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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 128
管理番号 1175778 
審判番号 無効2007-890027 
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-03-05 
確定日 2008-03-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2354191号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2354191号商標(以下「本件商標」という。)は、「つゝみ」の文字を書してなり、第24類「土人形」を指定商品として、昭和56年3月2日に登録出願、商標法第3条第2項の適用を主張して、平成3年4月4日に審決され、同年11月29日に設定登録されたものである。そして、その後、指定商品について、同16年4月28日に、第28類「土人形」に書換登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
理 由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号により商標登録を受けることができないものであり、その登録は同法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
1 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「ありふれた氏である『堤』を認識させる『つゝみ』の文字を普通に用いられる方法で表してなるものにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。」として拒絶査定がなされた後、「本願商標は、明治以降継続して商品『土人形』に使用された結果、現在においては需要者が請求人(出願人)の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得るところである。してみれば、本願商標は、上記商品について商標法第3条第2項に規定する要件を満たしているものであるから、同法第3条第1項第4号に該当するとして拒絶すべき限りでない。」との理由で、商標登録を受けたものである。
しかしながら、本件商標は、その拒絶査定に対する審判請求の審判理由補充書、請求の理由第5頁(甲第1号証)に示されるように、「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承して」いるとの虚偽の主張を行い、そのように誤認された結果、商標法第3条第2項の適用により例外的に商標登録がなされたものである。
しかしながら、被請求人は、本件商標の登録出願時・審決時にも現在でも、堤人形を「唯一に継承して」いる者ではない。その登録出願時には、請求人の父・佐藤吉夫、祖父・佐藤大三郎、三浦じん等も「堤人形」を製作しており、請求人と父・佐藤吉夫は現在も堤人形を製作し続けているからである(甲第2号証)。
請求人は、被請求人とともに、仙台市のホームページの「堤人形」のページで仙台市経済局観光交流課により紹介もされている(甲第3号証)。
請求人の祖父・佐藤大三郎は、本件商標の登録出願日である昭和56年3月2日の翌月の昭和56年4月1日から堤人形について宮城県優良県産品の推奨の認証を受けており、父・佐藤吉夫は昭和58年4月1日から堤人形についてその認証を受けている(甲第4号証)。
請求人の父・佐藤吉夫は、宮城県伝統工芸品堤人形の製作業者として宮城県に認められている(甲第5号証)。
被請求人による「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承し」、『つゝみ(堤)人形』を現代まで唯一継承し続けている」との虚偽の主張は、被請求人によりなされているほか、関善内の著作物にも記載されている。関氏は、請求人の父や祖父が堤人形の製作者であることを知っていたが、被請求人の家に弟子入りしていた。このため、師匠に逆らうことができず、虚偽の記載を行ったものである。
「堤人形」、「つゝみ人形」の各名称は、堤焼きによる「土人形」の普通名称であり(甲第6号証:広辞苑)、「堤」、「つゝみ」は「堤人形」の略称である。堤人形は、「堤町で生産されてきたのでこの名がある」(甲第2号証の1)ものであって、被請求人の商標ではない。
仙台市のホームページや宮城県の公文書でも、「堤人形」は、商標ではなく、普通名称として記載されている(甲第3号証ないし甲第5号証)。「堤」の表示は、甲第2号証の1に記載のとおり、「花巻」、「八橋」などの表示と同様に、「堤人形」の略称として使用されている。
甲第8号証では、その第10ページ第18行ないし第19行に、「『堤人形』の表示は、仙台の堤町で生産された土人形を表す普通名称といわなければならない」と、第11ページ第1行ないし第2行に、「『堤人形』の文字部分は、仙台の堤町で生産された土人形を表す普通名称である」との判断が示されている。
甲第7号証に示すように、請求人の父である佐藤吉夫は、仙台市指定有形文化財に指定されているものだけでも多数の「堤人形土型」を所有しており、本件商標の登録出願前から現在に至るまで長年、堤人形を製作している。
被請求人は、甲第9号証に記載のとおり、本件商標を根拠に、請求人の父である佐藤吉夫に対し、「『つつみ人形』、『堤人形』及び『つゝみ人形』の商標、宣伝用看板、ポスター、包装用品及びラベルを全て廃葉せよ」との訴訟を提起している。
被請求人は、甲第10号証に示すとおり、請求人の佐藤家で、本件商標の登録出願日以前から堤人形を製造していたことを知っており、普通名称である「堤人形」の表示の使用を独占するため、「土人形」の伝統工芸を現在も唯一に継承しているとの虚偽の主張を行って商標登録を受けたものである。
このように、本件商標は「普通名称」である「堤人形」の略称である「つゝみ」について特許庁審判官を欺いて商標登録を受けたものであり、普通名称の「堤人形」の表示、またはその略称である「つゝみ」、「堤」の表示の使用を独占し、公正な取引秩序を混乱せしめようとするものであるから、商標法第4条第1項第7号により、商標登録を無効とすべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)答弁1及び2に対する反論
商標法第4条第1項第7号は、商標の文字自体が公序良俗を害するおそれがある商標のみに適用される規定ではない。商標登録を受ける過程で詐欺行為があった商標、公共性の高い名称を独占することが競合業者の営業活動を不当に阻害するおそれがある商標もまた、公序良俗を害するおそれがある商標として、同号が適用されるものである。
本件商標は、甲第1号証等に示されるように、「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承して」いるとの虚偽の主張を行い、特許庁審判官を欺いて商標登録を受けたものであるから、商標登録を受ける過程で詐欺行為があった商標であって、公序良俗を害する商標である。
また、「つゝみ人形」の名称は、堤焼きによる「土人形」の普通名称であり、「つゝみ」はその略称である。普通名称及びその略称は、商標法第3条第1項第1号に該当し、商標法第46条第1項第1号により商標登録が無効とされるべきであるが、商標法第47条の規定により除斥期間経過後は無効とすることができない。しかしながら、本件商標のように、独占適応に乏しいうえ、一私人による独占が競業業者の営業活動を不当に阻害するおそれがある場合には、商標法第4条第1項第7号により登録が無効にされるべきである。
特に、被請求人は、甲第9号証に示すように、普通名称である「つつみ人形」、「堤人形」、「つゝみ人形」の表示及び普通名称の略称である「つつみ」、「つゝみ」、「堤」の表示について、請求人の父・佐藤吉夫らを被告として訴訟を提起し、差止め及び廃棄の請求をしてきている。それも本件商標の除斥期間経過を待って、その後に請求をしてきているものである。
このように、商標権取得の悪性及び商標の独占使用による社会的弊害の点において、本件商標は、公序良俗を害する商標であって、その登録を無効にすべきものである。
(2)答弁3に対する反論
ア 甲第2号証ないし甲第5号証に示すように、請求人の祖父・佐藤大三郎、父・佐藤吉夫は、本件商標の登録出願時には「堤人形」を製作しており、また、甲第11号証ないし甲第15号証に示すように、ほかにも「堤人形」の製作者は複数、存在していた。
さらに、「堤人形」は、甲第5号証に示すように伝統工芸品であって、江戸時代から続く型に基づいて伝統的な手法で製作されている(甲第15号証)。それにもかかわらず、被請求人は、その伝統工芸品について不当に著作権を主張し、その製造・販売を独占しようとしている(甲第9号証)。
イ 「つつみのおひなっこや」及び「堤人形 つつみのおひなっこや」の各商標は、請求人及びその父・吉夫が長年、使用してきた商標であって、登録性を有する商標である。
ウ 無効2006-89031号は、甲第8号証の第12ページ第19行ないし第38行に示すとおり、「堤人形」以外の「土人形及び陶器製の人形」が指定商品に含まれるとの理由で、商標法第4条第1項第16号より、商標登録第4914397号「堤人形 つつみのおひなっこや」の登録を無効としたものであって、被請求人の本件商標と類似することを理由とするものではない。
しかしながら、無効2006-89030号では、請求不成立との特許庁の審決に対し、知的財産高等裁判所における審決取消請求事件(乙第2号証)において、審決を取り消すとの判決がなされた。その理由は、請求人の登録商標「つつみのおひなっこや」が被請求人の本件商標「つゝみ」に「観念及び称呼において類似し、外観においても一部が類似するものであるから、類似する商標であると認められる」ので、商標法第4条第1項第11号に該当するというものである。
「つつみのおひなっこや」の商標は、「つつみ」と「おひなっこや」の各文字に分離観察されるものではなく、一連一体の商標である。また、その登録出願時または査定時において、「おひなっこや」の文字が「ひな人形」を意味する普通名称として認識されていたことはない。
仮に、分離観察されるとしても、請求人(商標権者)は「堤町」で人形を製造販売しているのであるから、「つつみ」の文字は普通名称の略称または産地・販売地表示であって、商標権の効力が及ばない範囲、商標法第26条第1項第2号(「第1条第2項」とあるが、明白な誤記と認める。)に該当し、商標法第4条第1項第11号を判断するにあたっても、類否判断において除外されるべき文字である。
さらに、判決では、「外観について」の箇所で、外観に関し、「本件商標の冒頭の『つつみ』と引用商標1の『つゝみ』は、第1字目の『つ』と末尾の『み』を共通にする上、『つつみ』は『つゝみ』と表記されることもあるから、本件商標冒頭の『つつみ』部分と『つゝみ』において外観が類似するものと認められる」と記載されるように、商標の類否判断の基礎的知識にも欠ける判断がなされている。
このように、被請求人は、商標法第3条第2項を悪用することにより、普通名称の略称またはありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標「つゝみ」について商標登録を受け、それにより、既に使用により相当の信用が化体した被請求人の「つつみのおひなっこや」の商標を不当にも無効にしようとしているのである。
エ 以上、被請求人の本件商標は、不当に競業業者の登録商標を無効とするのに利用し、また、競業業者の普通名称の使用を阻止してその使用を独占使用しようとするものであって、権利濫用にあたるものであるから、公序良俗を害する商標であって、無効とされるべきである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録を同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効の主張自体の矛盾
請求人は、被請求人の「つゝみ」の本件商標が、商標法第4条第1項第7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に該当するとして無効審判の請求をする。しかし、本件商標は、その文言自体から公序良俗に反するとは到底考えられず、まして請求人自身そのような具体的主張は一切せずに、単に普通名称とするだけにすぎず、その無効審判請求の理由自体の矛盾と理由不備が明白であり、その請求は到底成り立たないことが自明である。
2 商標法第3条第2項の審判確定と本件請求の不当
被請求人の「つゝみ」の登録商標は、特許庁自身、普通名称として拒絶査定をしたのに対する審判昭58-24600号事件において、平成3年4月4日、拒絶査定を覆し、商標法第3条第2項により需要者が被請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものとして被請求人の商標登録を認める審判をなし、この審判は、既に15年以上も前に確定していることが明白である(乙第1号証)。したがって、本件無効審判請求は、この確定して久しい審判を争うものでもあるが、これが再審や審判取消訴訟でもなく無効を持ち出した不当なものであり、まして上記矛盾を露呈しただけで、商標法第3条第2項の該当を争うわけでもないから、本件無効審判請求は、その請求自体が失当として成り立たないことが自明である。
3 本件請求の不法
(1)請求人は、父である佐藤吉夫の先代以来、土管(焼物)製造や紙製の張子だるまの製造販売を家業としてきたが、時代の変化でこれらが廃業を強いられるにつれ、父吉夫とともに、被請求人の先代佐五郎以来人形の東の横綱と名声を得た堤人形の模造販売に着目し、被請求人の従業員であった小野寺哲也を抱きこんで、その石膏型等用具や技法を盗み取るなど小野寺の技術指導を得て被請求人の商品を模造・コピーし、被請求人の商標を盗用し、また「堤人形」ないしは本件商標に類似する「つつみのおひなっこや」の類似商標でこれを不法に販売するなど、著作権侵害、商標権侵害ないし不正競争行為を行ってきた。被請求人は、これに対して自己の権利を擁護救済すべく、仙台地裁に対して不正競業行為の差止等の訴訟提起をなし(甲第9号証)、結審寸前に至っている。
(2)しかし請求人は、この訴訟の諸々の危険負担を回避すべく、事情を知らない特許庁に対して被請求人の本件商標と類似する「つつみのおひなっこや」の商標登録をなし、これが幸運にも登録を得るや、さらに大胆に「堤人形 つつみのおひなっこや」の商標登録をしてこれを上記訴訟に証拠提出して対抗した。
(3)そこで被請求人は、請求人の登録商標の無効審判の請求をなし、前者が「無効2006-89030号事件」、後者が「無効2006-89031号事件」として係属したが、特許庁は、後者につき無効の審決を出し、これが確定したものの、前者には無効の請求を否決する審判をなした。そのため被請求人は、後者の審決取消訴訟を知財高裁に提起した結果、同高裁は、被請求人の本件商標との類似競合を理由に後者の審決を取消す判決をしたので(乙第2号証)、これが憲法違反等の上告理由がありえない以上、特許庁は、請求人の後者の商標を無効とする以外にない運びである。
(4)以上の経緯を見ると、請求人の本件無効審判請求は、自己の商標権侵害行為を糊塗する目的で、被請求人の本件商標の元を断つことにより、自己の不法を回避する意図が明白である。
したがって、本件無効審判請求は、それ自体、信義則違反と権利濫用であるうえに、何ら正当な理由も根拠もない濫訴の不法行為というべきであり、上記審決取消判決の認定に照らしても許されないものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標については、商標登録を受けることができない」旨規定しているところ、同規定の趣旨からすれば、(a)当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(b)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(c)当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当する(東京高裁 平成16年(行ケ)第7号、同平成14年(行ケ)第616号参照)と解するのが相当である。
2 そこで、上記1の観点から、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反するものであるか否かについて検討する。
(1)甲各号証について
ア 甲第1号証は、被請求人が査定不服審判(昭和58年審判第24600号)を請求した際の「審判理由補充書」の写しであり、理由補充書の理由の概略及び請求人の主張部分の要旨は、以下の(a)ないし(d)のとおりである。
(a)理由補充書の1頁中程に、「本願商標は、出願人の多年に至る継続使用によって、需要者及び取引者の間において出願人の業務に係る商品であることが認識され、充分に自他商品識別力を有する商標である。」旨の記述がある。
(b)同じく、理由補充書の1頁下段から2頁に、「出願人は肩書地において人形製造業を営み、創業百数十年の歴史を持ち、現在はその商品『土人形』に『つゝみ』あるいは『堤』の商標を付して、・・・略・・・現在に至るまで永続して使用してきたものであって、・・・略・・・取引者及び需要者の間において、直ちに出願人の製品であることを認識し得る程周知になっているものである。」という記述がある。
(c)また、理由補充書の2頁の「(3)の『堤』の『土人形』の由来と現在に至るまで」の4頁ないし6頁に、「明治の後期には人形師もいなくなり、長い伝統の土人形の型も放棄されていき、全盛期には13軒も軒を並べた人形屋も明治末年にはわずかに芳賀佐四郎が伝統を保ち、大正年代になるとただ一軒の芳賀家だけが孤塁を守り、堤焼と堤の土人形の保存と伝統を守っている。・・・略・・・、出願人は佐五郎の子供で、13代目の当主として今日まで約25年の間、土人形作りの制作をし営業を継続している。・・・略・・・、本願商標に係る出願人は、『土人形』の伝統工芸を現在も唯一承継しており伝統工芸や土人形を紹介する書物や各種の大会においても代表的な土人形として高い評価を得ている。」という記述がある。
(d)さらに、理由補充書の7頁の「(5)本願商標の周知性について」の9頁ないし10頁に、「仙台商工会議所、日本郷土玩具の会、同業者の証明書(甲第14号証ないし甲第16号証(枝番を含む。))外の証明書の説明」について記述されている。
イ 甲第2号証は、「(財)仙台観光コンベンション協会・工芸部会」の2006年5月26日付け打ち出しのホームページであって、■店舗情報として、「請求人の店舗名」、商品紹介、請求人オーナー紹介として、「請求人の紹介」が掲載されている。
ウ 甲第3号証は、「仙台市経済局観光交流課」の2006年5月26日付け打ち出しのホームページであって、「堤人形(つつみにんぎょう)」の表題の下、5体の堤人形の写真が掲載され、堤人形の紹介がなされ、さらに、その下に、「堤人形製造所 TEL:022-275-1133」、「つつみのおひなっこや TEL:022-233-6409」と電話番号(被請求人の電話番号と請求人の電話番号)が併記されている。
エ 甲第4号証は、請求人宛の平成15年7月30日付け「宮城県産業経済部食新産業・商業振興課長からの回答書」の写しであって、認証期間の欄の最も古い期日は、昭和55年4月1日からで、昭和56年4月1日から昭和58年3月31日の間の「認証品目」の欄中から、「堤人形 谷風(小)」外、が挙げられ、平成8年3月31日までの間に「堤人形」が「認証品目」の欄に挙げられいる。そして、最終頁欄外の下に、(※注)として、「上記内容については、優良県産品推奨目録(昭和55年度以降分)にて確認できたものです。なお、推奨当時の関係書類等については、宮城県文書規程で定められた保存期間を経過しているために、上記内容以外については確認できませんでした。」の記載が認められる。
オ 甲第5号証は、請求人宛の平成15年9月19日付け「宮城県産業経済部食産業・商業振興課長からの回答書」の写しであって、その中程下に、「…さて、平成15年9月15日付けで御紹介のありました堤人形の製作業者については、平成15年9月19日現在県で承知しているのは下記の方々です。」「記 1 仙台市青葉区堤町三丁目30-10 芳賀強 氏、2 仙台市青葉区堤町二丁目10-10 佐藤吉夫 氏」の記載が認められる。
カ 甲第6号証は、広辞苑第一版の「つつみ-にんぎょう」の箇所の写しである。
キ 甲第7号証は、平成15年3月25日付け「仙台市教育委員会」の指定書の写しであって、堤人形の所有者として請求人が指定されていることが認められる。
ク 甲第8号証は、「無効2006年89031号審決謄本」の写しである。
ケ 甲第9号証は、「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件の訴状」の写しである。
コ 甲第10号証は、平成15年12月8日付けの「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、小野寺 哲也の申述書」の写しである。
サ 甲第11号証は、平成15年8月4日付けの「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、合資会社 佐大商店の代表社員の申述書」の写しである。
シ 甲第12号証は、平成15年7月22日付けの「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、三浦つね子の申述書」の写しである。
ス 甲第13号証は、平成15年7月付け(何日かの記載はない)の「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、松根勝美の申述書」の写しである。
セ 甲第14号証は、平成15年8月5日付けの「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、蜂谷周二の申述書」の写しである。
ソ 甲第15号証は、「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所」に提出された、書証の写しであって、「『堤焼の歴史的背景について?堤焼き・堤土人形の伝統性?』の表題、執筆者「元仙台市歴史民俗資料館長 早坂春一」、平成17年12月1日の署名日が明記されている。そして、その6頁の下から5行目に、「…したがって堤人形の制作は、芳賀強氏だけの専売特許とすることは存り得ないのです。…」の記述箇所が認められる。
タ 甲第16号証は、平成17年12月3日付けの「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件で仙台地方裁判所に提出された、芝崎学の陳述書」の写しである。
(2)前記(1)の甲第2号証ないし甲第16号証から、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に該当するかについて
ア 甲第2号証及び甲第3号証は、いずれも本件商標の審決時である平成3年4月4日以後のホームページの打ち出し日であり、単に「堤人形」、「つつみのおひなっこや」及び「堤人形の製造所」が紹介されているにすぎないものであるから、これらをもって、本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、若しくは本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に当たるとは到底いえないものである。
イ 甲第4号証は、「堤人形」が昭和55年4月1日から平成8年3月31日までの間に「堤人形」として、「認証品目」の欄に挙げられているにすぎないものであり、請求人と被請求人との関係は何ら把握し得ないものであるから、上記甲第2号証及び甲第3号証の場合と同様に、これをもって、本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、若しくは本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に当たるとはいえないものである。
ウ 甲第5号証は、平成15年9月19日付け「宮城県産業経済部新産業振興課長からの回答書の写し」であるところ、堤人形の製造者として、被請求人と請求人の氏名と住所の記載が認められるが、これも、上記甲第2号証ないし甲第4号証の場合と同様に、これをもって、本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、若しくは本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に当たるとはいえないものである。
エ 甲第6号証及び甲第7号証は、前者が広辞苑第一版の「つつみ-にんぎょう」の箇所の写しであり、後者が平成15年3月25日付け「仙台市教育委員会」の指定書の写しであるが、前者は「つつみ-にんぎょう」の意義を述べているにすぎないし、また、後者は平成15年3月25日に堤人形の所有者として請求人が指定されたにすぎないものであるから、本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合でもないし、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものともいえないものである。
オ 甲第8号証は、「無効2006年89031号審決謄本」の写しであるところ、審決は、本件商標がその構成中に「堤人形」の文字を有しているから、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するとしたものであるから、この審決は、請求人の上記主張とは直接的には何ら関係のないものといわざるを得ない。
カ 甲第9号証ないし甲第16号証は、「平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件」の「訴状」の写し、及び「申述書」の写しであるところ、これら「訴状」と「申述書」は、一方(請求人)の側からのみであり、内容としても、主として被請求人以外の者も「堤人形」を製造、販売していたとするものであるから、これらのみをもってしては、本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合とは、直ちには認め難いし、断定することもできない。
以上、請求人が提出した各証拠によって、本件商標がその審決時において、商標法第4条第1項第7号に該当していたとはいえないものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「本件商標は、その拒絶査定に対する審判請求の理由補充書、請求の理由第5頁(甲第1号証)に示されるように、「『土人形』の伝統工芸を現在も唯一に継承して」いるとの虚偽の主張を行い、そのように誤認された結果、商標法第3条第2項の適用により例外的に商標登録がなされたものである。」旨主張している。
しかしながら、該甲第1号証の理由補充書中の4頁下から4行目ないし5頁に、「明治の後期には人形師もいなくなり、長い伝統の土人形の型も放棄されていき、全盛期には13軒も軒を並べた人形屋も明治末年にはわずか芳賀佐四郎(被請求人の祖父)が伝統を保ち、大正年代になるとただ一軒の芳賀家だけが孤塁を守り、堤焼と堤の土人形の保存と伝統を守っている。・・・中略・・・、出願人は佐五郎(被請求人の父)の子供で、13代目の当主として今日まで約25年の間、土人形作りの制作をし営業を継続している。」と記述されており、このことは被請求人の提出に係る乙第3号証の1の「新装普及版 郷土玩具辞典(1997年9月25日 株式会社 東京堂出版 発行)」の207頁右上に、「・・・堤町四○戸のうち土人形屋が一三軒を数えるほどの全盛期を迎えて明治期に至った、・・・、大正期には宇津井、芳賀両家だけとなった。さらに昭和期に入ると芳賀佐五郎だけが家業を存続するだけとなったが、昭和三年に新堤人形を発表する他古型の復活に努力。・・・以後現在に至っている。・・・」という記述箇所と整合しているといえるものであるから、請求人の主張する「虚偽の主張を行い」とする点については、直ちに首肯することはできない。
(2)請求人は、「本件商標は、『普通名称』である『堤人形』の略称である『つゝみ』について特許庁審判官を欺いて商標登録を受けたものであり、普通名称の『堤人形』の表示、またはその略称である『つゝみ』、『堤』の表示の使用を独占し、公正な取引秩序を混乱せしめようとするものであるから、商標法第4条第1項第7号により、商標登録を無効とすべきである。」旨主張している。
しかしながら、請求人の上記主張中の「・・・普通名称である『堤人形』の表示・・・の使用を独占し、・・・」という「普通名称」という主張部分の点についてのみに限ってみると、請求人は、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するべきであったと述べているに他ならない。
しかして、被請求人が本件商標の登録出願をしたのは、昭和56年3月2日であり、その後、昭和58年9月26日(起案日)に、「本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する」として拒絶査定を受け、さらにその後、審判にて平成2年5月16日に出願公告がなされ、同3年4月4日に「本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を満たしているものであるから、同法第3条第1項第4号に該当するとして拒絶すべき限りでない。」として審決がなされ、同年11月29日に設定登録されたものである。
そうすると、本件商標は、平成2年5月16日に出願公告後、登録の異議の申立てもなされず、設定登録後約15年もの間、商標登録の無効の審判も請求されなかったものである。
このことは、商標法第47条の趣旨である「商標登録が過誤によってなされたときでも、一定の期間無効審判の請求がなく平穏に経過したときは、その既存の法律状態を尊重し維持するために無効理由たる瑕疵が治癒したものとしてその理由によっては無効審判の請求を認めない(特許庁編 工業所有権逐条解説[第14版]参照)としている点に反するものといわざるを得ない。
してみれば、「普通名称」という主張部分についてのみに限ってみた場合、本件商標が商標法第3条第1項第1号に違反してされたとする商標登録の無効の審判は、商標法第47条中に規定されている第3条(商標登録の要件)に該当するものであるから、同第47条の規定より、本件商標の登録の無効の審判は請求できないというべきである。
したがって、上記請求人の主張は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものと認めることはできないから、同法第46条第1項によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-01-11 
結審通知日 2008-01-17 
審決日 2008-01-29 
出願番号 商願昭56-15483 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (128)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 津金 純子
小畑 恵一
登録日 1991-11-29 
登録番号 商標登録第2354191号(T2354191) 
商標の称呼 ツツミ 
代理人 須田 篤 
代理人 佐藤 興治郎 
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