• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200530480 審決 商標
取消200530479 審決 商標
取消2007300131 審決 商標
取消2007300598 審決 商標
取消200431607 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 028
管理番号 1182744 
審判番号 取消2007-300113 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-02-02 
確定日 2008-08-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4305305号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4305305号商標の「第28類 遊戯用器具」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4305305号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成7年4月11日に登録出願、第28類「カードゲーム用具,遊戯用器具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,ドミノ用具」を指定商品として平成11年8月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが第28類「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について本件商標の使用をしていないものである。
したがって、第28類の指定商品中「遊戯用器具及びこれに類似する商品」についての本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)正当理由がある旨の主張について
商標法第50条2項ただし書にいう「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当であると考えられるところ(甲第1号証)、被請求人の主張は、いずれも正当な理由とは言い得ないものである。
(2)『(a)本件商標は世界初のトレーディングカードゲームに付けられたネーミングであり、第三者の正当理由又は正当権原なき使用によるフリーライドの危険性が高いこと』について
被請求人は、本件商標がフリーライドされる危険性が極めて高く、「トレーディングカード」以外の同じ玩具の分野に属する「遊戯用器具」について、使用開始前に登録を受け、第三者のフリーライドの危険性から身を守る必要があると主張する。
しかしながら、当該主張は、被請求人である商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情に基づいたものではなく、単に被請求人の希望を主張しているに過ぎない。
したがって、当該主張は、商標法第50条2項ただし書にいう「正当な理由」に該当するものではない。
(3)『(b)本件商標は、「玩具」の分野で、周知・著名性を獲得しており、使用する商品が拡大していること』
被請求人は、本件商標が「トレーディングカードゲーム」及びこれの周辺商品について使用され、周知・著名性を獲得していると主張する。
しかしながら、本件商標がこれらの商品について例え周知・著名性を獲得していると判断されるとしても、この事実は、被請求人である商標権者が本件商標が「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について使用されていなかったことに関する責めに帰すことのできないやむを得ない事情とは、何ら関係ない事実である。
したがって、当該主張は、商標法第50条2項ただし書にいう「正当な理由」に該当するものではない。
(4)『(c)2005年タカラトミーと代理店契約を締結し、日本でのマーケット拡大をしている最中にあること』
被請求人は、株式会社タカラトミーとの代理店契約から1年半ほどしか経過しおらず、日本でのマーケットを広げている最中であることを主張する。
しかしながら、当該主張も、被請求人である商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情に基づいたものではなく、企業たる被請求人の内部事情にすぎないものである。更に言えば、全米玩具メーカー最大手であるHasbro Inc.の傘下にあり世界中で展開している程の企業である被請求人ならば、当然に本件商標を「遊戯用器具」について日本国内において使用することは十分に可能であったと解される。よって、当該主張も、被請求人である商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情に基づいたものではないことは明らかである。
したがって、当該主張も、商標法第50条2項ただし書にいう「正当な理由」に該当するものではない。
なお、被請求人は、請求人が商標権のいわゆる禁止権の範囲について不使用取消審判を請求した如く主張するが、請求人はあくまで『登録第4305305号商標の指定商品中、第28類「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について』取消を求めたものであるから、被請求人の主張自体失当である。
(5)まとめ
以上述べたように、被請求人は第28類の指定商品中「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について本件商標を使用しておらず、またその不使用についての正当な理由も存在しないので、本件商標は当該指定商品中「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
3 平成19年11月21日付け手続補正書
(1)「請求の趣旨」について、「第28類『遊戯用器具及びこれに類似する商品』」を「第28類『遊戯用器具』」に補正する。
(2)「請求の理由」について、「第28類『遊戯用器具及びこれに類似する商品』」を「第28類『遊戯用器具』」に補正する。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第26号証を提出している。
被請求人が「遊戯用器具」について不使用であることについて正当理由がある旨の主張(商標法第50条第2項)
被請求人は、本件商標を、トレーディングカードゲームに使用している(以下「被請求人商品」という。)。
トレーディングカードゲームの箱、包装、及び、インターネット上での紹介記事を一例として、提出する(乙第1?第3号証)。
他方、被請求人は「遊戯用器具」について不使用であり、不使用につき正当理由があることについて述べる(商標法第50条第2項)。
1 本件商標は世界初のトレーディングカードゲームに付けられたネーミングであり、第三者の正当理由又は正当権原なき使用によるフリーライドの危険性が高いこと
被請求人商品は、被請求人のリチャード・ガーフィールド氏が創作し、1993年に発売された世界初のトレーディングカードゲームである(乙第4号証)。
被請求人商品は、短期間の内に驚異的な人気を得、大会形式も確立され、世界中でトーナメントが開かれている(乙第5号証)。
つまり、本件商標は世界初のトレーディングカードゲームに付けられたネーミングであり、第三者の正当理由又は正当権原なき使用によるフリーライドの危険性が極めて高いものである。
従って、「トレーディングカード」以外の同じ玩具の分野に属する「遊戯用器具」についても、使用を開始する前に登録を受け、第三者のフリーライドの危険性から身を守る必要がある。
2 本件商標は、「玩具」の分野で、周知・著名性を獲得しており、使用する商品が拡大していること
被請求人は、1993年当初、主に「トレーディングカードゲーム」を単体で販売するに際し、本件商標を使用していた(乙第6号証)。
その後、2001年頃から、「トレーディングカードゲーム」に係る周辺の商品(例えば、プレイマット)について本件商標の使用を開始し(乙第6号証)、現在、本件商標をCD-ROMや書籍、ゲームソフトにも使用しており、急激に本件商標を使用する商品が増加している状況にある(乙第7号証)。
また、被請求人は、1999年から全米玩具メーカー最大手であるHasbro Inc.の傘下にあり(乙第8号証)、現在におけるまで本件商標の使用を継続し、「トレーディングカードゲーム」の先駆けとして、室内ゲームの分野で、世界各国で大成功をおさめている。
このことは、一般的な検索エンジンで、「MAGIC THE GATHERING」や「MAGIC おもちゃ」といったキーワードで検索した場合(乙第9、第10号証)に、被請求人の商品に関する情報が多数検出されることからもわかる。
なお、本件商標(乙第11号証)と同一の文字からなる商標「MAGIC」を、被請求人は「パチンコ器具,スロットマシン,その他の遊戯用器具,ビリヤード用具」を指定商品として、平成19年2月1日付で出願している(乙第12号証)。ヒットした「ゲーム」の名称が、「パチンコ器具」や「スロットマシン」の名称や題材に使われることは、日本において少なくない。さらに、後述するとおり、本件商標が付された被請求人の商品については、日本の販売店によって、ゲーム大会やイベント等プロモーション活動が行われているところ、請求人商標の出願の時期及びその所在地近辺においても、頻繁に行われている(乙第13号証)。
3 2005年タカラトミーと代理店契約を締結し、日本でのマーケット拡大をしている最中にあること
被請求人は、2005年1月1日より、株式会社タカラを日本の総販売元として任命し、本件商標を含めた関連商標権について通常使用権を付与している(乙第14号証)。
株式会社タカラは、2006年3月1に、株式会社トミーと合併し(乙第15号証)、株式会社タカラトミー(以下「タカラトミー」という。)となり、同社が総販売元の地位及び通常使用権を承継している。
タカラトミーは、本件商標を付したトレーディングカードゲーム(日本語版)を、国内で販売している(乙第1、第2、第16号証)。また、タカラトミーが本件商標を付して販売している商品のセットには、トレーディングカードゲームに加えて、ルールブック、プレイガイド、プレイマット、CD-ROMなどの商品が含まれている(乙第6、第16号証)。
これらの商品は、全国各地の多数の商店で取り扱われており(乙第17号証)、日本国内でも、トーナメント大会が頻繁に開催されている(乙第18号証)。
以上のとおり、タカラトミーとの代理店契約締結からは、わずか1年半ほどしか経過しておらず、日本でのマーケットを広げている最中にある。
また、「一定期間登録商標を使用しない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を害する…」(工業所有権遂条解説(第16版)特許庁編)(乙第19号証)という不使用取消審判の趣旨からすると、完全に同一でないとしても指定商品に関連する「トレーディングカード及びその周辺商品」において本件商標を使用している以上、保護対象たる商標に化体した業務の信用は存在する。
代理店契約締結から間もないという具体的な事情に基づき、被請求人には、不使用につき正当な理由がある。
なお、本件請求は、「遊戯用器具及びこれに類似する商品」についての登録の取消を求めるものであるが、「遊戯用器具及びこれに類似する商品」の範囲は明確ではない。
「商標権のうち禁止権に係る部分つまり類似部分の使用は、権利としての使用ではなく事実上の使用であるから本条の意図する登録商標の使用義務を履行しているとはいい難いので、その部分の使用をもって免れることはできない」(工業所有権遂条解説(第16版)特許庁編)(乙第20号証)という商標法第50条第1項の規定からすると、類似部分について、不使用取消審判を請求することは、権利として存在しない範囲について取消を求めるのに等しいものであり、不適法な請求である。
過去にそのような請求を認めた審決が存在するとしても、現行法において、請求人にのみ、過大な保護を認める必要性はない。
仮にそのような請求を認めるのであれば、商標法第50条第2項本文にいう被請求人が使用につき立証責任を負う「その指定商品」についても、緩やかに解釈されるのが審理の公平性から適当である。
4 平成19年12月26日付け答弁書
(1)不適法な審判請求
本件不使用取消審判は、不適法な審判請求であって、手続面において重大な違法性を有し、よって当該請求は認められない。
ア 審判請求の対象が不明確である不適法な審判請求であること
「その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求する」とは、2以上の指定役務がある場合に、特定の指定商品又は指定役務について請求することができる旨規定したものであり、その規定の文言からも明らかなとおり、指定商品に類似する商品に係る商標登録を取り消す旨の審決を求めることはできない。
請求人が本件商標の取消を求めている指定商品は「遊戯用器具及びこれに類似する商品」である。しかしながら、「カードゲーム用具、さいころ、すごろく、ダイスカップ、ダイヤモンドゲーム、チェス用具、チェッカー用具、ドミノ用具」は、「遊戯用器具」とは非類似商品であり、本件審判請求は、指定商品中の何に対する取消を求めるものなのか、一義的ではなく、極めて不明確である。
また、我が国の通常の語法に反して、請求人が「これに類似する商品」とは禁止権の範囲に属する商品ではないと主張しており、「これに」の文字が何に係っているのか理解するのが困難である。
本件審判請求の対象が何であるかは、結論に影響を与えるものであり、本件審判は、手続上重大な違法性を有する。
イ 審判の請求の趣旨に記載されている指定商品を補正することは要旨の変更に該当し、認められないものであること
上記で述べたとおり、本件審判請求の対象が何であるかは、結論に影響を与える重要な争点であるにも係らず、その内容及び範囲が不明確であり、本件審判請求の手続には、重大な違法性がある。
本件商標に係る出願は、平成3年政令第299号による改正後の規定の適用を受けて出願及び登録がなされたものであり、その指定商品の記載は極めて明確である。したがって、あえて審判請求の趣旨に、「及びこれに類似する商品」という記載を入れるべき理由は、存在しない。
商標法第56条第1項で準用する特許法第131条の2第1項に規定されているとおり、審判の請求の趣旨に記載されている指定商品を補正することは要旨の変更に該当し、認められない。
したがって、本件審判請求は、その内容を検討するまでもなく、成立し得ない。
(2)不明確な請求を行なった不利益は、被請求人(「請求人」の誤りと認める。)自身が負うべきものであって、請求人(「被請求人」の誤りと認める。)に過剰な立証負担を負わせたり、一般の需要者の利益を害してはならないこと
本件のように、対象が適切に特定されていない審判請求は、(a)被請求人に過剰な立証負担を課すものであり、(b)このような不明確な請求を容認することにより、指定商品等の範囲の明確性を失わせるものであり、結果として一般の需要者の利益をも害し得る。
(ア)被請求人に過剰な立証負担を課すこと
商標法第50条第2項柱書において、「・・・その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」旨記載されている。しかるに、商標権者等は、審判請求の対象となる指定商品又は指定役務について使用を立証すれば被請求人は登録の取消を免れるというのが該規定の意図するところであり、「これに類似する商品」については、本来使用の立証を予定しないものある。
さらに、「これに類似する商品」が何を指すのか不明確であるため、使用を立証すべき範囲が特定できないという著しい不利益を被請求人は被っている。本件のような「遊戯用器具及びこれに類似する商品」を対象とする商標法第50条第1項の審判請求を認めるとした場合、不用意に被請求人(商標権者)に使用の立証負担を課すことに他ならず、商標法第50条第2項が予定する立証負担の公平な分担という趣旨からは逸脱したものであり、適切でないことは明白である。審判請求の趣旨が不明確であることによる不利益は、請求人自身が負うのが相当であり、審判請求不成立の審決を求める。
(イ)商標権の効力が及ぶ範囲を後発的に不明確にし、結果として一般の需要者に著しい不利益を被らせること
商標権の効力が及ぶ範囲は、願書に記載した商標及び指定商品又は指定役務に基づいて定められるものであるところ、請求の対象として「これに類似する商品」と記載することを認めた上で請求を認める審決を行った場合、設定登録時には、指定商品等の範囲が客観的に明確であるにもかかわらず、後発的に指定商品の範囲の明確性が奪われるという問題が生じる。
そして、商標権の効力が及ぶ範囲を不明確ならしめることは、結果として一般の需要者に著しい不利益を被らせるものであり、出願時において、「・・・に類似する商品は除く」「・・・及びこれに類似する商品」といった指定商品の記載は、商標法第6条第1項の規定に基づき認められないことからしても、このような審判請求は、不適法といわざるを得ない。
上記と同様の審判請求手続を行った審決について、商標権の効力範囲を不明確にする違法な審判手続きであると指摘した審決取消請求事件がある。裁判例でも示されているとおり、本件のように対象の範囲及び内容が著しく不明確な請求を認めることは、審理の対象の画定や被請求人の防御機会の保障の機会を奪うだけでなく、取消審決の効力の及ぶ範囲の確定等の点において混乱を招くものである。
しかるに、審判請求中の取消を求める対象が不明確であることは、単純な誤記とは次元の異なる不備であり、審判請求の結論に影響を与えるものであるから、当然に請求不成立の審決が求められる。
(3)商標権者ないし通常使用権者が請求対象(「遊戯用器具及びこれに類似する商品」)について登録商標を使用していること
本件審判請求は審判請求手統において重大な違法性を有するもので成り立ち得ないが、念のため、商標法第50条第1項の取消の要件を具備しない請求であることについても、以下に述べる。
商標法第50条第1項の審判請求は、工業所有権逐条解説 第16版(特許庁編)において、「その一部の指定商品を一体とする一つの請求であって、その一部の指定商品に属する個々指定商品ごとに請求があるものではない」という記載がある。これは、請求対象たる指定商品、本件でいう「遊戯用器具及びこれに類似する商品」は、一体としてーつの請求をなすものであることを指す。
我が国の語法からすると、「及びこれに類似する」といった場合には、その直前にある語(「遊戯用器具」)を指すのが一般的であるところ、本件商標権者ないし通常使用権者は、「遊戯用器具」に類似する「室内ゲーム用具」「パーティー用遊戯用具」の範疇において、登録商標を使用している。
本件商標権者から使用許諾を受けているタカラトミー株式会社は、「室内ゲーム用具」として、本件商標が付された「30枚デッキ×2個、追加用カード15枚、ルールブック1冊、プレイガイド2冊、プレイマット1枚、Windows対応CD-ROM、プレミアムカード1枚」のセットを販売している。単にカードゲームだけを販売しているのではなく、ゲームに使うためのデッキやマット等の販売も行っており、該使用権者による使用は、「室内ゲーム用具」についての使用に該当するものと思料する。なお、あらためて定義するまでもなく明確であると存ずるが、「室内ゲーム用具」とは、屋内でする遊戯に用いる道具を指すものであり、該使用は、「室内ゲーム用具」についての登録商標の使用に該当する。
また、該使用権者による上記セット商品の販売は、ビンゴゲームやUNOやトランプと同様に、宴会やパーティーなどで行われる多人数が集まってする遊戯具、すなわち「パーティー用遊戯用具」の販売にも該当するものである。
以上のとおり、審判請求の予告登録前三年以内に日本国内において登録商標をその請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることは明白であり、よって商標法第50条第1項の取消の要件を満たさないことから、本件審判請求は成り立たない。

4 当審の判断
被請求人は、乙第1ないし第26号証を提出し、本件商標の指定商品の記載は極めて明確であり、あえて審判請求の趣旨に、「及びこれに類似する商品」という記載を入れるべき理由は存在しない。
商標法第56条第1項で準用する特許法第131条の2第1項に規定されているとおり、審判の請求の趣旨に記載されている指定商品を補正することは要旨の変更に該当し認められず、また、審判請求中の取消を求める対象が不明確であることは、単純な誤記とは次元の異なる不備であり、審判請求の結論に影響を与えるから、当然に請求不成立の審決が求められる。また、被請求人は、「遊戯用器具」に不使用であることについて「正当な理由」があることと、及び商標権者ないし通常使用権者が請求対象(「遊戯用器具及びこれに類似する商品」)について登録商標を使用している旨主張しているので、以下、検討する。
(1)要旨の変更等について
(ア)商標法第56条第1項で準用する特許法131条1項は、審判請求人に、他の記載事項と並んで「請求の趣旨及びその理由」の記載を義務づけた上で、同法131条の2第1項において、審判請求書の補正は「その要旨を変更するものであってはならない」としている。
この規定は,審判請求人が審判の審理が進んだ段階で理由の要旨を拡張・変更すると、実質的な審理のやり直しをせざるを得ず、審理が長期化・遅延することに照らし、審判請求書の補正がその「要旨の変更」に当たる場合にはこれを許さないものとしたものと解される。
確かに、本件取消審判の請求の趣旨は、「遊戯用器具及びこれに類似する商品」について取消の審決を求めるものであるから、請求の趣旨及び理由の記載が変更されれば取消審判の請求の趣旨及び理由が変更されることになるが、審判における審理対象の拡張変更による審理遅延を防止するとの特許法131条の2第1項の立法趣旨等にも照らすと、「要旨の変更」に当たるかどうかは、単に請求の趣旨や理由が変更されたかどうかを形式的に判断するのではなく、補正前の事項と補正後の事項の内容を対比検討し、取消審判における審理の範囲が当該補正により実質的に拡張・変更されるかどうかに基づいて判断すべきである。
前記のとおり、補正事項は、請求の趣旨及び理由に記載した「遊戯用器具及びこれに類似する商品」から「及びこれに類似する商品」の記載を削除しようとするものである。補正事項は、取消審判の対象から一部の商品を除外するものであるから、取消審判請求書の要旨の変更には当たらないと解されるところ、補正事項により当初の請求の趣旨及び理由から「及びこれに類似する商品」の記載を削除したとしても、取消審判における審理の範囲が実質的に拡張・変更されたものということはできない。
(イ)「これに類似する商品」について
被請求人は、請求に係る指定商品中の「これに類似する商品」の範囲は不明確であるから、本件審判の請求は、却下されるべきである旨主張し、また、請求人は、請求の趣旨及び理由を審判請求当初に取消を求めた「遊戯用器具及びこれに類似する商品」(以下「当初の請求商品」という。)を、「遊戯用器具」(以下「補正後の請求商品」という。)と補正したものである。 そこで、本件請求に係る指定商品中の「これに類似する商品」の範囲が不明確であるか否かについて検討し、その上で、被請求人のした請求の趣旨の補正が要旨の変更に当たるものであるか否かについて検討する。
(a)当初の請求に係る指定商品は、上記したとおり、「遊戯用器具及びこれに類似する商品」であるところ、その指定商品中「これに類似する商品」とは、「遊戯用器具」(以下「積極表示商品」という。なお、「積極表示商品」は、補正前と補正後では変更がない。)に類似する商品であることは、その記載から明らかである。
(b)そこで、積極表示商品の類似範囲がどこまで及ぶのかについてみるに、平成3年政令299号による改正前の商標法施行規則別表第24類は、主として広義における娯楽用具すなわちレクリエーションに使用される器具をまとめた類であって、大概念として「おもちゃ 人形 娯楽用具 運動具 釣り具 楽器 演奏補助品 蓄音機(電気蓄音機を除く。) レコード これらの部品および附属品」が掲げられているところ、そのうちの「娯楽用具」は、主として人力による娯楽用器具を包括した概念であると解される。
また、上記「娯楽用具」の範疇に属する商品には、「囲碁用具 将棋用具 骨ぱい類 手品用具」及び「玉突き用具 遊戯用器具」とが掲げられているところ、これらはそれぞれ用途主義を中心として商品群を構成しているものである。
さらに、施行規則別表をもとに作成された類似商品審査基準〔改訂版〕(昭和61年3月28日 改訂第6版)は、商品の原材料、用途、生産者、取引系統等を共通にする場合が多い商品をまとめ、いわゆる短冊で括られた商品群を類似の商品と推定しているところ、積極表示商品の類似商品は、上記類似商品審査基準によって、いわゆる短冊で括られた商品群を類似の商品と推定するというのが相当である。
してみれば、短冊内に例示された商品は、すべて類似の商品と推定できるのであり、かつ、類似商品審査基準に例示されていない商品を含めて、短冊部分において代表的、あるいは概念的に記載された商品の表示により、類似の商品が包括的に表示されるとみるべきであるから、短冊部分において代表的、あるいは概念的に記載された商品の表示のみをもって、これを取消請求に係る指定商品としても、請求に係る指定商品の表示もその範囲は実質的に同一の範囲のものということができる。
そして、当初の請求に係る指定商品及び補正後の請求に係る指定商品における積極表示商品は、短冊部分において代表的、あるいは概念的に表示された商品と認められるから、その商品表示のみであっても、その商品表示に「これに類似する商品」の表示を付加しても、商品の範囲は実質的に変わるものではない。
そうすると、当初の請求商品と補正後の請求商品は、同一というべきである。
(ウ)以上のとおり、補正後の請求に係る指定商品は、請求の趣旨の要旨を変更したものと認めることはできない。
(3)本件商標の使用の事実について
(ア)「正当な理由」について
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項に規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れない。
そして、商標法第50条第2項にいう「正当な理由」としては、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が考えられるものであって、被請求人において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特別の事情が具体的に主張立証される必要がある。
本件の場合、被請求人は、(a)本件商標は被請求人商品に付けられたネーミングであり、第三者の正当理由又は正当権原なき使用によるフリーライドの危険性が高いこと(b)本件商標は、「玩具」の分野で、周知・著名性を獲得しており、使用する商品が拡大していること及び(c)2005年株式会社タカラトミーと代理店契約を締結し、日本でのマーケット拡大をしている最中にあること等の事情に基づき、被請求人には、不使用につき正当な理由がある旨主張している。
しかし、被請求人が主張する如く、本件商標を付した使用商品が周知・著名性を獲得していたとしても、そのことをもって、上記特別の事情があったということはできず、また、株式会社タカラトミー(以下「通常使用権者」という。)が代理店契約締結から間もないという事情は、被請求人の内部事情にすぎないから、そのことをもって、上記特別の事情と認めることはできない。
そうすると、被請求人又は通常使用権者が本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことにつき、商標法第50条第2項にいう正当な理由があるとはいえない。
(イ)使用の事実について
被請求人は、使用許諾を受けた通常使用権者が、使用商品を「室内ゲーム用具」及び「パーティー用遊戯用具」に使用しているから、本件商標の使用にあたる旨主張している。
そこで、検討するに、被請求人が使用しているとする使用商品「トレーディングカードゲーム」(乙第1号証、乙第2号証)は、カードに記載された数値や設定を利用して対戦するゲームであり、カードはそのための用具となるものである。
このような「カードゲーム」といわれる商品は、いわゆるテーブルゲームというテーブルで遊ぶゲームのことであり、前記した類似商品審査基準において、「囲碁用具 将棋用具 骨ぱい類 手品用具」の範疇に属する商品と認められ、本件請求に係る指定商品「遊戯用器具」とは、非類似の商品といわなければならない。
また、被請求人は、使用商品が「室内ゲーム用具」及び「パーティー用遊戯用具」に属すると主張するが、仮に「室内ゲーム用具」が室内でする遊戯に用いる道具であり、「パーティー用遊戯用具」が、宴会やパーティーで多人数が集まってする遊戯具といえるとしても、使用商品に使用するデッキ、マット等は上記トレーディングカードゲームの為に使用されるものであり、当該ゲームとともに、ゲームショップ等で販売されるものであるから、当該ゲームと同様に遊戯用器具の範疇に属する商品とみるのが相当である。
そうすると、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標がその請求に係る指定商品「遊戯用器具」について、被請求人により使用されていたことを証明する証拠とはなり得ない。
(4)以上のとおり、本件審判の請求は適法なものであって、被請求人の主張は採用できないものである。そうすると、結局、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定商品について使用されていなかったものというべきであり、また、上記のとおり、その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「遊戯用器具」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)





審理終結日 2008-03-11 
結審通知日 2008-03-14 
審決日 2008-03-31 
出願番号 商願平7-35934 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (028)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 石田 清
小川 きみえ
登録日 1999-08-13 
登録番号 商標登録第4305305号(T4305305) 
商標の称呼 マジック 
代理人 森 智香子 
代理人 城山 康文 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 花村 太 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ