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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y31
管理番号 1187709 
審判番号 無効2008-890031 
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-10 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4963654号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4963654号商標(以下「本件商標」という。)は、「テトラモンスター」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成17年11月2日に登録出願、第31類「魚用飼料」を指定商品として、同18年5月30日に登録査定、同年6月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第4309181号商標(以下「引用商標」という。)は、「モンスター」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成10年6月24日に登録出願、第31類「飼料」を指定商品として、同11年8月27日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第27号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標は、引用商標と称呼、観念を同一とする類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
(2)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、「テトラモンスター」の文字よりなるものであるところ、構成中の「テトラ」の文字部分は、本件商標の登録権利者を表す略称として、本件商標に係る指定商品「魚用飼料」を取り扱う取引者・需要者間に広く知られている。
したがって、商品「魚用飼料」の取引者・需要者は、本件商標に接する場合、一見して直ちに「テトラ」の文字部分に、「テトラ社」あるいはその系列に属する者に関係する商品であるとの強い印象を受け、本件商標からは、「テトラ社」の「モンスター」であると容易に認識されるものとみることができる。
事実、本件商標の登録権利者の日本国内関連会社であるところの、テトラジャパン株式会社が販売する商品「魚用飼料」には、「テトラ」の文字を冠した標章「テトラ プランクトン」「テトラ グッピー」「テトラ グッピーベーシック」「テトラ エンゼルフィッシュ」「テトラ ネオン」「テトラ ベタ」「テトラ ディスカス」「テトラ ディスカス ブリーダー」「テトラ プレコ」「テトラ コリドラス」「テトラ モンスター」等が多数使用されており、いずれも共通して前半に「テトラ」を付け、後半に個々のアイテム名を表す「プランクトン」「グッピー」「グッピーベーシック」「エンゼルフィッシュ」「ネオン」「ベタ」「ディスカス」「ディスカス ブリーダー」「プレコ」「コリドラス」「モンスター」等を付けるような態様を取っているので、取引者・需要者においては、「テトラ○○」という標章を見たときに前半の「テトラ」は「テトラ社」を表すと容易に認識される(甲第3号証)。
さらに、テトラジャパン株式会社が販売する商品において統一的にこの様な使用態様がとられていることにより、需要者においては「テトラ」より後ろの部分がアイテム名であると認識され、「テトラ」ブランドの個々のアイテムを選択する際には自ずと「テトラ」より後ろの部分に注目すると考えられる。そして、市場における商品「飼料」の容器(甲第4号証)及びホームページ(甲第3号証)における使用態様は「テトラ」の文字と「モンスター」の文字との間に半角程度のスペースがあるため、やはり「テトラ社」の「モンスター」という商品であると認識されるのが相当と考えられる。
また、本件商標を構成する「モンスター」の語は、「怪物、妖怪」の意を有する語であって、「テトラ」と「モンスター」両語間に特に意味上の関連性を感得し得ないもので、両語は、語義において一体として、結合してのみ、商標に独自の識別性が生じる不可分一体のものとみなければならない必然性はない。
よって、本件商標からは、「テトラ」の称呼、観念の外、単に「モンスター」の称呼、「怪物、妖怪」の観念をも生ずる。
他方、引用商標は、その構成、態様より、「モンスター」の称呼、「怪物、妖怪」の観念が生ずるものであること明らかである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼、観念を同一にする類似の商標というべきものであり、本件商標と引用商標は、指定商品において同一又は類似のものである。
さらに、本件商標と同日出願の「TetraMonster」の欧文字よりなる被請求人の商標登録出願(商願2005-102896)に対し、特許庁審査官は、引用商標「モンスター」及び「モースター」の片仮名文字よりなる登録第4311667号商標を引用し、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由通知書を通知し、すでに、拒絶査定が確定している(甲第5号証)。
かかる認定は、本件商標にもなされて然るべきものであって、なんら差異があるものとは認められない。
また、特許庁の過去の審決等においても、企業の商号やその著名な略称とその後ろに表示した標章の場合、その「企業の商号やその著名な略称」の部分はハウスマークとして認識され、その後ろに表示した標章の部分が商品の識別標識として理解されるという趣旨に認定している例が多数ある。
例えば、ダイオ化成株式会社の「ダイオフララ」は「フララ」の称呼も生ずる(昭和62年判定請求第60029号の判定)、フジマル工業株式会社の「フジマルパックマン」は「パックマン」の称呼も生ずる(昭和63年審判第14449号の審決及び登録異議の決定)、第一屋製パン株式会社の「ダイイチパンポテル」は「ポテル」の称呼も生ずる(平成9年審判第13620号の審決)、ロート製薬株式会社の「ロートプラス」は「プラス」の称呼も生ずる(無効2001-35197号の審決)などがあり、請求人の前記主張は相当のものであると思料する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標と称呼、観念において類似する商標であり、また、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標が「テトラモンスター」の片仮名文字よりなり(甲第1号証)、引用商標が「モンスター」の片仮名文字よりなる(甲第2号証)構成については異論のないところであるが、本件商標が「テトラモンスター」とのみ称呼、観念され、引用商標とは称呼、観念上相紛れることはないとの答弁は相当ではないと思料する。
確かに、本件商標は片仮名文字で「テトラモンスター」と一連に記載されており、いくつかの並存登録例があることは認められるが、本件商標を必ず「テトラモンスター」とのみ、一体不可分に称呼、観念されるものであるとは言い切れないものである。
先の審判請求書でも述べたように、本件商標の構成中の「テトラ」の文字部分は、被請求人の略称として、指定商品「魚用飼料」を取り扱う取引者・需要者間に広く知られていることを考慮すると、これら「魚用飼料」の取引者・需要者は、本件商標を一見して直ちに「テトラ」の文字部分が、「テトラ社」か、その系列に属する者に関係する商品であるとの強い印象を受け、「テトラ社」の「モンスター」であると容易に認識されることが少なからずあり、分離されることがないとは言い切れないものである。
事実、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に示すよう如く「魚用飼料」には、前半に被請求人のいわゆるハウスマークである「テトラ」の文字を冠し、後半に個々のアイテム名を表す標章が多数使用されており、しかもそのハウスマークである「テトラ」の文字と後半のアイテム名との間に半文字ないし一文字のスペースが設けられており、取引者・需要者においては、「テトラ ○○○○」という標章を見たときには前半の「テトラ」の文字は熱帯魚の餌をはじめ熱帯魚用品を取り扱う世界的に有名なメーカーないし販売・取扱会社である「テトラ社」を表示するものと認識されるものである。したがって、取引者、需要者においては「テトラ」の文字部分の後部に位置する個々のアイテム名が単独で認識され、本件商標においても「テトラ社」の「モンスター」という商品であると認識され、称呼及び観念されるものと思料される。
よって、本件商標からは、「テトラモンスター」の一連の称呼、観念が生ずる外に、「テトラ」もしくは「モンスター」の称呼、観念をも生ずるものであり、引用商標の称呼、観念と同一又は類似の商標というべきものである。
この点、被請求人自身が一般市場において使用する本件商標を「テトラ社」の「モンスター」と表示されている事実からも明らかである(甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証、特に甲第8号証に明記)。
(2)次に、被請求人が本件商標と同日付けで出願された「TetraMonster」の欧文字よりなる商標登録出願が拒絶された事例について、被請求人は当該商標は登録不要として応答を行なわかったものであると答弁しているが、その真意は別にしても、現実問題として甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に示す如く、該商標と同じくする「TetraMonster」の欧文字が使用されており、これが登録不要であるとは到底想像できるものではない。しかも自動的に拒絶されたか否か不明であるが、審査官はこの商標登録出願が引用商標と同一又は類似の商標であると判断して、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定して拒絶査定にしたものであることは紛れもない事実である(甲第5号証)。
(3)また、企業の商号やその著名な略称の後ろに表示した標章の場合、その「企業の商号やその著名な略称」の部分はハウスマークとして認識され、総合的・総括的なマークとして出所表示機能・企業ブランドと認識される部分であり、その後ろに表示した標章の部分が商品の識別標識として理解される商標部分であるという趣旨に認定している事例が多数あるとして、例えば、昭和62年判定請求第60029号の判定(甲第9号証)、昭和63年審判第14449号の審決及び登録異議の決定(甲第10号証)、平成9年審判第13620号の審決(甲第10号証-審決注:甲第11号証の誤記と認める。)、無効2001-35197号の審決(甲第12号証)などの審決例などを列挙したが、被請求人は本件とは事案を異にするものであると述べている。
しかしながら、これらの審決例が本件と全くの同一事例でないにしても、広く知られた(周知・著名)商標部分に付加された語が、その広く知られた商標部分を除いた語(商標)とが分離され、比較検討された結果、類似とされている事案である点では共通にする事案である。前記の審決例以外にも同様な判断をしている事案、いわゆる広く知られた(周知・著名)商標部分に付加された語が、一体的に捉えて類否判断される必然性が無いとした審決例が枚挙にいとまの無いほど多数ある。
例えば、株式会社ネピアの「ネピアテディベア」について、「ネピア」の文字部分については請求人会社の略称として、又は請求人が商品「ティッシュペーパー」に使用する商標として広く知られ、請求人の代表的出所表示機能を有する商標として知られていることを考慮すると、その部分を省略して後半部分から、単に「テディベア」の称呼をも生ずるとした平成11年審判第15159号の審決(甲第13号証)、日本ビクター株式会社の「ビクターマグナ・カード」について、「ビクター」の文字は請求人の商号の略称と容易に理解し得るものであり、両文字は常に一体不可分のものとしてのみ把握すべき格別の事情を見出せないとして、単に「マグナカード」の称呼をも生ずるとした昭和53年審判第6117号の審決(甲第14号証)、シェル石油株式会社の「シェル スター」について、「シェル」の文字は請求人会社の著名な略称であって、石油製品に関しては取引者、需要者の間に広く認識されている著名な商標であるとして、単に「スター」の称呼、観念をも生ずるとした昭和46年審判第2409号の審決(甲第15号証)、日糧製パン株式会社の「ニチリョウルーブル」について、「ニチリョウ」の部分は請求人の名称の略称として容易に認識し得る「日糧」の発音を片仮名で表すもので、常に一体として一連に把握すべき観念的な結びつきがないとして、「ルーブル」の称呼をもって商品を具体的に指定する場合が決して少なくないとした昭和54年審判第189号の審決(甲第16号証)、セーラー万年筆株式会社の「セーラーローリングペン」について、「セーラー」の文字は請求人の商号の略称に相応するとみられることにより商標使用者の意図とは必ずしも関係なく略称して取引する場合も少なくないとし、「ローリング」の称呼も生ずるとした昭和57年審判第12681号の審決(甲第17号証)、日本ビクター株式会社の「ビクターマグナカード」について、「ビクター」の文字は商標権者(日本ビクター株式会社)の商号の略称として少なくとも電気通信機器業界において著名なものであり、当該企業の代表的な出所標識と見られることから、これに続く「マグナカード」の文字部分が個々の商品毎に付される識別商標と理解されるとした昭和58年審判第17808号の審決(甲第18号証)、徳山曹達株式会社の「トクソートリエタン」について、「トクソー」の文字は指定商品に係る業界において出所表示として広く認識されているとして、取引者、需要者は「トクソー」の「トリエタン」と認識・理解し、「トリエタン」の称呼をも生ずるとした昭和56年審判第13919号の審決(甲第19号証)、サンデン株式会社の「サンデンサーモピア」について、前半の「サンデン」の文字部分は請求人の名称の略称を表示したものと容易に認識し得るもので、これに続く後半の「サーモピア」の文字部分は商品毎の識別標識として理解される結果、一連に一体的に表示されているとしても、単に「サーモピア」の称呼をも生ずるとした昭和58年審判第23094号の審決(甲第20号証)、株式会社鈴木日本堂の「トクホンラブ」について、全体として特定の観念を生ずるものでないから、これを常に一連不可分のものとして称呼、観念しなければならない必然性はないものと判断され、前半の「トクホン」の文字は被請求人会社がその取扱いに係る外皮用薬剤に使用する代表的な商標としてこの種の商品の取引業界において周知、著名なものであるとして、「トクホンラブ」の称呼のほか、「トクホン」又は「ラブ」の称呼をも生ずるとした昭和61年審判第10846号の審決(甲第21号証)、日清紡績株式会社の「ニッシンボウローヤルソフト」について、「ニッシンボウ」の文字は請求人の略称として広く知られ、請求人会社の取扱いに係る商品に使用する代表的な商標としての出所標識とみられ、これに続く文字部分が個々の商品毎に付される識別標識と理解されうるところであって、単に「ローヤル」の称呼・観念をも生ずるとした昭和52年審判第9300号の審決(甲第22号証)、カルピス食品工業株式会社の「カルピスライト」について、前半部の「カルピス」の文字は請求人の代表的出所標識というべきで、「カルピス」と「ライト」との間に観念上常に一体不可分のものとして把握すべき特段の理由もなく、むしろ、「カルピス」の「ライト」印として商品の出所標識と理解され、「ライト」の称呼を生ずるとした昭和59年審判第8908号の審決(甲第23号証)、フジマル工業株式会社の「フジマルエスカルゴ」について、前半部の「フジマル」の文字は請求人の業務に係る商品「なべ類」を表示するものとして広く知られ全体的代表的出所標識として認識し、後半の「エスカルゴ」は個々の具体的な識別標識として理解され、「エスカルゴ」の称呼をも生ずるとした昭和59年審判第19576号の審決(甲第24号証)、ゼブラ株式会社の「ゼブラエスペック」について、前半部の「ゼブラ」の文字は請求人の業務に係る商品「筆記具類」全体を表示する代表的出所標識として認識し、後半の「エスペック」は個々の具体的な識別標識として理解され、これより「エスペック」の称呼により取引に当たる場合も決して少なくなく「エスペック」の称呼を生ずるとした昭和62年審判第4244号の審決(甲第25号証)、鐘紡株式会社の「カネボウクールシャワー」について、前半部の「カネボウ」の文字部分はわが国において著名な化粧品等の製造販売業者である請求人会社の取扱いに係る商品あるいは商号の略称を表示するとして一般に広く認識され、統一的に使用される代表的出所標識という「ハウスマーク」と共に別のマークを商品毎に併記して使用され、取引者・需要者は後半の「クールシャワー」印の商品として理解され、これより「クールシャワー」の称呼・観念により取引に当たる場合も決して少なくないとみるのが相当で、「クールシャワー」の称呼をも生ずるとした平成2年審判第15042号の審決(甲第26号証)、日本農薬株式会社の「ニチノーミニクリーン」について、前半部の「ニチノー」の文字は請求人の略称として容易に認識し得る「日農」の発音を片仮名表記したもので、本願商標は常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならないとする格別の事情も見い出し難く、これに続く「ミニクリーン」の文字部分は商品毎の識別標識として理解され、たとえ一連に表されているとしても各文字部分がそれぞれ独立して自他商品識別の標識として機能を有し、取引者・需要者は該文字部分をもって商品を具体的に指定して取引にあたる場合も少なくなく、該文字部分に相応して単に「ミニクリーン」の称呼をも生ずるとした平成6年審判第15549号の審決(甲第27号証)など多数の審決例があり、これらの事案は本件においても相通ずるものである。
以上のように、広く知られた商標、いわゆるハウスマークに、その広く知られた商標を除いた商標(いわゆる個別ブランド、製品ブランド、サブブランド、個々のアイテム名)を組み合わせて商品を販売する戦略があるが、これら併記した(組み合わせた)商標などは、その広く知られた語(商標)を除いた商標と類似すると取り扱い・判断するのが相当と思料する。さもなければ、他人が所有する商標に対して、広く知られた商標であるハウスマークを該商標に組み合わせた場合には類似商標として取り扱わないと、ハウスマークの権利者(所有者)が他人の所有する商標にそのハウスマークを付加して商標登録ないし使用する行為は、その他人の所有する商標の存在を無為にしてしまうおそれがあり、商標制度の意義を崩しかねず、社会経済の安定性をも欠くものと成り相当ではない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
1 本件商標と引用商標との比較
(本件商標の一体性)
(1)本件商標の構成上の一体性
本件商標は同一の書体、大きさ及び色彩の標準文字で各構成文字の間に何らの間隙をも設けることなく「テトラモンスター」と一連一体に記載されている。したがって、外観上本願商標が「モンスター」の称呼及び観念をもって取り扱われる理由は全く見出せない。
本願商標の全体称呼「テトラモンスター」は今日複数の語が組み合わされてなる商標が多数採択使用されている状況下では特段冗長なものではない。そして、「テトラ」と「モンスター」は共に日本人に馴染みのある語であって日常口にすることが多い語であるから、両者を結合した「テトラモンスター」も澱みなく一連に称呼できるものである。したがって、称呼上も本願商標が「モンスター」の称呼及び観念をもって取り扱われる理由は全く見出せない。
(2)観念上の一体性
「モンスター」は「怪物」等を意味する語であるが、単独で使用されると共に、「グリーン・モンスター」(アメリカ合衆国のマサチューセッツ州ボストンにある野球場フェンウェイ・パークのレフトフェンスの通称。日本の福岡県福岡市にある多目的ドーム球場・福岡ドームの外野フェンスの通称。)、「クッキーモンスター」(テレビ番組のキャラクターの名前)、「ポケットモンスター」(株式会社ポケモン(以前は任天堂)発売のゲームソフトの名前であり、その作品に登場する架空の生き物の総称であり、それらを題材にしたアニメを始めとするメディアミックス作品群)、「デジタルモンスター」(ウィズが企画し、大手玩具メーカーバンダイが発売した携帯育成ゲーム、及びそれに登場するキャラクターの名称)(乙第1号証ないし乙第4号証)等の如く、他の語と結合して全体として「○○の怪物」なる意味合いの語を形成する傾向の強いものである。
このことは既に需要者が認識していることであり、「モンスター」が他の語と結合して全体として「○○の怪物」なる意味合いの語を形成し易いものであることは特許庁においては顕著な事実であると思われる。
そのため、本件商標に接した需要者は当該商標が全体として「テトラ社の怪物」という「ある種の怪物」を意味するものとして観念上一体のものとして捉えるは必定である。このことは、請求人自身もその審判請求書で認めている(同書3頁3行及び4行)。したがって、なお一層本件商標は一体不可分性の強いものとなる。
この点に関して、請求人は「テトラ」と「モンスター」の両語間に特に意味上の関連性を感得し得ないので、一体のものとみるべき必然性はないと主張する。しかしながら、「モンスター」のように他の語と結合し易い語を含む商標は直ちに意味上の関連性を感得し得ないものであっても、その語としての結合傾向に鑑み、一体不可分のものとされていることは夙に知られている。それ故、請求人のこの主張は妥当を欠くものであると言わざるを得ない。
(3)特許庁における審査例
特許庁においては、以下に掲げる如く、被請求人の「Tetra」「テトラ」を含む商標と、当該商標の「Tetra」「テトラ」部分を除いた部分と同一の称呼をもって取り扱われる商標とが相互に非類似のものとして併存登録されている(乙第5号証ないし乙第16号証)。
登録第3307800号商標「Tetra Marin/テトラ マリン」Vs.登録第447871号商標「MARIN/マリン」
登録第3333206号商標「Tetra Marin/テトラ マリン」Vs.登録第2164135号商標「マリーン」
登録第3345115号商標「Tetra Brillant/テトラ ブリラント」Vs.登録第4381659号商標「BRILLANT」
登録第4067535号商標「TetraPond」Vs.登録第4388407号商標「ポンド/POND」
登録第4504941号商標「TetraPlant」Vs.国際登録第626448号商標「PLANTO」
登録第4965813号商標「TetraSnacky/テトラ スナッキー」Vs.登録第4124887号商標「SNACKY/スナッキー」
このように特許庁においては、永年に渡って被請求人の「Tetra」「テトラ」を含む商標を一体不可分のものとして、これらの部分を除いて称呼することはしなかった。
これら商標中にはそのカタカナ部分が「テトラ」と他の構成語とが間隙を設けて書されている故に本件商標よりも両構成語が分離され易いものもある。この点で本件商標がこれら商標と外観上別異に取り扱われる理由は何等見出せない。
また、本件商標がこれら商標に比べ特段冗長なものとは言えない。したがって、本件商標がこれら商標と称呼上別異に取り扱われる理由は何等見出せない。
これら商標において「Tetra」「テトラ」と結合されている語は本件商標の「モンスター」に比べ結合され易いものとは言えない。少なくとも、これら商標が請求人の主張するような意味上の関連性を感得し得るものではない。この点で、本件商標がこれら商標と観念上別異に取り扱われる理由は何等見出せない。
本件商標と引用商標の指定商品である「飼料」の分野においても併存例があることから、商品の面で本件商標がこれら商標とが別異に取り扱われる理由は何等見出せない。
以上述べた如く、本件商標は被請求人の「Tetra」「テトラ」を含む商標と他の商標との類否の判断に際して別異に取り扱う理由が全くない。それ故、他の「Tetra」「テトラ」を含む商標と同じく一体不可分のものとされるべきである。実際、特許庁においても、本件商標の審査過程において一体不可分のものとされて引用商標が引用されることなく登録されたのである。
特許庁における登録の無効か否かを判断する無効審判の審決は行政処分である以上、法的安定性を図るために予見可能性を覆すようなものであってはならない。すなわち、審決はこれまでの特許庁における審査例に沿った判断がされなければならない。そうでなければ、特許庁が「Tetra」「テトラ」と他の語を組み合わせた場合に、これを一連に書するか、又は、一文字程度の間隙を設けて書する限り、一体不可分のものとされて、「Tetra」「テトラ」と組み合わされた商標のみからなる商標とは非類似ものとされると認識している被請求人がこの認識に基づいてこのような商標を数多く採択して、その採択した商標を登録すると共に使用して経済活動を行ってきたことが覆されることになり、その経済活動に支障をきたすことになってしまう。このようなことは、経済官庁としての特許庁並びに登録制度を通じて安定した経済活動を行わせしめんとする商標法の欲するところではないと考える。
以上述べた如く、特許庁における被請求人の「Tetra」「テトラ」を含む商標の審査例からしても、本件商標は一体不可分のものとされる。
また、以下に掲げる如く、商標類否の基準からすれば「モンスター」と称呼されるような、商品の大きさないしは商品の品質を表示する語と「MONSTER/モンスター」とが組み合わされてなる商標と商標「MONSTER/モンスター」とが非類似のものとされている(乙第17号証ないし乙第22号証)。
登録第4786213号商標「LITTLEMONSTER/リトルモンスター」Vs.登録第1879418号商標「MONSTER/モンスター」及び同第4093043号商標「モンスター/MONSTER」
登録第4916880号商標「TEMPLATEMONSTER/テンプレートモンスター」及び同第4914444号商標「ITMonster」Vs.登録第4776849号商標「MONSTER」
上記「MONSTER/モンスター」を含む商標は、請求人が主張するような、意味上の関連性を感得し得るものではない。これら併存例は「モンスター」を含む商標は該語が他の語と結合し易い故に一体不可分性の高いものとなるとの被請求人の主張を裏付けるものとなる。
以上述べた如く、「MONSTER/モンスター」を含む商標の審査例からも本件商標は一体不可分のものとされる。
(4)本件商標の一体性についてのまとめ
以上詳述したことから、本件商標は「テトラモンスター」とのみ称呼、観念されるものである。
(比較のまとめ)
本件商標が「テトラモンスター」とのみ称呼、観念される以上、引用商標とは称呼、観念上相紛れることはない。両者が外観上相紛れることはない多言を要しない。
2 請求人の主張に対する反論
請求人は本件商標の「テトラ」が取引者、需要者の間で広く知られたものであるから、「テトラ」と「モンスター」と分離されると主張するが、たとえ、「テトラ」が広く知られたものであったとしても、上述したように、本件商標が外観、称呼及び観念の面において一体不可分のものとされている以上、「テトラ」と「モンスター」とに分離されるとは考えられない。
なお、請求人は商標「TetraMonster」が引用商標等に基づいて拒絶された事例を挙げるが、当該商標については登録不要として何等応答を行わなかったものである。応答を行わず自動的に拒絶された事例が本件商標が引用商標に類似する根拠とはなり得ない。むしろ、数多くの被請求人の「Tetra」「テトラ」を含む商標が一体不可分のものとされたことからすれば、本件商標は引用商標と非類似のものとされるべきである。
また、請求人は幾つかの審決例を挙げるが、これら審決例は本件とは事案を異にするものである。
以上述べた如く、請求人の主張は妥当を欠くものである。
3 むすび
以上詳述したことから明らかなように、本件商標は引用商標に類似せず商標法第4条第1項第11号に該当しない。したがって、本件商標は商標法第46条第1項第1号に該当しない。

第5 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、「テトラモンスター」の片仮名文字を標準文字で表してなるところ、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で表されていて、外観上まとまりよく一体的に看取し得るものであり、これから生ずると認められる「テトラモンスター」の称呼は、特段冗長なものではなく、淀みなく一連に称呼できるものである。
そして、請求人が提出した甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証によれば、被請求人は、指定商品「魚用飼料」について、「テトラ」又は「Tetra」の文字を冠した商標「テトラ○○」又は「Tetra○○」を使用していることが窺われるものの、これらの証拠によっては、ギリシャ語で「4の意」を有する「テトラ」又は「Tetra」の文字が、被請求人の商号の著名な略称と認めることができない。また、被請求人が使用する商標から、「テトラ」又は「Tetra」の文字を省略して、後半に位置する「○○」の文字部分から生ずる称呼及び観念によって、当該商品を取引しているものとは認めることができない。むしろ、被請求人は、「テトラモンスター」等の一連の称呼によって、当該商品を取引しているものと認めることができる。
請求人が提出した甲第8号証によれば、商品名「モンスター 285g」、「メーカー テトラ」「テトラ社製の底棲肉食魚用の主食(ペレットタイプ)モンスター 285gをご紹介します。」等の記載が見受けられるものの、その左側には、商標と認められる「テトラモンスター」及び「TetraMonster」の文字が記載された指定商品「魚用飼料」が掲載されていることから、「モンスター 285g」又は「モンスター」の文字が、商標を表したものと認めることができない。
したがって、本件商標は、「テトラモンスター」の称呼のみを生ずる。
また、本件商標は、特定の観念を生じない造語と認めることができる。
2 引用商標
引用商標は、「モンスター」の片仮名文字を標準文字で表してなるから、「モンスター」の称呼を生ずる。
また、引用商標は、「怪物。化物。」の意味を有する英語の「monster」を片仮名文字で表したものと認められることから、「怪物。化物。」の観念を生ずる。
3 本件商標と引用商標との比較
(1)両商標の外観の類否について
本件商標と引用商標とは、その構成全体から受ける視覚的印象を明らかに異にするものであるから、これらを時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において紛れるおそれはないものといわなければならない。
(2)両商標の称呼の類否について
本件商標から生ずる「テトラモンスター」の称呼と引用商標から生ずる「モンスター」の称呼を比較しても、構成音数の相違及び称呼の識別上重要な位置を占める語頭部分の音の相違等により、称呼において紛れるおそれはないものといわなければならない。
(3)両商標の観念の類否について
本件商標は、全体として特定の観念を生じない造語よりなるものと認められるから、これと引用商標から生ずる観念とを比較することができない。
なお、甲第9号証ないし甲第27号証の審決例等は、本件とは事案を異にするから、採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできないものであり、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-09-03 
結審通知日 2008-09-08 
審決日 2008-09-24 
出願番号 商願2005-102897(T2005-102897) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 静子 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 杉山 和江
平澤 芳行
登録日 2006-06-23 
登録番号 商標登録第4963654号(T4963654) 
商標の称呼 テトラモンスター 
代理人 原 隆 
代理人 特許業務法人英知国際特許事務所 
代理人 青木 篤 
代理人 田島 壽 

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