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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 125
管理番号 1190859 
審判番号 取消2007-301191 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-09-19 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第1911264号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1911264号商標(以下「本件商標」という。)は、「LA CIFONELLI」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年5月31日に登録出願、第17類「洋服、その他本類に属する商品」を指定商品として、同61年11月27日に設定登録され、その後、平成9年3月11日及び同18年9月26日の2回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、同18年10月11日に指定商品を第25類「被服」とする指定商品の書換登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁書に対する弁駁を以下のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、今日に至るまで3年以上使用されていないことは、本件審判請求人の調査により明らかである。したがって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人は、平成19年12月12日付け答弁書において、本件商標について、「本件審判請求の登録日である平成19年10月5日以前から3年以内に、本件商標を種々の婦人用のカットソーに継続使用している」とした上で、「その事実を、埼玉県さいたま市北区宮原2-19-4に本社を置き全国的に店舗を展開している「株式会社しまむら」(以下「しまむら」という。)に対して、商標権者であるクロスプラス株式会社の東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号クロスプラス株式会社東京支店が「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」として納品している婦人用のカットソーにより証明する」として、乙第2号証及び乙第3号証を提出している。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証によっては、該カットソーに本件商標が使用された事実は一切証明されていない。すなわち、これらの証拠から、平成19年8月23日、29日及び31日並びに同19年8月31日及び9月1日に、被請求人の主張に係る商品(商品記号873976S及び873979S)が被請求人から「しまむら」に納品され、該商品が「しまむら」の各店舗において展示販売された事実を認定することは、一応可能であるが、他方、かかる商品に本件商標が使用された事実は、一切証明されていない。
以下、その理由を述べる。
ア 乙第2号証について
(ア)乙第2号証は、「しまむら」の阿部敦史氏の作成にかかる証明書である。この証明書は、「証明願」と表示された乙第2号証の1枚目に、仕様書(2、3枚目)、仕切書(4枚目)、衿ネーム及び下札に係る指図書(5枚目)、及び、EDIシステム仕入れデータ(6ないし9枚目)が添付されてなるものである。すなわち、乙第2号証は、被請求人社員の小勝伊佐男氏が、上記2枚目から9枚目を添付して作成した「証明願」について、「しまむら」の阿部敦史氏に対して証明を求め、同氏が内容を確認した上で、署名捺印をしたというものである。
もっとも、乙第2号証1枚目に記載された証明事項は、明快であるとは言い難く、必ずしも趣旨が明確ではない部分があるので、念のため引用し、これを分説すると以下のとおりである。
a クロスプラス株式会社東京支店が、添付の貴社仕様書(A)に基づいて、
b 商品記号873978S及び商品記号873979Sに係る「カットソー」を
c 弊社の「しまむら別注」と表示した仕切書に記載の全3600着に「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」、「下札」を付して、
d 貴社にEDIシステムの仕入れデーターに記載されているように2007年8月23日、8月29日、31日に納品したものであるとともに、
e 貴社の店舗において展示販売したものであること
(イ)「しまむら」の阿部敦史氏は、上記aないしeの事項(以下「証明事項a」のようにいう。)を証明し、乙第2号証に記名捺印しているが、以下、各証明事項ごとに検討する。
証明事項b及びdについては、乙第2号証6ないし9枚目のEDIシステム仕入れデータより、商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーが、2007年8月23日、29日及び31日に被請求人からしまむらに納品された事実が認められ、この点は特に問題ないように思われる。
しかしながら、証明事項aについて、被請求人の東京支店が、「しまむら」の仕様書(A)(乙第2号証の2、3枚目)に基づいてカットソーを納品したとされているが、同仕様書には、日付としては、その左上に「センター納品日」の欄に「8月11日」という記載があるのみであって、その作成時期は不明である。しかるに、阿部敦史氏が請求人の依頼を受けて証明するところによると、被請求人は、同仕様書に基づいて、「しまむら」にカットソーを納品したとあることから、同仕様書は該商品発注に用いられたものと考えられる。これを考慮した上で、「8月11日」との記載を2007年8月11日と解した場合、この日付は、センターへの納品日を指示するものであるから、同仕様書による発注は、2007年8月11日以前に行われていなければならない。しかしながら、実際の発注日は、EDIシステム仕入れデータに記載されているとおり、2007年8月13日、27日及び28日であったと考えられる。してみれば、仕様書に基づく発注がされた日付(2007年8月11日以前)と相互に一致しないことは明らかである。よって、仕様書で特定されているカットソーと仕入れデータで特定される商品との客観的な結びつきないし関連性は何ら証明されておらず、同氏が実際に乙第2号証の内容を確認して記名捺印したのか疑問が残る。
念のため、乙第2号証2、3枚目の仕様書に記載されている片仮名「ラシフォネリー」の表示に触れておくと、商標法第2条第3項第8号に規定する「取引書類に標章(商標)を付する」行為とは、取扱商品の伝票(例えば伝票の隅など)に商標を印刷等して付し、そのような伝票を用いて商品の取引を行うことを意味するものであって、品番・商品名・数量・価格といった各取引に応じて記入される欄に商標を表す文字列等を記入する行為を意味するものではない。本件の場合、取引書類と目される仕様書自体に商標が付されているのではなく、発注商品の指定をするための欄に、同仕様書に記載されている他の文字と同じ書体・同じ大きさで「ラシフォネリー」が記入されたにすぎず、これは、品番と同じように、取引の内容に応じて記入されたものである。よって、該表示は商標の使用ではないと考えるのが相当である。しかも、これは「しまむら」が自らが発注する商品を特定するために記入したものであって、商標権者である被請求人又はその使用権者等が自己の商品の出所を表示するために使用する商標とは到底いえない。
証明事項cについては、確かに、乙第2号証3枚目の仕様書及び4枚目の仕切書に記載されている商品記号873979Sに係るカットソーの枚数(1200枚)とEDIシステム仕入れデータ記載の同カットソーの訂正前数量(1200枚)は一致する。しかしながら、乙第2号証2枚目の仕様書及び前記仕切書に記載されている商品記号873978Sに係る枚数(2400枚)は、EDIシステム仕入れデータ記載の訂正前数量(2227枚)及び訂正後数量(1995枚)のいずれとも一致していない。してみれば、該カットソー3600着が、被請求人から「しまむら」に実際に納品された事実は一切証明されておらず、それにもかかわらず、阿部敦史氏による全3600着が納品されたとする証明は、証明願に添付された各書類と矛盾するものであり、同氏が実際に乙第2号証の内容を確認して記名捺印したのか疑問が残る。
なお、念のため乙第2号証4枚目の仕切書に記載されている「Lacifonelli」の表示に触れておくと、同表示も、品番・商品名・数量・価格といった各取引に応じて記入される欄に、品番等と同じように取引の内容に応じて記入されたものであって、出所表示として表示されたものではなく、よって、これは商標の使用には該当しない。また、仕切書は、その中央部に「色指示」、「ビーカー確認」、「仕様書」、「最終サイズ」、「本生産生地」、「附属指示」、「生地検査書」及び「製品検査書」の語が「確認」の欄に記載されていることから、自社工場又は下請工場から上がってきた製品を確認するために用いる被請求人の内部書類と考えられる。してみれば、該書類に商標を付したとしても、これは自他商品識別標識として使用されたものではないため、仕切書における商標の使用とは認められない。
さらに、乙第2号証5枚目の指図書で特定される衿ネーム及び下札(の現物)が商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーに実際に使用されたのか疑問である。まず、指図書に記載されている下札裏の上部に商品記号に相当すべきと思われる「No.876XXX-S」が記載されているが、これは、阿部敦史氏の証明に係るカットソーの商品記号と一致しておらず、当該指図書が商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーに使用するための下札の仕様を定めた指図書であることが客観的に証明されていない。また、指図書左下には「2006年3月20日」に対応すると思しき「06.3.20」という数字が記載されているが、阿部敦史氏の証明に係る被請求人の東京支店と「しまむら」間の取引は、2007年8月頃のものであるから、同指図書は、阿部氏の証明に係るカットソーに使用されたものとは到底いえない。さらに、同指図書に記載されている下札には、商品を特定すべき商品記号や品質表示が具体的に表示されておらず、してみれば、同指図書は、「しまむら」に納品すべきカットソーに実際に使用する下札の仕様を定めるものではなく、あくまでも下札のデザイン案を表しているにすぎず、同下札が市場に流通するカットソーに使用されたものであるとは到底いえないことから、この指図書をもって本件商標が使用されたとは決していえない。
最後に、証明事項eについては、乙第2号証6ないし9枚目のEDIシステム仕入れデータから、同データ記載の商品記号873978S及び873979Sに係る力ットソーが被請求人東京支店から「しまむら」に納品されており、同カットソーが「しまむら」の店舗において展示販売されたものと推認され、この点については特に問題はないと思われる。もっとも、阿部敦史氏が実際の商品が店舗において展示販売された現場を現認したのか、更には、本件商標が使用されている状況を現認したのかは疑問である。
(ウ)小括
以上からすれば、結局、乙第2号証は、単に商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーが被請求人から「しまむら」に納品され、「しまむら」によって展示販売された事実を示すにすぎず、本件商標が使用されたという事実を一切立証するものではない。
なお、被請求人は、答弁書において、乙第2号証の作成に関与した被請求人の社員小勝伊佐男氏を証人とする用意がある旨を述べるが、乙第2号証の作成者は、あくまでも「しまむら」の阿部氏であり、証人尋問が行われるのだとすれば、証人として証言すべきであるのは阿部氏であると請求人は考える。仮に、被請求人が、阿部氏を証人として申請することを拒むのであれば、請求人に、証拠の作成者に対して先に述べた証明事項に係る矛盾点の釈明も含め反対尋問の機会が与えられない以上、乙第2号証は、取引先によって作成されたものではなく、被請求人自身によって作成されたのと同様のものとして証拠価値が評価されるべきものである。
イ 乙第3号証について
(ア)乙第3号証は、仕様書(1、2枚目)、仕切書(3枚目)、衿ネーム及び下札に係る指図書(4枚目)、及びEDIシステム仕入れデータ(5ないし8枚目)からなるものである。これについては、「しまむら」の社員による確認、証明は、一切なされていない。
(イ)これについても、EDIシステム仕入れデータより、商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーが、2007年8月14日及び28日付けの発注を受け、8月31日及び9月1日に被請求人からしまむらに納品された事実が認められ、この点は問題ないように思われる。
しかしながら、「しまむら」の仕様書(乙第3号証1、2枚目)には、センター納品日として指定された8月11日が記載されているのみであって、その作成時期が不明である。ところで、同仕様書については、阿部氏の証明は、されていないものの、乙第2号証に関する同氏の証明を考慮すれば、被請求人は、同仕様書に基づいて、「しまむら」にカットソーを納品したと考えられ、よって、乙第2号証の仕様書同様に、カットソーの発注に用いられたものと考えられる。これを考慮した上で、「8月11日」との記載を2007年8月11日と善解した場合、この日付は、センターへの納品日を指示するものであるから、同仕様書による発注は2007年8月11日以前に行われていなければならない。実際の発注日は2007年8月13日、27日及び28日であったと考えられる。してみれば、仕様書に基づく発注がされた日付(2007年8月11日以前)と相互に一致しないことは、明らかである。よって、仕様書で特定されているカットソーと仕入れデータで特定されている商品との客観的な結びつきないし関連性は何ら証明されていない。
また、乙第3号証1枚目の仕様書及び乙第3号証3枚目の仕切書に記載されている商品記号873976Sに係るカットソーの枚数(1200枚)とEDIシステム仕入れデータ記載の同カットソーの訂正前数量(1200枚)は一致するが、乙第3号証2枚目の仕様書及び同仕切書に記載されている商品記号873977Sに係る枚数(4400枚)は、EDIシステム仕入れデータ記載の訂正前/訂正後数量(4124枚)と一致せず、同仕様書・仕切書と仕入れデータの客観的な結びつきないし関連性は何ら証明されていない。
(ウ)念のため、乙第3号証1、2枚目の仕様書に記載されている片仮名「ラシフォネリー」の表示に触れておくと、乙第2号証2、3枚目に記載されている片仮名「ラシフォネリー」の表示と同様に、取引書類と目される仕様書自体に商標が付されているのではなく、発注商品の指定をするための欄に「ラシフォネリー」が記入されたにすぎず、これは、品番と同じように、取引の内容に応じて記入されたものである。よって、該表示は商標の使用ではないと考えるのが相当である。しかも、これは、「しまむら」が自らが発注する商品を特定するために記入したものであって、商標権者である被請求人又はその使用権者等が自己の商品の出所を表示するために使用をした商標とは到底いえない。
(エ)さらに、乙第3号証4枚目の指図書で特定される衿ネーム及び下札が商品記号873976S及び873977Sに実際に使用されたのか疑問である。まず、指図書に記載されている下札裏の上部に商品記号と相当すべきと思われる「No.876XXX-S」が記載されているのみであって、乙第3号証1枚目ないし3枚目の仕様書・仕切書で特定されている商品記号とは一致せず、よって、当該指図書が商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーに使用するための下札の仕様を定めた指図書であることが客観的に証明されていない。また、指図書左下には「2006年3月20日」に対応すると思しき「06.3.20」という数字が記載されているが、乙第3号証5ないし8枚目のEDIシステム仕入れデータの記載のとおり商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーに関する取引があったのは、2007年夏頃であることを考慮しても、乙第3号証に添付された指図書が同カットソーに使用されたものとは到底いえない。さらに、同指図書に記載されている下札には、商品を特定すべき商品記号や品質表示が具体的に表示されておらず、してみれば、同指図書は、「しまむら」に納品すべきカットソーに実際に使用する下札の仕様を定めるものではなく、あくまでも下札のデザイン案を表しているにすぎず、同下札が市場に流通するカットソーに使用されたものであるとは到底いえないことから、この指図書をもって本件商標が使用されたとは決していえない。しかも、この指図書は、乙第2号証5枚目の指図書のコピーと思われ、これが商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーに実際使用される下札の仕様を定めるものであったとは到底いえない。
(オ)小括
以上からすれば、結局、乙第3号証は、単に商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーが被請求人から「しまむら」に納品され、「しまむら」によって展示販売された事実を示すにすぎず、本件商標が使用されたという事実を一切立証するものではない。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証について
これらの証拠は、本審判請求の登録日である平成19年10月5日以降に作成されたものであって、関連性がなく、本件審判の趨勢を左右するものではない。
エ 本件商標と使用標章との同一性について
また、万が一にも乙第2号証及び乙第3号証(EDIシステム仕入れデータを除く。)によって、「ラシフォネリー」(仕様書に表示)、「Lacifonelli」(仕切書に表示)、「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」及び「Lacifonelli」(指図書に表示)が、本件審判の請求の登録日前3年以内に使用されたと認定された場合であっても、これらの使用標章は、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標とはいえず、よって、乙第2号証及び乙第3号証によって本件商標の使用の事実が立証されたとは決していえない。
(ア)本件商標の内容
本件商標は、欧文字「LA CIFONELLI」と横書きに表してなる。まず、本件商標は、「LA」と「CIFONELLI」の間に一文字分のスペースが存在することから、これに接する者は、本件商標が「LA」と「CIFONELLI」の二語から構成される商標であると容易に認識する。そして、「LA」が2文字であるのに対して、「CIFONELLI」が9文字からなることからすれば、「CIFONELLI」の部分が最も取引者・需要者の目を引き、当然ながら、外観上、当該部分を本件商標の要部と把握・認識される。
また、「LA」の文字はフランス語の定冠詞として我が国においても極めて広く知られているところ、フランス語において、定冠詞は、不定冠詞、部分冠詞と並んで、名詞を限定して示すために名詞の前に付されて使用される冠詞の一つである。しかして、名詞は、これらの冠詞の一つが付されるか、または、付されないでも使用されるものであるから、本件商標に接する者は、「CIFONELLI」にフランス語の冠詞「LA」が付されているにすぎないものと認識し、その結果、「CIFONELLI」の文字部分からの印象を強く受け、当該部分を本件商標の要部であると認識するものと考えられる。したがって、簡易・迅速を尊ぶ取引の実際においては、取引者・需要者は、本件商標に関しては、「CIFONELLI」の部分より生ずる要部たる「シフォネリ(又はチフォネリ)」の称呼をもって取引に当たると考えられる。そして、とりわけフランス語風の商標が度々採択される被服業界においては、「LA」が省略される傾向は、更に強くなると考えるのが相当である。
(イ)使用標章の内容
他方、使用標章について検討すると、乙第2号証及び乙第3号証において表示されている「ラシフォネリー」、「Lacifonelli(すべてのフォントに特徴的なデザインが統一的に施されている。)」及び「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」は、いずれも「La」又は「ラ」と「cifonelli」又は「シフォネリー(シフォネリ)」の間に間隔を置かず、一体的に表示されている。特に、欧文字で表示される「Lacifonelli」については、「La」と「cifonelli」が間隔を空けず一連に表示されていることに加え、「c」の文字が小文字で表示されていることから、2文字目の「a」と3文字目の「c」との間に切れ目ないしポーズを想定する契機は存在しない。すなわち、3文字目の「c」が大文字になっているのであれば格別、いかにフランス語風の商標がしばしば採択される傾向にある被服業界においても、需要者が、欧文字で表示される「Lacifonelli」がフランス語の冠詞 「LA」と「CIFONELLI」の結合商標であると把握・認識する余地はない。また、片仮名「ラシフォネリー」又は「ラシフォネリ」については、これを冠詞「LA」と「CIFONELLI」とが結合した「LACIFONELLI」に相当する片仮名表記であると直接的に、又は、間接的にも把握・認識されることはない。
むしろ、「LA(ラ)」とこれに続く語との間のスペースの有無によって、全く別異の言葉となることが多々ある。
例えば、「ベル」など、特定の観念を有する語をモチーフにフランス語風にアレンジされたネーミングとすべく「ラ」をスペースを空けて付加した場合には、これに接する取引者・需要者、特に本件商標の指定商品である被服の分野における需要者等は、この「ラ」をそれに続く「ベル」を強調する冠詞と認識し、これを単に「ベル」と称呼するものと考えられる。しかしながら、スペースを置かず「ラベル」と表示した場合、だれも、これを「ベル」と略称することはなく、まして、当該語を冠詞「ラ」と「ベル」が結合した語とは、認識しない。同様に、「クロス」や「イオン」といった言葉に「ラ(LA)」を付した「ラ クロス」と「ラクロス」、又は、「ライオン」と「ライオン」を同一の語と認識することなどあり得ない。このように、日本人一般に至極親しまれている「ベル」や「クロス」、「イオン」等の語であっても、「ラ」との間にスペースを空けずに表示された場合、「ラ」と渾然一体となり、看者の目を引くことなく構成全体に埋没するのであるから、特定の語意を有しない「cifonelli(シフォネリ又はシフォネリー)」の語が「La(ラ)」と揮然一体に表示された場合に、これを「La(ラ)」と「cifonelli(シフォネリ又はシフォネリー)」の二つの語が含まれている商標と把握・認識するとは、到底考えられない。
してみれば、上記使用標章に接する取引者・需要者は、これらに含まれる「La」又は「ラ」を省略して、「シフォネリ(又はチフォネリ)」と称呼することはあり得ない。
(ウ)本件商標と使用標章の対比
a 外観
本件商標が「LA」と「CIFONELLI」の二語からなるのに対し、引用標章「Lacifonelli」、「ラシフォネリ(ラシフォネリー)」は、一語より構成されることが明らかであって、「La(ラ)」及び「cifonelli(シフォネリ又はシフォネリー)」の二語からなると認識される余地はなく、本件商標と使用標章とは、外観の差異が顕著であって、その構成の軌を明らかに異にする。
また、以下に述べるとおり、使用標章が一語で表示されることによって、それらから生ずる称呼に大きな影響を及ぼすため、使用標章を、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。
b 称呼
上述のとおり、本件商標は、「LA」と「CIFONELLI」が1文字分のスペースを介して離れて表示され、かつ、「LA」がフランス語の冠詞として容易に認識されることから、本件商標からは、「シフォネリ(又はチフォネリ)」という称呼が生ずる。
なお、本件商標から「シフォネリ」ないし「チフォネリ」との称呼が生ずることについては、被請求人も争わないものと考える。すなわち、本件商標の審査過程において、登録第187482号商標「SHIFONERY」が引用された。これに対し、被請求人(旧名称:桜屋商事株式会社)は、該引用商標に係る商標権を譲り受け、さらに、本件商標と該引用商標を連合商標にした上で、登録されるべき旨主張していたものである(出願人の昭和60年11月12日付け意見書)。連合商標については、旧商標法(昭和34年法律第127号)で規定されていたとおり、商標権者は、自己の登録商標の禁止権の範囲にある商標(類似商標)については、連合商標として出願しない限り商標登録を受けることはできず(旧第7条第1項)、禁止権の範囲外にある商標(非類似商標)については、連合商標として登録できないこととなっている(旧第7条第3項)。本件商標と上記「SHIFONERY」商標は、称呼上、語頭音「ラ」の有無の点で相違するものであり、かかる相違は、むしろ比較する二つの商標を称呼上非類似のものとして決定付ける要因となる。してみれば、被請求人は、本件商標が、商標「SHIFONERY」と称呼上類似する、すなわち、本件商標からは「シフォネリ」ないし「チフォネリ」という称呼が生ずると把握・認識していたものと考えられる。
他方、使用標章「Lacifonelli」、「ラシフォネリ(ラシフォネリー)」が「シフォネリ(又はチフォネリ)」と称呼されることは、その態様からあり得ない。
してみれば、本件商標及び使用標章から同一の称呼が生ずるということはできず、本件商標と使用標章は、社会通念上同一と認められる商標とは、決していえない。
c 観念
「CIFONELLI」 及び「Lacifonelli」は、ともに特定の観念を生じない造語と認められ、両者間に観念的な相互連想作用はなく、ゆえに、本件商標と使用標章は、同一の観念を生ずるものとはいえない。
(エ)小括
してみれば、本件商標と使用標章は、外観において同視することを妨げる程度の顕著な差異を有するものであり、また、同一の称呼及び観念を生じさせるものとは、決していえず、その他社会通念上同一と認めるべき事由は、存在しないことから、使用標章をもって、本件商標に類似する標章の使用といえる余地があったとしても、本件商標と社会通念上同一の標章の使用といえないことは明らかである。
オ まとめ
以上のように、出願人が提出した証拠によっては、本件商標が本件審判の請求の登録日前3年以内に日本国内において使用されていた事実は一切証明されておらず、よって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁及び弁駁に対する答弁をし、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
被請求人は、本件商標の本件審判請求の登録日から前3年以内に、本件商標を種々の婦人用のカットソーに継続使用しているものである。
その事実を、埼玉県さいたま市北区宮原町2-19-4に本社を置き全国的に店舗を展開している「しまむら」に対して、商標権者であるクロスプラス株式会社の東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号クロスプラス株式会社東京支店が「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」として納品している婦人用のカットソーにより証明する。
(1)乙第2号証として提出した「しまむら」の証明書のとおり、「しまむら」に2007年8月23日、8月29日、31日に商品記号873978S及び商品記号873979Sに係る「カットソー」を弊社の「しまむら別注」と表示した仕切書に記載の全3600着に「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」、「下札」を付して納品し、この納品した前記商品を「しまむら」の店舗において展示販売したものであることが証明されている。
(2)また、乙第3号証として提出した商品記号873976S及び商品記号873977Sの仕様書に記載のとおりの、商品記号873976Sのカットソーを1200着、商品記号873977Sのカットソーを4400着の全5600着の発注を受け、これら全商品に仕様書に記載のブランド「ラシフォネリー」と対応する仕切書に記載のブランド名「Lacifonelli」を「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」、「下札」を付してEDIシステムの仕入れデーターに記載されているように2007年8月31日及び2007年9月1日に被請求人が納品して、「しまむら」の店舗において展示発売されたものである。
このように商標権者である被請求人が、本件審判請求の登録日である平成19年10月5日前3年以内に本件商標を請求に係る指定商品に含まれる「婦人用のカットソー」に使用した事実は、前記乙第2号証及び乙第3号証から明らかなところであって、本件商標が取り消されるべきでないことは、十分立証できたものと確信する。
(3)しかも、本件審判請求の登録日である平成19年10月5日以降においても、乙第4号証に示すように商品記号873979Sのカットソーを3300着、商品記号873980Sのカットソーを2000着、商品記号873981Sのカットソーを3300着、 商品記号873982Sのカットソーを1800着の発注を受けて、これら全商品に仕様書に記載のブランド「ラシフォネリー」と対応する仕切書に記載のブランド名「Lacifonelli」を「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」「下札」を付してEDIシステムの仕入れデーターに記載されいるように2007年11月5日及び2007年11月12日に納品して、「しまむら」の店舗において展示発売されているものである。
さらに、乙第5号証に示すように、商品記号873192Sのカットソーを3500着、商品記号873193Sのカットソーを1500着、商品記号873194Sのカットソーを3500着、商品記号873195Sのカットソーを1500着の発注を受けており、これら全商品に仕様書に記載のブランド「ラシフォネリー」と対応する仕切書に記載のブランド名「Lacifonelli」を「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」、「下札」を付して納品する予定である。このように、本件商標は、現在においても継続して使用されており、より一層保護されるべきものである。
なお、乙第2号証ないし乙第5号証には、上代、下代が記載されていたが、これらは、商標の使用の証明に直接関係する事項ではなく、また、営業秘密に属するものであるので、墨消しにて削除してある。
また、前記乙第2号証及び乙第3号証により商標権者による本件審判請求の登録日前における使用の事実は明らかであると確信するが、前記した事実その他確認を必要とすることがあれば、その事実を熟知している東京都中央区日本橋蛎殻町二丁目15番5号 クロスプラス株式会社東京支店総務部部長兼マーケティング室室長小勝 伊佐男を証人とし、前記事実を立証する用意がある。
(4)弁駁に対する答弁
ア 乙第2号証について
(ア)請求人は、「しまむら」の仕様書(A)(乙第2号証の2、3枚目)に記載の「センター納品日」の欄に記載の「8月11日」を、2007年8月11日にセンターへの納品日を指示するものと解して、EDIシステムの仕入れデーターに記載の実際の発注日と一致しないから、仕様書で特定されているカットソーと仕入れデータで特定される商品との客観的な結びつきないし関連性はなんら証明されていないと述べている。
しかし、「センター納品日」の欄に記載の「8月11日」は、2007年8月11日迄にセンターに納品できる体制をとるようにとの発注要請であり、実際の発注は売れ行き見込み、状況を判断して週間ごとの仕入れの決定を行うものである。そうすると、実際の発注日は前記した「センター納品日」の欄に記載の「8月11日」以降となることは当然の帰結であり、仕様書で特定されているカットソーは仕入れデータで特定される商品であることは明白である。
(イ)乙第2号証2、3枚目の仕様書に記載されている片仮名「ラシフォネリー」の表示は、当該商品に乙第2号証5枚目の指図書に記載されている書体の商標の「衿ネーム」、「下札」を付したものであることを示す表示である。
(ウ)請求人は、「乙第2号証2枚目の仕様書及び4枚目の仕切書に記載されている商品記号873978Sに係る枚数(2400枚)は、EDIシステムの仕入れデーターに記載の訂正前数量(2227枚)及び訂正後数量(1995枚)のいずれとも一致していない。してみれば、該カットソー3600着が実際に納品された事実は一切証明されておらず、」と指摘している。
しかし、このような指摘は、被請求人(審決注:「請求人」の誤記と認められる。)が弁駁書において「証明事項b及びdについては、乙第2号証6ないし9枚目のEDIシステムの仕入れデーターより、商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーが、2007年8月23日、29日及び31日に被請求人からしまむらに納品された事実が認められ、この点は特に問題ないように思われる。」と認定されているとおり、EDIシステムの仕入れデーターに記載の数量が納品された事実が証明されたものと解すべきであり、少なくとも、カットソー3600着が実際に納品された事実は一切証明されていないと解すべきものではない。
(エ)乙第2号証4枚目の仕切書に記載されている「Lacifonelli」は、当該商品が乙第2号証5枚目の指図書に記載されている書体の商標の「衿ネーム」、「下札」を付したものであることを示す表示である。
(オ)請求人は、「乙第2号証5枚目の指図書に特定される衿ネーム及び下札(の現物)が商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーに実際に使用されたか、疑問である。」と述べている。
この指図書は「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」として被請求人が「しまむら」に納品した前記商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーの他に2006年に納品したカットソーに付ける「衿ネーム」、「下札」の商標の書体を及び「下札」の裏面の商品記号、サイズ、色等を記載するレイアウトを決定した書面であり、また、06.03.20の記載は該書面の作成日2006年3月20日を記したものである。
そして、個々の商品にはこの指図書に基づいて作成した、指図書の書体の商標の「衿ネーム」と、表面には指図書の書体の商標を表示して、裏面にその商品の商品記号、サイズ、色等を前記レイアウトのように記載した「下札」を付けるものである。
このような指図書の書体の商標の「衿ネーム」、「下札」が商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーに実際に使用されたことは、乙第2号証2、3枚目の仕様書に記載されている「ラシフォネリー」の表示及び乙第2号証4枚目の仕切書に記載されている「Lacifonelli」の表示の関連性から裏付けられることである。
このような乙第2号証2、3枚目の仕様書、4枚目の仕切書及び5枚目の指図書並びEDIシステムの仕入れデーターを総合的に判断すれば、阿部敦史氏の証明のとおり、商標権者による本件商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用した事実は明確に証明されているところである。
なお、請求人は、「もっとも、阿部敦史氏が、実際の商品が店舗において展示販売された現場を現認したのか、さらには、本件商標が使用されている状況を現認したのかは疑問である。」と述べている。
しかしながら、このような疑問は全く当たらないものである。
すなわち、阿部敦史氏は証明書に記載の肩書きのとおり「株式会社しまむら 商品1部 婦人カットソー担当 チーフバイヤー」である。このバイヤーは店舗に常駐するものではないが、仕入れ商品を決定して、この仕入れた商品の売れ行きについて責任を問われるものである。そのため、売れ行きに影響のある展示販売方法について店舗出向きアドバイスやその確認するものである。「しまむら」は、納品される商品が他社の知的財産権を侵害したものでないことの保証を求めているものであり、当然に納品された商品が発注したものに相違ないかの検査を行い本件商標が使用されていることをその商品の仕入れ担当のバイヤーが確認することは当然のことである。
(カ)以上のとおりであるから、請求人が阿部敦史氏が実際に乙第2号証の内容を確認して記名捺印したものであることは些かも疑いを挟む余地のないものである。また、矛盾点と認識された箇所もなんら問題の無い事項であることを理解されたことと思う。
したがって、乙第2号証により商標権者による本件商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用の事実は明らかである。
なお、請求人は、証人としては被請求人の社員小勝伊佐男でなく阿部敦史氏とすべきである旨述べている。
しかしながら、乙第2号証は前記したとおり何ら疑問、矛盾のない証明書であるから敢えて証明者を証人とする必要性が乏しいものである。
また、被請求人が社員小勝伊佐男を証人としての用意があるとしたのは、この乙2号証のみならず乙第3号証ないし乙第5号証において本件商標が使用されていること及びその他の本件商標の使用実態を熟知している者であるからである。
イ 乙第3号証について
(ア)乙第3号証について、第三者の証明を受けてはいない。これは、証明を受けた乙第2号証だけで充分に商標権者による本件商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用は証明されているものであるが、これ以外にも使用実績があることを立証するため提出したものである。
(イ)「しまむら」の仕様書(乙第3号証1、2枚目)に記載の「センター納品日」の欄に記載の「8月11日」は、2007年8月11日迄にセンターに納品できる体制をとるようにとの発注要請であり、実際の発注は売れ行き見込み、状況を判断して週間仕入れの決定を行うものである。
そうすると、実際の発注日は前記した「センター納品日」の欄に記載の「8月11日」以降となることは当然の帰結であり、仕様書で特定されているカットソーと仕入れデータで特定される商品との客観的な結びつきないし関連性は矛盾なく証明されているものである。
(ウ)また、乙第3号証2枚目の仕様書及び仕切書に記載されている商品記号873977Sに係る枚数(4400枚)は、EDIシステムの仕入れデーターに記載の訂正前/訂正後数量(4124枚)と一致せず、仕様書・仕切書と仕入れデーターの客観的な結びつきないし関連性はなんら証明されていないと指摘している。
しかし、婦人用カットソーの実際の発注、納品は週間単位において行うものである。その発注は売れ行きを予測して行うもので、予測が外れ売れ行き悪い場合には実際の発注、納品数量が少なくなるものである。したがって、EDIシステムの仕入れデーターとに記載の実際の発注数量が仕様書・仕切書の記載の枚数より少なくなり、一致しないことは何ら矛盾することではなく、仕様書・仕切書と仕入れデーターの客観的な結びつきないし関連性を否定する根拠とは成りえないものである。
(エ)乙第3号証1、2枚目の仕様書に記載されている片仮名「ラシフォネリー」の表示は、当該商品に「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている書体の商標の「衿ネーム」、「下札」を付したものであることを示すものである。
(オ)請求人は、「乙第3号証4枚目の指図書に特定される衿ネーム及び下札が商品記号873976S及び873977Sに実際に使用されたか、疑問である。」と述べている。
このことについては、前記乙第2号証の説明と重複するが、この指図書は「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」として被請求人が「しまむら」に納品したこの商品記号873976S及び873977S及び前記商品記号873978S及び873979Sに係るカットソーの他に2006年に納品したカットソーに付ける「衿ネーム」、「下札」の商標の書体を及び「下札」の裏面の商品記号、サイズ、色等を記載するレイアウトを決定した書面であり、また、06.03.20の記載は該書面の作成日2006年3月20日を記したものである。
そして、個々の商品にはこの指図書に基づいて作成した、指図書の書体の商標の「衿ネーム」と、表面には指図書の書体の商標を表示して、裏面にその商品の商品記号、サイズ、色等を前記レイアウトのように記載した「下札」を付けるものである。
このような指図書の書体の商標の「衿ネーム」、「下札」が商品記号873976S及び873977Sに係るカットソーに実際に使用されたことは、乙第3号証1、2枚目の仕様書に記載されている「ラシフォネリー」の表示から関連性が裏付けられものである。
なお、この指図書は乙第2号証5枚目の指図書のコピーであるが、これは、前記したとおり、個々の商品にはこの指図書に基づいて作成した、指図書の書体の商標の「衿ネーム」と、「下札」を付けるものであるので指図書は同一のものであるから乙第2号証5枚目の指図書のコピーを添付したものである。
このような乙第3号証の書面を総合的に判断すれば、商標権者による本件商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用した事実は明確に証明されているところである。
(カ)以上のとおりであるから、請求人が、矛盾点と認識された箇所もなんら問題の無い事項であると理解されたと思う。
したがって、乙第3号証により商標権者による本件商標が本件審判請求の登録日前3年以内における使用の事実は明らかである。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証について
この乙第4号証及び乙第5号証は、本件審判請求の登録日である平成19年10月5日以降においての使用していることを証明したものであり、本件商標が現在においても継続して使用されており、より一層保護されるべきものであることを証明するのに意義あるものである。
エ 本件商標と使用商標の同一性について
使用商標は、乙第2号証の指図書に記載のカットソーに付ける「衿ネーム」、「下札」の商標の書体のとおり、本件商標を書体のみに変更を加えた社会通念上同一の商標であることは明らかである。
なお、請求人が「Lacifonelli」を「La」と「cifonelli」との間にスペースがないことにより本件商標「LA CIFNELLI」と異なるものであるとされている点は、請求人が弁駁書において述べているとおり、「LA」の文字はフランス語の定冠詞として我が国においても極めて広く知れていものであるとされているとおり、この「LA」が語頭にあることにより「Lacifonelli」という一連の構成であっても定冠詞を付したものと認識され「La」と「cifonelli」を分離して観念されるものである。
また、使用商標の「ac」と続けた「a」と「c」との文字は互いに開いた構成を外向きに位置しているので、「a」はその前の「L」と一体感を、「c」はその後「ifonelli」と一体感があるので、これによって「La」と「cifonelli」を分離した印象を与えるものであり、社会通念上同一であることは否定できないものである。
また、請求人は本件商標「LA CIFNELLI」は「LA」がフランス語の定冠詞であるから、あたかも本件商標は「CIFNELLI」であり「シフォネリー」の称呼のみが生じるようなことを縷々主張して、「ラシフォネリー」の称呼のみを生じる使用商標「Lacifonelli」と同一性を欠くとしているが、本件商標は「LA CIFNELLI」以外の何者でもないものであるから、本件商標と使用商標は社会通念上同一であることは否定できないものである。
オ 以上のとおり、商標権者による本件審判請求の登録日前3年以内における本件商標の使用の事実は明らかである。

4 当審の判断
(1)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第2号証は、被請求人である「クロスプラス株式会社東京支店」が「しまむら」に対して、2007年8月23日、29日、31日に商品記号873978S及び商品記号873979Sに係る「カットソー」を被請求人の「しまむら別注」と表示した仕切書に記載の全3600着に「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」との表示ある指図書に記載されている「衿ネーム」及び「下札」を付して納品し、この納品した前記商品を「しまむら」の店舗において展示販売したものであることを「しまむら」商品1部婦人カットソー担当チーフバイヤーの「阿部 敦史」が証明した証明書である。
そして、それに添付された1枚目は、納品されたとする「商品記号873978S」の仕様書であり、そこには、ブランドとして「ラシフォネリー」、センター納品日「8月11日」の記載が認められ、同2枚目は、納品されたとする「商品記号873979S」の仕様書であり、そこには、ブランドとして「ラシフォネリー」、納品日「8月11日」の記載が認められ、同3枚目は、商品番号873978S及び商品番号873979に係る「カットソー」3600枚の仕切書であるが、そこには、ブランド名として「Lacifonelli」、納期8/4及び7/28の記載が認められ、同4枚目は、当該「カットソー」「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」に係る「衿ネーム」、「下札」の仕様書であり、そこには、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されており、仕様書の作成日と見られる「06.3.20」の記載が認められる。
そして、同5枚目ないし8枚目は、EDIシステムの仕入れデーターであるが、そこには、本件審判の請求の登録(平成19年10月5日)前3年以内に該当する「商品記号873978S」については、平成19年8月29日及び同31日、「商品記号873979S」については、同23日に納品があったことが示されている。
イ 乙第3号証は、乙第2号証のような証明書の形態にはなっていないものであるが、その1枚目は、商品記号873976Sの仕様書であり、そこには、ブランドとして「ラシフォネリー」、センター納品日として「8月11日」の記載があり、同2枚目は、商品記号873977Sの仕様書であり、そこには、ブランドとして「ラシフォネリー」、センター納品日として「8月11日」の記載があり、同3枚目は、商品番号873976S及び商品番号873977Sに係る「カットソー」5600枚の仕切書であるが、そこには、ブランド名として「Lacifonelli」、納期としてともに7/28の記載が認められ、同4枚目は、当該「カットソー」「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」に係る「衿ネーム」、「下札」の仕様書であり、そこには、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されており、仕様書の作成日と見られる「06.3.20」の記載が認められる。
そして、同5枚目ないし8枚目は、EDIシステムの仕入れデーターであるが、そこには、「商品記号873976S」については、平成19年8月31日、「商品記号873977S」については、同9月1日に納品があったことが示されている。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証は、本件審判の請求の登録後のものであるから、証拠として採用し得ない。
(2)上記において認定した事実によれば、乙第2号証により、被請求人である「クロスプラス株式会社東京支店」から、2007年8月23日を納品日とする「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」に係る商標「Lacifonelli」を衿ネーム及び下札に付した「商品番号873979S」である「カットソー」(仕様書及び仕切書に示された商品;以下同様)並びに同年8月29日及び同月31日に「商品番号873978S」である「カットソー」がその仕様書及び仕切書に基づいて、「しまむら」に納品されたことが推認できるところである。
また、乙第3号証により、「クロスプラス株式会社東京支店」から、2007年8月31日を納品日とする「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」に係る商標「Lacifonelli」を衿ネーム及び下札に付した「商品番号873976S」である「カットソー」及び同年9月1日に「商品番号873977S」である「カットソー」がその仕様書及び仕切書に基づいて、「しまむら」に納品されたことが推認できるところである。
(3)請求人の主な反論に対して
請求人は、納品日と発注日が相互に一致しない旨述べ、また、使用商標が本件商標と社会通念上同一といえない旨述べるところがあるが、例えば、甲第2号証を時系列に追っていくと、「しまむら別注ブランド『Lacifonelli』(ラシフォネリ)」に係る「Lacifonelli」の衿ネーム及び下札の発注が2006年3月20日になされ、納品のあった発注日前にも当該商品の仕様書及び仕切書が作成されたということができるから、格別不自然ということができないところであり、また、本件使用商標は、「Lacifonelli」の文字よりなるものであり、本件商標と同一の綴りよりなるものであるから、社会通念上同一の商標の使用といい得るものである。
(4)まとめ
以上によれば、被請求人は、少なくとも、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件取消請求に係る指定商品に含まれる前記商品について使用をしていたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-08-04 
結審通知日 2008-08-08 
審決日 2008-08-19 
出願番号 商願昭59-56830 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (125)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大場 義則 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
酒井 福造
登録日 1986-11-27 
登録番号 商標登録第1911264号(T1911264) 
商標の称呼 ラシフォネリ、シフォネリ 
代理人 北口 貴大 
代理人 森 智香子 
代理人 山本 文夫 
代理人 城山 康文 
代理人 綿貫 達雄 
代理人 岩瀬 吉和 

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