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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
管理番号 1182674 
審判番号 無効2006-89151 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-18 
確定日 2008-07-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4688590号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4688590号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4688590号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAPLE LEAF PARMA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成14年5月24日に登録出願、第29類「イタリア風味の肉製品」を指定商品として、同15年7月4日に設定登録されたものである。
その後、指定商品については、登録異議の申立てにより、「指定商品中『イタリア国パルマ地方産の生ハム以外の商品』についての登録を取り消す。本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての登録を維持する。」旨の決定がなされ、その確定の登録が同18年2月24日になされたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4388216号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成11年5月31日に登録出願され、第29類「ハム」を指定商品として、同12年6月2日に設定登録されたものである。
同じく、登録第4584290号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成13年9月20日に登録出願され、第29類「イタリア国パルマ地方産のハム」を指定商品として、同14年7月5日に設定登録されたものである。
以下、まとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第259号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号、同第16号及び同法第3条第1項柱書きに違反し登録されたものであるから、その登録は同法第46条の規定により、無効とされるべきものである。
2 請求人に係る生ハムの著名性
(1)パルマハム
請求人及びその構成員が製造・販売するハム(以下「パルマハム」という。)は、イタリア北部中央のポー河を北の境とするエミリア・ロマーニャ州パルマ地方南部の丘陵地帯でのみ生産されるハムであり、世界3大生ハムの一つ(パルマハム、ハモンセラーノ、金華ハム)として世界的に知られている。このハム加工の歴史は古く、紀元前5世紀には塩漬けの豚もも肉の交易が行われ、パルマ地方の人々は、パルマ独特の環境を利用して2000年以上前からパルマハムの生産を続けている(甲第7号証、甲第9号証ないし甲第14号証)。
(2)請求人とパルマハム
1963年には、パルマハムの品質とイメージを護る目的で、23の生産者たちにより「パルマハム」の生産過程と最終的品質を管理する請求人「コンソルツィオ デル プロッシュット ディ パルマ」(以下「パルマハム協会」という。)が設立された(甲第9号証)。パルマハム協会は、その後、イタリア国内外の需要が増加し、現在では約200の会員を要している(甲第15号証)。
パルマハム協会は、伝統的生産方法と品質水準を厳格に守り、その結果、1970年にイタリアにおいて「パルマハム保護法」が成立し、1996年にはEUの法律によって、原産地保護表示(DOP)製品として認定されるに至った。これにより、原料豚の飼育方法、製造地域、成熟期間、製品特徴、製造方法などが厳格に定められ、この基準を満たさないハムに「パルマ」や「パルマハム」などの表示を付すことが禁じられた(甲第247号証中、平成11年9月3日付け手続補正書添付の「パルマハム原産地名称保護法」)。
また、1998年1月には「生産過程や品質を検査する任務は分離されなければならない」という法律が制定され、これにより製品を検査、認証する「パルマ品質協会」がパルマハム協会から独立した監督機関となり、ますます厳しい管理体制のもとでパルマハムの生産が行われるようになった。したがって、ハムについての「パルマ(PARMA)」の表示は、パルマ地方産という単なる原産地表示にとどまらず、事実上、請求人とその構成員の「一定の出所」を示す標章となっている。請求人の商標に自他商品識別力を認め登録をしている国も数多い(甲第16号証)。また、商標法第2条第1項第1号が示すとおり、我が国の商標の概念には、いわゆる「証明商標」も含んでいるが、請求人の商標「PARMA」は、まさに、「証明商標」の側面を濃厚に有している商標である。
パルマハムの生産業界は、2001年末の時点で、189のメーカー(総従業員は約3,000名)、5,485の養豚業者、196の屠殺場、そして生産過程と最終的品質を管理する「パルマハム協会」(請求人)と「パルマ品質協会」で構成されている。2001年度のパルマハム総生産量は902万本(イタリアで生産される生ハム全体の約40%)、生産者総出荷額は7.7億ユーロ(約880億円)であった(甲第10号証、甲第14号証及び甲第15号証)。
(3)我が国におけるパルマハムの著名性
上記のとおり、2000年前から作られているパルマハムは世界3大生ハムの一つとして世界中で著名であり、もちろん我が国においても古くからその名は知られている。
そして、1982年に我が国において生ハムの製造と販売が認可され、1996年にはパルマハムの輸入が解禁されたことにより、「パルマハム」はさらにその知名度を伸ばした。
パルマハムの我が国への輸出量について、1996年から2002年までを例にとると、その伸びには著しいものがある(甲第26号証ないし甲第30号証)。
2002年においては、日本へのパルマハムの輸出量は世界で第5位であり、非ヨーロッパ諸国の中ではアメリカに次いで第2位の輸出相手国であった(甲第31号証)。
パルマハムが、我が国において著名であることは、ここ数年に限っても100を優に超える我が国の新聞記事・雑誌記事・テレビ番組等が請求人のパルマハムを取り上げていることからも明らかである(甲第32号証ないし甲第221号証)。
2000年には、我が国におけるさらなる販売の飛躍を期して、「パルマハム・インフォメーションセンター」が設立され、現在に至るまで我が国における販売促進活動が活発に行われている(甲第222号証ないし甲第244号証)。
2003年3月に、過去6ヶ月にパルマハムを買った人300人を対象に行った調査(東京及び大阪近郊)によると、外国産生ハムの中ではパルマハムの認知度が最も高く(70.9%)、49.2%の人が最高級品の生ハムと認識しているとの結果が出た(甲第245号証)。
以上のことからも、「パルマハム」は、我が国において本件商標の出願日である2002年5月24日には既に我が国において請求人ないしその構成員を表示する著名商標となっていたことは明らかである。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標及び商品の類似性
本件商標は、「MAPLE」、「LEAF」及び「PARMA」の文字をそれぞれ結合させた「MAPLE LEAF PARMA」の欧文字を横書きした構成からなる商標である。
「MAPLE LEAF」の語は、「カエデの葉」を意味し、カナダ国旗の標章であると同時に、商標権者の商号の一部でもある。そして、本件商標は、全体で10音という長い称呼を有し、各文字がスペースによって明確に区切られていることから見ると、本件商標からは、「メープルリーフパルマ」の称呼の他、「メイプルリーフ」及び「パルマ」の称呼がそれぞれ生じる。
一方、請求人が所有する引用商標は、別掲のとおりの構成であるところ、それぞれ最も大きな書体で「PARMA」の文字がその図形中に書されており、当然に「パルマ」の称呼が生じる。また、引用商標2の下段部分に書された欧文字「PROSCIUTTO DI PARMA」のうち、「PROSCIUTTO」はイタリア語で「ハム」を意味する言葉であり、「DI」は所有を示す「の」などを意味する前置詞であるから、「PARMA」の文字部分が単独で要部となり、当該部分からも「パルマ」の称呼が生じる。
したがって、本件商標と引用商標は、「パルマ」の称呼を共通にする類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)異議の決定の認定について
この点に関し、平成17年8月25日付け異議の決定は「構成中後半の『PARMA』の文字部分は、イタリア国の地名を表したものと理解させるに止まり、これ以上に独立して自他商品識別標識として機能するような格別の事情は認められない。してみれば、本件商標からは、単に『パルマ』の称呼を生じるものとはいえないから、これを前提に本件商標と引用A商標及び引用B商標との類似を述べる申立人の主張は採用できない。」と認定している。
しかしながら、紀元前から続き、世界3大生ハムとして親しまれ、かつすべてのヨーロッパの国において他の者の使用が禁じられている「パルマ(PARMA)」の表示は、商品「生ハム」に関しては超長期的な使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができるもの、すなわち、一定の出所を表示する「商標」になっているものである。
したがって、生ハムに「PARMA」の文字が付されていた場合には、これを見た需要者は、イタリアパルマ地方で生産されかつ請求人の生産方法・検査を経た「パルマハム」であることを認識するものであるから、「PARMA」の文字は、それ自体で充分に出所表示機能を有しているものである。
(3)パルマ地方について
このことは、イタリアのパルマが非常に小さな町であり、同地名が我が国で知られているのは、請求人監督下の「パルマハム」や「パルメジャーノ・レッジャーノ(パルメザンチーズ)」に起因するところが大きいことからも明らかである。
パルマは、イタリア共和国エミリア・ロマーニャ州にある、首都から離れた町であるが、「パルマ」という名前が知られているのは、原産地保護表示(DOP)であるパルメジャーノ・レッジャーノ(パルメザンチーズ)や本件のパルマハムが、その超長期間の使用と秀逸な品質が世界中に浸透していることによるところが大きい。すなわち、「生ハム」に「PARMA/パルマ」という文字を使用すれば、需要者・取引者は、「PARMA/パルマ」はイタリア国の一地方の名前というよりも、請求人の監督下にある「パルマハム」であると想起するのが自然である。
このことは、インターネット検索エンジンgoogleにおいて、「パルマ」及び「生ハム」を検索キーワードにした時の検索結果で、そのほとんどが請求人の監督下にあるパルマハムに関してのウェブサイトであったことからも明らかである。当然、「PARMA(パルマ)」という文字を商標として使用しているものは一件もなかった。
すなわち、少なくとも「生ハム」に関しては「PARMA(パルマ)」は、請求人の監督下にある生ハムを指称する商標として市場において機能しており、かつ、その著名性も疑いようがない。また、「生ハム」に「PARMA」という文字が使用されていれば、需要者・取引者は、その商品はイタリアの地名ではなく、請求人の監督下にある生ハムであることを認識することは間違いない。
そうとすると、「その構成中の『PARMA』の文字自体がイタリア国の一地名と理解される以上に、これが独立して特定業者の取り扱いに係る商品の出所標識として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものとはにわかに認め難い」という異議の決定の指摘は、事実の認定を誤ったものと考えられる。
(4)まとめ
しかして、本件商標「MAPLE LEAF PARMA」中の「PARMA」の部分も引用商標中の「PARMA」の文字部分も、それぞれその指定商品に関して当然に自他商品識別力を有する要部となり、「パルマ」単独の称呼も生じうるものであるから、両商標は、称呼上明らかに類似する商標である。
異議の決定は、「その他の要素(五つ星の王冠図形、MAPLE LEAFの文字)の相違において、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない」と述べているが、引用商標は、それぞれ最も大きな書体で「PARMA」の文字が書されており、需要者に強く認識されるのは「PARMA」の文字であること、本件商標「MAPLE LEAF PARMA」は、全体としては冗長であり、「PARMA」の文字が商標の独立した要部と認識される場合があることに鑑みれば、外観、称呼及び観念等を総合勘案しても、本件商標と引用商標は、類似する商標であるといわざるを得ない。
4 商標法第4条第1項第10号について
(1)上述のとおり、請求人ないしその構成員が使用する「PARMA」商標は、2000年前から続く生産及び近年行われている大々的な営業活動・雑誌紹介・新聞報道及びテレビ放映などにより、本件商標登録出願時である平成14年5月24日には既に請求人の製造販売に係る商品「ハム」を表示するものとして需要者の間で広く認識されており、本件商標「MAPLE LEAF PARMA」は、この請求人の商標と類似の商標である。また、本件商標に係る指定商品は、まさに請求人にかかる商品「イタリア国パルマ地方産の生ハム」である。
この主張に対しては、「PARMA」は地名であるから、誰でも使用できるはずであるとの反論が予想される。しかし、前述のとおり、「PARMA」は地名ではあるが、こと「生ハム」に関しては、その長い歴史と管理により、一定の出所(請求人)を示す標識(商標)として認識されるようになっているという事実があり、その事実に基づく限り、出所の混同が生じ得るのである。
(2)異議の決定
平成17年8月25日付け異議の決定は、「申立人の業務に係る商品『イタリア国パルマ地方産の生ハム』に使用される標章、すなわち、別掲のとおり、顕著に描かれた王冠を模した図形内に普通に用いられる書体で『PARMA』の文字を配してなる標章については、その周知・著名性を認め得るとしても、申立人提出に係る証拠によって、その構成中の『PARMA』の文字自体がイタリア国の一地名と理解される以上に、これが独立して特定業者の取扱にかかる商品の出所標識として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものとはにわかに認め難いものである。」と認定している。
上記異議の決定は、「PARMA」の文字を書した王冠図形に関しては周知・著名性を認めた上で、「PARMA」の文字自体は商品の出所標識として広く認識されていないと認定している。しかしながら、こと生ハムに関しては王冠図形よりもむしろ「PARMA」という文字自体のほうが周知・著名である。
すなわち、市場においては「PARMA(パルマ)」という言葉自体が商品の出所を示す識別標識として知られている。王冠図形は、需要者・取引者が本物のパルマハムかどうかを確認するためのいわば補助的な機能を有しているものであり、「PARMA(パルマ)」という言葉自体のほうがはるかに著名である。
このことは、上述のとおり「パルマ」及び「ハム」を検索キーワードとした場合の検索結果について、その数及びそのほとんどが請求人の監督下にある生ハムに関するものであったことからも明らかである。
また、「パルマハム・インフォメーションセンター」という名前の組織も設立され(甲第65号証等)、請求人は日本では「パルマハム協会」と呼ばれており(甲第9号証、同第10号証等)、学術論文でも「パルマハム」として紹介され(甲第18号証ないし甲第25号証)、その他数多くの新聞、雑誌においても、「パルマハム」、「パルマ生ハム」、「プロシュート・ディ・パルマ」などと紹介されている(甲第32号証ないし甲第219号証)。これらはすべて王冠図形ではなく、文字として書され、認識されているものである。
2003年の調査で都市在住の成人7割以上に認知されるまでに至ったといわれる「パルマハム」において(甲第245号証)、「PARMA(パルマ)」の文字自体は商品の出所標識として広く認識されていないという判断は、市場の実情を無視した誤った理解に基づく判断といわざるを得ない。
(3)まとめ
「広く認識されているのは『PARMA(パルマ)』ではなく『パルマハム』や『パルマ生ハム』である」などといった反論も予想できるが、「ハム」や「生ハム」といった言葉が商品の普通名称である以上、「PARMA(パルマ)」の文字単独でも充分に自他商品識別標識として機能しており、「PARMA(パルマ)」単独でも請求人監督下にある生ハムを指称する商標として広く認識されているといわざるを得ない。したがって、本件商標「MAPLE LEAF PARMA」と、他人である請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標は類似の商標であり、かつその商品及びその類似商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当することが明らかであり、本件商標はこれに違反して登録されたものである。
5 商標法第4条第1項第15号及び同第19号について
さらに、商標権者が、本件商標をその指定商品「イタリア国パルマ地方産の生ハム」に使用したときは、その商品は請求人ないしその構成員の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
すなわち、請求人とは何ら関係のない本件商標権者が、「PARMA」の文字を冠した「イタリア国パルマ地方産の生ハム」を販売する行為は、請求人やその構成員が長年にわたる努力により培ってきた業務上の信用を利用する行為にほかならず、まさに請求人及びその構成員の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある行為といわざるを得ない。
特に、現在の権利状況においては、単にパルマ地方で製造しただけの普通の生ハムを日本に輸入し、輸入後に本件商標「MAPLE LEAF PARMA」という商標を付すことも法律上可能となる。仮にこのようなことを許せば、需要者・取引者はパルマハムの特徴を有していないハムを本物の「パルマハム」と勘違いしてしまい、いわゆる「パルマハム」に対して低い評価を下すことになる。そのような事態を法律上容認することとなれば、超長期間にわたり厳格な統制によって築いてきた請求人の信用を崩壊させ、請求人が莫大な損害を被ることとなる。また、パルマハムと誤認してしまった需要者の信用を裏切ることにもなり、商標法上看過できない事態が生じるといわざるを得ない。
上述のとおり、請求人監督下にあるパルマハムは、長い歴史、厳しい管理、整備された法律の存在など、特別な事情が多く存在する。現在の市場では、「PARMA」という文字が商標として使用されている商品であれば、これまで請求人が述べてきた請求人の監督下にある「パルマハム」特有の品質が期待できる状況にある。このような商標を保護することこそ商標法が目的とするところである。本件商標のように「PARMA」と他の語を結合させれば登録が可能という状況を許せば、将来的にも、法律の抜け穴を利用し、請求人が築いてきた信用を利用した商売をも可能とさせてしまう。パルマ地方で製造されたが「パルマハム」でない生ハムに関しては、商品裏面に「パルマ産」などと表記すれば特段の不利益はないのであり、その意味でも「PARMA(パルマ)」という言葉を商標法において保護する必要性は高い。
以上詳述したとおり、本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標である。また、請求人が築いてきた信用にただ乗りする商標でもある。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるといわざるを得ない。
6 商標法第4条第1項第16号について
上述のとおり、パルマ産の生ハムは、パルマ地方が有する特殊な気候、自然環境のもと、パルマ特産のパルメザン・チーズの乳奨を飼料として与えられた豚を原料として、厳格な生産工程によって生産される。すなわち、パルマハムは、パルマ地方独特の土地、風土、自然環境、文化などと密接に結びついて生産されるものであり、パルマ地方以外では生産することが不可能なハムである。
同じパルマ地方で生産されたハムでさえ、パルマハムすなわち請求人の監督下にあるハムとは厳然とした味や品質、安全性などの違いが生じてしまうという現状において、請求人と何らの関係もない商標権者が、需要者が「パルマハム」として期待するハムを作ることは不可能である。
そうとすれば、原産地保護表示(DOP)製品として、基準を満たさないハムに「パルマ」や「パルマハム」などの表示を付すことが禁じられている現状に鑑みると(甲第247号証)、商標の一部として「PARMA」の文字が使用された本件商標に接した需要者は、それを「パルマハム」すなわち請求人の監督下にある生ハムと期待するであろうし、そうとすれば、商品の品質につき誤認を生じてしまうことは疑う余地がない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
7 商標法第3条第1項柱書について
本件商標に係る指定商品は、平成15年10月6日付け異議申立により、「イタリア風味の肉製品、ただし、イタリア国パルマ地方産の生ハム以外の商品を除く」となった。
しかしながら、商標権者は、査定時において、同指定商品について本件商標を使用する意思を有していなかったため、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せずに登録されたものである。
すなわち、本件商標権者は、本件商標の審査段階において、平成15年4月23日付け意見書を提出し、「出願人はイタリアで肉製品を生産していない」とし、「イタリアにおける調理方法や加工等の特徴を生かして世界中で生産する」と自白している(甲第246号証)。してみれば、商標権者は、イタリア国パルマ地方で生ハムを生産する意思は当初から有していなかったのであるから、本件商標を指定商品「イタリア風味の肉製品、ただし、イタリア国パルマ地方産の生ハム以外の商品を除く」に使用する意思はなかった。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないにも関わらず登録されたものである。
8 結語
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号、同第16号及び同法第3条第1項柱書きに違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条により無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 請求人は、本件商標は商標法第3条第1項柱書きに違反し登録されたものであると主張し、その理由を次のとおり述べている。
本件商標に係る指定商品は、平成15年10月6日付け異議の申立てにより、「イタリア風味の肉製品、ただし、イタリア国パルマ地方産の生ハム以外の商品を除く」となった。しかしながら、商標権者は、査定時において、同指定商品について本件商標を使用する意思を有していなかったため、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備せずに登録されたものである。すなわち、本件商標権者は、本件商標の審査段階において、平成15年4月23日付け意見書を提出し、「出願人はイタリアで肉製品を生産していない」とし、「イタリアにおける調理方法や加工等の特徴を生かして世界中で生産する」と自白している(甲第246号証)。
してみれば、商標権者は、イタリア国パルマ地方で生ハムを生産する意思は当初から有していなかったのであるから、本件商標を指定商品「イタリア風味の肉製品、ただし、イタリア国パルマ地方産の生ハム以外の商品を除く」に使用する意思はなかった。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないにも関わらず登録されたものである。
2 請求人の前記の主張について、審尋により被請求人に意見を求めたが、何ら述べるところがない。
3 そうとすると、請求人の主張する他の理由について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないにも関わらず登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標1


(2)引用商標2



審理終結日 2008-03-05 
結審通知日 2008-03-07 
審決日 2008-03-18 
出願番号 商願2002-42835(T2002-42835) 
審決分類 T 1 11・ 18- Z (Y29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 岩崎 良子
伊藤 三男
登録日 2003-07-04 
登録番号 商標登録第4688590号(T4688590) 
商標の称呼 メープルリーフパルマ、メープルリーフパーマ、メープルリーフ 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 松尾 和子 
代理人 藤倉 大作 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 

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