• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 Y30
審判 全部申立て  登録を維持 Y30
管理番号 1172908 
異議申立番号 異議2006-90399 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2008-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2006-08-17 
確定日 2008-01-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第4954073号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4954073号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第4954073号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示した構成からなり、平成17年9月14日に登録出願、第30類「コーヒー,コーヒー豆」を指定商品として、同18年5月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
異議申立人(以下、「申立人」という。)が引用する商標1ないし6は、別掲(2)ないし別掲(7)に表示した構成からなり、いずれも、商品「コーヒー」に使用されているものである。以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 商標登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、申立人の使用している周知又は著名商標と類似するものであり、指定商品「コーヒー」は申立人の使用している商品と同一であるため、指定商品「コーヒー」について、出願時及び登録時に商標法条4条第1項第10号に該当していたことは明らかである。
また、商品「コーヒー」に本件商標を使用すれば申立人の上記使用商標との関係で、需要者が出所を混同することも明白であり、本件商標は指定商品「コーヒー」について、出願時及び登録時に商標法条4条第1項第15号にも該当していたものである。
さらに、本件商標を商品「コーヒー」と非類似の商品「コーヒー豆」に使用しても、申立人の使用している商標の周知度を考慮すれば、本件商標と申立人の使用商標との関係で需要者が出所を混同することは明らかであり、指定商品「コーヒー豆」についても本件商標は、出願時及び登録時に商標法条4条第1項第15号にも該当していたものである。
したがって、本件商標は、商標法第15条第1項の規定に違反して登録されたものと認められるので、同法第43条の2第1号の規定によりその登録は取り消されるべきものである旨述べ、甲第1号証ないし同第25号証及び参考資料1ないし参考資料7(甲各号証及び参考資料ともに枝番号を含む。以下、「枝番号」全てを引用するときは、その「枝番号」を省略する。)を提出している。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は適用しない(同法第4条第3項)。
商標法第4条第3項は、出願に係る商標が同法第4条第1項各号に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提として、特に同法第4条第1項第8号、第10号、第15号、第17号、第19号についてだけは査定時にこれらの規定に該当していても、商標登録出願時にこれらの規定に該当していなければよいという趣旨を表している。上記各号についてこのような救済規定を設けたのは、これら各号の場合には商標登録出願時に該当しないのに出願後これらの規定に該当するようになったものまで不登録にするのは酷に失するという理由による(社団法人発明協会が発行した工業所有権法逐条解説[第16版]第1069頁)。
したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当し、その登録を取り消すためには、本件商標がその登録出願の時(平成17年9月14日)においても、同法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しなければならないことは、同法第4条第3項の規定からも明らかである。

2 東京高裁が昭和58年6月16日に言い渡した昭和57年(行ケ)第110号(乙第21号証)によれば、コーヒーは、その香りや味覚は品種により特徴があり、持ち味である芳香も粗挽きする際、焙煎法により異なってくるものであるが、一般家庭でも日常手軽に消費される嗜好品であって、全国的に流通し、地域的嗜好特性も格別認め難い商品であることが認められる。
かかる全国的に流通する日常使用の一般的商品について、商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには、それが未登録の商標でありながら、その使用事実に鑑み、後に出願される商標を排除し、また、需要者における誤認混同のおそれがないものとして、保護を受けるものであること及び今日における商品流通の実態及び広告、宣伝媒体の現況などを考慮するとき、商標登録出願の時において、全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものと解すべきである。

3 これを証拠についてみると、申立人が提出した甲第1号証は、引用商標をコーヒーに使用した時期が不明である。
同第2号証及び同3号証には、使用する商品に関する記載がされていない。
同第4号証1は、申立人の商品が紹介された昭和63年12月15日付けの日本経済新聞の記事であるところ、これは近畿経済C版であって、全国版の新聞記事とは認められない。
同第4号証2及び同第4号証4は、申立人の商品が紹介された平成元年1月12日及び平成元年10月26日付けの朝日新聞の記事であるところ、いずれも第2島根版であって、全国版の新聞記事とは認められない。
同第4号証5は、1990年(平成2年)5月25日付けの朝日新聞の「青鉛筆」という記事であるところ、同日付けの朝日新聞の東京版「青鉛筆」には、「シベリアヒョウに国内初のベビー誕生 旭川の旭山動物園」という記事が掲載されており、大阪版の「青鉛筆」には、「国道で小切手が散乱 大阪・西区」、名古屋版の「青鉛筆」には、「社会党岐阜県本部、ニューオフィス風にオープン」という記事が掲載されていることから、全国版の新聞記事とは認められない。
同第5号証は、引用商標が付されたコーヒーの父の日用ゆうぱっく払込通知書と認められるところ、父の日の払込通知書であるために申込期限が設けられており、1年間を通して「ゆうぱっく」で申し込みができるものとは認められない。
同第6号証は、引用商標と類似する商標が付された申立人が作成したコーヒー等のパンフレットと認められるところ、このパンフレットを何部作成し、どこの地域に何部配布したものか明らかではない。また、同第6号証1ないし3、同第6号証6、同第6号証7及び同第6号証9は、使用した時期が不明である。
同第7号証によれば、平成元年7月13日から平成18年1月18日まで、1台のバス(1730号車)の側面に引用商標と類似する商標を広告として掲載したことが認められる。
同第8号証1によれば、2002年(平成14年)12月15日に島根県民会館で開催された「第11回県民手作り『第九』コンサートin島根」の配布物の広告に、引用商標と類似する商標が付されているが、この配布物を何部作成し、何部配布したものか明らかではない。
同第8号証2によれば、立正大学▲しょう▼南高等学校生徒会(『しょう』の文字は『さんずい』に『松』のつくりを合わせた漢字よりなる。)が発行した平成13年9月22日と同年9月24日の「▲しょう▼丹祭(文化祭)」の配布物の広告に、引用商標と類似する商標が付されているが、この配布物を何部作成し、何部配布したものか明らかではない。
同第9号証によれば、NTT西日本が発行した2005年(平成17年)4月から2006年(平成18年)3月までのタウン&ハローページ島根県東部版に引用商標と類似する商標を広告として掲載したことが認められるものの、地域が島根県東部に限られていること及び最も古い平成17年4月でも本件商標の出願日(平成17年9月14日)の約半年前にすぎず、引用商標が約半年で周知又は著名になったものとは認められない。
同第10号証によれば、「ラフカディオコーヒードリップバッグ」が、平成12年度は987個(売上金額65,924円)、平成13年度は1,622個(売上金額118,200円)、平成14年度は3,005個(売上金額210,630円)、平成15年度は3,668個(売上金額261,660円)及び平成16年度は3,223個(売上金額241,480円)販売されたことが認められる。なお、同第10号証によれば、引用商標が他のコーヒーにも付されて販売されていたのかは明らかではない。
同第11号証(異議決定注:同第11号証1の誤記と認める。)は、松江市文化協会が2004年(平成16年)9月に発行した松江文化情報誌「湖都松江」に、引用商標と類似する商標が付されたコーヒーが掲載されているものの、この情報誌を何部作成し、何部販売したものか明らかではない。
同第11号証2は、株式会社昭文社が1999年(平成11年)3月15日に発行した情報誌「マップルマガジン山陰」であるところ、「松江のお茶」と題する申立人等を紹介した記事中に「ラフカディオ珈琲」の文字が1ヶ所あるにすぎないものである。
同第11号証3は、JTBが1999年(平成11年)7月1日に発行した情報誌「るるぶ情報板 中部 ’99-’00山陰」であるところ、「松江の抹茶文化が商品の中に息づく」と題する申立人を紹介した記事中に「ラフカディオ珈琲」の文字が1ヶ所あるにすぎないものであり、中部地方向けに配布されたものと認められるところ、何部配布したものか明らかではない。
同第11号証4は、吉村紙業株式会社が1999年(平成11年)7月に発行した情報誌「茶事記」に申立人の商品が記事として紹介されているものの、この情報誌を何部作成し、何部販売したものか明らかではない。
同第11号証5は、小学館が1999年(平成11年)3月1日に発行した雑誌「サライ」であるところ、「ラフカディオ・コーヒー」の記事がニュースとして取り上げられている。
同第11号証6は、本件商標の出願日後に発行されたものである。
同第12号証1は、小泉八雲をインターネットで検索したものにすぎない。
同第12号証2は、ラフカディオ・ハーンをインターネットで検索したものにすぎない。
同第13号証ないし同16号証は、観念上類似とされた審決例にすぎない。
同第17号証及び同18号証は、外観上類似とされた審決例にすぎない。
同第19号証は、商標審査基準にすぎない。
同第20号証は、本件商標の出願日後の2007年(平成19年)夏に発行された一畑百貨店ギフト商品カタログである。
同第21号証1は、申立人が提供するラジオ番組が放送されたことを株式会社エフエム山陰営業部副部長が陳述した陳述書であるところ、平成19年7月21日放送の番組名「ラフカディオ・ミュージックカフェ」及び2006年12月14日放送の番組名「お茶にしませんか」は、本件商標の出願日後のものである。
同第21号証2は、「ラフカディオ珈琲」が、ラジオ番組で取り上げられ放送されたことを申立人の代表取締役が陳述した陳述書であるところ、平成19年6月28日放送の番組名「ふるさとプレゼント」は、本件商標の出願日後のものである。
同第21号証3は、ラフカディオ珈琲に関する放送を録音したMD及びその書き起こしと認められる。
同第21号証4ないし同第21号証6は、株式会社エフエム山陰、株式会社山陰放送及び四国新聞のホームページにすぎない。
同第21号証7は、エフエム山陰の1990年(平成2年)5月のタイムテーブルと認められるところ、土曜日の22時55分から23時まで、申立人が、ラジオ番組「ラフカディオ・ミュージックカフェ」を提供していたことが認められる。
同第21号証8は、エフエム山陰のタイムテーブルと認められるところ、本件商標の出願日後のものである。
同第21号証9は、西日本放送のラジオプログラムと認められるところ、本件商標の出願日後のものである。
同第21号証10は、エフエム山陰のラジオ番組「ラフカディオ・ミュージックカフェ」の広告出稿金額が年平均150万円であることを株式会社エフエム山陰営業部副部長が証明したものである。
同第22号証は、「『ラフカディオ珈琲』の経過について」と題するラフカディオ・ハーンの曾孫の陳述書である。
同第23号証は、特許電子図書館において、「ヘルン」及び「八雲」を称呼検索した結果にすぎない。
同第24号証は、「『ラフカディオ珈琲』の品質及び販売方法等の特徴について」と題する申立人代表取締役の陳述書である。
同第25号証1ないし同第25号証6は、申立人が平成9年に山陰中央新報に掲載した「ラフカディオ珈琲」の広告と認められる。
申立人が提出した参考資料1は、ラフカディオ・ハーンの曾孫の陳述書である。
同参考資料2ないし参考資料6は、商標法第4条第1項第7号の判決例である。
同参考資料7は、申立人が所有していた商標登録第2223730号の閉鎖された商標登録原簿、公告公報及びこれに対する商標法第50条第1項の規定による取消審判の請求書である。

4 申立人が提出した証拠は、需要者の間に広く認識されているとされる地域が島根県及び鳥取県の一部に限られるものと認められ、引用商標の使用期間が父の日等の特定の期間に限られるものや本件商標の商標登録出願後のものが多く、引用商標を付した商品の年間売上高も周知性を否定した乙第21号証判決と比較して決して多いとはいえないものである。
してみれば、申立人が提出した証拠によっては、商標登録出願の時において、全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者及び需要者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者及び需要者の半ばに達する程度の層に認識されているということができない。
また、本件商標を商品「コーヒー,コーヒー豆」に使用しても、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ということができない。

5 まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(1) 本件商標




別掲(2) 引用商標1




別掲(3) 引用商標2




別掲(4) 引用商標3




別掲(5) 引用商標4




別掲(6) 引用商標5




別掲(7) 引用商標6

異議決定日 2008-01-11 
出願番号 商願2005-86121(T2005-86121) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (Y30)
T 1 651・ 25- Y (Y30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 達夫 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 杉山 和江
鈴木 修
登録日 2006-05-19 
登録番号 商標登録第4954073号(T4954073) 
権利者 有限会社澤井珈琲
商標の称呼 ヘルンノオモカゲオフカイカオリニノセテ、ラフカディオハーンコーヒー、ラフカディオハーン、ラフカディオヘルン、コーヒーバッグ、バッグ、ビイエイジイ 
代理人 河野 誠 
代理人 中務 茂樹 
復代理人 河野 生吾 
代理人 森 寿夫 
代理人 森 廣三郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ