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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Y0942
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y0942
管理番号 1179289 
審判番号 不服2007-23637 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-29 
確定日 2008-05-26 
事件の表示 商願2006- 69322拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ユビキタスプロジェクター」の文字を標準文字で表してなり、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第42類「気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,計測器の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,理化学機械器具の貸与,製図用具の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成18年7月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、以下の(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、ラテン語で「いたるところにある」を意味する語であり、現在では「インターネットなどをはじめとする情報ネットワークにいつでもどこからでもアクセスできる環境」を意味する語として一般に用いられている「ユビキタス」の文字と指定商品(指定役務)との関連においては、「映写機、投影機、プロジェクター」等を認識させる「プロジェクター」の文字を結合した「ユビキタスプロジェクター」の文字を標準文字で表してなるにすぎないものであって、全体として「インターネットなどの情報ネットワークにいつでもどこからでもアクセスできる環境において用いられるプロジェクター」程度の意味合いを認識させるにすぎないものであるから、本願の指定商品(指定役務)中の「プロジェクター」の文字に照応する商品(役務)(例えば「映写機,液晶プロジェクター,プロジェクターの設計」)に使用するときは、単に商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎないものと認める。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品(役務)以外の商品(役務)に使用するときは、商品(役務)の品質(質)の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)本願商標は、以下の(ア)から(エ)に示す登録商標と同一又は類似の商標であって、その商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(ア)登録第3188060号商標は、「Ubiquitaous Computer」及び「ユビキタスコンピューター」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成4年12月3日登録出願、第9類「電子計算機」を指定商品として、同8年8月30日に設定登録され、その後、同18年12月19日に商標権の存続期間の更新登録がされて、現に有効に存続しているものである。
(イ)登録第4419815号商標は、「ユビキタス」の文字を標準文字で表してなり、平成11年11月17日登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,電気通信機械器具,レコード,遊園地用機械器具,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(ウ)登録第4419816号商標は、「UBIQUITOUS」の文字を標準文字で表してなり、平成11年11月17日登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,電気通信機械器具,レコード,遊園地用機械器具,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(エ)登録第4966028号商標は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、平成17年10月12日登録出願、第9類「耳栓,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,潜水用機械器具,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,測定機械器具,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,スロットマシン,計算尺」及び第42類「気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,社会保険に関する手続の代理,計測器の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,理化学機械器具の貸与,製図用具の貸与」を指定商品及び指定役務として、同18年6月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(以下これらをまとめて「引用商標」という。)

3 当審の判断
(1)本願商標は、上記のとおり「ユビキタスプロジェクター」の文字よりなるものであるところ、その構成全体より「ユビキタス」と「プロジェクター」の文字を結合したものと容易に認識されるものである。
その構成中の「ユビキタス」及び「プロジェクター」の各文字は、それぞれ「同時に、どこにでもあること。」の意味を表すラテン語「ubiquitous」及び「映写機、投影機」の意味を表す英語と認められるものであり、両語は、外来語としても一般に親しまれているところである。
そして、上記意味を有する「ユビキタス」の語は、情報通信の分野においては、「インターネット等のネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境のこと」を表す語として一般に使用されており、例えば、「ユビキタスネットワーク社会、ユビキタスネットワーク環境、ユビキタスネットワーク技術、ユビキタスネットワーク化」等のように、広く使用されているものであって、総務省においては、少子・高齢化社会の進展や生活の安心・安全レベル低下などに対する解決手段として情報通信を位置づけ、2010年の社会像としてユビキタスネットジャパン(u-Japan)を提示しているといった事情もあり、かつ、これらの施策に対応して、コンピュータ、携帯電話端末、携帯情報端末等の商品の他、ネットワーク技術を利用する家電製品など、Ubiquitous(ユビキタス)対応の各種機器が開発、販売されている。
さらに、「プロジェクター」についても、パソコン内の画像の投影を容易にしたもの、複数のパソコンの画面を表示できるもの、遠隔制御できるものなど、Ubiquitous(ユビキタス)対応の各種機器が開発、販売されている実情が、以下の新聞情報から窺い知ることができる。
(1)2008年1月21日付け「日経産業新聞」の9頁には、「エプソン、プロジェクター、ネットワーク接続機能対応。」の見出しの下、「セイコーエプソンは二月上旬からパソコン内の画像の投影を容易にした業務用プロジェクター『EMP?1825』を発売する。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)『ウィンドウズ・ビスタ』のネットワーク接続機能に対応。パソコンにプロジェクター専用のアプリケーションをインストールせずに画像を投影できる。」と記載されている。
(2)2006年9月22日付け「FujiSankei Business i.」の23頁には、「【新商品】業務用ネットワーク対応液晶プロジェクター2機種」の見出しの下、「有線LANケーブルでパソコンとつなぐだけで、離れた場所からの制御と映像投射が可能。異常を監視し、トラブル発生時にメールで知らせる機能などを搭載。静止画データが送れる『CP-X605J』(65万1000円、販売中)と無線LAN対応の『同-X608J』(69万3000円、25日発売)を用意。■日立製作所 TEL0120・312119」と記載されている。
(3)2006年2月22日付け「日経MJ(流通新聞)」の17頁には、「世界最速ワイヤレス通信、松下電器産業パナソニックAVCネットワークス社(新製品)」の見出しの下、「世界最速のワイヤレス通信 パソコンから世界最速のワイヤレス送信を実現した『ワイヤレスプロジェクター』。ワイヤレス送信なので煩わしい結線が不要。無線LAN技術を用いたワイヤレス送信用アプリケーションソフトにより、簡単にワイヤレス送信の操作が行える。ソフトは付属のCD-ROMより簡単にインストール可能。パソコンからプロジェクターへのワイヤレス送信速度が、従来機の5倍に向上。プレゼンテーションのアニメーション効果のほか、動画もなめらかに送信できる。音声も同時に送信可能。」と記載されている。
(4)2005年9月21日付け「FujiSankei Business i.」の8頁には、「日本アビオニクス プロジェクターに遠隔会議機能」の見出しの下、「エレクトロニクスメーカーの日本アビオニクスは20日、同社のヒット商品である紙の文書や立体物もその場で投影できるプロジェクターに、遠隔会議機能を内蔵した新商品『コラボメイトiP』を10月20日に発売すると発表した。同社の書画カメラ内蔵プロジェクター『インテリジェントプロジェクタ』の機能をそのままに、最大20地点まで同時接続して、プロジェクターの映像のほか、音声や動画を双方向でやり取りできる機能を付加した。遠隔地と共有した資料を同時に拡大や回転できるほか、書き込みが可能。円滑に会議を進めることができる。」と記載されている。
(5)2005年4月20日付け「化学工業日報」の11頁には、「東芝など8社、汎用規格を発表、ネット上でプロジェクター制御」の見出しの下、「社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)は十九日、プロジェクターをネットワーク上で制御する汎用規格『PJLink』を発表した。東芝やセイコーエプソンなど大手八社が開発した。JBMIAによると、この種の規格が発表されるのは世界初という。これまで製造元が異なるプロジェクターを同時に用いるには、専用装置が必要だった。PJLinkは異なる会社の製品をネットワーク上で制御するシステムで、専用装置が不要となる。パソコンで複数のプロジェクターを制御でき、会社や学校の管理・設置費用を削減できる。残りの開発メーカーは、NECビューテクノロジー、三洋電機、シャープ、日立製作所、松下電器産業、三菱電機。八社は今後、PJLinkに対応した製品を発売する。」と記載されている。
(6)2005年4月20日付け「電気新聞」の4頁には、「[フラッシュ新製品]PCなしでプレゼンが可能」の見出しの下、「セイコーエプソンはネットワーク機能を充実させた高輝度プロジェクター『EMP-7950』=写真=を今月中旬から発売する。同製品には無線LANカードとPCソフトが標準添付されており、ワイヤレスで高速な画像転送が可能になるほか、プロジェクターと接続するPCを簡単に切り替えられる。また、PCカードスロットやUSB端子も標準装備しているため、外部メモリーやデジカメを使えばPCなしでプレゼンテーションすることが可能。」と記載されている。
(7)2005年2月10日付け「日刊工業新聞」の24頁には、「大学発ベンチャーの挑戦(43)ユビグラフ-ユビキタス社会実現を支援」の見出しの下、「名古屋大学発ベンチャー企業のユビグラフは、河口信夫助教授のユビキタス基盤ソフトウエアの研究成果を活用するために設立された。『cogma』(コグマ)と呼んでいる同ソフトは多数の情報機器の連携を可能にするミドルウエア。同ソフトをシーズに据えて、いつでもどこでもコンピューターやネットワークを利用できる『ユビキタス環境』の実現を支援する。自らの研究室に『スマートルーム』と名付けたユビキタス環境を構築している河口助教授は、cogmaを使い、各種の情報機器に加えて、照明や空調なども管理。『実験ベースでは実用化に最も近いユビキタス環境を作り出した』(河口助教授)と自負する。このノウハウをマルチメディア会議システムに応用したのが、第1号製品の『ユビキタス・アプライアンス』。インターネットに対応するプログラム言語『Java』ベースのcogmaを組み込んでおり、ユビキタス環境下での会議を実現するシステムだ。パソコンから自動的にプロジェクターへ画面を転送したり、ディスプレーを操作したりすることが可能。複数のパソコンからも同時に利用できる。」と記載されている。
(8)2005年1月19日付け「化学工業日報」の11頁には、「東芝、パソコン遠隔操作システムを開発、第3世代携帯電話利用」の見出しの下、「東芝は十八日、世界初の第三世代携帯電話(3G)を使った、パソコン遠隔操作システムを開発したと発表した。パソコン画面を携帯電話上で見ながら、すべての操作を行うことが可能。今年度中の製品化を目指す。携帯電話によるパソコン操作は従来もあったが、一部ファイルの閲覧に限られていた。これに対して同社の開発した『ユビキタスビューア』は、3Gの定額料金サービスを前提としたものでパソコンを起動し、画面情報を圧縮し携帯電話に伝送。すべてのキーボードやマウス操作ができることから、着信メールを編集して転送するなどの操作を携帯電話で行うことが可能。このほか搭載カメラで撮った画像をパソコンに送っての編集加工、社内決済の承認なども外出先で実行可能。周辺装置が整えば、パソコン上のデータを携帯電話経由でプロジェクターやプリンターに出力できるようになる。」と記載されている。
(9)2005年1月13日付け「日刊工業新聞」の11頁には、「エルモ社、大画面対応の液晶プロジェクター発売」の見出しの下、「【名古屋】エルモ社(名古屋市瑞穂区、小椋一彦社長、052・811・5131)は12日、大会議室や講堂などでの大画面に対応できる液晶プロジェクター『EDP-X500』を26日に発売すると発表した。輝度が3200ルーメンと強く、部屋が明るいままでも投映が可能。価格は52万2900円。年間1000台の販売を目指す。同製品は上面、左右側面、背面の4カ所に3ワットのスピーカーを搭載、音響機器を別途用意する必要がない。また、LAN端子を装備しており、電源のオンオフなど、ネットワーク経由で複数のプロジェクターの一括制御、管理が可能。」と記載されている。
以上の認定事実よりすれば、本願商標に接する取引者、需要者は、さほどの困難を伴うことなく、全体として、「いつでも、どこでも、何でも、誰でもアクセスが可能なプロジェクター」というほどの意味合いを認識、把握すると見て差し支えなく、もって本願指定商品及び指定役務に係る業務を含む請求人の業務の内容と関連づけて認識すると見るのが相当である。
してみれば、上記意味合いを看取させるにすぎない本願商標を、本願指定商品及び指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、自他商品及び自他役務の識別標識として認識するというよりは、むしろ、それを妨げる何か特別の事情がない限り、この語句が使用されている上記意味合いから、ごく自然に「いつでも、どこでも、何でも、誰でもアクセスが可能なプロジェクター」という、情報通信に関して提供される商品及び役務の特性を記述的に表した表現として認識、理解することになるというべきである。
そして、本願商標について上記認識、理解を妨げる特別の事情を見いだすことはできない。
してみれば、本願商標は、その指定商品中の「いつでも、どこでも、何でも、誰でもアクセス可能なプロジェクター」及び指定役務中の「いつでも、どこでも、何でも、誰でもアクセス可能なプロジェクターの設計」について使用しても、単に商品の品質、機能及び役務の質を表示したものと理解されるにすぎず、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当であり、かつ、前記商品及び役務以外の商品及び役務に使用するときは、商品の品質、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
(2)請求人は、「ユビキタス」が「通信ネットワーク」として使用される場合は、「ユビキタス・コンピューティング」又は「ユビキタス・ネットワーク社会」のように使われているもので、単に「ユビキタス」として使用されている事実はないため、本願商標からは、「インターネットなどの情報ネットワークにいつでもどこからでもアクセスできる環境において用いられるプロジェクター」なる商品(役務)が存在する事実、又、それが「ユビキタスプロジェクター」と称されている事実の立証がなされない以上、それは漠然とした概念であって具体的且つ固有的な観念を表す用語ではなく、一般的には本願商標は「ユビキタス」及び「プロジェクター」の結合により、特定の観念をもたない漠然とした造語として認識、理解されるものとみるのが社会通念である旨主張する。
しかしながら、自他商品及び自他役務の識別力は当該商品及び役務との関係において判断されるべきであるところ、本願商標は、その構成中の「ユビキタス」の文字が「インターネット等のネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境のこと」の意味合いで、また、「プロジェクター」の文字が「映写機、投影機」の意味であると理解することを困難にすべき事情を認めることはできず、かつ、前記のとおり各社によってインターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできるネットワーク対応型のプロジェクターが開発、販売されている事実からして、取引者、需要者はむしろ自然に「いつでも、どこでも、何でも、誰でもアクセス可能なプロジェクター」を示す語として認識することになるものというべきであるから、これをその指定商品及び指定役務中、前記意味合いに照応する商品及び役務に使用するときは、単に商品の品質、役務の質を表示したものと認識する可能性は極めて高いといえ、さらに、このような品質表示のみからなると認められる商標は、誰しもその使用を必要とし、誰しもその使用を欲するといえることから、一私人に独占を認めることは適当でないと認められることからも、本願商標を登録することはできないと判断するのが相当であり、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、過去の登録例を挙げて本願商標も登録されるべきである旨主張しているが、請求人が挙げる過去の登録例は、対比する商標の構成態様等において本願とは異なるものであるばかりでなく、商標の類否の判断は、当該出願に係る商標と他人の登録商標との対比において、個別・具体的に判断すべきものであり、過去の登録例の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、請求人のいずれの主張も採用できない。
(3)したがって、本願商標は、その余の理由について判断するまでもなく、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)引用登録第4966028号商標

審理終結日 2008-03-25 
結審通知日 2008-03-28 
審決日 2008-04-15 
出願番号 商願2006-69322(T2006-69322) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y0942)
T 1 8・ 272- Z (Y0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊谷 道夫 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 津金 純子
安達 輝幸
商標の称呼 ユビキタスプロジェクター、ユビキタス 
代理人 下坂 直樹 

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