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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335094 審決 商標
無効2008890013 審決 商標
無効200689125 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Y44
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Y44
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y44
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y44
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y44
管理番号 1177921 
審判番号 無効2007-890065 
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-18 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5008309号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5008309号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成18年3月13日に登録出願、第44類「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」を指定役務として、平成18年12月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第35号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(2)無効原因
ア 商標法第4条第1項第7号について
(ア)本件商標は、甲第1号証の1に示されるように、最上段に「相互リフレクソロジー」、二段目に「ファンタジー気功」、三段目に「飾り窓の天使」、四段目に「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」の文字を書してなり、第44類に属する役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」を指定するものである。この点、本件商標は、その三段目の構成中の「飾り窓」なる文字が、指定役務について使用することが社会の一般的道徳観念に反するため、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(イ)すなわち、本件商標の三段目の構成部分「飾り窓」は、売春を目的としたアムステルダムの風俗街の通称であることは有名である(甲第1号証の2ないし6)。
さらに、本件商標は、「飾り窓の天使」以外にも、その構成中に「三次元美少女」や「相互リフレクソロジー」も有する。このうち「三次元美少女」は、甲第2号証の1ないし5に示されるように、画面や紙面等の平面的な媒体に画かれている二次元の美少女キャラクターに比較して、美少女の人形や所謂コスプレをした者などの立体的なものさす。したがって、このような「三次元美少女」は、「飾り窓」という特殊な風俗への連想を助長させることなる。
また、「相互リフレクソロジー」は、「リフレクソロジー」が朝日新聞社発行「知恵蔵」(甲第2号証の6)に示されるように、「足の裏などのマッサージによる反射療法」であることから、このマッサージ行為を従業員と需要者との間で相互に行なうような役務を連想させる。したがって、このような「相互リフレクソロジー」も「飾り窓」という特殊な風俗への連想を助長させることになる。
そして、インターネットを利用して、この「飾り窓の天使」等なる文字が記載された本件商標の商標権者の店舗に関する実情を調べてみても、商標権者自身、商標権者のホームページ(甲第3号証)の「脳内写生研究所」の欄に示されるように、「性欲」を満たすための役務を需要者に提供することを目的としていることは明らかである。
また、実際、本件商標の商標権者の店舗に関するチラシを見た需要者も、甲第4号証の1や甲第4号証の2に示されるように、特殊な風俗を連想している。なお、コスプレ系飲食店(所謂メイド喫茶)に関する資料(甲第5号証)の第5頁に、「こうしたサービスが行き過ぎれば人によっては『プチキャバクラ(ライトキャバクラ)』『擬似風俗』という認識で捉えられることもあり」と記載され、一般的なメイド喫茶でさえも、特殊な風俗を連想させる場合があり、本件商標に接した需要者が特殊な風俗を連想することはなおさらである。
(ウ)そして、このような「飾り窓」「相互リフレクソロジー」 「三次元美少女」を含む本件商標は、役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」を指定するものである。これらの役務は人の肌と肌が触れ合う役務である。このような役務との関係を考慮すると、本件商標に接した需要者が、特殊な風俗を連想することは明らかであって、その方がむしろ自然である。
(エ)以上、本件商標は、人の肌と肌が触れ合う役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」に使用されると、売春等の特殊な風俗を連想させることになる「飾り窓」の文字を含み、しかも、その構成中の「相互リフレクソロジー」「三次元美少女」といった文字がこの特殊な風俗への連想を助長させることにもなる。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標であるため、商標法第4条第1項第7号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
イ 商標法第4条第1項第8号について
(ア)本件商標は、上述のように、その四段目の構成中に「アニメイト」が含まれている。この「アニメイト」は、フリー百科事典「Wikipedia」の「アニメイト」に関する資料(甲第6号証)に示されるように、少なくともアニメ関連商品の販売店として有名である。そして、現在事項証明書(甲第7号証)に示されるように、株式会社アニメイトは被請求人にとって他人である。
したがって、本件商標は株式会社アニメイトの人格権を毀損するものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(イ)このように、株式会社アニメイトが有名であることは、様々な資料から容易に理解できる。すなわち、株式会社アニメイトは、現在事項証明書(甲第7号証)に示されるように、アニメのキャラクターグッズを手がける草分け的存在として約20年前に設立され、その後、弛まぬ営業努力により会社を大きく育ててきた。その営業努力の一端を垣間見れば、例えば、株式会社アニメイト発行の冊子「きやらぴい」(甲第8号証の1ないし4)に示されるように、毎月のようにPR用の冊子を頒布してきた。また、この冊子の随所に記載されているように、株式会社アニメイトは様々なイベント活動を催してきた(例えば、甲第8号証の1ないし3の各第9頁、甲第8号証の4の第9頁ないし第10頁を)。また、他の販売店にはない様々な独占販売商品を作り出してきた(例えば、甲第8号証の1の第4頁、甲第8号証の2の第2頁ないし第3頁、甲第8号証の3の第2頁ないし第3頁、甲第8号証の4の第6頁ないし第7頁)。また、インターネットや携帯電話でアクセスできる情報サイトを運営し、WebラジオやWebテレビを発信し続けてきている(例えば、甲第8号証の1の第11頁、甲第8号証の2の第5頁、甲第8号証の3の第12頁・第39頁、甲第8号証の4の第12頁)。
さらに、株式会社アニメイトは、他のメディア媒体にも広告を出してきており、例えば店舗ごとに広告を出してきた。一例をあげれば、本件商標の出願前の2005年7月や2006年1月には、「テレビせとうち」「千葉テレビ」「東京メトロポリタンテレビジョン」でTVコマーシャルを行い(甲第9号証の1ないし3)、また、本件商標の登録時前の2006年8月?10月の間には、「テレビ埼玉」「テレビ神奈川」「YBS山梨放送」でTVコマーシャルを行なってきた(甲第9号証の4ないし6)。なお、これらテレビコマーシャルの内容は大宮店がリニューアルオープンする際のテレビコマーシャルの内容(甲第9号証の7)と略同様である。
また、雑誌広告では、本件商標の出願時及び登録時における広告を例にあげると、学習研究社発行の雑誌「アニメディア」(甲第10号証の1ないし6)や、雑誌「メガミマガジン」(甲第11号証の1ないし6)、あるいは、角川書店発行の雑誌「ニュータイプ」(甲第12号証の1ないし6)に示されるように、毎月のように、複数の雑誌媒体を通じて広告を出してきた。
そして、このような長年の弛まぬ営業努力の結果、株式会社アニメイトは、アニメイトの店舗情報(甲第13号証の1)に示すように、現在、日本全国を略網羅するように76店もの店舗を有するようになった(但し、本件商標の登録時には75店舗。また、海外では台湾にも店舗を有している)。なお、株式会社アニメイトは、店舗を有さない地域においてもサービスが行き届くように、「通信販売のホームページ」(甲第13号証の2)に示すように、通信販売も行なっている。
また、売上面においても、アニメ関連商品の販売店として非常に大きい売上高を有しており、アニメイトグループの案内(甲第13号証の3)の2枚目に示すように、2006年度の売上は約300億円である(この売上高は、単価が安いコミック等を取り扱う業種であることを考慮すると、いかに多くの方に来店又は通信販売のホームページにアクセスして頂いているかが分かり、また、業界2位の販売店を大きく引き離した市場占有率の高さが分かる)。なお、このような売上に対して、株式会社アニメイトは、例えば、集英社や徳間書店・角川書店から受けたトロフィーや表彰状の写真(甲第14号証の1ないし4)に示すように、数多くの賞を受賞しており、このことからも、いかに多くの方に来店あるいは通信販売のホームページにアクセスして頂いているか容易に理解できる。
また、例えば、本件商標の登録前に放送されたテレビ東京の番組「出没 !アド街ツク天国」の池袋東口の特集(甲第15号証)に示されるように、知名度で第6位に入り、「乙女ロード誕生のきっかけともなった9階建ての大型店アニメイト」、「全国に約70店舗あるアニメグッズ専門店の総本山」ともされている。
そして、実際の需要者の声を聞いてみると、本件商標の出願前では、日記「メッカの本店 池袋」(甲第16号証の1)に「アニメ大好き男女にとってのメッカと言っても過言ではない」と記載され、「ネットで拾ったエニックス読者の凄まじい話」(甲第16号証の2)に「知っているとは思いますが、『アニメイト』とはマンガ・アニメ・ゲーム等を扱うマニア系ショップの最大手」と記載され、「ゲームニュース」(甲第16号証の3)に「キャラクターグッズ専門店として有名な『アニメイト』」と記載されている。また、本件商標の出願直後では、「Hatena Diary Keyword」(甲第16号証の4)で「オタクに対する訴求力は非常に強い。この類のアニメ系ショップの中では最大規模を誇る。」と記載され、「楽天広場ブログ」(甲第16号証の5)では「アニメ好きには聖地とも言われる有名なお店らしいのです。」と記載され、「SEISHINSHA HOMEPAGE」(甲第16号証の6)では「アニメ関連のグッズ販売で有名なアニメイトさん」と記載されている。また、本件商標の登録時では、例えば「アニメイトについて」(甲第16号証の7)に「日本国内最大手のキャラクターグッズ専門店」と記載され、「アニメ用語」(甲第16号証の8)でも「アニメイトとは、日本最大の大手アニメキャラクターグッズ専門店です」と記載されている。
しかも、株式会社アニメイトは、本件商標の出願時に、株式会社リクルートが調査した「大学生の就職志望企業」(甲第17号証)に示されるように、商業部門で無印良品の良品計画やユニクロのファーストリテイリングと肩を並べて第4位にランクインされている。このことは、名称アニメイトがアニメ関連商品という特定の商品を強く嗜好する需要者に限定されず、若者一般に対して、広く知られていることを示している。
(ウ)なお、本件商標は、「アニメイト」の文字を含む態様となっており、この「アニメイト」文字は、最下段に配置され、かつ、中央部の「飾り窓の天使」と比べて小さく表示されている。
しかし、商標法第4条第1項第8号の規定は、他人の名称若しくは著名な略称を“含む”商標であり、本件商標が「アニメイト」の商標を含んでいることに間違いはない。
また、商標法第4条第1項第8号の立法趣旨は人格権の保護にあるところ、たとえ隅に小さく、名称若しくはその略称が表示されている場合であっても、有斐閣発行の書籍「商標」(甲第18号証)に「付記的な部分にすぎない場合においても他人の承諾を必要とする」と記載されているように、人格権が毀損されてしまうことは明らかである。
さらに、実際の取引社会においても、会社の名称やその略称を広告等に大きく表示することはあまりなく、各社広告(甲第19号証の1ないし5)に示すように、会社名やその略称は隅に小さく表示されるのが通常である。
したがって、たとえ本件商標が最下段の右下に「アニメイト」を表示する態様であっても、株式会社アニメイトの人格権を毀損してしまうことに間違いはない。
特に、上述したように、本件商標は「飾り窓」「相互リフレクソロジー」等という不快な印象を与える文言を有する商標であることを加味すれば、「アニメイト」という名称を有する者が、これを不快とし、その人格権を毀損されたと感じることは至極当然である。
(エ)以上、本件商標は人格権を保護することを立法趣旨とする商標法第4条第1項第8号に該当することは明らかであるため、商標法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
ウ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)本件商標は、上述のように、その構成中に「アニメイト」が含まれており、役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」を指定してなるものである。
本件商標に含まれる「アニメイト」と同一又は類似の商標「アニメイト」(例えば、甲第8号証の1の第2頁等で掲載された商標を参照、以下、「引用商標1」という)、及び商標 「animate」(例えば、甲第6号証の写真の看板を参照、以下「引用商標2」という)は、本件商標の出願時及び登録時に、少なくとも、役務「アニメ関連商品の小売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」(以下「アニメ関連商品の小売」という。)として広く知られていた(以下、「引用商標1」及び「引用商標2」を一括していうときは「引用商標」という)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(イ)すなわち、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かを判断するための基準である「周知度」「創造標章であるか」「ハウスマークであるか」「企業における多角経営の可能性」「商品間、役務間、商品と役務間の関連性」を判断すれば、以下のとおり、出所の混同が生ずるおそれがあることは明らかである。
(a)周知度について
引用商標1は、上述のように、有名な株式会社アニメイトの略称であって、少なくとも、アニメ関連商品の小売として周知著名である。
特に、アニメやアニメを切り口としたフィギュア等のグッズを愛好する人達の間では、甲第16号証の1や甲第16号証の5に示されるように、「聖地」「メッカ」と呼ばれるほど著名な商標である。
なお、甲第20号証の1ないし3に示すように、請求人は、商標「アニメイト」に係る商標権を所有しているが、これらの商標登録は、所謂「小売等役務商標制度」が導入される前にされた出願であって、小売という役務を保護するために登録を受け、あるいは権利を譲り受けたものであり、本来的には、これら商標登録に係る商標も引用商標1に含まれると考えている。
また、引用商標2は、例えば、甲第6号証の写真や、同上店舗情報(甲第13号証の1)に示されるように全ての店舗に使用されており、周知著名性を説明するために添付した甲第8号証の1ないし甲第12号証の6の全てにもこの商標が記載されている。
したがって、この引用商標2についても、引用商標1と同様に、役務「アニメ関連商品の小売」として著名である。
(b)創造標章であるかについて
引用商標1・2は、そもそも、請求人である株式会社アニメイトが、20年前にアニメ関連商品を販売する店舗の名前を付けるに際し、英語「animation」の和製語とも言える「アニメ/anime」と英語「メイト/mate」とを組み合わせ、アニメ好きの仲間が集まるように考え出した造語である。
なお、英語の辞書を調べると、「animate」なる英単語が記載されているが、我が国内で、この「animate」なる英単語が親しまれている事実はない。このように「animate」なる英単語が知られていないことは、例えば、義務教育においてこの英単語が出てくることはなく、また、岩波書店発行「広辞苑」(甲第21号証の1)や朝日新聞社発行「知恵蔵」(甲第21号証の2)で記載されていないことからも容易に理解できる。
実際、需要者の声を聞いてみても、例えば、甲第16号証の1に「しかしながらこの店名。『アニメ』と『メイト』の併せ技一本的な破壊力たるやすさまじい。」と記載され、また、甲第16号証の7に「今まで私は、『アニメ+メイト』の造語だと思ってたんです。」と記載されている。
したがって、日本人の平均的な知識をもって考えれば、我が国内の需要者は、この「アニメイト」は造語であると考えるのが自然である。
(c)ハウスマークであるかについて
引用商標は、株式会社アニメイトの株式会社の部分を除いたハウスマークである。そして、ハウスマークは、商標等として多くの商品や役務に使用されるため、所謂ペットマークに比べて出所表示機能が高いといえる。
しかも、この様々な商品や役務に使用されるハウスマークは、実際の取引社会の使用態様をみると、上述した各社の広告(甲第19号証の1ないし5)に示されるように、ペットマークに比べて小さく隅に表示されるのが通常である。したがって、このような取引実情を考慮するならば、本件商標の右隅に「アニメイト」と記載されていることは、かえって需要者に、株式会社アニメイトが行なっている、あるいは株式会社アニメイトと組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると混同を生じさせてしまう結果となる。
(d)企業における多角経営の可能性について
株式会社アニメイトは、アニメのコミックやDVDだけではなく、同上通信販売ホームページ(甲第13号証の2)に示されるように、フィギュアやコスプレ商品をはじめ、食品やアクセサリー等、多種多様な商品を取り扱っている。すなわち、株式会社アニメイトは、アニメーションを切り口として、極めて多品種の商品を取り扱う企業となっている。
さらに、このように多品種な商品を取り扱っている株式会社アニメイトは、同上グループ案内(甲第13号証の3)の2枚目に示されるように、5つの関連法人を有しており、「アニメーション・コミック・ゲーム・タレント関連キャラクター商品の企画制作、卸、出版」や、「アニメーション関連のイベントの企画・実施及び映画公開、テレビ番組キャンペーン企画・制作」など、アニメ関連商品の小売のみならず、イベント企画等の役務も展開している。
したがって、このような多角化経営の下、アニメキャラクターのコスプレをした女性が接客をする会社を、株式会社アニメイトが立ち上げたと、需要者に考えられてしまっても決しておかしくはない。
(e)商品間、役務間、商品と役務間の関連性について
(i)引用商標が使用される役務の需要者層は、役務が「アニメ関連商品の小売」であることから、言うまでもなく、アニメやアニメを切り口としたフィギュア等のキャラクターグッズを愛好する人である。
一方、本件商標が使用される役務の需要者層は、例えば、商標権者の同上ホームページ(甲第3号証)の1枚目に「お店の紹介:アニメの衣装やチャーミングなコスチュームを着たキャストさんによる・・・」と記載され、5枚目に「アニメやフィギュアのコスチュームで」「最近のアニメブームやフィギュアブーム、コスプレブームには一つのトレンドがあります。」と記載され、7枚目に「アニメやフィギュアのポーズを取り入れたファンタジー気功(登録商標出願済み)を開発いたしました。」と記載されているように、明らかに、アニメやアニメを切り口としたフィギュアを愛好する人達を対象にしている。
このため、引用商標の役務と本件商標の役務は、その需要者層が一致し、密接な関係を有する。
なお、かかる愛好者の間では「萌え系」とよばれるキャラクターが人気を得ていることから、引用商標を使用する株式会社アニメイトは、例えば、添付の需要者のwebページ(甲第22号証)に示されるように、メイドの格好をした人が来店者に対して景品を配るイベントを行なっている。これに対して、本件商標が使用される店舗についても、同上ホームページ(甲第3号証)の5枚目の写真に示されるように、従業員がメイドの格好をしている。また、添付の毎日新聞編集のmsnニュース(甲第23号証)では、ゲームの販促キャンペーンにおいて、「制服姿でアニメショップの『アニメイト』やメード喫茶『ぴなふおあ』など名所を回ってキャンペーンを繰り広げた。」という記事もある。このようなことからも、両者の需要者の密着性の高さがわかる。
(ii)また、アニメ関連商品の小売に関する役務と、コスプレをした従業員が接客をする役務とは、その提供場所が近いことが多い。
例えば、同上コスプレ系飲食店の資料(甲第5号証)の第4頁に、「2005年からは池袋に急増傾向にある。これは池袋駅東口地区(いわゆる『乙女ロード』『オタク通り』と称呼される一帯)にアニメイト池袋本店を始めとするオタク向け店舗が集中しているからと見られている。」と記載されていたり、添付の広島オタクマップというホームページ(甲第24号証)に「場所はアニメイト向かい」と記載されていたりすることからも容易に理解できる。
事実、本件商標が使用される役務も、引用商標が使用されている役務の場所と近い場所で提供されている。すなわち、本件商標は、同上商標権者のホームページ(甲第3号証)の最後の1枚に示されるように、福岡市中央区の天神西通り付近に所在する店舗で使用されている。これに対して、引用商標も、同上店舗情報(甲第13号証の1)の後ろから4枚目に示されるように、同じ福岡市中央区の天神西通り沿いにある店舗で使用されている(なお、参考までにアニメイト福岡天神店の写真を甲第25号証として添付する。)。
また、インターネット上においても、アニメ関連商品の小売はメイド喫茶やコスプレ関係の役務と同じwebサイトに掲載されることが多い(甲第26号証の1や甲第26号証の2)。
(ウ)以上、引用商標は、全国展開されている販売店に使用され続け、アニメやフィギュアを嗜好する需要者にとって聖地と呼ばれるほど著名性を有するようになっている。そして、需要者が一致している等の役務の関連性、ハウスマーク、アニメを切り口にした多種多様な商品や役務に関する多角経営の可能性、我が国で親しまれていない単語であることを総合的に判断し、さらに、現実的に、本件商標が使用されている店舗と引用商標が使用されている店舗とは同じ地域にあることを考え合わせれば、引用商標を役務「コスプレをした者が行なうあん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」に使用した場合、株式会社アニメイトと出所の混同が生ずるおそれがあり、少なくとも、株式会社アニメイトと組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認を招くことは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
エ 商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、上述の態様からなるため、その最上段に「相互リフレクソロジ-」を有し、このうち「リフレクソロジー」は、上述したように、「足の裏などのマッサージによる反射療法」を意味する。
また、二段目のうち「気功」は、岩波書店発行「広辞苑」(甲第27号証)に示されるように「中国の保健養生法」を意味する。
このため、本件商標を「リフレクソロジーと気功」を行なう役務以外の役務「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゆう,柔道整復,はり」に使用した場合、質の誤認を生ずるおそれがあることも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
オ 商標法第4条第1項第19号について
( ア )本件商標は商標法第4条第1項第7号・8号・15号・16号に該当するものであるが、上述した各事実を総合的に判断すると、本件商標は、明らかに商標法第4条第1項第19号に該当する。
(イ)すなわち、本件商標に含まれる「アニメイト」と同一又は類似の引用商標は、上述したように、多年に亘って企業努力を積み重ね、様々な宣伝広告費やイベント費をかけることにより、全国展開されるに至った企業のハウスマークとして、若者の間で有名となった。特に、引用商標は、アニメやアニメを切り口としたフィギュア等のキャラクターグッズを愛好する人達の間で著名商標となり、十分な顧客吸引力を具備するようになっている。
そして、このように引用商標は有名な上に、引用商標についてのアニメ関連商品の小売と、本件商標についてのコスプレをした従業員が接客をする役務とは需要者層が一致し、提供場所が近い傾向にあることからすれば(甲第5号証)、被請求人は引用商標を知っていたことは明らかである。
実際、引用商標が使用されている甲第13号証の1に示すアニメイト福岡天神店は、本件商標が使用されている甲第3号証に示す被請求人の店舗よりも前に出店され、両店舗が互いに地理的に近い場所にあることからすれば(甲第3号証及び甲第13号証の1)、被請求人は、引用商標が使用された「アニメイト」という店舗があることを知らないはずがない。
しかも、本件商標は、上述のように、その構成中に、売春を目的とした風俗街の通称として有名な「飾り窓」という文字を有し、また、構成中の「相互リフレクソロジー」「三次元美少女」がこの「飾り窓」という特殊な風俗への連想を助長させることにもなる。そして、このような商標が、人の肌と肌が触れ合う役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」について使用されることを考え合わせれば、実際に売春を目的としない業務であっても、本件商標に接した需要者に、特殊な風俗を連想させることは明らかである。
そして、本件商標に接した需要者、さらには、その保護者が、引用商標が使用された店舗を敬遠するようになってしまうことは容易に想像できる。したがって、役務「アニメキャラクター等のコスプレをした人が行なうあん摩・マッサージ・指圧・カイロプラクティック・きゅう・柔道整復・はり」に本件商標が使用された場合、長年にわたって培ってきた「アニメイト」という商標に化体した信用が毀損・汚染され、あるいは希釈化されてしまうことは明らかである。
(ウ)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号の規定に該当し、同法第46条1項第1号により、無効にすべきものである。
2 弁駁
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人の主張とそれに対する反論
(ア)被請求人は、「飾り窓」なる文字列は「本来建築等の分野で用いられてきた用語」であるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しないと主張する。
しかし、本件商標が使用される役務は「建築分野」等の役務ではなく、「あんあん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック」等であり、これらの役務は、マンツーマンの対応で人の肌と肌とが触れ合う役務である。
そして、アムステルダムの風俗街の通称として有名な「飾り窓」も、マンツーマンの対応で人の肌と肌とが触れ合う売春を目的としている(なお、被請求人自身も、「飾り窓」のことを「“本来”建築等の分野で用いられてきた」と説明しており、建築等分野以外では、窓を飾るという本来的な意味として使用されていないことを理解していることが窺える)。
したがって、本件商標が売春と同じように、マンツーマンの対応で人の肌と肌とが触れ合う役務「あん摩・マッサージ」等に使用されたならば、需要者は、売春等の特殊な風俗を連想することになるのは明らかである。実際、甲第4号証の2に「『参考飾り窓の天使』・・・って。むむむ、色んな意味でやっぱしあやしい」と記載されているように、需要者も、本件商標の「飾り窓」の部分を見て、特殊な風俗を連想していることが分かる。
(イ)被請求人は、「三次元美少女の部分は特殊な風俗への連想を助長させる」という請求人の主張に対して、「商標制度は需要者に対して商品やサービス等の役務を誤認させないための制度であって、商標法はその商標を見た者が脳の中で何を連想するか否かまで制約する制度ではない」と主張する。
しかし、商標法は最終的に需要者の利益を保護するものであり、出所の混同を防止するためにだけ存在する法律ではなく、人格権毀損を防止することを趣旨とする商標法第4条第1項第7号もその一例である。
また、被請求人は「商標法はその商標を見た者が脳の中で何を連想するか否かまで制約する制度ではない」と主張するが、需要者は商標を見て脳の中で何かを連想することがあるからこそ、出所の混同や商標の希釈化汚染化、さらに公序良俗違反が生ずるのである。そして、本件商標の場合、その一部に、美少女の人形や所謂コスプレをした者などを意味する「三次元美少女」を有するため、この「三次元美少女」が「飾り窓」という売春等の特殊な風俗への連想を助長させることは明らかである。
また、本件商標の場合、「三次元美少女」だけではなく、「相互リフレクソロジー」も存在するところ、この「相互リフレクソロジー」はマッサージ行為を従業員と需要者との間で相互に行なうような役務を連想させ(甲第3号証の6枚目に「相互リフレクソロジー・・・キャストさんの足に触れていただく・・・ ボディ・コンタクト」と記載されていることも参照)、売春などの特殊な風俗への連想を助長させることになる。
(ウ)「脳内写生研究所」(甲第3号証)から分かるように、実際、被請求人は性欲」を満たすための役務を提供しようとしている。このため、請求人は、一般的なマッサージ等の役務ならまだしも、特殊なマッサージを通じて性欲を満たすための役務に、「飾り窓」という文字を使用したならば、より特殊な風俗を連想させることは必須であることを主張した。
これに対して、被請求人は、請求人の主張は曲解によるこじつけであると主張し、その理由として、「脳内エステ」という任天堂のDSゲームソフトを例にあげ、問題を挿げ替えようとしている。
請求人は、別に“脳内”という言葉が特殊な風俗を連想させると述べているのではない。被請求人が行なっている実際の役務に本件商標を使用すれば、商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかになるため、被請求人が実際に行なっている役務が分かる資料として、請求人は「脳内写生研究所」(甲第3号証)を提出したのである。すなわち、「脳内写生研究所」には“アダルトビデオ・エッチ系アニメ・アダルトサイト・思わせぶりな出会い系サイト・風俗産業 ・・・、“性欲を満たせない”、“自分だけのオリジナルな性欲やいまだ商品化されていない官能的快楽を思い切り投影”等の性欲に関する文言が頻繁に記載されており、このことから被請求人が実際に行なっている役務は極めて「性欲」に密接に関連した役務である。また、本件商標が使用されている役務が「性欲」に関する役務であることは、2007年6月付け被請求人のブログ「脳内写生」(甲第28号証)からも分かる。そして、本件商標に接した需要者は、実際、甲第4号証に示すように特殊な風俗を連想している。
なお、被請求人は、乙第2号証の1ないし4を示しながら、本件商標が使用されている店舗は、健全で明朗な店舗であり、近隣の小学校やPTAから一切苦情がないと主張している。しかし、被請求人が行なっている実際の役務に使用されている本件商標に接した需要者が、特殊な風俗であることを想起するか否かが問題なのであって、実際に売春を行なっているか否かは問題ではない。 したがって、この被請求人の主張は論外である。むしろ、2006年12月30日付け被請求人のブログ「脳内写生」(甲第29号証)の「ちなみにオープン当初は、福岡市立大名小学校前に『風俗まがいの店舗が出来た』とか、向かいの美容院さんから『下品すぎる』等の批判があり」という被請求人自身の書き込みを見ると、本件商標が付されている店舗を見て、需要者が特殊な風俗であるとことを想起したことが分かり、このように想起させることが問題なのである。
イ 小括
以上、本件商標は、マンツーマンの対応で人の肌と肌が触れ合う役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック」等、更にはマッサージ等を通じて性欲を満たそうとする役務に使用されると、売春等の特殊な風俗を連想させることになる「飾り窓」の文字を含み、しかも、その構成中の「相互リフレクソロジー」「三次元美少女」といった文字がこの特殊な風俗への連想を助長させることにもなり、需要者をして特殊な風俗を連想させることは疑う余地もない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 被請求人の主張とそれに対する反論
(ア)本件商標は株式会社アニメイトの人格権を毀損するという請求人の主張に対して、被請求人は、「被請求人はアニメ関連商品の販売をしたこともなく、被請求人の会社及びその関連企業にもアニメ関連商品の販売業者はない」と主張する。被請求人のこの主張は意味不明である。恐らく、請求人・被請求人の互いの業務は一致しないから、出所の混同が生ずることもなく、出所が混同しなければ株式会社アニメイトの人格権を毀損することもないと主張していると思われる。
しかし、商標法第4条第1項第8号は人格権保護の見地から設けられた規定であって、出所の混同を防止する規定ではない。そして、本件商標に係る商品と請求人の業務に係る商品又は役務とが類似するものでなくても、人格権を毀損することは多々あり、商標法第4条第1項第8号も商品・役務の類似関係を当然ながら要件とはしていない。したがって、この被請求人の主張は論外である。
(イ)次に、被請求人は、アニメイトが有名なのは「オタク世代」に対してであって、我が国の全人口の過半数以上を占める団塊の世代およびそれ以上の高齢者世代にとって「アニメイト」はほぼ不知の存在であるから周知な会社・社名ではないと主張する。
しかし、全国民に知られていなくても、自己の名称を商標として他人が勝手に使用することにより、その名称を有する者が不快に感じ、人格権が毀損されたと感じることは当然あり、条文上も全国における周知著名性を当然ながら要件にはしていない。
特に、本件の場合、本件商標が使用される役務は、上述のように性欲に関する役務であることから、その需要者は団塊の世代およびそれ以上の高齢者世代ではなく比較的若い世代であり、また甲第3号証に示されるように、アニメの衣装などを着た女性が提供する役務であることからキャラクター化された女性を嗜好する需要者である(甲第3号証の6枚目に「Cコース・・・コスプレにアニメの動きを取り入れた見て楽しい気功術」と記載されていることも参照)。一方、株式会社アニメイトの業務に係る需要者層も、被請求人が述べるように比較的若い世代であり、アニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達である。
したがって、本件商標が使用される役務の需要者層と株式会社アニメイトの業務に係る需要者層とは嗜好性において極めて近く、そのため、特にアニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達に聖域と呼ばれるほど有名なアニメイトという請求人の名称が勝手に使用されることで、人格権が毀損されたと感ずることは主観的には勿論のこと客観的にも明らかである。
(ウ)次に、被請求人は、「乙第3号証1ないし4の ・・・とおり、『アニメイト』なる商標を用いる企業は多数存在するのであり、被請求人のみが本件請求人等の会社である『アニメイト』の人格権を毀損したとの事実はなく」と主張する。
しかし、乙第3号証の2に示される商標「アニメイト」等と、本件商標とは以下の点で事案が異なる。
第一に、乙第3号証の2に示される商標「アニメイト」等が使用される商品は「加工食品、ガーター、化粧品、薬剤」等であり、これら商品の需要者層は、一般消費者や女性或いは病人である。これに対して、株式会社アニメイトの業務に関する需要者層は、上述のようにアニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達である。したがって、両者の需要者層はかけ離れているため、商標「アニメイト」が使用されても人格権が毀損されたと感じることは少ない。ところが、本件商標の場合、上述のように、株式会社アニメイトの需要者層と一致しているため、自らの名称が勝手に名乗られたと感じることは明らかである。
第二に、乙第3号証の2に示される商標「アニメイト」が使用される場所と、株式会社アニメイトの店舗の場所とは一致しない。ところが、メイド喫茶等のキャラクター化された女性を嗜好する需要者をターゲットにする店舗(被請求人の店舗も含む)は、「コスプレ系飲食店の資料」(甲第5号証)や甲第24号証等に示されるように、株式会社アニメイトの店舗の近くに出店される状況下にあり、これまで培って有名にした自らの名称が近隣で勝手に使用されて、不快感を覚えない者はいない。
第三に、乙第3号証の2に示される商標は、他人に不快感を与えるような文字が含まれないのに対して、本件商標は上述の商標法第4条第1項第7号の欄で説明したように、「飾り窓」「相互リフレクソロジー」等という不快な印象を与える文言を有する商標に「アニメイト」の文字を付加している。このことを加味すれば、「アニメイト」という名称を有する者が、これを不快とし、その人格権を毀損されたと感じることは至極当然である。
なお、被請求人は、「被請求人のみが・・・人格権を毀損したとの事実はなく」と主張する。このことから、他者の企業だけでなく被請求人もアニメイトの人格権を毀損していると述べており、被請求人はアニメイトの人格権を毀損していることを自覚している。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人の主張とそれに対する反論
(ア)被請求人は、商標「アニメイト」が有名なのは「アニメ・オタク世代」にのみであって、周知著名な商標と断定することは無理があると主張する。
しかし、商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれが具体的に存在する商標の登録を規制する規定であるところ、平成9年(行ケ)第323号や平成9年(行ケ)第266号の判決要旨(甲第30号証の1及び2)に示されるように、日本全国民に知られているような著名性を要件とする理由はない。
そして、もし、引用商標(「アニメイト」「animate」)が日本全国民に知られているような著名性を有していないと仮定したとしても、具体的に出所の混同が生ずるおそれがあることは以下のことから明らかである。
まず、引用商標は、それが使用されている店舗が略日本全国を網羅するように76店あることや(甲第13号証の1)、テレビコマーシャルをうったり(甲第9号証)、大学生の就職志望企業でも上位にランクインされていることからすれば(甲第17号証)、広範囲に周知著名性を有するようになっており、被請求人が述べるような限定された者にだけ知られているわけではない。
しかも、引用商標は、需要者層が上述のようにアニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達であって、これらの者の間では聖域と呼ばれるほど著名な商標である。このため、同じくアニメのキャラクター化された女性を嗜好する需要者をターゲットにする被請求人の店舗の例えば電光掲示板に引用商標が流れていれば、それを見た需要者がアニメイトの店舗を想起することに疑う余地は全くない。そして、本件の場合、実際、引用商標及び本件商標の双方が使用されている地域が略同じであることから、需要者がそのように想起する場面に出会うことが多々あることは明らかである。
したがって、本件商標に接した需要者が、引用商標に係る株式会社アニメイトと少なくとも経済的組織的に何らかの関係があるものと誤認を生じてしまうおそれがあることは明らかである。
(イ)次に、被請求人は、引用商標は創造商標でないと主張し、その理由として義務教育に用いられない言葉であっても、商標として使用されることは多々あるからだと主張する。
しかし、被請求人のこの主張は単なる一般論であって、当然、義務教育で教えられない言葉が商標として使用されることはある。問題は、「アニメイト」という商標が、我が国内で、需要者にどのように認識されているかである。
この点、引用商標が我が国内で造語として把握されている実情を理解してもらうため、請求人は、引用商標が義務教育に登場しない旨だけではなく、言語学者達が編纂した辞典「広辞苑」(甲第21号証の1)や、流行語が掲載されている「知恵蔵」(甲第21号証の2)を添付し、どこにも「アニメイト」という言葉が登場しないことを主張した。さらに、「アニメイト」という言葉が英語の単語として存在していることを誰かに教えてもらわない限り、需要者には造語として認識されている(甲第16号証の1、同号証の7。(例えば、甲第16号証の1の「しかしながらこの店名。『アニメ』と『メイト』の併せ技一本的な破壊力たるやすさまじい。」という文章参照)。
したがって、引用商標は、我が国内では造語であると考えられているし、請求人自身が「アニメ」と「メイト」とを組み合わせて約20年前に作った商標である。
(ウ)なお、被請求人は、「本件商標において『アニメイト』なる文字列を使用したのは、健康関連産業として英単語である「animate」(元気付ける等の意味)をカタカナ表記して登録したのであり、他意はない。」と述べているが、到底信用できるものではない。
本件商標を見ると、「アニメイト」という文字と列挙して書かれているのは、「ドールマニア」「三次元美少女」である。「ドールマニア」「三次元美少女」という2つの言葉の後に、突然「アニメイト」という文字が登場するのであり、どこをどのように読んでも意味が繋がらず、それが健康関連産業として元気付ける等の意味であると読み取ることはできない。
しかも、本件商標の「相互リフレクソロジー」や「ファンタジー気功」「飾り窓の天使」は、被請求人が既存の文言に他の文言を付加するようにして考えた名前かも知れないが、「ドールマニア」「三次元美少女」「アニメイト」は、甲第2号証の1ないし5や、甲第31号証の1ないし3に示すように、被請求人が考え出した文言ではなく、ましてや「アニメイト」が周知著名商標であることを考えると、「アニメイト」の使用に他意はないとの被請求人の主張は信じ難い。
(エ)次に、被請求人は、本件商標及び引用商標の役務間の関連性はないと主張し、その根拠として、「役務及びサービスには明確な違いがあるので・・・ 、密接であると断定する根拠がない」と述べている。
この点、役務の類否は役務の提供場所・関連物品・需要者等を総合的に判断して決められるところ、請求人は、役務の関連性についてもこれらの基準を参酌すれば両役務の密接性が分かることを述べたのであって、被請求人の「根拠がない」との主張は理解できない。
今一度、簡潔に述べれば、本件商標が使用される役務は、役務「マッサージ」等のうち甲第3号証に示される役務であって、引用商標が使用される役務と同じように、アニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達を需要者とする(本件商標が使用される役務の需要者がアニメファン等であることは、被請求人が提出した乙第2号証の3ないし4が「ヲタ部の部室」というサイトであることからも窺える)。また、アニメ関連商品の小売に関する役務とコスプレをした従業員が接客をする役務とは、一般的にその提供場所が近く、業者が同じような場所に集まる傾向が多いことからも、役務の密接性が分かる(例えば、甲第5号証第4頁や甲第24号証)。また、請求人は、アニメイト池袋店の写真(甲第32号証)に示されるように、店舗でアニメのコスプレ商品も販売したり、メイドの格好をした人が来店者に対して景品を配るイベントを行なったりしている(甲第22号証)ことから、物品の関連性もある。
したがって、このような事情を考えれば、互いの役務は密接に関連していることが分かる。
なお、被請求人は、「当該店舗の従業員が自己の意思で着用しているコスチュームにまで干渉する態度を見るとき・・・恫喝してきたことがより鮮明になる」と述べているが、この主張は意味不明である。
被請求人は、アニメのコスチュームを着ているのは従業員の意思であって、被請求人には関係がないから需要者層は別に一致しないと主張しようとしているのだろうか。しかし、被請求人のホームページ(甲第3号証)の1枚目に、明らかに「アニメの衣装」と記載され、5枚目に「アニメやフィギュアのコスチュームで」や「美少女アニメ」と記載され、6枚目に「アニメの動きを取り入れた」、7枚目に「最近のアニメブーム」と記載されていることから、被請求人の経営戦略としてアニメを嗜好する需要者を狙っていることは明らかである。いずれにしても、従業員が勝手にアニメのコスチュームを着ていたとしても、需要者層が一致することには間違いない。
あるいは、被請求人は強者が弱者を意味無くいじめると言っているのだろうか。もしそうであるなら、全くのお門違いであって、株式会社アニメイトが長年に亘って地道に努力して大事に育ててきたハウスマークを利用して困らせているのは被請求人である。
(オ)なお、答弁書の第5頁及び第6頁にかけての被請求人の主張は、ほとんど商標法第4条第1項第15号とは関係のない主張であるため、以下、簡単に反論する。
(a)まず、被請求人は、「審査段階で請求人は刊行物提出書を提出しても、その意見は受け入れられず、既に否定された主張を蒸し返している」と主張している。
この主張は審判制度そのものを否定する主張であって論外である。なお、審査経過(甲第33号証)を見ると、刊行物等提出書の提出日と本件商標の登録査定起案日とが非常近く、審査官が刊行物等提出書を見ていない可能性があることも付言しておく。
(b)次に、被請求人は、「コスプレ行為そのものが『株式会社アニメイト』の直接役務ではない」から本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないと主張している。
いうまでもなく、商標法第4条第1項第15号は、非類似商品・役務間であっても、具体的に広義の出所の混同が生ずるおそれがある事情があるから規定されたものであるから、この被請求人の主張も論外である。
(c)被請求人は、「請求人は、乙第5号証に示す商標登録を行い ・・・つまり請求人は、本件商標と同じ指定役務である『第44類』で『アニメイト』なる商標を登録したのであり、請求人が主張する実害は事実上ないのである」と述べている。
この被請求人の主張は意味不明である。想像するに、請求人も「アニメイト」という商標を「マッサージ」等の役務に使用することができるので、それで良いではないかという主張であると思われる。しかし、請求人が主張しているのは、請求人が「アニメイト」という商標を使用できるか否かといった問題ではなく、被請求人が本件商標を「アニメ等のコスプレをした従業員が行なうマッサージ」等の役務に使用した場合、請求人である株式会社アニメイトの人格権を毀損したり、広義の出所の混同が生じたり、商標の希釈化汚染化といった問題も生ずるといったことである。
(d)なお、請求人が商標登録(登録第5036600号)を取得したのには次の理由がある。
すなわち、乙第3号証の2の第5頁に示すように、被請求人は請求人の通知に対して、「当社は・・・これほど『アニメイト』社が関心を抱くことに注目しており、今後は『商願2006-26579』と同一の指定役務で『アニメイト』という商標を単独で出願し、当該店舗のホームページにて募集しているフットリフレクソロジーのFC店舗の名称を『アニメイト』とすることを検討中です。」と回答してきた。
このため、請求人は、このような被請求人の今後の動きを抑制する必要があると判断して、防衛的に出願せざるを得なかったという状況がある。また、請求人のこの文章では“これほど”と述べられており、このことからは、商標「アニメイト」には強いグッドウィルが存在することを、以前よりまして強く認知したため、より「アニメイト」という商標に化体した信用にただ乗りしようとする意図が見える。すなわち、本件商標の出願についても、「アニメイト」という商標に化体した信用にただ乗りしようとした被請求人の意図が窺え、このような行為は剽窃的な行為以外のなにものでもない。
(e)また、被請求人は、「特許庁は・・・本件商標と、請求人による『アニメイト』なる標準文字商標は・・・『見た目の違いが明らか』と判断したからこそ、上記の『アニメイト』なる標準文字商標を登録した」と述べている。
この点、確かに本件商標では「アニメイト」の部分は片隅に配置されているが、ハウスマークは現実ではサブブランドの片隅に配置されることが多い(甲第19号証の1ないし5)という取引実情を考慮しなければならない。いずれにしても、株式会社アニメイトが出願した周知著名な商標「アニメイト」が登録されたことと、本件商標が無効理由を有するか否かといった問題とは事案が異なる。すなわち、周知著名商標をその商標主が出願したならば、その出願は他人の周知著名商標の存在を考えずに審査がされる。これに対して、その周知商標主でない者がした出願であれば、他人の周知著名商標の存在が勘案されて審査される。そして、請求人がした出願は前者であり、本審判は後者の方の出願(周知商標主でない者の出願)に係る登録商標が無効理由を有することの審判である。
イ 小括
以上、引用商標は、(i)全国展開されている販売店に使用され続け、比較的若い世代に広く知られ、特にアニメやフィギュアを嗜好する需要者にとって聖地と呼ばれるほど著名性を有している。(ii)そして、限られた需要者が一致する等の役務の密接な関連性、(iii)ハウスマークであり、(iv)アニメを切り口にした多種多様な商品や役務に関する多角経営の可能性、(v)我が国で親しまれていない単語であることを総合的に判断し、(vi)さらに、現実的に、本件商標が使用されている店舗と引用商標が使用されている店舗とは同じ地域にあることや、(vii)ハウスマークはブランドの片隅に記載される実情が多いことをなどの実際の取引を考慮すれば、引用商標を役務「コスプレをした者が行なうあん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」に使用した場合、少なくとも、株式会社アニメイトと組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認を招くおそれがあることは必須である。
(4)商標法第4条第1項第16号について
ア 被請求人の主張とそれに対する反論
(ア)被請求人は、本件商標の部分「リフレクソロジー」は、「足裏マッサージ」のことであり、さらにその際手等から「気」を送り込む療術等は一般に行なわれている手技であるから、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当しないと主張する。
この被請求人の主張も意味不明であって、商標法第4条第1項第16号の意義を勘違いしている。
被請求人にも分かるように説明すると、例えば、商標「リフレクソロジー」を役務「リフレクソロジー」以外の役務(例えば、はり)に使用した場合、商標「リフレクソロジー」に接した需要者は、その役務は「リフレクソロジー」(即ち、足裏マッサージ)であると勘違い(質の混同)を起こしてしまう。そこで、このような事態を防止するために規定されたのが商標法第4条第1項第16号である。
この点、本件商標は、その一部に「リフレクソロジー」及び「気功」という文字が存在する。そうすると、この役務「リフレクソロジー」及び役務「気功」以外の役務(例えば、はり)に本件商標を使用すると、需要者に役務の内容を誤認させるため、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するのである。
(イ)なお、被請求人は、本号とは全く関係のない主張をしており、その主張の意味するところは全く不明であるが、少なくとも被請求人が勘違いしていると思われる部分を正しておく。
(a)まず、被請求人は、請求人の雑誌広告(乙第6号証)の「2006年アニメイト 冬のAVまつり」という文字を見て、「医業」等の役務には似つかわしくない業務であると述べている。この被請求人の主張は混迷を深めており、一体、何が言いたいのか理解不明である。
「冬のAVまつり」の「AV」の部分をとって、アダルトビデオの略であると勘違いをしているとしか思えないが、「AV」とは株式会社アニメイトのインターネット上の広告(甲第34号証)に示されるように、「オーディオビジュアル」の略である。また、「医業」等の役務には似つかわしくない業務であると述べているが、請求人は少なくとも近い将来、医業等を行なう計画はない。
(b)被請求人は、甲第11号証の4や同号証の5の雑誌の表紙の少女の姿を見て、劣情をかき立てると主張しているが、これらの雑誌は、株式会社学習研究社が発行している雑誌であって、同社の雑誌表紙に対して、請求人が責任を持つ立場にはない。
イ 小括
以上、本件商標は、「相互リフレクソロジー」および「気功」の文字を有するため、これを「リフレクソロジーと気功」を行なう役務以外の役務「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」に使用した場合、質の誤認を生ずるおそれがあることも明らかである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
ア 被請求人の主張とそれに対する反論
(ア)被請求人は、引用商標(アニメイト、animate)に周知著名性について、「一部の限定され特定された需要者や『オタク世代』」に対してであるから、商標法第4条第1項第19号には該当しないと主張する。
この点、引用商標が日本全国民に知られていなくても、商標の希釈化汚染化といった問題は生ずるものであり、このことから審査基準上も周知商標については、「取引者の間に広く認識されている商標を含む」とされている(甲第35号証)。それに、引用商標は被請求人が言うように、狭く限定された人達だけに知られているわけではない。請求人のテレビコマーシャル放映や全国的店舗展開の努力等により、例えば就職志望企業に関する調査結果(甲第17号証)からも分かるように、かなり広範囲に若者全般に知られているといってよい。また、若者でなくても、アニメ関連グッズやメイド喫茶などに関する業者の間でも広く知られていることは、これらの店舗が地域的に集中していることからも理解できる。
(イ)被請求人は、「請求人の『従業員がコスプレをすると需要者層が一致する』との主張も根拠が薄弱である」と述べている。
この点、請求人は、従業員は単なるコスプレではなく、アニメに関するコスプレ(例えば、甲第3号証の1枚目の「アニメの衣装・・・を着たキャストさん」参照)をしているから需要者層が一致すると述べている。さらに、アニメ関連商品の小売に関する役務とコスプレをした従業員が接客をする役務とは業者が同じような場所に集まる傾向が多く(例えば、甲第5号証第4頁や甲第24号証)、このため同じ嗜好を有する者が集まりやすく、しかも、請求人もメイドの格好をした人が来店者に対して景品を配るイベントを行なっており(甲第22号証)、このようなことからも、需要者層が一致していることが分かる。
(ウ)次に、被請求人は、「アニメイト」という商標に化体した信用が毀損・汚染希釈化されない理由として、「飾り窓」で売春を連想するのは50歳以上であるということと、女性が自己の意思で売春をすることは国家が規制すべき事項ではないという理由を述べている。
この点、「飾り窓で売春を連想するのは50歳以上である」という被請求人の主張については何の根拠もない。「飾り窓」は今でもオランダ政府公認の売春街であり(甲第1号証の3)、その業務内容から言えば、どちらかといえば若者から中年世代までが集まる街であることを鑑みると、23歳位より上の常識人であるなら知っていると考えるのが自然である。いずれにしても、「飾り窓」という商標がなくても、マンツーマンで人の肌と肌が触れ合う役務「あん摩・マッサージ及び指圧」等、特に甲第3号証の6枚目に示すような種々のサービス(例えば、Aコース「にゆるりん・ハンドケア」*キャストさんと指をからめて・・・はじめての体感)について、引用商標(アニメイト、animate)が使用されたならば、甲第4号証や乙第2号証の2ないし4に示すように需要者から少なくとも良好とは言えない印象を持たれて、引用商標に化体した信用が汚染されてしまうことは明らかである。なお、上記の「女性が自己の意思で売春をすることは国家が規制すべき事項ではない」という被請求人の独自の見解については反論するまでもない。
イ 小括
以上、引用商標は、多年に亘って企業努力を積み重ね、様々な宣伝広告費やイベント費をかけ、全国展開されるに至った企業のハウスマークとして、若者(特にアニメ及びその関連グッズファン)の間で有名となった。
そして、引用商標は有名な上に、アニメ関連商品の小売とコスプレをした従業員が接客をする役務とは需要者層が一致し、提供場所が集中する傾向にあることからすれば(甲第5号証等)、被請求人は引用商標を知っていたことは明らかである。実際、引用商標が使用されている株式会社アニメイトの福岡天神店は被請求人の店舗よりも前に出店され、両店舗が互いに地理的に近い場所にあることからすれば、被請求人は、引用商標が使用された「アニメイト」という店舗があることを知らないはずがない(株式会社アニメイトの社員が、本件商標の中止を求める電話を被請求人に対してしたところ、被請求人から「いつか電話が来ると思っていた」と言われたことも参照)。このようなことからすれば、被請求人はアニメイトに化体した信用にただ乗りしようとして出願したことは明らかである。
そして、被請求人の甲第3号証に示されるような役務に引用商標が使用されると、もし、本件商標と引用商標とが出所の混同が生じないと仮定した場合であっても、「アニメイト」という商標が持つようになった高いグッドウィルが汚染ないしは希釈化されてしまうことは容易に想像できる。
(6)最後に
そもそも、被請求人が本来的に店舗名として(商標として)使用したいのは、被請求人に関する様々な資料を見ると「飾り窓の天使」であることが分かる。少なくとも、被請求人は大手を振って「うちの店舗名はアニメイトである。」とは公言していないし、できないはずである。それにもかかわらず、何故、被請求人は、株式会社アニメイトが大事にしている周知著名商標「アニメイト」にこだわり、しかもアニメイトの存在を知りながら、その文字を含む商標について商標登録出願をしたのか理解できない。唯一考えられるのは、被請求人は商標「アニメイト」に化体したグッドウィルにフリーライドしようとし、商標登録されたことを拠り所にして、そのフリーライドを正当化しようとするためである。
このように商標制度を悪用した剽窃的とも言える出願は決して許されてはならない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の概要は第1のとおりである。
2 本件商標は、商標法第4条1項1第7号、同第8号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当しないし、同法第46条1項第1号により、無効にすべきでものではない。以下にその理由を述べる。
(1)請求人は、本件商標について、「飾り窓」なる文字列を指定役務「第44類」に使用することについて「社会の一般的道徳概念に反するため、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標である」と主張する。
しかし、「飾り窓」なる文字列は本来建築等の分野で用いられてきた用語であり(乙第1号証の1ないし4)、「飾り窓」なる文字列が「社会の一般的道徳概念に反するため、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標である」との主張は失当であり、これは独善と偏見および女性蔑視の見解である。
さらに、請求人は、「相互リフレクソロジー」「三次元美少女」なる文字列についても「特殊な風俗への連想を助長させる」等と主張するが、商標制度は需要者に対して商品やサービス等の役務を誤認させないための制度であって、商標法はその商標を見た者が脳の中で何を連想するか否かまで制約する制度ではない。
また、請求人は、甲第3号証を引用して「脳内写生研究所」は性欲を満たすための役務を需要者に提供するものであると主張するが、これは固定的な先入観と読解力のなさによる誤解、あるいは曲解によるこじつけである。
たとえば、脳の中をリフレッシュするための「脳内エステ」という名称の任天堂DSゲームソフトも存在するのであり、本件商標を実際に使用している店舗は福岡県福岡市中央区大名1丁目にある「福岡市立大名小学校」の正門より斜め前100メートルの位置にある健全で明朗な店舗であり、正面に大きな「飾り窓」があることから命名され、開店後1年以上経過した現時点でも同校および近隣のPTA等から一切苦情等がない脳内リフレッシュおよびリフレクソロジーの店舗である。
このような事実は、実際に当該店舗に来店した者の感想として記述され、ブログとして公開されており、乙2号証の1ないし4に示すとおり、それらのブログにも性欲を満たすための役務を需要者に提供していることを示す内容は皆無である。
(2)請求人は、本件商標について、「アニメイトは ・・・アニメ関連商品の販売として有名である ・・・本件商標は株式会社アニメイトの人格権を毀損するものである」と主張する。
しかし、被請求人はアニメ関連商品の販売をしたこともなく、被請求人の会社及びその関連企業にもアニメ関連商品の販売業者はない。また、当社の「定款」等にもアニメ関連商品の販売は含まれていない。したがって、この主張には明確な根拠がない。
また、請求人は、「アニメイトは全国を網羅するように76もの店舗を有する・・・アニメグッズ専門の総本山・・・キャラクターグッズ専門店として有名なアニメイト・・・アニメ関連のグッズ販売で有名なアニメイトさん・・・」「マンガ・アニメ・ゲーム等を扱うマニア系ショップの最大手」と自ら再三強調するように、アニメイトなる企業は店舗数やイベントが多くても、その事業の対象は一部の限定され特定された需要者や「オタク世代」に販路を特化してきたことを公然と認めている。
しかし、我が国の全人口の過半数以上を占める団塊世代およびそれ以上の高齢者世代にとって「アニメイト」なる会社や店舗はほぼ不知の存在であり、国民にとってあまねく周知の会社・社名ではないのである。
また、請求人は、被請求人に対し「人格権が毀損された」と主張するが、乙第3号証1ないし4の請求人と被請求人の間でやりとりされた内容証明郵便を通じて、すでに請求人に通告したとおり、「アニメイト」なる商標を用いる企業は多数存在するのであり、被請求人のみが請求人等の会社である「アニメイト」の人格権を毀損したとの事実はなく、したがって、この主張は失当である。むしろ、商標制度には、大企業の横暴を防ぐ役割もあるのである。
(3)請求人は、本件商標について「アニメ関連商品の販売の業務において・・・広く知られている」「出所の混同が生ずるおそれがある」と主張するが、再三におよび自認するように「アニメやアニメを切り口としたフィギュア等のグッズを愛好する人達の間では ・・・ 聖地・メッカと呼ばれるほど著名な商標である」と主張する。
しかし、このように需要者を限定し特化して「アニメ・オタク世代」のみを対象とした特異な企業であるだけに、「周知の著名な商標」と断定することは無理があり、「アニメイト」なる企業およびその商標は「ごく一部の世代やマニアにとって著名な商標」にすぎないのである。したがって、「周知度について」も、この主張は失当である。
また、請求人は「アニメイト」は造語であると主張するが、義務教育に登場しない英単語がマスメディア等で広く使用されたり、商標として使用されることは多々あることであり、「アニメイト」なる商標が義務教育に用いられないことを根拠に創造商標であると主張することは後付けの主張にすぎない。
請求人が、造語であると主張するのであれば多角経営に供え、隣接する指定役務にも商標出願すべき責務があったはずである。
なお、被請求人が本件商標において「アニメイト」なる文字列を使用したのは、健康関連産業として英単語である「animate」(元気付ける等の意味)を片仮名表記して登録したのであり、他意はない。
さらに請求人は、被請求人が行う事業の一部に「アニメやフギュアのコスチューム ・・・ によるファンタジー気功」がある事実を取り上げて、「需要者層が一致し、密接な関係を有する」と主張している。
しかし、「アニメイト」なる商標の指定役務と被請求人が行う役務及びサービスには明確な違いがあるのであり、「需要者層が一致し、密接な関係を有する」との事実はなく、密接であると断定する根拠がない。
また、当該店舗の従業員が自己の意思で着用しているコスチュームにまで干渉する態度を見るとき、請求人等の主張は乙3号証の1および3に見られるように、当初から一貫してあたかも「目障りだ、すぐ手を引け」と恫喝してきたことがより鮮明になるのであり、こうした威圧的・横暴かつ独善的な強要を請求人等は何度も繰り返してきたのである。
ちなみに、請求人は、乙4号証に示す「刊行物提出書」を特許庁に提出し、本件無効請求と同様の主張を行ったが、事実上この主張は棄却された。
つまり、請求人の一連の主張は、ほぼ1年前に特許庁によって完全に否定された主張である。
そして、こうした請求人の態度は、そのまま本件無効審判にも受け継がれており、被請求人はこれらの執拗な威圧行為について、現在威力業務妨害事件としての告発を検討している。
なお、請求人は、「コスプレをした者が行うあん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」に使用した場合、株式会社アニメイトと・・・関係がある者の業務に係る役務であると誤認を招く」ことは明らかであるとして、商標法第4条1項15号に該当し、同法第46条1項第1号により無効にすべきでものであると主張する。
しかし、コスプレ行為そのものが「株式会社アニメイト」の直接役務ではないのである。したがって、この主張にも根拠がない。
ちなみに、請求人は、乙5号証に示す商標登録を行い、「アニメイト」は、すでに商標として登録されている。つまり、請求人等は、本件商標と同じ指定役務である「第44類」で「アニメイト」なる商標を登録したのであり、請求人等が主張する実害は事実上ないのである。
そして、この事実から是認できることは、特許庁は被請求人の図形を含む本件商標と、請求人による「アニメイト」なる標準文字商標は、どう見ても需要者に誤認されない「見た目の違いが明らか」と判断したからこそ、上記の「アニメイト」なる標準文字商標を登録したのであり、そのことが合理的に判断できる状況にあるのである。
(4)請求人は、本件商標について、本件商標を「あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり」という指定役務以外の「リフレクソロジーと気功」を行う役務に使用した場合、質の誤認が生ずるおそれがある旨主張している。
しかし、一般的にはリフレクソロジーとは「足裏マッサージ」のことであり、さらにその際手等から「気」を送り込む療術等は一般に行われている手技である。したがって、この指摘も失当である。
なお、請求人が平成18年8月23日に昨年特許庁に提出した「刊行物提出書」の中には乙6号証に示すとおり「コミック・ビーズログ」誌2006年1月号には「2006年アニメイト 冬のAVまつり」の記述があり、「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤」の役務には似つかわしくない業務が公然と表記されている。
また、甲第11号証の4および5には、幼い少女が水着や下着姿で股間を見せて、劣情をかき立てるようなポーズのイラストが大きく印刷されている。
「冬のAVまつり」や少女性愛を誘発するような広告等を公然と行う特殊な企業に対し、乙5号証に示す「アニメイト」なる商標を与え、しかも「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤」の役務において標準文字商標として使用を認めることのほうが、社会的により問題が多いのではないかと考える。
(5)請求人は、本件商標について「アニメイト」なる商標は全国的に知られるハウスマークであり、「アニメやアニメを切り口としたフィギュア等のキャラクターグッズを愛好する人達の間で著名商標となり十分な顧客吸収力を具備するようになった」と主張する。
しかし、この主張も「アニメイト」なる商標が一部の限定され特定された需要者や「オタク世代」に販路を特化してきたことを自ら公然と認めている証拠でしかない。
また、被請求人の「従業員がコスプレをすると需要者層が一致する」との主張も根拠が薄弱であり、被害妄想的ですらある。
請求人による「飾り窓」なる部分的商標が特殊風俗を連想させるとの主張は悪意ある連想であり、「飾り窓」という文字列で売春買春を連想する世代はもはや50歳以上であり、オランダのアムステルダムにおける売春買春は合法なのであり、女性が自己の意思で売春することは国家が規制すべき事柄ではないとの考え方が欧米先進国ではすでに定着しているのである。
したがって、請求人が主張する「アニメイトという商標に化体した信用が毀損・汚染され、あるいは希釈化されてしまう」との主張には正当な根拠がなく、これらの主張は予断と偏見に満ちており、古めかしく独善に満ちており著しい女性蔑視の主張である。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当について
(1)本件商標の構成及び態様
ア 本件商標は、別掲のとおり、全ての角が丸みを帯びた横長四角形輪郭内に、「相互リフレクソロジー」「ファンタジー気功」「飾り窓の天使」及び「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」の各文字を上から下へ行を変えて表し、それに加え、上段右にハート形の左右に羽根を生やしたような幾何図形を配してなるものである。
そして、上記各段の構成各文字はいずれも、同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもって一体的に表されているものであるが、「飾り窓の天使」の文字が中央部で大きく顕著に表されているのに対して、それ以外の各文字は、「飾り窓の天使」の文字に比べて、いずれも、およそ10分の1程度の小さな文字で表されているものである。
イ 本件商標を構成する文字にあって、「リフレクソロジー」が「足の裏などのマッサージによる反射療法」を意味する語(甲第2号証の6)であり、「ファンタジー」が「空想、幻想」、「気功」が「気を養い、体内にめぐらせることにより心身の健康を得るための鍛錬法」の意味を表す語(広辞苑参照 )であり、また、「ドールマニア」が人形の愛好者を意味する語として使用され(甲第31号証)、「三次元美少女」がアニメの主人公(2次元美少女)を立体化したものを指す語として使用されている(甲第2号証の1ないし5)ことが認められる。しかし、「相互リフレクソロジー」「ファンタジー気功」「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」は、いずれも特定の観念をもって理解されるものとはいえない。
ウ しかして、本件商標を構成する「相互リフレクソロジー」「ファンタジー気功」「飾り窓の天使」及び「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」の各文字及び図形は、全証拠によってみても、構成それ自体において、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような標章からなるものとは認められないものであり、また、これらの標章(文字及び図形)を全体としてみたときにも、同様である。
(2)「飾り窓の天使」について
ア 「飾り窓」の文字は、「商店で商品を陳列する窓。ショーウインドー」「装飾を施された窓」を意味する語である(広辞苑参照。甲第1号証の2、乙第1号証1ないし4)。
そして、本件商標中の「飾り窓の天使」の文字部分は、「飾り窓」と「天使」とが格助詞「の」をもって一体的に結合し「飾り窓の天使」と一連に表されたているものであって、かかる構成において、殊更「飾り窓」の文字のみに着目し、これより売春等とを結びつけて売春を目的としたアムステルダムの風俗街の通称と看取され理解されるのが一般的であるとまでいうべき格別の理由及び証拠はない。
さらに、この「飾り窓の天使」を本件商標中の「相互リフレクソロジー」や「三次元美少女」等の他の文字と併せみた場合においても、上記のとおり判断されるものである。また、「飾り窓」が、オランダ国アムステルダムにおける「飾り窓の女」や「飾り窓地区」が売春を連想させる語であって、これらの俗称や通称として使用される語(甲第1号証の2ないし6)であったとしても、「飾り窓の天使」から、我が国において、売春防止法(昭和31年法律第118号)によって刑事法上の処罰対象とされる違法行為であることが明らかである売春を連想、想起させるということはないというのが相当である。
以上によれば、本件商標は、指定役務に使用された場合に、一般社会において他人に不快な印象を与える標章ということもできない。
イ なお、本件商標の指定役務は適法な正当業務である「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」(「あん摩マッサージ師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)」及び「柔道整復師法(昭和45年法律第19号)」参照)であるところ、この役務の表示内容とは異なり、当該役務の提供(施術等)に際して人の肌と肌が触れ合うものがあるとしたうえ、役務の提供に際してのコスチュームなどから、いわゆる風営法(昭和23年法律第122号)の「異性の性的好奇心に応じてその客に接触する役務」(第2条第6項第2号)等の如くにいうのは、指定役務の把握自体において正鵠を得たものとはいえず、本件商標を特殊な風俗と結び付けて把握する請求人の主張は、前提において妥当でなく是認し得ないものというべきである。
仮に、業務に関して指定役務の埒外のサービス(労務又は便益)に係わるものがあったとしても、それは、登録商標の適正な使用か否か(不使用や質の誤認等)が問われる場合があり得るとしても、指定役務についての商標登録の適否とは次元の全く異なる事項に係る問題といわざるを得ないものである。
(3)小括
以上、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような標章(文字や図形等)からなるものとはいえず、また、これをその指定役務に使用することが公共の利益や社会の一般道徳観念に反するものとはいえない。さらに、その出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあったとすべき事実及び証拠はみいだせないから、本件商標は、公序良俗を害するおそれがある商標にはあたらず、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第8号該当について
(1)他人の名称等の略称が本号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するにあたっては、常に、問題とされる指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものと解される(参照:平成17年7月22日最高裁判所第二小法廷判決、平成16年(行ヒ)第343号)。
(2)ア 請求人の名称は「株式会社アニメイト」であるから、そこから法人格を表す「株式会社」を除いた「アニメイト」が請求人の略称に該当することは明らかである。
イ 請求人提出の証拠(甲第6号証ないし同第16号証)によれば、本件商標の出願以前より、請求人は、引用商標をその取り扱いに係る商品(アニメ関連商品)に使用し、雑誌やTVコマーシャル等においてその取り扱いに係る商品の宣伝広告を継続的に行っていることが認められる。また、請求人の店舗(支店)は全国70余店にのぼり、その店舗名として引用商標を表示していること、ホームページを開設し通信販売にも対応していること、2006年度売上が約300億円であること、この種アニメ系ショップの中では最大手であること、そして、請求人の池袋店をして、特にアニメを切り口としたキャラクターやアイドル達を嗜好する人達に聖域と呼ばれるほどになっていること、大学生の就職希望企業の商業部門で4位にランクされたこと、などが認められる。
以上からすれば、「アニメイト」は、アニメ関連商品及びその取り扱いに関する業務に係る業界においては、その需要者間で請求人の略称として相当程度に知られているものということができる。
ウ しかし、それは、アニメ関連商品及びその取り扱いに関する業務周辺に特化しており、かなり限定された範囲に止まるといわざるを得ないものである。
しかして、「アニメイト」自体が請求人の創造に係る独創性ある語であるとする的確な証拠はみいだせず、就職志望企業に関する調査結果に「アニメイト」が掲げられたことや、全国に店舗を有するなどの上記「アニメイト」「animate」の使用状況によっても、本件商標の出願時において、「アニメイト」が請求人を指称するものとして一般的な認識となっていたと判断するのに充分であるとすることはできない。
そして、「アニメイト」が「元気づける」等の意味を表す既成の英語「animate」の表音に該当すること、あるいは「アニメイト」が「アニメ(ーション)」と仲間を表す「メイト」との合成語として理解される例(甲第16号証の1,同7)をみると、本件商標中に表された「アニメイト」が請求人に由来するものとして理解されると断じることもできない。ちなみに、「アニメイト」を商号や商標に採択使用している例もみられるところである(乙第3号証の2)。
(3)小括
本件商標は、その構成中に「アニメイト」の文字が含まれているが、全証拠によっても、本件商標の出願時において、「アニメイト」が請求人を指し示すものとして一般に受け入れられていたとは認め難いから、この「アニメイト」をもって、本号にいう「他人の著名な略称」を含む商標とは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当について
(1)引用商標の周知性
上記2(2)イのとおり、「アニメイト」及び「animate」はアニメ関連の各種商品を販売する請求人の商標として、本件商標の登録時及びその出願時において、その需要者の間に広く認識されるに至っていたものということができる。但し、それはアニメ関連の各種商品及びその小売の役務の需要者に限定されたものというのが相当である。
(2)商標間の類似性の程度
ア 本件商標は、前記(1)アのとおりの構成態様のものであるところ、その構成中の最下段に「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」が小さく表されているものである。そして、この文字列が全体として観念的にどのようなものとして受け止められるかは必ずしも定かでないけれども、いずれにしても、「アニメイト」は、その前に位置する「ドールマニア」や「三次元美少女」と「&」を介して一連に表されており、視覚上「アニメイト」のみが際立って看取されるものとすべき特段の理由はない。
しかるところ、本件商標にあって、中央に顕著に大書され、纏まりあるものとして看取される「飾り窓の天使」が、看者の注意を強く喚起する要部というべきであり、これに比して、他の段の文字は付記的なものとして看取されるというのが相当である。
してみると、本件商標は「カザリマドノテンシ」の称呼が生じ、「飾り窓の天使」の観念を生ずるものというべきである。
一方、「アニメイト」あるいは「anmate」のみからなる引用商標は、「アニメイト」の称呼において取引に資されるものであり、特定の観念を生じさせないものである。
しかして、本件商標と引用商標とは、外観上明らかに相違し、称呼及び観念においても明確に区別し得るものであり、その外観、観念及び称呼から受ける印象、記憶及び連想等を総合勘案してみても、本件商標と引用商標とを同一又は類似の役務に使用した場合に、その一般的な需要者をして役務の出所の混同を生じさせるほどに相紛らわしいものであるとはいえないから、本件商標と引用商標間の類似性の程度は、極めて低いというべきである。
イ なお、請求人は、ペットマークに比べてハウスマークは小さく表示されるのが通常の取引実情であるから、「アニメイト」が本件商標の右隅に小さく記載されたことで、かえって需要者に役務の混同を生じさせる結果となる旨主張する。
しかしながら、ハウスマークが小さく表示されることがあるとしても、本件商標における「アニメイト」は、前記のとおり一連の文字の一部として看取されるというのが相当であり、他から独立してハウスマークとして理解されるとは言い難いものであって、本件商標については、前記のとおり判断すべきものである。
(3)商品及び役務間の関連性の程度、需要者の共通性
ア 本件商標の指定役務は、肩こりや疲労等の緩和や整体等の効果を目的として、それを必要とする者に対して所定の施術を提供する労務である。
一方、引用商標が使用されている商品は、コミック、ゲーム、フィギア、被服及びストラップなどの各種小物等の商品であり、それらはいずれも、いわゆるアニメ関連商品といわれるものである。
しかして、両者は、その提供の目的や用途、提供者と製造販売業者、提供場所や販売場所等が全く相違するものであり、両者の性質は著しく異なり、その間において、関連性があるものとは到底認められない。
そして、本件商標の指定役務と引用商標が使用されている商品は、前記のとおり、その用途等を著しく異にし異質なものであることから、その需要者を共通にするとは認められないものである。
また、請求人の主張するように、引用商標が使用される業務を「アニメ関連商品の小売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」(「アニメ関連商品の小売」)と把握したとしても、上記同様に、両者間には関連性がないと判断されるものである。
イ なお、請求人は、「アニメキャラクター等のコスプレをした従業員が行うマッサージ等の役務」において、引用商標の商品(あるいは小売役務)の需要者と本件商標の指定役務の需要者が一致し、当該役務について密接な関連性がある旨主張する。
しかしながら、仮に、本件商標の指定役務に関して、その役務を提供する事業者の従業員のコスチュームにアニメ関連のものを使用することがあるとしても、その一事から、上記アの全く異質の商品と役務間、あるいは役務間に、密接な関連性が生ずるとまでいうのは相当とはいえない。
また、本件商標の指定役務の提供を受ける需要者の中に、アニメ関連商品の愛好者が含まれることがあるとしても、それは当該役務「あん摩・マッサージ等」の提供を必要とする者としてであって、一般的に、引用商標に係る商品、アニメ関連商品の愛好者が本件商標の指定役務の需要者のうち相当の割合をなすものであるとまではいえないから、両者の需要者が共通であるとすることはできない。
(4)小括
以上、引用商標の周知性の程度、本件商標と引用商標間の類似性の程度、本件商標と引用商標の使用される商品や役務間の関連性の程度、需要者の共通性の有無等を総合してみた場合、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する需要者が引用商標を想起し連想して、請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務と誤認するとは認められず、役務の出所について混同するおそれはないと判断されるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第16号該当について
本件商標の構成中には、「ファンタジー気功」の文字が表されており、「ファンタジー」が「空想、幻想」の意味を表し、「気功」が「気を養い、体内にめぐらせることにより心身の健康を得るための鍛錬法」の意味を表す語として一般に親しまれたものではある(広辞苑参照)が、これら両語を同じ書体、同じ大きさ、等間隔で一連に表した「ファンタジー気功」の文字は、全体として具体的特定の意味を理解させるものとは言い難く、一連の造語として看取されるというのが相当である。
しかして、「気功」が整体等に応用されることがあるのを考慮したとしても、本件商標中の「ファンタジー気功」の文字をもって具体的特定の役務を認識させるとはいえないから、本件商標をそのいずれの指定役務に使用したとしても、役務の質について誤認を生じさせるおそれはないというべきである。
また、本件商標の構成中には、「相互リフレクソロジー」の文字が表されており、「リフレクソロジー」が「足の裏などのマッサージによる反射療法」(甲第2号証の6)を意味する語であり、療法の一を表すものではあったとしても、「相互リフレクソロジー」の文字をもって具体的特定の役務を認識させ、他の役務と峻別して認識されるとはいえないから、本件商標をそのいずれの指定役務に使用したとしても、役務の質について誤認を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当について
本件商標は、引用商標に類似するものとはいえないこと、前記3(2)のとおりである。そして、本件商標の構成中に請求人の略称に通じる「アニメイト」の文字が含まれているけれども、それは「ドールマニア」「三次元美少女」など他の文字と「&」を介し連結して小さく表示されており、斯かる表示態様にあって「アニメイト」のみが役務の出所を表示するものとして殊更に強く印象されるものとも言い難い。
また、本件商標中の「ドールマニア&三次元美少女&アニメイト」が如何なる意味合いにおいて認識されるか、必ずしも明らかではないとしても、「アニメイト」が既成の英語「animate」の表音に該当し、あるいは「アニメイト」が「アニメ(ーション)」と「メイト」との合成語として理解される例(甲第16号証の1、同7)をみると、「アニメイト」が、これを採択することにおいて極めて困難な部類に属する特異な造語であって採択が重なり一致したとみるのは不自然であるとまでは言い難く、本件商標中に表された「アニメイト」が唯一請求人(その略称であることを含む。)に由来するものと断じることはできないというのが相当である。
なお、被請求人の店舗と比較的近い場所に請求人の店舗(支店)があるからといって、被請求人が請求人の名称を知り、そのことから直ちに、「アニメイト」を本件商標中に採択したとも言い切れない。
したがって、本件商標に関して、請求人の略称等からの剽窃的な出願であったとは断定し得ないというべきである。
そうとすれば、本件商標は、請求人の名声等に乗じ不正の利益を得る等の不正の目的をもって使用されるものであるということはできない。
してみれば、本件商標は、引用商標に類似する商標とはいえず、また、不正の目的をもって使用されるものともいえないから、その他の要件に論及するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号、同第16号及び同第19号のいずれにも該当するものとは認められないから、同法第46条第1項によってその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標



審理終結日 2008-03-11 
結審通知日 2008-03-14 
審決日 2008-03-25 
出願番号 商願2006-26579(T2006-26579) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (Y44)
T 1 11・ 222- Y (Y44)
T 1 11・ 272- Y (Y44)
T 1 11・ 271- Y (Y44)
T 1 11・ 22- Y (Y44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 照美 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩崎 良子
渡邉 健司
登録日 2006-12-08 
登録番号 商標登録第5008309号(T5008309) 
商標の称呼 ソーゴリフレクソロジーファンタジーキコーカザリマドノテンシドールマニアアンドサンジゲンビショージョアンドアニメイト、ソーゴリフレクソロジーファンタジーキコーカザリマドノテンシドールマニアサンジゲンビショージョアニメイト、ソーゴリフレクソロジー、ファンタジーキコー、ファンタジー、カザリマドノテンシ、ドールマニアアンドサンジゲンビショージョアンドアニメイト、ドールマニアサンジゲンビショージョアニメイト、ドールマニア、サンジゲンビショージョ、アニメイト 
代理人 野口 和孝 
代理人 新井 全 
代理人 岡▲崎▼ 信太郎 

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