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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y30
管理番号 1182591 
審判番号 無効2007-890141 
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-20 
確定日 2008-07-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5025593号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5025593号商標(以下「本件商標」という。)は、「ホームランドッグ」の片仮名文字と「HOMERUN DOG」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成18年5月23日に登録出願、第30類「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」を指定商品として、同19年2月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1)登録第1646149商標(以下、「引用商標1」という。)は、「ホームランバー」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和53年4月20日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年12月26日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらにその後、第30類「菓子及びパン」を指定商品とする書換登録が平成16年7月21日になされているものである。
(2)登録第4957687商標(以下、「引用商標2」という。)は、「ホームラン」の片仮名文字と「HOME RUN」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成17年5月26日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと」を指定商品として、同18年6月2日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第56号証を提出した。
1 理由の概要及び利害関係について
本件商標は、引用商標1及び引用商標2と称呼及び観念において類似し、指定商品は同一であるため、商標法第4条第1項第11号に該当する。また仮に前記規定に該当しないとしても、引用商標1又は引用商標2が周知著名であることから、狭義又は広義の出所の混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
なお、請求人は、本件商標と類似する引用商標1及び引用商標2の商標権者であり、その指定商品に係る商品の製造及び販売を行っており、本件商標の商標権者がその指定商品に本件商標を使用することによって、請求人の商品との間で出所の混同が生じるおそれがあるため、本件商標の登録を無効にすることにつき十分な利害関係を有する。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号によってその登録を無効にされるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標「ホームランドッグ/HOMERUN DOG」を検討すると、「ホームラン/HOMERUN」及び「ドッグ/DOG」の語がそれぞれ我が国で一般に親しまれていることから、当該商標が、「ホームラン/HOMERUN」の語と「ドッグ/DOG」の語とが結合されてなることは明らかである。
そして、各構成語を検討すると、「ホームラン/HOMERUN」の語は、「野球で、本塁打のこと」の意味合いを有する。また、「ドッグ/DOG」の語は、「犬」という意味合いが一般的に広く知られている他、「ホットドッグの略」という意味合いを有する(甲第7号証)。
この「ドッグ/DOG」の語は、以下に説明するように、本件商標に係る指定商品の分野においては単なる商品の形状を表示するにすぎず、自他商品識別力がないか極めて弱い語といえる。
そもそも「ホットドッグ」とは、細長いパンに切れ目を入れて熱いソーセージを挟んだ食べ物をいい、英語本来の意味では、パンの中に挟まれたソーセージ自体を指す。しかし、我が国では細長いパンに何らかの具材(ソーセージに限られない。)を挟んだ食べ物を総括的に「ホットドッグ」とし、その具材名の後ろに「ドッグ」の語を結合させて称する事実が多く見られる。
例えば、個人が編集した記事であるが、インターネットサイトのフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」にも、「日本においてはその中身よりもパンにソーセージを挟むというスタイルそのものが注目されたため、ドッグバンを用いたサンドイッチであれば中身がソーセージでなくとも『?ドッグ』と呼ばれる例がしばしば見られる。」という記載がある(甲第8号証)。なお、ホットドッグ用の細長いパンを、一般的に「ドッグバン」又は「ドッグパン」という。
「?ドッグ」の代表的な用例としては、チリビーンズ等の辛い具材をパンに挟んだ「チリドッグ」や、小麦粉生地の中にチーズが入った「チーズドッグ」、ソーセージの周りに小麦粉生地を付けて揚げた「アメリカンドッグ」等がある。
この他、各種レシピが掲載されているサイトで「ドッグ」の語を検索すると(甲第9号証及び甲第10号証)、
(a)生いちごドッグ…ロールパンに生クリームと苺を挟んだもの
(b)餃子ドッグ…餃子の具を厚い餃子の皮でくるんで蒸したもの
(c)プチドッグ…一口サイズのアメリカンドッグ
(d)じゃが芋ドッグ…じゃが芋が中に入ったアメリカンドッグ
(e)ベーコンエッグドッグ…ロールパンにベーコンと卵を挟んだもの
(f)カレーポテトコロッケドッグ…パンにカレー味のコロッケを挟んだもの
(g)肉ゴボウドッグ…妙めた牛肉とごばうをパンに挟んだもの等、この他「?ドッグ」と名付けられたレシピが多数紹介されている。
いずれのレシピにも共通するのが、当該レシピによる料理が、パン又はパン状の食材に、何らかの具材を挟んだり混ぜたりして、手軽に口に運ぶことができる形状をした食べ物(いわゆるファーストフード)であることである。
また、米国においても、メジャリーグ各球団のスタジアムでは、「ドジャー・ドッグ」(ドジャー・スタジアム)や「スーパースター・ドッグ」(ミニッツメイド・パーク)、「マリナー・ドッグ」(セーフコ・フィールド)等と名付けられたホットドッグが販売されており、観光用ガイドブックにも掲載されて、野球ファン以外にも親しまれている各地の名物となっている。
これらは、「ドジャー・ホットドッグ」や「ドジャー・スタジアムのホットドッグ」とわざわざ説明を付するまでもなく、「ドジャー・ドッグ」という名称だけで、ホットドッグであることを容易に理解することができる。
このように、「ドッグ」の語を食品分野に属する指定商品に用いた場合、需要者は、それがホットドッグであるか、又は、ホットドッグのように手軽に口に運ぶことができる形状をした食べ物であることを容易に想起することができる。つまり、「ドッグ」の語は、単に商品の形状を表示するにすぎず、自他商品識別力がなく商標の要部とならないと判断できる。
これは、特許庁の過去の審査における判断にも顕著に表れている事実である。それを証明するために、「ドッグ」、「DOG」又は「ドック」の語(以下、「『ドッグ』等の語」という。)を含む商標で、食品分野で「識別力がない」と判断されたもの69件を抽出した(甲第11号証)。
これらは、
A.形状を表示する語に「ドッグ」等の語が結合した商標:24件
(例えば、クレープドック、ライスドッグ、小篭包ドッグ等)
B.地名や形容詞化された地名に「ドッグ」等の語が結合した商標:23件
(例えば、仙台ドッグ、中華風ドッグ、イタリアンドッグ等)
C.具材名に「ドッグ」等の語が結合した商標:17件
(例えば、チリドッグ、ミルキードッグ、チョコドック等)
D.品質を表示する語に「ドッグ」等の語が結合した商標:8件
(例えば、朝食ドッグ、ダイエットドッグ、ランチドッグ等)
のように細分化される。(なお、二つ以上のカテゴリーに属する商標があるため、A.?D.の合計は69件を超える。)
しかし、A.?D.に分類された商標は、いずれも、商品の産地や品質を表示する自他商品識別力のない語と「ドッグ」等の語との結合である。つまり、A.?D.の商標が全体として自他商品識別力がないと判断されたということは、「ドッグ」の語が自他商品識別力のない語であると判断されたということにほかならない。
以上のことから、本件商標の構成中、「ドッグ/DOG」の語は自他商品識別力がなく、需要者は、その構成中「ホームラン/HOMERUN」の部分にのみ着目して、商標全体として「ホームラン」の称呼及び観念をもって取引に資すると考えられる。
(2)引用商標1及び引用商標2について
引用商標1「ホームランバー」は、「ホームラン」の語と「バー」の語とが結合されてなる。しかし両者は、結合することで独立した一つの語を形成しているものとは認められず、「ホームランバー」を不可分一体のものとすべき特別の関係にはならない。
このうち「バー」の語は、「棒状をした菓子」の意味合いを有するものとして親しまれている英語で、単に商品の形状を表示するにすぎず、自他商品識別力がなく商標の要部とならない。
例えば、商標顕著性事典を用いて「バー」又は「bar」の語を検索した結果(甲第12号証)によると、「バー」の文字は、多くの事案において「棒状をした菓子」の意味合いを有する、単に商品の形状を表示したにすぎない語であって、自他商品識別力がなく商標の要部とならないと判断されている。
また、インターネット検索サイト「Google」で、「バー」を省略した「ホームランアイス」の語を検索すると、763件(重複したサイトを排除した有効な件数は285件)もがヒットする(甲第13号証)。
なお、「ホームランバー」から「バー」を省略した「ホームラン」の語のみを検索した場合、アイスクリーム製品と関連のないページ(具体的には野球に関連するページ)ばかりがヒットすることが予想されるため、商品名「アイス」を結合させた「ホームランアイス」の語で検索した。また、請求人の関連ページを除くために、「協同乳業」、「名糖」及び「メイト」の語を除外して検索した。
このうち1?50件目の内容は、1件だけが「ホームランアイス」の語をハンドルネームとして用いているのみで、その他49件は明らかに請求人のアイスクリーム製品「ホームランバー」を略して「ホームランアイス」と称している事例である。
以上のことから、引用商標1の構成中「バー」の部分は、「ホームラン」部分とは分離して認識され、自他商品識別力を有しない語であるといわざるを得ない。そして、自他商品の識別標識としての機能を果たす主要部は、「ホームラン」の部分にあるとするのが相当である。
してみると、引用商標1からは単に「ホームラン」の称呼及び観念が生ずるといえる。
また、引用商標2は、「ホームラン」の片仮名文字を上段に、「HOME RUN」の欧文字を下段に配して二段併記してなるところ、商標全体として「ホームラン」の称呼及び観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否
本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼及び観念において類似する。
また、本件商標の指定商品中「菓子及びパン」は、引用商標1及び引用商標2の指定商品に、又、指定商品中「サンドイッチ,ハンバーガー,ビザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」は、引用商標2の指定商品に含まれており、明らかに同一である。
よって、本件商標は、先願先登録商標である引用商標1及び引用商標2と明らかに類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
引用商標1「ホームランバー」又は引用商標2「ホームラン/HOME RUN」は、請求人の製造及び販売に係るアイスクリーム製品の商標として周知著名であることから、アイスクリーム製品と産業部門を同じくする食品分野に本件商標「ホームランドッグ/HOMERUN DOG」が使用されたときは、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるといえる。
(1)引用商標1及び引用商標2の周知著名性について
引用商標1「ホームランバー」又は引用商標2 「ホームラン/HOME RUN」は、請求人によって長年にわたり使用された結果、周知著名性を獲得するに至っている(甲第14号証ないし甲第41号証)。
甲第14号証は、昭和35年の「ホームランシリーズ」特売告知用チラシで、甲第15号証は、昭和36年の「ホームランシリーズ」特売告知用チラシである。当時は、棒状のアイスクリーム「名糖アイスクリームバー」を「ホームランシリーズ」と称して販売している。ただし、昭和36年の特売告知用チラシには、アイスクリームバーの包装用紙に「名糖ホームラン」の文字が付されているのを見てとることができる。
甲第16号証は、昭和36年6月11日付の毎日小学生新聞で、「ホームランシリーズ」の広告が全面に掲載されている。また、アイスクリームのスティックには、「ホームラン賞」の焼印が表示されている。
甲第17号証は、昭和38年の名糖(請求人のハウスマーク)アイスクリームのパンフレットで、商品「ホームランシリーズ」が紹介されている。
甲第18号証は、昭和41年の「ホームラン'66シリーズ」のポスターで、甲第19号証は、昭和42年の「ホームラントリオ」のポスターである。
甲第19号証では、前記した「名糖アイスクリームバー ホームランシリーズ」が「ホームランバー」という商品名に変わって販売されている。
また、「ホームランバー」の他、「赤カップ、青カップ」及び「オスパー」という3種類のアイスクリームを総括した「ホームラントリオ」が販売される。スティックには、「満塁ホームラン」や「場外ホームラン」の焼印が表示され、「赤カップ、青カップ」の上蓋の裏面にも「場外ホームラン」の文字が印刷されている。
甲第20号証は、昭和42年の名糖アイスクリーム販売要項で、「例年御好評をいただいているホームランシリーズ」として「ホームラントリオ」が紹介されている。
甲第21号証は、昭和43年の名糖アイスクリーム販売要項で、当時の人気アニメ「マッハGoGoGo」とタイアップした「ホームランバー」のキャンペーンが紹介されている。
甲第22号証は、昭和51(1976)年の名糖アイスクリーム製品紹介のパンフレット、甲第23号証は、昭和52(1977)年の名糖アイスクリーム製品ガイドのパンフレットで、どちらのパンフレットにも、他の製品よりも注意を惹く態様で「ホームランバー」が紹介されている。
このように、他の製品に比して「ホームランバー」が目立つ態様で紹介され、更に「手ごたえあればもう1本!」等のコメントも付されていることから、名糖アイスクリームの中でも「ホームランバー」が主力製品として位置づけられていることがわかる。なお、ここではアイスクリームバーの包装用紙に「ホームランバー」の文字が付されている。
甲第24号証は、昭和52年の請求人の会社案内、甲第25号証は、昭和61(1986)年の名糖アイスクリーム商品一覧表で、どちらにも商品「ホームランバー」が紹介されている。
甲第26号証は、昭和63(1988)年の名糖アイスクリーム秋冬季商品ガイド、甲第27号証は、平成4(1992)年のメイトー アイスクリーム秋冬季商品ガイド、甲第28号証は、平成9(19997)年のメイトーアイスクリーム秋冬季商品ガイドで、いずれのパンフレットにも商品「ホームランバー」の10本入りパックが紹介されている。
甲第29号証は、平成17(2005)年のメイトーアイスクリーム秋冬ガイド、甲第30号証は、平成18(2006)年のメイトーアイスクリーム秋冬ガイド、甲第31号証は、平成19(2007)年のメイトーアイスクリーム春夏ガイドで、いずれのパンフレットにも、表紙を開いた最初のページに商品「ホームランバー」(10本入りパック)が紹介されている。また、商品の横には「ホームランバーの歴史」や「ホームランバーのオリジナルサイト」が紹介されている。
甲第32号証は、現在の請求人の会社案内で、4頁には商品「ホームランバー」が紹介され、5頁には「昭和30年3月/日本発の『アイスクリームバー』を生産開始し、『ホームランバー』が大ヒットしました。」と記載されている。
甲第33号証は、請求人の現在のインターネットホームページのトップページ、甲第34号証は、ホームランバーのオリジナルサイトの商品一覧のペ一ジである。これにより、現在もなお商品「ホームランバー」が同社の主力製品の一つとして位置づけられていることがわかる。
甲第35号証は、請求人の会社10年史の一部抜粋で、昭和35年及び昭和36年の「ホームランシリーズ」のディスプレイが掲載されている。
甲第36号証は、請求人の会社30年史の一部抜粋で、96頁には、「(昭和35年からは名糖ホームランシリーズと銘打ったバーものの特売方式が好評を博した。」の記載が、258頁には、昭和35年1月に「アイスクリーム新製品ホームランバー生産開始。」の記載が、259頁には、昭和35年3月に「ホームランシリーズ特売開始。」の記載がされている。また、宣伝・販促及び新聞・雑誌広告の資料から明らかなように、昭和39年から随時、人気野球選手を起用した宣伝、人気アニメとタイアップしたプレゼントキャンペーン、その他多くのバリエーションのコマーシャル等を行っており、同社の宣伝広告活動によって「ホームランバー」が定番商品として周知著名となっている事実が理解できる。
甲第37号証は、昭和36(1961)年の株式会社食糧タイムス社発行のアイスクリーム年鑑である。6?7頁には大手メーカーとして、請求人を筆頭に、明治乳業、雪印乳業及び森永製菓という4社の製品が紹介され、請求人の製品として「ホームランシリーズ」が紹介されている。
甲第38号証は、平成8年の社団法人日本アイスクリーム協会発行のアイスクリーム図鑑である。64頁には「『ホームランバー』物語。」として、「(昭和)31年に10円の『アイスクリームバー』を発売しました。(中略)。その後、名前を『ホームランバー』と変更しました。」や「当たりクジの効果が子供たちの心を捕え爆発的にヒット。」と記載されており、遅くとも本書発行当時(平成8年)には「ホームランバー」が周知著名である事実が明らかである。
甲第39号証は、平成18(2006)年7月1日発行の雑誌「BRUTUS」で、59頁には「1960(昭和35年)協同乳業、ホームランバー発売。」や「60年?70年は『ホームランバー』(中略)などロングセラーの定番が登場。」と記載されている。
甲第40号証は、インターネットの個人ホームページで「名糖ホームランバー」と題された記事で、「60年代のハナ垂れ坊主どもにとっては忘れようとしても思い出せないほどのビッグな存在であり、文字通りアイスクリーム界におけるホームラン王であった『名糖ホームランバー』」と紹介されている。
甲第41号証は、インターネットの個人ホームページで「名糖ホームランバーについて考える」と題された記事で、商品「ホームランバー」が現在に至っても根強い人気を博していることがわかる。
甲第42号証及び甲第43号証は、商標「ホームランバー」に関する、請求人と他社との通常使用権の許諾契約の事実を示す証拠である。
甲第42号証は、登録第134251号商標「HOME RUN」についてホームラン製菓株式会社から通常使用権の許諾を受けた事実が記載された商標登録原簿である。
甲第43号証は、引用商標1に係る商標権について株式会社ダイエーからの商標使用許諾契約書(通常使用許諾契約書)の写しである。
これらの資料によって、請求人が、他社から通常使用権の許諾を得つつ、長年にわたり引用商標1「ホームランバー」及び引用商標2「ホームラン/HOME RUN」を使用してきた事実がわかる。なお、引用商標1に係る商標権は、平成17年10月7日付で株式会社ダイエーから請求人に移転登録されている。
甲第44号証ないし甲第46号証は、「ホームランバー」の姉妹品「ホームランヨーグルト」に関する証拠である。
甲第44号証は、平成19(2007)年のメイトーチルド製品の春夏ガイドで、5頁に新商品「ホームランヨーグルト」が紹介されている。
甲第45号証は、請求人の現在のインターネットホームページの「ホームランヨーグルト」紹介のページである。
甲第46号証は、前記検索サイト「Google」で「ホームランヨーグルト」を検索した結果で、10400件(重複したサイトを排除した有効な件数は185件)もがヒットしている。ただし、請求人の関連ページを排除するために、「メイト」、「協同乳業」及び「名糖」の語を除外して検索している。
このうち1?100件目の内容は、1件だけが「ホームランヨーグルト」の語をハンドルネームとして用いているが、その他99件は請求人のヨーグルト製品「ホームランヨーグルト」を指してその語を用いている。
つまり、新商品「ホームランヨーグルト」が「ホームランバー」の姉妹品として話題性を集めて各メディアで取り上げられ、ひいては「ホームランバー」が現在もなお一般需要者に親しまれ、その周知著名性が定着していることが理解できる。また、同社が「ホームラン/HOME RUN」を付した商品を多角的に生産販売する可能性は今後も大いに存在するといえる。
(2)出所の混同が生じるおそれについて
以上、引用商標1「ホームランバー」及び引用商標2「ホームラン/HOME RUN」は、昭和40?50年代には既に商品「アイスクリーム」について周知著名性を獲得し、その後も長年にわたり、更に現在に至るまで周知著名性が維持されている(甲第14号証ないし甲第46号証)。
そのため、本件商標を、アイスクリームと同じ食品分野に属する第30類「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」に使用した場合、請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係わる商品ではないかと、その出所について誤認混同が生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 答弁に対する弁駁書
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 被請求人は、答弁書において、「本件商標は、『ホームランドッグ』あるいは『HOMERUN DOG』全体で、独立した一つの語を形成している」旨を主張し、同様に一つの独立した語として認識される例として、カクテル名「ソルティドッグ」を挙げている。
確かにこの「ソルティドッグ」を、「ソルティ」と「ドッグ」とにわざわざ分離して、「ソルティ」と称呼することは一般的ではなく、又、「塩辛いホットドッグ」のように観念する需要者は稀有であろう。
しかし、そもそも「ソルティドッグ」はカクテルの名称である。しかも、辞書にも掲載されているほど有名なカクテル名であるから、一つの独立した語として認識されるのは当然である。
また、答弁書に例示されたカクテル名「ツードッグ」にしろ、カクテルの名称に「ドッグ」が用いられた場合に、それが「ホットドッツグ」の観念で看取されることは想定し難い。それは、対象となる商品が、ホットドッグとは完全に非類似の商品「カクテル」だからである。
一方、本件商標「ホームランドッグ/HOMERUN DOG」は、辞書等に掲載されている語ではなく、また、「ホームラン/HOMERUN」と「ドッグ/DOG」との結合は不可分一体のものとすべき特別の関係にはなく、更に、わざわざ欧文字「HOMERUN」と「DOG」との間に空白が設けられているため、直ちに一つの独立した語として認識されるとはいい難い。
加えて、本件商標の指定商品は、「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」である。請求書で述べたとおり、「ドッグ/DOG」の語は、これらの指定商品の分野においては単なる商品の形状を表示するにすぎず、識別力がないか極めて弱く、「ホームラン/HOMERUN」とは明らかに識別力に軽重の差を有する。したがって、本件商標の要部となるのは「ホームラン/HOMERUN」部分であって、本件商標は引用商標1及び引用商標2と類似する、と請求人は主張するのである。商品「カクテル」について「ドッグ」が識別力を有するか否か、商品「カクテル」に使用した場合に「ドッグ」の語から「ホットドッグ」の観念が生じるか否か等の問題は、本件審判請求とは何ら関係がない。
なお、被請求人は、答弁書で、「ドッグ」の語から「ホットドッグ」の意味合いが看取されない例として、犬種名「ブルドッグ」や動物名「プレーリードッグ」を挙げているが、これらの例も本件商標と商品が全く異なるため、識別力の有無等について論ずるまでもない。
イ また、被請求人は、答弁書で、「『ドッグ/DOG』の語は、(中略)『ホットドッグ』を観念するより、圧倒的に動物の『大』を観念する」旨を主張する。
この点も請求人は否定するつもりはない。確かに、需要者が単に「ドッグ/DOG」という語に接した場合、直ちに「犬」の観念が生じるであろう。
インターネット検索サイトで「ドッグ」の語のみを検索すれば、「犬」に関するページばかりがヒットするのは当然の結果である。しかし、これも指定商品との関係を全く無視した主張であって、採用することはできない。
例えば、インターネット検索サイト「Google」で、「ドッグ」の語に「パン」の語を加えてAND検索すると(甲第47号証)、1?50件目のうち4件だけ「ドッグ」を「犬」の意で用いているページが含まれるが、その他は全て「ドッグ」を「ホットドッグ」の意味合いで用いているページである。
ただし、被請求人が答弁書で、「『ドッグ』の語で『ホットドッグ』を観念させる場合には、…のように、必ず前に何らかの語を付した『?ドッグ』の形で使用する」と主張するとおり、「ドッグ」の語単独で用いた場合は、そこから「ホットドッグ」の観念が直ちには生じ難い。
そこで、本件商標についてみると、その構成は「ドッグ」の前に「ホームラン」の語が付されている。したがって、本件商標を指定商品に用いた場合、「一番の優れた犬」「特級の犬」(答弁書)という観念が生じるというよりは、「ホームランブランドのホットドッグ」という観念が生じるとするのが自然で、これは答弁書中の上記記載より被請求人も晴に認めるところである。
このように、「ドッグ」の語は、指定商品との関係によって「ホットドック」の観念を生じるのであり、商品との関係を無視した議論は無意味である。
ウ なお、三省堂公式ホームページの「三省堂辞書総合サイト」によると、「初級クラウン英和辞典」(乙第2号証)は、中学生向けの辞書としてラインナップされた「初級」英和辞典である。被請求人は、この「初級クラウン英和辞典」に「dog」の語が「ホットドッグの略称。」である旨記載されておらず、故に「ドッグ/dog」は「犬」という観念(のみ)を生じさせる語である旨を主張する。
しかし、本件商標の指定商品「菓子及びパン,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと」の需要者には、中学生のみならず老若男女を問わない幅広い者が含まれる。したがって、乙第2号証に「ホットドッグの略称。」という意味合いが記載されていないことは重要ではなく、あくまで指定商品との関係で一般的に「ドッグ」の語がどのような意味合いで用いられ、いかなる観念を生じさせるのかが重要である。
その点、請求人が引用する「広辞苑」(甲第7号証)は、内容の権威・信頼性は三省堂の大辞林と並ぶ両雄で、語句の定義を語る際に「広辞苑によれば?」の言い回しがよく使われ、中型国語辞典では売り上げ一位を誇るものである。
つまり、甲第7号証は、特段、専門用語が記載されているわけではなく、社会一般的な語彙の意味合いが記載された辞書である。したがって、甲第7号証記載の「ホットドッグの略称。」という意味合いは、決して特殊ではなく社会一般的に用いられていると思料する。
エ 以上種々述べたが、ある商標が単に商品の品質や形状表示であるか否か、即ち商標の識別力の有無は、指定商品との関係で論ぜられるのであって、これは、答弁書で「商品の販売されている場所、販売されている商品の現物や商品の写真といった情報も勘案して、その語からやっと『ホットドッグ』の観念が生じる」と記載されているように、被請求人も認めるところである。
そして、本件商標の指定商品との関係における「ドッグ」の識別力については、審判請求書で既に述べたとおりである。繰り返して述べると、「ドッグ」の語を食品分野に属する指定商品に用いた場合、単に商品の形状を表示するにすぎず、自他商品識別力がなく商標の要部とならないと判断できる(甲第7号証ないし甲第11号証)。すると、本件商標に接する需要者は、その構成中「ホームラン/HOME RUN」の部分にのみ着目して、商標全体として「ホームラン」の称呼及び観念をもって取引に資すると考えられる。したがって、本件商標は、先願先登録商標である引用商標1及び引用商標2と明らかに類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人は、乙第5号証ないし乙第12号証を提出して、引用商標1及び引用商標2の周知性を否定し、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない旨を主張している。しかし、いずれの証拠も以下の理由により採用することができない。
イ まず、被請求人は、乙第5号証に商品「ホームランバー」がランキングされていないことを理由に、引用商標1及び引用商標2の周知性を否定している。
乙第5号証の上位34位に挙げられた商品は、新旧様々であるが、確かに一度は耳にしたことがあるものばかりが挙がっている。このうち1?9位までの商品名を前記検索サイトで検索して、そのヒット数(話題性の頻度)から商標の周知著名性を検証する。その結果は次のようになる(甲第48号証)。なお、商品名のみで検索するとアイスクリーム以外の商品が数多くヒットする場合は、適宜「メーカー名」や「アイス」等の語を加えてAND検索した。
1位「ドライヤーズ」 … 1410件
2位「スギヤ」「アイスキャンデー」… 162件
2位「チェリオ」「アイス」 … 39900件
2位「板チョコモナカ」 … 942件
5位「ロッテ」「爽」 … 69200件
6位「ガツン、とみかん」 … 16700件
7位「ハーゲンダッツ」「抹茶」 … 139000件
8位「しろくま」「アイス」 … 86600件
9位「あいすまんじゅう」 … 31100件
9位「ハーゲンダッツ」「マカデミアンナッツ」 … 331件
これに対して、同検索サイトで「ホームランバー」の語を検索すると、ヒット数は41500件である(甲第49号証)。これらの数字からわかるように、コンビニエンスストアやスーパーにおいて現在人気がある商品だからといって商標が周知であるとは限らず、その人気度と商標の周知度は必ずしも比例していない。
なお、被請求人は、答弁書で、被請求人の独断とも思える五つの商品名を挙げて、特段の根拠を示すことなくこれらの商標を「周知著名性があるといえる」としているが、そのうち「クーリッシュ」は乙第5号証に見当たらない。
ウ 次に、乙第6号証であるが、ここにランキングされている商品は、複数の商品がセットになった企画物であったり、商標といえるものが特定できないものであったりして、単純に引用商標1及び引用商標2と商標の周知性を比較できるものではない。
ちなみに、1位のショップ名「フルバラ」を前記検索サイトで検索した結果は20600件、2位のショップ名「シレトコ」と「ジェラート」とでAND検索した結果は3560件、3位の商品名「天日塩ジェラート」で検索した結果は10100件、4位のショップ名「おいもや」と商品名「クレープアイスケーキ」とでAND検索した結果は888件、5位の商品名「まるごといちご大福」で検索した結果は1080件である。これらの件数と、甲第49号証の件数を比較しただけでも、乙第6号証のランクと商標の周知度が必ずしも比例しないことは明らかである。
なお、答弁書で被請求人が周知著名商標として挙げる五つの商品は、いずれも乙第6号証に見当たらない。
エ 更に、被請求人は、乙第12号証に商品「ホームランバー」が掲載されていないことを証拠として挙げている。しかし、乙第12号証に掲載されているのは、医薬品や電化製品のほか、宅配便等の役務も含まれ、食品も数多く掲載されているがアイスクリームは一つも掲載されていない。まして、被請求人が周知著名商標として挙げる上記商品のうち、「ジャイアントコーン」は昭和38(1963)年、「パピコ」は昭和52(1977)年、「ピノ」は昭和51(1976)年から発売が開始されてそれぞれ歴史は古く、「ハーゲンダッツ」は(我が国では)昭和59(1984)年、「クーリッシュ」は平成15(2003)年から発売が開始され歴史は浅いが、新旧はともかく、いずれも乙第12号証に掲載されていない。
つまり、商標が周知著名であっても、乙第12号証に掲載されていない商品は多々存在するため、ここに商品「ホームランバー」が取り上げられていないことはさして重要ではなく、なんら引用商標1及び引用商標2の周知著名性を否定できるものではない。
オ また、被請求人は、乙第7号証ないし乙第11号証として、アイスクリーム市場での各社の市場占有率を挙げ、請求人の市場占有率は業界内で1%にも満たない旨を主張する。
しかし、いずれの表にも欄外の「その他主要メーカー」には請求人の名が筆頭に挙がっており、請求人をアイスクリーム業界における準大手・中堅メーカーと位置づけられることがわかる。個人が編集した記事であるが、インターネットサイトのフリー百科事典「ウィキベディア(W1kipedia)」で「協同乳業」の語を検索すると、そこでも請求人は「現在の乳業界においては、明治乳業・森永乳業・日本ミルクコミュニティ・雪印乳業の大手4社に追随する、グリコ乳業・タカナシ乳業等と共に準大手・中堅に位置している。」と評価されている(甲第50号証)。
また、大手メーカーは、取扱商品の種類の多さから、企業全体としての売上げが高く、市場占有率が高くなる傾向にあるが、個々の商品の売上げを見てみると、むしろ弱小メーカーの商品であってもヒット商品であれば大手メーカーの商品を凌ぐ売上げをあげているものも多々ある。したがって、商品の売上高から商標の周知著名性を検証する場合、企業全体の売上高(マーケットシェア)を比較するのではなく個々の商品の売上高を比較する必要がある。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「ホームランドッグ」あるいは「HOMERUN DOG」全体で、独立した一つの語を形成しているものである。本件商標は、請求人も述べているように、「ホームラン/HOMERUN」の語と「ドッグ/DOG」の語と、それぞれ我が国で一般に広く親しまれている語から構成されているため、本件商標を見たり、聞いたりした者は、「ホームランドッグ/HOMERUN DOG」の語を何の懸念も感じず、一つの独立した語として認識する。「ホームランドッグ」という独特の観念を有する一つの造語として認識するのである。
例えば、カクテルに「ソルティドッグ」というものがあるが、「ソルティドッグ」は「ソルティドッグ」であり、独特の観念を有する一つの独立した語として認識される。「ソルティ」と「ドッグ」の語にわざわざ分離して認識されることはない。
また、本件商標は、上段に片仮名、下段にアルファベッドの二段書きで構成されているが、このように片仮名とアルファベットで二段書きされている場合、日本人であればアルファベットに比べて、片仮名の方が親しみやすく、認識もしやすい。したがって、本件商標を見た者は上段の片仮名を読んで、本件商標を認識する。本件商標のように片仮名が、一連に記載されている場合、通常は一つの語として認識する。どこかの部分で区切って読んで、それぞれの部分を別個に認識することはない。
また、請求人は審判請求書において、「ドッグ」の語を食品分野に属する指定商品に用いた場合、需要者は、それがホットドッグであるか、又は、ホットドッグのように手軽に口に運ぶことができる形状をした食べ物であることを容易に想起することができる、と述べている。
しかし、「ドッグ/dog」の語は、ホットドッグの略称として、単独で用いられることはない。何故なら、「ドッグ/dog」の語を単独で見たり、聞いたりした場合、「ホットドッグ」を観念するより、圧倒的に動物の「犬」を観念するからである。
乙第1号証は、インターネットの検索エンジンGoogleで「ドッグ」を検索した検索結果の一部をプリントアウトした書面である。これを見ると、全てのホームページで「ドッグ」の語を「犬」の意味で使用している。これらのホームページでは、「ドッグ」の語が「犬」という観念を生じさせることを前提として使用されており、「ドッグ」が「犬」の意味であることをわざわざ注記しているホームページはない。つまり、「ドッグ」の語が、「犬」の意味を有していることは、誰もが知っていることであり、「ドッグ」の語を見たり、聞いたりした場合には誰でも、「犬」という観念を生じることは当たり前のことなのである。
また、「ドッグ/dog」の語が、「犬」という意味を有する語であることは、中学生や小学生でも知っていることである。乙第2号証は小学生や中学生が主として用いる「初級クラウン英和辞典」からの抜粋であるが、それを見ると「ドッグ/dog」の語は、「犬」という意味を有する語であることが記載されている。一方、「ドッグ/dog」の語が「ホットドッグの略称」であることは記載されていない。このように「ドッグ/dog」の語は、「犬」という観念を生じさせる語として、非常に広く知られ、もはや日本語化している語である。
一方、請求人は審判請求書において、パン又はパン状の食材に、何らかの具材を挟んだり混ぜたりして、手軽に口に運ぶことができる形状をした食べ物、いわゆるホットドッグの略称として、「ドッグ」の語は使用されると述べている。
しかし、「ドッグ」の語で「ホットドッグ」を観念させる場合には、例えば「生いちごドッグ」や「ぎょうざドッグ」のように、必ず前に何らかの語を付した「?ドッグ」の形で使用する(甲第9号証及び甲第10号証)。「ドッグ」の語だけで、単独で使用することはない。上述したように「ドッグ」の語単独で使用すると、動物の「犬」の観念があまりにも知れ渡っているため、「犬」という観念を誤って生じさせてしまうからである。 つまり「ドッグ」の語単独では、「ホットドッグ」という観念は生じないのである。
そこで次に、「ドッグ」の語の前に何らかの語を付して用いられる場合を検討する。「?ドッグ」の語は、「ブルドッグ」といった犬種や「プレーリードッグ」といった小動物の名称に用いられている。また「?ドッグ」の語は上述した「ソルティドッグ」(乙第3 号証)や「ツードッグス」といったカクテルの名前にも用いられている(乙第4号証)。つまり「?ドッグ」の語は、多くの種類の動物や物品の名称として用いられているのである。
したがって「ドッグ」の語の前に何らかの話を付した語であっても、直ちに「?ドッグ」の語が「ホットドッグ」の意味で使用されているものであると、その語を見たり聞いたりした者は認識するわけではなく、前の語と「ドッグ」の語の関係性を認識し、また商品の販売されている場所、販売されている商品の現物や商品の写真といった情報も勘案して、その語からやっと「ホットドッグ」の観念が生じるのである。具体的に述べると、例えば「生いちごドッグ」の語を見たり聞いたりした者は、「生いちご」の語があることによって、「ドッグ」の語が「犬」の意味でなく、「ホットドッグ」の意味で使用されているのではないかと推測し、生いちごの入ったホットドッグを観念し、生いちごの入ったホットドッグの商品の現物も見たりして「生いちごドッグ」の「ドッグ」の語が「ホットドッグ」の意味で使用されていると確信するのである。
したがって、本件商標「ホームランドッグ」をホットドッグに使用した場合においても、本件商標を見たり聞いたりした者は、例えば、前に「ホームラン」の語があるため「ホームラン」の語の意味から転じて、「一番の優れた犬」、「特級の犬」といった独特の観念を生じるのである。つまり本件商標は、見たり聞いたりした者に、独特の観念を生じさせる独立した一つの造語として認識されるのである。後半部の「ドッグ」の語を省略して認識されることはない。
そのため本件商標は、引用商標1「ホームランバー」及び引用商標2「ホームラン/HOME RUN」と、外観、観念及び称呼において非類似の関係にあり、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するためには、本件商標の登録出願時である平成18年5月23日及び登録査定時である平成19年1月5日において、引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」がアイスクリーム商品の需要者あるいは取引者の間で周知著名となっている必要がある。
しかし、引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」を付したアイスクリーム商品は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者あるいは取引者の間で、著名はおろか周知にもなっていない。そのため本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。以下、その理由を説明する。
請求人のアイスクリーム商品「ホームランバー」は、甲第29号証ないし甲第31号証や甲第34号証によると、複数個が入っているマルチパックで、コンビニエンスストアやスーパー等で販売されている。しかし、インターネット上のホームページ「なんでもベスト店」がおこなっている「買ってよかったアイスクリームは? ※コンビニ、スーパーで販売されているものに限る」という調査においても、「ホームランバー」は、上位34にも含まれていない(乙第5号証)。
また、インターネット上の「楽天」のホームページ内に掲載されている平成19年10月10日付けの「アイスクリームジャンル売れ筋ランキング」の上位30にも含まれていない(乙第6号証)。なお、この楽天の「アイスクリームジャンル売れ筋ランキング」は本件商標の登録査定(=平成19年1月5日)後に行なわれたものであるが、登録査定時から約9ヶ月程しか経過しておらず、引用商標1及び引用商標2の周知著名性を判断するには、問題ないものと思われる。
さらに、引用商標1や引用商標2を商品アイスクリームに付して販売している請求人である協同乳業株式会社の日本における市場占有率(=マーケットシェア)を見てみる。乙第7証ないし乙第11号証は、日本におけるアイスクリーム製品の各企業の市場占有率を示した株式会社矢野経済研究所発行の「日本マーケットシェア事典」や日本経済新聞社発行の「市場占有率」である。これらを見ると2001年?2005年度(平成13年度?平成17年度)の企業別のシェアが分かる。アイスクリーム市場は、江崎グリコ、ハーゲンダッツジャパン、森永乳業といった上位10社の寡占度が、約80パーセントもあり、残りの約20パーセントを約15,000社が争っている。請求人の協同乳業株式会社は、これらの15,000社社の一つにすぎず、マーケットシェアは1パーセントにも満たない。
また、アイスクリームの名称として思い浮ぶのは、「ハーゲンダッツ」(ハーゲンダッツジャパン)や「ジャイアントコーン」、「パピコ」(以上、江崎グリコ )、「ピノ」(森永乳業)、「クーリッシュ 」(ロッテ)等があるが、これらの商品は全国のスーパーやコンビニエンスストアで販売され、広告もテレビでコマーシャルを常時行っているため、周知著名性があるといえる。一方、請求人の引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」を付したアイスクリーム商品は、全国のスーパーやコンビニエンスストアで販売されているわけでもなく、広告もテレビでコマーシャルを行っているわけでもない。請求人は請求人の引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」を付したアイスクリーム商品の近年の販売や広告の証拠として甲第29号証ないし甲第31号証等を提出している。しかし、これらは商品のカタログであり、誰を対象に、どれくらいの範囲でこれらのカタログが配布されたのか分からないし、商品自体がどこで販売され、どのくらいの売り上げをあげているのか全く分からない。
したがって、引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、アイスクリーム商品の需要者あるいは取引者の間で周知著名となっているとは、とてもいえず、むしろほとんどの者に知られていないものと思われる。
また、請求人は審判請求書において、「昭和35年1月から『アイスクリーム新製品ホームランバー生産開始』」、昭和39年から随時、人気野球歌手を起用した宣伝、人気アニメとタイアップしたプレゼントキャンペーン、その他多くのバリエーションのコマーシャル等を行なっており、同社の宣伝広告活動によって『ホームランバー』が定番商品として周知著名となっている事実が理解できる」と述べている。
しかし、乙第12号証「ヒット商品この100年」をみても、「かっぱえびせん」や「ビックリマンチョコ」といった名称のお菓子の商品は掲載されているが、「ホームランバー」は見当たらない。また仮に、昭和30年代から昭和40年代にかけてアイスクリーム「ホームランバー」が、人気商品だったとしても現在から30年以上も前のことであり、上述したように、近年引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」を付したアイスクリーム商品は、全国のスーパーやコンビニエンスストアで販売されているわけでもなく、広告もテレビでコマーシャルを行っているわけでもないという事実を考え合わせると、商品アイスクリームにおける引用商標1「ホームランバー」あるいは、引用商標2「ホームラン/HOME RUN」の周知著名性は維持されていない。
そのため、本件商標は、引用商標1「ホームランバー」及び引用商標2「ホームラン/HOME RUN」と狭義又は広義の出所の混同を生じるおそれがなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当しないものであるから、同法第46条第1項第1号に基づく無効理由を有していない。

第5 当審の判断
1 利害関係(請求の利益)について
本件審判請求の利害関係の有無につき、請求人が法律上の利益を有すると主張しているので、これについて判断する。
請求人は、請求人の使用する引用商標1ないし引用商標2と本件商標が類似し、または出所の混同のおそれがあるときは、本件商標が障害となるものであって、これを排除する必要があり、審判の請求について法律上の利益があるものと認められ、利害関係を有するものである。
また、この点について被請求人は、争っていないものである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて
本件商標は、前記第1のとおり、上段に「ホームランドッグ」の片仮名文字を一連一体に、下段に、該上段の片仮名文字よりやや小さい「HOMERUN DOG」の欧文字を二段に横書きしてなるものであって、上段の「ホームランドッグ」の片仮名文字が下段の「HOMERUN DOG」の欧文字の表音を表したものと無理なく看取されるものといえる。
そして、本件商標は、その構成中上段部の「ホームランドッグ」の片仮名文字部分は一連一体に表され、また、下段部の「HOMERUN DOG」の欧文字部分も中程に一字程度間隔を有しているとしても、外観上まとまりよく一体的に表されているものである。
さらに、その構成全体から生ずると認められる「ホームランドッグ」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであることからすれば、たとえ、構成中の「ドッグ」及び「DOG」の文字が、本願指定商品の品質、原材料を表す場合があるとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「ドッグ」及び「DOG」の文字部分をいわゆる品位誇称的な表示として捉え、前半部の「ホームラン」及び「HOMERUN」の文字部分のみに着目して商取引に資するというよりも、むしろ、その構成全体をもって特定の観念を有しない一体不可分の造語と認識して商取引に資するとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ホームランドッグ」の称呼のみを生ずる特定の観念を有しない造語というのが相当である。
他方、引用商標1は、前記第2のとおり、「ホームランバー」の片仮名文字を同じ書体、同じ大きさ、等間隔で一連一体に書してなるものであるから、構成中の「ホームラン」の文字部分が「野球の本塁打」の意味、「バー」の文字部分が「棒、棒状のもの」の意味をそれぞれ有するとしても、外観上まとまりよく一体的に表されており、さらに、その構成全体から生ずると認められる「ホームランバー」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであることからすれば、本願商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「バー」の文字部分をいわゆる品質誇称的な表示として捉え、前半部の「ホームラン」の文字部分のみに着目して商取引に資するというよりも、むしろ、その構成全体をもって特定の観念を有しない一体不可分の造語と認識して商取引に資するとみるのが相当である。
してみれば、引用商標1は、その構成文字に相応して「ホームランバー」の称呼のみ生ずる特定の観念を有しない造語というのが相当である。
次に、引用商標2は、前記第2のとおり、「ホームラン」の片仮名文字と「HOME RUN」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるから、構成各文字に相応して「ホームラン」の称呼のみを生じ、「野球の本塁打」の観念を有するものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、それぞれの構成音数、構成音が異なり、それぞれを一連に称呼しても、相紛れるおそれのない称呼上類似しない商標であって、観念においては、本件商標が特定の意味を有しない造語であり、引用商標1も特定の観念を生じない造語、引用商標2は、「野球の本塁打」の観念を生ずるから、両者は比較することができないものである。
また、本件商標と引用商標1及び引用商標2の構成は、前記第1及び前記第2のとおりであるから、外観上においても、両者は明らかに区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものということはできない。
3 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
引用商標1及び引用商標2が、本件商標の登録出願時及び登録査定時より相当以前である昭和35年から昭和50年にかけて(甲第14号証ないし甲第39号証)、商品「アイスクリーム」に相当程度使用されていたものと認められるとしても、その使用態様は、いずれも「ホームランバー」であり、「ホームランバー」というアイスクリームとして、知られていたものとみるのが相当である。かつ、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは上記したとおり、その称呼、観念及び外観のいずれからみても十分に区別し得る商標として別異の商標であり、両商標を関連づけてみるべき理由も他に見当たらない。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標1及び引用商標2を連想、想記して、請求人若しくは請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれのないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 請求人の主張について
請求人は、本件商標について、指定商品との関係からすると、その構成中の「DOG」、「ドッグ」の文字部分がホットドッグであるか、又は、ホットドッグのように手軽に口に運ぶことのできる形状をした食べ物を容易に想起するものであるから、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないか、きわめて弱いものである。また、引用商標1は、その構成中の「バー」の文字部分が「棒状の菓子」の意味合いを有するものとして親しまれている英語で、単に商品の形状を表示するにすぎず、自他商品識別力がなく商標の要部とならない旨述べ、さらに、引用商標1及び引用商標2は同人によって長年にわたり使用された結果、周知著名性を獲得するに至った旨主張している。 しかしながら、甲第14号証ないし甲第50号証よりしても、上記のとおり、引用商標1及び引用商標2が、本件商標の登録出願時及び登録査定時より相当以前である昭和35年から昭和50年にかけて、商品「アイスクリーム」に相当程度使用されていたと認めることができるとしても、その使用態様は「ホームランバー」であることは前記認定のとおりであって、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、上記の期間のように、宣伝広告しているものとは認められないし、引用商標1及び引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商品「アイスクリーム」の商標として、取引者、需要者の間において周知著名であるとは認められないものである。 また、請求人提出の証拠(乙第9号証及び甲第10号証)等によっても「ドッグ」又は「DOG」の文字の各種商品についての使用状況は様々であり、これらの証拠をもって、特定の商品の品質表示、あるいは品質を誇称する語として普通に使用されているものとは直ちに認め難いものであるから、請求人の上記主張はいずれも採用の限りでない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-25 
結審通知日 2008-03-27 
審決日 2008-06-12 
出願番号 商願2006-52043(T2006-52043) 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Y30)
T 1 11・ 271- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 和美 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 小川 きみえ
石田 清
登録日 2007-02-16 
登録番号 商標登録第5025593号(T5025593) 
商標の称呼 ホームランドッグ、ホームラン、ドッグ、デイオオジイ 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 藤沢 正則 

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