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審決分類 審判 査定不服 称呼類似 登録しない Y29
管理番号 1174378 
審判番号 不服2006-365 
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-05 
確定日 2008-02-18 
事件の表示 商願2005-26607拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第29類「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」を指定商品として、平成17年3月28日に登録出願されたものである。

第2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下の1及び2に記載のとおりである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第1954849号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和58年11月18日に登録出願、第32類「加工食料品、その他本類に属する商品(但し加工穀物を除く)」を指定商品として、同62年5月29日に設定登録され、その後、平成9年7月1日及び同19年6月5日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2 登録第2144413号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和60年6月19日に登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するもの及び加工穀物を除く)」を指定商品として、平成元年6月23日に設定登録され、その後、同11年7月27日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標構成中の「丹沢大山」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を有するか否かについて、職権により証拠調べを行った結果、以下の1及び2に記載のとおりの使用の事実を発見したので、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき請求人に対して通知を行った。
そして、これらの使用の事実よりすれば、本願商標中、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、「五右衛門」の文字部分にあるとみるのが相当であるから、本願商標からは、単に「ゴエモン」の称呼をも生ずるというのが相当であること、及び引用A商標からは、その構成中の「五右エ門」の文字に相応して、単に「ゴエモン」の称呼をも生ずるというのが相当である旨を述べ、請求人の意見を求めた。
1 「丹沢」と「大山」の文字がともに使用されている記載例
(1)「コンパクト版 日本地名百科事典 COMPACT LAND JAPONICA」(小学館、1998年6月20日発行)の「大山 おおやま [神奈川県]」の項(258頁)に、「県中西部の厚木市、秦野市、伊勢原市の境界にある山。丹沢山地の東部に位置し、・・・」と記載がある。
(2)「コンサイス日本地名事典〈第3版〉」(三省堂、1989年12月15日発行)の「おおやま 大山」の項(233頁)に、「・・・丹沢(たんざわ)山地南東端の峰。・・・」と記載があり、「丹沢大山国定公園」の項(754頁)に、「・・・公園東端の大山は古くから山岳信仰の対象,・・・」と記載があり、「丹沢山地」の項(754頁)に、「・・・東部は大山を起点として・・・」と記載がある。
(3)「大辞林 第二版 新装版」(三省堂、2005年6月10日発行)の「丹沢」の項(一六〇五頁)に、「『丹沢山地』の略。」と記載があり、その「丹沢山地」の項(一六〇五頁)に「・・・大山・塔ヶ岳・丹沢山・檜洞丸などが主峰群を形成する。・・・」と記載があり、「おおやま【大山】」の項(三二四頁)に、「・・・丹沢山地南東端の山。・・・」と記載がある。
(4)1993年8月19日付け日本経済新聞 地方経済面(山梨)25頁の「豊かな自然が残る神奈川県の丹沢大山地域で(環状線)」の見出し記事に、「・・・丹沢大山地域で、県が三十年ぶりに本格的な学術調査を始めた。・・・」と記載がある。
(5)1990年5月8日付け日経産業新聞12頁の「小田急電鉄『箱根フリーパス』-私鉄企画切符の稼ぎ頭(ロングセラー商品の秘密)」の見出し記事に、「・・・小田急は箱根のほかにも丹沢・大山、南伊豆などのフリーパスを出しているが、・・・」と記載がある。
(6)2004年7月24日付け日本経済新聞 地方経済面(神奈川)26頁の「丹沢大山の保全調査、公認4団体を認定。」の見出し記事に、「・・・県や民間企業などで組織する『丹沢大山総合調査実行委員会』は・・・」と記載がある。
(7)2001年8月30日付け日経流通新聞MJ、13頁の「神奈川・清川の梅ワイン、清川村商工共栄会(新製品)」の見出し記事に、「・・・同村は丹沢大山のふもとに位置し、・・・」と記載がある。
(8)1997年7月9日付け日本経済新聞 地方経済面(神奈川)26頁の「丹沢・大山、三浦の観光振興、神奈川県、地元事業者と連携-推進組織設立やPR。」の見出し記事に、「神奈川県は地元事業者と連携して丹沢・大山、三浦半島両地域の観光振興に取り組む。丹沢・大山では・・・」と記載がある。
2 丹沢の「大山」が本願指定商品に係る「とうふ」の名産地として知られている記載例
(1)2005年6月9日付け産経新聞大阪夕刊12頁の「【ふるさと歳時記】大山の豆腐」の見出し記事に、「・・・丹沢のふもと、・・・有名な大山(おおやま)(一、二五二メートル)がある。・・・大山詣の参詣者を喜ばせているのが大山の豆腐だ。山頂にある阿夫利(あふり)神社の参道には、豆腐料理を中心にした料理店や旅館が約八十軒。大山の豆腐は参詣者とともに歩んできた。江戸時代、・・・名産物として発展した。・・・毎年三月初旬、『大山とうふまつり』が参道一帯で盛大に行われ、・・・」と記載がある。
(2)2000年8月26日付け東京新聞朝刊28頁の「TOKYO発 出かけま専科 旬 山の幸 海の幸 よりどり食べごろ」の見出し記事に、「・・・大山の豆腐料理(伊勢原市)丹沢山塊の中心で、山岳信仰の拠点の大山周辺では、昔ながらの製法で作られた豆腐を使った料理が堪能できる。大山の豆腐料理は、・・・江戸時代から名物として親しまれており、・・・」と記載がある。
(3)2000年3月5日付け朝日新聞東京地方版/神奈川37頁の「味わい、語り、作って豆腐を堪能 伊勢原・大山地区/神奈川」の見出し記事に、「丹沢・大山のふもと、・・・『大山とうふまつり』(実行委主催、朝日新聞横浜支局など後援)が始まった。・・・名物の豆腐で地域おこしをしようと始めたまつりも、今年で十回目。・・・大山の豆腐は山伏の精進料理の流れをくむといわれ、古くから名物として知られる。・・・」と記載がある。
(4)1999年11月23日付け読売新聞東京朝刊33頁の「丹沢大山の魅力 25日、横浜駅東口で観光展=神奈川」の見出し記事に、「丹沢大山地域の観光事業者らで作る『やまなみ地域観光事業者部会』が・・・『丹沢大山観光展』を開く。大山とうふ料理店を紹介してもらうこともでき、・・・」と記載がある。

第4 請求人の意見の要旨
請求人は、平成18年2月27日付け提出の手続補正書において、「引用商標の構成中の『五右エ門』又は『五右衛門』の文字部分は、これら指定商品に関しては自他商品の識別力が弱く、引用A商標と引用B商標とがともに登録されて存続している。インターネットのホームページでは、構成中に『五右衛門』の文字を有する商標で『豆腐』に使用するものが、混乱なく複数存在して市場秩序が形成されている。本願商標は、商標法で保護すべきグッドウィル(顧客吸引力)が既に蓄積されている。」旨述べ、本願商標の登録適格性を主張している。
そして、上記第3の証拠調べ通知に対しては、平成19年6月16日付け提出の意見書において、「証拠調べ通知においては、引用A商標と引用B商標とがともに登録されて存続していることや、インターネットのホームページでは、構成中に『五右衛門』の文字を有する商標で『豆腐』に使用するものが、混乱なく複数存在して市場秩序が形成されていることが考慮されておらず、この考慮がなされれば、『五右衛門』の文字部分は既に識別力を失っていることが明白であり、その結果、本願商標からは『タンザワオーヤマゴエモン』のみの称呼が生じ、引用A商標からは、『ゴゴエモン』の称呼のみの称呼が生じるというのが相当である。」旨を述べた。

第5 当審の判断
1 本願商標は、別掲1のとおり、毛筆書体で二行に縦書きされた「丹沢大山」、「五右衛門」の文字よりなるものである。
そして、その構成中の「丹沢大山」の文字部分は、上記第3の1の(1)ないし(8)に記載のとおりの事実よりすれば、「丹沢山地の大山」の意味合いを理解させるものであり、上記第3の2の(1)ないし(4)の記載よりすれば、この「丹沢山地の大山」は「豆腐」の名産地として一般に知られているというのが相当である。
そうすると、本願商標構成中の「丹沢大山」の文字部分は、その指定商品との関係において、商品の産地、販売地を表したものと理解されるに止まるものであり、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、若しくは極めて弱い部分と看取されるものであって、本願商標中、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、その余の「五右衛門」の文字部分にあるとみるのが相当である。
してみれば、本願商標からは、全体の構成文字に相応して「タンザワオーヤマゴエモン」の称呼を生ずるとしても、簡易迅速を旨とする取引の実際にあっては、取引者、需要者は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「五右衛門」の文字部分に着目して、該文字から生ずる「ゴエモン」の称呼及び「(人名としての)五右衛門」の観念をもって取引に資する場合も少なくないというのが相当である。
2 他方、引用A商標は、別掲2のとおり、毛筆書体の「五」の文字を、幅広の2つの正方形の枠の一方を斜めに90度回転させて立体的に組み合わせて囲った図形と、該図形の下方の毛筆書体で縦書きされた「五右エ門」の文字とからなるところ、視覚上、「五」の文字を含む図形部分と、「五右エ門」の文字部分は、分離して把握、認識されるばかりでなく、これらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだし得ないものである。
そうすると、簡易迅速を旨とする取引の実際にあっては、取引者、需要者は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「五右エ門」の文字部分に着目して、該文字から生じる「ゴエモン」の称呼及び「(人名としての)五右エ門」の観念をもって取引に資する場合も少なくないというのが相当である。
3 したがって、本願商標と引用A商標とは、外観及び観念において相違するところがあるとしても、「ゴエモン」の称呼を共通にする類似の商標であるといわなければならない。
そして、本願商標の指定商品は、引用A商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
4 次に、引用B商標は、別掲3のとおり、毛筆書体で横書きされた「松竹五右衛門」の文字よりなるところ、「松竹」の文字と「五右衛門」の文字とは多少の大きさの違いがあるとしても、構成各文字は、同じ書体で外観上まとまりよく一体的に表されているものであって、これに相応して生ずる「ショーチクゴエモン」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼できるものである。
そして、引用B商標に接する取引者、需要者が、殊更、「松竹」又は「五右衛門」の文字部分を捨象し、該文字部分のいずれか一方のみをもって取引にあたらなければならないという格別の事情も見いだせないから、引用B商標は、構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の一種の造語を表したものとして認識し、把握されるというのが自然である。
そうすると、引用B商標は、その構成文字全体に相応して、「ショーチクゴエモン」の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
5 そこで、本願商標から生ずる「タンザワオーヤマゴエモン」及び「ゴエモン」の称呼と、引用B商標から生ずる「ショーチクゴエモン」の称呼とを比較するに、「タンザワオーヤマゴエモン」と「ショーチクゴエモン」、「ゴエモン」と「ショーチクゴエモン」とは、何れもその構成音数、音構成において顕著な差異があり十分に聴別できるものであるから、両商標が称呼において相紛れるおそれはない。
また、本願商標と引用B商標は、別掲1及び3の構成よりみて、外観においても相紛れるおそれはなく、観念においても、引用B商標は造語と認められるから、比較することはできない。
してみれば、本願商標と引用B商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、類似しない商標といえるものである。
6 なお、請求人は、上記第4に記載のとおり述べ、本願商標の登録適格性を主張しているが、引用A商標と引用B商標の外観、称呼及び観念についての判断は上記のとおりであるから、両者がともに登録されて存続していることをもって、引用A商標の構成中の「五右エ門」の文字部分及び引用B商標の構成中の「五右衛門」の文字部分に識別力がないということはできない。
また、請求人が平成18年2月27日付けで提出した手続補正書において挙げたインターネットのURL8件のうち、ページが閉鎖されていた[5]を除く7件について検索し、そのホームページの内容について検討したが、これらには、「お豆腐屋さん『五右衛門豆腐』が『チーズケーキ(豆乳チーズケーキ)』を販売していること」([1])、「本願商標と同じ構成よりなる『丹沢大山五右衛門』の商標が記載されたホームページにおいて、株式会社つるいちが、『豆腐』等を販売していること」([2])、「『五右衛門とうふ店』が『豆腐』等を販売していること」([3])、「『とうふ五右衛門』が『豆乳チーズケーキ』を販売していること」([4])、「『豆腐デリ五右衛門』が、『おぼろ月』及び『GOEMON OBORO TSUKI』の文字を付した『おぼろどうふ』を販売していること」([6])、「『三代目 五右衛門』という『豆腐』が販売されていること」([7])及び「豆腐料理専門店『松竹五右衛門』が『吟水豆腐・秀水豆腐』等を販売していること」([8])が記載されているものの、このことのみをもっては、構成中に「五右衛門」の文字を有する商標で「豆腐」に使用するものが、混乱なく複数存在して市場秩序が形成されているとは認められないばかりでなく、本願商標の構成中の「五右衛門」の文字部分、引用A商標の構成中の「五右エ門」の文字部分及び引用B商標の構成中の「五右衛門」の文字部分が、識別力が弱いとか、既に識別力を失っているということはできず、かつ、本願商標が、商標法で保護すべきグッドウィル(顧客吸引力)を既に蓄積しているものとは認められない。
そして、他に、これらの文字部分が、それぞれの商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能が弱いとか、ないとすべき理由は見当たらないから、請求人の主張はいずれも上記認定を左右するものではない。
7 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲1】
本願商標


【別掲2】
引用A商標(登録第1954849号商標)


【別掲3】
引用B商標(登録第2144413号商標)



審理終結日 2007-08-03 
結審通知日 2007-08-13 
審決日 2007-12-21 
出願番号 商願2005-26607(T2005-26607) 
審決分類 T 1 8・ 262- Z (Y29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水落 洋 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 岩本 和雄
鈴木 修
商標の称呼 タンザワオーヤマゴエモン、ゴエモン、タンザワオーヤマ 
代理人 片伯部 敏 

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