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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Y30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y30
審判 全部無効 外観類似 無効としない Y30
管理番号 1186130 
審判番号 無効2005-89164 
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-20 
確定日 2008-10-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4868675号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成18年10月20日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10519号、平成19年7月19日判決言渡)がなされ、同判決が最高裁判所の決定(平成19年(行ヒ)第320号、平成20年4月22日決定)により確定したので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4868675号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成16年12月3日に登録出願、第30類「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として、平成17年6月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録第1673048号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおり、「王将」の文字を書してなり、昭和55年5月24日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、昭和59年3月22日に設定登録され、その後、平成6年4月27日及び平成16年3月16日の二回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、平成16年3月31日に第30類「ぎょうざ,しゅうまい」とする書換登録がなされたものである。
同じく、登録第2471182号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおり、「王将」の文字を書してなり、昭和61年3月28日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、平成4年10月30日に設定登録され、その後、平成14年10月22日に商標権存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、平成16年3月3日に第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,乾燥卵,カレーライスのもと,スープのもと,シチューのもと,お茶づけのり,ふりかけ,なめ物」,第30類「サンドイッチ,すし,べんとう,即席菓子のもと,酒かす」及び第31類「食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類」とする書換登録がなされたものである。
同じく、登録第509755号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和31年12月24日に登録出願、第45類「漬物,及び他類に属しない食料品及び加味品」を指定商品として、昭和32年11月8日に設定登録され、その後、昭和53年12月12日、昭和62年12月14日、平成9年7月15日及び平成19年10月30日の四回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、平成20年5月28日に第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,野菜のつくだに,野菜の缶詰,野菜の瓶詰,野菜の漬物,果実の缶詰,果実の瓶詰,ジャム,マーマレード,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「みそ,ごま塩,すりごま,セロリーソルト,うま味調味料,香辛料,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「ホップ,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類(てんぐさを除く。)」及び第32類「ビール醸造用ホップエキス」とする書換登録がなされたものである。
(以下、これらを一括していうときは「引用各商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号ないし第86号証(枝番号を含む。)を提出した。
その後、裁判所へ提出した乙第87号ないし第158号証(枝番号を含む。)を、追加で提出している(以下、甲第87号ないし第158号証と読み替えるものとする。)。
1 請求の理由
(1)本件商標は、請求人が所有する引用各商標と類似し、かつ、指定商品も類似するものである(甲第2号ないし第4号証参照。)。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(2)請求人及び利害関係について
請求人「イートアンド株式会社」(旧社名「大阪王将食品株式会社」「株式会社大阪王将」)は、中華料理店の経営、ぎょうざ・しゅうまい等の加工食品の製造・販売を主たる業務とする企業であり、本件商標と類似する引用各商標の商標権者である。
また、請求人は、ぎょうざ等の商品に引用商標を継続して使用している。
したがって、これらの事情から判断すれば、請求人が登録無効審判を請求することに関し、利害関係を有していることが明らかである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、左側に赤の色彩を附した文字「餃子の」を配し、右側に赤地に白抜き文字で大きく「王将」の文字を配し、当該「王将」の文字を緑・燈・黄色の三重の括弧「<<< >>>」で挟んだ構成よりなるものである。
すなわち、本件商標の構成は、前半部の「餃子の」と後半部の「王将」の文字の大きさ・色彩が異なるのみならず、色鮮やかな三重の括弧「<<< >>>」によって前後半部を視覚的に分離させたものであり、明らかに後半部の「<<<王将>>>」を目立たせ、強調させる構成となっている。
したがって、この様な構成の商標に接した取引者及び一般需要者は、当然に視覚上「餃子の」の部分と「<<<王将>>>」の部分を分離して観察し、「<<<王将>>>」の部分より「オウショウ」又は「オーショー」の称呼を生じさせることが明らかである。
一方、引用各商標からも、その構成に照らして「オウショウ」又は「オーショー」の称呼が生ずること明らかである。
よって、本件商標は、引用各商標と称呼上類似する商標であり、かつ、指定商品も類似する。
イ 上記アの考察が正当であることを証するために甲第5号ないし第7号証(審決公報)を提出する。
上記各審決における考察は、商標を構成する文字の大きさが前半部と後半部で著しく異なる場合、視覚上、前半部と後半部は、分離して看取され、前半部と後半部の各々から称呼が生ずるとするものである。
上記各審決における考察は、文字の大きさのみならず、色彩も異なり、さらに三重の括弧「<<< >>>」によって前後半部を視覚的に分離させている本件商標にも、類推適用されてしかるべきである。
ウ 更に請求人は、甲第8号ないし第11号証(審決公報)を提出する。
(ア)甲第8号証(平成4年審判第20921号)
(イ)甲第9号証(平成4年審判第20922号)
審決の理由欄において、商標「OHSHO/OHSHO FOOD SERVICE/餃子の王将」(甲第8号証)、商標「OHSHO/王将フードサービス/餃子の王将」(甲第9号証)から生ずる称呼を考察しており、「本願商標は、下段に書された『餃子の王将』の文字部分からも、その構成中『餃子の』の文字部分が商品の普通名称に格助詞『の』」を付したものであるところから、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは『王将』の文字部分にあるものと理解され、これより、単に『オウショウ』(王将)の称呼、観念をも生ずるものとみるのが相当である。」と考察されている。
(ウ)甲第10号証(平成4年審判第12574号)
(エ)甲第11号証(平成4年審判第12575号)
審決の理由欄において、商標「OHSHO/OHSHO FOOD SERVICE/餃子の王将」(甲第10号証)、商標「OHSHO/王将フードサービス/餃子の王将」(甲第11号証)から生ずる称呼を考察しており、「右下の黒塗り横長長方形内に白抜きでやや大きく書された『王将』の漢字部分は、将棋の駒の1つとして親しまれた観念のもとに看者に強く印象付けられるものといえるから、両文字部分が相まって、本願商標に接する取引者、需要者は、これより生ずる『オーショー』(王将)の称呼、観念のみをもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。」と考察されている。
上記各審決における考察は、そのまま本件商標から生ずる称呼の考察にも類推適用されてしかるべきである。
すなわち、本件商標の前半部も商品の普通名称に格助詞「の」を付したものであり、後半部の「王将」は将棋の駒のlつとして親しまれていることからすれば、「餃子の王将」の文字部分で自他商品識別機能を有するのは「王将」の文字部分であり、「オウショウ」又は「オーショー」(王将)の称呼、観念が生ずると解されてしかるべきである。
また、上記各審判の請求人「株式会社餃子の王将チェーン」が、被請求人「株式会社王将フードサービス」の旧社名であり、甲第8号及び第9号証審判の中で対比されている登録第509755号商標が、請求人の所有する引用商標3であることも考慮すれば、本件商標と引用各商標は、同ー又は類似の称呼・観念が生ずる類似商標であることが明らかである。
(4)上記各理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するにもかかわらず、誤って登録されたものである。
よって、本件商標は商標法第46条第1項の無効理由を有するものであるので、請求の趣旨に記載したとおりの審決を求めるものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、答弁書において、要約以下のような主張を行っている。
ア 本件商標の指定商品中、商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドックミートパイ,ラビオリ」は、スーパーマーケット等の小売店で販売される場合のほか、レストラン等でも持ち帰り商品として販売されているのが実情である。
そうであるなら、この種商品の需要者、取引者は、必然的に外食産業と密接な関係があると結論づけることができ、これらの者が「餃子の王将」から被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識すると考えるのが自然である。
「餃子の王将」の著名性は、乙第3号ないし第27号証の使用実績(店舗写真、メニュー写し、チラシ写し、テレビスポット放送確認書、新聞記事の写し)に示されている。
イ 本件商標は需要者、取引者に被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識させる「餃子の王将」のみからなるものであり、一方、引用商標の王将からは「将棋の駒」をイメージさせるものであるため、両商標が需要者、取扱者に与える印象、記憶、連想も著しく異なるものである。それ故、本件商標は、商標法第4条第l項第11号に該当しない。
ウ 「元祖餃子の王将」(登録第4559956号)の拒絶査定不服審判事件(不服2000-16088号)において、該商標と登録第2471182号商標「王将」及び登録第2643796号商標「OHSHO」とは非類似と判断されている。
エ 本件商標の指定商品の全てが引用各商標の指定商品と抵触するものではない。
(2)以下に被請求人の主張に対して反論する。
ア 請求人は、昭和44年の創業以来、餃子、焼売等の中華料理を提供する飲食店を経営し、その継続的な営業努力と宣伝活動により、現在では、直営店・FC加盟店を併せて146店舗が「王将」の看板を掲げるに至っている。
また、請求人は飲食店内における飲食物の提供や飲食店に併設されたお持ち帰りコーナーにおける商品の販売のみならず、流通商品としての冷凍餃子・冷凍焼売等の販売にも尽力してきた企業である。
すなわち、今日まで、「王将」の文字を付した冷凍餃子・冷凍焼売等の流通した商品はすべて請求人の業務に係る商品であり、この様な状況下で本件商標を付した商品が市場に流通すれば、商品の出所について誤認混同が生ずることは明らかであり、冷凍餃子・冷凍焼売等の流通商品に関しては、請求人が「元祖」である。
イ 被請求人は、本件商標の指定商品中、商品「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、、すし、たこ焼き、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドック、ミートパイ、ラビオリ」は、レストラン等でも持ち帰り商品として販売されているのが実情であり、この種商品の需要者、取引者は、必然的に「餃子の王将」から被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識すると考えるのが自然であると主張する。
しかし、本件商標が指定するのは、役務ではなく商品であり、役務「飲食物の提供」と商品「ぎょうざ、サンドイッチ」等は、非類似である。
したがって、レストラン等の飲食店において、請求人に無断で商標「王将」を付した持ち帰り商品(餃子等)を販売する行為は、引用商標の商標権を侵害する行為である。
また、もし仮に、被請求人が主張するとおり、飲食店の通称として「餃子の王将」が著名であったとしても、それは飲食店に従事する者や店内で飲食する者に対してであって、転々と流通し生協やスーパーマーケットで販売される流通商品の取扱者や需要者に対してではない。
前記したとおり、請求人は、飲食店における飲食物の提供や、お持ち帰り商品の販売のみならず、流通商品としての冷凍餃子・冷凍焼売等の販売にも長年にわたり尽力してきている。
甲第15号ないし第17号証は、請求人の流通商品(市販用・生協用・業務用)のカタログであり、これらの流通商品の認知度の高さは、甲第18号証の「生協流通新聞(2001年5月20日)」の「各支社別の売れ筋商品ベスト20」欄の記載や甲第19号証の月刊フローズンワールドの記事から明らかであり、冷凍餃子だけで年間約633万(箱・袋)・約16億2千万円〈2004年度〉を売り上げるに至っている(甲第20号証の陳述書参照。)。
甲第21号ないし第24号証は、請求人から製造委託を受けた業者の陳述書であり、ここ数年相当量の餃子・焼売等の流通商品が請求人に納品されていた事実が示されている。
甲第25号ないし第54号証は、各生協において顧客に配布されたチラシ、甲第55号証は、島根県生活協同組合の機関紙せいきょう、甲第56号ないし第61号証は、店舗内の商品陳列状況を示す写真、甲第62号ないし第66号証は、通販カタログの商品掲載例である。
これらの証拠により、少なくとも十数年前から「王将」「OHSHO」「大阪王将」の文字を表示した冷凍餃子・冷凍焼売等の流通商品が需要者(一般消費者)に知られていたこと、及び、地域も関西に限定されず、通信販売を通じて全国的に認識されていたことを示している。
これら甲第15号ないし第66号証を総合して判断すれば、冷凍餃子・冷凍焼売等の流通商品に関しては、「王将」の文字は、請求人の業務に係る商標として周知となっていることは明らかである。
また、商標「王将」が商品「餃子」について請求人の商標として周知であることは、上記甲各号証から明らかであるが、甲第15号、第16号、第18号及び第19号証の記載から、商標「王将餃子」も商品「餃子」について請求人の商標として周知である。
前記「王将餃子」と本件商標「餃子の王将」は、極めて近似した構成であり、したがって、これらの請求人の周知商標に類似する本件商標は、商標法第4条第1項第10号により、無効理由を有するものである。
ウ また、被請求人は、本件商標は、需要者、取引者に被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識させる「餃子の王将」のみからなるものであり、両商標が需要者、取扱者に与える印象、記憶、連想も著しく異なるものであると主張する。
しかし、前記したとおり、請求人もまた昭和44年の創業以来、その継続的な営業努力と宣伝活動により、現在では、直営店・FC加盟店を併せて146店舗が「王将」の看板を掲げるに至っている。
甲第67号ないし第69号証は代表的な店舗の写真、甲第70号ないし第72号証はメニュー、甲第73号ないし第77号証は店舗広告のチラシ、甲第78号ないし第82号証は新聞の掲載記事である。
飲食店「王将」は、関西圏のみならず、関東、東北地方等にも進出しており、流通商品と同様、飲食店「王将」も少なくとも関西圏では周知性を獲得していることは明らかである。
実際、甲第83号ないし第85号証のインターネット掲示板への書き込みを見ると、飲食店を訪れる顧客(一般消費者)の中には、飲食店「王将」と飲食店「餃子の王将」を明確に区別していない例が見受けられる。
この様な誤認混同が生ずるのは、需要者(一般消費者)が「餃子の王将」を常に一体不可分として見ておらず、「王将」を要部として店名や料理品の提供者を認識している事実を示すものである。
したがって、飲食店「王将」と飲食店「餃子の王将」を混同する者が存在する様な状況下で、本件商標を付した商品が市場に流通すれば、商品の出所について混同が生ずるおそれがあることが明らかであり、本件商標の場合、原則どおり、「餃子(商品の普通名称)」を分離し、「王将」を要部として商標の類否を判断すべきである。
また、本件商標は、指定商品にぎょうざ以外のサンドイッチ、しゅうまい等を含むものであるが、商標の構成中に「餃子(商品の普通名称)」の文字を有しており、本件商標を「餃子」以外の指定商品に使用した場合には、一般消費者は、「餃子」であると誤認するのであり、明らかに商品の品質につき誤認を生じさせるものであるから、この点においても無効理由(商標法第4条第1項第16号)を有するものである。
エ また、被請求人は、拒絶査定不服審判事件(不服2000-16088号)において、商標「元祖餃子の王将」と引用商標2及び登録第2643796号商標「OHSHO」が非類似と判断されており、本件商標の指定商品のすべてが引用各商標の指定商品と抵触するものではないと主張する。
しかし、乙第2号証の審決は、請求人の業務に係る商品として「王将」「OHSHO」の文字を付した商品が広範に流通している事実を考慮していない点で不当であり、本件審判においては、請求人が示した取引の実情を考慮した上で、甲第11号ないし第14号証の審決にそって本件商標と引用商標の類否は判断されるべきである。
本件商標の構成は、前半部の「餃子の」と後半部の「王将」の文字の大きさ・色彩が異なるのみならず、色鮮やかな三重の括弧「<<< >>>」によって前後半部を視覚的に分離させたものであり、明らかに後半部の「<<<王将>>>」を目立たせ、強調させる構成となっている。
したがって、本件商標に接した需要者(一般消費者)や流通業者が、「<<<王将>>>」の部分より「オウショウ(又はオーショー)」の称呼を生じさせることは明らかであり、すでに、冷凍餃子・冷凍焼売等の流通商品に関して、請求人の業務に係る商標として周知となっている引用商標と混同が生ずるおそれがあることは、明らかである。
なお、本件商標の指定商品の全てが引用各商標の指定商品と抵触していなくても、本件商標が無効理由を有していることに変わりはない。
(3)結び
上記事情を考慮し、総合的に判断すれば、被請求人が、例えば「冷凍餃子」について本件商標を使用した場合には、請求人が周知にした「王将」ブランドを付した商品「冷凍餃子」と誤認混同を生ずることが明らかである。
すなわち、「冷凍餃子」について「王将」ブランドは、請求人の商品として周知であり、被請求人は「冷凍餃子」について全く「王将」ブランドを使用した実績がないことから、「王将」を要部とする本件商標が「冷凍餃子」について使用された場合には、需要者(一般消費者)は、明らかに商品の出所について誤認混同を生ずることになる。
したがって、前回提出した甲第2号ないし第14号証に、甲第15号ないし第85号証を併せ考察すれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するにもかかわらず、誤って登録されたものであることが明らかである。
よって、本件商標は商標法第46条第1項の無効理由を有するものであるので、請求の趣旨に記載したとおりの審決を求めるものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号ないし第27号証(枝番号を含む。)を提出した。
その後、裁判所へ提出した乙第28号ないし第57号証(枝番号を含む。)を、追加で提出している。
(答弁の理由)
(1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるので、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきである旨を主張する。
(2)しかるに本件被請求人は、本件商標が上記規定に該当するものではなく、その登録は決して無効とされるべきものでないと確信するので、以下にその理由を詳述する。
ア 商品の類否について
(ア)そもそも請求人は、引用各商標の指定商品がそれぞれ一致していないにもかかわらず、これらを十把一からげにして本件商標の指定商品と類似すると主張しているのである。
(イ)しかるに、本件商標は、その指定商品を甲第1号証の2に示すとおり、第30類「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、すし、たこ焼き、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ、アイスクリーム用凝固剤、家庭用食肉軟化剤、ホイップクリーム用安定剤、食品香料(精油のものを除く。)、茶、コーヒー及びココア、氷、菓子及びパン、調味料、香辛料、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、コーヒー豆、穀物の加工品、アーモンドペースト、イーストパウダー、こうじ、酵母、ベーキングパウダー、即席菓子のもと、酒かす、米、脱穀済みのえん麦、脱穀済みの大麦、食用粉類、食用グルテン」を指定商品とするものである。
(ウ)これに対して、引用商標1は、その指定商品を第30類「ぎょうざ、しゅうまい」とし、引用商標2は、第29類「食肉、卵、食用魚介類(生きているものを除く。)、肉製品、加工水産物、乾燥卵、カレーライスのもと、スープのもと、シチューのもと、お茶づけのり、ふりかけ、なめ物」、第30類「サンドイッチ、すし、べんとう、即席菓子のもと、酒かす」及び第31類「食用魚介類(生きているものに限る。)、海藻類」とし、さらに、引用商標3は、大正10年法第45類「漬け物、及び他類に属しない食料品及び加味品」とするものである。
(エ)そうすると、本件商標の指定商品中、「アイスクリーム用凝固剤、家庭用食肉軟化剤、ホイップクリーム用安定剤、食品香料(精油のものを除く。)、茶、コーヒー及びココア、氷、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、コーヒー豆、穀物の加工品、イーストパウダー、こうじ、酵母、ベーキングパウダー、米、脱穀済みのえん麦、脱穀済みの大麦、食用粉類、食用グルテン」の各商品については、引用各商標のいずれの商品とも同一又は類似するものではないため、商標の類否を検討するまでもなく、互いにその指定商品を異にするものである。
(オ)してみれば、本件商標の指定商品中、引用商標1の指定商品とは「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、すし、たこ焼き、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」で、引用商標2の指定商品とは「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」で、引用商標3の指定商品とは「菓子及びパン,調味料,香辛料,アーモンドペースト」で同一又は類似する関係にあり(乙第1号証の1及び2参照。)、請求人が主張する本件商標の指定商品のすべてが、引用各商標の指定商品と抵触するものではない。
イ 本件商標について
a 本件商標の需要者,取引者
(a)本件商標の指定商品は上記したとおりであるが、これら商品は、主として加工食料品を中心とするものであり、かかる加工食料品の需要者は、年齢、性別とは関係のない一般消費者であることが明らかである。
(b)また、本件商標の指定商品中、商品「ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」は、スーパーマーケット等の小売店で販売される場合のほか、レストラン等でも持ち帰り商品として販売されているのが実情であり、そうであるならこの種商品の需要者、取引者は、必然的に外食業界と密接な関係があると結論づけることができるのである。
(c)してみれば、被請求人は、本件商標の指定商品に係る加工食料品等と密接な関係のあるレストラン等の外食業界における取引実情をも検討し、かかる取引実情の下で取引者、需要者(一般消費者)が「餃子の王将」をどのように認識し、把握しているかを明らかにすべく、以下に被請求人による「餃子の王将」の使用実績、宣伝広告実績を乙各号証により立証する。
b 「餃子の王将」の使用実績
(a)被請求人は、約40年程前の昭和42年(1967)に京都4条大宮に1号店を出店して以来、「安く、うまく、早く」をモットーに低廉な価格で多様な中華料理を提供して人々の嗜好を外食に向けさせる外食業界の中心的な役割を果たし、同時に創業間もない頃から独特な宣伝手法を試み、例えば、「餃子を十人前食べるとタダ」をうたって当時の大学生、高校生の間で爆発的な人気を獲得する等他社から注目されるだけでなく、広く一般的な人々の関心も集め、今や直営店が286、フランチャイズ(FC)店が189という全国的な規模となり、外食チェーンの雄というべき評価を得るに至ったのである。
(b)そして、被請求人は、「餃子の王将」を店に訪れるお客だけでなく、遠くからでも一目でわかるように看板(ネオン)に大きく「餃子の王将」を表示している。これを写した各店の写真を乙第3号証の1ないし317として提出する。
(c)また、被請求人の全店では、上記の看板だけでなく、のぼりや店内で使うメニュー、マッチ、お箸、卓上ラー油の瓶ラベル、お品書きのイエロー紙、領収書及び伝票のみならず、従業員の帽子に至るまで、すべて「餃子の王将」を表示したものを使用している(乙第4号証の1ないし13)。
(d)さらに、被請求人は、各店の独自性を重視して各店がオリジナルメニューやフェアメニューと称してお客に他店と異なる料理を提供して好評を得ているが、このメニューにも乙第5号証の1ないし27のように「餃子の王将」を必ず表示している。
(e)各店すべての「餃子の王将」の使用例を事細かく立証することが難しいため、全店中、売上1位の年商5億円(平成17年度)を達成した「空港線豊中店(大阪府)」での使用例を乙第6号証の1ないし11として提出するが、他店も基本的には、「餃子の王将」を同様の態様で使用していることに変わりはないのである。
(f)以上、本件商標は上記のとおりその指定商品に係る取引者、需要者(一般消費者)がレストラン等の外食産業と密接に関係するものであり、かかる外食産業の取引実情によれば、これらの者が「餃子の王将」から被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識すると考えるのが自然である。
してみれば、本件商標は「餃子の王将」のみからなるものであり、かかる「餃子の王将」は、被請求人の通称等のみで認識されるものであるため、商標の類否判断における外観、観念、称呼は、本件商標が、「餃子の王将」なる被請求人の通称等として認識されることを前提として、判断すべきものである。
(3)本件商標と引用各商標との類否判断
ア 本件商標は、その構成を赤字で「餃子の」と表示し、それに隣接して緑、橙黄で着色した「<<< >>>」内に、赤地を背景色として白抜きで「王将」を表してなるものであるが、その全体構成としての「餃子の王将」は、まさに被請求人の著名な通称等にほかならないため、これから「王将」のみを分離して認識すべき理由は、全くないのである。
イ してみれば、本件商標は、その構成そのものから「ギョウザノオウショウ」の称呼のみが生じ、外観、観念も「餃子の王将」を常に一体として被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)として認識されるものと考えるのが相当である。
ウ これに対し引用商標1及び2は、漢字「王将」のみからなるものであるため、これに相応して「オウショウ」の称呼が生じ、外観、観念も「将棋の王将」としてのみ認識されるものであり、引用商標3は、「王将」なる文字が将棋の駒の図形に大きく表されているため、これから直ちに将棋の「王将」としての外観、観念が生じるものである。
エ そうすると、両商標は称呼において、本件商標の「ギョウザノオウショウ」と引用商標1ないし3の「オウショウ」とは、その音数及び語感、語調に顕著な差異があり、両者をそれぞれ一連に称呼しても、決してかれこれ混同が生じることは、あり得ないのである。
オ また、外観については、本件商標は「餃子の王将」として一体のみ認識されるものである以上、引用商標の「王将」のみとは、その外観は明らかに異なるものであり、さらに、観念についても、本件商標は、「餃子の王将」より、被請求人の著名な通称等を認識させるものであり、引用商標の「将棋の駒」としての「王将」のみを認識させるものとは、明らかに異なるものである。
カ してみれば、両商標は、称呼、観念、外観のいずれも異なるものであり、しかも、本件商標は需要者、取引者に被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識させる「餃子の王将」のみからなるものであり、一方、引用商標の「王将」からは、「将棋の駒」をイメージさせるものであるため、両商標が需要者、取扱者に与える印象、記憶、連想も著しく異なるものである。
キ よって、両商標は商品の出所につき誤認混同を来すおそれはないものであり、全体として類似する商標と見ることはできない。それ故、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないと考えるのが相当である。
(4)請求人による審査及び審判例の参酌
ア 請求人は、本件商標と引用各商標との類似性を裏付ける証拠として、甲第5号ないし第11号証の審判例により本件商標の自他商品識別機能を有する部分が「王将」である旨を主張する。
イ しかるに、請求人がこれら審判例をあげることは、本件と全く異なる事例を強引に当てはめようとする極めて失当なものである。すなわち、商標の類否判断は、少なくとも、その商標が使用される商品において、出所混同が生じるか否かを判断するものであり、そうであるなら請求人主張の甲第5号ないし第7号証の審判例は、本件商標の商品とは全く異なる分野に属するものである。
ウ さらに、請求人の主張する審判例(甲第8号ないし第11号証)は、いずれも「餃子の王将」は、中心に大きく表示された欧文字「OH」と「HO」とを稲妻の図形で結んだものに付随的に表示されたものであり、その審決も、今より10年も前の平成7年7月若しくは平成8年9月になされたものである。
エ むしろ、請求人が「上記各審決における考察は、そのまま本件商標から生ずる称呼の考察にも類推適用されてしかるべきである」(審判請求書第6頁第17行から第18行)と主張するなら、このような古い審決によるのではなく、本件と指定商品を同じくし、かつその構成も「餃子の王将」を主体的に表示した上記乙第2号証の「元祖餃子の王将」における審判の判断を採用してしかるべきである。
オ よって、請求人主張の審判事件は、いずれも本件における商標の類否判断に影響を与えるものではないことが明らかである。
(5)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないことは明らかであるので、同法第46条第1項の規定により、その登録が無効とされるべきものではなく、答弁の趣旨どおりの審決を求めるものである。

第5 当審の判断
1 被請求人について
(1)被請求人の元代表者は、昭和42年に京都市4条大宮に第1号の中華料理店を開店し、そこで店舗名として王将の名称の使用を開始した。その後、京都府を中心にチェーン店を多数開店し、昭和47年ころには、本件商標を店の看板に掲げ、餃子の王将の名称で、餃子等を店舗において出す中華料理店をチェーン店として展開するようになった。
そして、昭和49年には滋賀県進出の第1号のチェーン店として草津店を開店したが、その開店チラシには、「草津店開店記念 無料謝恩サービス券 王将チェーン共通券」として「餃子でおなじみ王将チェーン」「特にお土産お持ち帰りに利用してください。(要箱代)」として、店舗からの餃子の持ち帰りができる旨が記載されている(乙第10号証の1)。その後、昭和49年7月には会社を設立して法人化し、被請求人の前身である「株式会社王将チェーン」が発足した。
開店から10周年となる昭和52年ころには、京都府、大阪府、兵庫県を中心に、75店舗がチェーン店となった(乙第10号証の2)。 また、そのころ開店した大阪梅田店の看板には本件商標が使われ、被請求人チェーンのチラシにも同店舗の写真が印刷されている(乙第10号証の2)。なお、同チラシには、大阪梅田店において、2日間に限り「餃子5人前食べれば!無料」との広告も掲載されている(乙第10号証の2)。
昭和57年4月には、関西地区で173店、東海地区で7店、関東地区で26店、九州地区で18店等がフランチャイズ店等として開店しており、京都市内の学生向けの広告には、全店共通の餃子無料試食券が印刷され、「特にお土産お持ち帰りにご利用下さい(要箱代)」と記載されている(乙第10号証の3)。
さらに、昭和57年11月ころ及び昭和58年7月ころの被請求人の広告に付した全店共通餃子無料試食券にも、それぞれ持ち帰りができる旨が記載されており(乙第10号証の4及び5)、主に学生向けに積極的に餃子無料券を配るなどして、被請求人店舗の知名度を高めていく努力をした(乙第17号及び第18号証)。
(2)被請求人は、店舗での餃子等の中華料理の提供のほか、店舗の外部横に持ち帰りカウンターを併設している店舗もある(乙第3号証の43、45、49等)。また、各店舗に持ち帰りコーナーがあり、その売上げは平成17年で総売上の17%に達している(乙第20号証)。
(3)被請求人は、昭和56年4月27日の日経流通新聞における日本の飲食業ランキングで、昭和55年の売上高が120億300万円で43位に入り(乙第号証15)、「週間ホテルレストラン」誌の平成6年度日本の飲食業売上高ランキングでは461億4200万円で25位に入っている(乙第16号証)。また、被請求人は、平成16年度の売上高が、外食産業のレストラン、各種外食関連の部門において、売上高586億3100万円で23位にランクされている(乙第30号証)。
そして、被請求人は、平成18年ころには、近畿171店、関東76店、東海37店、九州20店、北陸7店、フランチャイズ店180店の店舗網を有しており(乙第31号証)、これら店舗の看板には、本件商標を掲げている(乙第3号証の1ないし317。ただし、本件商標の文字部分を縦書きにし、王将の文字を囲む三重括弧もそのまま90度回転させ縦括弧としてなるものや、「餃子の」の文字部分のみ横書きし、その余を縦書きにしたもの等を含む。)。
(4)また、被請求人は、平成4年から「餃子1日百万個、食は萬里を越える。」などの趣旨の15秒コマーシャルを関西圏の東海テレビ、関西テレビ、讀賣テレビ、朝日放送、毎日放送等で継続的に放映し(乙第11号証の1ないし6、弁論の全趣旨)、ラジオにおいても、毎日放送、京都放送等で5ないし10秒の同旨の広告CMを放送している(乙第12号証の1及び2、弁論の全趣旨)。
(5)被請求人は、各店舗において「餃子の王将」と表示して、メニューを置いているが(乙第5号証の1ないし27)が、これらについては、本件商標を付したものは証拠として提出されていない。また、各店舗において、店舗毎の宣伝チラシ等を数万枚単位で印刷して街頭で配布しているところ、これらには、本件商標が付されたものはない(乙第7号証の1ないし50、第8号証の1ないし18)。
一方、平成16年3月ころからは、本件商標を新聞広告に付して店舗の宣伝をするとともに、これに餃子の無料試食券を付するなどもしている(乙第13号証の1ないし26)。
2 請求人について
(1)請求人の初代代表者は、昭和44年9月、被請求人の元代表者からのれん分けされる形で大阪京橋に餃子等を出す第1号の中華料理店を開店し、その後大阪を中心に中華料理店の店舗を展開するとともに、昭和52年8月に請求人の前身である「大阪王将食品」を設立した。その後、平成5年ころからは、餃子等の冷凍食品を販売している(甲第15号、第44号、第81号及び第88号証)。
請求人は、平成16年9月ころには、関西で100店余りを展開したが、関西での出店ペースが鈍ったことから、関東地域にも本格進出することとし(甲第80号証)、その後も大阪府を中心に東京都新宿区、栃木県宇都宮市などにも店舗を展開し、その総数は平成18年8月ころで150店に達している(甲第15号証)。
(2)請求人は、各店舗に、「大阪王将」との看板を掲げるほか、店舗の宣伝チラシにも「大阪王将」と表示している(甲第70号ないし第77号証)。
なお、請求人は、引用商標1ないし3の商標権者であるが、引用商標3についての使用実績を示す証拠は提出していない。
(3)請求人による餃子等の冷凍食品の販売に関する経緯は以下のとおりである。
ア 請求人社員によれば、請求人の冷凍餃子は、昭和63年に子会社で開発、販売を始め、当時はブランド名に王将等は使用していなかったが、店舗での提供とは異なる冷凍食品としての用途に注目して、餃子のサイズ等(例えば店舗販売用は23グラムであるのを17グラムにするなど)にも工夫を重ね、あわせて食品流通問屋にも協力を仰ぐなどして、同社員によれば平成5年に商品化し、同年9月にコープこうべで販売を始めたところ、当時の記録となる5万8000パックを売り上げ、平成13年からは市販向けの販売を始めた(甲第88号証)。
また、冷凍品の袋詰めに当たり、餃子の耳が折れる問題を解決したことも紹介され(甲第55号証)、顧客の要望に応えて価格を据え置き、たれを2個に増やすなどの工夫も行っている(甲第100号及び第157号証)。
イ 請求人は、12個入りの「王将たれ付き餃子」、20個入り「王将つまみ小餃子」等の企画商品に、「大阪王将」と表示して販売している(甲第15号証)。
また請求人は、生協用商品として、王将餃子として30個入り商品等を販売し、これらには「大阪王将」の表示のほか、「OHSHO」等の表示がされたものもある(甲第16号証)。生協を通しての販売は、平成11年7月期の年商52億円のうち、生協との取引きがこのうち12億円に達しており、商品の構成としては餃子が70%を占める(甲第81号証)。生協での販売としては、平成17年4月ころにおいて、月間550万個を売上げ、餃子では常にトップを占めているとする(甲第82号証)。生協による宅配では全国で販売されている(甲第88号証)。
ウ 請求人は、業務用商品として、王将肉餃子等を販売し、これらはビニール袋入で50個等の単位で販売されている(甲第17号証)。そのビニール袋には、「大阪王将」と表示されたもののほか、枠ないし模様の中に「王将」とのみ表示されたものものある(甲第17号及び第150号証)。
エ 生協で販売される一般家庭向け商品に関しては、チラシ等にも「大阪王将」等と表示された上で、「OHSHO」、「大阪王将」等の表示の付された商品の写真等が掲載されている(甲第16号、第25号ないし第55号証)。なお市民生協にいがたでは、チラシに「大阪王将 ちっちゃい餃子」と表示した上で、ビニール袋40個入りの冷凍餃子につき、袋に「王将」とのみ記載された商品を販売した(甲第113号証)。
スーパーにおける販売では、コーナーに大きく「大阪王将」「OSAKA OHSHO」などと表示し、「大阪王将」等の表示の付された商品を販売している(甲第15号、第56号ないし第61号証)。これら商品の包装には、「頑固一徹!専門店の味!!」と付されたもの(王将たれ付き餃子No.30)、請求人の商標が付され、「大阪王将」の看板のある請求人店舗の写真が付されたものなどがある(王将餃子)。
その他、販売業者等への展示会のほか、スーパー店頭での展示販売、試食販売(マネキン販売)等も多数行って知名度向上・浸透につとめている(甲第99号証の1ないし26)。スーパーでの展示・試食販売では、「大阪王将」の文字の入った赤いはっぴを着て実演するなどしているほか(甲第56号、第99号証の12及び23など。)、「こだわり続けて30年 餃子の老舗「大阪王将」の味をご家庭で!!」(甲第59号証)、「餃子の老舗「大阪王将」の味をご家庭で!!(甲第61号証)などと印刷された宣伝が販売コーナーに表示されている(甲第59号証)。
スーパーでの展示販売(マネキン)での報告では、「王将の店舗も近くにある事から大阪王将ブランドや冷凍商品を知って頂いているお客様も多く・・・王将店舗近くで販売応援をする際には、店舗写真の販促物もあわせて置いた方が販売促進の面で更に良いと感じました。」とするものもある(甲第99号証の5)。請求人も、スーパーでの展示販売を提案する際には、「中華専門店ならではのラインアップをイメージしていただきます。」としている(甲第99号証の15)。
また、冷凍食品関連企業が来場する展示会では、「”上質の一品”コーナーに『専門店の味』として展示されました」との報告のあるものもあり、請求人も「創業昭和44年大阪王将 こだわりで仕上げた自信の逸品!!中華専門店ならではの味!!」などと宣伝している(甲第99号証の5)。
「王将」とのみ表示されたビニール袋入りの冷凍餃子の販売については、上記市民生協にいがたでの販売のほか、総菜宅配業者である「ヨシケイ」を通しては、「王将 七野菜餃子」として50個入りのものが(甲第63号証)、カタログに「大阪王将 丸餃子」として40個入りのものが(甲第113号証)、同じくカタログに「大阪王将 丸餃子」と表示されて30個入りのものが(甲第135号証)それぞれ販売されたことがある。
オ 低温食品専門誌である「月刊フローズンワールド誌」の平成16年6月号において、請求人製品の冷凍餃子(写真の製品には「大阪王将」の表示が付されている)について、「王将餃子」として紹介されている(甲第19号証)。
カ 平成18年版の冷凍食品年鑑、平成18年版の冷凍食品業界要覧によれば、請求人の年商は84億円であるところ、冷凍食品の売上は25億円、営業所は関東、九州、ブランド名は「大阪王将」、主要製品は王将餃子、王将から揚げ等で、冷凍食品の販売ルートは、市販用が90%、業務用が10%となっている(甲第97号及び第98号証)。
キ 請求人の販売する冷凍餃子は、市販用、業務用あわせて平成16年度において、売上数量633万個、売上額は合計16億2757万1787円(甲第20号証)、平成18年度においては(ただし、平成18年4月から平成19年1月までの10か月分の数値を12か月分に換算したもの)、売上数量は1068万2000パック、売上額24億8670万円となっている(甲第111号証の3 )。
冷凍餃子市場では、味の素冷凍食品の「ギョーザ」が業界のトップ商材であり、単品での売り上げが100億円近くに達し、市販用の冷凍餃子市場を牽引しているとされ、一方、請求人製品は、6年前に市販用市場に参入したが「ブランド生かし前年比70%増」などと紹介されている(甲第157号証、「冷食タイムズ」平成19年3月27日記事。)。
ク 請求人は、テイクアウトの多さが大阪王将の特徴のひとつであり、店舗の売上構成に占めるテイクアウト率は全店平均で15%、高い店では30%を超えるところもあるとし、テイクアウトは地域の固定客をつかむ上で重要であるとしている(甲第151号証)。
3 和解について
昭和60年12月2日、被請求人と請求人は、大阪地方裁判所における訴訟上の和解において、日本国内で中華料理店を営むにつき、被請求人は「餃子の王将」と表示し、請求人及び大阪王将チェーン株式会社は「大阪王将」又は「中華王将」と表示すること等を内容とする和解が成立した(甲第44号証)。
4 商標法第4条第1項第11号該当性の有無
(1)外観について
本件商標は、別掲1のとおり、左側に赤の色彩を施した「餃子の」の文字を配し、その右側に赤地に白抜きの文字で大きく「王将」の文字を表し、その「王将」の文字を緑・橙・黄色の三重の括弧である各「<<<」、「>>>」で挟んでなるところ、文字部分は赤字の「餃子の」及びそれより若干大きく白抜き文字で「王将」とそれぞれ表示され、配色としても緑、橙、黄色の三重括弧とその内部の「王将」の文字を強調する赤地よりなるものである。
一方、引用商標1及び2は、いずれも「王将」の文字を横書きにしてなるものであり、引用商標3は、黄色の将棋の駒の内部に、黒字で「王将」と書かれているものである。
そうすると、「餃子の王将」という表示(本件商標)と「王将」という表示(引用各商標)である点で、表示内容が異なり、外観上、本件商標と引用各商標とは、区別できるというべきである。
(2)称呼について
本件商標は、「王将」の文字部分を、それ自体「餃子の」の文字よりも大きく書き、また、三重括弧等で強調しているとしても、「餃子の」の文字部分も存し、また、目立つ色彩である赤字で書かれていることからすれば、本件商標の強調する「王将」の文字部分から、「オウショウ」の称呼が生ずることは否定しえないものの、一方で「ギョウザノオウショウ」の称呼も同程度に生じることも、また明らかというべきである。
一方、引用各商標からは、いずれも「オウショウ」の称呼が生じるのみである。
そうすると、本件商標と引用各商標とが、その称呼を同一にするとまではいえないというべきである。
(3)観念について
本件商標は、観念に関し、「餃子の」の部分は、これは商品を説明するものであるから、「王将」の文字部分、特に漢字で記載されていることや、その書体からして「将棋の王将」の観念が生じるというべきである。
他方、引用各商標からも、同じく「将棋の王将」の観念が生じると認められる。
そうすると、両商標の観念は、同一というべきである。
(4)小括
以上によると、本件商標と引用各商標とは、外観において区別しうるが、称呼については場合によりこれを同じくし、観念は同一であることになる。
5 取引の実情を踏まえた検討(出所の誤認混同について)
前記第5の1ないし3で認定した事実によれば、以下の事情を指摘することができる。
(1)本件商標は、被請求人の創始者が、昭和42年に開店した中華料理店に由来し、昭和47年ころからは、その後法人化した被請求人のチェーン店等の看板等に使用されてきた。チェーン店等の看板には、上記認定のとおり、三重括弧内に「餃子の」の文字を入れたもの等も使用されているが、本件商標は多数の店舗で基本的な看板等として使用されてきたということができる。
そして被請求人のチェーン店は昭和52年ころには75店、昭和57年には220店余りとなり、出店地域としては関西が中心で、全国的にみれば出店のない地域もある(例えば北海道など)ものの、東海、関東地区等にも進出している。全国の飲食業売上高ランキングでも、昭和55年で43位、平成6年度では25位等の上位にランクされている。
(2)一方、引用各商標は、請求人が権利者であるところ、請求人も昭和44年に中華料理店を開店し、大阪府を中心に全国各地に店舗を展開し、平成18年8月ころには150店に達している。請求人は、店舗に「大阪王将」との看板を掲げている。
請求人は、平成5年ころからは生協を通した餃子等の冷凍食品の販売を開始し、平成13年からは市販向けに冷凍餃子の販売もスーパー等において行うようになった。請求人はこれら商品の包装には「大阪王将」等を表示するほか、専門店の餃子である旨の表示をしている。このように、請求人による引用商標1、2の使用実態をみると、「大阪王将」と結びついて使用され、これは請求人が昭和44年から餃子を中心とした中華専門店を営んでいること、中華専門店であることを強調して市場で競合する大手メーカーの既存の冷凍食品(味の素食品等)と差別化することを目的とし、積極的に大阪王将という中華料理店での実績・評価と結びつけるべく使用している。ちなみに、請求人は引用商標3を使用していない。
(3)そして、昭和60年12月2日の大阪地方裁判所での和解成立以来、それぞれ中華料理店を営む際、被請求人は「餃子の王将」と、請求人は「大阪王将」と表示することとされている。
(4)上記(1)ないし(3)の事情にかんがみると、共通の指定商品である餃子に関し、その取引者・需要者には、本件商標は高い識別力を有し、その外観により、被請求人の商品であることを想起させるものとして、引用各商標と識別することは十分に可能というべきである。
(5)なお、請求人は、被請求人の店舗の展開が全国的とはいえず、中華料理店の役務に関する実績と異なり冷凍食品に関しての販売実績もないことなどから、被請求人が本件商標を付した餃子を販売した場合には、請求人の商品と誤認混同が生じると主張し、それに沿う証拠も提出している(甲第158号証の1ないし4など)が、請求人商品は、生協、宅配業者、スーパー等での販売のいずれにおいても「大阪王将」のブランドであることを正しくアピールしている一方、本件商標を使用した被請求人の中華料理店での上記営業実績からすれば、請求人の主張は、上記の判断に影響を及ぼさないというべきである。
6 まとめ
以上によれば、本件商標と引用各商標とは、同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められず、互いに類似する商標であるということはできない。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)

(色彩については原本参照のこと。)

別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2)


別記4(引用商標3)

(色彩については原本参照のこと。)



審理終結日 2006-09-29 
結審通知日 2008-08-14 
審決日 2006-10-20 
出願番号 商願2004-110578(T2004-110578) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y30)
T 1 11・ 261- Y (Y30)
T 1 11・ 263- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土井 敬子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 佐藤 達夫
小川 きみえ
登録日 2005-06-03 
登録番号 商標登録第4868675号(T4868675) 
商標の称呼 ギョーザノオーショー、オーショー 
代理人 藤本 昇 
代理人 神吉 出 
代理人 辻本 一義 
代理人 辻本 希世士 

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