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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y11
管理番号 1179247 
審判番号 無効2007-890079 
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-08 
確定日 2008-03-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4955642号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4955642号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4955642号商標(以下「本件商標」という。)は、「TESY」の文字を標準文字で表してなり、平成17年10月28 日に登録出願、第11類「家庭用オイルラジエーターヒーター,業務用ボイラー,業務用暖冷房装置」を指定商品として、同18年5月11日に登録査定がなされ、同月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第71号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号又は同法第4条第1項第7号に該当するから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
(1) 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人及び請求人の使用商標
(ア) 請求人は、1990年に創立されたブルガリア共和国に本拠を置く法人である。本年(審決注:2007年)5月に、旧社名であるフィコソタ(FICOSOTA)から、請求人のメイン商標であるテシー(TESY)をそのまま社名として、テシー・リミテッド(TESY LTD)へと社名変更を行なった(甲第2号証)。
(イ) 請求人は、オイルラジエーターヒーターを始めとする各種ヒーター、各種温水器(以下、合わせて「TESY商品」という)の製造・販売を主要業務とするメーカーである(甲第3号証ないし甲第7号証)。TESY商品は、2004年度では、36か国以上の国に輸出実績があり、TESY商品中のオイルラジエーターヒーターの製造台数では、ヨ-ロッパ第4位の実績を誇り、後述のとおり周辺諸国においても高い市場占有率を有していた。因みに、2007年現在では、50か国以上の輸出実績、及び、オイルラジエーターヒーターの製造台数では、ヨ-ロッパのトップ企業となっている。
(ウ) 請求人は、TESY商品のほとんど全てについて「TESY」商標、又は、「TESY+図形」商標(以下、合わせて「TESY商標」という。)を使用している。TESY商標は、請求人が創業以来一貫して使用してきたメイン商標であり、今回、このメイン商標に合わせて社名変更を行なったことは上述のとおりであり、1999年以降の請求人の発行する総合カタログを一覧すれば、請求人がTESY商標を主要商標と位置づけて、TESY商品に長期・継続的に使用してきたことは明らかである(甲第3号証ないし甲第7号証)。特に、2001年度以降の総合カタログ掲載商品は、ほとんど全てがTESY商品である。また、TESY商標は、広告活動や展示会等でも積極的に使用されている商標である。
(エ) TESYの語は造語であって、英語辞典やいわゆる情報辞典にも一切記載はない(甲第8号証ないし甲第12号証)。TESYは、「THERMOSYSTEM」(寒暖計等を意味する「thermometer」と装置等を意味する「system」を合成した語)のアンダーライン部分を結合させた造語である。TESY商標は、TESY商品全てが温度管理に係る機器であり、これらの機器を通じて生活環境を快適に制御するといった意味合いで案出・採択された。かかる造語商標と同一の音からなる商標をたまたま被請求人が案出し、採択する可能性は極めて低い。
(オ) 我が国では、TESYの語を商標として使用している例は、請求人を除いては皆無である。例えば、Googleで「TESY テシー」の語をキーとして検索すると726件の情報が得られるが、1件を除いては全てTESY商品に関する情報である(甲第13号証)。即ち、TESYの語は、我が国においても専らTESY商標又はTESY商品を指称する語としてのみ使用されており、他の商標・商品を表す語として使用されている実績はない。これらの情報は、上記1件を除き全て請求人と関連付けられて紹介・使用されている。「オイルヒーター」に限定して「TESY」の語を検索した場合には、その指標性はさらに高くなる。即ち、オイルヒーターに限定してTESYの語を検索すると1240件の情報が得られるが、これら総ての情報はTESY商品に関する情報である(甲第14号証)。請求人と被請求人とは、全く同一の商品を販売している結果、特に通信販売等において両者の商品が並んで表示されるケ-スは多い。オイルヒーターを購入しようとする需要者がインターネットで商品を探した場合には、ほとんどの場合、請求人と被請求人の販売商品が一覧で検索される(甲第15号証ないし甲第23号証)。したがって、これらの同一商品を販売する被請求人が、TESY商標について全く知らなかったとは考えられないし、仮に被請求人が本件商標を使用すれば、出所の混同を生ずること必定である。
イ TESY商標の登録状況について
(ア) ブルガリアにおける登録商標
請求人は、ブルガリア国内においては、TESY商標について、家庭暖房用スチーム及び温水器等を指定商品とする登録第35515号(登録日1999年4月27日)、登録第41434号(登録日2002年2月12日)及び登録第48598号(登録日2004年8月9日)の3件が登録されている(甲第24号証ないし甲第26号証)。
(イ) ブルガリア以外の国における登録商標
ブルガリア以外の国については、いわゆるマドプロルートにより、上記登録第41434号(甲第27号証)及び登録48598号(甲第28号証)に基づきそれぞれ約30か国に登録されている。
(ウ) 以上のとおり、TESY商標は、本国であるブルガリアにおいて多数区分に登録されているのみならず、ブルガリア以外の30か国以上の国においても、多数区分にわたって登録されている。なお、甲第28号証の商標については、日本も指定国に含まれているが、本件商標を含む登録商標を引用されて、現在、拒絶通報がなされている。
ウ TESY商標の周知性について
(ア) 販売実績
TESY商品の売上高は、概算、1996年は、345万ユーロ(約5.6億円)、1997年は、380万ユーロ(約6.2億円)、1998年は、401万ユーロ(約6.6億円)、1999年は、1076万ユーロ(約17.6億円)、2000年は、1192万ユ-ロ(約19.5億円)、2001年は、1241万ユーロ(約20.3億円)、2002年は、1462万ユーロ(約23.9億円)、2003年は、1633万ユーロ(約26.7億円)、2004年は、1657万ユーロ(約27.1億円)、2005年は、1950万ユーロ(約31.8億円)である(甲第29号証の1)。
以上のとおり、TESY商品は、特に2001年以降は円価で20億円から2005年度30億円を越える実績をあげ、順調に売上げを伸ばしている。
因みに、上記売上高は、甲第29号証の2に記載のとおり、ほとんど総てがTESY商品に関する売上げである。例えば、2004年度のTESY商品販売台数は、ト-タル408,450台と記載されているが、その内訳は、オイルラジエーターヒーターが約275,000台、ガス/ファンヒーターが約44,000台、給水器が約82,000台である。
なお、ブルガリア国内の大手量販店での販売実績では、例えば、K&K Electronics LTDにおける2005年度の実績では、請求人のオイルラジエーターヒーターの販売台数が、11,370台と最も多く、次に多いのが、デロンギイタリア社製の1,228台であって、その他メーカーの同種製品の販売台数は、300台に止まるとの回等を得た(甲第30号証の1)。また、METRO Cash and Carry Bulgariaにおける2005年度販売実績は、請求人のオイルラジエーターヒーター2,344台、TESYとPromotecのバイブランド商品(オイルラジエーターヒーター)が1,719台、デロンギイタリア社のオイルラジエーターヒーターが464台となっている。かかる量販店の売り上げ実績に鑑みても、請求人のブルガリアにおけるシェアが極めて高いことがわかる(甲第30号証の2)。
(イ) 新聞報道・市場調査等
甲第31号証は、2004年1月10日付けシューメン新聞の経済欄記事の抜粋である。請求人は、1990年の創業であるが、記事発行時点では、創業後10年余の短期であるにもかかわらず、家庭用暖房器具の企業としては、中央・東ヨ-ロッパ最大の製造会社となった。2004年時点で、請求人は収益力においてはブルガリア100大企業の一つとして挙げられており、ヨ-ロッパ各国内のオイルヒーター製造会社の中では4番目に大きな企業となっている。オイルヒーターについては、OEM生産を除いてはTESY商標のみである(甲第3証ないし甲第8号証)。この点は、記事の中でも、TESY商標が主要商標である旨紹介されている。請求人は、この時点で、40か国以上の輸出実績を誇り、創設14年をもって、「ブルガリアン・ドリーム」とまで紹介されることになった。その後も請求人は、2005年度にはブルガリア商工会議所から「産業・投資・革新・知性・イニシアチブ」賞を受賞し(甲第32号証)、2006年度には、経済・エネルギー省「応用研究・応用通信」基金より、革新的企業賞を受賞している(甲第33号証)。このように、請求人は、ブルガリアの周知な企業であり、同様にTESY商標も周知である(2007年1月4日付けPARI新聞 甲第34号証)。なお、2007年度には、請求人は、オイルヒーターの生産ではヨ-ロッパ1位となり、電気ヒーターに関してもヨーロッパ第6位の生産台数を誇る企業に飛躍した。TESY商品に関しては、一部のOEM品を除き、TESY商標を使用しており、請求人の「顔」ともいえるブランドになっている。因みに、記事トップにもTESY商標が表示されているように、TESY商標は周知である。
かかる周知性は、TESY商品(特に、オイルラジエーターヒーター)の販売実績によるところが大きいが、甲第2号証のとおり、2003年以降の4年間で、TESYブランドの広告には約3億円(400万ブルガリア・レフ)とブルガリア企業としては破格の投資を行なったことも大きな要因である。その結果、甲第34号証の記事にあるとおり「ほとんどの消費者は我々をTesyと認識して」いるほどになっており、今般商号もTESYに改めることとなった。
(ウ) TV広告等
a 請求人は、TESY商標は、テレビコマーシャル(以下「TVCM」と略す。)を通じて積極的に宣伝されている。例えば、2003年9月17日から同月30日までの13日間に55回、同年10月には28回、11月には12回、2004年4月には7回、5月には70回、6月には31回、9月には38回、10月には152回と、現在に至るまで極めて多数のTVCMでTESY商品並びにTESY商標の広告がなされている(甲第35号証の1ないし10)。
b 「bTV」テレビで放映されたTVCMの内容は、甲第36号証の1ないし3のとおりである。いずれのTVCMについても、いわゆるイメ-ジ広告はなく、TESY商品とTESY商標とが常に一体として広告されている。
c 甲第37号証は、2004年度6月17日から30日にかけて、外部調査会社(GfK Bulgaria)を使用して行なった、請求人及びTESY商標の認知度調査報告書である。TESY商標はオイルラジエーターヒーターのブランドとして有名であったが、温水器については、市場そのものの普及度・認知度が低いというブルガリア特有の市場状況もあったことから、かかる状況下で、TESY商標が温水器の商標としてどの程度認知されているかに絞って行なわれた。TESY商標は、温水器としてよりも、ラジエーターのブランドとしての認知度が高いが、かかる請求人の認知度が低いと思われる温水器の分野においても、TESY商標は、第2位以下のメーカーを圧倒する浸透度を得ている。即ち、TESY商標は、ほとんど自発的レベル(温水器のブランドとして知っているものはありますか?という問いに対して、1番目に挙げられた1又は2以上のブランド)で認識され、かつ、周知度はトップである。また、請求人が実施した、上記CMについては、回答者の74%が認識している。かかる資料からも、TESY商標が周知になる過程で、TVCMが大きく寄与していることが窺われる。
(エ) 各国展示会
請求人は、ブルガリア国内の販売活動のみならず、海外展開も積極的に行なっており、このため、各国展示会にもTESY商品を積極的に出展している。
a 2003 INTERNATIONAL HOUSEWARES SHOW
この展示会は、2003年1月12日から14日、米国シカゴで開催された。その名のとおり、家庭用品全般にわたる商品が出展された。推定入場者数は、50,000人程度と推計されている。米国の家庭用品全般にわたる展示会としては、最も出展者数の多い展示会の一つである。請求人は、TESY商品を出展したが、この展示会には米国デロンギ社も出展している(甲第38号証)。
b 2004 Home Tech
この展示会は、2004年2月25日から27日、ドイツ・ケルンで開催された、家電専門の国際見本市である。出展社は、50カ国800社に及んでいる。この展示会は、入場者を専門バイヤーに限定していることから来場バイヤー数は、22,000人と少ないが、ドイツ、イタリア等の専門バイヤーには有名な展示会である。請求人は、この展示会にもTESY商品を出展したが、デロンギイタリア社もこの展示会に出展している(甲第39号証)。
c 2005年 ISH(国際冷暖房・衛生・空調専門見本市)
この展示会は、2005年3月10日から14日、ドイツ・フランクフルトで開催された。「衛生、暖房、空調」をメインテーマとする国際的博覧会としては、世界唯一・最大のものである。出展者数は約2,300社、来場者数は約190,000人と推計されている。請求人は、この展示会にもTESY商品を出展した(甲第40号証)が、この展示会にもデロンギイタリア社は出展している。
d 2005年 INTERNATIONAL HOME & HOUSEWARES SHOW
この展示会は、2005年3月20日から22日、米国シカゴで開催された。上記aの展示会から若干名称が変更されたが実施主体は同様である。来場者数は60,000人と推計されている。請求人はTESY商品を出展したが、米国デロンギ社もこの展示会に出展している(甲第41号証)。
e 2005年 National Hardware Show
この展示会は、2005年5月17日から19日、米国ラスベガスで開催された。いわゆる家電品をメインとする展示会である。入場者をバイヤーに限定していることから、来場バイヤー数は約30,000人である。請求人は、TESY商標を出展したが、この展示会にも米国デロンギ社が出展している(甲第42号証)。
f 2005年 FEBRAVA
この展示会は、2005年9月20日から23日、ブラジル・サンパウロで開催された。エアコンや各種暖房器具等を主体とした展示会であるが、専門バイヤーを対象とすることから、来場者数は約30,000人である。請求人は、TESY商品を出展した(甲第43号証)。
g 2006年度以降も、ロシア・モスクワで開催された「AQUATHERM」、ドイツ・ケルンで開催された「DOMOTECHNICA」、同じくドイツ・フランクフルトで開催された「ISH」等、請求人は、国際展示会に積極的にTESY商品を出展しており、かつ、一貫してTESY商標を使用してきた(甲第44号証ないし甲第46号証)。
(オ) 周辺国への輸出
既に述べたとおり、TESY商品は、2004年度では、30か国以上の国に輸出実績があり、TESY商品中のオイルラジエーターヒーターの製造台数では、当時でもヨーロッパ第4位の実績を誇り、周辺国においても一定のシェアを有していた。TESY商品の中では、比較的市場参入が遅れた温水器についても、周辺国への輸出実績が上がっている。例えば、コンサルトGB社の調査資料抜粋のとおり、ロシア市場における温水器のシェアは、2003年4.1%、2004年3.7%、2005年は6.4%であり、2005年度にはロシアの温水器販売高では、第5位の実績を残している(甲第47号証)。
(カ) 以上のとおり、TESY商標は、請求人が創業以来一貫してTESY商品に使用し、TESY商品の販売成績・シェア、TVCM等を通じた広告活動によって、ブルガリア国内では周知となっている。加えて、TESY商品は、2004年当時においても、世界30か国以上に輸出実績があり、各国展示会の出展等を通じて国際的にも周知な商標である。したがって、商標法第4条第1項第19号に規定される周知性は充分認められるべきである。
エ 本件商標とTESY商標の類否等
(ア) 本件商標は、標準文字で「TESY」と横書きにしてなり、第11類に区分される「家庭用オイルラジエーターヒーター、業務用ボイラー、業務用暖冷房装置」を指定商品として登録されている。商標態様については、本件商標とTESY商標とが、同一、又は、類似であることが明白と考える。また、本件商標の指定商品は、TESY商品と同一又は類似である。
(イ) 被請求人のHPによれば、被請求人の取り扱い商品は、TESY商品と同様商品のみならず、いわゆるコーヒー・メーカー、オーブンその他のいわゆるキッチン家電や、アイロンにいたるまで広範に及んでいる(甲第48号証)。
しかしながら、本件商標の指定商品は、TESY商品のみに限定されており、その他の被請求人の扱い商品については指定されていない。したがって、本件商標は、当初より、自社製品についての使用を意図して出願されたものとは思われないし、請求人が調査を行なった範囲では、被請求人が本件商標を使用している実績もない。むしろ、以下に詳述するとおり、本件商標の出願行為には、不正の目的があるといわざるを得ない。
不正の目的
(ア) 上記のとおり、TESY商標は、請求人が創業した1990年から請求人の主要商品であるTESY商品に一貫して使用されてきた。TESY商標は、請求人の造語である「THERMOSYSTEM」から、さらに合成された造語であって、ブルガリアにおいては周知商標である。TESY商品は、ブルガリアにおいては、高い販売実績・販売シェアを誇り、積極的にTV広告活動も行なっている。また、TESY商品は、現在では、世界50か国に輸出され、各国展示会にも永年・継続的に出展されている。TESY商標が、多数国で、TESY商品を含む多数区分について登録されていることも、上記のとおりである。被請求人が、造語商標であって、かつ、周知商標であるTESY商標を、偶然に(かつ、請求人の使用事実を全く知らないで)、請求人の主力商品(TESY商品)に限定して出願をしたという可能性は極めて低い。
したがって、上記事実だけからも、被請求人の「不正の目的」は椎認されるべきである。
(イ) 請求人は、イタリアに本社を有するDeLonghi S.p.a社(以下「デロンギイタリア」という。)との定常的な取引関係にある。即ち、請求人は、1993年から、デロンギイタリアの商品をブルガリア国内へ販売するためのディストリビューターとなっている。この関係は現在も続いており、1994年には、請求人は、デロンギイタリアからベスト・ディストリビューターに認定された事実もある。
被請求人は、上記デロンギイタリアの商品を日本において販売することを目的として設立された会社である。したがって、被請求人が、請求人、TESY商品及びTESY商標については全く知らないということはありえない。
例えば、甲第49号証は、2005年9月9日にDnevnik新聞に掲載された記事である。この記事では、請求人とデロンギイタリアとが、シューメンに暖房器具の工場を共同で設立する可能性があることを示唆している。実際、両社は共同出資の上、事業体を立ち上げ、請求人が主としてイタリア、スペイン、フランス及びドイツ市場に向けたデロンギ商標の暖房器具生産(OEM生産)を行うことを計画していた。結果的には、この計画はデロンギイタリアが中国へ生産拠点をシフトすることで、実現には至らなかったが、請求人とデロンギイタリアとは、共同事業体を立ち上げる寸前まで行くほど、極めて親密な関係にあったのである。その過程で、デロンギイタリアは、請求人の生産能力、商品ライン、技術力、販売ネットの全てについて知るところとなり、当然のことながら、TESY商品・TESY商標についても知っていた。請求人は、以前にも、デロンギイタリアから電子レンジの生産委託を打診されたことがあり、このときも、デロンギイタリアの都合で、生産拠点を中国に移設したことがある。したがって、上記共同体事業も中止となったことで、2005年以降は、両社の関係に禍根が残った。両社は、同一の商品ラインを抱えており、両社とも世界的な販売実績を挙げるに至ったことから、海外市場においては商品が競合する。したがって、上記一連の経緯はビジネス上の問題として止むを得ない帰結であったとも思われる。しかしながら、かかる事情があったからといって、以下に再度述べるとおり、競合先の主力商標(TESY商標)を、その主力商品(TESY商品)に、我が国への本格参入阻止のために先取り的に出願することを許容する理由にはならない。
(ウ) 一連のビジネスを遂行する上では、甲第50号証や甲第51号証のような書面やメールの交換を行なっているが、いずれの書面・メールにもTESY商標が表示されている。
かかるビジネス上の連絡や報告は、請求人とデロンギイタリアとが取引を開始した1993年以降定常的に行なわれており、デロンギイタリアの担当者は、書面又はメールを受け取る都度、TESY商標を見ていたはずである。もとより、TESY商標は、請求人の主力商品に使用される最も重要な商標であって、宣伝広告、カタログ、展示会、及び、日常の取引書類等にも広範に使用されていることは上述のとおりであるから、この点も、デロンギイタリアは認識していたはずである。かかる状況にあるにもかかわらず、その子会社である被請求人がTESY商標を登録することは、いわゆる商道徳に反する行為である。
そこで、請求人は、デロンギイタリアに対して、速やかに調査を行ない、被請求人の本件商標の登録意図や善後策について回答すべきことを請求した。しかしながら、デロンギイタリアからは、「デロンギジャパンに確認の上、法務部門とも相談し(2007年)4月2日までに回答する」旨連絡があったが、その後2か月を経過するにも関わらず、なんらの回答もなされていない。そこで請求人は、止む無く本件審判に及んだものである。被請求人に正当理由があるのであれば、速やかに回答すべきであるにもかかわらず、全く回答がなされないことからも、不正の目的が強く推認される。
(エ) この点は、デロンギイタリアのみならず、被請求人も知悉していた。すなわち、以下のとおり、被請求人は、TESY商標がTESY商品に長期に使用され、請求人にとって最も重要な商標であることを知りながら、本件商標を出願している。
本件商標は、2005年10月28日に出願されているが、この年は、請求人が日本に本格参入した年である。請求人は、日本市場の大きさ・購買力の高さに着目し、それまで個別の引き合いにしたがってTESY商品を出荷していた販売方法を見直し、日本における総代理店を設定し販売ルートを確保することにした。甲第28号証の商標の指定国に、日本が含まれていることも、2005年以降のTESY商標の使用権確保を目的とするものであった。また、総代理店には、本件審判外の株式会社アウトポート社(以下、単に「アウトポート」という)を日本における総代理店に指定し、実際に、2005年度より、アウトポート社は、TESY商品の日本における販売を行なっている。アウトポートは、請求人と資本関係にはないが、日本の総代理店として現在に至るまで販売活動に注力し、順調に販売実績をあげつつある。因みに、アウトポートの代表者は、かつて被請求人会社に在籍していた(専務取締役)が、営業方針の違いから被請求人会社を2003年に退社しアウトポートを創立した経緯がある。このため、被請求人はアウトポートについて良い感情を持っていなかったと思われるし、また、TESY商品の属する分野については、被請求人と請求人は営業上完全に競合することになるから、この点でも、被請求人が請求人に対して敵対感を抱くことも理解はできる。しかしながら、そうだからといって、2005年度以降に本格参入する競合先の主力商標(TESY商標)を、請求人商品(TESY商品)の我が国への本格参入阻止のために先取的に出願することが許容される理由にはならない。
(オ) 請求人が、TESY商標及びTESY商品について知悉していたことは、他の事情からも窺われる。
例えば、1995年には、請求人のZhechko Kyurkchief、Vassil Dimovが、当時被請求人の代表者であったIslaif氏と、イタリアのトレビソで会合している。このときは、ブルガリアを含むヨーロッパ市場におけるオイルラジ-エーターヒーターや温水器に関する情報交換、及び、日本市場の市場性一般についで情報交換を行なったに止まるが、遅くとも、この以降、被請求人は、請求人のTESY商標やTESY商品に関する概要は知ることになった。
(カ) また、2005年10月4日には、上記Vassilは、被請求人の代表者である、Patrick Lauer氏と、イタリア、トレビソで会談している。その際、Vassilが被請求人に手渡したのと同様の名刺を参考までに証拠として提出する(甲第52号証)。この名刺には、TESY商標が2箇所に表示されている。
なお、この会談が行なわれた時点では、デロンギイタリアと請求人の共同事業が(甲第49号証)頓挫しており、会談そのものは必ずしも友好的なものではなかった。加えて、この会談において、請求人は、2005年度より日本市場にTESY商品を本格参入すること、日本における総代理店を設定したこと、及び、その総代理店がアウトポートであることを報告のところ、被請求人は激怒し、特に代理店については、強く撤回を求めた。しかしながら、請求人は、既にその時点で日本市場に対する販売促進用サンプルのアウトポートへの送品手続きを終えており、そもそも、請求人が日本においてどのような代理店を選定するかについては、被請求人から指示を受けるいわれはないことを主張した。この時点で、両者の信頼関係は決定的に悪化し、請求人と被請求人とは、少なくとも日本市場においては完全な競合関係となることが明確になった。このため、被請求人は、同月28日に本件商標を出願したものと思われる。
カ 以上のとおり、TESY商標は、請求人の使用する周知商標であり、2004年度の実績においても、36か国への輸出実績のある商品に継続して使用されてきた商標である。TESY商標は造語商標であって、我が国においても請求人以外に使用されていない。またTESY商標は、ブルガリアのみならず世界多数国に登録実績を有する商標である。また、このため、TESY商標は、各国における展示会においてもメイン商標として使用され、これらの展示会においては、デロンギイタリア、米国デロンギも出展されており、上記事情から、被請求人もTESY商標については十分知悉していた。本件商標は、TESY商品のみを指定して登録されており、被請求人の扱い商品をカバーしていない。また、本件商標の出願は、請求人が日本市場への本格参入を決定した2005年度になされているが、上記のとおり、被請求人は、本件商標出願時点において、請求人がTESY商品を日本市場へ本格参入することを知っていた。本件商標は、請求人と被請求人との関係が決定的に悪化し、かつ、両社が完全に競合関係にたったことを知った後に出願されている。さらに、本件商標を被請求人が使用すれば、市場において被請求人の商品(デロンギイタリアの商品)とTESY商品との混同を生じることは必定であって、その結果、長期に亘って築かれた請求人の信用や名声も殿損されるおそれもある。以上の事実・事情を総合すれば、そもそも本件商標は、請求人の日本市場への本格参入を阻止する以外の目的を持たないと言わざるを得ず、請求人が、我が国においてTESY商標の登録を行っていないことを奇貨としてなされたものであって、商標法第4条第1項第19号に該当することは明白である。
(2) 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標審査基準では、商標法第4条第1項第7号該当性について、「その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は、社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるもの」、「特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当するものとする」とし、判例では、『商標法の目的が、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」(同法1条)にあることに照らして、同法による商標の保護が、産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうようなものであってはならず、同法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗」も、このような観点から解すべきであって、そうであれば、商標の使用が、社会の一般的倫理的観念に反するような場合や、それが、直接に、又は商取引の秩序を乱すことにより、社会公共の利益を害する場合においても、当該商標は同号に該当するものとして、登録を受けられないものと解さなければならない』と判示している(東京高判平成12年5月8日判決;甲第54号証)。
イ 既に述べたとおり、本件商標の取得は、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」が推認されるのみならず、請求人と被請求人の関係(特段の営業事情)から、いわゆる剽窃的になされたものと言わざるを得ない。そうすると、本件商標は、上記国際信義に反する商標であるし、商取引の秩序をも害する商標であるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(3) 以上のとおり、本件商標は、ブルガリアで周知な請求人の商標と同一又は類似の商標であって、これが我が国で登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願されたものである。また、本件商標は、上記のとおり造語商標であって辞書に載っていたり、一般的に使用されているような成語ではない。むしろ、インターネットで検索しても、ほとんど全てがTESY商品についての情報が検索されるほど、指標性の高い語であるから、偶然、同一の商標が案出されるとは考えにくい。さらに、被請求人は、請求人が我が国においてTESY商品の本格参入を知りながら、敢えて、TESY商品に絞って本件商標を出願したのであるから、商標法第4条第1項第19号に規定する不正の目的をもって出願した、少なくとも、不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うべきものである。また、本件商標は、請求人と被請求人との関係において、剽窃的になされたものであって、国際信義に反し、商取引の秩序を害する商標であるから、商標法第4条第1項第7号にも違反して登録されたものである。
以上より、本件商標は、商標法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1) 商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 「請求人、及び、請求人の使用商標」について
被請求人は、請求人のTESY商品の製造・販売実績等については一切知らないと主張している。にもかかわらず、一方で被請求人は、「請求人と(デロンギイタリアは)敵対関係ではなく友好的なビジネスパートナーであった」とも主張しており、主張が矛盾する。即ち、「友好的なビジネスパートナー」が、そのパートナーの基本的な会社情報について一切知らないということはあり得ない。
イ 「TESY商標の周知性」について
請求人は、TESY商標に関するTV広告に関する2003年9月以降、2005年10月までのTVCMの内容について証拠を提出した(甲第35号証の1ないし10)。また、実際に「bTV」テレビで放映されたTVCMの内容も、実際に放映された一連の映像から抽出した画像の一部を証拠として提出した(甲第36号証の1ないし3)。
これらの証拠については請求人が作成した資料ではない。また、甲第37証の調査資料も、外部調査会社(GfKBulgaria)の作成にかかるTESY商標の認知度調査報告書の抜粋である。これらの資料も、請求人が作成したものではない。被請求人は、公的機関の作成に係る証明以外は証拠として適切ではないと主張するようでもあるが、一般的に、TVCMの個別情報については、当該CMを実際に放映したテレビ会社に照会するのが最も直接的な証拠方法である。また、特定商標の周知性判断については、外部調査会社の報告資料も充分考慮に値する。
請求人が行った立証で、TESY商標の周知性に関する証明は充分足りると考える。
なお、被請求人は、TVCMについては、特に「仮にこれが事実であったとしても、その結果TESY商標が著名性を獲得していたか否かは不明である」と主張する。しかしながら、2003年以降2005年10月までのTVCM放映回数は、周知性獲得には充分な回数であると考える。また、TVCMの認知度に対する寄与は、調査報告書において、TESY商標が、ほとんど自発的レベルで認識され、かつ、周知度はトップである点からも明らかであるから、「仮にこれが事実であったとしても、その結果TESY商標が著名性を獲得していたか否かは不明である」という被請求人の主張は失当と言うほかない。
ウ 各国展示会等
被請求人は、展示会出展事実について、「デロンギイタリア社と米国デロンギ社が当時請求人の存在を知っていたからといって、被請求人もこれらの者と同時に請求人の存在を知りえたとは言えない」等と述べるが、これらの事実は、請求書記載のとおり、「TESY商標の周知性について」立証するために記載したものである。したがって、被請求人の非難は、請求人の主張を正解しない反論である。
なお、付言すれば、「世界的な規模で展開している複数の企業から成り立っている企業グループにおいて …常に同じ情報を共有しえないことは自明である」と主張するが、「世界的な規模で展開している・・・企業グループ」であれば尚のこと、各国における市場状況には敏感であるのが一般的であり、例示した展示会において、イタリア、米国のそれぞれの法人は、請求人と同一の商品を、それぞれ同一展示会で展示しているのであって、世界的規模で、競合他社商品(それも、かつて友好的なビジネスパートナーであった企業の商品である)に注意を払うことが「自明である」と考える。
事実、TESY商標の日本における事情に限っても、むしろデロンギイタリアと被請求人とは適宜情報交換がなされている。請求人が被請求人に送付した甲第66号証の通知書に関して、被請求人は、デロンギイタリアの承認を得る前には一切の回答ができないと言明している(被請求人会社 総務部 黒田氏)。このため、上記通知書出状以降本日に至るまで、本件商標の譲渡交渉を行なう意思があるのか否かすら確認できない状況にある。本件商標は、被請求人の保有に係り、その権利の帰趨に関しては、専ら被請求人の意向に拠るべきと考えるが、かかる意向についてまで、一々デロンギイタリアにお伺いを立てているのである。この一事からしても、少なくとも、本件商標やTESY商標・TESY商品に関する情報に関しては充分共有されているものと考える。
したがって、本件商標の出願・登録の過程においても、デロンギイタリアの意向が反映していると考える方が自然である。
エ 「本件商標とTESY商標の類否等」について
被請求人は、本件商標は「自社の製品範囲名(ペットネーム)として使用する予定で取得したものである」と主張するが、「製品範囲名」が具体的に何を指称するのかが判然としない。仮に、これがいわゆるペットネーム(個々の商品名、役務名に関する愛称的な商標)を意味するとしても、かかる範疇に属否によって、不正の目的の有無が左右されることはない。
オ 「不正の目的」について
(ア) 被請求人は、『「請求の理由(1)オ 不正の目的(ア)、(イ)」の記載は、請求人とデロンギイタリア社との関係を記載したものであって、被請求人が関与しないことである』と主張する。
しかしながら、これらの記載は、周知商標であるTESY商標を、被請求人が偶然に採択し(かつ、請求人の使用事実を全く知らないで)、請求人の主力商品(TESY商品)に限定して出願をしたという可能性は極めて低いことを主張したものである。かかる事実は、請求人とデロンギイタリアとの関係のみを記載したに止まらないし、加えて、かかる関係如何には左右されない事項である。
(イ) 被請求人は、デロンギイタリアに対する本件商標の登録意図等に関する請求人の回答請求については、「請求人からの上記連絡を受けた者はいなかった」として、請求人の主張を否認している。そこで、請求人は、電子メールに残された文章(画面コピー)を改めて証拠として提出する(甲第67号証ないし同第71号証)。電話の内容については提出することができないが、電子メールに残された記録からでも、デロンギイタリアが本件に関する請求を受けていた事実、及び、これに対する何らの報告も行なっていないことは明白である。そして、かかる一連のデロンギイタリアの対応や、今回の「請求人からの上記連絡を受けた者はいなかった」といった主張、審判手続きにおける「本件商標は譲渡交渉中である」との主張、請求人が送付した甲第66号証の書面に関する「本件商標に関しては譲渡交渉を行なうか否かに関しても一切回答できない」といった答弁書とは異なる応答、等の一連の主張・応答は、事実に反するものが多く、誠実な対応からはほど遠いものと言わざるを得ない。かかる一連の不誠実な対応からも、改めて、被請求人の「不正の目的」は認定されるべきである。
(ウ) 本件商標が、競合会社である被請求人によって登録されている以上、TESY商標が多数国で使用されている周知商標であるにもかかわらず、請求人の商標は我が国で使用できないことになる。これは、実質的には、外国権利者の製品についての、国内参入阻止以外の何物でもない。
(エ) 請求人は、TESY商標及びTESY商品について被請求人が知悉していた事実の証明として、請求書に記載のとおり、それぞれの会議、当該会議で会った人間の名前、会話の概要、及び、そのときに請求人より手渡したTESY商標の表示された名刺等について記載・提出を行なった。
しかしながら、被請求人は、a)1995年の、請求人のZhechkoKyurkchief、Vassil Dimovが、当時被請求人の代表者であったIslaif氏と、イタリアのトレビソで会合した事実、及び、b)2005年10月4日に、上記Vassilが、被請求人の代表者である、Patrick Lauer氏とイタリア、トレビソで会談している事実、については認めているが、そもそも「二社間のビジネスについて詳細に対話するだけの時間を確保できる席ではな」いから「審判請求書に書かれているような会話があったことは認められず・・・推論に過ぎない」と主張する。また、請求人が2005年以降日本市場に本格参入する計画を有していた事実を被請求人が知悉していた点については、「事実無根な主張という印象をぬぐえない」と主張している。
確かに、会話内容について完全な復元は難しいが、例えば、その一半の事実については、他の書面からも窺える。例えば、被請求人が本件商標の譲渡について提案したとされる、被請求人の平成19年8月4日の電子メール(甲第71号証)にも、「ご記憶とは思いますが、我々は2005年開催のトレビソ国際会議において、ヒーターと壁パネルヒーター用閉鎖式サーキットボイラーの販売協力・提携の可能性につき協議した」と記載されている。甲第71号証の書面には、かかる「協議」にもかかわらず、請求人がそのフォロ-アップをしていないことや、この「協議」に関してその後被請求人に連絡をとらなかったことについて若干非難めいた文章も散見される。かかる記載からも明らかなように、「協議」はなされたのであり、その内容も、単なる「挨拶」に止まる程度ではない。即ち、「協議」は、「ヒーター、壁パネルヒーター用閉鎖式サ-キットボイラ-の販売協力・提携の可能性性」ついて行なわれており、その時点で請求人は、アウトポートを日本における総販売代理店として指定した事実も伝えているのであるから、これに対して被請求人が激怒したという請求人の主張も自然である。そうでないとするならば、いわゆるコーヒー・メーカー、オーブンその他のいわゆるキッチン家電や、アイロンにいたるまで広範に扱っている被請求人が、なぜ本件商標については、TESY商品のみに限定しているのか、しかも、友好的パートナーの最も重要な商標を、何故この時期に出願したのかの理由が不明となる。
(2) 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について請求人は、「自社製品の製品範囲名として使用するために本件商標を取得したものであって、剽窃的に取得したものではない。よって、本件商標の7号該当性については否認する」と述べるに止まる。
そして、概要、a)請求人と被請求人の親会社であるデロンギイタリア、及び、被請求人とは友好的な関係にあるとの認識にたっていたこと、b)本件商標の取得は、専ら被請求人の適法かつ適正な商業活動の一環の行為であること、c)デロンギ商標の著名性は明らかであるから、被請求人には、請求人や本件商標に便乗して商活動を行なう必然性も必要性もなく、いわゆるフリ-ライドの可能性を疑われる余地も全くないこと、が述べられている。
しかしながら、これらの主張にっては承服できないし、上記a)ないしc)を理由に商標法第4条第1項第7号該当性が排除されるものではない。
(3) 結びについて
被請求人は、「本件商標は、譲渡交渉中であるため、結審通知及び審決謄本の送達は、譲渡交渉が終了するまで猶予」するよう述べているが、本件審判については、その審決を猶予すべき理由もないことから、請求の趣旨に記載のとおりの審決を求める。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
1 審判請求書における請求人の主張に対する反論
(1) 請求人及び請求人商標の使用について
請求人は、TESY商標の請求人による使用実績及び請求人がTESY商標を複数国において登録していることを主張しているが、この点について被請求人は不知である。なぜなら、これらは請求人の事業活動の結果であって、請求人とは何らの資本関係もない被請求人が、請求人の事業活動に関与する余地がないことは明らかだからである。
なお、甲第13号証及び甲第14号証(Google検索結果)において「TESY(テシー)はフィコスタ社の登録商標です」との記載があるが、TESYは日本においての被請求人の登録商標であるため、かかる記載をHP上で行うことは、虚偽表示または需要者が誤解を招く記載である。さらに、甲第13号証ないし甲第23号証は、2007年5月時点におけるインターネットの検索結果であるから、これらの証拠及びこれらに基づく請求人と被請求人とが一覧で検索されるという主張は、本件商標にかかる商標登録の登録時(2006年5月)における商標法第4条第1項第19号及び第7号の充足性を判断する上で審理対象とすべき資料及び主張とはなり得ない。
(2) 「TESY商標の周知性」について
請求人は、TESY商標がブルガリア共和国内における請求人の著名商標であると主張している。
しかし、甲各号証は、いずれも請求人が作成した私的な資料であり、その内容は、請求人による本件商標の使用実績を示すことを意図したものであるが、この証拠の中に適切な公的機関によるTESY商標が請求人の著名商標である旨の証明は含まれていない。よって、TESY商標の著名性を認めることはできない。
また、添付された各証拠については、以下の疑義がある。
まず、甲第35号証の1ないし10、及び甲第36号証の1ないし3においてTVCMを放映したと主張しているが、仮にこれが事実であったとしても、その結果TESY商標が著名性を獲得していたか否かは不明である。
また、甲31号証及び甲34号証の新聞記事は、訳文には日付として2004年1月10日付けとの記載があるが、新聞記事には日付を記載されたページが添付されておらず、また新聞の発行社の情報が記載されたページもないので、いつ、誰により発行された新聞なのか本当のことは不明である。
さらに、甲32号証及び甲33号証は、Ficosta社の業績を表彰したものであって、TESY商標の周知・著名性を証明した証拠ではない。
よって、請求人が提出した証拠からは、本件商標が著名商標であったことを認めることはできない。
また、請求人は、日本以外の国で開かれた展示会への出展事実を述べ、その時にデロンギイタリア社や米国デロンギ社も同時に出展していると主張しているが、仮にこれが事実だったとしても、デロンギイタリア社と米国デロンギ社が当時請求人の存在を知っていたからと言って、被請求人もこれらの者と同時に請求人の存在を知りえたとは言えないはずである。なぜなら、被請求人は、デロンギ製の各種製品を日本国内市場に販売することを業となす者であって、日本を除く米国やその他の国にどのような製品が出回っているかということは直接の関心事ではないからである。請求人の主張内容は、一貫してデロンギイタリア社や米国デロンギ社、及び被請求人を同一視し、米国デロンギ社及びデロンギイタリア社が何らかの情報に接すれば、必ずや同じ情報を被請求人も接しているかのように捉えているようだが、一の企業グル-プ、特に全世界的な規模で展開している複数の企業から成り立っている企業グループにおいて、同じ企業グループを形成していても別法人である以上、常に同じ情報を共有しえないことは自明である。よって、請求人においては、デロンギグループに属する他の法人と、被請求人とを同一視することなく峻別して主張をされたい。
(3)「本件商標とTESY商標の類否等」 について
本件商標とTESY商標とが、同一、又は類似であることは認める。しかし、本件商標の指定商品がTESY商品のみに限定されていることに基づいて、被請求人の「自社製品についての使用を意図して出願されたものとは思われないし、(略)不正の目的があるといわざるを得ない。」は否認する。被請求人は、後述するように、本件商標を自社の製品範囲名(ペットネーム)として使用する予定で取得したものである。
(4) 「不正の目的」について
請求人は、被請求人が商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」をもって本件商標を取得したと主張するが、この点について否認する。
ア まず、請求理由の「1(1)オ 不正の目的」の(ア)及び(イ)の記載は、請求人とデロンギイタリア社との関係を記載したものであって、被請求人が関与しないことである。
イ 請求人は、デロンギイタリア社に本件商標の登録意図や善後策について回答すべきと請求し、「デロンギジャパンに確認の上、法務部門とも相談し、(2007年)4月2日までに回答する旨の連絡があった」と述べている。
しかし、被請求人の下には当時デロンギイタリアからそのような問い合わせはなかった。また、今般の審判請求を受けてから、被請求人はデロンギイタリアの法務部門に問い合わせをし、請求人から上記の内容の連絡を誰か受けていなかったか問い合わせを行い、デロンギイタリア法務部門に調査を依頼した。しかしながら、デロンギイタリアからは、請求人からの上記連絡を受けた者はいなかったとの回答を得ている。よって、被請求人は、請求人による係る主張を否認する。
もし、このような請求をされたのが事実であり、請求を電話で行ったのであれば電話を受けた者の氏名を明らかにしていただきたい。また、請求人は、請求人とデロンギイタリアとの間で定常的に書面やメールの交換を行ってきたと述べている。そうであるならば、上記のような重大な事項について連絡をする際には、口頭で話したという履歴が残らない電話よりも、履歴が残せる書面やメール、ファックスによって連絡をするのが一般的ではないかと思われる。よって、上記問い合わせをしたことが事実であれば、その時の書面を提出して請求人の主張が真実であることを証明されたい。
ウ 請求人は、「請求人がアウトポート社を日本における総代理店に指定した」、「アウトポートの設立者が被請求人会社を退職した元専務であった」、「だから被請求人はアウトポートについてよい感情を持っていなかったと思われる」と主張する。
これは請求人の全くの邪推である。被請求人は、請求人が日本における総代理店をどの会社に指定するかについて全く関知しないし、アウトポートの設立者が被請求人の退職者であるという点についても、被請求人会社の退職者が退職後にいかなる職に就くかについては被請求人が全く関知しないところである。これは、非常に常識的なことであって、被請求人がこれらの常識に反して悪感情を抱いていると、請求人において主張されることについては甚だ心外である。まして、請求人が真実に反して想念した悪感情に基づいて、「被請求人が請求人に対して敵対感を抱くことも理解できる。しかしながら、(中略)、先取的に出願することが許容される理由にはならない。」というくだりも、請求人が感情的になっていることは伝わるものの、被請求人に悪意があったとするのは請求人による推論であり、事実に反するものである。
エ 請求人は、1995年に、請求人代表者Vassil Dimov氏と被請求人の当時の代表者Islaif氏とがイタリアのトレビソで会合した、また、2005年には、Vassil Dimov氏と被請求人の現代表者Patrick Lauerとが会合したと述べ、さらに、この会合において二者で会合し、請求人が日本市場に参入すること及びアウトポ-トを総代理店にする旨を被請求人代表者に話したところ、被請求人代表者が激怒した、と述べている。
この点について、トレビソの会合で両者は話した点は認める。しかし、トレビソの会合は、デロンギ製品の各国ディストリビューターを集めたインターナショナル会議であって、二社間のビジネスについて詳細に対話をするだけの時間を確保できる席ではなく、ここでの話は、ヒーターやボイラーの流通についての潜在的な協力について軽く情報交換をする程度にすぎないものであった。よって、この会合において、上記のような詳細な話をし、被請求人の代表者が激怒したという事実はなかった。
以上より、トレビソ会合の話により激怒した被請求人の代表者が本件商標の出願にいたったという主張も到底受け入れられない。
さらに、トレビソ会合で両者の間に審判請求書に書かれているような会話があったとは認めらないため、出願時に、近々請求人が日本市場に参入する予定があったことを被請求人が知悉していたというのも推論にすぎない。もし、出願当時に日本市場に参入する計画があってそのことを被請求人が知悉していたと主張されるのであれば、請求人の推論ではなく、客観的な資料として、会社内部の資料ではなく請求人会社の外部の者が出願当時に日本市場に参入する計画があったことを知り得たという証拠を提出していただきたい。
(5) 上述のとおり、被請求人は、不正の目的をもって本件商標を取得したのではなく、自社製品の製品範囲名として使用するために本件商標を取得したものであって、剽窃的に取得したものではない。
よって、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性については否認する。
2 被請求人の主張について
(1) 請求人との関係性について
審判請求書にもあるように、請求人と被請求人の親会社であるデロンギイタリアとは、ディストリビューターとメーカーとの関係性があり、もともと友好的なビジネスパートナーである。また、デロンギイタリアの子会社である被請求人としても、請求人を敵対的な競合会社として認識してはいなかったし、現在もそうである。前述の2005年のトレビソ会合以後、Ficosta社(請求人の前身)から全く連絡がなかったが、被請求人は、この秋から、2008・9年の販売について請求人と話し合うつもりでいた。このように、被請求人は請求人と競合関係にあるとは全く認識しておらず、むしろ友好的な関係にあるとの認識にたっていた。
よって、今回の無効審判の請求について、請求人から事前に全く通知がなく、いきなりこのような法的手段を取られたことに対して驚きを隠せないでいる。
(2) 本件商標の取得意図について
被請求人は、新たなプロジェクトを立ち上げる前の標準的な手続として、可能であればその地域の市場でブランド(商標)か、製品範囲名(product range)の名前を登録することとしている。さらに付言すると、請求人が、その前身であるFicosta社を名乗っていたことは知っていたが、テシー・リミテッドに社名変更した事実は、被請求人は今般の審判請求事件まで知らなかった。したがって、本件商標の取得は、専ら被請求人の適法かつ適正な商業活動の一環の行為であって、請求人の使用商標を先取り的に取得することにより請求人に対して営業妨害する意図もなければ、高額な買い取り要求や被請求人を請求人の日本総代理店に指名するような要求を行う意図も持っておらず、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」をもって本件商標を取得したわけでは決してない。
(3) デロンギブランドの著名性について
被請求人は、甲第16号証から甲第22号証を援用する。これらは、日本国内でインターネットに接続し「オイルヒーター」を検索した結果が示されている。このいずれにも、被請求人の製品が掲載されている。特に甲第18号証は、ポータルサイトとしてアクセス数が高い楽天のページ、甲第19号証は、やはりポータルサイトとしてアクセス数が高いYahooのショッピングページ、甲第21号証は、ネットオークションとしては「ヤフオク」と略称されるほどアクセス数が高い「Yahooオークション」のページであるが、これらのページにおいて多数の商品があるうち、被請求人の商品は「デロンギ」の文字とともに上位に複数掲載されていることからも、被請求人のデロンギ商標の著名性は明らかである。
一方、請求人及び本件商標は、日本市場において周知とはいえず、その認知度はかなり低い。これは、甲第16号証から甲第22号証において、請求人の商品のヒット件数と被請求人の商品のヒット件数とを比べると、被請求人の商品のヒット件数のほうが各ページにおいて高いことからも明らかである。
よって、被請求人には、請求人や本件商標の信用に便乗して商活動を行う必然性も必要性も全くない。そのため、被請求人には、フリーライドの可能性を疑われる余地は全くない。
さらに、請求人の認知度が日本国内において低いため、ダイリューンョンの対象となる著名性もなく、被請求人には、ダイリューンョンの意図が疑われる余地がない。
参考までに、日本市場におけるオイルヒーターの売上高を添付する(乙第1号証)。数字は、調査会社GFKによるものである。これによると、オイルヒーター市場において、デロンギ製品は売上高が日本市場で第1位である。このことからも被請求人の日本市場における優位性及び、デロンギブランドに対する需要者の信頼性及び認知度は絶大であることは明らかである。
3 結び
上記より、本件商標は、「TESY」商標とは類似せず、また被請求人は本件商標を不正の目的を持って取得したものではないので、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当せず、同様に被請求人において不正の目的がなく国際信義則にも反しない以上、同第7号にも該当しない。よって、本件商標にかかる商標登録には商標法第46条第1項第1号に掲げる無効理由はない。
なお、被請求人は、請求人に対して本件商標に係る商標権の取得費用及び移転費用相当により、本件商標にかかる商標権を譲渡する意思がある。取得費用及び移転費用相当とは、本件商標の取得に係る実費であって、商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」で論じられるところの高額な買い取りに当たらない。この商標権の譲渡に関し、被請求人会社の代表者Patrick Lauerは、平成19年8月4日に請求人会社の代表者Vassil Dimov氏に対して、商標権の譲渡の提示を含む電子メールを送信しているが、現時点ではVassil Dimov氏からの返信はない。
上述のとおり、本件商標は譲渡交渉中であるため、譲渡交渉が終了するまで審決を猶予いただきたい。

第4 当審の判断
1 原告商標の周知著名性について
(1) 請求人が提出した証拠及び本件審判請求の理由、被請求人の答弁の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 請求人は、1990年に創立されたブルガリア国に本拠を置く法人であり、オイルラジエーターヒーターを始めとする各種ヒーター、各種温水器の製造・販売を主要業務とするメーカーである(甲第3号証ないし甲第6号証)。
請求人は、オイルラジエーターヒーター、温水器等にTESY商標をメイン商標として、使用してきた(1999年度、2001?2004年度カタログ:甲第3号証ないし甲第6号証)ほか、名刺や請求人発信のメールにも記載されている。なお、2007年5月に、旧社名であるフイコソタ(FICOSOTA)社」から、テシー・リミテッド(TESY LTD)へと社名変更を行なった(甲第2号証)。
イ 請求人は、TESY商標について、オイルラジエーターヒーター等を指定商品として、ブルガリアにおいては、1999年4月27日、2002年2月12日及び2004年8月9日に登録された3件の登録商標を有し、また、2002年5月15日及び2004年8月9日に国際登録し、それぞれ約30か国に登録された2件の国際商標登録を有している。
ウ TESY商品の売上げ高は、1999年は、円価で約18億円であり、2005年は、約30億円、2004年度のTESY商品の販売台数は、約40万台である(甲第29号証の1及び2)。また、TESY商品は、スペイン、イギリス、アイルランド、ハンガリー、ロシア、ウクライナ、クウェート、モロッコ、台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各国に輸出され、2004年時点で、ヨーロッパのオイルヒーター製造会社の中で4番目に大きい企業となっている(甲第31号証)。
エ 請求人は、例えば、ブルガリアの「bTV」テレビ分で、2003年9月17日?30日に55回、2003年10月に28回、11月に12回、2004年4月に7回、5月に70回、6月に31回、2004年9月に38回、10月に152回などTVCMを通じてTESY商品並びにTESY商標を積極的に宣伝している(甲第35号証の2ないし10、甲第36号証の1ないし3)。
オ 請求人は、海外展開も積極に行い、2003年1月12日から14日まで米国シカゴで開催された「2003 INTERNATIONAL HOUSEWARES SHOW」、2004年2月25日から27日までドイツのケルンで開催された「2004 Home Tech」、2005年3月10日から14日までドイツのフランクフルトで開催された「2005年 ISH(国際冷暖房・衛生・空調専門見本市)」、2005年3月20日から22日まで米国シカゴで開催された「2005年 INTERNAT IONAL HOME & HOUSEWARES SHOW」、2005年5月17日から19日まで米国ラスベガスで開催された「2005年 National Hardware Show」、2005年9月20日から23日までブラジルのサンパウロで開催された「2005年 FEBRAVA」などにTESY商品を出展した(甲第38号証ないし甲第43号証)。
(2) 前記(1)で認定した事実によれば、TESY商標は、請求人の取扱いに係るオイルラジエーターヒーター、温水器を表示するものとして、遅くとも本件商標の登録出願時である平成17(2005)年10月28日には、少なくともブルガリアにおいて、その需要者の間に広く認識されており、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続していたと推認し得るところである。
(3) 被請求人は、甲各号証は、「いずれも請求人が作成した私的な資料であり、適切な公的機関によるTESY商標が請求人の著名商標である旨の証明が含まれていない」、「仮にTVCMの放映が事実であったとしても、その結果TESY商標が著名性を獲得したか否かは不明である」、「(証拠とする)新聞記事に発行日や発行社の記載がないから、何時、誰により発行された新聞なのか本当のところは不明である」等として、「TESY商標の著名性を認めることができない」と主張している。
しかし、甲第2号証、甲第31号証及び甲第34号証の新聞記事は、発行された事実及び内容虚偽のものであることを疑わせる事情は全くうかがわれない。また、甲第3号証ないし甲第7号証の請求人のカタログも格別不自然なものということはできないし、また、これが実際に作成され、配布されたことを疑わせるものではない。さらに、原告のTVCMが実際行われたこと及びその内容がTESY商標に係るものであることもbTV社により証明されている(甲第35号証の1ないし10,甲第36号証の1ないし3)。そして、これらの証拠等により上記(1)のとおりの事実が認められるというべきである。
2 商標の類似について
本件商標は、「TESY」の文字よりなるところ、請求人が引用するTESY商標は、「TESY」の文字からなるもの又は「TESY」の文字と図形よりなるものであるから、両者は、「TESY」の文字を共通とする類似の商標であることは明らかである。
3 不正の目的について
(1) 請求人が提出した証拠及び本件審判請求の理由、被請求人の答弁の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
ア イタリアの法人である「DeLonghi s.p.a」(デロンギイタリア)は、オイルラジエーターヒーター、対流式暖房機等のポータブル暖房器具からスタートして、暖房部門、エアーコンディショナーとエアートリートメント部門、料理・調理用品部門などの事業を展開しているメーカーである(甲第48号証)。被請求人(デロンギ・ジャパン株式会社)は、デロンギイタリアが製造する各種製品をわが国において販売することを業となす社であり、デロンギイタリア製のオイルラジエーターヒーター等をわが国において販売している。
イ 1995年に、イタリアのトレビソで請求人のZhechko Kyurkchief、Vassil Dimov及び当時被請求人の代表者であったIslaifが会合している。
また、 2005年10月4日に、デロンギ製品の各国ディストリビューターを集めた会議が、イタリアのトレビソで開催され、請求人のZhechko Kyurkchief、Vassil Dimov及び被請求人の代表者である、Patrick Lauerが参加し、両者は話し合いをした。
ウ デロンギイタリアとフィコスタ社とは、ディストリビューターとメーカーの関係にあり、ビジネスパートナーであった。また、2005年9月頃までに、は、共同でブルガリアのシューメンで暖房器具工場を設立する可能性を探っていた(甲第49号証)。
(2) 請求人がオイルラジエーターヒーター等のTESY商品に使用するTESY商標がブルガリア国内において、遅くとも本件商標の出願時(平成17年(2005年)10月28日)までには、需要者の間に広く認識されていたものと認められるうえ、世界各国に輸出され、ヨーロッパのオイルヒーター市場では第4位の地位を占めるようになり、専門バイヤーが参加する展示会へも積極的に参加していることが認められることは、上記1のとおりである。
そして、上記(1)に認定したところによれば、被請求人は、デロンギイタリアの子会社であって、デロンギイタリアの製造するオイルラジエーターヒーター等の製品をわが国において販売していたものであり、自己の扱う同種商品の市場動向については、注意を払うのが通常であるから、請求人のTESY商標の上記周知性にかんがみると、被請求人は、TESY商標が請求人の業務に係る商品表示であることを認識していたものというべきであるばかりでなく、請求人は、デロンギイタリアのディストリビューターであり、被請求人とともに、イタリアのトレビノで開催された、少なくとも1995年及び2005年の会合に参加した事実が認められるばかりでなく、デロンギイタリアと請求人とが20万台から30万台規模の工場を共同で設立する可能性を探っていたものであるから、デロンギイタリアの子会社である被請求人も共同設立者及びその業務内容についてある程度認識していたものと推認される。
そうすると、それにもかかわらず被請求人がTESY商標と類似する本件商標をあえて採用し、TESY商品と同一又は類似の商品を指定商品として登録出願したのは、ブルガリア国で周知であり、オイルヒーターのヨーロッパ有数の規模となっている被請求人のTESY商標が、日本において登録されていないことを奇貨として、不正の目的をもって先取り的に登録出願し、登録を受けたものと認めるのが相当である。
(3) 被請求人は、「全世界的に展開している複数の企業から成り立っている企業グループにおいて、同じグループを形成していても別法人である以上、常に同じ情報を共有し得ないことは自明である」等として、請求人の存在を知らなかったかのような主張をし、また、本件商標の取得意図について、「新たなプロジェクトを立ち上げる前の標準的な手続として、可能であれば、その地域の市場でブランド(商標)か、製品範囲名(puroduct range)を登録することにしている。」「本件商標の取得は、専ら被請求人の適法かつ適正な商業活動の一環の行為である」と主張している。
しかしながら、被請求人は、TESY商標が請求人の業務に係る商品表示であることを認識していたものと推認されることは上記で述べたとおりであり、同業者の商標として認識している商標を採択、使用することは、通常の取引の実情からは極めて不自然であるばかりではなく、「TESY」の語は、特段の意味を有しない造語と認められ、被請求人が通常採択するものとは考え難いものであり、ほかに、被請求人は、TESY商標と類似する本件商標を採択したことについて何ら理由を述べるところがない。さらに、被請求人は、請求人がTESY商品を世界各国に輸出し、デロンギイタリアの業務に係る商品と競合していることも十分に知っていたと推認されるから、被請求人の本件商標の取得は、「適法かつ適正な商業活動の一環の行為である」とはいえないというべきである。したがって、被請求人の主張は採用できない。
また、被請求人は、デロンギ商標は著名であり、TESY商標は、日本市場において周知とはいえないなどとして、被請求人には、フリーライドやダイリューションの意図はないと主張する。
しかしながら、TESY商品がわが国において販売されたなら、被請求人に係る商品と競合することは否定できないのであって、仮に被請求人にフリーライドやダイリューションの意図がないとしても、本件商標を不正の目的をもって登録出願したものと推認せざるを得ないことは上記(2)のとおりである。
4 以上のとおり、請求人が引用するTESY商標は、本件商標の出願時(平成17年(2005年)10月28日)及び登録査定時(平成18年(2006年)5月11日)において、請求人の業務に係る商品を表示するものとしてブルガリア国内で需要者の間に広く認識されていたものであるところ、本件商標は、請求人のTESY商標と類似の商標であって、かつ、不正の目的をもって本件商標を取得し、使用するものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、同法46条1項の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-01-07 
結審通知日 2008-01-10 
審決日 2008-01-24 
出願番号 商願2005-101479(T2005-101479) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (Y11)
最終処分 成立 
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 内山 進
森山 啓
登録日 2006-05-26 
登録番号 商標登録第4955642号(T4955642) 
商標の称呼 テシー 
代理人 小林 彰治 
代理人 戸谷 雅美 
代理人 佐野 弘 
代理人 石田 学 
代理人 飯田 啓之 
代理人 久保山 典子 
代理人 松浦 憲三 
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