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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 132
管理番号 1192235 
審判番号 取消2007-301475 
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-16 
確定日 2009-01-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第2686043号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第2686043号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2686043号商標(以下「本件商標」という。)は,「観音」の文字を横書きしてなり,平成2年11月13日に登録出願,第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年7月29日に設定登録され,その後,平成18年7月19日に,指定商品を第32類「清涼飲料」とする指定商品の書換の登録がされたものであり,書換後の指定商品の商標権は,現に有効に存続しているものである。
なお,本件商標の商標権者は,その設定登録時において,住所Aに所在の「企業A」であったが,登録名義人の表示の変更により,住所が「住所B」と,名称が「企業B」と,それぞれ変更され,その登録がいずれも平成16年7月28日にされた。

2 請求人の主張の要点
請求人は,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べた。
(1)請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア パンフレット(乙第1号証)は,ラベル見本を用いて撮影されたペットボトル入りの清涼飲料の写真を含むもので,「観音」の文字が表示されているものの,被請求人(企業B,社名を用いるときは,以下「企業B」という。)は,同パンフレットを「本件審判の請求日よりも3ヶ月以上前に,企業A(以下「企業A」という。)の社内で印刷した」旨主張するのみで,具体的な印刷の時期・部数については明らかにしていない。そして,広告的使用に該当するためには,現実にパンフレットを展示し又は頒布した時期・場所・部数等が明らかにされなければならないが,そのような証拠は何ら提出されていない。
また,被請求人は,「ラベル(乙第2号証)は,印刷会社である企業C(以下「企業C」という。)から,平成19年8月1日に,企業Aに納品された」と主張し,納品書(乙第3号証)を提出しているが,同ラベルを付したペットボトル入りの清涼飲料の販売の価格・数量・時期等を明らかにする取引書類等の証拠は何ら提出されていない。
イ ところで,商標法第50条第1項は「継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標・・の使用をしていないときは,・・」と規定している。また,同法第2条第3項第1号は「商品又は商品の包装に標章を付する行為」を,同項第2号は「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」を,同項第8号は「商品又は役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を,それぞれ標章の使用と規定している。これらの規定における「商品」とは,現に流通している商品を意味し,現に流通していない商品は,これらの規定における「商品」には該当しないものというべきである。なぜなら,商標法第1条は,同法の目的として「この法律は,商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,・・・」と規定しているところ,ここでいう「業務上の信用」とは現実の商標の使用により化体するものであり,そのためには,商標を付すべき商品が現存していなければならないからである。
そこで,本件についてみると,被請求人が「販売開始は,平成20年に延期された」と主張するように,審判請求の登録日(平成19年11月30日)の時点において本件商標を付すべき「商品」は存在していないことから,「商品」又は「商品」の包装に本件商標を付したり,「商品」又は「商品」の包装に本件商標を付したものを譲渡等したり,「商品」に関する広告,価格表若しくは取引書類に本件商標を付して展示等することはあり得ない。
また,被請求人は,企業Aによるラベルの印刷やパンフレットの作成は商標法第2条第3項に規定される「使用」に該当すると主張するが,上記各行為は単なる販売の準備行為にすぎず,「使用」には該当しない。仮に,このような形式的・名目的な行為により取消しを免れることになると,不使用商標の整理により商標使用希望者の商標の選択の余地を開くという不使用取消審判の制度趣旨を逸脱することになり,甚だ不都合である。
なお,被請求人は,販売開始が延期された理由として「ラベル(乙第2号証)の完成が予定より遅れて,清涼飲料の需要の多い夏季の販売に間に合わなかった」ことを挙げるが,かかる事情は被請求人自身の事業運営の問題に起因するものであり,不使用を正当化する事由には到底なり得ない。
ウ このように,乙各号証によっては,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者又は使用権者が指定商品「清涼飲料」について本件商標を使用していることは証明されていないので,本件商標の登録は取消しを免れない。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を次のとおり述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
(1)答弁書(要旨)
本件商標の商標権者である企業Bの100%子会社である企業Aは,「観音」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)を付したペットボトル入りの清涼飲料(ミネラルウォーター)の写真を含む販売用のパンフレット(乙第1号証)を本件審判の請求日よりも3ヶ月以上前に同社内で印刷した。
また,乙第1号証に示すペットボトルに付されたラベル(乙第2号証)は,本件商標を表示するものであって,本印刷の前の段階で,ラベル見本を用いて撮影された。
さらに,ラベル(乙第2号証)は,印刷会社である企業Cから,平成19年8月1日に,企業Aに納品され(乙第3号証),その代金100485円(送金手数料含む。乙第4号証)が同年9月20日付けで,企業Cの銀行口座に振り込まれた(乙第5号証)。
なお,乙第1号証に示す商品は,ラベル(乙第2号証)の完成が予定より遅れて,清涼飲料の需要の多い夏季の販売に間に合わなかったので,販売開始は,平成20年に延期された。
また,企業Aは,企業Bの100%子会社であり(乙第6号証),かつ,同社の特許権,意匠権,商標権を利用することについて,毎年一括して対価が支払われている通常実施権あるいは通常使用権がある。
以上のように,少なくとも本件審判請求の日の3ヶ月以上前の2007年8月1日に,本件商標を示したラベルが印刷され,かつ,このラベルを付した商品の写真を含む商品販売用のパンフレットが作成されている。
上記企業Aの行為は,商標法第2条第3項に規定される「使用」に該当する。
以上のとおり,本件審判請求の予告登録の日以前に,本件商標を,本件商標の商標権者の子会社が,本件商標の指定商品「清涼飲料」について使用し,同清涼飲料の販売の準備をしていたことは乙各号証から明白である。
(2)第2答弁書(要旨)
乙第1号証のパンフレットには,使用商標が表示されたラベル見本を付したミネラルウオーター入りのペットボトルが写されている。この行為は,商標法第2条第3項第1号に規定される「使用」に該当する。
企業Aは,乙第1号証のパンフレットを,自社の事務所の壁に貼付して展示し,又,事務所に出入りする一般の需要者に頒布した。この行為は,商標法第2条第3項第8号に規定される「使用」に該当する。
企業Aは,使用商標を表示したラベルを付したミネラルウオーター入りのペットボトルを自己の事務所に展示し,出入りする業者や一般の需要者に譲渡又は引き渡した。また,平成20年1月21日提出の答弁書において,本件商品の販売開始は平成20年に延期された旨述べたが,これは全国販売であって,首都圏での小規模の販売はしていた。
これらの行為は,商標法第2条第3項に規定される「使用」に該当する。
以上のとおり,本件審判請求の予告登録の日以前に,本件商標を,本件商標の商標権者の子会社が,本件商標の指定商品「清涼飲料」について使用していたことは乙各号証から明白である。

4 当審の判断
(1)商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項の規定により,被請求人において,その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し,または,使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り,その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないところ,被請求人は,本件審判請求の日の3ヶ月以上前の2007年8月1日に,使用商標を示したラベルが印刷され,かつ,このラベルを付した商品の写真を含む商品販売用のパンフレットが企業Aにより作成されている。そして,企業Aは,パンフレットの納品後,使用商標を示したラベルを付した商品及びそのその写真を表示したパンフレットを自社の事務所に展示し,かつ,その商品を事務所の来訪者に引き渡した。このような企業Aの行為は,商標法第2条第3項に規定される「使用」に該当するから,少なくとも本件審判請求の日の3ヶ月以上前の2007年8月に,本件商標を,その商標権者の子会社が,本件商標の指定商品「清涼飲料」について使用していたことは,乙各号証から明白である旨主張する。そこで,乙各号証について検討する。
(2)乙第1号証ないし乙第5号証及び乙第7号証によれば,以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は,住所Aに所在の企業Aの取扱いに係る商品「ミネラルウォーター」について,本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標が使用されていることを示すパンフレットである。しかし,該パンフレットの作成時期,作成部数などは明らかではない。
イ 乙第2号証は,乙第1号証に示す商品「ミネラルウォーター」の包装容器に付されるラベルであって,該ラベルの一部には,使用商標が表示されている。
ウ 乙第3号証及び乙第4号証は,企業Cが企業Aに宛てた「納品書」及び「御請求明細書」であるところ,前者は,発行年月日を2007年(平成19年)8月1日(売上年月日:2007年8月1日)とし,後者は,発行年月日を2007年9月3日(2007年8月31日締切)とするものである。そして,両取引書類の記載内容は,「商品名」欄の「PETボトル用超ミネラル観音シール」に,「数量:3000枚」,「金額:66,000」等の記載があること,同欄の「版代」に,「数量:4版」,「金額:20,000」の記載があること,同欄の「型代」に,「数量:1式」,「金額:9,700」の記載があること,さらに,総合計として,「100,485」であり,そのうち,「消費税4,785」が含まれることなどにおいて一致するものである。
なお,企業Cの社名表示箇所には,「お振り込み先」として「口座番号A」の記載がある。
エ 乙第5号証は,「ご依頼人名称/カ)企業A」,「フリコミ 振込予定日20」等の記載がある送金伝票であるところ,上から4段目に,「銀行名 支店名」として「ミツイスミトモ ナカノサカウエ」の記載が,「お受取人預金口座/種目 口座番号 お受取人」として「取引内容A」の記載が,また,「金額」として「99645」の記載が,さらに,「手数料」として「840」の記載が,それぞれある。
オ 乙第7号証は,企業D代表取締役である「人物A」の署名と社印の押印のある証明書であるところ,これには,平成19年8月上旬に,企業A本社事務所に,使用商標が表示されたラベルを付したミネラルウオーター入りのペットボトル及びその写真入りのカタログが展示されていたこと,また,当該ペットボトルが,8月上旬に「人物A」に引き渡されていたことが記載されている。しかし,当該引き渡しに係る数量・販売価格などは明らかではない。
(3)前記(2)アないしオの認定の事実及び被請求人の答弁によれば,住所Aに所在の企業Aは,使用商標を使用した商品「ミネラルウォーター」のパンフレットを作成した上で,上記「ミネラルウォーター」に付されるラベル3000枚を企業Cに発注し,該ラベルは,本件審判の請求の登録(平成19年12月4日)前3年以内である2007年(平成19年)8月1日に,企業Aに納品されたことが一応推認され,企業Aは,「ミネラルウォーター」について使用商標を使用し,販売の準備をしていたことが窺える。
しかし,以下の理由により,被請求人が主張する企業Aが「ミネラルウォーター」について使用商標を使用する行為は,商標法第50条第2項に規定する登録商標の使用に当たらないものというべきである。
ア パンフレット(乙第1号証)の作成年月日について,被請求人は,「ミネラルウォーター」の包装容器に付されるラベルより早い時期に作成した旨主張するが,これを裏付ける証拠の提出はなく,その正確な日にちは明らかではないから,上記被請求人の主張を直ちに認めることはできない。また,パンフレットの作成部数も明らかではなく,取引市場において頒布するに足りる部数が存在していたのか把握することができない。
イ 「ミネラルウォーター」の包装容器に付されるラベルに関する「納品書」及び「御請求明細書」(乙第3号証及び乙第4号証)と送金伝票(乙第5号証)とは,それぞれの合計金額が相違する。両者は,送金伝票の手数料を加算した場合に一致するとしても,送金伝票における振込日も「振込予定日20」とあるだけで正確な年月日は明らかではない。したがって,企業Aは,何らかの取引で,企業Cに対し,99,645円を振り込んだことが窺えるとしても,乙第5号証に記載された取引が乙第3号証及び乙第4号証に示す取引であることを証明するものと判断することはできない。すなわち,送金伝票(乙第5号証)が比較的客観性を有する証拠と認められるのに対し,「納品書」及び「御請求明細書」(乙第3号証及び乙第4号証)は,それのみでは比較的客観性に欠ける証拠と認められ,両者に関連性が見出せない限りにおいては,「納品書」及び「御請求明細書」に記載されたラベルの取引が実際に行われたものであるか疑問が残るといわざるを得ない。
ウ 被請求人は,乙第7号証の証明書を示し,企業Aは平成18年8月上旬以降に自社の事務所に使用商標を表示したミネラルウオーター入りのペットボトル及びその写真入りのパンフレットを貼付し,事務所の来訪者である人物Aに当該ペットボトルを引き渡した,これらの行為は商標法第2条第3項に規定される使用に該当する旨主張するが,「商標法第50条の適用上,『商品』というためには,市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず,また,『商品についての登録商標の使用』があったというためには,当該商品の識別表示として同法2条3項,4項所定の行為がされることを要するものというべきである(東京高裁 平成12(行ケ)109)」と解されるところ,たとえ企業Aが,自社の事務所内に当該ペットボトル及びパンフレットを展示していたとしても,その証明書の記載内容からは,これが実際の商取引の目的をもって展示されたものとは認めがたく,また,引き渡しがあったとする事実にしても,引き渡しに係る商品の数量,対価などが明示されておらず,その商品が商取引の対象として流通に供されたものと認めることもできない。
さらに,被請求人は,平成20年1月21日提出の答弁書において,首都圏での小規模の販売をしていた旨述べているが,上記の証明書以外に何らその主張を裏付ける証左の提出はない。
そうすると,被請求人が主張する上記行為は,商品についての登録商標の使用ということはできない。
エ 上記アないしウによれば,提出に係る乙各号証をもっては,企業Aが本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件請求に係る指定商品中の「ミネラルウォーター」について本件商標を使用すしていたと認めることはできない。
そして,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者
,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより,本件請求に係る指定商品のいずれかについて,実際の取引市場において使用をされていたことを認めるに足る的確な証拠の提出もない。
なお,付言すれば,被請求人(企業B)の100%子会社であるとする企業Aは,本件商標の商標登録原簿の記載によれば,前記1のとおり,企業Bの社名変更前の社名であることが認められる。
(4)むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標の使用をしていたことを証明し得たものと認めることはできない。また,被請求人は,請求に係る指定商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-11-17 
結審通知日 2008-11-19 
審決日 2008-12-02 
出願番号 商願平2-126139 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (132)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 久我 敬史
小林 由美子
登録日 1994-07-29 
登録番号 商標登録第2686043号(T2686043) 
商標の称呼 カンノン 
代理人 川村 恭子 
代理人 牧野 剛博 
代理人 松山 圭佑 
代理人 佐々木 功 
代理人 高矢 諭 

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