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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y4143
管理番号 1179460 
異議申立番号 異議2007-900294 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2008-07-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2007-06-22 
確定日 2008-05-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第5034647号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5034647号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5034647号商標(以下「本件商標」という。)は、「楊名時太極拳養心会」の文字を標準文字としてなり、平成18年1月22日に登録出願、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映写フィルムの貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同19年3月23日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同19号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。

第3 取消理由の通知
1 「楊名時太極拳」の周知性について
(1)登録異議申立人(以下「申立人ら」という。)主張の全趣旨及び甲第1号証ないし甲第27号証(「枝番号」を含む。以下、「枝番号」全てを引用するときはその「枝番号」を省略する。)によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)楊名時氏は、昭和35年に我が国において太極拳の普及・指導を開始し、その後、その愛好者の増加に伴い、昭和50年に太極拳の友好団体「楊名時八段錦・太極拳友好会」を発足させた。さらに、前記友好団体の発展的な組織として、NPO法人日本健康太極拳協会(以下「日本健康太極拳協会」という。)が平成11年に設立された(甲第4号証)。
楊名時氏は、その間、楊名時八段錦・太極拳友好会及び日本健康太極拳協会の最高指導者として楊名時太極拳の普及・指導に努めるとともに、その太極拳に関する複数の著書やビデオテープを発行した(甲第15号証)。
また、平成15年には、太極拳に関するテレビ番組「楊名時のさわやか太極拳」に出演し(甲第15号証の4)、それを編集したと推認されるビデオテープがNHKソフトウエアから発行された(甲第16号証)。
楊名時八段錦・太極拳友好会及び日本健康太極拳協会の活動の歴史をまとめた「楊名時太極拳30年史」及び「楊名時太極拳40年史」の表題をはじめ、その記載中の各年毎の表示項目においても「楊名時太極拳の動き」と表すなど、普及や指導に際して「楊名時太極拳」の文字が「楊名時」の名とともに常時使用されている(甲第4号証ほか)。

(イ)機関誌「太極」の第1号が昭和52年9月30日に発行され、その後、楊名時八段錦・太極拳友好会及び日本健康太極拳協会により、継続的に発行されており、楊名時氏は、ほぼ毎号「師家 楊名時」の名で文を寄稿していた(甲第4号証及び甲第5号証)。

(ウ)有限会社楊名時太極拳事務所(以下「楊名時太極拳事務所」という。)は、楊名時氏が従前は個人で行っていた免状発行などの事務を同氏に代わり執り行い、楊名時太極拳に係るビデオやグッズの販売を担当するために、平成5年に設立されたものである。また、商標権の管理を行い、日本健康太極拳協会に対して商標の使用を許諾しているものである(甲第11号証、甲第12号証、甲第14号証、甲第17号証及び甲第18号証)。

(エ)楊名時氏及び日本健康太極拳協会にあっては、楊名時太極拳について「初伝、中伝、奥伝、指導員、準師範、師範」の資格審査を行い、合格者に「楊名時太極拳 師家 楊名時」の名をもって免許を与え、その証書を授与していた(甲第10号証及び甲第11号証)。
なお、資格審査及び免許の付与は、楊名時氏没後においても、同様に継続されている(甲第5号証の27、表紙を入れて6頁目「(三)免状制」の項)。
また、日本健康太極拳協会では全国的に支部が設けられており(甲第8号証、表紙を入れて3頁目)、指導者の数も年々増加し、会員数は平成17年8月31日時点で8000名に達していた(甲第5号証の27、表紙を入れて4頁目)。

(オ)日本健康太極拳協会は定期的に指導者研修会等を開催しており、太極拳の指導等に際しては、「楊名時太極拳」の文字を顕著に表した別掲の標章(以下「使用標章」という。)を付した道衣、あるいは「楊名時太極拳」の文字を表示した黒帯が使用されている(甲第18号証の1及び2)。
そして、使用標章を付し、あるいは「楊名時太極拳」の文字を表示した道衣が販売され、使用標章を付したワッペン又は太極拳パンツ、「楊名時太極拳」の文字を表示したTシャツ、スポーツタオル又はキーホルダー等々の各種商品が楊名時太極拳事務所によって販売されている(甲第17号証及び甲第18号証)。

(カ)日本健康太極拳協会のホームページには、「楊名時太極拳」の文字及び使用標章が表示されている(甲第19号証)。

(キ)日本健康太極拳協会は、太極拳の指導のほか、太極拳を活用した介護支援の研修を行っている(甲第5号証の28)。

(2)むすび
以上の事実によれば、「楊名時太極拳」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、永年に亘り使用をされ、本件商標の登録時はもとより出願時には既に、太極拳の教授をはじめ太極拳に関連する役務の需要者の間において、申立人らの業務に係る役務を表示する商標として広く認識されるに至っていたと認められるものである。

2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は「楊名時太極拳養心会」の文字を表した構成からなるものであるから、その構成文字に相応して「ヨウメイジタイキョクケンヨウシンカイ」の称呼を生ずるものである。
しかしながら、引用商標「楊名時太極拳」が、太極拳の教授をはじめ太極拳に関連する役務を表示するものとして我が国において周知であると認められることは上記1で述べたとおりであるから、本件商標に接する需要者は「楊名時太極拳」の文字部分に注意を強く惹きつけられ、「楊名時太極拳」を連想、想起するとというべきである。
してみれば、本件商標は、「楊名時太極拳」の文字部分から、「ヨウメイジタイキョクケン」の称呼をも生ずるものである。
そして、引用商標「楊名時太極拳」の周知性を勘案した上で本件商標の観念についてみるに、本件商標に接した需要者は、その構成中の「楊名時太極拳」の文字部分に着目し、「楊名時氏に由来する太極拳(楊名時太極拳)の一つの派としての『養心会』」として、本件商標を認識、把握する場合も決して少なくないというべきである。
したがって、本件商標からは「楊名時氏に由来する太極拳(楊名時太極拳)」の観念を生ずるものである。
他方、引用商標は、その構成文字「楊名時太極拳」に相応して、「ヨウメイジタイキョクケン」の称呼を生ずるものである。
そして、引用商標は、その構成に徴し「楊名時氏に由来する太極拳(楊名時太極拳)」の観念を生ずるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、「ヨウメイジタイキョクケン」の称呼及び「楊名時氏に由来する太極拳(楊名時太極拳)」の観念を共通にするものである。
また、外観構成においても、ともに、その構成中に「楊名時太極拳」の文字を含む点で、近似性を有するものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念から受ける印象、記憶及び連想等を総合して全体的に考察すれば、これらを同一又は類似の役務に使用した場合、同一の事業者に係る役務であるかのように、その出所について誤認混同するおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は引用商標に類似する商標である。

3 不正の目的の有無について
(1)申立人ら主張の全趣旨及び甲第1号証ないし甲第27号証によれば、次の(ア)ないし(キ)の事実を認めることができる。
(ア)商標権者は、楊名時氏が昭和50年に立ち上げた太極拳の友好団体「楊名時八段錦・太極拳友好会」の設立当初からの会員であり、また、その発展的組織である日本健康太極拳協会の設立当時(平成11年)には、同協会の理事であった(甲第4号証、甲第5号証の19、甲第8号証の1)。

(イ)商標権者は、日本健康太極拳協会に属していた平成15年当時、「楊名時気功太極拳」の文字からなる商標を、楊名時氏及び申立人らに無断で単独で商標登録出願したが、楊名時氏等の意向を受け、当該商標登録出願により生じた権利について、楊名時太極拳事務所へ名義変更をした経緯がある(甲第22号証及び甲第23号証)。前記商標に係る商標権のほか楊名時太極拳に係る商標権については、楊名時太極拳事務所がその権利者となっている。

(ウ)楊名時氏は従前(平成15年8月)より、商標権者との婚姻について、婚姻届けを勝手に出すことは認めないとしていたが(甲第24号証の1)、商標権者は、平成16年4月7日に楊名時氏との婚姻届けを単独で提出した。この婚姻届けの提出に関して、商標権者は、楊名時氏の長女(楊慧氏)に宛て書簡を送った。その書簡の中で、楊名時氏と商標権者との婚姻が楊名時氏の財産目当てではないことなど4項を挙げて、その心情を記している(甲第24号証の3)。楊名時氏・その長男(楊進氏)らは、前記書簡の内容などから商標権者の心情を汲み、婚姻届けに対して取消や変更を求めなかった(甲第24号証の4)。

(エ)楊名時氏は平成17年7月3日に死去した。商標権者は、楊名時氏没後の平成18年1月22日に本件商標の商標登録出願をし、平成18年3月26日付で、日本健康太極拳協会への脱会届(甲第20号証)を提出したと認められる。

(オ)商標権者に係るホームページの写し(甲第25号証)によれば、商標権者は、「楊名時太極拳養心会」なる名称の会を「平成18年2月に独立して発足した会です。」と記載し、そして、「この独立は楊麻紗の長年にわたる功績に対して、楊名時氏が『暖簾分け』して下さったものです。」と記載している。しかし、同ホームページには、生前の楊名時氏と商標権者とが演舞する写真を掲載しているところ、この写真の楊名時氏の道衣には、指導等の際に着用した同氏の道衣には通常付されていた別掲の標章は写っていない。なお、この写真は、平成16年6月13日に宮城県で行われた両者の演舞の写真(甲第5号証の19)と酷似するものである。
また、商標権者は、「楊名時太極拳養心会 師家 楊麻紗」の名において、楊名時太極拳に係る「中傳」等の免許の付与を行っていることが認められる(甲第27号証)。この免許に係る「証」書は、楊名時氏や申立人らが楊名時太極拳に係る資格認定の際に付与してきた「証」書(甲第10号証)に配されている文字と同一文字の配置をしていること等からみても、申立人らの「証」書と極めて酷似する体裁のものである。

(カ)日本健康太極拳協会には定款(甲第26号証)があり、「定款の変更」や「解散及び合併」等のほか「その他運営に関する重要事項」については、総会の議決による旨の定め(第23条ほか)がある。

(キ)楊名時氏が生前に作成した遺言の公正証書(甲第24号証の5)に拠れば、同氏の財産の相続に関して、その第3条に、商標権者外1名は同氏の財産(貯金・現金)の中から金銭を受けとることが記されている。そして、不動産については、第1条及び第2条で、楊名時氏と先妻との間に生まれた長男と長女が相続し、第4条で、「それ以外の全財産」については、前記の長男と長女が各2分の1の割合でそれぞれ相続することとされている。また、第4条で、前記の長男と長女を祭祀の承継者とした。しかし、遺言公正証書の全条文において、楊名時氏に由来する太極拳に関する事項としての記載は一切明示されていない。

(2)むすび
以上の事実によれば、「楊名時」及び「太極拳」の文字からなる表示が申立人らの業務を表示するものであること、「楊名時太極拳」の文字が楊名時氏に由来し申立人らに係る流派の名称として本件商標の出願より遙か以前より継続して使用されているものであること、そして、本件商標が楊名時氏及び同氏に由来する太極拳と関連あるものとして看取される標章であることを充分に知悉する立場にあった商標権者が、正式な総会の議決等を経て当該流派を正当に承継したとは認められない者でありながら、楊名時太極拳に係る流派と係わりがあるかの如くに認識される表示として、楊名時太極拳の名声・信用に便乗せんとの意図のもとに、本件商標を自己の業務に係る役務に使用すると推認されるものである。現に、商標権者は、本件商標を構成する文字を免許等の表示に使用していることが窺えるところである(甲第27号証)。
そうとすれば、本件商標は、不正の利益を得る目的、あるいは申立人らに損害を加える目的をもって使用をするものといわざるを得ないものである。 なお、商標権者が故楊名時氏の妻であったとしても、そのことのみをもって、同故人に由来し申立人らが継承する流派(楊名時太極拳)を、分派(暖簾分け)等を含め正当に承継したと認定することはできないというべきである。
加えて、商標権者は、申立人らが継承する流派(楊名時太極拳)を、分派(暖簾分け)等を含め正当に承継したことを証する何らの証拠も提出していない。

4 結語
以上を総合してみると、本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして我が国内における需要者の間で広く認識された商標に類似する商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものというべきである。

第4 商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由の通知に対して、何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標についてした上記第3の取消理由は、妥当であって、本件登録は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲

使用標章



(色彩は、原本参照)


異議決定日 2008-03-24 
出願番号 商願2006-9071(T2006-9071) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (Y4143)
最終処分 取消  
前審関与審査官 村上 照美平山 啓子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 渡邉 健司
岩崎 良子
登録日 2007-03-23 
登録番号 商標登録第5034647号(T5034647) 
権利者 楊 マサ子
商標の称呼 ヨーメージタイキョクケンヨーシンカイ、ヨーメージタイキョクケンヨーシン、ヨーメージタイキョクケン、ヨーメージ、タイキョクケンヨーシンカイ、ヨーシンカイ、ヨーシン、タイキョクケン 
代理人 中山 清 
代理人 保立 浩一 
代理人 保立 浩一 
代理人 中山 清 

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