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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 130
管理番号 1192413 
審判番号 取消2007-301468 
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2008-12-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第810777号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第810777号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第810777号商標(以下「本件商標」という。)は、「片原饅頭」の文字を横書きしてなり、昭和35年10月13日に登録出願、第30類「饅頭」を指定商品として、昭和44年3月24日に設定登録されたものであるが、その後、昭和55年2月29日、平成元年3月29日、平成10年10月27日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされているものである
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第19号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しない。
2 弁駁の理由
(1)商標権者による使用の事実について
被請求人が、「乙第4号ないし第14号証の証明書に示すように、平成19年4月21日(土)に行なわれた故畑田清志氏の一周忌法事の際に、商標権者により、乙第1号証に示す包装紙で包装された乙第2号証に示す饅頭の譲渡行為が行なわれている。(略)今後とも、継続的に『KATAHARA』の商標が表示された包装紙を使用して『饅頭』を第三者に継続・反復して譲渡することを計画しており、継続的な商標使用意思を有している。」と主張する点について以下のとおり反論する。
ア「片原饅頭」が平成8年3月19日に生産・販売中止になったことは周知の事実(甲第1号証)であり、以後11年間、志満屋は閉じられたままである(甲第2号証)。
イ 商標はその商品の信頼性を広く顧客に訴求するためのものであり、数年に一度、内輪の集まりで個人的に「片原饅頭」の商標が表示された包装紙を使用したことが商標使用の事実に当たるという主張は全くナンセンスである。
ウ「饅頭」を第三者に継続・反復して譲渡することを計画しているとの主張が全く根拠のないものであることは、群馬県と前橋市の行政(群馬県産業経済局観光局長・前橋市役所にぎわい観光課長)が、町興しの一案として「片原饅頭」の再現を計画し、被請求人に協力を依頼した二度にわたる手紙(甲第3号及び第4号証)に対する返事の手紙(甲第5号証)を読めば、被請求人が「片原饅頭」の復活を計画しているとは到底思えない。「片原鰻頭」は、前橋市の市民が長い間愛し続け育て上げた前橋名物の銘菓であり、前橋市内で製造・販売することが絶対の条件である。行政の協力は必須の条件であり、常軌を逸した返事の手紙の文面には驚嘆せざるを得ない。
(2)請求人による本件審判請求の不当性について
ア 被請求人が、「請求人は、現在『ふくまんじゅう』という名前で酒饅頭の製造と販売を前橋市内で行なっているが、多くのお客から『畑田家の片原饅頭の味を模倣することで売ろうとしているが、片原饅頭の味とは異なっている。』との声が寄せられている。」と主張する点について以下のとおり反論する。
(ア)請求人が、平成19年2月14日に群馬県と前橋市の行政者に同行し、醸造・発酵学の世界的権威者である東京農業大学の小泉教授を大学の研究室に訪問した際に、「ふくまんじゅう」を見せたところ、見るなり「おう、片原饅頭だな」と言いながら試食して「懐かしい味だな」と絶賛された(甲第6号及び第7号証)。
また、「ふくまんじゅう」を購入した多くのお客からも懐かしい片原饅頭の味だという賛辞を受けた(甲第8号ないし第10号証)。
更に、群馬県が東京都内で開催した県人会にお土産として「ふくまんじゅう」を持参し出席者に提供(甲第11号証)したところ、出席者に「片原饅頭だ、懐かしい」と大好評で、東京大会の際には笹川代議士が演壇に上って挨拶する際に「ふくまんじゅう」を掲げて「片原饅頭」復活の希望をわざわざ述べられたほどであった。
(イ)「ふくまんじゅう」を購入した多くのお客から被請求人に対して「ふくまんじゅう」が「片原饅頭」の味とは異なっているという声が寄せられているとのことであるが、多くのお客が、岐阜県に在住する被請求人の住所や電話番号をどうして知っているのか不思議であるし、一方では前述した事実が示すように「ふくまんじゅう」が「片原饅頭」の味の復活だという声が高いのも確かなことであり、被請求人の主張には全く納得できない。
イ 被請求人が、「『ふくまんじゅう』の販売店内の壁に、2007年2月まで、商標権者である畑田一幸・畑田とき子から何等の許可を得ずに、乙第1号証に示す片原饅頭志満屋本店の包装紙を額に入れて無断で飾ることにより、あたかも片原饅頭と何等かの関係が有るように装っていた。」と主張する点について以下のとおり反論する。
(ア)まず、「ふくまんじゅう」の販売店というのは存在しない。店というのは、お客が出入りできて初めて店になる。「ふくまんじゅう」は、請求人の工場の入り口に受付窓口を置いて注文に応えているだけである(甲第11号証)。
(イ)被請求人が指摘する日は、たまたま請求人も家人も不在で、被請求人は無断で工場内に入り、工場の壁に貼ってあった「片原饅頭」の包装紙を外すように高圧的な態度で従業員に指示したため、従業員がそれに従がったまでである。その包装紙は、請求人が被請求人から数十枚譲渡されたうちの1枚である。譲渡される時に、「片原饅頭を目標にして頑張ります。これを壁に貼って眺めながら励みにします。」と誓ったもので、個人的に装飾として壁に貼っておいたものであり、外部から見えるものではない。
(ウ)内輪の集まりでたった1回、「片原饅頭」の包装紙を用いただけで商標の使用に該当すると主張する被請求人の考え方からすれば、個人的に室内の装飾として外部から見えない場所に貼ってあるだけでも商標権侵害行為になるのであろうが、一般常識では通用しない考え方であろう。
(エ)また、被請求人は、請求人の工場内に無断で立ち入る際に、食品を製造している工場にも拘わらず、外から来たそのままの姿で工場指定の白衣、長靴、帽子を着用しないままだったので、従業員は衛生上の問題が気になったと述べている(甲第12号証)。このことも食品である饅頭の製作・販売を真剣に考えているとは思えない証拠のひとつである。
ウ 被請求人が、「請求人が製造する『饅頭』は、味も品質も製造方法も『片原鰻頭』と全く異なるもので、断じて許すことは出来ない。」、また「被請求人の家庭内では、今までも饅頭が作られ、先祖が築いた片原饅頭の味覚の継承が行なわれてきた。」と主張する点について以下のとおり反論する。
(ア)被請求人が証拠方法として提出した乙第2号証の「片原饅頭」と称している写真を見て暗澹たる気持ちになった。我々前橋市民が愛し続けてきた「片原饅頭」とは全く別のものである。このような無様な形と色をした「片原饅頭」はあり得ない。この慢頭を目の前に出されたら前述の小泉教授もさぞかしびっくりされたことであろう。「片原饅頭」は、真横から見れば完全な円盤型で真上から見れば真ん丸の美しい形をしているのが特徴であり、色も綿雪のように真っ白なものである(甲第13号証)。しかし、実際に皮を作り餡を煉り、それを包んでいた職人は閉店時に全て解雇され畑田家には1人もいないのであるから、無理もない。
(イ)請求人が「片原饅頭」の復活を目指す契機になったのは、酒饅頭の製造方法を詳述した文献(甲第14号証)を見つけたことにある。
「片原饅頭」は、酒饅頭と呼ばれているほとんどの饅頭が皮の生地に糀とイースト菌を使っているのに対し、100%糀と小麦粉だけで生地を作って餡を包む独特のもので、その製法、特に糀元菌と餡の製法は「志満屋」の職人頭だけに代々伝えられる160年前からの秘法と言われてきた。請求人は、酒饅頭の製法を詳述した文献に出会ってから3年間、文献に説明してある糀元菌の製法に挑戦して試行錯誤し、毎日毎日、2時間おきに温度や湿度をチェックするなど文字通り不眠不休の毎日であった。
(ウ)かかる時に出逢ったのが「志満屋」最後の職人頭であった塩沢孝義(平成19年逝去。享年92歳)さんである。塩沢さんは、糀元菌は「志満屋」開店の時点で全て廃棄し、もうどこにも存在しないし、新たに作りそれを維持するのは、家庭内でやるような作業ではなく、それなりの設備と人員が必要だからと最初は協力を渋っていたが、請求人の「片原饅頭」の味復活に寄せる強い熱意が通じて、請求人の工場内で付きっきりで指導してくれ(甲第15号及び第16号証)、遂に「これが片原饅頭です」とお墨付きを貰える完成品に至ったのは「片原饅頭」の味復活を目指してから6年後の平成17年のことであった(甲第17号証)。その饅頭を請求人は「ふくまんじゅう」と名付けて製造・販売を開始したのである(甲第18号及び第19号証)。
(3)結論
上記反論から、被請求人が主張する理由には全て根拠がないことは明らかである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号ないし第21号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標権者による使用の事実について
乙第4号ないし第14号証の証明書に示すように、平成19年4月21日(土)に行われた故畑田清志氏の一周忌法事の際に、被請求人たる商標権者により、乙第1号証に示す包装紙で包装された乙第2号証に示す饅頭の譲渡行為が行われている。
この饅頭の製造に際しては、有限会社片原饅頭志満屋本店代表取締役社長として「片原饅頭」製造の全てを取り仕切ってきた畑田とき子氏と被請求人の妻である畑田久美子氏により、乙第2号証に示す「饅頭」の製造が行われ、また、被請求人の手で、乙第1号証に示す包装紙を使用して、この「饅頭」の包装が行われた。
この乙第1号証に示す包装紙で包装された「饅頭」には、「片原饅頭」の商標が大きく表示されており、この包装紙により包装された「饅頭」が、被請求人により平成19年4月21日(土)に第三者に譲渡されているので、本件商標は、本審判の請求の予告登録日前3年以内に、その指定商品「饅頭」について日本国内において商標権者によりその使用が行われている。
なお、被請求人は、以下の理由から、今後とも、継続的に「片原饅頭」の商標が表示された包装紙を使用して「饅頭」を第三者に継続・反覆して譲渡することを計画しており、継続的な商標使用意思を有している。
2 請求人による本件審判請求の不当性について
(1)本件商標の漢字表記に指定商品「饅頭」を付けた商標である「片原饅頭」は1832年(天保3年)に、初代柳左衛門が前橋市千代田町2丁目6番2号の辺りに店舗を開き、片原饅頭の名前で酒饅頭の製造販売を開始し、その後、2代目定吉、3代目徳太郎、4代目政太郎、5代目とき子と、代々畑田家がこの「片原饅頭」の製造と販売を1996年3月まで(但し、第2次世界大戦中は日本国の命令により、饅頭製造の営業はさせてもらえなかった。)続けてきた。
その間、本件商標である「片原饅頭」は、初代から5代にわたる畑田家の工夫と努力による酒饅頭の風味のよさで広く知られ、前橋名物になった(乙第3号証)。
また、その製造法は、長い工程を省略せずに地道に行うもので、皮の製造のみならず、あんこも小豆から作ってきた。
(2)被請求人の父である畑田清志(畑田とき子の夫)は、片原饅頭の複雑で長い工程を守り、風味を損なわないように努力し、戦後の日本社会の現代化・近代化の波の中で、初代からの酒饅頭の製造販売を一筋に遂行し、昭和20年代に「片原饅頭、片原饅頭志満屋本店、片原、かたはら、KATAHARA、かたはらまんじゅう、カタハラマンジュウ、KATAHARA MANJU、片原志満屋」の各商標登録を行った。
本件商標である「片原饅頭」の類似商品は、今までも複数でているが、それらの味は畑田家本家の「片原饅頭」の味とは全く異なる。
被請求人の父、畑田清志が2006年4月22日に死亡したため、長男である被請求人(現商標権者)が上記9件の登録商標を引き継いだ。
その理由は、先祖が築いた片原饅頭の味覚と評判を守り、畑田家本家の片原饅頭の味と異なる味の饅頭に、「片原饅頭」の名前を無断で使われたくない(他人による、簡易な製造方法で作った饅頭で味が粗末なものに、「片原饅頭」の名前を使われたくない)と考えたからである。
(3)請求人は、現在「ふくまんじゅう」という名前で酒饅頭の製造と販売を前橋市内で行っているが、多くのお客から「畑田家の片原饅頭の味を模倣することで売ろうとしているが、片原饅頭の味とは異なっている。」との声が寄せられている。
また、請求人は、前橋市西片貝4一16一10所在の「ふくまんじゅう」の販売店内の壁に、2007年2月まで、商標権者である畑田一幸・畑田とき子から何等の許可を得ずに、乙第1号証に示す片原饅頭志満屋本店の包装紙を額に入れて無断で飾ることにより、あたかも片原饅頭と何等かの関係が有るように装っていた。
これに対して、被請求人は、2007年2月14日に請求人の「ふくまんじゅう」販売店を訪れて、その事実を確かめた。
その際、請求人本人又は奥様にお会いしたいと、その店で話したが、不在ということで、その店の男子従業員に、「片原饅頭を営業していた畑田家は、このような行為を許可したことはないので取り外してください。」とお願いし、その場でその従業員はその額を取り外した。
(4)現在、「片原饅頭、片原饅頭志満屋本店、片原、かたはら、KATAHARA、かたはらまんじゅう、カタハラマンジュウ、KATAHARA MANJU、片原志満屋」の各商標は、被請求人が有効に権利を所有しているので、請求人による前記行為は、商標権侵害行為であり、この様な不道徳、かつ、違法な商標権侵害行為をする請求人は、全く信頼できる人物ではない。
また、請求人は、本件の商標権者の包装紙を前記のように無断使用した後、平成19年3月13日に第30類「饅頭」を指定商品とする「片原饅頭」の商標出願(商願2007一26775:現在、拒絶理由通知)を行うことにより、被請求人に代わり自分が「片原饅頭」の商標権者になろうと画策しいる。
また、同時に、請求人が現在作っている「ふくまんじゅう」を、被請求人所有の知名度の高い「片原饅頭」の名前を無断使用し製造販売することを計画しているようであるが、請求人が製造する「饅頭」は、味も品質も製造方法も「片原饅頭」と全く異なるもので、断じて許すことは出来ない。
(5)前記のように、請求人による違法かつ不当な行為が平成19年2月まで行われたため、被請求人は、請求人のような、片原饅頭志満屋本店とも、畑田家とも何の関係もない人物により簡易な製造方法で作られて味が粗末な饅頭から、先祖が築いた片原饅頭の味覚と評判を守るために、「片原饅頭、片原饅頭志満屋本店、KATAHARA、KATAHARA MANJU」の各商標が印刷された乙第1号証に示す包装紙を使用した「片原饅頭」を復活させることを決意した。
なお、被請求人の家庭内では、今までも饅頭が作られ、先祖が築いた片原饅頭の味覚の継承が行われてきた。
この、「片原饅頭」の商標使用の復活の手始めとして、平成19年4月21日(土)に行われた故畑田清志氏の一周忌法事の際に、畑田家の正当承継人である被請求人により、乙第1号証に示す包装紙で包装された乙第2号証に示す饅頭を第三者に譲渡する行為が行われた(乙第4号ないし第14号証)。
被請求人は、平成19年4月21日(土)の第三者への本件「片原饅頭」の譲渡が大好評であり、また、平成19年3月13日の請求人による不当な商標出願行為があったため、今後とも、先祖が築いた片原饅頭の味覚と評判を守るために、「片原饅頭、片原饅頭志満屋本店、片原、かたはら、KATAHARA、かたはらまんじゅう、カタハラマンジュウ、KATAHARA MANJU」の各商標が印刷された包装紙で包装された饅頭を、継続・反覆して第三者に譲渡する行為を継続して行きたいと考えている。
3 まとめ
上記理由から、本件審判請求の予告登録日前3年以内に、本件商標は、その指定商品について日本国内において商標権者によりその使用が行われており、請求人の主張は何の根拠も無く失当であるため、本件審判の請求は成り立たない。
4 第2答弁
(1)本件は、商標登録第810777号の不使用取消に関する審判事件であるため、本件商標使用事実に関する有無が争点となるものである。
(2)被請求人は、平成20年1月11日付け答弁書において、乙第4号ないし第14号証の証明書を示すことにより、商標登録第810777号「片原饅頭」他の各商標が大きく表示された包装紙により包装された「饅頭」が、商標権者により平成19年4月21日(土)に第三者に譲渡されており、本件商標「片原饅頭」は、本件審判請求予告登録日前3年以内に、その指定商品第30類「饅頭」について本件商標の使用が行われており、かつ、商標権者が、前記商標使用行為を契機に、今後とも継続的に、本件商標「片原饅頭」が表示された包装紙を使用して「饅頭」を第三者に継続・反復して譲渡することを計画しており、継続的な商標使用意志がある旨の主張を行っている。
(3)被請求人のこの答弁に対し、請求人は、平成20年2月22日付け弁駁書で、上記点に関しては単に「全くナンセンス」と述べるのみで、その理由を示す議論は全くせず、他の主張は、本件商標使用とは全く無関係の主張に終始しているが、上記(2)の事実は、ナンセンスでは全くない。
(4)結論
上記のとおり、本件審判請求予告登録日前3年以内に、本件商標「片原饅頭」は、その指定商品第30類「饅頭」について、日本国内において商標権者によりその使用が行われており、請求人の主張には何の根拠も無く失当である。
よって、被請求人は、迅速なる「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。
第4 当審の判断
1 商標権者による本件商標の使用事実について
(1)被請求人は、平成19年4月21日に行われた故畑田清志氏の一周忌法事の際に、乙第1号証に示す「包装紙」(以下「本件包装紙」という。)で包装された乙第2号証に示す「饅頭」(以下「本件饅頭」という。)の譲渡行為が、商標権者である被請求人によって行われたことをもって、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品「饅頭」について使用されている旨主張している。
(2)ところで、商標法第50条の適用上、「『商品』というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、『商品についての登録商標の使用』があったというためには、当該商品の識別表示として同法第2条第3項、第4項所定の行為がされることを要するものというべきである(東京高裁、平成12(行ケ)109、平成13.2.28判決参照)。」と判示されているが、これを本件についてみると、被請求人が譲渡行為を行ったことを示す証左として提出された乙第4号ないし第14号証は、いずれも定型文による各個人の「証明書」の写しと認められるところ、その内容は、平成19年4月21日に行われた故畑田清志氏の一周忌法事の際に、本件商標が印刷された本件包装紙により包装された本件饅頭の譲渡を受けたことを証明するものであり、資料1及び2として本件包装紙の写し及び本件饅頭の写真が添付されている。
しかしながら、上記「証明書」には、被請求人が、実際に譲渡行為を行ったことを具体的に示しているところがない。すなわち、本件饅頭が本件包装紙に包装された状態を具体的に示す写真等は添付されていないし、本件饅頭に係る各証明者による受領書・領収書や被請求人による納品書・請求書といったものも見当たらず、むしろ、上記「証明書」からは、故畑田清志氏の一周忌法事に参加した者が、引出物ないしはお土産として、本件饅頭を受け取ったものとみるのが自然であって、社会通念に従えば、該法事の主催者も参加者も、本件饅頭を商品として譲渡し譲受する意思を有していたものとは考え難く、客観的にみても、本件饅頭が商品として認識し理解されるものとは認め難いものである。
そうすると、本件饅頭は、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物(商品)とは認められない。
また、本件饅頭が、本件包装紙によって包装されていたかは必ずしも明らかでないが、仮に本件包装紙が包装に用いられ、かつ、本件包装紙に本件商標と社会通念上同一と認め得る商標が表示されていたとしても、上述のとおり、「商品」とは認められない本件饅頭は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、・・・する行為」には該当しないから、「商品についての登録商標の使用」があったものとも認められない。
なお、被請求人は、今後とも本件商標が表示された包装紙を用いて「饅頭」を第三者に継続・反復して譲渡することを計画しており、継続的な商標使用意思を有している旨主張しているが、本件審判では、請求の登録前3年以内に本件商標がその指定商品について使用されていたか否かが問題なのであって、単なる商品譲渡の計画や商標使用意思があることをもって本件商標が使用されていたものと認められないことはいうまでもない。
結局、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標がその指定商品について使用されていたものとは認められない。
その他、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内にその指定商品について使用されていたことを認めるに足る証拠はない。
2 請求人による本件審判請求の不当性について
なお、被請求人は、「片原饅頭」なる酒饅頭の沿革等を縷々述べ、請求人による本件審判請求が不当なものである旨主張している。
しかしながら、「商標制度は、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とするものである。商標権が設定された後であっても、一定期間登録商標が使用されていない場合には、保護すべき対象である信用がないのであるから、その商標権は、商標制度の趣旨にそわないものであるのみならず、他人による同一又は類似商標の使用を阻み、他人の流通秩序への寄与を妨げることになって、国民一般の利益を不当に侵害するものである。そこで、請求により、このような商標登録を取り消そうとするのが、商標登録不使用取消制度の趣旨と解すべきである(東京高裁、平成12(行ケ)44、平成12.6.27判決参照)。」と判示され、かつ、商標登録の取消の審判は、商標法第50条第1項の規定によれば、何人も請求することができるものであるから、被請求人のこの主張は採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品について、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても使用されていなかったものというべきであり、また、その不使用について正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-10-03 
結審通知日 2008-10-09 
審決日 2008-10-21 
出願番号 商願昭35-37438 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (130)
最終処分 成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小川 きみえ
佐藤 達夫
登録日 1969-03-24 
登録番号 商標登録第810777号(T810777) 
商標の称呼 カタハラマンジュウ、カタハラ 
代理人 羽鳥 亘 

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