、アズマから「2.1Chスピーカーシステム」についての注文を受けた。
アズマから、当該注文を受けた石崎電機製作所は、平成16年6月に、日本国内適合品に改良を行った「2.1Chスピーカー」を共同開発経由で中国で製造させ、そして、輸入した。
その後、平成16年7月1日に、石崎電機製作所は、商品案内書(乙第5号証)を添付して、「商品名:シュアー 2.1Chスピーカーシステム、型番:SSP-110」を「シュアー」の商標を用いてアズマに販売した。 なお、共同開発は、東京都足立区鹿浜7丁目26番地15103に所在を置き、主に中国、台湾から電気製品全般及び一般雑貨品等多種多様な製品を輸入する商社であり、アズマは、本社を埼玉県さいたま市緑区原山3丁目2番10号に置き、主に家電量販店への電気製品の販売、海外電気製品の開発、輸入販売を行う商社である。
(イ)乙第5号証は「商品案内書」であるところ、商品名の欄には、「シュアー 2.1Chスピーカーシステム」と記載され、当該商品の写真が掲載され、また、写真の「スピーカー」には、「SURE」の商標が付されている。
乙第6号証は「納品書」及び乙第7号証は「領収書」であるところ、石崎電気製作所が、共同開発から「2.1Chスピーカー」を購入した事実が記載されている。
また、乙第8号証は「納品書(控)」であるところ、石崎電機製作所が、平成16年7月1日に、アズマに対して、商品「2.1Chスピーカーシステム」を「SUREブランドスピーカー SSP-110」として販売した事実が記載されて、また、「SURE/シュアー」の商標が付されている。 さらに、乙第8号証に記載された商品名及び型番は、乙第5号証に記載された商品名及び型番と一致している。
イ 「2.1Chスピーカー SSP-111」についての本件商標の使用
(ア)石崎電機製作所は、上記「シュアー 2.1Chスピーカー SSP-110」を更に改良した。
石崎電機製作所は、アズマから「2.1Chスピーカーシステム」についての注文を受けた。
アズマから、当該注文を受けた石崎電機製作所は、平成17年8月に、改良を行った「2.1Chスピーカー」を共同開発経由で中国で製造させ、そして、輸入した。
その後、平成18年8月18日に、石崎電機製作所は、商品案内書(乙第9号証)を添付して、「商品名:シュアー 2.1Chスピーカー 型番:SSP-111」を「シュアー」の商標を用いてアズマに販売した。
(イ)乙第9号証は「商品案内書」であるところ、商品名の欄には、「シュアー 2.1Chスピーカーシステム」と記載され、当該商品の写真が掲載され、また、写真の「スピーカー」には、「SURE」の商標が付されている。
乙第10号証は「納品書」及び乙第11号証は「領収書」であるところ、石崎電気製作所が、共同開発から「2.1Chスピーカー」を購入した事実が記載されている。
また、乙第12号証は「納品書(控)」であるところ、石崎電機製作所が、平成17年8月18日に、アズマに対して、商品「2.1chスピーカーシステム」を「SUREブランドスピーカー SSP-111」として販売した事実が記載されて、また、「SURE/シュアー」の商標が付されている。
さらに、乙第12号証に記載された商品名及び型番は、乙第9号証に記載された商品名及び型番と一致している。
(4)上記各証拠により、本件商標が商品「電気通信機械器具」詳しくは「スピーカー」に使用されて、少なくとも平成16年7月1日以降市場に流通していること明白であり、使用の事実は明らかである。
以上のことから、本件商標は、本審判の請求登録前3年以内に日本国内において通常使用権者が本審判の請求に係る「電気通信機械器具」について使用していることが明らかである。
2 口頭審理陳述要領書
(1)本件商標について、前商標権者が、石崎電機製作所に通常使用権を許諾した経緯。
ア 乙第1号証(商標権使用許諾書)について
(ア)前商標権者と石崎電機製作所は、本件商標の登録出願時から、登録後の通常使用権の許諾について合意していた。
そして、本件商標の登録後、石崎電機製作所への通常使用権の許諾がなされた。
石崎電機製作所は、通常実施(「使用」の誤記と認められる。)権の許諾を早期に明文化することを望んでいたため、特許庁に問い合わせて本件商標の登録番号を知り、乙第1号証を作成した。
(イ)乙第1号証の作成に当たっては、許諾をする者と許諾を受ける者の代表者が同一人であったことから、特に詳細を定めることなく、簡易な契約書とした。
(ウ)前商標権者及び石崎電機製作所は、過去にも商標に関する争いごとを経験していた。
そして、本件商標は石崎電機製作所の重要な商標であるため、本件商標に対する不使用取消審判が提起される場合を考慮して、乙第1号証を作成した。
(エ)本件商標、登録第792786号商標、同第1824763号商標、同第1327838号商標及び同第1327839号商標のうち、登録第1327838号商標及び同第1327839号商標は、乙第1号証の作成当時、既に石崎電機製作所が使用しなくなったものであり、今後も使用する予定がなかったことから、乙第1号証においては、契約対象としなかった。 そして、登録第1327838号商標及び同第1327839号商標は、石崎電機製作所にとって不要となっていたので、その後存続期間の更新を行わず、存続期間が満了した。
イ 乙第3号証(商標に関する覚書)について
(ア)現商標権者が前商標権者から本件商標を相続したので、本件商標に対する不使用取消審判が提起される場合を考慮して、乙第3号証を作成した。許諾をする者と許諾を受ける者の代表者が同一人であったことから、乙第3号証は、特に詳細を定めることなく、簡易な覚書とした。
(イ)乙第3号証が、平成18年2月1日に作成されたのは、前商標権者の死亡により行われた、本件商標に関する遺産分割協議が成立し、現権利者が単独で本件商標の権利者となったのが、平成18年1月30日であり、この成立をうけて、早期に覚書を作成したものである。
なお、当該遺産分割に係る遺産分割協議書(乙第14号証)は、本件商標の移転登録申請書に添付されている。
ウ 乙第4号証(宣誓書)について
商標権者と、石崎電機製作所の代表者は、同一人ではあるが、別人格である。
したがって、乙第4号証は被請求人が作成しているものではなく、被請求人とは別個の法人格を有する石崎電機製作所が作成したものであり、充分な客観性を有すること明らかである。
なお、不使用取消審判において、商標権者と使用権者の利害が一致することは、本件審判に限らず当然あり得ることである。
エ 請求人は弁駁書にて種々述べているが、何等その主張を裏付ける証拠を提出しておらず、事実を歪曲した単なる推測を、請求人の都合よく述べたものにすぎず、これらの主張は全く客観性のないこと明らかである。
(2)本件商標の使用の事実
ア 乙第5号証(商品案内書)について
乙第5号証には、日付が記載されていない。
しかしながら、乙第5号証は、石崎電機製作所がアズマに対して、「2.1Chスピーカー SSP-110」を納品する際に、アズマに提出したものである。
そして、乙第5号証には当該製品の写真が掲載されていることから、乙第5号証は、少なくとも製品1台が完成した後に作成されたものである。
してみれば、乙第5号証の作成年月日は、アズマヘ上記スピーカーを納品する直前である、平成16年6月末である。
イ 乙第9号証(商品案内書)について
乙第9号証には、日付が記載されていない。
しかしながら、乙第9号証は、石崎電機製作所がアズマに対して、「2.1Chスピーカー SSP-111」を納品する際に、アズマに提出したものである。
そして、乙第9号証には当該製品の写真が掲載されていることから、甲第9号証は、少なくとも製品1台が完成した後に作成されたものである。
してみれば、乙第9号証の作成年月日は、アズマヘ上記スピーカーを納品する直前である、平成17年8月初旬ないし中旬である。
ウ 乙第6号証(納品書)、乙第7号証(領収証)、乙第8号証(納品書(控))、乙第10号証(納品書)、乙第11号証(領収証)及び乙第12号証(納品書(控))について
乙第6号証ないし乙第8号証及び乙第10号証ないし乙第12号証には、いずれも「通し番号」の記載がなく、また、乙第8号証及び乙第12号証の「伝票番号」及び「受注番号」の欄が、いずれも空欄である。
しかしながら、中小企業では、「納品書」、「領収書」及び「請求書」等に「伝票番号」等の通し番号及び「受注番号」を記載しないでそれらの書類が作成され、発行されることが多々あることは周知の事実である。
そして、乙第8号証及び乙第12号証は、石崎電機製作所が発行した「納品書(控)」であるが、石崎電機製作所においては、納品される商品の販売個数が極めて少ない場合や、納品される商品がテスト段階のものの場合等には、「伝票番号」及び「受注番号」を特に記入しないで納品書の作成が行われている。
なお、このような商品の場合は、商品名等、ここでは商品名「SUREブランドスピーカー SSP-110」又は「SUREブランドスピーカー SSP-110」で受注商品が特定されている。
そして、乙第8号証及び乙第12号証の「納品書(控)」は、納品される商品の販売個数が極めて少なく、しかも納品される商品がテスト段階のものであるので、「伝票番号」及び「受注番号」を特に記入しないで納品書の作成が行われたものである。
また、乙第6号証、乙第7号証、乙第10号証及び乙第11号証は、共同開発が発行した「納品書」及び「領収書」であるが、「通し番号」が記載されていない理由は定かではない。
しかしながら、上述のように中小企業では、「納品書」、「領収書」等には「伝票番号」等の「通し番号」を記載しないでそれらの書類が作成され、発行されることが多々あるところ、共同開発も中小企業であり、そのような現状の下、「通し番号」の記載なく発行されたものであると思われる。

第4 当審の判断
1 本件審判請求についてした平成19年11月13日付審決は、その結論を「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」とし、その理由の要旨は次のとおりである。
総合勘案すれば、本件商標は、通常使用権者によって、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件審判の取消請求に係る指定商品中の「電気通信機械器具」に含まれる「スピーカー」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていたものと認めることができる。
2 上記1の本件審決につき知的財産高等裁判所は、平成20年10月29日に言い渡した判決において、概略以下のとおり認定した。
(1)本件納品書(控)1の作成日付の遡記
本件納品書(控)1に記載された上記「048 813 7533」の電話番号(これが、アズマの電話番号として記載されたものであることは、その記載位置からみて明らかである。)は、本件納品書(控)1の作成日付である平成16年7月1日及びその前後ころにおいて、アズマ又は平尾個人が使用していた電話番号ではなく、アズマが平成17年3月以降に使用するようになった電話番号であると認められるから、本件納品書(控)1は、その作成日付である平成16年7月1日又はその前後ころに作成されたものではなく、平成17年3月以降に作成されたものであることが明らかである。
そうすると、遅くとも平成16年11月25日には石崎電機の代表者を務めていた被告(甲5)は、本件納品書(控)1につき、その作成日付を遡らせてこれを作成したものと推認されるところ、このような虚偽の証拠書類を作出する行為は、当該証拠書類自体の内容の信用性はもとより、これに関連する他の証拠書類全体の内容の信用性をも大きく減殺させるものであるといわざるを得ない。
(2)甲33回答書におけるアズマの回答
ア 平成16年から平成17年にかけて、アズマが石崎電機に対し注文したのは、スチームアイロン2商品のみである。
イ アズマは、これまで、石崎電機に対してスピーカーを注文したことは一切ない。
(3)上記の回答は、本件売買1及び2の存在を全面的に否定するものといえるところ、本訴において、当該回答内容の信用性を左右する証拠は全く提出されていないことをも併せ考慮すると、当該回答は、本件売買1及び2の存在並びにこれらに係る各取引書類の内容の信用性に強度の疑問を抱かせるものというべきである。
(4)その他、本件売買1及び2が存在したものと認めるに足りる証拠はない。
(5)そうすると、本件売買1及び2が存在することを前提に、石崎電機が、本件予告登録前3年以内に日本国内において、スピーカーについて本件使用商標を使用していたものと認めた審決の認定は誤りであるといわざるを得ない。
3 本件商標の使用の事実について
(1)以下に付記した証拠によれば、石崎電機製作所が、アズマに対し、平成16年7月1日にスピーカーを販売したとの事実(以下「本件売買1」という。)及び平成17年8月18日にスピーカーを販売したとの事実(以下「本件売買2」という。)に係る各取引書類の記載内容は、次のとおりであると認められる。
ア 商品案内書(乙第5号証)
(ア)商品名欄:「シュアー 2.1Chスピーカーシステム」
(イ)型番欄:「SSP-110」
(ウ)また,「規格&仕様」欄には,スピーカーとしての各種仕様が記載され、さらに、同欄の下部の左欄及び右欄には、いずれも、スピーカーとみられる物品の写真が掲載され、うち右欄に掲載された写真の下部には、「スピーカー:プラスチック一体型」との付記がある。
(エ)なお、日付の記載はない。
イ 共同開発納品書(乙第6号証)
(ア)日付欄:「2004年6月30日」
(イ)宛先欄:「株式会社石崎電機製作所」
(ウ)品名欄:「2.1チャンネルスピーカー110(中国製)」
(エ)数量欄:「10」
(オ)単価欄:「1,600」
(カ)金額欄:「16000」
(キ)税込合計金額欄:「¥16,800」
(ク)また、右上部に共同開発の記名押印がある。
(ケ)なお、右上隅にある「No.」欄は、空欄である。
ウ 共同開発領収証(乙第7号証)
(ア)日付欄:「2004年6月30日」
(イ)宛先欄:「株式会社石崎電機製作所」
(ウ)金額欄:「¥16,800円」
(エ)但書欄:「スピーカー代金として」
(オ)また、中央下部に共同開発の記名押印がある。
(カ)なお、右上隅にある「No.」欄は、空欄である。
エ 納品書(控)(乙第8号証)
(ア)日付欄:「2004年7月1日」
(イ)宛先欄:「カブシキカイシヤ アズマ TEL048 813 7533」
(ウ)商品名欄:「SUREブランドスピーカー SSP-110」
(エ)数量欄:「10」
(オ)単価欄:「3,000」
(カ)金額欄:「30,000」
(キ)合計欄:「31,500」
(ク)また、右上部に石崎電機製作所の記名があり、備考欄に「領収済」との印が押捺されている。
(ケ)なお、右上隅にある伝票番号欄及び受注番号欄は、いずれも空欄である。
オ 商品案内書(乙第9号証)
(ア)商品名欄:「シュアー 2.1Chスピーカーシステム」
(イ)型番欄:「SSP-111」
(ウ)また、「規格&仕様」欄には、スピーカーとしての各種仕様が記載され、さらに、同欄の下部の左欄及び右欄には、いずれも、スピーカーとみられる物品の写真が掲載され、うち右欄に掲載された写真の下部には、「スピーカー:プラスチック一体型」との付記がある。
(エ)なお,日付の記載はない。
カ 共同開発納品書(乙第10号証)
(ア)日付欄:「2005年8月12日」
(イ)宛先欄:「株式会社石崎電機製作所」
(ウ)品名欄:「2.1チャンネルスピーカー111(中国製) 110内部一部変更品」
(エ)数量欄:「10台」
(オ)単価欄:「1,700」
(カ)金額欄:「17000」
(キ)税込合計金額欄:「¥17,850」
(ク)また、右上部に共同開発の記名押印がある。
(ケ)なお,右上隅にある「No.」欄は、空欄である。
キ 共同開発領収証(乙第11号証)
(ア)日付欄:「2005年8月12日」
(イ)宛先欄:「株式会社石崎電機製作所」
(ウ)金額欄:「¥17,850円也」
(エ)但書欄:「スピーカー代として」
(オ)また、中央下部に共同開発の記名押印がある。
(カ)なお,右上隅にある「No.」欄は,空欄である。
ク 納品書(控)(乙第12号証)
(ア)日付欄:「2005年8月18日」
(イ)宛先欄:「カブシキカイシヤ アズマ TEL048 813 7533」
(ウ)商品名欄:「SUREブランドスピーカー SSP-111」
(エ)数量欄:「10」
(オ)単価欄:「3,200」
(カ)金額欄:「32,000」
(キ)合計欄:「33,600」
(ク)また、右上部に石崎電機製作所の記名があり、備考欄に「領収済」との印が押捺されている。
(ケ)なお、右上隅にある伝票番号欄及び受注番号欄は、いずれも空欄である。
(2)上記(1)の各取引書類の記載内容自体は、本件売買1及び2の各内容に沿うものであるといえる。
(3)しかしながら、上記1の各取引書類(乙第5号証ないし乙第12号証)の記載内容はたやすく信用できるものではなく、したがって、これらによって、本件売買1及び2が存在したものと認めることはできない。その理由は、以下のとおりである。
ア 納品書(控)(乙第8号証)の作成日付の遡記
(ア)納品書(控)(乙第8号証)の日付欄に「2004年7月1日」との記載があり、宛先欄に「カブシキカイシヤ アズマ TEL048 813 7533」との記載があることは、上記(1)エ(ア)及び(イ)のとおりである。
(イ)ところで,証拠(甲第13号証ないし甲第17号証)によれば、アズマの現在の本店所在地は、さいたま市緑区原山三丁目2番10号であり、平成17年4月1日付け本店移転前の同社の本店所在地は、埼玉県川口市伊刈693番地1であったこと、同社は、昭和53年4月から平成17年3月までの間、契約者を同社、契約者の住所(本店所在地)を上記川口市の住所、電話番号を「048-268-7474」とする電話加入権を有し,当該電話番号を使用していたが、平成17年3月、当該電話番号が「048-813-7533」に、当該住所(本店所在地)が上記さいたま市の住所(ただし、住所末尾に「仲田ビル1F」が付加されている。)にそれぞれ変更されたこと、同社は、少なくとも平成13年1月から平成17年2月までは、上記「048-813-7533」の電話番号を使用していなかったこと、平尾個人も、これまで、上記「048-813-7533」の電話番号を使用したことがないことがそれぞれ認められる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の各事実によれば、納品書(控)(乙第8号証)に記載された上記「048 813 7533」の電話番号(これが、アズマの電話番号として記載されたものであることは、その記載位置からみて明らかである。)は、納品書(控)(乙第8号証)の作成日付である平成16年7月1日及びその前後ころにおいて、アズマ又は平尾個人が使用していた電話番号ではなく、アズマが平成17年3月以降に使用するようになった電話番号であると認められるから、納品書(控)(乙第8号証)は、その作成日付である平成16年7月1日又はその前後ころに作成されたものではなく、平成17年3月以降に作成されたものであることが明らかである。
そうすると、遅くとも平成16年11月25日には石崎電機製作所の代表者を務めていた被請求人は、納品書(控)(乙第8号証)につき、その作成日付を遡らせてこれを作成したものと推認されるところ、このような虚偽の証拠書類を作出する行為は、当該証拠書類自体の内容の信用性はもとより、これに関連する他の証拠書類全体の内容の信用性をも大きく減殺させるものであるといわざるを得ない。
イ 甲第18号証の回答書におけるアズマの回答
(ア)甲第18号証の回答書によれば、アズマは、岩瀬弁護士の平成20年7月7日付け申出に係る弁護士照会に対し、次の趣旨の回答をしたものと認められる。
a 「アズマは、納品書(控)(乙第8号証及び乙第12号証)に対応する納品書を石崎電機製作所から受領したことはない。」
b 「アズマは、石崎電機製作所に対し、納入される商品の個数を10個とするような注文を出したことはない。」
c 「アズマは、商品案内書(乙第5号証若しくは乙第9号証)に記載された商品又は『SURE』等の文字を名称に含む類似ないし関連する商品を石崎電機製作所から購入したことはない。」
d 「アズマは、『SURE』というブランドを付してスピーカーを販売したことはない。」
e 「アズマは、『EAST』又は『DeFine』というブランド以外のブランドを付してスピーカーを販売したことはない。」
f 「平成16年から平成17年にかけて、アズマが石崎電機製作所に対し注文したのは、スチームアイロン2商品のみである。」
g 「アズマは、これまで、石崎電機製作所に対してスピーカーを注文したことは一切ない。」
(イ)上記(ア)の回答は 本件売買1及び2の存在を全面的に否定するものといえるところ、当該回答は,本件売買1及び2の存在並びにこれらに係る各取引書類の内容の信用性に強度の疑問を抱かせるものというべきである。
(4)その他、本件売買1及び2が存在したものと認めるに足りる証拠はない。
4 以上のとおり、総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の取消請求に係る「電気通信機械器具,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」のいずれかについて、本件商標を使用したことを証明したものとは認めることはできない。また、被請求人は、当該指定商品について本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「電気通信機械器具,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」について取り消すべきものである。
別掲
審理終結日 2008-12-26 
結審通知日 2009-01-07 
審決日 2007-11-13 
出願番号 商願昭48-86426 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (111)
最終処分 成立  
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 小畑 恵一
渡邊 健司
登録日 1977-09-01 
登録番号 商標登録第1296174号(T1296174) 
商標の称呼 シュアー 
代理人 神林 恵美子 
復代理人 山本 健策 
代理人 高橋 三雄 
復代理人 北口 貴大 
代理人 森 智香子 
代理人 城山 康文 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 高橋 大典 

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