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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1175811 
審判番号 取消2007-300307 
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-03-16 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4468893号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4468893号商標の指定商品中、「化粧品」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4468893号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成12年4月19日に登録出願、第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品」を指定商品として同13年4月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標は、継続して過去3年間、その指定商品中、「化粧品」について、商標権者により使用されていた事実が認められず、また、使用権者が本件商標を上記商品に使用していた事実もなく、さらに、不使用についての正当な理由も見当たらない。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品中、「化粧品」について、使用されていないから、商標法第50条第1項の規定により、当該商品についての登録は、取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、指定商品中、「化粧品」である「スクワランオイル」に登録商標「AQUA LISM」を使用している旨主張する。
しかしながら、乙各号証を精査しても、上記指定商品に登録商標「AQUALISM」を使用していると考えることはできない。
(a)乙第1号証について
被請求人は、指定商品中、「化粧品」である「スクワランオイル」に商標「AQUALISM(アクアリズム)」を使用する旨記載した被請求人の内部資料(乙第1号証)を提出し、上記商品に本件商標を使用している旨主張する。
しかしながら、当該資料の配布は、平成14年5月5日であり、本件審判請求の登録前3年よりも前であって、3年以内の使用でない。
そして、その後、使用が継続されていた事実は、他の資料によっても証明されていない。
(b)乙第2号証について
被請求人は、指定商品中、「化粧品」である「スクワランオイル」に商標「AQUA LISM」を付し、「日焼けサロン」を業務とする「株式会社スタジオイリオス」に販売していると主張し、その証明として、被請求人から株式会社スタジオイリオスに発行した請求書(乙第2号証)を提出している。
確かに、商品に関する価格表や取引書類に商標を付して頒布等することは、指定商品についての商標の使用に該当すると考えられ(商標法第2条第3項第8号)、商品に関する請求書に商標を記載して客先に送付することは、指定商品についての登録商標の使用に形式的には該当する。
しかしながら、証明書全体からみて、実際、指定商品に登録商標を使用しているかが判然としない場合、すなわち、単に不使用取消しを免れるためだけの名目的な使用とも考えられる場合には、そのような不明確な証拠のみでは、使用が証明されたと判断することはできない。
また、このような請求書が取引相手に送付されたものとは考えられない。
さらに、その受領者に商標の存在が認識されていたとは通常考えられない態様のものである。
被請求人は、本件商標を業務用「スクワランオイル」に使用していると主張するが、その請求書中に「AQUA LISM(スクワランオイル)」と記載されているだけでは、実際の取引での商標の使用を窺い知ることはできない。
そもそも、本件商標は、図案化された文字であるから、使用態様が異なっており、本件商標の使用とは認められない。
また、一般消費者向けに販売されている商品でなく、業務用として販売されている商品の場合には、品番、型番、記号等で取引される場合も多いと考えられるから、商品の名称として付しているつもりの商標が必ずしも識別標識として用いられていることにはならない場合がある。
商品を業として生産し、使用等する場合には、取引の現実において、何らかの識別標識が必要となる。すなわち、取引において、指定商品に登録商標を使用していれば、商品に付されるか又は包装パッケージ等に付されるかした商標が存在している筈である。
本件についていえば、業務用オイルのパッケージ等に本件商標と同一の態様の商標を付したものが存在するのが普通の使用状態である。
商標が商品のパッケージに付されていれば、使用の証明を行う際、単に当該商品の写真を提出すれば証拠になる。
しかしながら、被請求人は、使用を主張するのみで、現実に使用している商標の態様や取引がなされている状況を明確に示す証拠を全く提出していない。
かかる請求書のみでは、本件商標を付した商品が過去から現在に至るまで、現実に取引されている事実が確認できない。
むしろ、現実的には、使用の実績がないので、自ら持っている請求書に商標を付加し、便宜的にプリントアウトしたにすぎないとしか評価できず、証拠力に乏しい証拠である。
商標の付された商品のパッケージ等が証拠として提出されていない状況下においては、本件審判請求に係る商品に本件商標が使用されていないと推察せざるを得ない。
第三者が証明する証拠力ある証拠又は自らの製品に商標が付されている証拠の提出がない限り、証拠とは認められない。
(イ)不使用についての正当な理由
被請求人は、乙第3号証ないし乙第8号証を提出し、審判請求に係る指定商品「化粧品」である「スクワランジェル」について、本件商標を付して販売する予定であり、その商品化プロジェクトを具体的に進行している途中であって、「スクワランオイル」をジェル化するための配合物の割合が難しいこと等を理由として、現在のところ、被請求人が「スクワランジェル」に本件商標を使用していないことについて、正当な理由がある旨主張する。
しかしながら、不使用取消審判請求の登録前3年以内に、商標権者等が正当な理由なく、当該請求に係る指定商品について、登録商標を使用していない場合には、その商標登録は取り消されることとなっている。
商標法第50条第2項ただし書きの「正当な理由」とは、「商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に、天災地変等によって、工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合や、時限立法によって、一定期間(3年以上)、その商標の使用が禁止されたような場合」を指すものであり(特許庁編「工業所有権法逐条解説〔第16版〕」第1212?1213頁)、研究開発の遅れや病気療養等の個々の具体的な理由は、「正当な理由」に該当しないと考えられている。
被請求人は、答弁書で、「『スクワランジェル』等の商品化に向けたプロジェクトは、具体的、かつ、着実に進行している」、「新たに『スクワランジェル』等についても、これから使用することが判明する」、「『スクワランジェル』等については、現在使用されていない」と述べており、自ら登録商標の不使用を認めている。
しかしながら、登録商標の不使用についての正当な理由として、妥当性あるものが何ら開示されておらず、単に自己都合の「『スクワランオイル』をジェル化するための配合物の割合が難しく」という特殊な事情を述べているにすぎない。
したがって、被請求人の主張では、不使用についての正当な理由が明らかにされたとは考えられない。
(ウ)上記のとおり、被請求人提出の証拠では、「スクワランオイル」に本件商標が使用されているとは考えることができない。
また、「スクワランジェル」について、仮に、使用の準備状態であったことが認められたとしても、かかる事由は、商標法第50条第2項ただし書きの「正当な理由」に該当するものではない。
請求人の主張としては、これだけでも十分であるが、被請求人は、乙第3号証ないし乙第8号証を提出し、使用の準備を進めていると主張するので、以下、それらについて反論する。
(a)乙第3号証について
被請求人は、指定商品「化粧品」、特に「スクワランオイル」についての商品企画開発を行っていたと主張する(乙第3号証)。確かに、商品企画開発費として80万円を投入していたことは窺える。
しかしながら、乙第3号証には、本件商標の記載がなく、指定商品との関係において、本件商標を使用していた事実を認めることができない。
また、乙第3号証のメールは、被請求人の取引先が被請求人宛に出したものであって、被請求人が出したものではなく、商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(b)乙第4号証について
被請求人は、指定商品に付する本件商標のデザインを入稿したと主張する(乙第4号証)。
しかしながら、乙第3号証と同様に、乙第4号証には、本件商標の記載がなく、指定商品との関係において、本件商標を使用していた事実を認めることができない。
なお、乙第4号証も商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(c)乙第5号証について
被請求人は、「日焼け用水溶性ジェルクリーム」の性質等について記載した乙第5号証を提出している。
しかしながら、乙第5号証には、商標と商品との関係が記載されておらず、指定商品に本件商標が使用されたことは、何ら証明されていない。
また、乙第5号証も商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(d)乙第6号証について
被請求人は、「スクワランジェル」等の見積書について記載した乙第6号証を提出している。
しかしながら、乙第5号証と同様に、乙第6号証も指定商品に本件商標が使用されたことを何ら証明するものではない。
また、乙第6号証も商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(e)乙第7号証について
被請求人は、「スクワランジェル」を梱包するアルミパウチのデザインについてのメール(乙第7号証)を提出している。
しかしながら、乙第3号証と同様に、乙第7号証には、本件商標の記載がなく、指定商品との関係において、本件商標を使用していた事実を認めることができない。
乙第7号証の別添の資料には、本件商標のパッケージデザインが記載されており、「商品名」として指定商品「化粧品」である「AQUA LISM(ジェルクリーム)」の記載がされているものの、該資料は版下であり、市場に流通している商品に使用されたものではなく、指定商品に本件商標が使用されたものとは認められない。
また、乙第7号証も商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(f)乙第8号証について
被請求人は、「シャンプー、リンス、コンディショナー」等の試作品が完成したとのメールを提出している(乙第8号証)。
しかしながら、乙第3号証と同様に、乙第8号証には、本件商標の記載がなく、指定商品との関係において、登録商標が使用されていた事実を認めることができない。
また、乙第8号証も商標法第50条の主体的要件を満たしていない。
(g)乙第9号証について
乙第9号証は、被請求人が参考として提出したにすぎないものである。
(3)まとめ
被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証を提出し、本件取消審判請求に係る指定商品「化粧品」である「スクワランオイル」について、現在に至るまで使用を継続していると主張するが、これらの証拠からは、取消審判請求に係る指定商品に本件商標を使用していると考えることはできない。
また、被請求人は、指定商品「化粧品」である「スクワランジェル」について、使用の準備を行っていると主張する。
しかしながら、研究開発の遅れといった個別的な理由は、不使用の「正当な理由」(商標法第50条第2項ただし書き)には該当しない。
被請求人提出の他の証拠によっても、取消請求に係る指定商品に本件商標が使用されていると判断することはできない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
(1)被請求人は、本件商標を「日焼けサロン」向けに販売した「スクワランオイル」の18リットル缶に使用している。また、一般消費者向けには、「スクワランジェル」等の販売を予定している。
(ア)過去の事実
被請求人は、平成14年の取締役会で、「スーパースクワランオイル」に権利取得済みの商標「AQUALISM」を使用することを決定し、担当者各位に、その旨を連絡した(乙第1号証)。「スクワランオイル」に商標「AQUALISM」が使用されていることは、乙第2号証の各請求書から明らかである。
(イ)現在の使用状況
「スクワランオイル」の18リットル缶については、現在も引き続き商標「AQUALISM」を使用し、販売している。
そのほかに、2003年から「スクワランオイル」の18リットル缶タイプの商品を小分けして販売することを計画し、朝日石油化学株式会社に商品企画を依頼した。2003年12月19日に同社から商品企画開発費の請求についてのメール(乙第3号証)が届いた。
「スクワランオイル」をジェル化するための配合物の割合が難しく、サンプル品を店頭等に置いて、テストし、試行錯誤を繰り返した後、2006年に配合物の割合が決定し、パウチデザインの入稿(乙第4号証)に進んだ。
2006年5月29日に「日焼け用水溶性ジェルクリーム」の件に関する見解が新日石トレーディング株式会社から届いた(乙第5号証)。
2006年7月26日に、同社から「スクワランジェル」等の見積についてのメール(乙第6号証)が届いた。その後、同社から「スクワランジェル」を梱包するアルミパウチのデザイン用版下作業の準備を進めたいとするメールが届いた(乙第7号証)。
なお、「AQUALISM」については、「スクワランオイル(スクワランジェル、クールダウンジェル)」に限らず、「化粧水、シャンプー、コンディショナー、ボディシャンプー」にもシリーズ化を進めている。
そのうちの「シャンプー、コンディショナー、ボディシャンプー」については、試作品ができ上がったとの連絡を受けた(乙第8号証)。
こうした商品企画開発会社とのやり取りからわかるように、「スクワランジェル」等の商品化に向けたプロジェクトは、具体的、かつ、着実に進行している。
(ウ)上述のとおり、本件商標は、現在も「スクワランオイル」に使用されているが、新たに「スクワランジェル」等についても、これから使用することが判明するので、「スクワランジェル」等に現在使用されていないことについて、正当な理由がある。
なお、請求人からは、乙第9号証に示すように、平成19年2月28日に被請求人に対し、本件商標の使用許諾の打診があったが、断らざるを得なかった。その理由は、上述のように、「スクワランジェル」等の商品化プロジェクトが具体的に進行していたからである。
(2)請求人の弁駁に対する再答弁
(ア)請求人は、「乙第1号証について、当該資料の配布日が平成14年5月5日であり、本件審判請求の登録前3年前よりも前であって、3年以内の使用でなく、その後、使用が継続された事実は、他の資料から証明されていない。また、乙第2号証について、その証明書の全体から、指定商品に本件商標が実際に使用されたかが判然としない。商標の付された商品のパッケージ等が証拠として提出されておらず、登録商標が使用されていないと推察せざるを得ない。第三者の証明による証拠力ある証拠又は自らの製品に商標が付されている証拠の提出がない限り、証拠とは認められない。さらに、被請求人による『不使用の正当な理由』は、特殊な事情を述べたにすぎず、不使用の正当な理由でない。」旨主張する。
しかしながら、被請求人は、それらに対し、次のように再答弁する。
(a)被請求人は、昭和53年以来、18リットル缶入りの「スクワランオイル」を取り扱っており、当該商品に現在も引き続き商標「AQUALISM」を使用し、販売している。
(b)請求人から第三者の証明による証拠力ある証拠又は自らの製品に商標が付されている証拠の提出がない限り、証拠とは認められないとの弁駁があったので、被請求人は、「ホクト工芸株式会社」(以下「ホクト工芸」という。)による証明書(乙第10号証)を提出する。
この証明書は、平成17年6月15日に「スクワランオイル」の18リットル缶の納入があったことを証明するものである。
ホクト工芸は、本件商標を含むラベルを印刷し、「スクワランオイル」の18リットル缶に貼付し、被請求人に納入した業者である。
(c)また、被請求人は、上記「スクワランオイル」の18リットル缶を「日焼けサロン」等に卸している。
これにより、本件商標は、取消請求に係る指定商品「化粧品」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことが明らかである。
(d)第一回答弁の際、被請求人が乙第10号証を提出しなかった理由は、被請求人自身が審判請求書の内容をよく理解できず、しばらく放置し、期限間際になって、答弁準備をしたからである。
(3)よって、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

4 当審の判断
(1)本件商標は、別掲に示すとおり、左上方から中央付近にかけて、顕著に表示した「AQUA」の欧文字と鮫とおぼしき大型魚のシルエット図形とを渾然一体に融合したと看取し得る構成部分と、前記「AQUA」の欧文字の約2分の1程の大きさをもって、右上方に表示した「LISM」の欧文字との組合せよりなるものである。
(2)被請求人は、本件取消請求に係る商品「化粧品」である「スクワランオイル」に本件商標を使用している旨主張する一方、「スクワランジェル」については、現在、本件商標を使用していないが、不使用についての正当な理由があると主張し、乙第1号証ないし乙第10号証を提出している。
そこで、以下、被請求人提出の乙各号証について検討する。
(ア)乙第1号証は、「AQUALISM(アクアリズム)の使用について」と題する被請求人による平成14年5月5日付けの書面の写しと認められるところ、その内容は、スーパースクワランオイルについて、商標「AQUALISM」を使用することを取締役会で決定したことを関係者に告知するものである。
しかしながら、本件商標は、別掲のとおり、文字と図形の組合せからなるものであり、登録番号等による特定もなく、単に商標「AQUALISM」というだけでは、これが本件商標を意味するものかどうかは明らかでない。
もとより、この書面は、本件審判の請求の登録日(平成19年4月4日)前3年以内の期間に発行されたものではない。
したがって、乙第1号証をもって、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標が商品「スクワランオイル」について使用されていたものと認めることはできない。
(イ)乙第2号証は、平成17年12月から同19年3月にかけて、被請求人が株式会社スタジオイリオスの各店に宛てて発行した請求書の写しと認められるところ、それぞれの品番・品名欄に、種々雑多な表示とともに「AQUA LISM(スクワランオイル)」の表示がされ、それに対応した伝票日付、伝票No.、数量、単価等が記載されていることが認められる。
しかしながら、上記「AQUA LISM(スクワランオイル)」の表示自体は、本件商標とは構成態様が異なるばかりでなく、これが本件商標又は本件商標を使用した商品であること特定するような証左、例えば、実際に取引された商品又はその包装容器等に本件商標が付されている状態を具体的に示すカタログ等は一切ないから、上記表示のみをもって、本件商標が使用されているものと認めることはできない。
なお、上記請求書には、各項目(品番・品名)に応じた「伝票日付」、「伝票No.」が付されているところからすると、個々の伝票が存在することが推認されるものの、それが全く添付されていないことも不自然である。
(ウ)乙第3号証は、商品「スクワランオイル」の企画開発費に関し、2003年12月19日付けで、朝日石油化学株式会社の担当者が被請求人の担当者宛に送信した電子メールの写しと認められ、乙第4号証、乙第6号証ないし乙第8号証は、商品「スクワランジェル」のパウチデザインの入稿、納入形式、見積書、試作品等に関し、新日石トレーディング(株)の担当者が被請求人の担当者宛に送信した2006年5月23日付け、同年7月26日付け、同年9月15日付け及び同年5月30日付けの電子メールの写しと認められるものの、これらのいずれにも本件商標の表示は見当たらない。
もっとも、乙第7号証に添付された「AQUALISM/アクアリズム 10ml、5mlパッケージデザイン」と題する書面は、商品の包装容器の版下と推認され、それには、本件商標と同一といい得る標章が表示され、商品名、使用方法、使用上の注意、発売元としての被請求人名称等が表示されているが、この書面が乙第7号証とともに送付されたのか、実際に印刷され頒布されたのか等は明らかでない。
(エ)乙第5号証は、新日石トレーディング(株)の担当者から被請求人の担当者に宛てられた2006年5月29日付けの「日焼け用水溶性ジェルクリームの件」と題する書面の写しと認められるところ、その内容は「日焼け用水溶性ジェルクリーム」について所感を述べるものであり、本件商標についての記述はない。
(オ)乙第9号証は、請求人代理人が被請求人代理人に宛てた、本件商標の使用許諾について打診する書簡であって、本件商標の使用とは直接の関係を有するものではない。
(カ)乙第10号証は、「AQUALISM」商標を付した「スクワランオイル」を平成17年6月15日に被請求人に対して納入したことを証明したホクト巧芸による平成19年11月8日付けの証明書の写しと認められ、これには、写真のカラーコピーが添付されており、当該写真のカラーコピーには、オイル缶7個と当該各缶に本件商標と社会通念上同一の構成態様よりなる標章を付したラベルが各々貼付されている様子が窺えるとしても、該写真の撮影年月日、撮影者、撮影場所については、何らの記載もない。
しかも、スクワランオイル缶の納入の際には、取引書類(請求書、納品書、領収書等)が存在していたものと容易に推察し得るところ、該書類の提出は一切ないことから、何を根拠に、ホクト巧芸がその証明をなし得たのか不明である。
(3)本件商標の使用の証明及び不使用の正当理由について
上記1のとおりであるから、乙第1及び第2号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標が商品「スクワランオイル」について使用されていた事実を証明したことにはならない。
また、乙第3ないし第8号証によれば、商品「スクワランジェル」の製品化及び本件商標の使用が企画されていたことが窺えるとしても、単なる企画のみでは本件商標が実際に使用されていた事実を証明したことにはならないことはいうまでもない。
被請求人は、商品「スクワランジェル」開発のためのプロジェクトが具体的に進行していたのであるから、本件商標を使用していないことについて正当な理由がある旨主張している。
しかしながら、商標法第50条第2項但し書にいう「正当な理由」とは、「その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等」をいうものと解される(特許庁編「工業所有権法逐条解説」第16版参照)のであって、製品化の遅れ等による単なる自己都合に起因する商標の不使用は正当な理由には当たらないというべきである。
そして、被請求人が上記プロジェクトの進行中に天災地変等の不可抗力によって本件商標を使用することができなかったようなことは何ら示されていない。むしろ、上記各乙号証に示された日時から本件審判の請求までには相当の期間が経過しているにも拘わらず、実際に本件商標を使用した商品の写真、カタログ、取引書類等が何ら提示されていないことは不自然ともいえる。
したがって、被請求人が商品「スクワランジェル」に本件商標を使用していないことについて正当な理由があるものと認めることはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、本件取消請求に係る商品「化粧品」について使用されていなかったものというべきであり、また、その使用がされていなかったことについて正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条の規定に基づき、その指定商品中の上記商品についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-17 
審決日 2008-01-30 
出願番号 商願2000-41935(T2000-41935) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 康浩野上 サトル 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 2001-04-20 
登録番号 商標登録第4468893号(T4468893) 
商標の称呼 アクアリズム、アクア 
代理人 瀬川 幹夫 
代理人 広瀬 文彦 

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