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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y25 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25 |
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管理番号 | 1179337 |
審判番号 | 無効2007-890054 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-04-27 |
確定日 | 2008-06-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4951341号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4951341号商標(以下「本件商標」という。)は、「SPIDY」の文字を横書きしてなり、平成17年6月23日に登録出願され、第25類「履物」を指定商品として平成18年5月12日に設定登録されたものである。 2 引用商標 請求人が引用する国際登録第803174号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、イタリアにおける2003年2月14日の商標登録出願に基づきパリ条約による優先権を主張して2003年4月7日に国際登録され、その後、2003年7月11日に我が国を事後指定し、第25類「Sports shoes」を指定商品として平成16年6月4日に設定登録されたものである。 3 請求人の主張の要点 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出している。 (1)請求人が使用する商標の周知・著名性 請求人(SIDI SPORT S.r.l.)は、1960年に創設されたイタリア法人であって、創設者はDINO SIGNORI氏であるところ、本法人の名称「SIDI」は、この創設者の名前のイニシャルである「SI」、「DI」を抜き出して結合させたものである(甲第4号証)。 請求人は、設立当初、登山用・アウトドアスポーツ用のシューズを専ら製造・販売していたが、1970年代に入ると、15歳から自転車乗りであったSIGNORI氏の影響もあって、「自転車用のシューズ」、「バイク用のブーツ」も製造販売するようになり(甲第5号証ないし甲第16号証)、その優れたデザイン性・安全性から、ユーザーより高い評価を受け、1970年代には、バイク用ブーツのメーカーとして広く知られるようになった。 請求人は、急速な進化を続けるスポーツフットウエア業界を、斬新なデザインと革新的な技術開発によりリードしており、「SIDI」は、オフロードブーツをはじめとして、ロードレースブーツ、サイクルシューズ等の分野におけるイタリアの老舗ブーツブランドとなっている。 我が国においても状況は同じであって、その製品の優れた品質・デザイン性と連綿盛大な宣伝広告活動(甲第17号証ないし甲第32号証)と相俟って、抜群の売上げ実績を残しており、2000年は約1億2000万円、2001年は約1億5000万円、2002年は約1億1000万円、2003年は約7000万円、2004年は約1億7000万円、2005年は約1億800万円、2006年は約1億1500万円となっている(甲第33号証ないし甲第40号証)。 このように、請求人の「SIDI」ブランドは、特に商品「バイク用のブーツ」の分野においては、我が国においても周知・著名となっているものである。 (2)本件商標と引用商標との類否、商品について出所の混同のおそれの有無 本件商標は、「SPIDY」の欧文字から構成されているのに対し、引用商標は「SIDI」の欧文字からなるものであるから、両商標は、外観上「P」の有無、語尾における「Y」対「I」の差異を有するものである。 しかしながら、商標の類否は、原則、一般的出所の混同が生じるおそれがあるか否かを基に行われるべきではあるが、対比する商標が周知・著名性を有するのであれば、その周知・著名性をも考慮して類否を判断すべきである。 この点、両商標を構成する文字自体は共に造語であることから、観念の点において両商標が明確に区別されるようなことはない。 また、この種商品分野においては、請求人のSIDIブランド以外に「S」から始まる周知・著名商標が存在しないことからすれば、両商標が上記構成上の差異を有するとしても、共に「S」から始まり、かつ、「S」、「I」、「D」の3文字を有する商標であることから、需要者が受けるその全体的なイメージにおいては共通するものである。 したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、引用商標の指定商品は第25類「運動靴」であるから、両商標の指定商品も同一又は類似である。 また、本件商標が、引用商標の指定商品と類似関係にあり、請求人の「SIDI」ブランドが周知・著名である「バイク用のブーツ」と近似した商品である、その指定商品「履物」に使用された場合には、需要者をして、請求人の製造販売に係る商品であるかの如くに、あるいは請求人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品であるかの如くに誤認混同させるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものである。 (3)むすび 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきものである。 4 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 5 当審の判断 (1)本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性について 本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、「SPIDY」の文字からなるところ、その綴りからなる成語は英和辞典等には見られないものであり、例えば、英単語「spider」が「スパイダー」と発音され「クモ」を意味する語として知られていることからすると、本件商標は「スパイディ」の称呼を生ずるものとみるのが自然である。 他方、引用商標は、別掲のとおり、図形とやや図案化された文字とからなるところ、該図形部分と該文字部分は、視覚上分離して看取されるばかりでなく、両者が常に不可分一体のものとしてのみ認識されるべき格別の理由は見出せないから、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえる。そして、上記図形部分が特定の称呼及び観念を生ずるものとはいえないのに対し、上記文字部分は、やや図案化されているとしても「SiDI」の文字を表したものと容易に認識し理解できるものであるから、本件商標は、読みやすいこの文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないというべきであり、よって「シディ」の称呼を生ずるものといえる。 そこで、上記「スパイディ」の称呼と「シディ」の称呼とを対比するに、両者は構成音数が異なるばかりでなく、「ス」、「パ」及び「イ」の音と「シ」の音の差異を有し、わずか「ディ」の音を共通にするにすぎないから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感音調が明らかに異なり、明瞭に区別することができるものである。 また、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、さらに、本件商標は、親しまれた既成の観念を有する成語を表したものといえない以上、引用商標と観念について比較すべくもない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (2)本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性について 請求人は、引用商標が商品「バイク用のブーツ」について使用する商標として我が国においても周知・著名になっているとして証拠を提出している。 そこで、請求人の提出に係る証拠を徴するに、該証拠は、請求人の本国であるイタリアで発行された請求人の欧文による商品カタログが殆どであり、他に商品について実際に宣伝広告等された事実を示すものは少ない。すなわち、イタリアを初め海外での宣伝広告等を示すものは一切ないし、我が国においては、2003年ないし2006年の間に発行された専門雑誌に数回広告されたのみである。もっとも、オートバイ用品専門店の商品カタログやインターネットのウェブサイトにおいて紹介され、通信販売等が行われている事実があり、我が国へもある程度の数量の商品が輸入されていることが認められる。 しかしながら、これらの証拠によっては、引用商標がバイク用のブーツについて使用されていることが認められるとしても、また、引用商標がオートバイ愛好者の一部のマニアの間にはある程度知られていると推認されるとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その指定商品の取引者、需要者の間に広く認識されているとまではいうことができない。 そして、本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものである。 かかる事情の下において、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれもないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 引用商標 |
審理終結日 | 2007-12-26 |
結審通知日 | 2008-01-08 |
審決日 | 2008-01-22 |
出願番号 | 商願2005-56934(T2005-56934) |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Y
(Y25)
T 1 11・ 26- Y (Y25) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 白倉 理 |
特許庁審判長 |
林 二郎 |
特許庁審判官 |
杉山 和江 鈴木 修 |
登録日 | 2006-05-12 |
登録番号 | 商標登録第4951341号(T4951341) |
商標の称呼 | スパイディ、スパイデー |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 幡 茂良 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 小出 俊實 |