• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2008300167 審決 商標
審判199830905 審決 商標
取消200530788 審決 商標
審判199831328 審決 商標
審判199830904 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1181158 
審判番号 取消2007-300628 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-05-15 
確定日 2008-07-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4909225号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4909225号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4909225号商標(以下「本件商標」という。)は、「オリゴメール」の文字を標準文字で書してなり、平成16年7月2日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料類,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」を指定商品として、同17年11月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張及び答弁に対する弁駁の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 請求の理由の要旨
(1)取消事由
本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の権利を有する者の当該権利に係る商標又これに類似する商標であって当該権利に係る商品又はこれ類似する商品とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人又は当該登録出願の日前1年以内に代理人であった者によってされたものであるから、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。
(2)取消原因
(ア)請求人が、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者であることについて
請求人である「コディフ インテルナショナル エス.ア.」(以下、「コディフ社」という。)は、パリ条約の同盟国であるフランス国において、1983年10月28日に、商品及び役務の区分、第3類及び第5類に属する「美容品,石けん;香水(香料),エッセンシャルオイル,化粧品,頭髪料,歯磨き粉;衛生用品,食餌療法用品及び食品」を指定商品として商標「OLIGOMER」についての商標権(登録第1249438号、以下「引用商標」という。)を有する者である(甲第3号証、甲第4号証)。
また、被請求人である「株式会社ヒヨキ」は、請求人が製造し商標「OLIGOMER」を付した商品(美容品、化粧品)を輸入して日本において販売していたものであるが(甲第5号証、甲第6号証ないし甲第14号証)、請求人が、商品「美容品、化粧品」についての商標「OLIGOMER」の、そもそもの所有者である。
(イ)商標の同一又は類似について
請求人が、引用商標「OLIGOMER」と本件商標「オリゴメール」からは、ともに「オリゴメール」の同一の称呼が生じるものであるから、類似する商標である。
特に、現実の市場においても、被請求人は、請求人の商品を日本において販売するに際し、請求人が製造した商品には商標「OLIGOMER」が付されているが、さらに、本件商標である「オリゴメール」を付記して使用しているから(甲第6号証ないし甲第14号証)、被請求人及び需要者とも、引用商標からは、「オリゴメール」の称呼が生ずることを認識している。
なお、請求人は、商標「OLIGOMER」について、日本においても、登録出願をし、登録第4257602号商標(以下「使用商標」という。)として登録を受けている(甲第15号証及び甲第16号証)。
本件商標は、使用商標と、少なくとも、係る商品「化粧品,薬剤」において抵触するものであるにもかかわらず、商標登録を受けているが、このことは、引用商標と本件商標とが非類似である、という証左にはならない。
なぜなら、引用商標及び使用商標からは、上記のとおり、「オリゴメール」との称呼が生ずることに変わりはなく、特に、指定商品である化粧品の分野においては、まさしくフランス国の法人である請求人がそうであるように、フランス語の商標が使用されることが多く、従って、商標の類否判断に際しても、フランス語においては「○○MER」なる文字を「○○メール」と発音することがあることは、一般に広く知られていることを考慮すべきであり、この点を考慮すれば、請求人の商標から「オリゴメール」との称呼が生じ、両商標は類似するものであるといえるからである。
このことは、例えば、「海、海洋」を意味するフランス語である「mer」を「メール」と発音することや(甲第17号証)、「ありがとう」を意味するフランス語である「Merci」を「メルシー」と発音することは、日本においても広く知られていることから考えても、取引上は自然に生じる称呼ということができることからも裏付けられる。
(ウ)商品の同一又は類似について
引用商標の指定商品は、フランス国における商品及び役務の区分、第3類及び第5類に属する「美容品,石けん;香水(香料),エッセンシャルオイル,化粧品,頭髪料,歯磨き粉;衛生用品,食餌療法用品及び食品」である(甲第3号証)。
特に、「ORIGOMER」は、請求人の製造に係る「バスソルト、入浴剤」について使用され(甲第6号証ないし甲第14号証)、これらの商品は、日本においては、第3類「化粧品(バスソルト)」、第5類「薬剤(入浴剤)」に属するものである。
したがって、本件商標における指定商品のうち、少なくとも、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料類,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」と引用商標に係る指定商品とは同一又は類似のものである。
(エ)被請求人が、請求人の日本における販売の代理店であったことについて
被請求人は、請求人との間において、2003年1月1日から2006年12月31日までの間、商標「OLIGOMER」が付された商品(バスソルト、入浴剤)を含む「PHYTOMER(フィトメール)シリーズ」商品の日本における一手販売代理店契約を結んでいた(甲第5号証:第1条第2条第4条、甲第6号証ないし甲第14号証)。
即ち、被請求人は、本件商標の登録出願日である平成16年(2004年)7月2日の時点、若しくは、その出願の日前1年以内に、又は、少なくとも、出願人名義変更届により被請求人が登録出願人となった平成17年(2005年)6月29日の時点、若しくは、その日前1年以内に、請求人の日本における販売代理人であった。
なお、甲第5号証における被請求人との契約の名義人は、フィトメール社であり、請求人そのものではないが、フィトメール社は、請求人の一部門(販売部門)であり(甲第5号証)、実質的な契約主体は、請求人であることに変わりはなく、被請求人は、請求人の代理人であるということができる。
(オ)被請求人が、請求人の承諾を得ないで、本件商標の登録出願をしたことについて
被請求人は、請求人との間において、販売対象製品に関わる特許、商標、モデルはすべて販売権授与者、即ち、請求人の専有物であり、本契約はそれらについての如何なる権利も付与するものではなく、請求人による登録中の商標若しくは登録済みの商標、および、とくに、請求人との打ち合わせにおいて知り得た、請求人の業務により設定された商標を、日本その他の領土において登録してはならない旨の契約を結んでいる(甲第5号証:第4条)。
にもかかわらず、被請求人は、本契約、ひいては、国際的な信義則に反して、本件商標につき、登録出願をして商標登録を受けるに至った(甲第1号証及び甲第2号証)。
即ち、被請求人は、請求人の承諾を得ないで、無断で本件商標につき、登録出願をし、商標登録を受けたものである。
本件商標についての登録出願は、当初は、「仲宇佐 尤一」氏なる人物が出願したものであるが、その後、請求人と出所の混同が生ずることを理由とする拒絶理由通知を受けて、被請求人に出願人の名義変更されたものである(甲第18号証)。
しかし、通常、「仲宇佐 尤一」氏と被請求人とが何らか組織的、あるいは経済的な関係がなく、該仲宇佐氏が、被請求人が請求人の代理人であることを知ることは考えにくく、あるいは、現実に知ったとしても、自らの権利化を断念して、登録出願により生じた権利を被請求人に譲渡することは考えにくく、そこには、名義の問題はともかくとして、当初から被請求人自身の権利取得の意思が存在していたと考えられ、また、いずれにせよ、最終的には、被請求人が、権利付与請求の意思表示たる出願をし、実際に商標権を取得した事実には変わりはなく、被請求人が請求人の承諾を得ることなく出願をしたこと、との取消事由に該当する。
ちなみに、被請求人は、上記拒絶理由通知に対する意見書において、請求人の正規総代理店であることは主張しているが、請求人の承諾を得て出願人となっている旨は、一切主張していない(甲第18号証:平成17年6月29日付け提出の意見書)。
これは、被請求人が、登録出願をすることについては、請求人の承諾を得ていなかったため、主張することができなかったからに他ならない。
(カ)被請求人が、正当な理由がないのに、本件商標の登録出願をしたことについて
更に、上記のように、請求人は、被請求人に対して、本来の所有者は請求人であること、及び、日本を含むその他の領土における商標権の取得を明確に禁止しているのであるから、被請求人に、日本における商標権の権利を放棄する旨や日本において商標権を取得することに関心がないといった旨を被請求人に信じさせるような事情は一切ない。
加えて、請求人は、使用商標について商標登録を受けている(甲第15号証、甲第16号証)。
従って、日本においても、「被請求人が」第三者の当該商標の使用等を排除する理由も、必要性も全く存在しない。
即ち、被請求人は、正当な理由もなく、請求人が所有する商標について、国際信義に反して、登録出願をし、商標登録を受けたものである。
(キ)引用商標の商標権者と請求人との同一性について
なお、請求人の登録原簿上の現在の正式な本社の住所は、「フランス国 35404 サンーマロ リュ デュ コマンダン レルミニエ 61(61,RUE DU COMMANDANT L’HERMINIER-35400 SAINT MALO)」である(甲第19号証)。
従って、フランス国における引用商標の商標登録原簿(甲第3号証)中の2003年の更新申請書及び更新の登録証書(甲第4号証)と一致しており、請求人がパリ条約の同盟国であるフランス国において、商標「OLIGOMER」に関する権利を有する者であることが理解できる。
一方、請求人と被請求人との独占販売契約(甲第5号証)においては、「61,rue du Commandant l’Herminier-BP40-35404 SAINT MALO CEDEX-FRANCE」とあり、微妙な違いが存在するが、これは、上記本店住所が含まれていることからも解るとおり、上記本店住所内で更に細かな連絡先まで含めて特定したものに過ぎず、請求人と被請求人との間の契約であることに変わりはない。契約の主体が、請求人と一致していることは、独占契約販売書(甲第5号証)に記載された登記番号R.C.S.が、商業・会社登記抄本のそれと一致していることからも把握することができる(R.C.S. No.712 007 251)。
同様に、本審判請求書に添付した委任状においても、「61 rue du Commandant L’Herminier CS 51749-35417 SAINT MALO cedex-FRANCE」とあり、上記本店住所と微妙な存在が存在するが、これは、フランス国における引用商標の更新の登録証書(甲第4号証)に記載の連絡先と一致していることからも解るように、委任権限を有する代表者の所在地(連絡先)をもって特定したに過ぎず、請求人代理人への委任の事実は証明されている。何より、この委任状に署名をしたのが、甲第19号証から証明される請求人の代表者であることからも、この事実は理解できる。
加えて、請求人が、使用商標の登録第4257602号(甲第15号証、甲第16号証)においては、「フランス国 35404 サン-マロー セデックス ベ.ペ.40 リュ デュ コマンダン-レルミニエ 70(70 rue du Commandant L’Herminier-BP40-35404 SAINT MALO CEDEX FRANCE)」を住所として商標登録を受けており、厳密には、請求人の現在の登記簿上の住所とは一致していない。
しかし、請求人の商業・会社登記抄本(甲第19号証)にある通り、請求人は上記日本で商標登録を受けた平成9年4月21日以後の1999年(平成11年)8月1日に日本の商標登録原簿に記載の住所から現在の住所へ本店を移転したためであり、本来は、日本国特許庁に対しても、住所の変更登録申請をすべきところ、未だその手続にいたっていないだけであり、むしろ、請求人の商業・会社登記抄本(甲第19号証)における移転の経緯からは、日本における商標登録の名義人と請求人との実体的な同一性は立証される。
(ク)結語
以上より、本件商標は、商標法第53条の2に規定する取消事由に該当するから、その登録を取り消すべきである。

2 答弁に対する弁駁の理由の要旨
(1)請求人の名称について
被請求人は、パリ条約の同盟国であるフランス国において引用商標「OLIGOMER」に関する権利を有する者は、「SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION CODIF INTERNATIONAL」であり、請求人とは同一の者ではないから、請求人は、請求人適格を有さない旨を主張する。
この点、まず、甲第19号証の1及び2の登記簿謄本に示すように、請求人の社名もしくは名称の欄には、「STE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION」と記載されており、直訳すれば甲第19号証の1にあるように、「仲介・流通サイト」である。
これは、いわば、業務内容を示し、実際には、同じく甲第19号証の1及び2に示すよう、その「社名若しくは名称」の欄の次の欄の「略称」の通り、請求人は、「CODIF INTERNATIONAL(コディフ インテルナショナル)」の部分をもって、他者と識別され、また、甲第3号証の2、甲第4号証の2、甲第5号証の2等に示すように、当該部分を記載することによって、各種法律行為の主体として特定されている。
ここでいう「略称」とは、単なる略、あるいは、私的な呼び名ということではなく、甲第19号証の2の登記簿謄本においても、「SIGLE(略称)」の次の欄に別途「NOM COMMERCIAL(商業名称)」の欄が設けられ、「NEANT(無)」となっていることからも解るように、単なる営業上の略称ではなく、法人の正式名称をなすものである。
また、この名称の特定に際し、甲第19号証の1及び2に示すように、フランス国においては、登記簿謄本においても、「社名若しくは名称」、「略称」の中には、日本の法人のように、形態(組織)は含まれておらず、いわば「CODIF INTERNATIONAL」の部分のみをもって特定されている。
これらのことは、事実、甲第3号証の2の商標原簿においても、権利者の名称に会社の組織形態は含まれていないことからは勿論、この甲第3号証の2の商標原簿と、甲第19号証の2の登記簿謄本とは、同じ登記番号が付されている同一法人であるにもかかわらず、前者が「SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION」、後者が「STE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION」と異なって表記されていることから考えても、「CODIF INTERNATIONAL」の表記部分で法人が特定されていることからも解る。これが同じと右記番号が付与されていながら、両者が同一法人でなければ、フランス国において、存在しない法人に、権利を付与していることになる。
これらのことから解るように、請求人は、本来、「CODIF INTERNATIONAL」との表示をもって特定されるものるものである。
もっとも、日本においては、手続能力、資格証明との関係で、名称に組織名を冠することが一般的であるため、本審判の請求に際しても、組織名の「エス.ア.(株式会社)」を付したものであり、この「S.A.(Societe Anonyme)」の有無のみをもって、両法人の同一性が否定されるものではない。
何より、甲第3号証の2のフランス国の登記簿謄本、及び、甲第4号証の2の引用商標の更新の登録証書においては勿論、請求人の表示と同じ表記が記載されている甲第5号証の2の「コディフ インテル エス アと株式会社ヒヨキとの独占販売契約書」のいずれにおいても、甲第19号証の2の登記簿謄本と同じ登記簿番号として、「712 007 250」が共通で記されていることからも、これらが全て同一の主体であることは、充分に立証されている。
なお、このように、フランス国における法人の特定に際して、組織名は必ずしも必要ではないが、甲第3号証の2においては、「societe a responsabi1ite limitee(有限会社)」と記載され、また、甲第5号証の2においては「S.A.(株式会社)」、更に、甲第4号証の2の商標登録の更新の申告者の欄には「Societe par Actions Simp1ifee (SAS:準株式会社)」と異なる組織名が記されているが、これは、請求人の正式名称の一部ではない請求人の組織変更に伴うものに過ぎないものであり、甲第20号証ないし甲第24号証に示すように、この点の経過を説明すれば、請求人は、1971年の設立時から1994年までは、即ち、甲第3号証の2の引用商標の商標権の登録時には、SARL(socie(eのアクサンテギュ)te(eのアクサンテギュ)a(aのアクサングラーヴ)responsabi1ite limitee:有限会社)であり、被請求人と契約を交わした当時の1994年から2002年までは、SA(Societe Anonyme:株式会社)であり、甲第21号証及び甲第24号証の臨時株主総会の議事録に示すように、2002年からは、SAS(Societe par Actions Simp1ifee:準株式会社)の形態となっている。
そして、これらの議事録においては「名称変更ではない」旨が明記されている。
以上の点を考慮すれば、被請求人の指摘する「厳格に解すべき」ということ、形式的に判断する、ということではなく、むしろ、実質主義的に実体に着目して厳格に判断すれば、明確に同一法人であることが解ると同時に、かかる形式的な点のみをもって、国際信義に反する行為を許容することは、国際社会からは到底許されるものではない。
また、そもそも、同法第53条の2を規定する根拠となったパリ条約第6条の7に記載される請求人適格は、甲第25号証に示すように、フランス国において登録処分を受けた者であるかどうかよりも、本来、商標の所有者と解すべきである。この点を考慮するならば、なおのこと、被請求人と独占販売契約を交わした請求人こそが、請求人適格を有するものである。
そうでなければ、被請求人は、排他権を所有している所有者ではない者と独占販売契約を結んだことになるが、そのように解することが、現実の被請求人の日本への輸入や日本での販売活動に鑑みれば、不合理であることは言うに及ばない。
以上より、請求人は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者であって、本審判の請求人適格を満たしている。
(2)商標の同一又は類似について
被請求人は、請求人の商標である「OLIGOMER」からは、「オリゴメール」との称呼は生じないため、本件商標である「オリゴメール」とは類似しない旨を主張する。その理由として、請求人の商標は、「オリゴマー」とのみ発音し、「MER」の部分からは、「メール」との称呼が生じる事実はないと主張している。
しかし、以下の理由より、被請求人の主張は全くの誤りである。
(A)取引の実状及び登録例との関係について
もとより、フランス語において、「MER」とのスペルについて「メール」と称されることがあることは、被請求人も認めるところである(後述第3の1(2))。そして、化粧品の分野においては、商標の類否判断に際しては、フランス語が使用されることが多いことを考慮すべき、との意味は、それが直ちにフランス語であると把握されるかどうかではなく、フランス語的な読み方をされることが多いとの取引の実状を視野に入れて、類否判断をすべき、という意味である。とすれば、請求人の商標からは、「オリゴメール」との称呼が生じない等という事実は存在せず、「オリゴメール」との称呼も生じるということができる。
この点、被請求人は、日本人が慣れ親しんだ英単語である「SUMMER」のよに「MER」の部分は「マー」とのみ称されると主張し、第3類「化粧品」の分野において、「○○マー」、あるいは、「マー○○」と称されるとする登録例をいくつか挙げている。
しかし、これらは、いずれも、当該商標の出願人自らが考える呼び名を、二段書きにて併記しただけに過ぎず、需要者にとっても、そのようにのみ称されるとの証左には全くならない。
むしろ、特許電子図書館(IPDL)において、化粧品の分野において「MER」を含む商標を検索した場合、「○○メール」あるいは「メール○○」との称呼が付されているケースの方が圧倒的に多い。具体的には、まず、
(1)出願人において、特に、読み方を併記したものではないにもかかわらず、「○○メール」との称呼が称されているものとして、
・登録第4140281号「MARIMER」(甲第26号証)を「マリメール]との称呼
・国際登録第792926号「PHYTOMER」(甲第27号証)を「フィトメール]との称呼
(2)出願人において、「○○メール」との称呼を付した例としては、甲第28号証に示すように、
・登録第2073477号「Heliomer/エリオメール」
外21件等の多数を挙げることができる。これだけでも、一連に表記された「MER」であっても、化粧品の分野においては取引上「メール」と称される事実の存在が証される上に、その他「MER」が分離して表記された商標において、「メール」と称されている例に至っては、同じく甲第28号証に挙げるように、枚挙に暇がない。
これらの例から解るように、被請求人は、甲第28号証と同様の検索結果から、自己に不都合な例を積極的に隠蔽して、自分勝手な主張を展開したに過ぎず(それは、甲第28号証において、被請求人が指摘した例が全て含まれていることからも、伺える)、請求人の商標から「オリゴメール」との称呼が生ずることがない等という事実の立証には、全く証明力がない例示といえる。
また、被請求人は、「printemps(プランタン)」や「L’AIR DU TEMPS」に関する審決例をもって、必ずしも、フランス語的に称されるとは限らない旨主張するが、これらの「全体に」読み方が難解な言葉と、本件商標とはケースとは全く異なるばかりか、本件で問題となっている」「○○MER」に関する例でもなく、争点から全く外れた主張であり、本件において何の参考にもならない。
(B)被請求人の過去の主張や取引態様との関係について
また、被請求人は、甲第18号証に示すように、本件商標の審査段階における拒絶理由通知において、「入浴剤の商品名及び化粧品等の原材料名として知られる『オリゴメール』の文字を書してなる」との指摘を受けているが、仮に、「オリゴメール」が、この拒絶理由の指摘の根拠となった請求人の商標である「OLIGOMER」と非類似であると考えるならば、権利の移転等せずに、あるいは、権利を移転した後であっても、単に「非類似であって、出所の混同等生じない」旨を主張すればよいことである。換言すれば、被請求人は、両商標が類似していることを前提として認識していた、ということに他ならない。
ましてや、請求人の商標と本件商標とが非類似であるとすれば、何より、被請求人自ら、請求人の商標である「OLIGOMER」を「オリゴメール」と称して請求人の商標に付記している事実が、全く説明のつかない行動となる。正しく、請求人の商標を「オリゴメール」と称することができるからに他ならないであろうし、これを被請求人も認識していた、ということになる。そして、現実の取引における問題を解決するための同法第53条の2の取消審判事件においては、このような取引の実状を考慮して、類似判断をすべきである。
この点、被請求人は、本件商標は被請求人の代表者である日下部氏等が「様々に思案し、その結果、…『-MER』を『メール』と読ませることとし、『オリゴメール』の日本名称によって『OLIGOMER』を普及させることとした」旨主張し(後述第3の1(4)(2))、本件商標は、請求人の商標である「OLIGOMER」とは無関係な造語である旨主張するが、そうであれば、日本における使用の確保のために、「オリゴメール」との名称で登録する必要があった、との主張も成立しない。被請求人が主張するように、請求人の商標からは「オリゴマー」との称呼しか生じないのであれば、文字通り、日本においても「オリゴマー」との文字を付し、また、当該文字について商標登録を受ければよいだけである。そうしなかったのは、請求人の商標からは「オリゴメール」との称呼が生ずると認識したからに他ならず、今回の答弁書での主張と矛盾する。
ましてや、答弁書において主張するように、「OLIGOMER」とは直接関係なく、日下部氏らが独自に思案した呼び名であるならば、それは請求人の与り知らないことであり、そうである以上、その使用・登録について、そもそも請求人が許諾を与えるという立場にもなく、後述するように、請求人が何らの黙示の許諾を与えるはずもない。被請求人も、本件商標「オリゴメール」が請求人の商標である「OLIGOMER」と類似するものだからこそ、許諾の必要性を感じ、その有無を答弁書において主張しているのであろう。
(C)まとめ
以上より、請求人の商標である「OLIGOMER」は、「オリゴメール」の称呼を有するから、この称呼において共通する本件商標と類似する。
(3)正当な理由について
更に、被請求人は、請求人との独占販売契約や日本での販売活動等について、つらつらと述べた上で、被請求人が「オリゴメール」について日本で権利取得をするに際して、請求人から黙示の許諾があったとして、被請求人には「正当な理由」がある旨を主張する。
しかし、まず、日本での販売活動については、請求人との間で独占販売契約を結んでいる以上、そのための営業努力をするのは当然のことである。それをもって、「OLIGOMER」と同一又は類似の商標が、被請求人のものになるわけではない。
また、このように、日本において営業努力をした者が、本来の所有者の意思と無関係に権利取得の正当性を得るわけではない(甲第25号証)。
営業努力をすれば、本来の所有者とは無関係に権利取得が維持されるのであれば、商標法第53条の2の存在自体が無意味なものとなる。
ましてや、被請求人は、「オリゴメール」は被請求人の業務に係るものとしてのみ知られる等と驕り高ぶった主張をしているが、「OLIGOMER」ないしは「オリゴメール」は、被請求人の販売業務に係るものとしてのみ認識されている等という事実は全く存在せず、また、被請求人が販売代理店だからこそ日本においても販売できたわけでもなく、むしろ製造元としての請求人も記載され、また、請求人の製造・輸入に係る商品だからこそ、日本についても流通してきたものである。
なぜなら、商品、ましてや、化粧品という需要者が使用の実感を味わう商品である以上、その商品自体の性質が、需要者に満足のいくものでなければ、どのような販売活動をしたところで、需要者の要求には応えられず、信用も蓄積されないからである。
そして、同法第53条の2は、甲第25号証にあるように、むしろ、商標権の取得について、契約で定めがない場合や、契約期間の終了後において、代理人や代表者であった者が、被請求人のように、自己の権利を主張して暴走するのを規制するために設けられているものである。
本審判事件も、かかる被請求人の暴走事実が背景に存在し、そもそも、フランス国における商品及び引用商標の所有者が、これを輸出をするに際し、日本における販売経路をどのように選択するかは、様々な事情を考慮して、請求人の意思により決せられるべきものであるところ、これを不当に制限し、請求人の意思に反していること自体が、公正な国際信義に違反している。
また、被請求人は、商標「オリゴメール」についての日本での権利取得について、請求人から何らの指示がなかったことをもって、黙示的に許諾された、と短絡的に解釈しているが、請求の理由においても主張したように、そもそも契約において、知的財産権の取得を明確に禁止しており(甲第5号証の2)、改めて指摘するまでもない、というだけである。
この点、被請求人は、権利取得が禁止されているのは「OLIGOMER」であって、「オリゴメール」ではない等と詭弁を主張しているが、とある国の商標を、他の国において使用する場合、その国の言語に合わせて翻訳する必要があることは当然のことであり、上記契約からすれば、「OLIGOMER」の呼び名である「オリゴメール」についても禁止されると、請求人が解釈するのは、自然なことである。
それは同法第53条の2において、同一の商標のみならず、「類似」する商標についても、規定されていることからも、当然に理解できる。そして、上述したように「OLIGOMER」と類似の商標だからこそ、上記契約内容からすれば、通常の取引の常識から判断すれば、被請求人が無断で「権利取得」することなどあり得ないので、指摘しなかったというだけである。
ましてや、請求人は、日本において「OLIGOMER」について商標登録を受けている以上、よもや被請求人が「オリゴメール」について権利取得することなど努々想像も付かない以上、改めて指摘等するはずもない。
加えて、請求人の「OLIGOMER」についての商標登録をもってすれば、これと類似する「オリゴメール」の使用も禁止できる以上は、被請求人が日本での販売活動を維持する必要性から権利取得をする、という点にも理由がない。
要は、黙示的に権利取得を許諾された等というのは、単なる被請求人の自己都合的な思い込みに過ぎない。請求の理由においても詳細したように、権利取得を許諾することを信じさせるような行為は、一切見当たらないのである。
以上より、被請求人が日本において権利取得したことについて、「正当な理由」は存在しない。

第3 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)請求人が、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者であることについて
甲第3号証の2及び甲第4号証の2に記載のとおり、パリ条約の同盟国であるフランス国において商標「OLIGOMER」に関する権利を有する者は「SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION CODIF INTERNATIONAL」であるところ、請求人の名称は「コディフ インテルナショナル エス.ア.」であり、異なる法人主体であるので、請求人は、引用商標「OLIGOMER」に関する権利を有する者とは認められない。
その証拠として、引用商標「OLIGOMER」の更新の登録証書訳文(甲第4号証の1)において、「申告者:SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION CODIF INTERNATIONAL,準株式会社(SAS)」とあり、これがフランスにおける商標権者であるが、さらにその下の欄に、「代理人もしくは連絡先」として「CODIF INTERNATIONAL」と記載されているので、両者が同一の法人主体ではないことは明らかである。
このため、請求人はパリ条約の同盟国であるフランス国において商標「OLIGOMER」に関する権利を有する「SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION CODIF INTERNATIONAL」と同一の者ではなく、本審判の請求人適格を満たさない。
よって、この点だけでも、本件審判請求は却下ないしは棄却されるべきである。
因みに、請求人は、審判請求書において「(7)フランス国における商標権者と請求人との同一性について」との項目を設け、フランス国における商標登録原簿、更新の登録証書の住所、独占販売契約書の住所、我が国の商標登録第4257602号における住所が一致していないことについて、纏々説明を行っているものの、肝心の名称に関する相違点については、一言も言及されていない。
両者は「CODIF INTERNATIONAL」部分が共通していることから、何らかの関連性を有する企業とは思われるが、本審判の請求人適格は、その趣旨からも「パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者」と厳格に同一人であることが求められるものであり、これを満たさない本件審判請求はそもそも成り立たない。
(2)商標の同一又は類似について
本件商標は片仮名文字で表された「オリゴメール」であり、これより「オリゴメール」の称呼が生ずるものである。
一方、請求人が引用商標「OLIGOMER」の日本における称呼は、「オリゴメール」ではなく、特許庁のIPDLにおいても参考称呼として示されているように、我が国で最も慣れ親しまれた外国語である英語風の発音として、「オリゴマー」であると考えるのが自然である。
その証拠として、IPDLにおける参考称呼のほか、乙第1号証として提出する「理工学辞典」に記載のとおり「OLIGOMER」は「低分子量重合体」の意味合いで「オリゴマー」と発音されている。
また、「JIS工業用語大辞典」(乙第2号証)、「現代商品大辞典新商品版」(乙第3号証)においても同様に「OLIGOMER」は「オリゴマ-」の片仮名表記で表わされている。
以上の社会的事実として、引用商標「OLIGOMER」の自然な称呼は「オリゴマー」であり、「オリゴメール」ではない。
請求人は化粧品の分野ではフランス語の商標が使用されることが多いため、フランス語で「海、海洋」を意味する「MER(メール)」のように「○○MER」が「○○メール」と発音されることが我が国でも一般的に知られていると述べている。
しかしながら、この点も事実ではない。何よりも、如何に化粧品の分野においてフランス語が使用されることが多いとしても、フランス語自体は、特にその発音は日本人には極めて難しいものである。例えば、「printemps」を、平均的な日本人はどのように発音するであろうか。もし、東京銀座のデパートがなかったら、到底「プランタン」とは読めないであろう。
このような取り扱いは特許庁においても裁判所においても踏襲されている。たとえば、レールデュタン事件では、取消前の審決(平成4年審判第12599号)では、引用商標であるフランス語の商標「L’AIR DU TEMPS」は「レアーデュテンプス」と称呼すべきとされ、正しいフランス語の発音である「レールデュタン」は認定されていない。
この審決に対する取消訴訟(平成9年(行ケ)第164号)においても、東京高裁は審決と同様の判断を行い、本件商標「レールデュタン」は引用商標「L’AIR DU TEMPS」とは称呼上非類似の商標であると判断している。
であるからして、フランス語の我が国における普及程度を鑑みると、一般的な需要者皆が、引用商標「OLIGOMER」のように語尾に置かれた「MER」に接した場合、これを「メール」という発音で把握するかどうかは甚だ疑問であり、むしろ慣れ親しんだ英単語「SUMMER(サマー)」、「DRUMMER(ドラマー)」、「TIMER(タイマー)」のように、「マ-」と発音することの方が一般的である。
英語で発音することが困難なスペリング(綴り)であるならあるいはフランス語式に発音しようとするかも知れないが、その場合でも「OLIGOMER」なる既成の辞書語としてのフランス語が存在しない以上、これをどのように発音するかについては固定的なものではなく、人によって異ならざるを得ないのである。
まして、英語で容易に発音できるような語を敢えてフランス語でまず発音するということは考えにくいのである。
請求人が例として引用する「MER」は、シャンソンの「ラ・メール」などで日本でも広く知られたフランス語であって語尾に付いた「○○MER」の発音の参考となるものではない。
同じく請求人が引用する「Merci」も請求人が主張するように「メルシー」であって、「メールシー」ではない。請求人の主張が妥当するのであれば、「OLIGOMER」の称呼ば「オリゴメール」ではなく、「オリゴメル」となるべきである。
被請求人が知る限り、語尾に「○○MER」が位置するフランス語では、「愛する」を意味する「aimer(エメ)」、「和らげる」を意味する「calmer(カルメ)」、「香水をつける」を意味する「parfumer(パルフュメ)(乙第4号証)のように、「○○MER」は「メ」と発音することの方が多く、かつ自然である。
そうすると、フランス語に堪能な者であれば、「OLIGOMER」は「オリゴメール」ではなく「オリゴメ」と発音するであろう。つまり、フランス語式でも英語式でも「OLIGOMER」が「オリゴメール」と発音されることはないのである。
さらにいえば、化粧品の分野においてフランス語が使用される割合は他の分野に比べ多いと言えるかもしれないが、これがすなわち、英語が化粧品の分野で使用されていないということにはならない。英語の商標はどのような分野においても我が国で一般的に好まれ使用されており、化粧品の分野では英語だけではなく、フランス語も同様に好まれるということにすぎない。
そして、このことは、我が国における下記の商標登録の一部の例によっても記される。
第3類「化粧品」を指定した「MER」を含む登録商標(乙第5号証)
・登録第3255179号「マーメディア/MERMADIA」(権利者:株式会社コーセー)
・登録第2271732号「PRIMER/プリマ-」(権利者:原沢製薬工業株式会社)
・登録第2456309号「リラックスプライマー/RELAXPRIMER」(権利者:セバスチャン インターナショナル インク)
以上のとおり、化粧品の分野であることのみによって、「MER」が「メール」とフランス語風に発音されるという請求人の主張は妥当ではなく、「OLIGOMER」からは、「オリゴマー」、「オリゴメ」など様々な称呼が生じ得るものであり、請求人の主張する「オリゴメール」がもっとも自然な称呼であるということは毫もいうことはできないのである。
而して、請求人が引用商標「OLIGOMER」の称呼「オリゴマー」あるいは「オリゴメ」と本件商標の称呼「オリゴメール」とでは、語数の相違や語尾の「マー」あるいは「メ」と「メール」の差異によっても、称呼上、十分に聴別可能な商標であり、非類似の商標である。
このことは、請求人の使用商標「OLIGOMER」が被請求人の商標と非類似の商標として並存登録されていることからも容易に理解される。
従って、請求人とは異なる法人が所有する引用商標「OLIGOMER」と本件商標とは同一又は類似するものではないので、同法第53条の2の要件を欠くものである。
(3)商品の同一又は類似について
上記のとおり、本件商標と引用商標とは、商標において同一又は類似するものでない以上、商品の同一ないしは類似性については無意味の議論となる。
(4)独占的販売代理店契約について
(1)契約の事実について
平成17年6月29日付け提出の原審意見書の甲第1号証に詳しく記載されているとおり、被請求人は、現ヒヨキの代表取締役会長である日下部喜代子氏が製品「OLIGOMER」に代表されるフィトメールブランドの創立者であるジャン・ジェトワン氏と出会い、その思想と製品に共鳴したことから、フィトメールブランド商品の日本における独占的輸入販売権を取得し、同社製品の輸入販売を目的として昭和60年(1985年)11月1日に設立された会社である。
そして、当該独占的販売代理店契約は1985年より、逐次更新され、最も近いところでは、2002年12月5日に2003年1月1日から2006年12月31日迄の契約更新の合意がなされている(甲第5号証)。
当該契約は甲第5号証「第2条:契約期間」のとおり、当事者が契約の期間満了をもって終了させるためには、期間満了前の6カ月前に更新の協議は行わない旨の通知を受領書付書留郵便にて通知するものとされている。
しかしながら、コディフ社現代表取締役アントワーヌ・ジェドワン氏は、当該条項に反し、一方的に2006年9月25日付ファックスおよび書留郵便にて代理店契約を解除し契約更新しない旨の通知を行った。
これに対し、被請求人は現在、当該解除通告は契約に反するものであるとして訴訟(東京地裁平成19年(ワ)第10395号損害賠償請求事件)を提起しており、未だ訴訟は終結していないため、当該契約解除の効果は生じていない。
よって、被請求人は1985年以降、フィトメールブランド商品の我が国における独占的販売代理店であり現在もこれに変わりはない。
(2)過去の両者の契約関係について
1985年から現在まで約22年間にわたり契約が逐次更新されていることからも明らかなように、両者の関係はこれまで良好なものであつた。
先代のジャン・ジェドワン氏にフィトメールブランド商品の日本での販売を請われ、その思想と製品に共鳴した日下部喜代子会長が、これを引き受け株式会社ヒヨキを設立したものの、当時(1985年)、我が国において「OLIGOMER」は一般に全く認知されていなかった。
同様に、乙第6号証の化粧品業界の学術誌である「フレグランスジャーナル」に掲載された日下部喜代子会長の執筆にあるように、「OLIGOMER」は当時ヨーロッパで行われていたタラソテラピーを自宅で手軽に実践できる製品であったが、このタラソテラピーという海洋療法についても当然我が国では全く認知されていなかった。
タラソテラピー(海洋療法)は、現代人に不足しがちなミネラル、特に人間の体の働きに必要なオリゴエレマンという海水、海藻等に多く含まれる微量元素を摂取する療法としてヨーロッパで確立されたものであり、これを日本で初めて紹介したのが被請求人会社会長日下部喜代子氏なのである。
そして、良質の海水をフリーズドライした入浴剤「OLIGOMER」は、当時、ヨーロッパの高級なエステティックサロンでしか体験することのできなかったこのタラソテラピーの海水入浴療法を、我が国の一般家庭でも手軽に実践可能とするものであった。
このような「OLIGOMER」の魅力を伝え、日本にタラソテラピーを文化として根付かせるため、日下部喜代子会長ならびに夫の日下部英樹氏は、フランスの商品「OLIGOMER」の日本におけるブランド名称の選定に迫られた。
上述のように、「OLIGOMER」は、英語式に「オリゴマー」あるいはフランス語式に「オリゴメ」と読めるのだが、この点についてコディフ社側からは何らのアイデアもサジェスチョンもなかった。
そこで、日下部氏夫妻は様々に思案し、その結果、海から兼ねて語尾の「-MER」と「メール」と読ませることとし、「オリゴメール」の日本名称によって「OLIGOMER」を普及させることとし、その旨をコディフ社に伝えた。
そこで、本来であれば、商標の使用を保全し、他社による冒用登録を防ぐためにも、直ちに商標登録を進めるべきところであったが、コディフ社からは何らの指示もなく、また同社の商標である「OLIGOMER」さえ商標登録出願をしておこうという姿勢は見られなかった。
因みに、コディフ社が商標「OLIGOMER」を出願したのは、それから10年以上も経過した平成9年(1997年)4月のことである(甲第15号証及び同第16号証)。如何にコディフ社が商標管理に怠慢的であったかという事実を示すものである。
しかし、商標登録について日下部氏夫妻も十分な知識を持っていなかったため、日下部英樹氏の古くからの友人である仲宇佐尤一氏に依頼して、商標「OLIGOMER/オリゴメール」を「入浴剤」を含む旧第1類について昭和61年(1986年)4月15日に出願してもらい、第2072138号として登録された(乙第7号証)。その後、本件商標権は平成元年11月6日に被請求人に移転登録された(原審意見書の甲第52号証)。
その上で、株式会社ヒヨキは、「オリゴメール」の販売網を自ら開拓し、多大の広告宣伝を行ったばかりでなく、日本タラソテラピスト学院というタラソテラピーの教育機関まで設立し、あらゆる面からタラソテラピーおよび「オリゴメール」を普及させるため、22年間の長きにわたり日夜努力を続けてきたのである。
その結果、現在のように、タラソテラピーは一般的に認知され、「オリゴメール」は株式会社ヒヨキの名と一体となって、株式会社ヒヨキの高級化粧品の商標として日本において広く知られるようになったのである。つまり「OLIGOMER」の英文商標は分からなくとも、「オリゴメール」の日本名は、需要者らに広く知られているのである。
このように、全く新規の外国商品において、当該外国名と日本名とが微妙に異なることは珍しいことではなく、そして日本名の商標が需要者らに広く知られるようになることもまた珍しいものではない。
要は、日本で広く知られた商標が、どこの企業を出所として日本の需要者間において広く知られているかである。
事案は異なるが、ワニのマークの「Crocodile」ブランドについて、元来は香港企業に由来するブランドであったものが、日本企業が商標権を取得し、日本企業の多大なる営業努力によって「Crocodile」商標が日本において広く知られるようになり、当該商標に日本企業のグッドウィルが化体したとして、同一ブランドの並行輸入を認めなかったクロコダイル事件判決(大阪地判 平成5年(ワ)第7078号 平成8年5月30日判決)がある。
つまり、外国ブランドの商品であっても、日本企業の営業努力によって日本企業との結びつきが強くなり、当該商標に日本企業のグッドウィルが化体した場合には、日本企業の商標として保護されるべきというのである。
この論に従えば、本件商標「オリゴメール」の名を日本において採択したのも、また広く知らしめたのも被請求人であり、本件商標「オリゴメール」には被請求人のグッドウィルが化体しているのである。
然るに、コディフ社は商標「オリゴメール」の選定にはまったく関与して居らず、上記のように、むしろ無関心であったし、当然のことながら、株式会社ヒヨキによる日本タラソテラピスト学院設立や「オリゴメール」の販売網の開拓にも関知していなかった。そして何よりも重要な、商標「オリゴメール」を周知商標にするための広告宣伝に係る費用を一切負担しておらず、ソフト面を含めて全てこれまで被請求人が努力し、負担してきたものである。
したがって、前記クロコダイル事件判決が判示するように、本件商標「オリゴメール」に化体しているグッドウィルは、被請求人が享受すべきものである。
而して、被請求人の営業努力を販売実績にして示すに、乙第8号証は、2002年10月から2007年6月までのオリゴメールの売上および販売個数の推移表であるが、2002年10月から2005年9月までの年次実績を見ても、1985年当時全く無名であったオリゴメールを、年間売上2億4千万円から3億8千万円にまで安定的に成長させ、如何に商標「オリゴメール」の普及に被請求人が努力し続けてきたかが窺い知れるのである。この金額は被請求人が販売した卸売価格であり、小売金額に換算すると、6億円から9億5千万円ほどにもなるので、「オリゴメール」のマーケットが如何に拡大されたかが良く理解される。
このため、コディフ社現代表取締役にアントワーヌ・ジェドワン氏が就くまでは、コディフ社も我が国における被請求人の尽力に感謝しており、非常に良好な関係が築けていたのである。
アントワーヌ・ジェドワン氏は「オリゴメール」が我が国において、十分に認知され、販売基盤が出来上がっていることを認識すると、次第に強引な態度を示すようになり、株式会社ヒヨキの買収、独自ルートでの販売について言及するだけでなく、女性は経営に向いていないとして、日下部喜代子会長に経営から退くよう要求するなど嫌がらせとも思われる無謀な要求も行うようになった。
なお、審判請求書でも言及されているが、被請求人が代理店契約を交わした相手は、正確には「コディフ インテルナショナル エス.ア.」ではなく、その一部門である「Laboratoires PHYTOMER」であり、本審判の請求人とは同一ではない。
(5)本件商標の被請求人による登録出願に関する請求人の承諾について及び登録出願に関する正当な理由について
上述のとおり、1985年当時、「オリゴメール」販売に関する厚生省の販売許可、販売網開拓などあらゆる手続及び費用は完全に被請求人に任されて居り、我が国で使用する商標などについても、コディフ社からの指示は何もなかった。
「OLIGOMER」商品の独占的販売代理権を得た被請求人は、法的にも薬事法上、商品名の片仮名表記が求められ、また需要者に親しまれるブランドとして定着させるためにも、商品「OLIGOMER」に片仮名の名前を採択することは、不可欠なことであった。
そこで、いくつかの考えられる発音の中から、被請求人が「オリゴメール」の片仮名表記を創案し採用するに至ったのである。
一方、契約書中の「販売権授与者による登録中の商標もしくは登録済みの商標、およびとくに販売権授与者との打ち合わせにおいて知り得た、販売権授与者の業務により設定された商標を、販売権受理者は、販売権を授与された領土もしくはその他の領土において、登録してはならない」(甲第5号証)との文言は、コディフ社が引用商標「OLIGOMER」等について、被請求人の登録出願を制限するものである。
その証拠に、コディフ社が片仮名商標の「オリゴメール」をいずれの国においても商標登録しようとしたとの形跡はないし、被請求人による片仮名表記「オリゴメール」の使用に対して、これまで異議を唱えたこともない。つまり、黙示の承諾を与えていたのである。
そのような異議が唱えられたのは近年になって日本における商品「オリゴメール」の売り上げが順調に推移するようになり、そしてコディフ社の代表者がアントワーヌ・ジェドワン氏に変わり、氏が自らその利益を独占するべく被請求人との契約を一方的に打ち切った後、本件審判が請求された本年5月15日になってからである。つまり、契約を昨年末で打ち切るまで、請求人は本件商標に対して黙示の承諾を与え、その正当性を認めてきたのであり、本件商標が有効に存在したことで、請求人は何らの努力なくして、その利益を享受してきたにも拘らず、今年の5月になって、本件商標の正当性を否定しようとする、誠に身勝手な態度であると非難せざるを得ない。本件商標の登録当時正当であった商標登録が、請求人の突然の態度の豹変という事後的な事由によって、違法な商標登録に変化するものではないのである。
そもそも、コディフ社から何ら商標登録に関する指示もない中、もし、被請求人がこれを22年間コディフ社に委ね、登録出願を行っていなかったとしたら、果たして現在のように安全に「オリゴメール」が、家庭内で手軽にタラソテラピーを体現できる商品として広く普及していたかどうかは疑問といわざるを得ない。
上述のように、被請求人は、自社の商標の管理にでさえ無頓着なのであり、被請求人が早期に登録出願を行っていなければ、他社に容易に模倣され、安全にビジネスをし続けることは不可能であったことは疑いも無い。
よって、他社に侵害されることなく、安全に「オリゴメール」商品を販売し続けるためにも、登録出願を行わないまま放置しておくことはできず、被請求人には十分に正当な理由があったと言えよう。
そして、被請求人は日本において、商品「OLIGOMER」をどのような読み方で需要者に浸透させるかを考えた末、「オリゴメール」の読み方を採択したのである。
実際に、シンガポールなどでは「OLIGOMER」は英語風に「オリゴマー」と発音されており、もし販売開始時に被請求人が別の読み方を採択していたならば、我が国でも別の名で定着することになっていたであろう。
因みに、被請求人代理人は、ドイツのスポーツ用品ブランドのプーマ社の代理人でもあるが、「PUMA」は日本ではドイツ語式の「プーマ」の称呼によって親しまれているが、他の国々では英語式の「ピューマ」の称呼で周知されている。
よって、商品「OLIGOMER」を「オリゴメール」と命名し、これを需要者に親しまれるように、今日まで約22年間我が国において慈しみ育ててきたのは被請求人に他ならない。
そして、そのような「過去の事実」が、請求人の一存で否定され、本件商標の登録までもが違法とされるものではない。商標登録が適法か違法かは客観的な事実によって決められるべきものであり、一企業の思惑によって事後的に変更させられるべき性質のものではない。
続いて、コディフ社は被請求人が「OLIGOMER」に片仮名文字「オリゴメール」を付して使用していることを何度も目にし、認識していた事実を下記に述べる。
まず、通常の取引を鑑みても分かるように、22年間もの長期にわたって契約を継続し、日々業務上のやりとりを行う関係において、販売されている商品自体はもとより、カタログ、広告、書簡などを通し、我が国における商標「オリゴメール」をコディフ社が全く認識していなかったということはあり得ない。むしろ、積極的に歓迎したのが事実というべきであろう。
さらに、2003年の契約更新時からは、日本向けの製品に貼付する日本語ラベルを、フランス本国においてコディフ社がパッケージごと印刷することになったのである。
2003年以前は、日本語ラベルの原版の作成から印刷まで被請求人が行っていたが、最も売り上げの多い我が国において、「オリゴメール」を始めとする売り上げの大きな商品から、これを日本で貼付する作業に係る経費と労力を削減したいと考えた被請求人はコディフ社と交渉し、その結果、乙第9号証のように日本語記載部分のラベルも含めたパッケージ印刷をコディフ社で行うことになったのである。
なお、本来コディフ社はすべての日本向け商品は完成品として日本法に準拠した製品を供給することになっており、必然的に薬事法の規定を満たした日本語ラベルの貼付ないし印刷をその製品に行う義務があるにもかかわらず、それを長年行わず、被請求人が日本で行わざるを得ない状態にして放置、コディフ社はその費用負担もして来なかったのである。
よって、日本語ラベルの印刷業務を自らの管理下においたコディフ社は、これに記された片仮名文字「オリゴメール」に従来以上に日々接してきているのであり、日本でのビジネスに長年関わってきたコディフ社がこれを認識していないはずはないのである。
つまり、1985年より20年以上もの間、我が国における販売に必要な手続および費用を全て被請求人に委ねていたコディフ社は、被請求人の商標「オリゴメール」の使用について、何度も目撃し、認識していたが、被請求人自身の努力で適切に商標を保護することを望んでいたからこそ、敢えて自ら当該商標について言及しなかったものと思われる。これこそ請求人が本件商標の登録に承諾を与えていたことの事実であり、被請求人が本件商標を登録出願したことを正当化していたのである。
そして、被請求人のたゆまぬ努力が実り、「オリゴメール」が大きく成長を遂げたここに至って、被請求人が築き上げたブランド及び販売基盤をそのまま取得するため、本年になって初めて引用商標「OLIGOMER」を理由に取消を試みたことは以上の事実からも容易に把握できる。
したがって、被請求人が使用し続けてきた「オリゴメール」に20年以上もの間、日々接しながら、黙していた請求人の行為は「黙示の承諾があった」ことに他ならず、上述のとおり、請求人から何ら指示も援助も無い中、他社に侵害されぬよう「オリゴメール」を我が国において適切に保護するため商標登録出願を行うことは被請求人にとって不可欠な行為であり、これには正当な理由があったといえるのである。
(6)その他の事情
乙第10号証は、被請求人が平成19年6月27日にソニープラザ銀座店(乙第11号証)にて買い求めた商品「オリゴメール」のパッケージ写真であるが、当該商品は請求人によって2007年の初めに設立されたフィトメール・ジャパン株式会社が販売するものである。
パッケージ背面の写真を一見して明らかなように、ラベル部分は被請求人の商品のように印刷されたものではなく、後から商品に貼り付けられたものであるが、そのラベルの下には「株式会社ヒヨキ」と日本語が印刷されていることが分かる。
つまり、請求人は、被請求人の製品をそのまま自社商品として流用し、もともと印刷されていた被請求人の表示の上から「発売元:フィトメール・ジャパン株式会社、製造販売元:アブコ株式会社」と記されたラベルを貼付して商品を販売しているのである。
本来であれば、日本語の記載部分からして新たに企画デザインし、販売者として責任のあるラベル表示をしなければならないところ、被請求人が作成した原版によって印刷された容器をそのまま流用し、自社製品として販売しているのであり、湿気の多い浴室で使用されるという環境を考えた場合、当該ラベルがいずれ剥がれてしまうこともあり得るであろう。
そして、そのような請求人の商品によって需要者らに事故が発生した場合、元の印刷されたラベルに表示された株式会社ヒヨキに、当該商品の製造物責任を求められることもあるのである。このようなことは、被請求人としても到底容認し難いものであり、薬事法にも反する疑いが甚だ大きいものと思われる。
以上のとおり、請求人は利益偏重の経営方針により、被請求人が苦労して作成した容器の印刷原版を流用するのみならず、被請求人が20年余りの年月をかけて需要者に愛されるよう我が国で大切に育て上げてきた「オリゴメール」に化体したグッドウィルにフリーライドし、需要者、取引者らを混乱させる行為を続けていることを付記する。
(7)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第53条の2に規定する取消事由に該当しない。

2 弁駁に対する答弁
(1)請求人が、パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者であることについて
請求人は、商標法第53条の2を規定する根拠となったパリ条約第6条の7に規定された請求人適格に言及し、本取消審判の請求入適格は「フランス国において登録処分を受けた者であるかどうかよりも、本来、商標の所有者と解すべき」と独自の理論を展開している。
我が国の同法第53条の2においては、「商標権に関する権利」とは明文で「商標権に相当する権利に限る」と記されているとおり、同盟国、加盟国及び締約国の商標法による商標権を指すものである。請求人の言う「商標の所有者」がどこまでのものを含むのかは不明であるが、商標権を有さずとも、単に商標を採択し、使用している者が所有者であるならば、登録要件を満たさないような商標が単に商標として使用されている場合にまで、これを使用する者(商標の所有者)が、このような取消審判を行い得るというのであろうか。このような、飛躍した論理は到底認められるものではない。
請求人は、その名称が、「CODIF INTERNATIONAL」の表示をもって特定されるとし、これと共に「societe a responsabilite Limitee(有限会社)」、「S.A.(株式会社)」、「SAS(準株式会社)」、あるいは「SOCIETE DE COURTAGE ET DE DIFFUSION」、「STE DE COURTAGE ET DEDIFFUSION」など、どのような文字が付されていようと「CODIF INTERNATIONAL」が共通すれば同一の主体であると主張している。
しかし、我が国でも、例えば、「ABC株式会社」と「株式会社ABC」のように、株式会社が語頭か末尾に付くかによって、全く別の会社となるように、「○○S.A.」、「○○SAS」など種々あった場合に、これらが実質的に同一の会社であるかどうかは、その名称や住所の表記が統一されていなければ、第三者が判断することなどできない。
請求人は、我が国の商標登録の際にも、登録第4257602号商標「OLIGOMER」については、「コディフ インテルナショナル エス.ア.」の名で権利を取得し(乙第12号証)、一方で、登録第1952319号商標「Phytomer」については、請求人の主張では同一法人と見られる「ソシエテ ドゥ クルタージュ エ ドゥ ディフュジョン-コディフ アンテルナショナル エス.アー.エス」の名称で権利を取得している(乙第13号証)。
そして、請求人は、これらの登録商標の権利者も、全く同一の主体であると主張するのであろうか。
このように、請求人が関連するフランス法人は複数社なのである。フランス本国の事情は与り知らないが、本審判は我が国の商標法に基づき請求されているのであり、本取消審判は、同盟国、加盟国及び締約国の商標法による商標権を有する者にのみ許されている以上、たとえ権利者に関連する主体などであろうと、商標権者以外の者が請求することは認められないのであるから、同法に通う名称で請求されるべきである。
(2)商標の同一又は類似について
(A)取引の実情及び登録例との関係について
請求人は弁駁書において、化粧品の分野では、フランス語的な読み方をされることが多いとの取引の実情を視野に入れて類否の判断をすべきとの主張を行い、「MER」が「メール」との称呼で登録されている商標登録例を根拠に「OLIGOMER」からは「オリゴメール」の称呼が生じると述べている。
しかし、このような主張は妥当ではない。
まず、化粧品の分野では、フランス語的な読み方をされることが多いため、これを考慮に入れて類似判断をすべきと述べられているが(上記第2の2(2)(A))、フランス語は我が国の義務教育で習う言語ではなく、仮令、化粧品の分野でフランス語の商標が採用されることが多いとしても、フランス語的な読み方を一般需要者が自然に認識できるものではない。
化粧品の分野であっても、フランス語が我が国において誰もが習う言語でない以上、フランス語の商標が使用され、その商標が知られるようになって初めて需要者は英語とは異なるフランス語的な読み方というものを認識していくのであり、見たことのない商標を見て、自然に一般需要者がフランス語的な称呼を認識することはない。
このことは、第一回答弁書で述べたとおりであるが、東京銀座のデパートがなければ、平均的な日本人が「printemps」を「プランタン」とは読むことは困難であり、実際に、特許庁や裁判所の判断においても、「L‘AIR DU TEMPS」は「レアーデュテンプス」と称され、フランス語的な称呼「レールデュタン」は生じないと判示されているのである。
請求人は、「printemps(プランタン)」や「L‘AIR DU TEMPS」は「全体に」読み方が難解な語として、本件商標とは異なり、全く争点の外れた主張と述べている。
しかし、これらの語が「OLIGOMER」に比べ難解とされる理由が被請求人には全く不明である。類否判断における取引の実情を考慮するにあたり、化粧品の分野においてはフランス語の商標が使用されることが多いため、「フランス語的な読み方をされる」と請求人が述べるならば、一般需要者のフランス語のレベルを検討することは不可欠である。
語数をみても、9文字のローマ字からなる「printemps」と8文字のローマ字からなる「OLIGOMER」に大差はなく、「printemps」が「OLIGOMER」に比べ難解とは言えない。また、フランス語を義務教育で習わない我が国の需要者には、「printemps」は理解できない語であるかもしれないが、当該単語自体は、フランス語の初級レベルの辞書にも掲載されているとおり、「春」を意味する初歩的な単語である(乙第14号証)。
このような初級レベルのフランス語の単語の綴りや読み方でさえ、平均的な日本人には、容易に理解できるものではないのであり、「OLIGOMER」のように、造語であり、辞書に掲載されていないような単語について、一般需要者が当然に「フランス語的な読み方」を認識することはあり得ない。
製品「OLIGOMER」の販売開始当時、「MER」から「メール」という称呼が生じることは一般的に認識されているものではなかったが、後述するように、被請求人が熱心に広告宣伝活動、啓蒙活動を続けた結果、「オリゴメール」およびタラソテラピーが化粧品業界において知られるようになり、その後、海の恵みをイメージさせる「MER(メール)」を含む商標の出願が、増加していったのである。
実際に、「オリゴメール」およびタラソテラピーの普及のため、被請求人は化粧品会社において勉強会をしばしば実施しており、勉強会の実施後、「オリゴメール」に追随するかたちで「MER(メール)」を含む商標の出願が行われていることを被請求人は幾度となく目撃していた。
そして、このことは正に請求人が提出した「MER」を「メール」と称する下記登録例が、被請求人が入浴剤「OLIGOMER」に「オリゴメール」という商標を採択し、使用し始めた昭和60年(1985年)より後に出願されたものであることからも明らかである。
・登録第2641744号商標「バンドメール/Bain De Mer」(乙第17号証)
出願日:平成3年(1991)12月19日 登録日:平成6年(1994)3月31日 外10件
上記11件の(※)商標の「Mer」は、接尾語ではなく、独立したフランス語の単語であり、接尾語の「○○MER」が「○○メール」と読まれることの証拠とはならない。
・登録第2073477号商標「Heliomer/エリオメール」(乙第15号証)
出願日:昭和61年(1986)3月26日登録日:昭和63年(1988)8月29日
・登録第2202483号商標「BLANCMER/ブランメール」(乙第16号証)
出願日:昭和61年(1986)4月28日登録日:平成2年(1990)1月30日 外9件
請求人は、上記登録例22件(上記の(※)商標を含む)により、「○○メール」、「メール○○」との称呼が付されている例が圧倒的に多いとして、化粧品の分野においては取引上「MER」が「メール」と称される事実が証されると述べているが、このような主張は当該証拠の背景にある事実には一切触れることなく、検索結果から表層的に自らに都合のよい論理を導き出しているに過ぎない。
上記「※」印が付された商標は、いずれも「MER」が本件商標のように接尾語として商標に含まれているものではなく、「バンドメール/Bain De Mer」、「EAU DE MER/オウ・ド・メール」、「メール オー メール/MER EAU MER」のように、「MER」が分離された態様の商標である。
さらに、これらの多くにはフランス語の代表的な前置詞である「DE」が付されていることからも、非常にフランス語的な商標であり、このような商標が接尾語「MER」の証拠となることはない。フランス語には疎い我が国の需要者においても、「Bain De Mer」のように、「Mer」が分離され、「De」が中間に配されているような態様であれば、何となくフランス語と認識され、わからないながらもフランス語的な発音を想像するものである。
このように、請求人が自己の主張の裏付けとして引用した登録例の中には多数の非常にフランス語的な商標まで、接尾語「MER」と同様に列挙されており、恰も全ての証拠が、接尾語として「MER」を配しているように擬装されていると言われても仕方がない。
請求人は、これらの証拠を不当に加えた上で、化粧品の分野では「MER」が「メール」と称されていることが圧倒的に多いと結論付けているが、このような、事実を歪曲した主張は認められるものではない。
請求人が、化粧品業界においては、語尾に結合された「○○MER」は「○○メール」と誰もが普通に認識していたと飽く迄も主張するのであれば、昭和60年(1985年)以前か、少なくともその当時の証拠を相当量提出すべきであろう。請求人が提出している証拠の大半が平成7年(1995年)より後のものであり、そのような証拠が提出されていないことこそ、逆に被請求人の主張を裏付けていると言えるのである。
さらに、上記登録例は、いずれも被請求人が入浴剤「OLIGOMER」に「オリゴメール」という商標を採択し、使用し始めた昭和60年(1985年)より後に出願されたものであり、登録第2073477号商標「Heliomer/エリオメール」(出願日:昭和61年(1986)3月26日)と登録第2202483号商標「BLANCMER/プランメール」(出願日:昭和61年(1986)4月28日)以外はすべて、平成に入ってからの出願であることが分かる。
被請求人は、当時我が国では知られていなかった海洋療法であるタラソテラピーおよび「オリゴメール」を普及させるに当たり、雑誌等の媒体、化粧品業界等に対しこれらを紹介する活動、勉強会などを積極的に実施しており、また、タラソテラピーを文化として根付かせるため、平成7年(1995年)に、日本タランテラピスト学院という教育機関まで設立していることは既述のとおりである。
このため、「海」と「美容」を繋げる発想を持たなかった我が国の化粧品業界等に、被請求人は海の恵みをもとにした美容というヒントを与えていたのであり、そのようなタラソテラピーに関する情報に接した化粧品会社等が、これから着想を得て「MER(メール)」を含む商標登録出願を行った可能性は高い。
そして、このような被請求人の自らの資金を投じた広告宣伝活動、啓蒙活動の結果、製品「オリゴメール」の良さが知られ、徐々に「オリゴメール」の認知度が上がるにつれて、これに追随するように、より多くの企業が「メール」を含む商標の出願を行い、上記のような結果となったのである。
このことからも、被請求人が株式会社ヒヨキを設立し、商標「オリゴメール」を採択した当時、このようなフランス語の称呼は化粧品業界においても一般的ではないことが容易に理解されるのであり、これらの登録例はむしろ、当該称呼の創作性および被請求人が普及させた「オリゴメール」の認知度を裏付ける重要な証拠と言える。
なお、弁駁書において触れられている甲第26号証の「MARIMER」は、平成8年10月16日付の出願であるが、「マリメール」の称呼は特許庁の参考称呼に過ぎず、実際の取引上における称呼の証明とはならない。
また、国際登録第792926号「PHYTOMER」はフィトメール社のフランス本国における出願を基礎とした国際登録であるため、我が国の取引の実情を証するものではない。
(B)被請求人の過去の主張や取引態様の関係について
請求人は被請求人の過去の主張などについて自らと全く係わりのない者が行った行為のように述べ、これを理由として「OLIGOMER」と「オリゴメール」が類似であると述べているが、極めて遺憾な主張と言わざるを得ない。
まず、拒絶理由の対応当時、両者は販売代理店契約を結んで約20年が経過していたが、それまで全ての公的な手続きが被請求人に一任されていた関係性を鑑みれば、フィトメール社の販売代理店として、第三者の模倣を排除し、安全に「オリゴメール」を販売し続けていくために、最も確実な方法で拒絶理由に対応するのは当然のことであり、手続きとしても何ら問題のないものである。
むしろ、請求人にとっても、自社の製品「OLIGOMER」が「オリゴメール」として我が国で認知されている以上、拒絶理由に対し、非類似を主張した結果、審査官の判断によって、認められない可能性が僅かでもあるならば、両者の関係性を説明することにより、確実かつ安全に「オリゴメール」の商標権を確保することが望ましいものであったことは疑いもない。
万一の場合を想定して、最良の対応を選択するのが、企業の常であり、被請求人が請求人の独占的販売代理店であることを説明すれば理解される場合に、敢えて真っ向から、非類似の主張を行う企業があるだろうか。
被請求人は、今まで、全ての我が国での販売に必要な手続き、費用を自らが負担してきたとおり、請求人の独占的販売代理店として、他社の模倣を排し、安全に商品を販売し続けるために、請求人も望む最善の策を探ったにすぎず、このことと実際の取引において、両者が非類似と認められるべきか否かについては別の議論である。
日本では、英文字商標「OLIGOMER」を以てしては、「オリゴメール」の称呼に類似する他社商標を排除することができないばかりか、片仮名文字商標「オリゴメール」の使用さえも危うくなっていたのであり、独占的販売代理店としての務めを果たしてきた被請求人に対し、感謝をするどころか、このような主張をすることなど、不誠実極まりないものと言える。
また、1986年になされた商標「OLIGOMER/オリゴメール」に係る出願で、欧文字「OLIGOMER」に片仮名文字「オリゴメール」が付されていることから、「OLIGOMER」の称呼が「オリゴメール」である旨主張するが(上記2の2(2)(B))、欧文字の称呼として生じ得ないものであっても、出願人が使用を欲する自らの創作による片仮名文字を付すことは商標登録出願の慣行上、全く珍しいものではない。
そして、後に詳述するように、「オリゴメール」は被請求人の命名した造語であることは、疑いもないものであり、一般需要者の認識と上記商標の態様とは何も関わりはない。
よって、被請求人による拒絶理由対応などが、「OLIGOMER」と「オリゴメール」の類似性の判断において参考とはなるものではなく、両者が非類似であることと、被請求人の過去の対応は何ら矛盾するものではないのである。
(C)まとめ
以上のとおり、請求人が「OLIGOMER」と「オリゴメール」が類似であることの根拠としている証拠は、なんら両者の類似性の証明とはならず、「OLIGOMER」と「オリゴメール」は非類似の商標である。
(3)正当な理由について
(A)日本におけるフィトメール社商品の商標の採択が被請求人の責務であったこと
請求人は、弁駁書において、「オリゴメール」という名称が「日下部氏が独自に思案した呼び名であるならば、それは請求人の与り知らないことであり、そうである以上、その使用・登録について、そもそも請求人が許諾を与える立場にない」とし(上記第2の2(2)(B))、また、被請求人が『オリゴメール』について権利取得することなど請求人には想像も付かないなどと述べているが(上記第2の2(3))、請求人は下記のとおり、フィトメール社商品の日本における商標を被請求人が名付け、管理していることを十分認識し、許諾していた。
本件は、請求人の代表者が変わったことのみを以て、請求人が過去の合法的権利関係を清算しようと意図したことに端を発しているのであり、それまでは全て請求人との合意の上で被請求人は善意で商標管理を行ってきたのである。
商標の決定は我が国における販売成果を左右し得る要となるものであり、販売する国の文化、商慣習などの背景を理解し、需要者に伝わるような名称を付す必要がある。
被請求人は、原名のフランス語表記をそのまま日本語の商標とすると、フランス語に馴染みの薄い我が国の需要者にとっては、親しみが湧きにくく、商品内容の理解が困難となる場合が多いことから、需要者に覚えやすく分かりやすい名称を付すことを重要課題とし、これら商標の決定は、社長決裁事項としてきた。
一方、更なる売上の増加を望む請求人自身も、被請求人が我が国で訴求効果の高い商標を付すことを期待しており、どのような商標を付して販売するかについては、フランス語の原名をもとにした商標の場合も、全く異なった商標の場合も、パンフレットなどの資料とともに、年3回定期的に開かれていたマーケティング会議等において、請求人は全て報告を受けていたのである。
以下は、「オリゴメール」以外の、被請求人の命名によるわが国のフィトメール社商品の商標の一部であるが、どのような商標にすれば、商品が我が国の需要者に受け入れられるかを苦心の末、決定していたことが窺い知れるであろう(乙第18号証及び乙第19号証)。
「シートニック」というシリーズ名はそのまま使用されているものの、個別の商品を指す「プロポーションクリーム」、「ポースレンクリーム」、「プリンプジェル」などの語は全て被請求人が名付けたものである。
被請求人は、それぞれの商品が狙うイメージを需要者に伝えるため、被請求人独自の解釈で、苦心して商標を採択した跡が見て取れるのであり、我が国で知られていないフィトメール社の商品を、需要者に少しでも手に取って、試したいという気持ちになってもらえるようにとの想いが伝わってくるようである。
そして、上記商標を見ると、「ジェル」、「クリーム」、「ガード」、「プロポーション」など我が国で最も親しまれている外国語である英語が、フランス語よりも多く取り入れられていることがわかるが、製品「OLIGOMER」についても、実際にシンガポールなどで使用されているように、英語的な「オリゴマー」の称呼で販売するという案も候補に挙がっていた。
最終的に、ありふれた英語的な発音よりも、「MER」を「メール」と読ませる称呼が新鮮であるとして、これを採択するに至ったのであり、ここでもし、被請求人が「オリゴマー」を採択していたら、我が国で「MER」を「メール」と称させる商標はこれほど出願されなかったであろう。
このように、請求人は、我が国における商標の採択、管理を被請求人に一任し、その結果の報告を受けていたにもかかわらず、「被請求人が『オリゴメール』について権利取得することなど請求人には想像も付かない」などと述べることは、真実に反する主張であり許されない。
なお、被請求人が平成15年(2003年)に作成したパンフレット(乙第18号証)と請求人が平成19年(2007年)に作成したパンフレット(乙第19号証)を見比べると、被請求人が名付けた上記商標がそのまま流用されていることが分かるが、これらの商標も全て請求人の商標であると強弁するのであろうか。
その他にも下記のとおり、「オリゴメール」というブランドを普及させるため、被請求人が確立してきた様々な販売の様式、パンフレットの文面等を、請求人は自ら立ち上げたフィトメール・ジャパン株式会社においてそのまま盗用し、使用し続けているのである。
たとえば、被請求人はフィトメール社本社の資料を参考に、「海洋成分を主有効成分として使用しています」、「地球環境をいたわる優しい商品創りをしています」、「動物性原料は一切使用していません」という項目を需要者へのメッセージとして採用し、フィトメールの「3大特徴」としてパンフレットに記載していた(乙第18号証)が、請求人はこのアイデアをそのまま流用し、同様の内容を「4大特徴」として自らのパンフレットに記載しているようである(乙第19号証)。
さらに、入浴剤「オリゴメール」を我が国の需要者に親しんでもらうため、被請求人は「おすすめの入浴方法」を記したチラシを作成していたが、これについてもそのまま盗用されている。平成17年(2005年)に作成された被請求人のチラシを見ると、そこには「まず38-400Cの浴槽のお湯に40gを入れ、よく溶かしてから15-20分間ゆっくり入浴します。頭や顔にお湯をかけながら入浴すると、しっとりとしてより効果的です」と記載されている(乙第20号証)。そして、請求人は、「おすすめの入浴方法」として、上記文面をそのまま、自らが平成19年(2007年)に作成したチラシに記載し、配布しているのである(乙第21号証)。
長年、請求人の独占的販売代理店として、被請求人が構築してきた上記様々な販売手法、販売様式、ツールなどを、一方的に契約を打ち切った後、請求人が当然に承継できるものではない。販売網のみならず、上記商標、パンフレット、チラシの文言などに至るまで全ての使用を欲するならば、それ相当の手続き、代償が必要であり、無断で使用し続けることなど公正な取引において許されざる行為である。
(B)両者の契約関係について
請求人は弁駁書の10頁(上記第2の2(3))において、「とある国の商標を、他国で使用する場合、その国の言語に合せて翻訳する必要があることは当然のことであり、同法第53条の2において同一商標のみならず、『類似』する商標について、規定されていることからも、請求人の商標である『OLIGOMER』の商標権の範囲に『オリゴメール』も含まれ、『オリゴメール』の商標権を取得することは、両者の契約に反する」と主張する。
請求人は「翻訳」と「類似」の概念を同一に論じているが、ある外国語について、その日本語訳があった場合に、これらがそのまま類似と判断されるものではなく、「OLIGOMER」は造語であり、日本語の翻訳が「オリゴメール」であるわけでもない。
そもそも、同法第53条の2には「翻訳」を取消の対象とする規定はないにもかかわらず、請求人は上記の議論により、無理矢理に「オリゴメール」は「OLIGOMER」の翻訳であり、このため類似しており、請求人の知的財産権の範囲内であるため、被請求人が「オリゴメール」の商標権を取得したことは同法第53条の2および両者の契約に違反すると主張する。そもそも、特段の意味の無い造語商標を「翻訳」できると考えること自体、理解に苦しむものである。
我が国の一般需要者の認識に照らせば、「OLIGOMER」からは、「オリゴマー」との称呼が生ずると考えるのが最も自然であり、「オリゴメール」は「OLIGOMER」に対する翻訳でもなければ、類似する商標でもないため、本件商標「オリゴメール」は契約書に記された請求人の知的財産権でもなければ、同法第53条の2の対象ともなり得ないのである。
また、請求人は、「オリゴメール」が被請求人の販売業務に係るものとして認識されているという事実は存在せず、化粧品自体の性質が需要者に満足のいくものでなければ、どのような販売活動をしたところで需要者の要求には応えられず、信用も蓄積されないなどと述べている(上記第2の2(3))。
しかし、このような主張は、化粧品業界の厳しい競争に晒された現実とはかけ離れており、20年に渡る被請求人の献身的な努力をあまりにも軽視するものである。
市場に数多ある化粧品の中で、百貨店、スーパー、薬局などの小売店に陳列の機会が与えられるのは極一部であり、名だたる大手化粧品メーカーが販売スペースを占拠する中、名前も知られていない海外の小規模な会社の自然派化粧品が需要者の目に留まる機会を得るまでには途方もない努力が必要となる。
また、仮に陳列の機会を得たとしても、あふれる商品群の中から、需要者に興味を持ってもらうまでには、それ相当の広告宣伝とイメージ戦略などが必須であり、単に陳列棚に並べられているだけでは、商品として生き残ることなどできないのである。
実際に、製品として魅力があっても、広告宣伝に十分な費用をかけられなかったり、イメージ戦略に失敗したり、商標管理に失敗したりしたために、市場から消えていく商品は数限りなく存在している。
被請求人が、20年あまりの歳月をかけて、タラソテラピーの普及とともに、「オリゴメール」について厳選素材を使用した高級自然派化粧品のイメージを築き上げた功績を、「独占的販売契約を結んでいる以上、当然」と請求人は述べるが、上記のような厳しい状況の中、一切の費用を負担して粘り強く普及に努めたことを鑑みれば、「当然に求められる行為」を超えた尽力である。
被請求人の、このような「単なる契約の履行」を超える行為を支えたものは、タラソテラピーと「オリゴメール」の普及に対する強い思い入れであり、長年に渡る請求人との契約関係を信じていたからこそ、あらゆる費用を一方的に負担することにも耐えてきたのである。
1985年の販売代理店契約の締結時より、定期的に行われる会議や交わされる書状、メールなどを通して、上記さまざまな費用を被請求人が負担し続けていることを十分認識しながら、自ら費用を負担しなければならなくなることを避けていた請求人は、「オリゴメール」に関する事業が我が国で実りきった今に至って、代表者が変わったことにより、突然一方的に契約を打ち切り、本件審判の請求を行っていることは既述のとおりであり、このような請求人の行為こそ、公正な国際信義に違反する行為と言えよう。
実際に、両者の契約においては、「契約の更新は満了期日から6ケ月前に交渉しなければならず、各当事者は他方当事者に対して満了期日の6ケ月前に受領書を伴う書留郵便で契約の再交渉をしない意思を通知する義務を負う。」旨が定められているが、請求人は条件付きの更新交渉を装って、被請求人を欺き、同年12月18日にとってつけた債務不履行を理由に12月31日限りの解約を通知している。
販売代理店にとって上記予告期間は、新たな商材を探し、自ら開拓した販売網を維持するための、会社の存否に係る重要な期間であり、特に20年以上にわたる総代理店契約であれば、メーカー側が契約を解消する際は、少なくとも2年間の予告期間が妥当と考えられるが、請求人はこれを無視し、20年以上に渡り被請求人が築き上げた販売網および被請求人が心をこめて名付けた商品名など、フィトメール社商品販売事業に係る全てを、瞬時に我が物とするため、一方的に契約を打ち切ったのである。
そして、請求人は被請求人から奪取した製品をそのまま自社商品として流用するため、もともと印刷されていた被請求人の表示の上から「発売元:フィトメール・ジャパン株式会社、製造販売元:アブコ株式会社」と記されたラベルを貼付して商品を販売していることは既述のとおりである。
いかに、長年の契約の末に、メーカー側が利益をすべて自らのものにしたいと望んだとしても、これにはその関係性に応じた解約までの期間、手続き、代償が必要とされることは国際的な取引においても常識であり、今般のような取引の秩序を乱す請求人の乱暴な行為は許されるものではなく、当該悪質な行為については、現在、日仏両国の裁判において審理中である。
以上のとおり、請求人は、日本で販売するために被請求人により採択された商標「オリゴメール」の存在を定期的な会議、交わされる書簡において把握していたにもかかわらず、あらゆる手続き、費用を被請求人の負担で進めることを希望していたため、敢えて自ら当該商標登録について言及しなかったのである。
そのような状況下で、安全に商品を販売し続けるため、被請求人が律儀に商標登録出願していたものを、今となって、我が国での販売事業を被請求人より強引に奪取するため、まるで何も与り知らなかったような顔をして、取消審判の請求を行うことなど認められるべきではない。
請求人は、他の公的な手続きと同様に、商標管理についても、被請求人により、つつがなく行われることを、黙示に要求していたのであり、被請求人は、これに応えるため、我が国において商標権を取得しなければならない「正当な理由」があったことは明らかである。

第4 当審の判断
商標法第53条の2に規定する商標登録の取消しの審判を請求するための要件は、「1)登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、2)その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるとき」である。
そこで、本件商標の登録についての該規定における取消の要件について以下に検討する。
1 パリ条約の同盟国で本件商標と同一又は類似の商標権を有する者であることについて
(1)請求人の名称と住所等が、請求人が提出するフランス国における登記簿謄本の訳文(甲第19号証の1)及び原文(甲第19号証の2)に記載のものとほぼ一致することから、請求人はコディフ社と認められる。
請求人の名称と住所等が、請求人が提出する引用商標の商標登録原簿の訳文(甲第3号証の1)及び原文(甲第3号証の2)、引用商標の商標登録の更新の登録証書の訳文(甲第4号証の1)及び原文(甲第4号証の2)並びにフランス国における登記簿謄本の訳文(甲第19号証の1)及び原文(甲第19号証の2)に記載のものとほぼ一致することから、請求人は、引用商標の権利者と認められる。
(2)したがって、請求人は、「OLIGOMER」の文字を書してなり、パリ条約同盟国であるフランス国において、1983年10月28日に第3類及び第5類に属する「美容品,石けん;香水(香料),エッセンシャルオイル,化粧品,頭髪料,歯磨き粉;衛生用品,食餌療法用品及び食品」(甲第3号証の1)を指定商品とする引用商標の商標権を有する者であることが認められるから、被請求人は、同法第53条の2に規定される「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者」に該当すると認められる。
しかしながら、被請求人は、上記甲各号証に記載の住所、会社組織形態等に相違があるから、同一人によるものではなく、引用商標は請求人の権利ではない旨主張している。
(3)そこで検討するに、甲第20号証ないし甲第24号証によれば、請求人会社の組織形態が変更になったこと、これによって「会社の目的、会社名、期間及び本社は、変更されない」(甲第22号証の2)こと、同一の略称、会社登録番号、会社住所が記載されていることから、請求人と引用商標の権利者とは同一法人であり、コディフ社と認められる。
また、引用商標が2回にわたり商標権の更新登録がされていること、そして、甲第5号証によれば、被請求人は契約期間満了日の2007年12月31日まで、20年以上にわたり請求人(商品販売権授与者)のPHYTOMER商品「入浴剤」等を取引(輸入、販売)しており、この間、請求人が日本国で商標権を有する「PHYTOMER」商標(乙第13号証)、「OLIGOMER」商標(乙第12号証)によって、支障なく商取引がされていたものと認められるから、請求人の上記主張は採用することができない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標は、上記第1のとおり、「オリゴメール」の文字を標準文字で書してなるから、その構成文字に相応して「オリゴメール」の称呼を生ずること明らかである。
一方、引用商標は、「OLIGOMER」の文字を書してなるから、仏語「OLIGO」(オリゴ:少数)と「MER」(メール:海)の語を結合した(以上「クラウン仏和辞典」による)語とも認められるから、「オリゴメール」の称呼をも生ずるものと認められる。
したがって、被請求人が、本件商標を「海からの贈り物」という意味合いから、命名したとする主張を採用することはできない。
(2)ところで、甲第11号証ないし甲第14号証によれば、被請求人が輸入した「PHYTOMER」商品は、「ケンコーコム」、「いいもの健康」、「楽天市場」、「爽快ドラッグ」のインターネットショッピングを通じて販売されていたものと認められる。
(3)そして、該商品の包装容器には、請求人の商標「OLIGOMER」「PHYTOMER」商標が付されており、甲第11号証によれば、入浴剤の製造元であるフィトメール社について、「フィトメール社は、1960年代よりお肌のために天然深海水と海泥、海草を使った製品の研究開発を行っています。原料の採取地はブルターニュの深海に限り、独自の技術により製品化を成功させてきました。本当の美しさを求める女性から、多くの支持をいただいているフランス最大のタラソ総合メーカーです。」、商品説明文には、「『フィトメール オリゴメール40g*10袋』はフランス・ブルターニュ地方の海水を凍結乾燥した海水100%の入浴剤です。生命維持に必要不可欠な天然ミネラルを豊富に含んでいます。・・・抜群の発汗をもたらし、しっとりすべすべなお肌に仕上がります。」との記載が認められる。
(4)また、甲第13号証によれば、「本物の自然化粧品への強い思い”フィトメール”since1971年」の見出しの下に「フィトメールは、1971年ジャン・ジェドワン氏によりフランス・ブルターニュのサンマロに誕生。当時は誰も天然、自然、環境の大切さなどを叫ぶ人のいない時代、彼はタラソテラピー(海洋療法)理論に基づく天然成分の製品開発をスタートしました。ブランド名のフィトメール(PHYTOMER)は、PHYTO(植物)+MER(海洋)が彼の理想を表しています。そして、『オリゴメール』(入浴剤)の凍結乾燥技術の開発でした。・・・」旨記載されている。
(5)さらに、甲第8号証ないし甲第10号証によれば、「PHYTOMER」は、仏語の「PHYTO」(フィト:植物)と「MER」(メール:海)の語を結合した造語であり、「フィトメール」と称呼することが記載されており、被請求人は、本件商標を「PHYTOMER」商標と共に使用していることが認められる。
(6)そうとすれば、本件商標は、これを本件指定商品中、例えば「入浴剤」に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、フランス語読み風の「PHYTOMER」(フィトメール)の称呼に倣って、「MER」の文字部分を「メール」と称呼することによって全体として「オリゴメール」の称呼をもって、取引に資する場合が少なくないものと判断するのが自然である。
(7)なお、甲第18号証及び乙第7号証によれば、被請求人は、過去に「OLIGOMER」「オリゴメール」の文字を併記してなり、昭和61年4月15日に登録出願、旧第1類「化学品、その他本類に属する商品」を指定商品として、同63年8月29日に設定登録された登録第2072138号の商標権を有していたことから、「OLIGOMER」商標を化粧品分野におけるフランス語風の読みに倣って、「オリゴメール」と称呼を特定したものということができる。
したがって、本件商標と引用商標とは、「オリゴメール」の称呼を共通にする類似の商標であるから、本件商標は、商標法第53条の2に規定される「登録商標がパリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標」に該当するものと認められる。
3 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品、第3類「化粧品」と引用商標の指定商品、第3類「化粧品」(甲第3号証の1)等とは、同一又は類似の商品と認められる。
したがって、本件商標は、商標法第53条の2に規定される「登録商標がパリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品に類似する商品を指定商品とするもの」に該当するものと認められる。
4 独占販売契約書に記載の商標及び商品について
(1)請求人の名称と住所等が、請求人が提出する独占販売契約書の訳文(甲第5号証の1)及び原文(甲第5号証の2)に記載のものとほぼ一致することから、請求人は「PHYTOMER」商品の販売権授与者と認められる。
(2)請求人の名称と移転前の旧住所等が、請求人が提出する使用商標の商標公報写し(甲第15号証)及び登録原簿写し(甲第16号証)に記載のものとほぼ一致することから、請求人は使用商標の権利者と認められる。
(3)上記独占販売契約書には、契約者としてコディフ社(CODIF INTERNATIONAL)及び「Laboratoires PHYTOMER」(以上、「販売権授与者」)と「HIYOKI S.A.」(「販売権受理者」)の記載が認められ、商品販売権授与者は、該契約書「第III条:製品の流通」の項で「PHYTOMER商標の商品の全品目を販売権受理者は流通させるものとする。」、「第IV:販売製品の商標」の項には「本契約の対象である製品は、契約日において存在するPHYTOMER製品の全範囲とする・・・販売権受理者は、契約署名日より、PHYTOMERの商標の商品を販売する。」と記載されていることから、請求人は、販売権受理者に対して「PHYTOMER」(フィトメール)製品の販売及び該商品に付す商標を使用する権利を与えていたものということができる。
(4)甲第6号証ないし甲第14号証によれば、「PHYTOMER」製品には、「入浴剤」等が含まれており、「PHYTOMER」、「OLIGOMER」商標が使用されていることが認められる。
そうとすれば、被請求人は、「PHYTOMER」製品に含まれる「入浴剤」に「PHYTOMER」、「OLIGOMER」商標を使用する権利が与えられていたということができる。
5 被請求人が請求人の代理人としての地位を有していた者であることについて
(1)請求人が提出する独占販売契約書の訳文(甲第5号証の1)及び原文(甲第5号証の2)並びに甲第7号証ないし甲第10号証によれば、商品販売権受理者の会社名「株式会社HIYOKI」(株式会社ヒヨキ)、所在地「東京都中央区湊1-8-11」が被請求人の住所、名称が一致することから、被請求人は「PHYTOMER」商標の商品(入浴剤等)の独占販売契約書の商品販売権受理者であることが認められる。
したがって、該独占販売契約書に記載の契約者は、上記4(1)のとおり請求人(販売権授与者)と被請求人(販売権受理者)であることが認められる。
そして、「第II:契約期間」の項中に「本契約は2003年1月1日に発行する。契約期間は4年である。」と記載されている。
(2)そうとすれば、該契約日は、本件商標の登録出願日である2004年(平成16年)7月2日より前のものであって、本件商標の登録出願が契約期間は本件商標の登録出願の日前1年以内であることが認められる。
(3)したがって、被請求人は、商標法第53条の2に規定される「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であったもの」に該当するものと認められる。
6 被請求人が請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願がなされたこと及び被請求人には登録出願の正当な理由は存在しないことについて
(1)被請求人は、「被請求人が使用し続けた『オリゴメール』に20年以上もの間、日々接しながら、黙していた請求人の行為は『黙示の承諾があった』ことに他ならず、他社に侵害されぬように『オリゴメール』を我が国において適切に保護するため登録出願を行うことは被請求人にとって不可欠な行為であり、これには正当な理由があったといえる。」旨主張している。
(2)そこで、請求人が提出する甲各号証について精査するに、甲第5号証の1によれば、「第IV条:販売製品の商標」の項に「販売権受理者は次の旨認識する:すなわち、販売対象製品にかかわる特許、商標、モデルは全て販売授与者の専有物であり、本契約はそれらについての如何なる権利も付与するものではない。」、「販売権授与者による登録商標中の商標もしくは登録済みの商標権およびとくに販売権授与者との打ち合わせにおいて知り得た販売権授与者の業務により設定された商標を販売権受理者は、販売権を授与された領土もしくはその他の領土において、登録してはならない。」と記載されている。
(3)そして、被請求人が輸入商品をそのままの容器で販売する際に、その国の言語、取引の実状に合わせて、商標「OLIGOMER」の読みを特定した類似の商標を使用する必要があることは、取引の経験則に照らし明らかであるが、上記のとおり、本件商標を登録出願することに関して、請求人の黙示の許諾があったとも認められないから、本件商標は上記独占販売契約書中で登録が禁止されている商標に該当するといわなければならない。
(4)さらに、上記第2(2)(イ)のとおり、請求人は、「OLIGOMER」の文字を標準文字で書してなり、第3類「バスソルト」及び第5類「入浴剤,海水をフリーズドライした食餌療法剤」を指定商品とする登録第4257602号商標(使用商標)を所有しているから、これと類似する本件商標は、上記独占販売契約書でその登録が禁止されている商標に該当するといわざるを得ない。
(5)なお、被請求人は、「商標『オリゴメール』を周知商標にするための広告宣伝にかかる費用を一切負担しておらずソフト面を含めて全てこれまで被請求人が努力し、負担してきたものである。」、「本来コディフ社は全ての日本向け商品は完成品として日本法に準拠した製品に供給することになっており、必然的に薬事法の規定を満たした日本語ラベルの貼付ないし印刷をその製品に行う義務があるにもかかわらず、それを長年行わず被請求にが日本でおこなわざるを得ない状態にして放置し、コディフ社はその費用負担もしてこなかった。」、「被請求人が、20年余りの年月をかけて需要者に愛されるよう我が国で大切に育て上げてきた『オリゴメール』に化体したグッドウィル・・・」旨主張しているが、上述の費用に関する事項については、独占販売契約書(甲第5号証の1)の「第III条:製品の流通」の項に「商品の販売に認可が必要となる場合、領土の管轄官庁に対して、販売権受理者は自己の費用にて申請する。」、「第XI条:広告」の項には、「販売権受理者は、当該領土において本契約の対象たる製品の販売促進に必要不可欠な広告およびプロモーションの全費用を負担する。」等の記載からも、被請求人の主張を採用することはできない。
(6)また、被請求人が主張するようにたとえ本件商標「オリゴメール」が周知著名となっているとしても、上記1(2)のとおり請求人の「OLIGOMER」、「PHYTOMER」商標を付した商品に使用することによるものと認められるから、被請求人の主張を採用することはできない。
したがって、被請求人には、本件商標を登録出願するにあたって、請求人の黙示の承諾があったことが認められないばかりでなく、本件商標の登録出願を正当化する理由がなく、請求人の承諾を得ないで本件商標を商標登録されたものといわざるを得ない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、正当な理由がないのに当該権利を有する者の承諾を得ないで、当該商標登録出願の日前1年以内に代理人によって出願されたものと認められるから、本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-05-01 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-21 
出願番号 商願2004-61688(T2004-61688) 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 和江 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
岩崎 安子
登録日 2005-11-18 
登録番号 商標登録第4909225号(T4909225) 
商標の称呼 オリゴメール、メール 
代理人 菊池 新一 
代理人 菊池 徹 
復代理人 奥村 陽子 
代理人 木村 吉宏 
代理人 小谷 武 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ