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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Z03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z03
審判 全部無効 外観類似 無効としない Z03
管理番号 1182742 
審判番号 無効2007-890139 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-16 
確定日 2008-08-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4979864号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4979864号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年6月26日に登録出願、第3類「食器洗い用洗剤,その他の洗剤,その他のせっけん類」を指定商品として、平成18年8月18日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2221773号商標(以下「引用商標」という。)は、「DON」の欧文字と「ドン」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、昭和62年12月7日に登録出願、第3類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、平成2年4月23日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第20号証(枝番号を含む。)及び参考資料1ないし同8を提出した。
(1)請求の理由
ア 本件商標と引用商標とが類似することについて
(ア)称呼
本件商標は、文字と図形との組み合わせよりなるものである。本件商標についての拒絶査定不服審判における審決では、本件商標の中心に顕著に表された「DAWN」の文字部分は、独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであり、その文字に相応して「ドーン」の称呼を生ずるものであるとした。しかし、「DAWN」の語は、外来語辞典に掲載されておらず、日常使用される語ではなく、その称呼「ドーン」を明瞭に発音する取引者、需要者は少ないといわなければならない(甲第3?7号証)。したがって、該語より生ずる称呼は、場合によっては、「ドーン」であり、「ドン」であることも少なくない。
これに対し、引用商標は、「DON」の文字と「ドン」の文字とを二段に横書きしてなるものであるから、片仮名文字「ドン」に対応する称呼は「ドン」であるが、ローマ文字「DON」に対応する称呼は「ドン」であると共に「ドーン」とも称呼される。
仮に、本件商標中の「DAWN」から生ずる称呼が「ドーン」であるとしても、「ドーン」の称呼と「ドン」の称呼とを聴別することは困難である。我が国の一般の取引者・需要者の感覚では、「DAWN」の称呼「ドーン」は、「ドン」と同様に太鼓の音とか、大砲の音とかを連想し、「ドーン」と「ドン」は、聴別し難いばかりでなく、共通の印象をもって認識されるものであるといわなければならない。
したがって、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、「ドーン」と「ドン」は、聴別し難い語韻語調の近似したものとして聴取され、その結果、相紛れるおそれのある類似の商標とされるのである。
(イ)観念
本件商標の拒絶査定不服審判における審決では、「DAWN」の文字部分は「夜明け、あけぼの」等を意味する英語であり、「DON」の文字部分は、「?様(スペインの敬称)、首領、?を着る、ドン(男子の名)」等を意味する語であるとし、両文字部分の観念は相違するものであるとしたが、前述のとおり、「DAWN」の語は、外来語辞典にも掲載されておらず、日常使用する語ではない。加えて、称呼「ドーン」と「ドン」は、明確に聴別し難い近似した商標である以上、観念上の相違があるとしても、称呼における類似性を凌駕するものではないというべきである。
(ウ)外観
本件商標は、「DAWN」の文字と図形との組み合わせよりなるものであり、引用商標は、「DON」と「ドン」とを二段に横書きしてなるもので、両商標の外観が相違するとしても、称呼において聴別し難いい相紛れるおそれのある類似の商標である以上、外観上の相違をもって非類似と認定すべき理由にはならないこと明白である。
イ 指定商品が類似することについて
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、いずれも「せっけん類」において同一のものである。
ウ したがって、本件商標と引用商標は、称呼において類似する商標であるものである。
なお、特許庁の審査において、登録第4969510号商標及び本件商標は、審査の段階で引用商標が引用され拒絶査定となった(甲第8号証)。また、商願2006-96999(DAWN)は、審査の段階で、引用商標が引用された拒絶理由通知を受けた(甲第9号証)。さらに、上記商願2006-96999の審査は、登録第4969510号商標及び本件商標の登録査定がなされたあとでの判断であり、登録第4969510号商標及び本件商標の間に混同が生じるおそれが顕著であることを示している。このような商標が併存登録されることに請求人は法的安定性が損なわれるものと強く危倶し、本件審判の請求に及んだ次第である。
(2)答弁に対する弁駁
ア 本件商標について
本件商標中の「DAWN」の文字部分は、英語教育が義務教育の一課程として行われている我が国においても、特に親しまれた語ということはできず、むしろ、該語の意味を理解している者のほうが少ないものとみるのが実情である。このことは、「新英和中辞典」(株式会社研究社、1985年発行:甲第10号証)において、「DAWN」の語が「大学入試、大学教養程度の基本語2000語(*)」に相当する語と位置づけられていることからも首肯し得る。
したがって、「DAWN」の文字(語)から、「ドーン」の称呼が生ずることは認められるとしても、その意味が「夜明け、あけぼの、暁」等であることで理解し認識されるものではなく、むしろ、直ちに特定の意合いを想起、認識することのない、いわば造語に近い語として理解されるものである。
なお、請求人は、請求の理由中で、「本件商標より生ずる称呼は、場合によっては、『ドーン』であり、『ドン』であることも少なくない。」旨述べたが、これは要するに、本件商標のように、特に親しまれた英語ではなく、かつ、「D」「A」「W」「N」の綴り字で他に親しまれた類語がないような場合は、必ずしも「DAWN」の発音記号どおりに発音されることはなく、長音記号を省略する場合もあり得るということを述べたものである。
イ 引用商標について
引用商標は、複数の意味合いを想起させ(甲第3号証)、また、その称呼からは、「太鼓のドン」、「丼のドン」などの多数の意味を想起させる場合も少なくなく、特定の語のみを理解、認識させるわけではないのである。
ウ 両商標の類否について
本件商標から「ドーン」の称呼を生ずるとしても、引用商標「ドン」とは、称呼において相紛らわしい類似の商標であると考える。
すなわち、前述のように、本件商標「DAWN」の文字は、造語に近い語として理解、認識されるものというべきであり、また、引用商標も、複数の意味をもつ語であるから、特定の意味合いを想起させることがない。そうすると、これら語のもつ観念がその称呼に及ぼす影響は小さいものといわなければならない。
そうすると、本件商標から生ずる「ドーン」の称呼と引用商標から生ずる「ドン」の称呼は、その観念上の相違を捨象して、専ら、「ドーン」と「ドン」の称呼のみを比較判断すれば足りるのであって、両者は、「ド」、「ン」の2音を共通にし、異なるところは、中間において長音の有無の差異を有するにとどまるものということができる。そして、該長音は、前音「ド」の母音「o」をそのまま伸ばす音であるから、明確には聴取し難い音ということができ、よって、それぞれを一連に称呼したときは、互いに相紛れるおそれがある称呼上類似する商標といわざるを得ないのである。
また、外観については、著しく異なるとまではいうこともできない。
エ 長音を含め3音からなる商標の事例
被請求人は、乙第17号証ないし同第21号証を示し、本件商標と引用商標とは非類似である旨主張する。
しかしながら、被請求人の示す事例は、本件のように、「ド」に長音が続く場合とは異なるものであるから、本件とは必ずしも同一に論ずることはできない。
これに対し、請求人は、2音又は3音構成からなるうち、中間において長音の有無に差異を有する商標が類似とされた審判決例を挙げることにより、本件商標と引用商標とが類似する商標であることの妥当性を裏付けることとする(甲第12?20号証)。
オ せっけん類等の分野における取引の実情
本件商標と引用商標とが使用されるせっけん類等の分野においては、登録商標の態様の如何にかかわらず、片仮名で表記されることが多い(参考資料1?6)。
本件商標「DAWN」は、格別に親しまれた語ともいえないから、これが正確に「ドーン」と称呼されるとは限らないことから、片仮名文字を付記したり、あるいは片仮名文字のみの使用も容易に想定されるところである。
そうすると、本件商標が片仮名表示で「ドーン」と使用された場合、引用商標「DON/ドン」とは、外観上の類似性とも相俟って、より一層その類似性は高まるものといわざるを得ない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標であり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであり、同法第46条第1項により無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第29号証を提出した。
(1)両商標から生じる称呼について
ア 本件商標は、その構成文字に相応して「ウルトラドーンフレッシュエスケープス」、「ドーン」、「フレッシュエスケープス」、「ウルトラドーン」、「ドーンフレッシュエスケープス」の称呼が生じるものである。
引用商標は、その構成文字に相応して「ドン」の称呼が生じるものである。
イ 請求人は、引用商標の称呼に関し、「片仮名文字『ドン』に対応する称呼は『ドン』であるが、ローマ文字『DON』に対応する称呼は、『ドン』であると共に『ドーン』とも称呼される。」と主張し、また、本件商標の称呼について、「場合によっては、『ドーン』であり、『ドン』であることも少なくない。」と主張する。
一般に、商標の称呼における類否を論じるに際しては、それぞれの商標から生じる最も自然な称呼に基づいて判断をしなければならないとするのが過去における判例及び審決の示すところである。
そのような観点から、本件商標中の「DAWN」及び引用商標中の「DON」をみると、いずれも英語による既成語であるため、英和辞書に掲載の発音記号を日本語(片仮名表記)に置き換えたものが最も自然な称呼とするのが妥当である。そして、「DAWN」の語の発音記号には長音を表す「:」が含まれており、「DON」の語の発音記号には長音を表す記号は全く含まれていない(乙第1、2号証)。
このことから、本件商標中の「DAWN」の語の自然の称呼は「ドーン」であり、引用商標中の「DON」の語の自然の称呼は「ドン」であるとするのが妥当である。
上記請求人の主張は、「ドーン」及び「ドン」のように短い称呼においては全体の称呼に対する影響が非常に大きい長音の有無を、類否判断以前の称呼の認定において根拠なく軽視又は無視するものであり、著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。
ウ 請求人は、本件商標中の「DAWN」の語が外来語辞典や新語辞典に掲載されていないことから、その称呼「ドーン」を明瞭に発音する取引者、需要者は少ないと主張する。
しかしながら、外来語辞典や新語辞典に掲載されていないことをもって、既成語である英単語が取引者、需要者に明瞭に称呼されないことの根拠とすることができないことは明らかである。むしろ、我が国における外国語、特に英語の普及度よりすれば、「DAWN」の語を顕著に有する本件商標は、これに接する取引者、需要者により「ドーン」と正確に称呼され、商取引に資されるとするのが相当である。
なお、請求人は、甲第7号証において、インターネットのYahoo!辞書により「ドン」と「ドーン」の語をそれぞれ検索した結果を基に、「どーん」が「どん」と同義に扱われており、「ドーン」の称呼に対応する語として「DAWN」がリストアップされていないことを指摘するが、本件審判において議論すべきは、本件商標中の英単語「DAWN」から生じる称呼と引用商標「DON/ドン」から生じる称呼であって、多様な意味を有する片仮名文字「ドーン」をインターネット辞書で検索した結果について議論するのは不適当といわざるを得ない。この点に関し、被請求人がYahoo!辞書により「DAWN」及び「DON」の両語を検索したところ、「DAWN」については長音を伴った発音記号が表示され、「DON」については長音を伴わない発音記号が表示された(乙第3、4号証)。さらに、学習やビジネスにおいて頻繁に使用されるインターネット辞書「SPACE ALC」によって前記2語を検索したところ、「DAWN」については長音を伴う「ドーン」の片仮名による発音が、「DON」については長音を伴わない「ダン、ドン」の片仮名による発音が明示されている(乙第5、6号証)。
以上のように、インターネット辞書検索の結果によっても「DAWN」は「ドーン」と発音されるのが自然であることが分かる。
エ したがって、本件商標から「ドン」の称呼が生じ、引用商標から「ドーン」の称呼が生じるとする請求人の主張は根拠がないものである。
(2)称呼の比較
本件商標から生じる「ドーン」の称呼と引用商標から生じる「ドン」の称呼を比較すると、称呼における識別上最も重要な要素を占める語頭音において、明瞭に称呼される有声破裂音「ド」の長音の有無という差異を有する。これにより、前者は滑らかにゆったりとした響きを持って称呼されるのに対し、後者は極めて簡潔に詰まった響きをもって称呼されるものである。これに加えて、両称呼はそれぞれ3音と2音という極めて短い音構成からなるため、前記の差異が称呼全体に及ぼす影響は極めて大きいものである。したがって、両称呼は互いに明瞭に聴別し得るものである。
ちなみに、本件商標及び引用商標とそれぞれ同一の称呼を生じる商標が互いに非類似であるとして同一又は類似の商品について併存して登録されている(乙第7?16号証)。また、過去の審決では、本件商標及び引用商標と同様に、語頭に破裂音を有する商標が互いに非類似と判断された事例がある(乙第17?21号証)。
なお、本件商標と引用商標の類似性に関し、請求人は、「『DAWN』の称呼『ドーン』は、『ドン』と同様に太鼓の音とか、大砲の音とかを連想し、『ドーン』と『ドン』は、聴別し難いばかりではなく、共通の印象をもって認識されるものであるといわなければならない。」と主張するが、この主張は、「DAWN」の語の称呼が「ドーン」であるとの前提に立ちながら、その称呼自体の連想から「太鼓の音・大砲の音」という「DAWN」の英単語とは全く無関係の意味合いを捻出し、その意味合いを共通にすることを理由に「ドン」の称呼にまで類似の範囲を拡大しようとするものであり、商標の類否判断は対比する商標の有する称呼・外観・観念の3要素を総合的に考察して行うとする審査の基準に反することは明白である。
また、本件商標から生じる「ウルトラドーンフレッシュエスケープス」、「フレッシュエスケープス」、「ウルトラドーン」、「ドーンフレッシュエスケープス」の称呼は、いずれも引用商標から生じる称呼「ドン」とはその音数及び音構成において顕著に相違するため、聞き誤るおそれがないことは明らかである。
以上のことから、本件商標と引用商標は、称呼において類似しないとするのが相当である。
(3)両商標の外観及び観念について
本件商標と引用商標は、それぞれの構成から外観において明瞭に区別できるものであるから、外観においても類似しないものである。
また、本件商標は、「DAWN」の文字から「夜明け、あけぼの」等の観念が生じるほか、「ULTRA」の文字から「極端な、過激な、過度な」等の観念が生じ、「Fresh Escapes」の文字から「新しい脱出、新鮮な回避」等の観念が生じるものであり、引用商標からは、「?様(スペインの敬称)、首領、?を着る、ドン(男子の名)」等の観念が生じるものであるから、両商標は、観念においても相紛れるおそれはない。
(4)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない商標である。
なお、請求人は、登録第4969510号商標及び本件商標が、審査の段階で引用商標を引用されて拒絶査定となったこと、及び商願2006-96999号商標が、審査で引用商標を引用した拒絶理由通知書を受けたことを指摘し、被請求人の商標と請求人の商標が併存登録されることについて、法的安定性が損なわれることが危倶される旨主張するが、被請求人は、登録第4969510号商標及び本件商標が引用商標と類似するとの査定には承服できず、拒絶査定不服審判の請求したところ、非類似の審決が下されたものである(乙第25、26号証)。そして、本件商標及び登録第4969510号商標の登録後、請求人は、これら商標登録に対して引用商標等に類似すること(商標法第4条第1項第11号)を根拠とする異議申立を行ったが、決定においては、本件商標及び登録第4969510号と引用商標とが非類似であると判断されたものである(乙第27、28号証)。したがって、拒絶査定不服審判や異議申立の制度の立法趣旨からすると、本件商標の審査段階で引用商標が引用されたという審査における判断と両商標が非類似とされた拒絶査定不服審判・異議申立における判断が異なることをもって法的安定性が損なわれるという請求人の主張には首肯できない。ちなみに、請求人は、本件商標の出願後、商標「DON」を本件商標の指定商品と同一又は類似の商品「せっけん類」等を指定して出願したところ、審査において本件商標とは非類似と判断され、登録第4618721号として登録されている(乙第29号証)。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とされるべきものではない。

5 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、かまぼこ形状風の図形内に、多数の突出部を放射状に配した図形を背景に「DAWN」の文字をきわめて大きく横書きし、該「DAWN」の文字を中心にして、上段に「ULTRA」の文字をきわめて小さく横書きし、さらに、下段に「Fresh Escapes」の文字を、「DAWN」の文字部分と異なる態様でやや小さく横書きしてなるものであるところ、その構成中の「DAWN」の文字部分は、上記のとおり、顕著に表されているばかりでなく、他の構成要素と結合して親しまれた意味合いが生ずるものではないから、本件商標に接する需要者は、該文字部分に着目し、これより生ずる称呼のみをもって商品の取引に当たる場合が多いとみるべきである。
ところで、「DAWN」の語は、乙第1号証、乙第3号証、乙第5号証及び甲第10号証によれば、「ドーン」と発音される場合の多い語(「ドーン」の発音のほか、「ダーン」と発音される場合もある。)であって、「夜明け、あけぼの」等を意味する英単語であることが認められる。そして、該文字は、例えば、研究社発行の「新英和中辞典」(甲第10号証)には中学学習程度の基本語約1000語、高校学習程度の基本語約1000語に次ぐ大学入試や大学教養程度の基本語約2000語の一つとされていることや三省堂発行の「デイリーコンサイス英和辞典」には重要な語約7000語より上の最重要な語約2000語である旨の表示がされていることからすれば、比較的知られている英単語ということもできるものであり、「ドーン」と発音されるものであるから、本件商標における該文字部分からは、その英単語の読みに相応した「ドーン」の称呼をもって自然な称呼というべきである。そして、上記レベルの単語にあっては、「夜明け、あけぼの」等を意味を理解させる場合もあるものの、特定の観念を想起させない造語を表したと理解される場合もあるというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は、前記2のとおり、「DON」の文字と「ドン」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、その構成中の「DON」の文字部分は、我が国では、「ドン」と発音され、「?様(スペインの敬称)、親分、首領」等を意味する語として一般によく知られているといえるから、下段に書された片仮名文字は、「DON」の片仮名表記と理解されるものである。
したがって、引用商標は、その構成文字全体から「ドン」の称呼が生ずるものであって、「?様(スペインの敬称)、親分、首領」などの観念を生ずるものといわなければならない。
(3)本件商標と引用商標の対比
ア 外観の類否について
本件商標は、別掲のとおり、図形と「DAWN」の文字等の組み合わせよりなるものであるのに対し、引用商標は、前記2のとおり、「DON」の文字と「ドン」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、両者の全体構成においては顕著な差異を有するものである。
また、本件商標から「DAWN」の欧文字部分のみを抽出して、これを引用商標の欧文字部分と比較したとしても、「DAWN」の欧文字と「DON」の欧文字とは、4文字あるいは3文字という、いずれも簡潔な構成からなるものであり、その中にあって、中間部分とはいえ、明らかに字形の異なる「AW」と「O」の文字の差異を有するものであるから、通常の注意力をもってすれば、両者の外観を見誤ることはないものというべきである。
してみると、本件商標と引用商標は、外観において大きく相違するものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上相紛れるおそれはないというべきである。
イ 称呼の類否について
本件商標より生ずる自然の称呼である「ドーン」の称呼が引用商標より生ずる「ドン」の称呼と類似するか否かについて検討するに、「ドーン」の称呼と「ドン」の称呼は、「ド」の音に長音を伴うか否かの差異を有するものであるところ、長音を伴う前者の称呼は、「ド」の母音「o」が1音分長く称呼され、かつ、「ン」の音がやや消え入るように称呼され、全体の称呼が聴者にゆったりとした語調、語感を与えるのに対し、長音を伴わない後者の称呼は、簡潔に、かつ、末尾の「ン」の音が明確に発音され、全体の称呼が聴者に歯切れの良い語調、語感を与えるものであるから、長音の有無の差異が両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標ということはできない。
ウ 観念の類否について
本件商標中、看者の注意を最も強く引く「DAWN」の文字部分は、前記(1)認定のとおり、特定の観念を想起させない造語を表したと理解されるか、若しくは、「夜明け、あけぼの」等の観念を生ずる場合もあると認められるところ、これを造語と理解した場合は、「?様(スペインの敬称)、親分、首領」などの観念を生ずる引用商標とは、観念上比較することができないものであり、また、本件商標中の「DAWN」の文字部分を日本語訳どおりに「夜明け、あけぼの」等の意味を理解した場合においては、引用商標とは、観念上大きく相違するものであって、いずれにしろ、本件商標と引用商標は、観念において互いに紛れるおそれはないものである。付言すれば、本件商標の構成全体を観察しても、引用商標と観念上相紛れるおそれがあるとすべき要素は見いだせない。
エ 以上によれば、本件商標と引用商標は、外観及び観念において大きく異なるばかりでなく、称呼においても互いに聞き誤るおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、「DAWN」の語は特に親しまれた英語ではなく、かつ、該綴り字からなる親しまれた類語もないような場合には、必ずしも、その発音記号どおりに発音されることはなく、長音記号が省略されて「ドン」と称呼される場合も少なくない旨述べている。
確かに、その構成中に「D」「A」「W」「N」の綴りを有する親しまれた類語は見当たらないとしても、これに類した綴り字の英単語としては、「lawn(芝生)」や「drawn(drawの過去分詞形)」等の例もあり、本件商標が高校において学習する基本語ないしは大学入試程度の語であることからすれば、我が国における英語の普及度からみて、長音記号がむやみに省略されるものとも考え難く、「DAWN」の語からは「ドーン」と称呼されるものとみるのが相当である。
そして、英語の知識が必ずしも十分でない者にあっても、これをローマ字風の読みにして、「ダウン」と称呼することはあり得ても、「ドン」と称呼することはないものというべきである。
イ 請求人は、せっけん類等の分野の取引の実情においては、登録商標の態様の如何にかかわらず、片仮名で表記されることが多いところ、本件商標が片仮名表示で使用された場合、引用商標とは、外観上の類似性とも相俟って、より一層その類似性は高まるものである旨主張する。
しかし、商標法第4条第1項第11号に該当するか否かの類否判断に当たっては、本件商標と引用商標のそれぞれ願書に記載した商標に基づいてされなければならない(商標法第27条)から、せっけん類等の分野において、商標の片仮名表記が多用されている実情にあるとしても、本件商標の構成態様に存在しない片仮名表示の態様をもって引用商標と対比観察する旨の請求人の主張は失当である。
ウ 請求人は、2音又は3音構成からなるうち、中間において長音の有無に差異を有する商標が類似とされた審決例を挙げ、本件商標と引用商標とが類似する商標である旨主張する。
しかし、商標法第4条第1項第11号の規定による商標の類否の判断は、指定商品又は指定役務の取引の実情を考慮して、当該商標ごとに各構成態様に基づき、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人が挙げている審決例で争われているのは、いずれも、文字同士の類否を争ったものであり、しかも、その文字構成も本件とは態様を異にするものであるから、直ちに、本件商標と引用商標との類否の判断の参考とすることはできない。
エ してみれば、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
本件商標(色彩の詳細は原本参照)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

審理終結日 2008-06-11 
結審通知日 2008-06-16 
審決日 2008-06-27 
出願番号 商願2001-58146(T2001-58146) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (Z03)
T 1 11・ 262- Y (Z03)
T 1 11・ 261- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡口 忠次荻野 瑞樹 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 酒井 福造
佐藤 達夫
登録日 2006-08-18 
登録番号 商標登録第4979864号(T4979864) 
商標の称呼 ウルトラドーンフレッシュエスケープス、ウルトラドーン、ドーン、フレッシュエスケープス、ドーンフレッシュエスケープス 
代理人 萼 経夫 
代理人 宮城 和浩 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 吉武 賢次 
代理人 塩谷 信 
代理人 宮嶋 学 
代理人 舘石 光雄 

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